「開発プロジェクトの環境影響の評価のための実施要領」

 


経済協力開発機構
1991年 パリ


 I. 序

 II. 環境影響評価の基本目標

  1. 意思決定および実施プロセスへの統合

  2. 環境影響評価が最も必要なプロジェクト

  3. 環境影響適用範囲

  4. プロジェクト・プランニング中の最初の環境影響評価に必要な時間

  5. 環境影響評価のコスト

  6. メンバーの経験

 III. 環境影響評価のための適正実施活動

  1. 共通活動

  2. 基本必要事項

  3. 環境影響評価の責任

  4. 手順上の原則

  5. スクリーニング (選別)

  6. 範囲決定

  7. 地元組織およびターゲット・グループの参加と動機

  8. 環境影響評価レポート

  9. 外部調査

  10. 内部調査

  11. 意思決定プロセス

  12. モニタリングおよび監査

開発プロジェクトの環境影響の評価のための実施要領

 OECD開発援助委員会 (DAC)は、開発援助および環境に関する作業部会を通じて環境および援助に関する多くのガイドラインや勧告を作成してきた。それらは作成され次第DACによって採択されたものであり、事務局長によって公開された。
 「開発プロジェクトの環境影響の評価のための実施要領」は、開発したプロジェクトのうち、その性格、規模、場所の故に環境に大きな影響を及ぼすと考えられるものについては、援助機関に環境影響の評価をするよう勧告している。



Copyright OECD, 1991



開発プロジェクトの環境影響の評価のための実施要領

I. 序


1. OECDのメンバーは「その性格、規模、そして/または場所によっては環境に甚大な影響を与え得る開発援助プロジェクトおよびプログラムについては、出来るかぎり早い時期に、そして環境的視点から適当な程度に評価を行なうことが確保されることで合意した。 (開発援助プロジェクトおよびプログラムの環境評価に関するOECD審議会勧告1985年)

2.また、OECDのメンバーに関してはその開発援助のための環境評価政策の正式な採択計画・実施・監督の時点での責任の明確化をはかるための効果的な手続きの開発、適切な人材と財源が時宜にかない効率的になされるよう確保することが求められている (開発援助プロジェクトおよびプログラム環境評価促進に必要とされる手段に関するOECD審議会勧告1986年)。

3. 二国間および多数国が参加した開発援助に対して、その環境的側面がプロジェクトおよびプログラムの確認、プランニング、実施、評価に考慮されるよう、また、DACが一連の「プロジェクト評価の原則」 (OECD パリ 1988)を展開したことに注目し、OECD審議会は1989年、「二国および多数国が参加した開発援助団体における高位意思決定者の利用可能な環境チェックリスト」に関しての勧告を採択した。3つの審議会勧告のエッセンスは本資料に含まれている。

4. DACメンバーにより採択された「開発プロジェクトの環境影響評価 (EIA)ための実施要領」は以下のような主要な要素を含む。

― 環境の側面はプロジェクトの選択、デザインおよび実施において十分統合されるべきであり、援助プロジェクトの環境面の管理責任も明確にされるべき。
― 1985年のOECD理事会勧告によって特定されたプロジェクトについては少なくともEIAは、スクリーニングとスコーピングともにかならず行なわなければならない。
― EIAは人の健康、自然環境、財産への考えられるあらゆる影響および社会的影響、特に性別が関わる、或いは特定の集団が関わる必要性や環境の変化によって再定住することになる先住民への影響についても考慮しなければならない。
― EIAは代替案、 (「開発せず」の選択を含める)及び必要な移住措置、モニター措置も考慮しなければならない。
― プロジェクトのEIA実施に当たっては、ドナーは「受容可能」、すなわち改善可能なマイナス影響について最小限度の範囲とし、かつプラスの影響を最大化する標準を用いるべき。
― EIAの有効性及び適格性はCESS (国別環境調査及び戦略)があるかないかにより大いに異なる。CESSが存在する場合には積極的に活用されるべき。
 可能な場合、環境面で顕著な影響があると思われるプロジェクトに関する地元住民の見解が得られるように、情報へのアクセスを含め、積極的に措置が取られるべき。
― EIAプロジェクトの環境面及び関係する社会面でのプラスの影響及びマイナスの影響、危険性について明確に述べたものである必要がある。
― プロジェクト現場以外への影響、すなわち国境を越えた影響、時間を経過した後の影響、累積的な影響等に対しても評価が行なわれるべきである。  途上国政府は自国の環境状況、開発プロジェクトのデザインについて最終的な責任を負う。しかしながら、国境を越える国際的な問題が途上国の環境の状態に影響するときは、これらの問題を引き起こした政府がそれぞれ途上国において責任を負うものとする。


II. 環境影響評価の基本目標


5. 環境影響評価とはひとつの手続きである。それは提案開発プロジェクトの環境面のプラス、マイナス両面の重要性を調べ、プロジェクトの計画にこうした重要性が考慮されていることを確保するためのものである。EIAが評価するものは、人間の健康や自然環境、およびその土地固有のものなどへ及ぼし得る影響である。また、そこには性別の特定 (男女)、特殊グループのニーズなどを含めた社会的影響や土着の人びとへの影響が含まれることもある。EIAでは、影響緩和手段または環境保護策とともに代替プロジェクト計画 (ノン・アクション ―非行動代替案― を含めて)が考慮されるべきである。そうした緩和手段や保護策は、環境へのマイナス影響を除外するためのプロジェクト計画に統合されていなければならない。援助プロジェクトが環境面から見て健全であり持続的であるためには、評価はプロジェクト計画のもっとも早い段階で始められる場合に最も有効である。

1. 意思決定および実施プロセスへの統合

6. メンバー政府による正式なEIAプロセスおよび規則は、環境的側面が主催国や援助機関、その他プロジェクト計画およびその実施に関係する諸研究機関などの意思決定プロセスに統合されことを意図としている。環境評価がプロジェクトの選択や立案、実施のプロセスに欠かすことの出来ない部分であるということは本質的なことである。このことはプロジェクト選択手順においてはっきりと確立されるべきである。また、援助されているプロジェクトの環境面に関する行政責任は明確に決められるべきである。

2. 環境影響評価が最も必要なプロジェクト

7. 一般にEIAを必要とするプロジェクトは、以下に示す見出しで1985年の審議会勧告にリストで示されている。

a) 再生し得る資源の利用に大幅な変化をもたらすプロジェクト
b) 農業、漁業慣行を大幅に変化させるプロジェクト
c) 水資源の開発
d) 基本的施設 (道路、学校など)
e) 産業活動
f) 採取産業
g) 廃棄物管理および処理

8. 徹底した環境評価が行なわれなければならないプロジェクトは大気や水質汚染のために健康に影響する開発援助プロジェクトだけでなく、危機に曝された植物や動物、またはその重要な棲息地、保護エリア、生物学的多様性などに悪い影響を及ぼすプロジェクトも同様である。非常に破壊されやすい環境におけるプロジェクトの評価の必要性に特別の考慮がなされるべきである。そうした環境には例えば、熱帯森林、湿地、マングローブの沼沢、珊瑚礁、そして半乾燥地帯などがある。

3. 環境影響適用範囲

9. 環境影響という用語は以下のものを含むものと理解されている。

― 人間の健康や幸福、環境メディア、生態系 (植物相、動物相を含む)、農業および建物 (保護を受けている建物)に影響するもの
― 気候や大気に影響するもの
― 自然資源の利用 (再生資源や鉱物資源)に影響するもの
― 残渣、廃棄物の活用および処理
― 関連した上流、下流そして国境を越えた影響の他に、再定住、考古学的 (調査のための)遺蹟、風景、モニュメント、社会的意味合いで重要なものなどの関係相

4. プロジェクト・プランニング中の最初の環境影響評価に必要な時間

10. EIAリポート提出前の最初のEIA手続きは、よく言われるように必ずしもプロジェクト・プランニングの遅れを導くとは限らない。実際の例によれば、プロジェクトのプランニングの遅れおよび実施段階におけるコスト面での対立は徹底した、しかも時宜に適ったEIAによって避け得るものであり、実際には時間およびコストを節約する結果となる。

11. プランニング段階での最初のEIAに必要な時間については、それがプランニング手続きやプロジェクトのタイプ、そして主催国における諸状況などに結びついているので決定は困難であり、また一方でそれはまたベースライン・データの入手如何に掛かっているのである。EIAの範囲決定から完了までに要する平均期間は、プロジェクトの規模や性格にもよるが3ヵ月から2年の歳月にわたる。EIAは他のプランニング活動 (例えば、技術者の職務活動、実行可能性研究調査または費用便益分析など)に統合され、それと同時に行なわれることが勧められている。こうしたことは遅れを避ける為のみならず、EIAのプロセスをデータの共通利用によってより効率よくするためには重要である。

5. 環境影響評価のコスト

12. EIAのコストは問題の複雑さや重大性および要求されるディテイルのレベルなどに対応したものになる。ふつうそれは全体投資額のかなり低いパーセンテージに留まるもので、0.1と2.0パーセントのあいだにある。有害な環境影響からの回避および有益な影響の最大化においては、その費用が長い期間にEIAプロセスのコストや高額投資支出を越えるものになることは無理からぬことである。環境面、社会面の知識がほとんど入手できない地域では、EIA実施費用は最初かなり高いものになるが、一旦諸手順や技術が確立され評価担当職員がその仕事に慣れてくればそのコストは下がる。DACメンバーのあいだでの情報交換、特にプロジェクトの特定のタイプのベースライン・データやEIA技術の情報交換はEIAのさらなるコスト削減に貢献するだろう。

6. メンバーの経験

13. DACのメンバーは今その開発活動に対する環境影響評価を実行する方法を確立しようとしているところであるため、まだそれを実施するに際しての十分な経験がない。メンバーのなかには開発援助の正式かつ法的に拘束力のある手順を採用しているものもあるが、一方ではかなり非公式な場当たり的アプローチで環境影響評価に望んでいるメンバーもある。



III. 環境影響評価のための適正実施活動


1. 共通活動

14. 開発プロジェクトのEIA手順は理想から言うと以下の趣意によってドナーのあいだの共通した実施要領に基づくべきである。

― 援助受け入れ国はDACドナーおよび多数国参加諸機関はすべて開発プロジェクトに対するEIAの一定の要求事項を前提としていることを知っている。
― 技術面、環境面、社会面のコンサルタントはEIAの要求事項に関するドナー間のコンセンサスについて情報得ている。
― EIAには他のドナーが互いに利用し得るほど十分な類似点がある。
― 分析に対しては類似した基準が使われているが、それは生態系の乱れの"許容"範囲に関して一般的に受け入れられている認識に基づいている。

2. 基本必要事項

15. プロジェクトのタイプ、つまり受け入れ国における専門事項および特定条件によって詳細は異なるが、EIAではそのフィールドにおけるDACメンバーのアプローチを調和させるために、一連の"実施要領"を確立することが可能である。以下に提出されたEIAのための実施要領はさまざまな筋、特に上記の3つのOECD審議会勧告や最近の技術文書、そしてある期間EIAを研究してきた援助機関などの経験から総合されたものである。

16. EIAはプロジェクト・プランニング・プロセスの必要欠くべからざる部分として見做されるべきである。またEIAはプロジェクト代替案や、その各案に関連した潜在的で重大な環境影響を早い時期に確認しながら始められるべきである。評価をする場合、いかなる場所の途上国でもそこに可能なかぎり公式に参加し、プランニング・サイクルを通して続けられるべきである。モニタリングおよび事後監査評価に続けて行なわれるのが理想的である。

3. 環境影響評価の責任

17. 開発途上国政府はそれぞれの国の環境の状態や環境プロジェクト計画に対して究極的な責任を負っている。しかしながら、ドナーは環境法や受け入れ政府の規制、そしてドナーの開発協力基準が援助を受けているプロジェクトのEIAに必ず考慮されるようにする必要がある。受け入れ国が環境保護の法的フレームワークを未だ採用していない場合のみプロジェクト・スポンサーは単独でEIAの責任を負うものである。スポンサーおよび地元機関の技術能力は最大限支持されるべきである。プロセスのなかで援助諸機関の相関関係が考慮され、そうした機関がそのプロセスの価値を理解し環境評価の勧告が実施されるように、途上国側もそうしたプロセスに加えられるべきである。可能な限り地元の環境コンサルタントはアセスメント・チームに加えられるべきであり、EIAは環境に関して必要とされる変更、改正を示し、主催国政府に承認されるべきである。

4. 手順上の原則

18. 少なくとも既にリストに示した範疇に属するプロジェクトについてはEIAの実行が奨励される。

19. EIAはなるべく早い時期に始められるべきであり、プロジェクトの最初の調査とともに行なわれるべきである。

20. 特にEIAにおいて通常のプロジェクト見積もり範囲を越えなければならない場合、EIAの対象とする地域は定められるべきである。

21. 初期のEIAは出来れば統合されていることが望ましいのであるが、EIAはプロジェクトの実行可能研究調査より早く始められ、プランニングが詳細に行なわれる前に完了するべきである。

22. とりわけプロジェクトのセクト別側面の見解が受け入れ国内で入手される場合、EIAでは「国別環境調査及び戦略」の結果が考慮されるべきである。たくさんの小規模プロジェクトが累積的環境影響を生み出すと予想される場合、フロー・チャートが有効であろう。

23. 実行可能性に関するすべての研究調査には、少なくとも環境およびそれに関連した社会的影響に関して、別個の章が設けられるべきである。また、大きな環境問題を抱えているプロジェクトに対しては、環境の面に関する非技術的 (ノン・テクニカル)摘要が用意されるべきである。

5. スクリーニング (選別)

24. EIA手順は徹底した環境影響評価が必要とされるか否かを決定するためのスクリーニング・セッションから始めることが奨励される。スクリーニングのプロセスでは、自然または物理的環境へ重大な影響をもたらすと十分予想されるプロジェクトに環境調査の焦点を当てることが出来る。そこである一定の援助活動は環境調査から自動的に除外されることがある。そうした活動の例として教育トレーニング・プログラムや栄養学および家族計画サービスなどを含む諸々のプログラムなどがある。そうしたプログラムでもかなりのプラスまたは/かつマイナスの環境面の影響をすでに持っていたり、またはもたらす可能性のある場合があるので、リサーチ活動も同時に除外するということは認められないであろう。

25. プロジェクトに対してかなりのプラスの環境影響あり、と認めることもまた奨励される。何故かといえば政府のなかには統計的目的のためにこうしたクラス分けを必要としたり、このようなプロジェクトに好ましい扱いを適用する政府もあるからである。

26. 潜在的に危険であるとされる設備が勘案されている場所ではスクリーニング・プロセスにおいて健康や安全性に対するリスクが推し量られるべきである。2国、多数国参加の援助機関は新たな制度または拡張制度を支えるための財政援助に先立ち、潜在的に可能性のあるアクシデントへの評価を行うようにすべきである。 (評価の内容についてのさらに詳しい説明については、 (「アクシデントの防止、心構え、対応に関しての方針の案内」― OECD パリ 1991年― を参照のこと。)取り上げられるべき基本問題を以下に示す。

a) どの代替プロジェクトがもとのプロジェクトに匹敵する援助利益を与え得るのか?
b) 危険な科学技術に関係した公的安全性の適性なレベルとは?
c) 貴重な環境価値を持ったエリアに対してどの程度までの環境保全が保証されるべきか?

27. スクリーニングによって、政府機関は、環境的にみて受け入れ不可能なプロジェクト、または、マイナス影響が援助利益を超えるプロジェクトを最初の段階で拒否することが可能とされる。

28. EIAの質を向上させコストを制限するためには、必要とされるEIAの種類にしたがって早い時期にプロジェクトをクラス分けすることが奨励される。例えば、EIAを実行し、緩和手段、モニタリングの必要性に関して判断するということに関して、環境の物理的混乱から起こる影響以上に汚染から発生する環境影響に対しての方がその意味の違いは大きい。

6. 範囲決定

29. EIAを進めることが決定すると、その範囲決定プロセスはプロジェクトのスクリーニングの後すぐに始められるべきである。このプロセスはプロジェクトが提出する最重要の環境問題 (社会的問題を含むことが多い)、必要とされる分析のタイミングおよびその範囲、関連専門知識の入手先、そして緩和対策の提案などの確認で終わる。この時点でEIAの責任およびスケジュールが確認可能となる。徹底したEIAが必要とされるプロジェクトに対しての範囲決定には、受け入れ国における国レベル、地域レベル、地方レベルのそれぞれの機関からのデータ、関心事、専門知識の包括的収集がなされるが、そうした情報はEIAに責任を負う専門家、関連地域住民グループそして非政府組織の代表などから収集される。

30. 注意の行き届いたスクリーニング、範囲決定は、重大な環境問題や最も重要な結論を最初の時点で確認することを通してEIAプロセスを有益なものにし得る。そうした最初の段階で行なう理由は、プロジェクト実施後に行なわれた場合の遅れや追加コストを避けるためである。スクリーニングや範囲決定は単独的職務執行といい得るものである。

7. 地元組織およびターゲット・グループの参加と動機

31. ドナーおよび受け入れ側はともに融資援助プロジェクトの計画、実施へ向けて国の状況の多様性を考慮しつつ、地元で入手し得る十分な専門知識をフルに活用して作業を行なうべきである。

32. 途上国の環境組織は可能な限り参加すべきである。最も良い結果を得る為には、プロジェクト案の中で正当な権限を持つ組織や関連規制についての説明がなされ、また、それはプロジェクトの最初の調査において確認されるべきである。実行可能性調査の環境部門あるいは独立環境評価のためのレファレンス用語は、もし可能であるならば受け入れ国の環境に関する政府機関のアドバイスおよび承諾を以て作成されるべきである。プロジェクト関連のEIAはまた、途上国の環境面の力の強化を目的とすべきであり、特にその段階 (範囲決定)で弱いところが確認されるべきである。

33. 関係住民 (他の関係グループ、ターゲット・グループなど)の男女両方の参加が求められるべきである。結果として、援助プロジェクトの計画、非官僚的経路や開発の新しいパターンの選択において、さまざまな変化が援助政策や援助プログラムのプライオリティーに導入される必要がある。

34. 受け入れ国における非政府組織の参加は奨励されるべきものである。特に公的な組織からは入手し得ない専門知識がある場合はそうあるべきである。こうした観点から受け入れ国の価値および政治的手続きに対して正当な考慮がなされるべきである。

35. 受け入れ国の実行機関は選考、計画、実施への積極的な係わりあい通して参加しているが、そうしたことへの保証はさらに強調されるべきことである。そうしたプロジェクトが地元の人間のエネルギーを揺さ振り実際のニーズや条件を充たすよう確実にするためには、さまざまなタイプのプロジェクトにとって、例えばコミュニティーや他の地元の組織を通してのエンド・ユーザーや恩恵受領者の活発な係わりあいは欠かせないものである。

8. 環境影響評価レポート

36. EIA文書にて述べられる特定の問題は上記の範囲決定プロセスにおいて確認されるべきである。徹底したEIAに就いてのレファレンス用語は一般的には以下の問題への対応を含むべきである。

a) プロジェクトを取り巻く状況の説明および将来の影響が評価され得る環境 (現在の汚染または特に汚染を受けやすいエリア)のベースラインとなる条件
b) プロジェクトに対して水、エネルギー、素材を供給した場合の環境面の影響評価
c) プロジェクトによる男女の性別の問題を含めた地元住民への影響分析
d) 廃水、固形廃棄物、および放出物の処理の評価 (これがプロジェクト・スポンサーの責任か否かは別とする)
e) 金銭的に可能であれば、その重大性を示したプラス、マイナスの環境影響の確認
f) 環境向上の機会を分析
g) 主催国の関係環境基準およびこうした基準についてのディスカッションとともに必要免許手続きなどを含めた法、政策面のフレームワークの提出
h) 環境関連の関係価格相場政策、税金、そして助成金などの影響評価
i) 結果としての影響評価と判断の基本に使われた基準の特定
j) 基本代替案の斟酌およびプロジェクト完全放棄の結果評価
k) マイナス環境影響を制限するための十分な軽減対策案または代替計画案。操作案、モニタリング案を含む。
l) 環境への悪影響を取り除く潜在性、関連資本循環コスト、現地条件下での適合性、さらに制度、トレーニング、モニタリング各方面の必要事項などの全てに関しての、プロジェクト代替案と軽減対策案の比較
m) 関係住民グループの保護そして/または再定住に対する対策説明。また、こうした問題の案に対する住民の反応を示す (詳細については「環境プロジェクトにおける非自発的移住、および再定住に関する援助機関のためのガイドライン」を参照のこと)
n) EIAに必ずしも含まれているとは限らない関連問題がどこで、どのように扱われているかということに関しての説明
o) 主要勧告を含めた非技術的 (ノンテクニカル)摘要

9. 外部調査

37. 特に大規模プロジェクトの場合、それが完全に実行可能であるならば、環境評価の外部、独立調査が手続きの成功に貢献しよう。この調査の目的は参加のさまざまの団体の特定の利益、そして、しばしば矛盾する利益についての公平な判断を獲得するためであり、不必要なコストや遅れを避けるためである。したがって、調査は最終のEIAレポートが援助機関や相手機関によって勘案される前に行なわれることが奨励される。"公平"な判断に到達するためには、この調査は生態観察を専門とする人間や組織だけによってなされるのではなく、優秀な免許機関 (そうした独立機関が受け入れ国に存在する場合)そして/または援助国の優秀な機関によってなされるべきである。外部調査を進めるについての決定は受け入れ国の思慮に任せられるべきものである。

10. 内部調査

38. ドナー機関は、環境評価手続きに関する一般ガイダンスを提供し、最終EIA文書の妥当性と質を保証する責任を負う中心機関を設立すべきである。重要なEIAが取り行なわれる時はいつでも、そうした機関は、幅広い学問分野 (生態学、生物学、農業、森林、生化学、健康管理など)からの専門コンサルタントを含め、自由に使える有資格のスタッフを用意すべきである。こうした専門家はドナー機関の常時スタッフである必要はない。

11. 意思決定プロセス

39. 開発援助プロジェクトを認めるか否かを決定する時、EIAの結論は十分かつ適切に考慮されるべきである。上記の中心機関はあらゆるケースにおいて正当な考慮が払われていることを保証すべきである。

12. モニタリングおよび監査

40. 参加ドナーがその共同責任と影響から手を引く時、EIAはプロジェクト完了の後中止されることになる。したがって、EIAは評価の精確なことをテストし将来の調整のための基礎を提供するとともに要求事項との一致を保証するために、操業中のモニタリング、監査のための勧告をその中に含んでいるべきである。このような勧告では責任者および融資源が指示されていなければならない。環境影響および環境説明についてのモニタリングは、可能なプロジェクト修正や将来の類似プロジェクトのための有用な情報を提供し得るものである。

41. 環境のモニタリングは通常幅広いプロジェクトを扱っている特別機関の仕事である。モニタリング作業および監査作業の質はEIAに多くを負うものではなく、むしろ途上国のこのような機関や環境行政などの持っている能力次第なのである。だからこそEIAが環境検査のための精確な長期プランニングを提供する必要はない。さもなければドナーはプロジェクトに対する責任をすべて受け入れ国に渡すことが出来ないであろうから。むしろドナーと受け入れ国は以下の点について理解に達すべきである。

― プロジェクト計画では検査とモニタリングのために必要な手段、設備、そして道具類が特定されているべきである。
― モニタリング活動のための組織的ユニットが指示されるべきである。
― 必要とされる調査にはプロジェクト・スポンサーおよび正当な権限を持つ機関の各々の責任を指示され、その調査の概略が与えられているべきである。
― モニタリング用機具の信頼性については特別な関心が払われるべきである。
― 検査およびモニタリングは運営職員のトレーニングに含まれるべきである。そして、
― 外部検査およびモニタリングは出来るなら地元機関によって実施されるべきである。