検索画面に戻る Go Research



(7.9Mb)

[E−2 森林火災による自然資源への影響とその回復の評価に関する研究]

(3)森林火災の影響評価のための指標策定


独立行政法人国立環境研究所

 国際室

清水英幸

[客員研究員] 広島大学

大学院理学研究科

山口富美夫

[客員研究員] 佐賀大学

文化教育学部

宮脇博巳

[客員研究員] 東京大学

大学院農学生命科学研究科

大塚重人

独立行政法人森林総合研究所

九州支所森林微生物管理研究グループ

明間民央

〈研究協力者〉

インドネシア国 科学研究院(LIPI)生物学研究センター(RCB)

Herwint Simbolon, Florentin Indah Windadri, Ida Haerida,
Suciatmih, I Made Sudiana

インドネシア国 ボゴール農科大学

Nunik S.Ariyanti

インドネシア国 ガジャマダ大学

Handoyo N.H.


[合計予算額]

 平成12〜14年度合計予算額 35,293干円
 (うち、平成14年度予算額 10,359千円)

[要旨]

 1997〜1998年に大規模森林火災が発生したインドネシア国東カリマンタン州のブキット・バンキライで、大気環境に敏感とされる蘚苔類・地衣類、土壌環境に依存する菌根性菌類・土壌細菌類に関する多様性調査を行った。森林火災による影響の違いから―電挌鏗歌咫K区)、軽度被害林(LD区)、L吉鏗歌咫K区)に調査区(約1ha)を設定し、森林火災影響と植生回復にともなう種構成の変化を解析し、森林回復評価の生物指標を抽出し、提示することを目的とした。上記分類群に関する調査は2001年2月、9月、2002年2月、7月、2003年1月に実施した。
 蘚苔類相はHD区<LD区<K区の順に豊かになり、これらが植生回復にともなう蘚苔類相の経時的変化に相当するものと推察された。また、湿った林床の朽木に生育するArachniopsis majorMizutania riccardioidesTrichosteleum boschiiZoopsis liukiuensisは自然林内でのみ出現した。これらの種は、低地熱帯多雨林の自然度を示す指標となりうると考えられた。
 地衣類相もHD区<LD区<K区の順に豊かであった。K区で高木が多く、林床が薄暗い沼地や小川近くの樹木基部には、Cladonia sp.Graphis sp.Coenogonium sp.Coccocaripia sp.が出現し、これらの種はまだ未同定ではあるが、低地熱帯多雨林回復の指標種の候補であると思われた。
 フタバガキ科樹種の生活に重要な外菌根は森林火災後3〜4年で回復するが、宿主樹木の減少ゆえ菌根量は回復していなかった。LD区ではベニタケ属やテングタケ属など、極相林(K区)の種構成に似た菌群が認められ、火災前の菌根菌の生残が示唆された。一方HD区では火災4年後に菌根菌子実体が発生したが、撹乱地や若齢林に典型的なキツネタケ属のみであり、菌根菌相は一旦完全に破壊された後、再定着が始まったと考えられた。重度の火災被害後の再定着を示す指標種としてLaccaria vinaceoavellanea、被害程度が軽く菌根菌相の維持を示す指標種としてRussula rosaceaR. castanopsidisが有効だと考えられた。
 細菌を含む微生物バイオマス、微生物呼吸量、およびphosphomonoesterase活性は、HD区<LD区<K区の順に大きくなった。土壌細菌の多様性解析の結果、火災の影響は、土壌の優占細菌の分類的集団構造には認められなかったが、炭素源代謝能に認められた。土壌細菌の分離・同定の結果、全ての調査区で優占種が共通しており、指標となる細菌の特定は困難であったが、Bacillus sphaericusは、K区以外ではほとんど優占せず、健全な森林土壌の指標となる可能性が示唆された。
 なお、本調査期間では、蘚苔類で60種、地衣類で5種、菌根性菌類で3種、土壌細菌類で4種以上が東カリマンタン新産種であった。このうち地衣類数種と土壌細菌類4種は新属または新種の可能性が高く、熱帯林は細菌類も含め、貴重な生物種の宝庫であり、未知の種もまた多く存在する可能性が示唆された。


[キーワード]

 菌根性菌類、指標生物、森林火災、蘚苔類/地衣類、土壌細菌