
|
|
(1.81MB)
|
|
独立行政法人国立環境研究所 |
|
|
生物圏環境研究領域長 |
|
渡辺信 |
生物圏環境研究領域 系統・多様性研究室 |
田辺雄彦・河地正伸・笠井文絵 |
平成13〜15年度合計予算額 26,336千円
(うち、平成15年度予算額 8,177千円)
有毒藻類のモニタリング手法の開発として、主に有毒ラン藻Microcystis属を対象に研究
を進めた。Microcystisはミクロシスチン毒素を生産するが、毒素を生産しない株も存在するため、
同毒素の生合成遺伝子を標的とした有毒株の検出・識別PCRシステムの構築を試みた。本遺伝
子の部分領域を増幅するプライマーを設計し、本邦及びタイ・中国からの分離株についてPCR
実験を行った結果、有毒株からは当該遺伝子の増幅が確認されたが、無毒株からは検出されなか
った。以上の結果より、今回開発したPCRシステムは、有毒Microcystisを検出する強力なツー
ルとなることが示された。さらに湖沼より採取した混在サンプルについても本法が有効であるこ
とを確認した。cpcBA遺伝子座をマーカーとした各株の系統解析を行った結果、分離地と
Microcystisの類縁性に相関が見られない例が散見されたことから、有毒アオコの移動が地球規模
で起こっている可能性が指摘された。さらにミクロシスチン生合成遺伝子配列の系統解析を行い、
cpcBA遺伝子座の解析結果と比較したところ、同毒素生合成遺伝子が異なる個体間を水平伝播す
ることが示唆された。このことから、有毒アオコのモニタリングに際して、毒素生合成遺伝子自
体をマーカーとする解析の重要性が示唆された。分離株の毒素生合成遺伝子を比較解析した結果
から、水域環境において株間での同遺伝子の組み換えが起こっていることを見出した。この知見
は、遺伝子のシャフリングによってMicrocystisが多様な毒素を作りだすポテンシャルを有するこ
とを意味する重要な発見である。ミクロシスチン毒素を生産する別のラン藻Planktothrix属につ
いてもミクロシスチン生合成遺伝子を標的にした同属特異的プライマーを設計し、PCR検出シス
テムを構築した。しかしながら、本属については無毒・有毒全ての株から同遺伝子が検出された。
この結果は、無毒株についても毒素生産のポテンシャルを有する可能性を示唆するものであり、
Planktothrixのモニタリングには見かけの毒性にとらわれずに注意する必要性が指摘された。
有毒アオコ、Microcystis、毒素生合成遺伝子、PCR検出、水平伝播