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[B−51 CH4、N2Oのインペントリーの精緻化と開発中核技術の内外への普及]

(9)CH4、N2O抑制対策中核技術の汎用化、普及手法の最適化とインペントリーの精緻化、充実化のための総合評価に関する研究


環境省独立行政法人国立環境研究所

  循環型社会形成推進・廃棄物研究センター

 バイオエコエンジニアリング研究室

稲森悠平・水落元之

東北大学大学院工学研究科

西村 修

筑波大学農学研究科

松村正利

東北学院大学工学部

遠藤銀朗

早稲田大学理工学部

常田 聡


[合計予算額]

 平成12年度〜14年度合計予算額 75,812千円
 (うち、平成14年度予算額 25,192千円)

[要旨]

 本研究プロジェクトで検討されているCH4、N2Oの排出抑制対策技術をモデルケースとし、温室効果ガスの費用対効果や削減ポテンシャルを算出し、間接影響も含め対策技術の適用可能性を総合評価する手法を開発した。まず、各対策技術に対する費用対効果を検討した結果、畜産における飼養技術の改良は、導入により収益も増加することがわかった。また「汚泥の燃焼方法の変更」「基肥の変更」では200〜300g-CO2・円-1、「補助燃料ガスの燃焼装置への吹き込み」「生活排水処理の変更」は10g-CO2・円-1程度となった。国内の削減ポテンシャルは、「乳牛の生産性向上」「肥育牛の生産性向上」「自動車触媒の改良」「汚泥の燃焼方法の変更」で1,000Gg-CO2を超えることが明らかになった。ここで、対策技術を実用性、適用性という観点から定量化が困難な波及効果等を考慮した総合評価手法を開発した。
 評価は、対策技術固有の特性を評価するフェーズと、受入地域の特性を評価するフェーズに分離し、前者では、「実施要件」「温暖化」「事業への影響」「環境影響」「経済・社会への影響」といった共通の評価項目それぞれに、3〜5段階程度のポイントを与えて評価することとした。後者では、前者に対応する分野で評価項目を設定し、地域における問題の重要性をポイント化し、重み付けに利用し、地域における対策技術の価値を評価できるようにした。温暖化以外の影響も含めた総合評価では、公的統計の主成分分析から、「温暖化」「都市環境」「農業環境」「経済社会」について、86力国の地域における問題の重要度を示すポイントを算出した。日本と中国のポイントを用いて総合評価を行ったところ、両国とも「生活排水処理の変更」といったインフラ整備および環境改善に係る分野での評価が高いものとなり、「ポイント化と重み付けの手法」の導入により、対費用効果のみでは評価が困難であった地域特性を反映しつつ、温暖化以外の影響を含む総合評価の可能性が展開した。
 インベントリの精緻化・充実化を目的とした各排出源における排出係数の不確実性の評価を行うために、IPCCのGood Practice Guidanceに示された不確実性評価を基礎とし、本プロジェクトの各サブテーマでの成果を導入することで、プロジェクトの推進により排出量推計の不確実性がどれだけ低減したかを評価するシステムを検討した。ここで、従来の排出量推計の不確実性は、一般に過小評価される傾向にあることから、過去の不確実性評価の結果と最新の研究成果に基づく不確実性評価を直接比較すると、研究の進展により不確実性が増大する可能性があり、最新の知見に基づいて過去の排出量推計の不確実性を再評価し、それを基準とした上で、研究成果の不確実性低減効果を評価することとした。これらにより、客観的な不確実性の比較評価が可能となった。また、本手法の開発を通じて、現在のIPCCの不確実性評価を用いた場合、今後の研究の進展にようて低減ざれうる不確実性(測定誤差等)と、研究が進展しても低減されない不確実性(実際の分布の分散が大きい場合)が混同される、という課題も明らかになり、この低減される不確実性・低減されない不確実性について綿密に吟味する必要があることが明らかになった。


[キーワード]

 技術評価、影響評価、費用対効果分析、主成分分析、不確実性評価