<(1)外来生物法の施行状況の検討の進め方について>
<(2)外来生物法の施行状況を踏まえた現状と課題について>
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事務局から[資料2]~[資料12]について説明。
- 委員意見
―全体について
- 外来種対策だけを独立して実施するというよりは、自然再生や絶滅危惧種の保全などの広い取組の中に外来種対策を組み込むことが効果的。根絶だけを目標とするのではなく、生物多様性の保全と持続的な利用という幅広い目的のために、排除しなければならない場などでの活動を重視し、外来種を排除することでどういう自然がよみがえったのかという説明をすると国民の理解・協力を得やすい。
- 仕組みとして、規制の手法が足りているのか、手法は実際にうまく使われているのか、という観点がある。実効性として罰則適用された件数がどの程度あるか、こういった手法があれば実効性の上がったという問題があるか。
―特定外来生物の選定
- 生態系をその土台から変えてしまうような、侵略性の高い、一次生産者である植物の対策が重要。緑化植物に関する調査研究の結果も踏まえ、生態系等に外来植物が与えている影響を考慮して特定外来生物に指定していく必要がある。
- 外来種の影響は地域ごとに異なるものであり、生物地理区に対応した指定ができる制度にするべき。(インドクジャク等)
- 他法令で規制されているために特定外来生物に指定されていないものがあるが、国内に持ち込まれた場合に規制の対象となっていないという問題がある。(アカボシゴマダラの事例等)
- 外来種対策の基本は早期対応であり、地域限定の緊急指定の仕組みがあるとよいのではないか。
- 特定外来生物の指定について属での指定、種での指定が混在しており、整合性をとるべき。属での特定外来生物への指定をすることにより、次々と未判定外来生物の輸入申請がされることを予防できるのではないか。
- 植物は未判定外来生物が少なく、特定外来生物と同等の生態的リスクがあると考えられるものでも輸入規制ができていない。水生無脊椎動物についてもまん延が進んでいるものもある。未判定外来生物の整備を進めるべき。
- 法理論上、法制度は全国画一的なものである必要がある一方で、条例での規制手法にも一定の限界がある。地域ごとの指定等については、法律の中に枠組を用意しつつ、個別には地域性・緊急性を加味した運用ができるというような手法的な研究ができるとよい。
- 特定外来生物には、日本での被害が大きくないものも含まれている。ワシントン条約の付属書Ⅰ~Ⅲのような段階的手法も参考に分かり易く整理すべきではないか。
- ネコは野外では立派な捕食者であり、影響を与えている外来種として議論する必要がある。
―飼養等許可の現状と課題
- セイヨウオオマルハナバチの管理不備については深刻な問題である。措置命令や許可の取消し、罰則の適用がされている事例はないか。
(事務局)それぞれの飼養等許可を受けた飼養者が責任を負い、命令や罰則の対象となるが、セイヨウオオマルハナバチの農家等現地調査に関しては不備があった場合には改善指導を行っており、これまで措置命令や罰則等の適用はしていない。
- セイヨウオオマルハナバチの現地調査についてはランダムに抽出するのではなく、事態を改善するために強化し、実施・運用していく体制が必要である。
(事務局)許可件数に対し職員数が足りない面もあるが、農協等の協力も得て組織的に実施していきたい。
- 一般的に、戦後、行政が措置命令等の強制手段をとることは非常に少ない傾向にある。
- 規制される側が飼養等管理を遵守するインセンティブを高める工夫として、野生下にいる外来種の駆除に努めているという姿勢を示すことが必要。
- セイヨウオオマルハナバチについては市民参加のモニタリングプログラムを実施しているが、野生下ではトマトハウスが多いところではなく、他のところでまん延している。大雪山や知床等固有の生態系が重要な地域でも見られるようになってきていることが問題。
- セイヨウオオマルハナバチについて、新たな個体の供給がどの程度野生下での制御を難しくするかというモデル予測は可能。
―輸入規制、水際対策、非意図的な導入対策
- 侵入初期の外来種の対策も水際対策と同等に扱う必要がある。早期対応のための緊急指定の仕組みがあれば地方行政としても早期に対策を取る後ろ盾となる。
- 水産資源の養殖・放流が外来種導入の要因の一つになっているが、シナハマグリ・アサリやシジミ等の輸入時の検査はどのようになっているか。
(事務局)環境省では対応していない。農林水産省で対策がされていないか確認する。
- 釣り用の生き餌は大量に輸入され、使い終わったものは生きたまま捨てられており、問題である。何らかの対策ができないか。
- 魚類・両生類については、輸入時の検査に係る他法令での枠組がない。
- 指定港以外の空港・港では、外来生物法の認識や検査が弱いおそれがある。
- 植防における街路樹等樹木の検査では、土や葉の表面については詳しく調べられているが、樹木の枝や葉をの動かせての検査はできていない。幹や葉鞘の隙間等に生物が入っている場合がある。(キノボリヤモリの事例等)
- 種類名証明書が添付されてコガネムシの仲間が輸入された事例はあるか。また、提出された種類名証明書は輸入個体の同定をせずに信用するものか。
(事務局)コガネムシについては事例を調べる。種類名証明書については定める要件に合致するか確認し、疑義があった場合には必要に応じて現地大使館に確認するなどしている。過去には不適格とした場合もある。
―国による防除の実施、防除に係る確認・認定
- 防除の目標を明確にするだけではなく、「防除効果を科学的に測定する必要がある」ことを記載するべき。
- 防除のコストの考え方として、防除が進捗すると、残った集団に対する1匹の割合が大きくなり、捕獲1匹あたりの相対的な貢献度が高くなるという形でモデル化ができるのではないか。
- 防除事業の実施にあたっては、実施前に意見を求めるだけではなく、年度ごとの結果や計画について専門家にフィードバックし、確認しながら進める仕組みを作るべき。
- 行政事業レビュー公開プロセスの議論では、防除を行うことによってある生物種の絶滅を防いでいることの価値をはかるという観点が全くなく、問題である。
―国内由来の外来種対策の現状と課題
- 地域的な外来種問題は条例での対応との方針だったが、条例が整備されていない地方公共団体が多いのが問題である。
- 種の保存法を受けた希少種条例については整備が進んだが、外来種対策についてはネガティブな印象から都道府県がついてきていないと思われ、国が都道府県にうまく働きかけていくことが重要。現状が、国から積極的な働きかけをされた結果なのか、あるいは都道府県で自発的にやられたことなのか、分析が必要。
- 農耕地で雑草化する植物の問題がある。佐賀県ではトールフェスクが河川敷に広がり、条例で規制をした。トールフェスクは重要な牧草でもあり、畜産農家では播種ができないということで対応に苦慮している。
- 緑化植物については農環研で調査・研究を行っているが、ススキ・ヨモギ・ヤマハギは国内でも遺伝的な変異があり、国内移動させると視覚的には影響がわかりづらいが遺伝的なかく乱を起こすことが分かってきている。むしろ、外国産の外来種を使って緑化をした方が視覚的にもわかりやすく、管理しやすいのではないかという見解もある。
- オキナワキノボリトカゲは沖縄・奄美では低密度であり、絶滅危惧Ⅱ類であるが、宮崎・鹿児島に侵入して増えている。在来種では同様のタイプの捕食者がいないことから、影響が大きい。
- 国が、国内由来の外来種問題についても対策をするべきだという情報やステートメントをホームページなどで発信することで、地方公共団体やNPO等での取組を後押しすることになる。
―調査研究、普及啓発、各主体の協力と参画
- 佐渡ではトキの野生復帰の取組が進められている一方で、オオキンケイギクやアメリカザリガニ、ウシガエル等の外来種が多いが、外来種対策は行われていない。環境省(野生生物課)の中の連携をお願いしたい。
- 外来種が定着・まん延した結果、在来種の生態的地位に置き換わってしまった形で系が安定しているように考えられる場合、どういう対策を取るべきかということも、学術研究に基づいて考えていくべき課題。
- 今対策を取れば在来の生物多様性が回復できるところで、対策がなされないことが問題であり、そうしたところで地域の方たちが主体となるような外来種対策を自然再生として進めていくということが重要。
- 外来種対策は地域の事情を踏まえた目標を設定して実施していく必要があることを記載するべき。
- 国、都道府県、市町村の連携がうまくとれていない。現場である市町村の取組が重要であるが、ボトムアップで対策がなされることは難しいため、国が司令塔としてうまく指示していくシステムをどのように構築していくのか検討を進めていく必要がある。
- 地域ごとの状況を踏まえた対策の舵取りがコストパフォーマンスの観点からも重要であり、この点については研究者の意見を重視して対策をとっていただきたい。
- 調査研究を防除の現場に生かす、また国から地方公共団体までの連携を考えていく必要がある。