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[農林水産省養殖研究所] |
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日光支所 繁殖研究室 |
●生田和正 ・ 北村章二 |
育種研究室 |
●矢田 崇 ・ 東 照雄 |
[農林水産省中央水産研究所] |
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内水面利用部 漁場環境研究室 |
●伊藤文成 ・ 村上眞裕美 ・ 山口元吉 ・ 西村定一 |
東京大学海洋研究所 |
●金子豊二 |
長崎大学水産学部 |
●征矢野清・石松 淳 |
長崎大学環境科学部 |
●長江真樹 |
北里大学水産学部 |
●岩田宗彦 |
18,842千円
(うち、平成12年度予算額 9,376千円)
陸水の酸性化が魚類生態系へ与える影響を解析するための評価手法を確立し、野外調査への応用を試みるため、魚類の酸性環境への応答反応を調べ、その生理・生態学的メカニズムを解析するとともに、それらを生物学的指標として中禅寺湖流入河川でのサケ科魚類への影響調査を行った。その結果、以下のことが明らかになった。①ブラウントラウトはヒメマスと同様 pH 6 台の弱酸環境で繁殖行動に影響が現れたが、イワナはそれよりも耐性が高かった。②中禅寺湖流入河川では外山沢川が最も酸性化しやすいが、現時点では酸性雨が降っても中和能によって酸性化には至らず、魚類の産卵遡上行動や生理機能へ影響は現れなかった。しかし、源流部は河口部より電気伝導度が低くイワナしか生息しておらず、さらに調査の必要がある。③酸性ストレスは、未熟コイの内分泌機構を撹乱し、血中コルチゾルと同時に雌性ホルモンの分泌を促進した。④影響評価数値モデルを確立し影響予測を行い、ヒメマスは pH5.5 で個体群に大きな影響が出るという結果となった。⑤恐山湖の耐酸性ウグイの塩類細胞から、H+の排出機能分子の遺伝子をクローニングし、魚類の耐酸性機構を明らかにした。⑥酸性水暴露は、ウナギの心拍を低下させることを明らかにした。⑦サケ稚魚の海洋への降河回遊期には酸性ストレスは免疫能を高めるが、時期を過ぎスモルトが退行すると逆に免疫能が低下することから、海水適応能と耐酸性の間に相関があることが明らかとなった。これらの結果から、魚類生態系への酸性雨影響評価指標策定に資する基礎データが集積し、実際野外調査に応用できることが明らかとなった。
繁殖行動、影響評価モデル、耐酸性機構、酸塩基平衡機構、免疫機能