１．	日時	平成１５年６月９日（月）１３：３０～１７：００
２．	場所	環境省　第１会議室
３．	出席者
	（小委員長）	岩槻　邦男
	（委員）	阿部　　永	大塚　　直		岡島　成行
		山岸　　哲	鷲谷いづみ
	（専門委員）	太田　英利	大矢　秀臣		細谷　和海
	（環境省）	岩尾自然環境局長
		福井総務課長、	黒田野生生物課長、		笹岡国立公園課長
		上杉生物多様性企画官、		河本野生生物課長補佐
４．	議事概要

○	参考人來田仁成氏、佐藤稔氏、水口憲哉氏、杉山秀樹氏より「釣魚類（オオクチバス等）について」説明。その後４参考人と小委員会委員との意見交換。

• 予防原理、予防原則は保全生物学の常識だが、これに関する考えをお聞かせ願いたい。
  　→種の絶滅とか、希少化を起こすような原因をなくすということが、生物多様性保全の根幹であることから、私は基本的にいろいろな問題はすべて発生源を絶つという考えである。
  
  
• ブラックバス問題に対して、生物多様性の視点からどういう立場をとるかということをお聞きしたい。
  　→私は生物多様性の観点から、それに関係する人々が駆除したいと思うところは駆除し、芦ノ湖とか河口湖とか、そういうところではきちんと外へ出ないようにし、外からも持ち込まないようにして管理していくという考え方である。生物多様性は一つの評価の軸としてあると思うが、例えば琵琶湖でブラックバスを排除しても、琵琶湖総合開発その他を含めて考えない限り、生物多様性の問題は片づかない。
  
  
• 川や湖の生物多様性の危機に多様な要因が関わっており、その要因も相互作用しながら複雑な複合要因として働いているということは、多くの人々が理解しているが、こうしたことに関して今まで研究が十分でなく、研究をしっかりしていかないと、有効な保全策を立てられないことは確かである。
  　しかしながら、問題解決が緊急な課題になっていることから、問題構造を明らかにしながら、問題解決も図っていくようなアプローチがどうしても必要になってくる。そこで、実行可能で、効果が大きそうなことから取り組んでいくことが必要となる。
  
  
• 外来魚を駆除しないといけないと思うが、外来魚が減ったときに何が起こるかというのをしっかり見ていかなければいけない。
  　ブラックバスを取り除くとブルーギルはどうなるのか、また他の外来魚も共存していることが多いので、相互関係とか、食物網に目を向けながら結果をしっかり確かめ、次に何をするべきかということを考えていかなければいけない。
  
  
• 魚１匹の命を大切にするという立場から、全面駆除には反対という発言があったが、例えばゾーニングであれば、いずれにしても魚の個体個体の命を大切にということはできない。それが全面駆除に反対という根拠になっているとすると、矛盾があるのではないか。
  　→全釣協は外来魚については生息地、生息数をできる限り速やかに減らしたい、外来魚はいない方がいいと考えており、それは日本のすべての釣り人の意思だと思う。しかし、現在、外来魚が生息、増加している事実と、それを楽しんでいる人がいることから、少しずつ整理し、徐々に秩序の中に組み込んでいくという状態が望ましいと思っている。
  
  
• スポーツフィッシングという感覚でキャッチ・アンド・リリースをやっている一方で、外来魚は問題であるとパンフレット等をつくってＰＲされているのに非常に矛盾を感じる。
  　→釣り人の中にも幾つかの考え方の人々がいる。古いタイプの人たちはキャッチ・アンド・リリースに無関心。若い人たちはキャッチ・アンド・リリースが当然のことだと思っている。間の年代は、キャッチ・アンド・リリースに対する疑問とか、いろいろなものが自分の心の中に介在している。過去においては、年代的な断絶があり、説得は不可能だったが、この場所は守るという指摘があれば、釣り人は喜んでそこからバスを排除する。しかし、キャッチ・アンド・リリースに対する強い信念を持つ人たちを説得するのには時間がかかるので、少しずつ時間をかけて整理をしていこうという提案と考えていただきたい。
  
  
• すみ分けということが可能であれば、一番いいのかなというふうに思うが、全内漁連として、すみ分け及びキャッチ・アンド・リリースについてどのようなお考えか。
  　→密放流された外来魚は、全面駆除すべきというスタンスであり、すみ分けは密放流が依然として続いている今日、とるべき策ではないと考える。対応に時間がかかり過ぎたために、経済圏ができてしまい問題の解決を難しくしてしまった。リリースについては全くナンセンスだと個人的に思っている。在来魚の命は大切ではないのか。
  
  
• レッドデータブックに掲載されているタナゴ類が、外来の捕食者よりも密漁の方が圧倒的に影響が大きいと説明されたが、同じ物差しで定量的に比べるデータがないと難しく、どういうデータをもとに判断されたかを伺いたい。
  　→レッドデータブックの記載で、タナゴ、モツゴについて密漁に触れているのは、91年のときには１件だけだったが、2003年には20数件になっている。それに対して、ブラックバスやブルーギルがどれだけ食べているかということは、具体的?? には記載されていないため、量的に比べるのは非常に難しい。
  　　レッドデータブックに載っていない魚の数と、これに載る魚の数の比率を考えれば、１万分の１位だと思うが、それをわざわざ探して食べるかという話。生息範囲と存在の割合と遭遇率とかで、絶滅危惧種に対するブラックバスやブルーギルの捕食圧をシミュレーションできる可能性はあるが、具体的なものはない。
  
  
• 先ほど沖縄のブラックバスに関しては米軍が持ってきたと発言があったが、私どもも聞き込み等いろいろ調査を進めているが、具体的な情報をつかむのは難しい状況にある。どういうことから考えられているのか教えていただきたい。
  　→聞いただけ。
  
  
• 全釣協のバス問題に対処する姿勢に将来性に方向性があるのかどうか。
  　→キャッチ・アンド・リリースに限定した全釣協のスタンスは、はっきり言って方向性は出ていないし、出せない。アジア系以外のほとんどの国はキャッチ・アンド・リリースが主流になっているが、日本は魚食民族であり、魚を食べるということが釣りの中の大事な部分を占めていることから、キャッチ・アンド・リリースについての抵抗というのもかなりある。また、特にバスについては、愛好者と話し合いが不可能な部分がかなりあり、全釣協でコントロールできない。
  
  
• すみ分け論の前に、なぜ駆除に専念されないのか伺いたい。
  　→全釣り協のバスに対するスタンスは完全排除が学術的に可能であっても実際上は不可能という現状を踏まえた「すみ分け」である。したがって排除すべき場所が決まれば、みんなで釣り上げればいいいう全体の雰囲気として納得する方向に持っていくことが大事であり、そういう方向にある。
  
  
• 過去には琵琶湖のコアユの全国放流に伴うさまざまな魚類の拡散が起こった。これは生業が絡んでいるので、難しいとは思うが、議論の一つに挙げておかないと問題が尾を引くと思う。
  
  
• 基本的にキャッチ・アンド・リリースは、そこにあるものを戻すのだからいいことだと受け取られるかもしれないが、もしその外来魚が生態系を侵害するものだとすれば、それは人為的行為によって釣り上げ、その後またそれを戻すということは、例えば汚染されている土地の土壌を掘削して、それをまたそこに放置するのと同じわけで、今まであったものをただ戻しているだけで、悪いことをしていないということでは必ずしもないという理解もあり得る。
  　→いろいろな釣り人の層がおり、非常に話し合いが難しい状態であるということもご理解いただきたい。
  　　それとは別の切り口として、有用魚と言われてきたこれまで魚の価値観と、これまで魚を放し育てることで維持してきた日本の内水面の漁業のあり方を考えるとき、害魚とは何か、有用な魚とは何かという価値観が人間の方の尺度に偏り過ぎてはいるのではないか。もちろん生態系の中の最上位の魚であるということはよく承知しているが、命に対する別の価値観も存在するということもご理解いただきたいと思う。
  
  
• 今後、判断していくときに、1,900にも及ぶ解剖の結果を単なるリストで挙げるのではなく、個々においてどのくらい食べられているのかということを教えていただければ、非常に参考になったと思う。
  　→実際の生データを単なるリストではなく、例えば重量に換算した重量割合とか、出現点数とか、そういうような形でまとめていきたいと思っている。
  
  
• ブラックバスが科学的に害がある、あるいはないという判断ができるかどうかということをお伺いしたい。お伺いした範囲では、例えば密漁に対して１万分の１ぐらいというような数字が出たが、それは感覚的なもので、ほとんど害がないということを科学的にどこまでいえるのか確認しておきたい。
  　→私はレッドデータブックの存続を脅かす原因という点数を数えたら、ああなったと言っているだけで、害があるともないとも言っていない。害があるというのは非常に難しく、事実をどう評価するかであり、影響があるかどうかという点では日本にそのような研究者はいないので、資料を出していくことが重要。
  

○	参考人大野成実氏、瀬能宏氏より「観賞魚類（熱帯魚等）について」説明。その後、両参考人と各委員との間で意見交換。

• いろいろなものが入ってきて、その辺に放してしまった場合、定着するかどうかという認識はどれくらいあるのか。
  　→放してもという感覚が初めからない。ただ、会員の中には水槽メーカーがあり、少しでも大きい魚を大きい水槽で飼ってほしいということで、積極的ではないまでも大型魚を飼うということを啓蒙しようという時期があった。その中で、大きい魚が欲しいという方も当然いるので、魚の生体や要らなくなった大きい水槽等も引き取り中古品として扱うようなシステムづくりができないかと考えており、一部の業者では実施している。
  
  
• 北海道では、いなかったツチガエル、トノサマガエルのようなものが入り込んでおり、コイと一緒についてきたものだろうということが、分かってきた。一般の飼育者ではなく、業者の方で注意されると生物多様性の攪乱を防げるのではないかと思う。
  　→ニシキゴイ振興会というのがあり、病気が大きな問題になっている。日本には発生していない病気を日本に持ち込んではいけないということで一部規制が入っており、業界の中で自主規制も設け、病原菌等を一切持ち込まない、外にも出さないということで徹底し、意図しないものはなるべく持ち込まないということにしている。
  
  
• 熱帯魚は、現在日本の国内で生産されているのか。
  　→熱帯魚の日本での繁殖に関しては、特に高価な熱帯魚ディスカス、グッピー、アロワナ等でされているが、やはり費用対効果を考えると東南アジアには人件費、光熱費等でかなわないので、特殊なものに限られる。
  
  
• 繁殖は池飼いか、水槽飼か。
  　→熱帯魚に関してはほぼ１００％水槽飼いだと思う。
  
  
• 水族館、博物館等で連携して引き取りという話があったが、動物園では哺乳類、鳥類の引き取りを拒否している中で、水族館においてはそういうことが可能なのか伺いたい。
  　→博物館が飼うためではなく、標本として引き取ることはある程度は可能。実際にガーパイクだとか大型のものは、進化の教材というもので欲しいが、購入するのは非常に高額なため、全く不可能ではないとは思う。ただし、安易に飼育がし難いものを飼い、飼えなくなったら水族館が引き取ってくれるのだからいいやという風潮になることを非常に恐れている。
  
  
• 移植を本来分布したであろうということと間違えると大変なことだと思うが、沖縄でとれたインド、ミャンマー産の集団は移植と言い切れるのか。同じく海産種でもあったが、この辺の判断基準はどうか。
  　→グループが全然違う種類なので、自然分布ということは考慮する必要はないと言い切れる。あと、その前後の状況証拠の情報収集も含めて、だれかが放したであろうというふうに考えている。
  
  
• 資料５に幾つかの項目があり、バブル時期の話を聴いたが、項目分けが熱帯魚、金魚、ニシキゴイ、水草という分けになっている。淡水魚の視点で考えると、最も脅威なのは中国や韓国産の温帯淡水魚であるが、こういったものは統計上どこに分類されているのか。また、例えば、韓国産のスイゲンゼニタナゴやヤリタナゴのように、海外と同じく我が国にも分布している種の識別を業者の方々がどういう視点でされているのか。
  　→熱帯魚という中に、外国からの魚は基本的には含まれている。この数字自体、推測であり、輸入統計をもとにはしているが、数量的には、はっきりしていない。
  　　また、種の保存については、愛好家レベルでは真剣に考えている人がいるだろうが、業界では、非常に少ないのが現実と思う。
  
  
• 業界での売り上げの１０分の１を水草が占めているが、これも外国産のものを輸入しているのか。外来の水草が定着するということが、近年非常に多くなっているが、そういう可能性があるのか。また、ビオトープ池などに金魚が大量に捨てられたりする事件が時々あるが、それは個人が捨てるというより、業者が捨てるということの方が考えやすい。店をたたむときに持っていたものを他の店が引き取ることは行われているのか。
  　→水草に関しては、業界の中でも、非常に高価な水草を自分たちで栽培して株分けする方もいたので、ある程度自然をせき止めたようなところで栽培されることもあった。ただし、日本の生態系への影響というところまでは検討されていない。
  　　引き取りに関しては、業者が商売をやめるといっても、どこかしらに必ず分けるなり販売するので、そのままどこかに捨てるということは基本的にはあり得ない。ただし、産卵時期に選別して、選別からもれたものを放流するというのは、業者だけではなく、愛好家の方でも一部は行われているようであり、それが自然の川で繁殖する可能性はある。
  

○	参考人三本菅善昭氏より「藻類（イチイヅタ等）について」説明。その後、参考人と各委員との間で意見交換。

• 海藻の場合、海流に伴って自然に分布域を広げることがあると思うが、提示いただいた例とは、人為的な操作が入っているということがわかっているのか。
  　→想定されるだけだが、船底についていったものと考えられる。

以上