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[C―6 流域の物質循環調査に基づいた酸性雨による生態系の酸性化および富栄養化の評価手法に関する研究]

(3)植生―土壌プロセスに基づく流域スケールの物質循環モデルの開発

独立行政法人農業県境技術研究所

 

 地球環境部 生態システム研究グループ 物質循環ユニット

新藤純子

 地球環境部 食料予測チーム

岡本勝男

東京大学大学院農学生命科学研究科

川島博之

 

 

 〈研究協力者〉独立行政法人農業県境技術研究所

 

  地球環境部 生体システム研究グループ リモートセンシングユニット

坂本利弘

[平成14〜16年度合計予算額]

 平成l4〜16年度合計予算額 18,099千円
 (うち、平成16年度予算額 5,829千円)

[要旨]

  我が国の森林生態系における窒素負荷とその影響の現状を広域的に評価するモデルの作
成を目的に研究を行った。このため、窒素肥料の使用量、農作物生産量、肉類生産量などの統計
データと土地利用データを用いて、農業活動からのアンモニア発生量分布を推定し、これと既存
の窒素酸化物発生量分布とに基づいて窒素負荷量全国分布を作成した。モデルでは、大気、植物、
土壌有機物の炭素のフローとこれと連動した窒素の内部循環を考慮した。日本の平均的な条件を
パラメータ値として用いてモデル特性を検討したところ、既存の研究結果から得られた窒素流出
の特徴を定性的に表現することができた。モデルにより窒素流出は土壌有機物としての蓄積・分
解の速度に加えて森林の成育ステージ(バイオマス賦存量)に強く依存していることが推定され
た。全国スケールでの適用のため、基本モデルを基に、広域モデルを作成した。衛星リモート・
センシングデータの解析から、森林のバイオマス賦存量を広域的に推定するための適切なデータ
合成法を検討した。一ヶ月合成NDVIをバイオマス賦存量の指標として用い、窒素負荷量分布をイ
ンプットデータとしてモデルを実行したところ、渓流水中窒素濃度の推定値は、サブテーマ1で
実施した全国渓流水調査による、渓流水中硝酸イオン濃度の全国分布と比較的良く対応した
(r=0.65)。窒素負荷による生態系影響は、中国や東南アジア諸国でも問題とされているので、
アジアにおいて窒素負荷への寄与が大きい農業活動の変化を統計データに基づいて解析し、東ア
ジア13カ国を対象に、窒素負荷量及びアンモニア発生量の変化を推定した。中国における負荷が
対象地域の全負荷量の70%以上を占めること、単位面積当たりの負荷は韓国で日本の2倍程度あ
り、またベトナムなど東南アジアの国で近年の負荷の増大が著しいことが示された。

[キーワード]

 窒素負荷、窒素流出、生態系プロセスモデル、広域評価、衛星リモートセンシング