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[B−1 気候変動の将来の見通しの向上を目指したエアロゾル・水・植生等の過程のモデル化に関する研究]

(1)対流圏エアロゾルおよび対流圏オゾンの気候影響に関する研究


独立行政法人国立環境研究所

 大気圏環境研究領域大気物理研究室

神沢博*日暮明子*・野沢徹*

 *地球温暖化研究プロジェクト気候モデル研究チーム併任

東京大学気候システム研究センター

中島映至・高橋正明・須藤健悟

九州大学応用力学研究所

竹村俊彦


[合計予算額]

 平成12-14年度合計予算額 40,116千円
 (うち、平成14年度予算額 14,795千円)

[要旨]

 本サブテーマでは、人為起源の対流圏エアロゾルと対流圏オゾンによる気候変化の不確定性を明らかにすることを目指し、輸送過程と化学反応などを組み込んだ全球気候モデルによって、二酸化硫黄、炭素等の排出に対応したエアロゾル・オゾン分布を得ること、ならびに、エアロゾル分布や雲の効果を取り入れ、その不確定性を考慮し、地球温暖化物質の増加時の全球気候モデルによる気候変動の評価を行うことを目的とし、以下の成果を得た。(1)放射強制力に関するエアロゾルの直接効果(エアロゾルそれ自身が太陽放射を散乱・吸収する効果)および間接効果(エアロゾルが雲の凝結核となることによって雲の光学的・微物理学的特性を変化させる効果)につき、全球3次元エアロゾル輸送・放射モデル実験解析および衛星データ解析により、理解を深めた。直接効果につき、エアロゾルモデル解析の結果、エアロゾルの正味の冷却効果は、IPCC(2001)1)の評価値よりも小さい可能性があることがわかった。間接効果については、依然として多くの不確定要素が含まれているものの、間接効果は直接効果よりも放射強制力が大きいという結果が得られた。(2)改良開発した全球3次元エアロゾル輸送・放射モデルについて、東アジア域に着目してモデルによるシミュレーション結果の詳細な検証を行い、良好な結果を得るとともに、モデルに人為起源物質排出量将来シナリオデータを与えて、エアロゾル分布の予測実験を行い、シナリオによっては、50年後に放射強制力が2倍近くになった。(3)対流圏オゾンと硫酸エアロゾルの気候影響を同時に評価が可能な全球3次元対流圏オゾン光化学モデルを開発し、観測結果と比較し、良好な結果を得た。開発した全球3次元対流圏オゾン光化学モデルを用いて、対流圏オゾンの放射強制力の見積もりを行い、対流圏オゾンがメタンと同等の放射強制力を持つことを示した。対流圏オゾン化学の変動要因に関する実験を行い、エルニーニョ現象による熱帯域東西循環、対流パターン、水蒸気分布の変動が、観測された大規模なオゾン変動の主因であることを示した。(4)将来の対流圏オゾンおよび硫酸エアロゾルの予測シミュレーションを行った結果、対流圏オゾンは、前駆気体の排出量の増加に対してほぼ直線的な増加をすることが示された。(5)衛星リモートセンシングによるエアロゾル種別分類に関し、衛星データから、エアロゾルの光学的厚さ・粒径指標・光吸収性を同時推定するアルゴリズムを開発し、そのアルゴリズムをSeaWiFSセンサーのデータに適用し、砂塵性土壌粒子、炭素性粒子、硫酸塩粒子、海塩粒子の種別分類が可能であることを示した。(6)衛星データによる対流圏エアロゾル光学特性の過去約20年にわたる長期変動の解析を行うため、NOAA搭載AVHRRセンサーの校正の検討を行った。相対校正の方法を確立した。校正係数の絶対値の決定については、克服すべき問題とその解決法を具体的に検討した。


[キーワード]

 エアロゾル、オゾン、放射強制、衛星、モデル