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独立行政法人国際農林水産業研究センター |
国際情報部 |
銭 小平・小山 修 |
農林水産省農林水産政策研究所 |
国際政策部 |
水野正己・井上荘太郎 |
独立行政法人農業環境技術研究所 |
生態系影響ユニット |
小林和彦 |
京都大学農学部 |
堀江武・福井捷朗 |
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国際環境研究協会 |
重田佳美・吉野正敏 |
平成ll〜13年度合計予算額 49,729千円
(うち、平成13年度予算額 15,988千円)
アジア地域の食料生産は稲作を中心に発展してきた。世界の半分を占める人口は依然増加しており、経済発展による所得の増加を加えると、2050年までに食料の需要量が現在の2倍に達すると指摘されている。土地資源はすでに限界にきている中で、水資源の問題など農業資源の変動をめぐる問題はアジアの食料安全保障に大きな影響を及ぼす。本研究は、モンスーンアジア稲作社会の特殊性に着目し、環境変動に関連して長期的な持続的農村杜会システム、食料安全保障のあり方について様々な時間的、空間的尺度で広範な視点から検討し、過去における食料飢饉、農村文化の崩壊などのメカニズムについて解明した。また環境変動・環境問題の深刻化と食料需給構造・社会構造の相互影響メカニズムの定量的把握とモデル化・将来予測を試みた。さらに作物モデルの結果を広域に適用する手法を開発するため、大気・輸送モデルを用いた数値シミュレーションによる地表オゾン濃度を推定し、米の生産力に及ぼすオゾンの影響を評価した。
その結果、中国北部の食料主産地である山東省では、水資源の供給が農業生産の維持に不可欠な条件となっており、他用途への利用の増大が将来の食料需給状況の悪化をもたらすことを示した。また、中国におけるオゾン濃度の増加は1990年において長江流域を中心にすでにlO%以上の稲潜在生産力を減少させていることを推計し、2020年までに予想される一層の濃度上昇が稲生産力に深刻な影響を及ぼす懸念を示した。さらに、東北タイにおける塩害が農業生産力の減少のみならず労働力の域外移動の要因となっている可能性を示した。一方、インドネシア、ベトナム、タイの地域比較検討により、降水量変動が食料安全保障上の主要因であることを示すとともに、エルニーニョなどの気候変動に対する多様な農民の対応が明らかとなり、石灰岩地質等地域の特殊な条件を加味した対策が必要なことを示唆した。
食料安全保障、食料需給モデル、稲作社会、モンスーンアジア