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[A−1 オゾン層の回復を妨げる要因の解明に関する研究]

(2)成層圏の冷却化に伴う極成層圏雲の組成及び反応の変化に関する研究


独立行政法人産業技術総合研究所

 

 

環境管理研究部門

環境分子科学研究グループ

佐藤優・瀬戸口修

環境管理研究部門長

 

指宿尭嗣

東京大学大学院工学研究科

幸田清一郎


[平成11〜13年度合計予算額]

 平成11〜13年度合計予算額 26,900千円
 (うち、平成13年度予算額 8,044千円)

[要旨]

温室効果気体増加により増加が懸念され、オゾン層破壊の定量化に不可欠である極成層圏雲(Polar Stratospheric Clouds;PSCs)の組成及び不均一反応の解明を目的とした一連の室内実験を実施した。PSCsの平均粒径は小さいが、15μm程度に達する硝酸を包含した巨大粒子も見出されており、遠隔赤外分光観測スペクトルに影響している可能性がある。光散乱が卓越する条件を摸擬した高角度反射FTIR光学系で得られるスペクトルは、観測されたPSCsの赤外スペクトルを良く再現するが、スペクトルは粒子と空気との実屈折率が一致するところで透過率が増大するクリスチャンセン効果によりキャラクタライズされることが分かった。クリスチャンセン効果の出現する帯域は物質固有であるが、PSCs同定に対する可能性を実験的に検討した結果、PSCs組成同定はほぼ可能であろうと結論された。極成層圏条件で存在が予想されるハロゲン酸化物及びそのラジカルの検出・測定技術が確立されていないことから、CIOx,BrOxラジカルの検出法として、負イオン質量分析法の検討を行い、CIO3-,CIO4-の負イオンが気相に安定に存在することを示した。成層圏の冷却化で増加が予想される反応性ハロゲン類の大気化学を検討するため、ヨウ素の気液界面の取り込み過程を実測し、塩素、臭素についてはヨウ素の結果から推定した。測定結果は近年のモデル研究と一致し、ハロゲン分子種の取り込みはかなり小さいことが明らかになった。PSCs上の活性窒素酸化物の挙動解明のため、lOOK程度の低温で作成した氷薄膜にNO2を吸着させ、193nmで光脱離させて脱離化学種の飛行時間分析を行った。主要脱離生成物はNO2、NO、O2であり、NOの飛行時間スペクトルは1700Kと100Kの2成分からなる。脱離の収率やNOの2成分間の比率は氷の形態に依存し、アモルファス氷の場合に脱離の収率が小さく、氷内部の細孔に捉えられたN2O4からの光解離生成物の脱離が困難なことが主要原因である。PSCsにおいてもその形態まで考慮した不均一反応の理解が必要であると推定される。


[キーワード]

 極成層圏雲、クリスチャンセン効果、負イオン質量分析、取り込み、表面光脱離