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中央環境審議会野生生物部会
第5回鳥獣保護管理小委員会(議事要旨)


1.日時

平成18年1月30日(月) 13時~14時30分

2.場所

霞山会館(9階)うめ・さくらの間

3.出席者

(委員長)
岩槻邦男
(委員)
石井信夫、石原收、磯部力、市田則孝、大塚直、亀若誠、
佐々木洋平、速水亨、三浦慎悟
(環境省)
自然環境局長、大臣官房審議官、総務課長、野生生物課長、鳥獣保護業務室長ほか

4.議事

 報告書のとりまとめについて

(1)
事務局より資料1-1、資料1-2、資料2をもとにパブリックコメントの結果とそれを踏まえた報告書の修正案について説明
(2)
議事

事務局: 欠席委員からの次のような意見を紹介。

○報告書の修正案はこれでよいが、本報告書の実施に向けて、必要な予算の確保や、農林水産部局との連携等が重要である。

○例えば、鳥獣の保護管理対策について、環境省が農林水産省等と連携を図り、パイロット事業を実施し、優良事例を情報発信していくことも必要。

委員長: 前回の委員会で指摘のあった「引き続き検討を要する事項」の取扱いについて、「委員長談話」という形で残してはどうか。(席上配布の)「鳥獣の保護及び狩猟の適正化につき講ずべき措置について(談話案)」についても意見を頂きたい。

○委員長談話で挙げられている狩猟の場の転換に関する課題について、この課題の趣旨は、狩猟の安全の確保や鳥獣の保護であるが、既に現行制度下において、安全の観点及び鳥獣の保護の観点から狩猟を禁止する必要がある地域は禁止されており、実態上問題はないことから、あえて狩猟の場の転換を提起する必要性が理解できない。鳥獣による農林業被害が深刻化する状況の中で、狩猟の場を転換することは、国民の理解が得られないのではないか。議論すること自体を否定するものではないが、今、この談話に挙げる必要はない。

○狩猟の場の問題は、委員会ではほとんど議論されなかったが、この問題は以前から議論されてきた経緯もあり、生物多様性の確保の視点からもあらためて議論する必要性はあると思う。

○狩猟の場の転換により結果的に狩猟の場が減少するのであれば、狩猟による捕獲が進まなくなり、被害対策の観点からマイナスとなるとの懸念も予想されるので、その点は配慮する必要がある。

○鳥獣の被害が大きいため、県や町に被害対策の要望が強い。被害対策の観点から、被害を及ぼす鳥獣の捕獲について、行政の課題との指摘があることは考慮して欲しい。

局長: 鳥獣による農林業被害が深刻化していることは理解しており、そのために、狩猟免許制度の見直しなどを検討している。しかし、談話にある狩猟の場の転換の議論は、被害対策とは別の問題である。

○談話案では、「狩猟に係る現在の枠組みを転換し、狩猟できる場を特定する」とあるが、このことが、場の転換の本来の趣旨ではないのではないか。表現ぶりについて検討する必要がある。

○北海道の西興部で若者ハンターの育成を行うなど、各地で民間レベルの取り組みが行われており、これら現場での活動の芽を生かしていくことが必要である。

○狩猟の場の転換は、もともと被害対策とは別に考えられてきたようであり、被害対策の観点から誤解を招かないことが必要である。

○有害鳥獣捕獲と狩猟は違うものであり、求められる資質も異なる。そのため、今のままの仕組みで対応できるか、両者を明確に区分したときに、有害鳥獣捕獲が実現可能かどうかの議論が必要である。狩猟を制限したことにより被害対策が進まなくなったということでは意味がないが、議論は必要と考える。

○有害鳥獣捕獲の実施者は地方自治体や農業者団体であり、狩猟者はこの捕獲に協力する従事者にすぎない。有害鳥獣捕獲は狩猟者が行っているように誤解されている部分がある。

委員長: 狩猟の場の転換の議論では、ご指摘のような問題が発生しないようにすることが重要である。直接狩猟に関わる者が批判的な意見であれば、議論は困難かもしれない。

○議論は否定しないが、これまでの委員会の議論の中で、狩猟の場の議論はなかったのに、突然委員長談話に出てくるのは唐突すぎる。

○短期的な課題と、中長期的な課題の両方がある。狩猟の場の議論は、中長期的な課題として議論することに異論はないと思う。ただし、「場を特定」という表現は、適切ではない。

○水鳥の鉛中毒の防止に関しては、指定猟法禁止区域制度が導入されているが、禁止区域の拡大があまり進んでいない状況にあるため、水辺域については全面禁止に向けた取り組みが必要である。

○報告書の「鳥獣保護区の機能充実・強化」の部分での修正の理由は何か。

事務局: 現状でも期間を限定しての規制が可能であることから、事実関係を踏まえて修正した。

○司法警察員について、司法捜査事務に高度な知識が必要であることから、通常の行政事務との両立は困難であり、事実上当該制度は機能していないとすれば、今後、どのように当該制度の活用の促進を図っていくつもりか。

事務局: 司法警察員の捜査事例は少ないが、違法なわなの領置が効果的に行われるよう措置することを考えている。  

○「科学的・計画的な保護管理の推進」の中に、シカやイノシシの生息地となる森林の変化の研究についても加えた方がよい。

事務局: 「ア.適切な技術開発・調査」の情報収集の記述に「鳥獣の生息環境」を加えることで修正したい。  

○「はじめに」の中で、「共生」という言葉が出てくるが、この言葉には違和感があるため、「共存」又は「人と鳥獣とのかかわり」との表現にすべきである。  

○「国際的取り組みの推進」に関連して、ボン条約の批准に関するパブリックコメントの意見があるが、既存の他の条約等でカバーできているからよいということにはならない。

事務局: ボン条約は日本はまだ批准していないが、既存の条約等でカバーできているところといないところ、批准することによるメリット、デメリット等を精査する必要がある。  

○ラムサール条約は生息地の保護、ボン条約は種の保護で役割分担がされており、両者は重複無く互いに補完している制度である。  

○「鳥獣保護員の機能の充実・強化」に関連して、現在の鳥獣保護員の中にも優れた人材が存在するが、鳥獣保護員が調査したデータが有効に活用されていないために鳥獣保護員の活動意欲を低下させている実態もある。

事務局: データの活用方法については、今後検討して参りたい。

○「特定計画制度の充実」に係る「現状と課題」の最後の記述で、「課題として指摘されている」とあるが、客観的すぎるため、「課題となっている」と修正すべきである。  

○本報告書を踏まえ、今国会に鳥獣法の改正の為の法案を提出する準備をされていると思うが、具体的にどのような改正を予定しているのか。

事務局:まだ確定ではないが、現在のところ、[1]免許の区分の見直し(網・わな猟免許の区分)、[2]休猟区内における狩猟の特例、[3]入猟者数の調整のあり方、[4]わなの設置を禁止する区域制度の検討、[5]鳥獣保護区について悪化した生息環境の改善、[6]輸入鳥獣と国内産鳥獣の識別可能な制度等の検討を行っているところである。そのほかの事項については、政省令や基本指針の改正等での対応を検討していくことになる。  

○「特定計画の実施に係る関係主体の連携」について、「専門職員の育成・登録」を追記して欲しい。また、「協議会」だけの枠組みにとらわれないという趣旨で「協議会等」としてほしい。

事務局: 修正の方向で検討する。  

○「人材の育成・活用」について、環境省としての主体性を出す表現として欲しい。

事務局: 指摘の趣旨を踏まえて修正する。

委員長: 本日のご意見を踏まえ、報告書と委員長談話を修正する。記述については、関係の委員にご相談するが最終的に私に一任願いたい。

事務局: 修正した報告書については、部会長から会長に報告し、会長の同意を得て2月3日を目途に環境大臣へ答申をいただく予定。

局長: 集中的に審議いただき感謝。本日とりまとめていただいた報告書をもとに、法改正が必要な事項は今国会に提出し、また、政省令、基本指針の見直しが必要な事項は具体的な内容を改めて中央環境審議会に諮問させていただきたい。

委員長: これで、鳥獣保護管理小委員会を閉会する。

(了)