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[H−6 地下水利用に伴う広域的ヒ素汚染に対する地球環境保全のための環境計画に関する研究]

(4)大容量上水道システムにおけるヒ素除去処理手法の開発と配水体制の研究


北海道大学大学院工学研究科

 都市環境工学専攻 環境リスク工学分野

教授

眞柄泰基

〈研究協力者〉北海道大学大学院工学研究科

 都市環境工学専攻 環境リスク工学分野

助教授

亀井翼

 都市環境工学専攻 環境リスク工学分野

助手

大野浩一


[合計予算額]

 平成12〜14年度合計予算額 15,000千円
 (うち、平成14年度予算額 3,517千円)

[要旨]

 バングラデシュにおける地下水のヒ素汚染は深刻である。ヒ素汚染への大規模な対策として、表流水を水源とする上水道システムの導入が考えられるが、乾期の河川水位が低いために取水施設を設けることが困難な地域などでは地下水を水源としなければならない。本研究では、汚染された地下水しか水源がない場合における低コストなヒ素除去処理方法について検討した。数千人〜数十万人程度の地域へ給水可能な施設を想定し、ナワブガンジ地区に実験プラントを設置して除去性能に関する実験を行った。また現地の地下水について継続的な水質調査を行い、ヒ素の汚染状況・原因を考察した。
 地下水のヒ素汚染状況調査により、ナワブガンジ地区では地下水中のヒ素濃度は還元的条件で高くなる場合が多いと推定された。なぜならば、高濃度のヒ素が検出される井戸では3価の無機ヒ素の割合が高く、また2価の鉄濃度も高い傾向が見られたからである。ただし、ヒ素濃度が高い割に鉄濃度が低いという井戸も存在し、ヒ素溶出は地層からの還元的溶出だけではなく、他の機構も影響している場合があることを示唆している。
 ヒ素除去実験プラントでは、多くの地下水においてヒ素と共存している鉄を利用した共沈法を採用した。酸化槽において鉄を酸化、ヒ素と共沈させ直接ろ過により除去する方法である。また、病院など清浄な水を必要とする施設のためにナノろ過(NF)膜による高度処理も行った。実験の結果、通常の操作条件においてバングラデシュのヒ素水質基準値(0.05mg/L)を達成することができた。またNF膜高度処理では、高コストだが0.001mg/L以下の水質を得ることができた。通常処理でWHOの飲料水水質ガイドライン値(0.01mg/L)を達成するには、原水中の鉄濃度が十分ではないため、鉄系やアルミ系の凝集剤を添加する、あるいは原水中の3価ヒ素を全て5価ヒ素に酸化させるために実験時よりも多くの酸化剤を注入する等の工夫をする必要があると考えられた。


[キーワード]

 ヒ素、地下水、バングラデシュ、鉄、マンガン