地球温暖化対策推進大綱

−2010年に向けた地球温暖化対策について−


平成10年6月19日
地球温暖化対策推進本部決定

施策の体系
第1.基本的な考え方
  1. 地球温暖化は現在の人類の生活と将来の人類の生存に関わる深刻な問題である。我々は、本問題の究極的な解決に向け、叡智を結集しなければならない。
     1992年のリオ・デ・ジャネイロにおける地球サミットにおいて、地球温暖化対策に最大限努力すべく気候変動に関する国際連合枠組条約への署名が開始され、1994年に発効した。この条約の実効性を担保し、世界各国が協調して地球温暖化防止への取組を加速的に進めるため、1997年12月、京都において気候変動に関する国際連合枠組条約第3回締約国会議が開催され、京都議定書が採択された。
     京都議定書においては、先進国全体の温室効果ガスの排出量を、2008年から12年までの期間中に、1990年の水準より少なくとも5%削減することを目的として、先進各国の削減目標を設定し、我が国は6%削減を世界に約束した。

  2. エネルギー効率が既に世界最高水準に達している我が国にとって、この目標を達成することは容易ではない。しかし、地球温暖化問題の解決に向けた取組は、環境と調和した循環型の経済社会を構築し、持続可能な経済社会の発展が可能となるために必要不可欠である。国民の理解と協力を得て、官民を挙げて地球温暖化対策を強力に推進していかなければならない。
     このため、政府においては、国民各界各層の参加や協力が得られるような取組の強化を図るとともに、あらゆる政策手段を動員して、着実に削減が達成されるよう総合的な施策を計画的に推進する。

  3. このような認識の下、2010年に向けて緊急に推進すべき地球温暖化対策として本大綱を策定した。政府は、本大綱に従って、地方公共団体、事業者及び国民と連携しつつ、以下の対策を推進する。


  4. 本部は、本大綱の着実な実施を図るため、毎年、地球温暖化対策の具体的措置の推進状況を点検し、必要に応じその内容の見直しを行う。その際、地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議において、地球温暖化対策として講じる個別の措置の進捗状況について、委員の意見を聴取する。

第2.講ずべき地球温暖化対策
  1. 6%削減目標の達成に向けた方針
     京都議定書における我が国の6%の削減目標については、当面、次の対策により達成していくこととする。


  2. 地球温暖化対策の総合的推進
     国、地方公共団体、事業者及び国民それぞれの責務と取組を定めた「地球温暖化対策の推進に関する法律案(地球温暖化対策推進法案)」(1998年4月28日閣議決定)に基づく対策を円滑に推進するための基礎を直ちに整え、その成立後速やかに以下の取組を進める。


  3. エネルギー需給両面の対策を中心とした二酸化炭素排出削減対策の推進
     二酸化炭素の排出削減を図るため、その排出抑制に向けての長期的なエネルギー需給の見通しに配慮しつつ、産業、民生、運輸の各部門における抜本的な省エネルギーを図るとともに、新エネルギーや安全に万全を期した原子力の導入を促進するなど、エネルギー需給両面にわたる対策を強力に推進する。

    <エネルギー需要面の二酸化炭素排出削減対策の推進>

    <エネルギー供給面の二酸化炭素排出削減対策の推進>


    <その他の二酸化炭素排出抑制対策の推進>


  4. その他の温室効果ガスの排出抑制対策の推進


  5. 植林等の二酸化炭素吸収源対策の推進


  6. 革新的な環境・エネルギー技術の研究開発の強化
     2010年に向け、現在の想定を超えた技術革新を実現するため、超臨界流体利用技術等のエネルギー利用部門における省エネルギー関連技術や超高効率太陽光発電等の現在の技術水準を超えた革新的技術開発を強力に推進する。
     また、地球温暖化問題の究極的な解決に向けた対策を強力に推進するため、地球温暖化防止上の効果を期待した革新的な水素製造技術や二酸化炭素の貯留・固定化技術等の技術開発、エネルギー利用効率を改善する超鉄鋼、超耐熱材料等の研究開発を計画的に実施する。さらに、新たな政策を円滑に実施するための政策提案に向けて地球温暖化対策の戦略作りのための研究を推進するとともに、資源の循環やエネルギーの消費抑制・効率的利用を促進する仕組みの構築を戦略目標とする基礎研究等を推進する。
     加えて、地球科学技術に関する研究開発基本計画の達成状況の点検を行い、更なる強化を図る。

  7. 地球観測体制等の強化
     地球温暖化現象の解明等に関する研究を推進するとともに、地球規模の環境変化を正確に観測・監視するため、総合的な地球観測体制の整備・強化を図る。また、地球環境に関する情報を整備し、その流通を促進する。

  8. 国際協力の推進


第3.ライフスタイルの見直し

  1. 夏時間(サマータイム)の導入についての国民的議論の展開
     社会全体が夏季の朝夕の日照などを有効に活用するシステムに切り替え、人々が自ら地球環境にやさしいライフスタイルを工夫し、実現するきっかけとなる「夏時間」の導入についての多面的な議論を行う。具体的には、1998年夏から「地球環境と夏時間を考える国民会議」(仮称)を開催し、国民、事業者、国、地方公共団体など関係者の参加により、「夏時間」の導入と地球環境にやさしい生活のあり方について国民的議論を行い、1998年度中を目途に結論を得る。

  2. 自転車の安全かつ適正な利用の促進に向けた環境整備
     交通渋滞等の緩和につながり、化石エネルギーを消費しない自転車利用の促進のため、自転車利用に配慮した道路、自転車駐車場等の社会インフラの整備を図るとともに、特定線区において車両空間の余裕を活用した鉄道車両への自転車持ち込みを容易にするなど、自転車利用の拡大につながる社会環境の整備を行う。また、市町村における自転車の駐車対策に関する総合計画の策定を促進する。

  3. 教育・啓発及び情報提供体制の整備


  4. 政府の率先実行
     政府は、事業者・消費者として、地球温暖化対策に率先して取り組む。
     具体的には、1) 公用車について基本的に低燃費・低公害車を購入する、2) 官庁舎、学校等の公共施設に可能な限り太陽光発電システム等の新エネルギーを導入する、3) 環境配慮型官庁施設(グリーン庁舎)の整備を推進する、4) 霞が関において自転車の共同利用を積極的に導入する、5) 毎月第一月曜日に公用車の使用を原則自粛する(霞が関ノーカーデー)、6) フロン系冷媒の回収を徹底するとともに、エアゾール製品について非フロン系製品の購入・使用を徹底するなどの対策に重点的に取り組む。
     また、これらの取組について、地方公共団体、民間団体等の理解を得ながら、その普及を図る。

  5. 地球温暖化対策を進める緑化運動の展開
     二酸化炭素の吸収源の拡大を図るため、1) みどりの週間(4月23日〜29日)、都市緑化月間(10月)等における国民的緑化運動の展開、2) 緑の募金による森林づくり活動への支援や都市緑化基金の活用等による民間緑化活動への支援、3) 森林インストラクター、樹木医、緑の少年団を活用した国民参加の森林づくりの推進、学校林の活用、樹木の二酸化炭素吸収量調査を通じ小中学生への啓発を図る「こども葉っぱ判定士」事業の実施、野鳥やトンボなどの生物が生息できる空間(ビオトープ)づくりなどの国民参加型の緑化運動を積極的に展開する。

  6. 社会システム変革に向けたモデル事業の実施
     関係省庁が一体となって、地方公共団体等とも連携し、既存施策を有効に活用して、地域において、1) 新エネルギー関連施設の整備、2) 自転車利用促進のための道路環境等の整備、3) 公共交通機関利用促進のための社会基盤整備、4) 環境にやさしい交通管理、5) 情報通信を活用した遠隔勤務、6) 環境にやさしい生活(エコライフ)や夜間照明の適正化の実践、7) 地域材の住宅への活用や里山林の整備、8) 道路交通混雑の緩和のための時差通勤の促進、9) 夏季等長期の連続休暇の普及・拡大など、国民の参加を得た先駆的な地球温暖化対策モデル事業を集中的に行い、その成果を検証し、地球温暖化対策の効果的な推進を図るための大規模な社会実験を行う。


▲戻 る