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[B−51 CH4、N2Oのインベントリーの精緻化と開発中核技術の内外への普及]

(3)バイオ・エコシステムを活用した生活系・事業場系排水のCH4、N2O抑制対策中核技術の汎用化と普及に関する研究

CH4、N2O放出抑制のための水生植物等を活用した処理手法の運転操作・管理条件の確立化に関する研究


独立行政法人国立環境研究所

 循環型社会形成推進・廃棄物研究センター

 バイオエコエンジニアリング研究室

稲森悠平・水落元之、岩見徳雄、板山朋聡

桂 萍(EFF:平成12、13年度)

朱南文(EFF:平成14年度)


[合計予算額]

 平成12-14年度合計予算額 5,396千円
 (うち、平成14年度予算額 1,399千円)

[要旨]

 人工湿地処理は点源および面源から排出される排水を処理する有望な低コスト処理法として世界各地、特に開発途上国で広く用いられているが、特に中国では水質汚濁に対する重要な生態工学(エコエンジニアリング)的排水処理手法と位置づけられている。人工湿地処理システムを持続的に運用できるか否かは、流入する有機物および窒素等の汚濁負荷を如何に高効率でガス最終生成物に変換できるかが鍵となっている。これらのガス生成物には温室効果ガスであるCH4、N2Oが含まれ、これらのガスは地球温暖化要因のおよそ24%を占めるものと考えられている。
 本研究では、これらの点を鑑み、湿地処理システムとして代表的な地下浸透方式と自由水面方式に注目して、これらの排水処理特性と温室効果ガス排出特性を検討した。その結果、地下浸透型(SF)人工湿地は廃水処理において自由水面型(FWS)よりも良好な排水処理性能と高い安定性を示すと共に、CH4、N2O排出量も低くなる傾向を示した。これらの違いは、ORP(酸化還元電位〉およびCH4、N2Oの垂直濃度の測定から、湿地内の嫌気域がCH4発生の原因であり、また、FWS湿地とSF湿地は、土壌の酸化還元電位との関係が同じであることに起因することが明らかになった。さらに、SF湿地においては水面上の乾いた土層がCH4の減少に対して重要な役割を果たし、その結果CH4の排出が少なくなるものと考えられた。湿地における硝化作用の分布に関する検討結果から、FWS湿地とSF湿地の両湿地において根圏域が硝化の重要な場であることが明らかになった。また、硝化プロセスは、FWS湿地ではN2O排出の重要な要因の1つであること、またSF湿地ではN2O排出の重要な要因ではないことも明らかになった。これらの事実はFWS湿地の構造ではSF湿地と比較してORPの分布がCH4、N2Oの生成・排出に適した条件に合致していることを示している。同時に、水中ガスとCH4酸化細菌(methanotrophic bacteria)の分布から、構造上、SF湿地ではCH4酸化細菌が湿地上部に分布し、湿地内部で生成・排出されるCH4の削減に大きく寄与していると考えられた。
 本研究では、これらの検討を踏まえて、水生植物種、湿地媒体の種類、湿地水位ならびに水量・汚濁負荷などの処理システムの運用パラメータが人工湿地における汚染物質除去と温室効果ガス排出に及ぼす影響を調べるために、それぞれをパラメーターとした実験計画法による検討を行った。その結果、化学的酸素要求量(COD)除去に対しては、湿地媒体と水量・汚濁負荷が湿地の性能を決定する重要因子であると認められた。湿地媒体が異なると、媒体の比表面積と有機質分解速度が異なる事から自明な結果であるが、CH4、N2O排出量に関しては水生植物種の違いが大きな影響を与えることが明らかになった。
 次に、CH4、N2Oに関する植栽植物の刈り取りの影響を検討した結果、伐採を行った地点では伐採直後に明らかなCH4排出の上昇が検出され、その後CH4排出量は低下し、伐採しなかった地点よりも少なくなった。10℃以下の条件ではCH4排出量は再度、伐採をしなかった地点よりも高くなるものの全体としての排出量は低く、水中に高いCH4濃度が観察された。一方、N2Oはいずれの湿地システムでも伐採直後に低下したが、FWS湿地では数日間近辺よりも高い濃度を示した。FWS湿地とは逆に、SF湿地ではヨシを伐採した地点からのN2O排出量は常に低い傾向を示した。


[キーワード]

 自由水面型人工湿地、地下浸透型人工湿地、CH4・N2O排出、硝化、CH4酸化細菌