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独立行政法人国立環境研究所 |
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環境研究基盤技術ラボラトリー |
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戸部和夫 |
国際室 |
清水英幸 |
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京都大学 |
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大学院アジア・アフリカ地域研究研究科 |
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石田紀郎 |
大学院地球環境学堂 |
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小崎 隆 |
大学院農学研究科 |
舟川晋也・矢内純太 |
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(財)地球・人間環境フォーラム |
中村 洋・地崎 剛 |
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<研究協力者> 東京大学大学院農学生命科学研究科 |
恒川篤史 |
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北海道大学スラブ研究センター |
山村理人 |
平成l3〜15年度合計予算額 33,246千円
(うち、平成15年度予算額 6,992千円)
上記の予算額には、間接経費 7,574千円(1,614千円)を含む
中央アジアの主要な砂漠化プロセス、すなわちステップ地帯の土壌有機物の減耗と砂漠灌漑農
業地帯の土壌塩性化機構の解明および要因解析を目的として、カザフスタンにおいて自然環境調
査・社会経済調査を行った。
北部ステップ地帯においては、カザフスタン・アクモラ州ショルタンディ畑作試験地で土壌へ
の有機物投入量の現地測定、土壌特性値、気象および土壌呼吸モニタリングに基づく有機物損失
量予測式の導出、ならびにそれを用いた年間損失量の算出を行った。有機物投入量と損失量の差
引により2001〜2003年度の土壌有機物収支を求めた結果、収支は有機物投入量を左右する土地利
用(休閑を含むか否か)に強く規定されていた。その際土壌有機物分解量は、潜在的には台地頂部
で大きく、ついで北側斜面、南側斜面の順となった。一方、南部灌漑地帯のクジルオルダ州シャ
ガン農場、シャメーノフ農場試験地において、土壌塩性化の現況と地形、地下水、灌概・排水シ
ステム、土壌特性値に関する調査を行った。その結果、比較的平坦な地形上に位置する灌漑農地
で、排水不良による除塩機能の低下ならびに水田における塩害の深刻化がより顕著に観察された。
輸作体系中における土壌塩類の移動メカニズムおよび塩性化規定要因の解析より、塩性化進行に
対して低標高、細粒質といった条件の寄与が明らかとなった。
さらに、砂漠化の進行に多大の影響を与えてきた社会経済要因に関する調査から、近年、穀物
商社によるインテグレーションが砂漠化防止のための集約的営農管理に貢献している傾向が、一
部の農業企業で観察された。一方総体としてみれば、旧ソ連邦時代に比べると低投入型の耕作が
継続しており、このことが北部畑作地帯における有機物投入レベルの低下、南部灌漑耕地におけ
る灌漑排水網の劣化を通して、砂漠化を加速する要因となり続けている。
このように北部・南部いずれにおいても、砂漠化進行リスクが程度の差こそあれ地形条件によ
って規定されているということ、旧ソ連邦崩壊後の農場経営の行き詰まりによって砂漠化進行リ
スクが高まっていることがわかった。このことは逆に、地形条件にうまく適応することによって、
砂漠化リスクを回避あるいは軽減させる土地利用が可能であることを示唆している。すなわち適
地適作である。高リスク地での土地利用の転換(農地から牧草地へ)あるいは低リスク地の集約利
用などを通して、農業経営の経済性を高めながら砂漠化リスクを軽減させることが可能であると
考えられる。
カザフスタン、土壌塩性化、土壌有機物、土地利用、農場経営