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[環境省国立環境研究所] |
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地球環境研究グループ 温暖化現象解明研究チーム |
●野尻幸宏、向井人史 |
(委託先) |
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東海大学海洋学部海洋工学科 |
●久保田雅久 |
65,415千円
(うち、平成12年度予算額 14,461千円)
国立環境研究所地球環境研究センターで行っている定期貨物船による北太平洋高緯度域のCO2分圧観測のデータを解析した。海水−大気のCO2分圧差(△pCO2)の季節変化を関数化して、海洋グリッド毎に結果を解析した。多くの海域で年間1周期の調和関数成分が卓越する。しかし、本州東方海域では年間2周期成分が強く、春と秋に△pCO2が低下する。千島・カムチャッカ半島沖の西部亜寒帯循環海域とベーリング海では、3月に△pCO2最大、9月に最低となるはっきりとした季節変動が認められ、春季の生物生産とともに△pCO2が低下し、冬季の鉛直混合にともない△pCO2が上昇することがわかった。これに対し、東部北太平洋高緯度海域のアラスカ湾では、季節変動幅が小さく、年間を通して△pCO2はゼロないしわずかにマイナスであった。北太平洋中央部中緯度域では、5月に△pCO2最大、11月に最小の季節変化を示し、水温変動に伴う変化が卓越することがわかった。全季節を通した平均では、亜寒帯循環の北の縁辺を除くと正味のCO2吸収があることが明らかになった。衛星観測で得られる風速を用いると、対象とした海域である北太平洋北緯34度以北の正味のCO2吸収量は、年間0.34GtCであることが明らかとなった。
CO2吸収・放出過程と生物化学過程の関連を解析した。全季節のデータが高頻度で得られる高緯度北太平洋のカナダから日本への西向き航路のデータを用いた。海洋のCO2分圧データと栄養塩である硝酸のデータの季節変化とその間の相互関係に注目した。その結果、海域のpCO2と硝酸のデータには正の相関が見られたが、その勾配は海域で一定していなかった。そこで、pCO2の測定値をその海域の平均水温で規格化したところ、温度補償pCO2と硝酸の関係に、よりよい正の相関があることがわかった。また、温度補償pCO2と硝酸の勾配は海域によらず一定であり、生物粒子の炭素/窒素比と矛盾しないことがわかった。このことから、高緯度北太平洋のpCO2の季節性が、主として春から夏の生物生産と冬の鉛直混合で支配されていることが明らかになった。
二酸化炭素、海水中分圧、北太平洋、高頻度時系列観測、時空間分布