地球温暖化対策推進本部
事務局だより
第20号(最終号)
地球が発熱!あなたが止める温暖化
「エコライフ・100万人の誓い」現在の参加者413,198名 今すぐ参加しよう!
1997年(平成9年)12月24日(水)発行
発行:環境庁 地球温暖化対策推進本部事務局
〒100 東京都千代田区霞が関1-2-2
TEL 03-3581-3351(代表)03-3581-9479(直通)FAX 03-3581-9746
このニュースレターは、地球温暖化防止京都会議(UNFCCC-COP3)
に向けた様々な動きに関する最新の情報をお伝えするものです。ご意見ご感
想などございましたらぜひ当事務局までお寄せ下さい。
地球温暖化防止京都会議、京都議定書を採択して閉幕
7月15日に当事務局ができてから毎週発行しておりました(最後は1ヶ月ぶりとなってしまいましたが)事務局だよりも、本日の当事務局の閉鎖とともにその幕を閉じることとなりました。半年間のご愛読ありがとうございました。
大木浩環境庁長官のことば
  拝啓

寒さも一段と増してまいりましたが、ますますご健勝のことと存じます。
さて、地球温暖化防止京都会議につきましては、京都議定書を採択し、成功裏に閉会いたしました。一万人近くが参加し、連日、文字どおりの不眠不休での作業を迫られた、大変な会議でございましたが、なんとか議長の大役を果たすことができましたのも、日頃の御指導、御鞭撻の賜と、心より感謝申し上げます。

二酸化炭素等を長期的には大幅に削減しなければならないことが、科学的にますますはっきりしてくる中で、今回の議定書策定にあたっては、各国の努力の衡平性、対策の効果、実行可能性、国際競争力への影響といった角度から、各国が極めて率直な意見の応酬をし、厳しい調整が必要になりました。しかし、先進各国が苦しみを分かち合えば、一層の対策ができるものとの気持ちが共有されたのでしょう。最終的には、御案内のとおり、先進各国の法的拘束力のある削減目標が合意されました。全会一致で議定書を採択したときには、正直に申し上げて、いわば人類全体の意志といったようなものを実感でき、感激をいたしました。

二酸化炭素は、現代社会の血液とも言えるエネルギーを利用することに伴って不可避的に排出されるものです。京都議定書は、この二酸化炭素などの各国の排出量に対し必ず守らなければならない上限を設けるものです。言い換えますと、これからの経済には環境の枠といったものが課せられることになります。その枠の中で、地球の自然と共生できる持続可能な活動を営む時代に入ることとなります。

京都議定書を取りまとめた我が国としては、この議定書に盛り込まれたことを率先して実行していく責務があります。私としては、引き続き、環境庁職員の先頭に立ち、年末の予算編成への反映をはじめ、国内対策の充実強化に邁進する所存であります。また、来年の第四回締約国会議に向けては、同会議において新議長が選ばれるまで本条約締約国会議議長として、私は、京都議定書の早期実施に向けた国際的検討が進展するよう、また、途上国を含む全世界的な取組を一層進展させるための基礎づくりに対し、微力ながら、力の限りを尽くしたいと存じます。

課題山積ではありますが、今までの常識にとらわれることなく、また小手先の対策に依存することなく、問題の根本から取組を起こしていけば、必ずや、人類の試練を乗り越えることができると存ずる次第です。また、その中で、国際社会のニーズによりよく応え得る活力ある日本を築くこともできるものと信ずる次第です。

私どもとしても、課題解決に向けて誠心誠意努力してまいりますので、どうか引き続き御助力を賜りますようお願いいたします。

書面にて大変失礼とは存じますが、取り急ぎ、御報告かたがた御礼並びにお願いを申し上げます。
末筆ではございますが、寒さのみぎり、御自愛の上、ますますの御発展をなされますようお祈りいたします。

敬具  
平成九年十二月 吉日

国務大臣                  
環境庁長官               
地球環境問題担当          
大木 浩    

各位

京都会議・舞台裏投稿特集
京都会議では、異論反論さまざまあれど、何はともあれ法的拘束力を持つ
京都議定書が完成しました。未来の地球環境を考える高尚な交渉の裏には
々なエピソードがありました。今明かされる笑いや涙にあふれるそんな裏
の数々。当事務局員からの投稿です。どうぞ肩の力を抜いてお楽しみ下さい



☆おこしやす京都へ“レセプション”京都会議開催中、世界中から集まった参加者を歓迎していくつかのレセプションが開催されました。


スペシャルゲスト名札100枚事件

環境庁でも、12月1日の議長主催レセプションと9日の環境庁長官主催レセプションを行ったが、こういうレセプションには会議参加者以外の方もご招待している。このような方のために国際会館に入るために「スペシャルゲスト」という名札を用意しなければならない。
この名札は国連の条約事務局のLさんが担当で、当事務局の担当者が12月1日の分を安全を見て100枚の名札を依頼すると、粛々と100枚用意された。当日の受付は当事務局担当者が受け持ったのだが、親切にもLさんは手伝ってくれた(100人もくるのでは大変だと思ったのだろう)。さて、受付が終わってみると、実際に使ったのは7枚だった。手間をわびる当事務局担当者にLさんは「おかしいなと思ったけど自分の名札を忘れる人もいると思ってたくさん作ったのよ。コンピューターで作るから簡単よ。」と慰めてくれたという(あとで酒が入ってから「あんたどうかしてるわ」と言っていたともいう)。
さて、事態を重く見た当事務局では、Lさんと懇談。某氏がフランス語を駆使して他者を圧倒する場面もあったが、前回の非礼をわびるとともに、9日の分についてよろしくお願いし、今回は30枚でよい旨伝えた。数日後、外務省から連絡があった。「条約事務局からスペシャルゲストの名札が100枚届いております・・・」
ちなみに9日に使用したのは2枚であった。 (Tomo)


おそるべし参加者の食欲

さてその9日のレセプションですが各国を代表する大臣や外交官、環境の専門家、NGOの職員など、どちらかというと上品な人が多いと言うこともあって、レセプションもきっとゆったりとしたものになると普通は考えます。しかし、現実は時に予想をはるかに上回るもの、参加者の食欲は凄まじいものでした。レストランの責任者が、通常なら3時間は持つと太鼓判を押すくらいの量の料理を用意したのに、1時間ですべてなくなる。刺身のつままできれいに平らげられる。さすがにレストランの責任者も、驚きを隠せませんでした。実はこれにはいくつかの要因が考えられます。会場周辺にはあまり多くのレストランがなかったこと、会議の連続で食事に十分の時間を割くことができない人も多くいたこと、参加者の中には食事の値段を高いと感じた人もいたことなどですが、やはり日本食自身随分国際的になったと言うこともあるようです。刺身をおそれる人はほとんどいませんでした。 (Yuki)



☆会議を盛り立てたワークショップと展示

私からは、本紙第19号にて既報済みですが、COP3開会中に合わせて、国立京都国際会館にて開催されたワークショップ「地球温暖化対策に関する日本の経験」と、同テーマの展示について報告します。
まず、ワークショップについてですが、12月2日、国立京都国際会議場内の会議室で、昼間の第1部(13:00−15:00)と夕方の第2部(18:00−20:00)の二部構成で開催されました。主催については、環境事業団など当庁関係の5法人が名を連ね、司会進行については、第1部は内藤正明京都大学教授、第2部は佐和隆光同大学教授といった豪華メンバーで行われました。第1部、第2部とも、地方公共団体、環境NGO、企業など、我が国にて地球温暖化対策取り組んでいる主体からの発表と、それを受けた質疑応答及び討論という形式で進められました。2日目という会議開催直後で皆の関心が京都会議そのものに向いていたときであり、昼と夜の2部構成と強引な時間割り振りを行ったにも関わらず、第1部、第2部合わせて、外国NGOを含む計200人ほどの出席者が得られました。
結果については、現在、それぞれの発表のレジュメを綴じた資料と、議論の内容をまとめたサマリーなどをひとまとめにした冊子を作成中です。
次に展示の方はと言うと、会議場内の2FルームAの前に、2,7m X 7,3mのスペースを確保し、「地球温暖化対策に関する日本の経験」と銘打ち、ワークショップ主催の5団体が中心となって行いました。会議場内にて行われた他の団体の展示は、一様に真面目かつ地味路線のものが中心であったのに比べ、我々の展示物は、環境マンガ、真っ赤に塗った日本地図、幟のような旗、鮮やかな色のキルト、名嘉画伯によるLessCO2のポスターなどなど、照明のちょっぴり暗いスペースを跳ね返すような彩りの展示物が所狭しと並び、独特の自己主張を行っていました。参加者も、会期中の10日間の間、会議場と会議場の間を行き来する移動の際などに、熱心に見入ってくれていました。 (Tac)


振り返ればヒグマ

京都会議を機に、温暖化問題をテーマにした漫画展がいくつか開かれました。会場の京都国際会館の展示スペースの一つには、そのうち外国人に対しわかりやすいと考えられる作品がいくつか展示されました。海面上昇により船でピラミッド観光を行っている場面、海面上昇により危機的状況にあるのに自分の行った予測が正しかったと喜ぶ科学者の姿など・・・。その内の一つが、シロクマが振り向くとそこにヒグマがいたと言うもの。シロクマの驚きの表情と、ヒグマの人なつっこそうな表情が受けていました。実際、このようなことが将来起こった場合、シロクマやヒグマがどのように感じるか興味深いところではあります。現実は、もっと素っ気なく、きっとひたすらアンチドラマティック? (Yuki)



☆キルトは子供達のメッセージをのせて会議直前の11/27〜11/30に京都会議を記念して神戸で開催された「地球環境フェアin神戸'97」では“メッセージキルト”なるものが会場を飾り話題を呼びました。これは日本、中国、アメリカ、オーストラリアの子どもたちが、ノート大の布地に地球温暖化防止のメッセージを描きこんだもの20枚をつなぎ合わせたおよそ2m四方の大きな旗のようなものです。カラフルな彩りと子ども達の素直な気持ちの込められたメッセージキルトは大変好評で、そのままトラックで運びこみ、京都会議でも展示することになりました。


キルト顛末記

キルトはCOP3での展示のため11月30日夜9時、会場に搬入された。政府ブースの環境庁スペースに展示が予定されたが、作成された18枚のキルトすべてを展示するスペースがなく搬入は10枚程度に押さえられた。
いよいよ、展示作業に入ろうかという30日の夜、キルトを床に広げ、展示の組合せを考えているそのとき、国連の条約事務局の担当者Bさんをはじめ数名がこのキルトを目にすることとなった。ここぞとばかりに内容、趣旨を説明する某事務局員、その脇で笑顔を作るのみの私。そして説明を聞き現物を見た彼らは、会場内壁面への掲示を認めてくれたのである。
その後、条約事務局から、国際会館の了解も取り付け正式に了承の旨の連絡をもらった。さっそく残りのキルトを会場に搬入する手筈を整え、展示を待つのみになったが、その間もBさんには顔を合わす度に「いつ展示するのか」と声をかけられ、関心を寄せていただいていることを嬉しく思いながら、いよいよ18枚全部を場内に展示するときがきた。
おもむろに作業を始める関係者達、とある事務局員は自分の語学力に大いに不安があったので、同僚を呼んだ。キルトについて質問されたらきちんと説明をしてあげようと考えたからである。ところがキルトを広げ始めたとたん、話は思わぬ方へ展開していった。国連の警備員2名が、まさに「すっ飛んで」来て作業にストップをかけ、キルトをたたみ始めたのである。呆然とする作業員、許可は得ている。しかし、目の前にいる警備員は本当に怒っている。
某事務局員は「NO,NO,NO」を連発、楽しくキルトの説明をするはずがこんなことになろうとは。一所懸命事情を説明するが取り合ってもらえず「許可証」を出せという。「許可証?」そんな紙はない。やむなく条約事務局のBさんを捜し、説明してもらうこととなった。幸いであったのはBさんは丁度ランチタイムであり、なおかつ国際会館内「グリル」がお気に入りであったことである。
そして我々はBさんと共に堂々と警備員の前に立ち、お力添えを得て問題は解決。無事キルトは会館内を飾ることとなった。
後日談
神戸市から条約事務局にキルト7枚が寄贈され、ボンの事務局で余生を送ることとなった。そして、私も警備員と言葉を越えた笑顔のシェイクハンドでめでたし、めでたしとなったのであった。
残ったキルトの内数枚は、後日環境庁にもお目見えすることとなっている。

(Kazuo)



マスクをした牛

そんなこんなで一騒動あったキルトですが、その内の一つには、牛がマスクをしているところが描かれていました。これは、メタンの排出源の一つが牛のゲップであると言うことで、子供なりにその対策を考えた結果だと思います。条約事務局のPさんは、この絵に描かれたユーモアが大変気に入りました。そして、この絵が描かれているキルトを、条約事務局に持ち帰りたいと希望していました。神戸市のご厚意もあり、このキルトはほかのいくつかのキルトと一緒にドイツに運ばれることになりました。この牛のガスマスクならぬメタンマスクが、ヨーロッパの牛に正しいメッセージを伝えるよう願っているところです。 (Yuki)



☆京都会議での様々なNGOの活躍今回の会議では、今までに類を見ないほどマスコミでも環境NGOの活躍が取り上げられました。

NGOはNGOでも・・・

京都会議開催中、大きなホールの中を人々が行き来するシーンを背景に、アナウンサーが中継しているテレビのニュース番組をご覧になった方も多いと思います。あれは会場内の「イベントホール」という建物で、世界中から集まったNGOやプレスの人達の作業場所となっていました。そこにグリーンやオレンジのカードを付けたNGOやプレスの人達にまぎれ、ピンクの政府代表団カードを下げた人の姿が二、三ありました。気になって条約事務局発行の関係者名簿“WHO IS WHO in the UNFCCC Process”を探してみました。するとどうでしょう、NGOのページに“Environment Agency of Japan”の文字があるではありませんか。彼らはどうもそこの職員のようです。イベントホールの人通りの多いところに案内所よろしく備え付けられた机からは、「前日の会議概要のお知らせ」が飛ぶように売れています(もちろん無料です)。はす向かいに大部屋を構える気候フォーラムのニュースレター“Kiko”と比べても、おもしろさの点では不戦敗ですが、はける枚数においてはタメをはっています。テレビ取材にも答え、「いやあ、これからはパートナーシップの時代ですよ。あっはっは。」とのこと。今後この新しいタイプの組織(NGO/New Governmental Organization)の展開が注目されます。 (Moto)


編集後記
ついに最終号。楽しくも辛かった編集作業。自虐的になったり、愚痴をたれたり、開き直ったりと忙しいものでした。厳しい批評もいただき、ありがとうございました。おかげさまで気が抜けず、休日も(もっとも会議直前は休日もありませんでしたが)頭は事務局だよりのことでいっぱい。思えばこの半年はとても密度の濃い毎日を送り、本当に多くのことを経験しました。今や会議が終わってほっと一息ついていますが、地球温暖化問題への取組はこれからがスタートなのだということを忘れずに、末永く考え、行動していきたいと思っています。将来の世代にツケを残すなんて不本意ではありませんか。なあんて、本当だよ。 (Moto)