気候変動枠組条約第13回補助機関会合・第1部(注1)
(9月11日〜15日、於:リヨン)
評価と概要

平成12年9月20日
日 本 政 府 代 表 団

1.評価

(1)地球温暖化問題に対処するための気候変動枠組条約に関し、本年11月にハーグ(オランダ)で第6回締約国会議(COP6)が開催される予定であるが、その最大の焦点は、97年の京都会議(COP3)で採択された「京都議定書」(注2)の詳細につき締約国間で決定を行い、同議定書を各国が批准可能なものとできるか否かにある。

(2)今次第13回補助機関会合は、COP6前の最後の公式な準備会合であったが、殆どの議題に関し交渉テキストが準備され論点が明確化されるとともに、技術的論点について整理が進むなど手続的に一定の進展をみることができた。

(3)他方、京都メカニズムの使用に制限を設けるか、森林等の吸収源の範囲、 算定方法をどう定めるか、途上国への支援パッケージをどうするか等、 締約国間(特に日米を中心とする非EUグループ、EU、及び途上国との間)において意見を異にする議題は依然多い。今後は、COP6にお ける閣僚レベルでの政治的論点の決着を念頭に、その前に開催される種々の事務レベル会合等を通じ、各議題につき、交渉を本格化させる必要がある。


(注1)気候変動枠組条約第13回補助機関会合(SB13)
  第13回補助機関会合は2部構成となっており、第1部は9月11日から15日まで、第2部はCOP6期間中(11月13日から24日)の第1週に行われる。

(注2)京都議定書
  地球温暖化防止のため、二酸化炭素等の温室効果ガスの削減等につき、先進国に対し数量目標の達成を義務づけている(日本:6%、米:7%、EU:8%)。また、右数量目標を達成するための柔軟措置として「京都メカニズム」(排出量取引、共同実施、クリーン開発メカニズム)を設けており、その詳細についてはCOP6で決定されることになっている。

2.概要

(イ)京都メカニズム
  議長ノートに基づく議論が一通り終了し、最終日に会期中の各国コメントを踏まえた新たな議長ノートが配布された。本議長ノートでは、COP6で決定として合意すべき要素であると議長が判断した部分について強調標記されているなど、問題点の収束を図ろうとする議長の姿勢は評価できる。しかし、各グループ間の意見の対立は依然大きく、しかもこの議長ノートは163ページに達しており、COP6で決定を得るためには、他の議題よりも一層の交渉進展が求められている。

(ロ)遵守制度
  組織的事項、手続的事項の議論が終了するとともに、遵守委員会に二つの下部組織を作ることにもほぼ同意しており、着実に議論は進んでいる。また、不遵守の帰結については、10月の非公式協議に向けて、各国の提案・立場を明確化させるなど、一定の成果があった。なお、帰結について法的拘束力のないものを明確に支持しているのは日、豪、露であり、法的拘束力のある措置を支持する国ないし立場の明らかでない国が多い。

(ハ)吸収源(シンク)
  二酸化炭素等の吸収源として京都議定書第3条3で認められる活動(植林、再植林、森林減少)の定義、同議定書第3条4で認められるその追加的活動(農地土壌、林業等)の内容、及び吸収量の算定方法等につき、今次会合において共同議長テキストが出された。このテキストにおいては第3条3について我が国の主張が併記で取り入れられている。なお、吸収源に対する各国の立場は依然として異なっており、議論が収束していない。また、クリーン開発メカニズム(CDM)の対象に吸収源関連事業を含むか否かについても今後の課題。

(二)議定書第5条(排出量の推定),7条(情報の送付)及び8条(レビュー)
  ガイダンス、指針等に関する議論が着実に進展し、COP6決定案も提示されている。なお、2005年までの「明らかな前進(demonstrable progress)」 について、EUが国別報告に含める補足的情報として7条で扱うべしと主張している。

(ホ)条約第4条8及び9(「気候変動による悪影響」及び「気候変動対策による悪影響」)
  会期間中に出された議長ノートにて議論を行ったが、今回の交渉において、SB12で一枚岩になったやに見受けられたG77及び中国について、交渉の進展に前向きな最貧国及び小島嶼国連合が産油国とはある程度距離を置いた動きを示した。これは、今後の交渉にとって、前進であるが、補償を求める産油国やそれと共同歩調をとって対応措置の悪影響や適応措置で出来る限りだけ多くの支援を得ようとするほとんどの途上国と先進国との溝は縮まっていない。

(ヘ)技術移転
  途上国が提出した技術移転に関するCOP6決定案においては、何十億ドルという金額の明示を含む新規の資金メカニズムなど、先進国への過度の要求がおこなわれており、先進国として受け入れられないものとなっている。他方、キャパシティビルディングについては、「追加的資金を確保する」「最貧国向け基金の設立」との文言が残ってはいるものの、着実に議論が進展している。また、資金メカニズム(地球環境ファシリティ(GEF)へのガイダンス)について、先進国、途上国が一致して検討を開始したことは途上国パッケージの形成へ向けての一歩として評価される。

(ト)政策措置
  COP6決定案について検討を行い、政策・措置に関する情報交換等を継続する必要性については意見の一致を見た。しかし、2005年までの対策の評価の扱いについては、各国間で意見が異なるなど、今後COP6に向けて調整が難航することが予想される。

(チ)その他(交渉グループの動向)
  なお、今次会合において、最貧国が独立したグループを形成することとなった。また、スイス、韓国、メキシコが環境保全(Environmental Integrity)グループを形成することとなった。

(了)