検索画面に戻る Go Research



(2.1Mb)

[B−1 気候変動の将来の見通しの向上を目指したエアロゾル・水・植生等の過程のモデル化に関する研究]

(3)地球温暖化における陸上生態系フィードバックに関する研究


独立行政法人森林総合研究所

 気象環境研究領域

気象研究室

渡辺力・安田幸生・大谷義一・溝口康子

気象害・防災林研究室

岡野通明

独立行政法人農業環境技術研究所

 地球環境部

食料生産予測チーム

横沢正幸

独立行政法人産業技術総合研究所

 環境管理研究部門

大気環境評価研究グループ

近藤裕昭・飯塚悟・三枝信子

東京大学生産技術研究所

沖大幹・鼎信次郎

北海道大学低温科学研究所

 寒冷陸域科学部門

寒冷生物圏変動研究室

原登志彦・隅田明洋


[合計予算額]

 平成12〜14年度合計予算額 44,223千円
 (うち、平成14年度予算額 16,123千円)

[要旨]

 本サブテーマでは、気候システムにおける陸上生態系によるフィードバック機構を明らかにすることを目的とし、群落スケールにおける相互作用、領域スケールヘの集積過程、大陸規模でのモデル検証に関する研究を進めてきた。得られた主な成果は以下の通りである。(1)北海道大学雨竜試験地における現地調査の結果、北方林で顕著に見られるような、林床にササ等の下層植生が密生する林分においては、土壌中の資源を巡る上層木と下層植生との競争が、群落構造の形成に重大な影響を及ぼすことが明らかとなった。そのため、従来は無視されることが多かった林床下層植生の役割を、特に北方林における環境変動と森林動態の研究では、十分考慮に入れる必要のあることが示唆された。(2)気候−陸上生態系間の動的な相互作用過程(フィードバック)を表現することのできる陸面モデルのプロトタイプが開発された。このモデルは、スギ及びカラマツの人工林に適用され、単一樹種林分における植物個体群動態に関する観測データをよく再現することが確認された。さらに、このモデルは樹種間の競争過程が表現されるように拡張され、広範な生態系への適用が可能となり、これによって広域へ適用するための準備が整えられた。また、アジアの代表的陸面形態の一つである水田生態系に関して、その特徴である湛水層の熱的影響を陸面モデルに適切に導入する手法が開発され、それによって実際の水田での観測値が再現されることが示された。(3)複雑地形上における生態系フラックスの領域スケールヘの集積過程を解析するため、大気のLES(Large Eddy Simulation)モデルを開発して山岳地形に応用した。計算された山岳周辺の風速場を風洞実験による測定データと比較することにより、モデルの性能を検証し、必要な改良を行った。また、シミュレーションの結果、山岳周辺での物質(CO2など)の輸送には熱的な影響よりも力学的影響が大きいことや、剥離流や地表面粗度の影響を受けて物質濃度が著しく変動する領域が地表面付近に形成される様子が明らかとなった。(4)陸面モデル
を、河川流量データを用いて広域スケールにおいて検証することを可能にするための予備的研究を行った。その結果、モデル検証のためには、陸面水収支に関する長期シミュレーションを実行する必要があるが、その際に必要となる大気外力データのうち、特に降水量についてはシミュレーション結果の敏感度が高く、統計学的な手法を用いて入念にデータを作成しなければならないことが明らかになった。また、今後行われることになる各種陸面モデルの検証作業に供するため、世界中の大河川における流量データが取り揃えられた。


[キーワード]

 陸面モデル、スケールアップ、モデル検証、現地観測、気候−生態系相互作用