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[C―2 酸性汚染物質の陸水の水質と生物に与える影響の実態解明に関する研究]

(1)酸性汚染物質の渓流河川水の水質に与える影響の実態解明

独立行政法人国立環境研究所

 

 

 大気圏環境研究領域

酸性雨研究チーム

佐竹研一

 水土壌圏環境研究領域

土壌環境研究室

高松武次郎・越川昌美

 生物圏環境研究領域

生態系機構研究室

野原精一

東京農工大学農学部

 

楊宗興

北海道大学北方生物圏フィールド科学センター

柴田英昭

財団法人目本環境衛生センター酸性雨研究センター

小林洋康

[平成14〜16年度合計予算額]

 平成l4〜16年度合計予算額 55,611千円
 (うち、平成16年度予算額 17,253千円)

[要旨]

  新潟県三面川水系で酸性雨(pH5.03)の降下時に連続的に採水し、その化学成分を調べた結果、
渓流水はpH7.2から6.5に下がった地点や7.3から7.0に下がった地点があった。前者は花崗岩質の
基盤岩石の渓流であった。
三面川の人工飼育のサケ稚魚はC-18‰、N-13‰であり、人工飼料はC-18‰、N-9‰。であった。
約2万匹のサケの遡上によって三面川流域にもたらされているK、Na、Fe、P、Caは、261、49、0.37、
179、10kg/年と推定された。
 一方酸性化に伴って溶出し三面川に棲息するサケ科魚類2種(ニッコウイワナ、ヤマメ)に影響
を与える可能性のあるA1の濃度は、全溶存A1、イオン性Al、有機・無機錯体A1の平均が最も高か
った。一方、コロイド状A1は低かった。各態AlはNO3-+SO42-やpHとほとんど相関を示さなかった。
三面川地域に比較し、過去に酸性汚染物質が最も多く負荷されてきた関東山地では、渓流水の
NO3濃度の高い流域では、根の吸収を免れて土壌深部にまで窒素が溶脱している状況が土壌中の
NO3の鉛直分布から明らかになった。特に渓流のNO3一濃度が高い森林集水域の土壌では、窒素飽和
と呼べる状況が生じていることが実証された。ただし、丘陵部の集水域では、脱窒によってNO3-
去が行われていた。
 酸性汚染物質の負荷は比較的少ない北海道北部の森林流域においては、森林流域において、約
50kgN/ha/yのNH4NO3を実験的に散布し、土壌中の窒素動態、河川水質の変化を観測したところ、
散布直後は河川水の硝酸濃度に著しい上昇が認められたものの、その後濃度は低下し、夏季から
秋季にかけては対照流域と同様な濃度レベルまで低下した。流域の年間窒素収支を解析すると、
実験的に散布した窒素の約90%は森林流域内に保持され、約10%のみが河川へと溶脱していた。

[キーワード]

 酸性雨、三面川、酸中和能、窒素飽和、魚類