![]() |
![]() |
![]() |
厚生労働省国立社会保障・人口問題研究所 |
|
国際関係部 第1室 |
千年よしみ |
第2室 |
阿部 彩 |
人口構造研究部 第1室 |
清水昌人 |
(財)アジア人口・開発協会 |
中山太郎 |
(研究協力機関) |
|
日本貿易振興会アジア経済研究所* |
|
開発研修室 |
早瀬保子 |
早稲田大学* 人間科学部 |
嵯峨座晴夫・店田廣文 |
神戸大学*経済学部 |
高橋眞一・中川聡史 |
*:平成12〜13年度参画 |
平成11〜13年度合計予算額 34,617千円
(うち、平成12年度予算額 11,373千円)
本サブプロジェクトは、アジア諸国において持続可能な都市化の脈絡における人間・環境の両面での安全保障を確保するための施策の策定、実施、評価に資するため、農村都市間人口移動と都市環境への適応における各種の人間・社会的リスク、環境・衛生的リスク、環境関連行動に関するミクロレベルの情報を収集し、持続可能な都市化の枠組みに基づく分析によって人間・環境安全保障の概念と評価手法の検討を行うことを目的とした。
本研究では3年間にわたり、文献研究に加え、アジア諸国に関する既存のミクロデータ(「人口保健調査」)の比較分析、フィリピン、タイ、ベトナムの各2都市におけるサンプル調査の実施とそのミクロデータの分析を主として実施した。既存のミクロデータの比較分析の結果、都市居住は女性や子供の健康に好悪両面の影響があることが示された。また、現在の都市居住だけでなく、移動と関連する思春期の都市居住が女性本人とその子供の健康リスクに意外に大きな影響を及ぼすことが示された。さらに、環境衛生要因の種類によっては男児と女児の死亡リスクに逆の影響を及ぼすものも見受けられ、女性の地位の重要性が再確認された。
当プロジェクトが実施したサンプル調査の分析結果から、女性の移動はタイでは家族戦略との関連で行われていることが示唆されたが、フィリピンではむしろ個人の意志で行われている可能性が強いことが示唆された。また、フィリピンでもベトナムでも恵まれた社会経済的階層の女性の方が物理的環境に対する満足度が高いが、これは環境条件に恵まれた地域・住宅に居住していることによる可能性がある。
フィリピンとタイの2都市におけるサンプル調査データの分析によれば、フィリピンでは非移動者の方が交通手段として自家用車等の非公共交通手段を使う傾向が強いが、タイでは移動者と非移動者と移動者に大きな差はみられなかった。しかし、いずれにおいても高所得階層が非公共交通手段を使う傾向が強く、資源多消費的であることが示唆された。
本研究の結果から、アジア地域において持続可能な都市化の脈絡の中で人間・環境の両面での安全保障を確保するためにはミクロレベルでの女性の社会経済的地位や人口移動の影響が無視できない要素であることが明らかになった1)。
アジア、持続可能な都市化、女性の地位、人口移動、都市環境への適応、人間・環境安全保障