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[B−6 東アジアにおけるハロカーボン排出実態解明のためのモニタリングシステム構築に関する研究]

(3)化学輸送モデルを用いた東アジアにおけるハロカーボン排出量の推定に関する研究

独立行政法人産業技術総合研究所

 

 

  環境管理研究部門

地球環境評価研究グループ

田口彰一・鷲見栄一

[平成14〜16年度合計予算額]

 平成l4〜16年度合計予算額(予定) 15,798千円
 (うち、平成16年度予算額 5,000千円)

[要旨]

  ハロカーボンの一種で冷蔵庫の冷媒として利用されているHCFC-22の東アジアからの排出
量の推定を試みた。HCFC-22の濃度を産総研の大気輸送モデル(STAG)を用いて計算し、相模湾上空
で採取された大気中濃度(2002年、月1回)および波照間島で観測された濃度(2004年、1時間間隔)
を用いて考察した。STAGの濃度は相模湾の高度1-7kmの観測と5ppt以内で一致したが、高度lkm以
下の濃度については食い違いが見られた。波照間の観測には、季節変動、一週間程度の時間スケ
ールの変動、一日程度のスケールの時間変動が含まれている。観測された濃度の時系列の低濃度
側については、STAGの計算結果と観測の差は5ppt以下であった。このことからSTAGで用いた、発
生源分布、全球排出量の経年変化、大気中OHラジカル量、HCFC-22とOHラジカルの反応速度、反応
速度の計算に用いた気温などは妥当なものと判断した。STAGの低濃度は季節的な時間スケールの
ものも一日の時間スケールで発生するものも南半球大気が波照間を覆うことにより発生していた。
一方180ppt以上の最大濃度をともなう一日から一週間の時間スケールの高濃度現象は5月から12
月までに18回検出されたがSTAGは観測濃度より低く、その差は最大で90pptに達した。18領域に分
割した発生源を与えた計算結果から、高濃度事象をもたらす排出源の定性的な推定を行ったとこ
ろ起源と思われる大都市を多くの場合複数特定することができた。また発生量が一定であると仮
定した場合について、最小二乗法を用いた定量的な推定を試みたところ幾つかの地点の推定値は
負となった。高濃度現象の中にSTAGの空間分解能では表現が困難な事例が含まれている可能性と、
定常的な排出によってもたらされているわけではない可能性が示唆された。

[キーワード]

 ラドン222、HCFC-22、波照間、相模湾、逆問題