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独立行政法人農業技術研究機構九州沖縄農業研究センター |
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畜産飼料作研究部 環境生理研究室 塩谷繁・田中正仁・岩間裕子・神谷充 |
平成12〜14年度合計予算額 13,756千円
(うち、平成14年度予算額 4,501千円〉
東南アジア地域における実用性の高い反芻家畜からのメタン放出量低減技術を提示する目的で、高消化性品種の利用、穀類の併給および粗飼料の化学的処理について検討した。
高消化性の新品種として、暖地型牧草のギニアグラス「ナツコマキ」とトウモロコシ「ゆめそだち」を、既存品種として暖地型牧草のバヒアグラス「ペンサコーラ」とトウモロコシ「セシリア」をそれぞれホルスタイン種乾乳牛4頭ずつに給与し、メタン発生量を比較した。その結果、乾物摂取量(DMI)当たりのメタン発生量は、いずれも高消化性品種の方が少なかった。
また、ホルスタイン種泌乳牛4頭に対し、イナワラ、イナワラに玄米または玄米とその他の穀類を給与し、牛からのメタン発生量ならびに泌乳量を測定した。その結果、穀類の増給1kgにつき乳量が約2kg増加し、牛乳1kg当たりのメタン発生量が約2.5L低減した。したがって、穀類の単価が乳価の2倍程度までであれぱ、穀類の使用に伴う支出増加よりも乳量の増加による収益増加が上回り、現在の東南アジア地域でも十分に利用可能であると考えられた。
さらに、イナワラを原料に無添加のサイレージ、イナワラに尿素を原物あたり3%添加したサイレージおよび乳酸菌とセルラーゼの混合物を原物あたり0.0035%添加したサイレージをホルスタイン種乾乳牛4頭ずつに給与し、メタン発生量を比較した。その結果、化学的処理により乾物および可消化養分総量(TDN)の摂取量当たりメタン発生量が少なくなった。これらの化学的処理により粗飼料の栄養価が高まり乳量が増加したことから、現状の乳価水準であれば経済的なメリットもあると判断された。
以上の結果から、東南アジア地域の泌乳牛からのメタン発生量を抑制する給与技術としての高消化性品種の利用、穀類の併給および粗飼料への化学的処理は実用性が高く、経済的にも収入を増加させるので、現地に普及しうる技術であると考えられた。
メタン、東南アジア、乳牛、飼料、暑熱