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[B-11地球温暖化による高山・森林・農地生態系の影響、適応、脆弱性の評価に関する研究]

(3)自然林・人工林の脆弱性評価と適応策に関する研究

  た郵林生態系の脆弱性評価と適応策

独立行政法人森林総合研究所

 

 

  

海外研究領域

松本 陽介

 

九州支所森林生態系研究グループ

重永 英年

 

(元、立地環境研究領域 養分環境研究室)

 

 

東北支所 森林環境研究グループ

三浦 覚

 

研究管理官

峠田 宏

[平成14〜16年度合計予算額]

 平成l4〜16年度合計予算額 17,703千円
 (うち、平成16年度予算額 5,052千円)

[要旨]

 水分ストレスに対する耐性が比較的低いとされるスギ林を対象に、年間を通した
スギ林の潜在的な水要求度を表す「スギ林蒸散降水比予測モデル」と土壌の利用可能な水容
量を指標する「土壌水分変動予測モデル」を開発し、温暖化に伴うスギ人工林の脆弱性評価
と適応策の検討を行った。
 「スギ林蒸散降水比予測モデル」の開発研究において、スギ林の年間の水収支を蒸散降水
比(年蒸散量/年降水量)によって広域的に評価し、温暖化に対して脆弱な地域を抽出するモ
デルを開発した。全国の二次メッシュ気候値からモデルを用いて計算されるスギ人工林の年
蒸散量は400mmから800mmの値を示し、温度環境と密接な関係があることを見いだした。現在
の気候データを用いた全国規模での計算で、蒸散降水比は0.14から0.67の範囲にあり、スギ
の広域的な衰退が報告されている関西・瀬戸内地域ならびに関東・甲信地方で高い値を示す
メッシュが多く出現することを確認し、蒸散降水比が高いメッシュでは気候変動に対する脆
弱なスギ人工林を抽出に有効であることを確かめた。気候変動シナリオに基づいた計算では、
関東平野部などにおいて蒸散降水比が高い地域が拡大し、温暖化に対して脆弱な地域である
ことと評価した。
 「土壌水分変動予測モデル」の開発研究においては、土壌水分特性曲線が土壌型により類
型化されることを明らかにし、得られた代表的なパラメータを用いてモデルを作製した。モ
デルは、指数関数貯留型タンクモデルをベースに、過去に得られている278点の土壌水分特性
曲線を解析し、この土壌型ごとの代表的な特性曲線に従った蒸散抑制アルゴリズムを組み込
んだ。試算の結果、適潤性褐色森林土や黒色土では水分ストレスの発生が少なく、乾性ない
し弱乾性褐色森林土および湿性褐色森林土では水分ストレスが発生しやすいことを、新たに
明らかにした。これを国土数値情報の土壌データに適用して、土壌水分特性からみた潜在的
な保水力マップを作成した。このマップから、瀬戸内から近畿地方、三河地方、および、九
州北部と四国地方の沿岸部において、スギ林の水分ストレス発生の危険性が高いと評価した。
 さらに、蒸散降水比による水分ストレスの発生予測、および土壌の保水力評価の結果と重
ね合わせて検討した結果、以下のように脆弱な地域を評価した。降水量の低下、気温上昇な
どにより空気乾燥が進行し、スギの潜在的蒸散活動の抑制により衰退が懸念される地域とし
て、長野盆地、甲府盆地、関東平野、福島盆地、および十和田湖東方の平野部(三本木原台
地)などが、また、土壌の保水力が小さい地域、すなわち、一定の年降雨があっても、降雨
間隔が延びるなど、干ばつ頻度が増せばスギ林の衰退が予想される地域は、三河地方、瀬戸
内沿岸、および九州地方などであることを明らかにした。また、二つのモデルでスギ林の衰
退が懸念されると評価された地域は、兵庫県、岡山県、および香川県など瀬戸内沿岸地域に
認められた。さらに、脆弱な人工林を守るための適応策について検討した。

[キーワード]

 温暖化、スギ、蒸散、脆弱性予測、土壌水分特性曲線