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中央環境審議会野生生物部会
第7回遺伝子組換え生物小委員会 会議録


1.日時

平成14年9月9日(月)10:30~12:00

2.場所

環境省第1会議室

3.出席者

(野生生物部会長) 岩槻 邦男
(委員) 磯部 力 市田 則孝 大塚 直
鷲谷 いづみ 岩熊 敏夫
(専門委員) 加藤 順子 鎌田 博 矢木 修身
山野井 昭雄
(環境省) 福井総務課長
黒田野生生物課長
小林カルタヘナ議定書準備室長
水谷野生生物課長補佐

4.議事

【事務局】おはようございます。定刻になりましたので、中央環境審議会野生生物部会、第7回遺伝子組換え小委員会を開催していただきたいと存じます。
本日の委員会でございますが、「中央環境審議会運営規則」により定足数を満たしておるところでございますので、この小委員会は成立をしております。
本日、岩熊委員それから大塚委員は間もなくお見えになると思います。大井委員につきましては、所用によりご欠席というご連絡をいただいておるところでございます。
それから、私ども自然環境局の中で、7月30日付で、自然環境局長それから自然環境担当官房審議官、総務課長が異動になっております。本日、自然環境局長と審議官は別用がございまして、大変申しわけございませんが、本席、欠席をさせていただいておるところでございます。
そして、7月30日付で総務課長になりました福井総務課長をご紹介をさせていただき
ます。

【総務課長】福井でございます。よろしくお願いいたします。

【事務局】それから、それに先立ちまして、7月16日に環境省にカルタヘナ議定書国内担保法制定準備室を設置いたしました。こちらの小林室長もあわせてご紹介をさせていただきます。

【カルタヘナ議定書準備室長】小林でございます。よろしくお願いします。

【事務局】それでは岩槻委員長、よろしくお願い申し上げます。

【岩槻委員長】それでは、第7回目になります遺伝子組換え生物小委員会を始めさせていただきます。
おおむね、峠は越えておりまして、パブリックコメントに対する対応ということで、できたら、きょう最終的にまとめていただくということですけれども、どうぞよろしくお願いいたします。それでは最初に、資料について事務局の方からお願いいたします。

【事務局】それでは、資料の確認ということですが、お手元にお配りしております議事次第の次に、資料1としまして「遺伝子改変生物が生物多様性へ及ぼす影響の防止のための措置について(案)」、報告書案でございます。それから資料2としまして、その次に「カルタヘナ議定書関係審議会・懇談会中間報告等に対する意見募集結果について」、パブリックコメントの結果でございます。それから、一番最後に、参考資料1といたしまして、「カルタヘナ議定書国内担保法制定準備室の設置について」というお知らせでございます。資料は以上でございます。
それから、あわせて、簡単に最近のカルタヘナ議定書をめぐる動きにつきましてご紹介をさせていただきたいと思います。
8月の末からヨハネスブルクでWSSDが開催されておりましたが、この期間中にカルタヘナ議定書に関して批准国がふえておりまして、現在、EUを含みます34カ国までふえておるところでございます。このWSSD開催期間中に、欧州それからアフリカ、中米、アジアでそれぞれ締約国がふえておりまして、アジアで言いますとブータンがこの期間に入っておるところでございます。
それから、WSSDにおいてカルタヘナ議定書について1年ぐらい前はかなり大きく取り上げられるのではないかというような見通しもあったところでございますが、実際のところはWSSDの中の持続可能な開発に関する世界首脳会議のための実施計画、最終的には、採択されたわけでございます、大分もめたということでございますが。この中の1つの項目に生物多様性条約カルタヘナ議定書、その他生物多様性関連の同意をまだ批准していないすべての国々に対して批准するよう促すという記載が入った程度でございます。
また、我が国の動きとしまして、我が国の持続可能な開発のための日本政府の具体的行動ということで、小泉構想という形で公表されておりますが、この中の具体的な取り組みとして、「今日と明日」という項目、「環境」という副題がついてございますが、その中に生物多様性という1つの項目がございまして、生物多様性条約、生物の安全に関するカルタヘナ議定書の早期締結に努力と、こういう記載がなされ公表されたところでございます。
それからもう一つ、一番最後の参考資料1をごらんいただきたいと思います。ちょっと説明が後先になってしまうような感じで申しわけございませんが、カルタヘナ議定書に対応した国内措置に関しましては、環境省、それから文部科学省、農水省、経産省、この4省で一体となって取り組むということで、実際にこういう取り組みを円滑に進めるためにこの制度をつくる体制をつくろうということで、先ほど申し上げましたとおり本年7月16日付で私ども野生生物課の中にこの4省庁が一体となって新たな制度を検討する、私どもの業界用語ですとタコ部屋と申しますが、そういうタスクフォースを設置をして、現在、具体的な検討を進めているところでございます。各省庁から環境省に併任という形で、環境省においでいただいていろいろな制度の検討、業務に当たっていただいておりまして、先ほどご紹介しました小林室長は総合環境政策局の環境影響評価課長でおいでですが、この準備室の室長も兼務していただいて、全体を進めていこうと、こういう体制を整備しているところでございます。ご紹介させていただきました。

【岩槻委員長】どうもありがとうございました。
それでは、7月にまとめていただきました中間案についてのパブリックコメントが7月25日から8月25日にわたってなされていたわけですけれども、そのパブリックコメントの内容と、それに対応して中間案にどういう修正が加えられ得るかという原案を事務局の方からお願いいたします。

【事務局】資料2、資料1、両方を使ってご説明させていただきたいと思います。
まず、資料2をごらんいただきたいと思います。カルタヘナ議定書関係審議会・懇談会中間報告等に対する意見募集、パブリックコメントの結果でございます。意見募集の方法の概要ですけれども、意見募集をしておりますという周知を環境省のホームページ、それから記者発表、それから個別に資料の配付をして皆様にお知らせし、平成14年7月25日から8月25日までの間にご意見をいただければということで設定させていただきました。
方法としましては郵送、ファクス、電子メール、いずれでも可能という形で、意見の提出先ですけれども、中央環境審議会野生生物部会事務局ということで、このパブリックコメントは審議会小委員会としてご意見をお聞きするというような形でやらせていただいております。ということで、野生生物部会の事務局である野生生物課に意見を出していただくという形にしております。
1カ月の期間の間にいただきました意見はファクスで1通、電子メールで8通、合計9通でしたけれども、1通はお名前の確認ができませんで、これは規定により無効ということにさせていただきました。全体でその8通のご意見を内容の上で整理しましたところ、中間報告の記述内容に関するものが7件、中間報告全般に関するものが13件、合計20件のご意見として整理させていただきました。
そのご意見の概要とそれについての対応方針の案につきましては次の別紙ということで、A4の横組みの「意見の概要と対応方針(案)」についてのペーパーで整理させていただいております。
意見の概要と対応方針の案につきまして、この別紙と資料1でご説明させていただきたいと思います。
まず、別紙の方ですけれども、中間報告の記述、これを具体的に修正するべきという具体的なご意見につきましては7件いただいております。記述につきましては該当する箇所、資料1の報告書でざっとご確認いただければと思いますけれども、まず一番上、1点目、P11、4章の遺伝子改変生物による生物多様性への影響の評価の部分ですけれども、この中で評価に当たっては利用による便益の考慮をしようというような記述が11ページにございまして、そこに関するご意見が1点目です。
便益が高い場合には、その影響軽減措置といったものがある程度手心が加えられてもよいという印象を与えるということで、この便益の考慮というものを削除した方がいいのではないかというご意見でした。これに対する対応方針(案)ですけれども、対応方針(案)の整理の仕方といたしましては、この小委員会としての考え方という表現になっておりますので、このような形で小委員会として考えているということで、間違いがないかどうか、修正するべきかどうかという点をご議論いただければと思っております。
1点目ですけれども、便益の考慮につきましては、便益の性質によっては当然考慮すべきもの、すべきでないものに分かれるであろうという立場は中間報告に述べられております。また、得られる便益とその影響というのは、時間的・空間的スケールがかなり違ってくるので、そういった点も念頭に置いて便益の考慮ということをしていく必要があると。
かなり留意点を付した上で便益の考慮をするべきということを中間報告に述べておりますので、そういった条件がついた形の便益の考慮ということで、このまま位置づけさせていただければというふうに考えています。
2点目ですけれども、影響の軽減措置をとるべきであるというような、影響の軽減措置を申請者に対してやってもらうことを義務づけると、そういった措置について記述したところがございますけれども、その最後に、次の文章を追加してほしいというご意見が2点目です。「……影響が生じた際に発生する遺伝子改変生物の撲滅、封じ込め、防除を含めた影響の軽減に要する費用、原状の回復、生じた被害の補償等に要する費用は全て、環境放出を行おうとする者の負担とし、無過失責任の制度を導入する。」と、こういった記述を追加できないかというご意見でした。おそらく、一番最後の「生じた被害の補償に要する費用の無過失責任制度の導入」ということがこの意見のポイントではないかなと思っております。それに対しまして対応方針(案)ということで整理させていただいております。
現在、被害の補償に関しまして無過失責任が規定されておりますものは、人の生命、身体への被害で、被害者の救済というのが緊急かつ重大である場合に限定して、大気汚染防止法、水質汚濁防止法などで制度化されているものであります。今回仕組もうとしております制度自体が、生物多様性の確保を主たる目的としているという制度でございますので、被害の補償に関して、この大気汚染防止法、水質汚濁防止法と同じような無過失責任制度を導入するというのはなかなか難しいのではないかというふうに考えているところでございます。
上から3つ目以下、これは5章、議定書に対応した国内措置のあり方について記述したところについてご意見をいただいているところです。
1点目ですけれども、12ページ、13ページ、このあたりで環境放出利用を行いたい、行おうとする人が行政当局に申請をして、その計画の妥当性を確認して行政当局に確認してもらうというような仕組みが必要だということを記述しておりますが、その点、その部分の「行政当局」というのを「環境省」と書けないかという話でございました。具体的にはどんな仕組みで行政がその計画についてチェックしていくのかという具体的な点はこれから検討するべきところであろうと思っております。環境省が入るのか入らないのか、どんな構成になるのかといったところ、役割分担につきましてはこれから整理させていただきたいと思っておりますので、今後、法制度を検討する過程でご意見を参考にしながらやっていきたいという対応方針にさせていただいております。
上から4つ目ですけれども、環境放出利用についての手続について、決定の前に専門家の委員会等からの意見を聴取する、それから、情報を提供してだれもが情報を得ることを可能として、必要に応じて国民が意見を提出できるようにするといった手続を書いておりますけれども、その部分ですが、特に国民の意見につきまして、国民の意見を確実に踏まえた上で行政が確認を行うという制度にするべきであろうと。具体的に一番最後にフロー図をつくらせていただきましたけれども、図4ですが、前回も、若干、ここはご議論ありましたが、申請者が申請をし、行政当局が申請書を受理し、専門家による委員会等に意見を聴取をするという行ったり来たりの矢印があり、その下に情報公開をして市民から意見が述べられるような形にするという矢印も用意してありました。この意見という右から左に来る矢印が点線になっていたところ、これを実線にできないのかというようなご意見でありました。前回もご議論いただきましたけれども、どういった形で情報を市民の側に提供していくのか。それから、どういった形で意見を出していただいてそれを反映させるのかという具体的な方法につきましては、まだ細かい制度をどうするのかということを検討する段階には至っておりませんので、今後、ご意見を参考にして仕組みを検討していきたいというようなことでお答えしたいなと思っております。
ただ、図につきましては、その右から左に来る、市民から行政当局に来る意見というのが点線になっていると、意見が出せたり出せなかったりするというような誤解を生むのでないかと。出したいという人については意見は出せるというようなことは状況としては想定していますので、そこは誤解がないように点線を実線にして、余りこの点線、実線には深い意味はないということで、その点線を実線に修正するというご意見に対しては対応したいというふうに考えています。
それから、次の上から5つ目の意見です。また本文の方に戻っていただきまして、また12ページ、13ページのあたりですが、環境放出利用についての利用の決定に当たって申請者がどういうような管理をするのか、どういうようなモニタリングをするのか、緊急時にはどういう対応するのかといった計画を出してきて、それの妥当性を判断して必要に応じて計画の中身、それからモニタリングの計画、緊急時の対応計画、これを義務づけることができるというような仕組みにするべきであるという表現がありましたが、ここのところは、義務づけることができたりできなかったりといった、ちょっとふらふらした書き方ではないかということで、義務づけることを原則とすべきであるという表現に変えられないのかというご意見がありました。これにつきましては、表現があまりよくなかったかなと思いますが、要は行政当局が申請者が出してきた計画の実施を確実にやっていただくような措置を講ずるべきであるという趣旨ですので、「行政当局は、その計画の実施を義務づけるなど、計画の確実な実施の確保を図るべきである。」といった表現に直させていただければ誤解が減るのかと思っております。
さらに13ページで、先ほどの国民の意見をどういう形で組み込むのかといったところに関してですけれども、当初のタイトルでは「影響評価に関する情報の提供」というタイトルの中に、情報を提供してだれもが情報を得ることを可能として必要に応じて意見を提出できるようにするといったような措置が盛り込まれているのですけれども、これに関しては一方的な情報の提供という話ではないので、タイトルを変えたらどうであろうかというご意見でした。「行政当局による確認に際しての社会的合意の尊重」というタイトルではどうだろうかというご意見でありましたが、確かに一方通行の情報の提供ということを言ってるだけではないので当初のタイトルはふさわしくないなとは思いますが、社会的合意というのをこの意見提出で形成しようというところまでを現在目指しているということも言えないのではないかということがありますので、「影響評価に関するコミュニケーションの確保」といった形で、双方向への意見のやりとりというのができる仕組みが必要といったニュアンスが出るのではないかと思いまして、タイトルを修正させていただこうかと思っております。
7件目の一番最後ですけれども、図4、また一番最後のページでございますけれども、申請者が環境放出利用を開始した後、モニタリング計画をやった場合などに関しましては、その結果というのを報告するといったフローになっています。これにつきましては報告の結果というのがどこに行くという矢印もついていないので、これは積極的に情報はオープンにするべきだから、モニタリング結果の報告のところから右側に矢印を追加して、市民のところまで矢印を追加して、情報公表を行うということをしっかり位置づければどうかというご意見です。現段階では最初の段階での申請書をいただいてからの情報の公表の方法、またモニタリング結果をどうするのかといったことも含めて、情報の公表の方法につきましてはまだ具体的に検討している段階ではございませんので、今後、制度を検討する過程でそういったご意見も参考にさせていただきたいという対応にさせていただければと思っております。
以上7件が、中間報告の具体的な記述を変えていただきたいというご意見でした。
別紙の2枚目以降は中間報告全般に関するご意見で、特にどこの箇所ということを明示していないものでした。これにつきまして、ざっとご説明させていただきたいと思います。
一番上ですけれども、これまでご説明いたしておりますけれども、図4などを見ますとモニタリング計画なり利用計画、緊急時計画、管理計画、すべて申請者側がまずセットして、その妥当性を行政がチェックするというようなやり方になっていると。これは使う側の、環境放出利用を促進する立場に偏っているのではないかといった趣旨のご意見がございました。これにつきましては、あくまでも最初に計画をつくっていただくのは申請者ですけれども、その計画についても専門家の意見聴取などにより妥当かどうか判断することとしておりますので、特段、偏っているといったことはないだろうというふうに考えております。
2点目ですけれども、これも先ほどの影響の軽減措置のところですけれども、表現として、影響を軽減するだけではなくて防止するような措置というニュアンスなのではないだろうかと。軽減は、少しでも軽くすればいいのではないかというようなふうに受け取られる表現なので、これはおかしいのではないかというご意見かと思います。表現はこれでいいのかどうかというのは、ややこちらも悩むところがありますけれども、中身としましてはリスク評価によって特定された影響が生じないような管理、それから生じた際に対応が可能な管理というものを中身として言っておりまして、内容としては悪影響を防止するための措置ということを表現したものですので、内容的にはこの表現で十分なのではないかなというふうに考えております。
3点目ですけれども、これにつきましては行政の決定の際に委員会の意見を聴取するという点ですが、この委員会の中には専門家だけではなく一般の市民の参加も必要ではないかというご意見でした。これにつきましては、委員会につきましてはあくまでも専門的な見地から検討する場として設置されるもので、一般の市民からのご意見というのは情報を提供して意見を提出できるようにするという別の仕組みを仕組んでおりますので、そちらで対応をするべきなのではないかなというふうに考えております。
4つ目、それから6つ目が似たような趣旨なのですけれども、有用なもの、医薬品をつくらせたりといったような、動物の遺伝子改変についてのご意見です。これは動物の福祉、そういった観点というのがこの報告の中には欠けているのではないかというご意見が4点目と6点目です。これに関しましては、遺伝子組換え動物につきましても動物の愛護及び管理に関する法律などで、産業動物をどうやって飼養し保管するのかといった基準が設けられておりますので、それに沿った適切な取り扱いがなされることが必要なのだろうと。
それに従わないとそれなりに問題になるというようなことですので、本報告書の中で当面取り上げる話ではないのかというふうに整理させていただいております。
それから、上から5点目、ちょっと1つ飛ばしてしまいましたけれども、同趣旨の意見が3件ございました。農作物を宿主とする遺伝子組換え生物に関しましては現行どおり農林水産省の所管として二重規制とならないよう配慮すべき。現在、農林水産省のガイドラインでの確認といったものがございますので、それにさらにほかの役所が同じような規制をかけるといったことがないようにしてくださいということですが、これからの仕組みを検討する過程でそういう二重規制とならないような方向で検討していきたいというふうに考えているというご返事になっております。
そのページの一番下ですけれども、これは先ほどの動物愛護の観点から延長してきたご意見がその下何点か続いておりますけれども、遺伝子組換え自体を禁止し、バイオテクノロジーへの助成金などというものは出すべきではないというようなご意見でした。議定書の中でも、遺伝子組換えの技術自体は環境と人間に対する適切な安全策を伴って利用されるならば多大な可能性を持つという認識に立っております。この小委員会でも遺伝子組換え技術自体の可能性を否定するというような話ではなく、この技術によって生み出される生物の特性に応じて適切な管理をすべきという立場になっておりますので、組換え自体を禁止するといったことに対しては賛同できないというご返事になっております。
次のページですが、その生物多様性への影響の評価ということに関しまして、生態系全体はなかなかまだ未知の部分があり、環境放出後の評価なり判断ということが可能だという考え方に立っていること自体に無理があるのではないかと。報告書に書いてある評価のやり方というので具体的に評価できるのか、かなり疑問であると。確かにご指摘の点はあると思います。現在の知見で影響の評価を行うということですけれども、そこにはある程度の不確実性が伴うということは避けられないであろうと。そのために、例えば利用後に影響のモニタリングを行っていただくとか、新たな知見が得られた際に再度評価を行うといったような仕組みを今回の制度の中に盛り込もうとしておりますので、そういった仕組みによって事前の評価の段階で明らかでなかったようなことに対応するということではないかと考えております。
次の点ですけれども、さらに予防的に考えるのであれば結果としては予測なり評価なりというのが難しいのであれば、環境放出利用を行わないということが最大の予防措置である、と。環境放出により影響が生じた場合にはまた厳しい罰則を科すべきであると、こういった趣旨のご意見です。これに対しましては、国内で環境放出利用をするに当たりましては、個別に影響がどのぐらい出るのかという評価を行って、影響の程度に応じた軽減措置を講じる仕組みによって悪影響の予防は可能だと。ある程度の知見はあるので、その範囲内で影響の評価をすることによって悪影響の予防は可能ではないかという考えに立って制度を仕組んでおりますので、利用を行わない、行わせないということをしなければ悪影響が予防できないという観点には立っていないということです。罰則をどうするのかということにつきましては、今後、制度を検討する過程で参考にさせていただければというふうに考えています。
さらに上から3つ目ですけれども、これは先ほどの二重規制の話と同じようなご趣旨だと思いますけれども、関係省が多いものですから、関係省庁間で十分に調整を図って、煩瑣な手続にならないようにしてほしいと。これにつきましても今後の制度の検討の過程で参考にさせていただけるかと考えています。
一番最後ですけれども、ちょっと小さい字で書いてありますが、農水省さんの中間報告に対するご意見というのを、こういうのを出しましたので参考までにお送りしますということでいただいたご意見です。個別のご意見につきましては農水省さんの報告に対するご意見ですので、こちらの方で直接答えるということは必要がないと考えております。ご指摘いただいた点につきましては、今後、制度を検討する過程で参考にさせていただきたいというご返事をさせていただければと思っております。
以上がパブリックコメントの概要と、それに対する対応方針の案でございます。
資料1の方で再度ご確認いただければと思いますけれども、パブリックコメントを受けて修正しました点は13ページの上から4行目から5行目です。その計画の実施の義務づけのところですけれども、表現を整理させていただきまして、「行政当局は、その計画の実施を義務づけるなど、計画の確実な実施の確保を図るべきである。」というような表現に変えさせていただければと。
それからその下ですけれども、これは実はパブリックコメントを受けてということではないのですが、専門家からなる委員会等の意見を聴取するというようなことにつきまして、別途、委員から修正が必要なのではないかというご意見をいただきました。専門家の中立性の話ですけれども、もとの文章が「意見を聴取する専門家については、専門性を有するとともに中立的であることが必要である。」と。専門家の中立性というのはなかなか確保できるかどうかはわからないと。ここで言いたいのは、要は専門家よりなる委員会が中立的であるべきだという趣旨だということなので、「委員会は中立的な構成とする」というような表現に変えた方がいいのではないかというご意見をいただきましたので、修正させていただいております。
さらに13ページの下の方の固まりですけれども、「影響評価に関する情報の提供」というタイトルになっていたところですけれども、ここを情報の提供だと一方的な印象を与えるので、中身から見るとそうではないので、「影響評価に関するコミュニケーションの確保」というふうに変えさせていただております。
それと一番最後の図4ですけれども、点線で矢印がついていたところ2カ所を実線に変えさせていただいているといったところを、パブリックコメントなどを受けまして修正したい点とさせていただいております。以上です。

【岩槻委員長】どうもありがとうございました。
いただいたコメントは必ずしも数は多くないのですけれども、よく考えられていただいたものが多かったと思います。それについて委員会でのこれまでの議論を踏まえて整理をしていいただいて詳細にご紹介いただいたわけですけれども、結果として最後にご紹介いただいたようなその案に対する修正点が提示されています。1点は委員からのご意見も含めてということですけれども、これらのことにつきましてどうぞご自由にご意見をお願いしたいと思います。どうぞ。

【山野井委員】委員長おっしゃるように、ポイントをついているものが多いと思うのですが、ただ、多様性に対する影響という問題と、人の健康に対する影響という問題との関係については、多様性に対する影響というのはもちろん大事なのですが、人の健康に対するという部分が相当強く意識されているような気がするのですね。例えば、2番目の影響の軽減措置というところについても、無過失責任の問題ですけれども、「人の生命、身体への被害云々」と書いてありますが、もしこれが多様性だけの問題で、生態系が変わってしまったということによることであれば、確かに、この範囲外かもしれませんけれども、影響を受けたということになると、これは当然ここに入ってくるような気もするのですよね。
それで、そういう面でもう一度、先ほどの本文を見てみると、これは大分今までの検討の中でも論議されていたのですが、資料1の8ページ目、上の方の6行目からのところですね。「また、カルタヘナ議定書では、人の健康に」というところで、「環境を経由して非意図的にヒトが遺伝子改変生物に暴露することによる」云々と、こういう文章があるわけです。これが今までの論議では国際的にも健康という問題に対する考え方は、ダイレクトというよりも環境の変化、多様性の変化というものを通じて何らかの形で影響を及ぼすというふうに理解していたのですが、例えば11ページ目の上の方の「ア」というところ、「人への非意図的暴露の結果、遺伝子組換え生物の病原性の発現などの健康影響が生じる」云々とありますが、このイメージはLMO自体がハザードであると、こう受け取れる部分なのであって、ですから、そうなると先ほどの2番目の影響の軽減措置、11ページの無過失責任云々という問題は、環境の変化を通じてということだけではなくて、ダイレクトであれば当然これ入ってしまうのではないかという、あるいはそういうことを意図されてこれを書いておられるのではないかという気がしたのですが、この辺いかがでしょうか。

【岩槻委員長】事務局か、ほかの委員の方からでもよろしいが、いかがでしょうか。

【山野井委員】ちょっとひっかかるものですから。

【岩槻委員長】事務局の方から何かコメントはございますか。

【事務局】8ページと11ページの表現がちょっと違うのではないかというご指摘……。

【山野井委員】私の受け取り方ですが。

【事務局】確かにこの小委員会の中で、人の健康の影響というのは何を対象にするのかというお話がありまして、それは環境を経由して何かLMOというのが外に出ていって、環境を経由して結果的に人に対する健康影響を出した場合、それについて限定して考えるべきではないかという整理をさせていただきました。
11ページにつきましてもそういう趣旨で書いているつもりでして、これは直接的な影響というのをここでは書いているというつもりではございません。ただ、読まれた方がそこは人の健康への直接影響というものを念頭に置きながらご意見をおっしゃったのかもしれないというところは確かにそういう懸念はあると思います。

【山野井委員】申し上げたかったのは、多様性条約の中のカルタヘナ議定書という視点に立って、それに由来する影響というのがベースですから、LMOの場合に人体に対するダイレクトの影響というのはあるかないか、それは別の法律によるというか、そこはきちっと区別しないと。それが一緒になって、つまりどっちが上位概念になるかというのがはっきりしないような形になると、物すごくいろいろなことが今後の展開の中で出てくると思うので。ちょっと私自身がよくわからないことで、委員の方々はよくおわかりになっていると思うのですけれど、一般の国民の皆さんに対してそこを区別しないと……。というのは、現在におけるLMOについての一般の国民の皆さんの受け取りというのは、環境云々という問題よりもダイレクトになっていますから、そういう基本的な一般の国民の皆さんの常識的なベースの中でこれが出てきたときに、やっぱりそう受け取られる可能性もあるので、そこは違うのだと、別な法的なことできちっとチェックできるのだということをもう一回明確にしておく必要があるかなというふうに思ったものですから申し上げました。

【岩槻委員長】ほかの委員の方から、今のことについて、どなたかコメントございますでしょうか。加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】すみません。私もちょっと混乱しているのですけれども、11ページのところなのですが、「非意図的暴露」と書いてあって、これはやっぱり直接のハザードを考えていると私は思っていました。つまり、食べるというようなものではなくて、例えばバイオレメディエーションのためにまいた。それは、食べるのではないのだけれども、人が摂取することを目的でまいたわけではないのだけれども、人がそれに暴露されて害があったという場合は、ここの「ア」に入ると思っていたのですけれど。
そういう解釈のときに、山野井委員がおっしゃったような問題が生じてくるかどうかというところなのかなと思うのですけれど。

【大塚委員】これは微生物の場合ですので、結局、微生物が一たん環境に放出されて、それが人体への影響があるということに一応なりますので、この問題については、一応、環境に出た結果としてということになりますので、カルタヘナ議定書の適用範囲に入るというふうに理解できると思いますが、多分事務局もそうだと思うのですけれど、一応申し上げておきます。
それで、先ほど出ていたパブリックコメントの2つ目の問題についても、これはかなり専門的な意見ではないかと思いますが、これもやっぱり一応環境に放出された結果、人間への影響、あるいは財産への影響ということもあり得ると思いますけれども、があった場合を想定していると思いますので、これも一応そういう前提でパブリックコメントも出てきているという理解は可能だし、ここでもそういうふうに理解した上で検討すべきではないかというふうに思います。
右側に書いてある「生命、身体への被害です」というふうに出ているのは、これは大気汚染防止法とか水質汚濁防止法との関連性を対比をするために書かれていることだと思いますので、これで一応、整理としてはよろしいのではないかというふうに思っておりますが。

【岩槻委員長】山野井委員、今のご意見で。

【山野井委員】ちょっと私の解釈の仕方が浅かったという気もします。ただ、一般の国民の皆さんがこれを見てどう受け取られるかということも大事だなという観点で申し上げたつもりなのですけれども。それから、今、大塚先生のおっしゃった部分については、したがって影響のあった場合、つまり人体に影響のあった場合は、これは当然無過失責任に問われるというか、そういう範疇に入ってくると、こういうふうに考えるべきことなのですね。

【岩槻委員長】大塚委員、どうぞ。

【大塚委員】必ずしもそうではなくて、これはむしろ民法709条の問題になると思いますけれども、一般的に、過失責任として民法709条というのはもとからありますので、何も特に法制度をつくらなくても事業者の方が過失があって、結果的に損害賠償責任を負うようなこと、損害が発生するようなことがあれば過失責任に基づく損害賠償ということは問題となるわけですが、大気汚染防止法とか水質汚濁防止法で特に規定しているのは、人の生命、身体への被害があって、かつ特定の有害物質によって損害が発生しているという場合について、特に迅速に損害を賠償させる必要があるというふうに考えられますので、事業者の過失を問わずにそういう場合には損害賠償責任を負わせるという特別の規定が置かれておりますので、過失責任としては一般的にあるということだと思います。はい。

【山野井委員】わかりました、過失責任という意味で。

【大塚委員】はい。

【岩槻委員長】よろしいですか。鷲谷委員、何かご発言。

【鷲谷委員】2番目の意見に関して、今のとちょっとまた違うのですけれども、無過失責任の制度の導入ということなのですが、小委員会での議論がどうだったかちょっと私も今よく覚えていないのですけれども、私個人としてはかなり妥当なご意見のような気もするのです。というのは、こういうことがあると導入時に相当に慎重な検討とか判断ができるのではないかという意味からなのです。そうすると、予期せぬ失敗などを防ぐという意味では、こういう制度というのはかなり効果があるのではないかと、素人ながらに思っているからなのです。
それで、小委員会でどういうふうな議論があったかということを踏まえてこの報告は書かないといけないと思いますので、今のは個人的な意見なのですが、この対応方針の説明がちょっとよくわからないところがあります。人への直接の被害と、それから、生物多様性を介しての間接的な被害というのの軽重をこういうふうに論じることができるかというのが、短い文章で書かれたのでこういうふうになっているのかもしれないのですけれども、何か当然困難というふうな感じで書かれていますが、ちょっとその背後にもしかしたらさまざまな社会的なこととか、行政上の理由があって、それで困難というふうに出てきているのかなという。この文章だけではちょっと十分な説明になっていないという印象を受けました。

【岩槻委員長】これは事務局の方がいいのか、大塚委員にお伺いした方がいいのか、どちらですか。

【大塚委員】まず、事務局から。

【岩槻委員長】まず、それでは事務局の方から。

【カルタヘナ議定書準備室長】ここは従来の法制の相場観といいますか、どんな形でやっているかということを述べておりまして、従来、人の健康、あるいは生命を脅かすような場合に無過失責任というのが、大塚先生からお話がありましたように、いわば民法の原則に特例をつくるような形で規定があると。一方で、その自然環境を云々するような部分についてここまでの規定はないというような全体の相場を述べております。
それからもう一つは、山野井委員からもいろいろございましたが、カルタヘナ議定書が、最終的な目標は生物多様性の保全、それから持続可能な利用にあることは明らかでございます。そこで「人の健康についても考慮しつつ」という、非常に微妙な言い方がされておりまして、視野には入れるべきであると。ただ、直接人間の健康を扱うという制度ではないということで、範囲の問題としては環境を経由してくるものについて視野に入れていくというような整理だろうという理解をいたしまして、そういうことを総合いたしますと、従来の大気、水並みに扱うというのも困難であるのかなということを書いております。
具体的にはかなり制度的な問題でございまして、最終的には全体制度の中で検討していく必要があるというふうに考えておるところでございます。

【岩槻委員長】よろしいでしょうか。何か大塚委員、コメントありますか。

【大塚委員】余り話を広げないようにしたいと思いますけれども、ECとかでもこの生物多様性に関する環境損害の賠償制度をつくるというような動きがありますので、将来的にはそういうことを我が国も考えるべきときが来るのではないかと私も思ってはいますが、ここではそういう議論は一切今までしておりませんし、今までの民事訴訟とかの制度とは大分違う話になりますので、そういうことはとりあえず難しいということが1つございます。
それからもう一つは、ここで出てきている無過失責任というのは、とりあえず健康被害とかその財産被害に対するものだというふうに考えられますが、そういうものについても、今、事務局からご説明がありましたように、民法の過失責任の原則に特例を設けるということになりますと、かなり明確な特定の場面について、類型的な場面について特別の例外的な責任加重をするということになりますので、今回のその生物多様性との関係で、環境を通じて何かバイオハザードがあったという場合について、そういう類型的な明確な限定というのがとりあえずはちょっと難しいという問題がございますので、当面は難しいということではないかと思います。だから、現在のところ困難というのはそういう意味で、限定も加えてあってよい書き方ではないかというふうに私も思っております。

【岩槻委員長】よろしいでしょうか。ほかに。矢木委員、どうぞ。

【矢木委員】私も加藤委員の、ちょっと混乱しているといいましょうか、そういう見方で見ていなかったところもありまして、実は生物多様性ですから、生物多様性への影響があって、そして人への影響というようなことで、例えば9ページを見ていただきますと、危惧される影響というところで丸が上から4番目で、「ヒトへの非意図的暴露の可能性」と、それから微生物の場合ですと、また「ヒト・動植物への非意図的暴露の可能性」というようなことで、この辺のところから直接なところは余り触れないで、それは別の考え方だなということで、ですから、私も11ページはそういうようなとり方で、たまたま捨ててしまったとか、そんな意味ではないかなというふうにとっていたのですけれども、そういうふうにとれればいいのではないかなというふうに思っております。
それに絡んで、例えば8ページのところで、先ほども山野井委員が指摘されましたけれども、上から3つ目のパラグラフ、「さらに、産業への影響、遺伝子改変生物を利用することに伴い不可避に生ずる影響についても、検討する必要がある。」ということで、この不可避に生ずる影響がどうだったのかちょっと記憶がないのですけれども、何かこの文章をわざわざ入れる必要があるのかなというような、ちょっと気がいたします。
その中で9ページをまたちょっと見ていただきますと、一番下の段落なのですが、「収集すべき情報」ということで、実はここのところで本当は人への毒性というのが出てくるのかなと思って、どの程度書いてあるのかなということで、これちょっと再確認をしたのですが、基本的には[1]というここで「受容生物/親生物に関する情報」、それから、多分これが毒性といいましょうか、情報が入ってくるのだろうと思うのですが、[2]に「DNA供与生物に関する情報」というのがありますので、実は供与遺伝子の情報が余り表に出てきていないので、[2]の中に入れてしまうかあるいは改変生物と[4]に入れてしまうかと思ったのですが、やっぱり[3]として供与遺伝子の情報というのを取り上げて、独立させた方がいいのでないかという気がいたしまして、この中で余り病原性のことは書いていないので、非意図的暴露ということで理解できるのではないかなという気がしておるのですが。以上ですが。

【岩槻委員長】これは事務局の方からですか、コメントいただけますか。

【事務局】1点目の8ページの「不可避に生ずる影響」というのは、この小委員会で前半に若干ご検討いただいたかと思うのですけれども、例えば特定の農薬に耐性を持っている改変生物というのを、かなり広範囲に栽培するといったときには、従来やっていた農業のやり方、農薬のまき方ということとかなり違ったことをしなければならないと。それが求められるわけですけれども、結果として従来改変生物でないものを栽培していたときのやり方と、改変生物を利用することでとらなければいけなくなってしまった農業のやり方と、その差というのが生物多様性に対して影響を与えるということがあるのであれば、それも検討する必要というのがあるのではないかというご意見がありまして、ここについては検討する必要があるということで入れさせていただいているものでした。
あと、収集すべき情報の中のDNA供与生物の中に、当然、その供与DNA自体の特性、その病原性とかというのは入っているという意識でありますけれども、そこは明確にした方がよろしいでしょうか。当然、入っているというふうに理解はしておりましたが。

【矢木委員】ただ、ガイドラインでは全部独立して、例えばベクターに関する情報が全く同じ位置づけではないかと思うのですね。ベクター自体もそうすると入れなくてもいいのではないかということなので、ベクターも入るのであれば、何を入れたかということが、供与生物ということになっていますので、生物及び遺伝子とかなんかは、斜めを入れて加えたらどうかと思うのですが。

【岩槻委員長】これは、ほかの委員の方はどう思われますか。鎌田委員、どうぞ。

【鎌田委員】今のように書いてもいいのかもしれない、今のことで言うと[4]の改変の特性に関する情報の中にどういう遺伝子を入れたからこういう特性になったのだよと一般的には解釈されるので、あえて入れなくてももちろん情報として入ってくるだろうと思います。

【岩槻委員長】ほかにはございませんか。

【鎌田委員】全然違うことでよろしいですか。

【岩槻委員長】はい、どうぞ。

【鎌田委員】パブリックコメントもこの間から読ませていだいていて、それに対する回答も特に問題はないと思っているのですが、この中間報告案が出てから実務をやるということを現実的にいろいろ考えていく中で、今回の修正のところにもかかわっている、例えばパブリックコメントを求めるところなのですが、実線で返すというような、その解釈は先ほどお聞きしたのでいいのですが。ただ、例えば文部科学省で何かこういうことで審査をしようとするときに、現実的な2つの問題を、今のこの中間報告にかかわって抱えております。
1つはパブリックコメントを求めるというときに、ここでも議論しましたけれども、どこまでの情報を出せるのかと。要するに特許の問題だとか、いろいろな現実的な問題がある。文科省の今の委員会でも要するに秘密保持ということを大前提として審査会が行われているという中で、例えば遺伝子の名前も隠すとかという状態の中で、一体、何が本当のところパブリックコメントとしてできて、それに対する意見に対してそれを受けてから審査に入るという形が本当にできるのかという。今回は必ずしもそこまでの本文では書かれていないのでいいのですが、これから多分作業されるときに、具体的にどういうふうにやるかという、現実的な作業をやるときのことを考えないと、理想としては大変いいものではあると思うのですが、理想と現実がかなり違う部分がある。
それから、さっき言ったように基礎研究の場合の特許保持性というような問題。産業利用になった場合には、もう、ある意味では特許保持みたいなことは多分クリアした上で出てくると思うのですが、基礎研究では必ずしもまだよくわからないからこそやって、それで特許をとっていくという形をとるので、そこら辺のところはちょっと考慮をした方がいいのではないかなというのが1点です。
それからもう一点が、何かが生じたときに具体的に、例えば回収する方法を記載しろというのがあるわけですが、何が起こるかわからないことを、要するに想定できればもちろんモニタリングという形で出ていくわけですが、想定できないことも考えて、例えば緊急避難的に回収方法を記載しろというような記述になっているわけですが、それをどれだけ義務化するかという問題。要するに最後の、ここではそれを「図るべきである」と書かれているのでそれでいいと思うのですが、現実を考えたときに、例えば組換え農作物なんかだったら見つけたら引っこ抜けばいいじゃないかと、一生懸命探して引っこ抜けばいいじゃないかということでいいと思うのですが、例えばこれが組換え微生物でレメディエーションをやるといったときに、何が起こるか私にもよくわからないのですが、例えばこの範囲で利用しようと思っていたけれど、何かのうちにそれも大雨が降ってどこかに流れてしまったと。で、回収しろということは現実的かと。多分、非現実的なんですよね。そういうことを書けと言っても書きようがないのだと思うのです。要するにいるかどうかも特定できない。極端なことを言うと、日本じゅうの全部の土、水を集めて全部きれいにしろと、それを書くことに意味があるかと。非現実的なことを書くことは多分意味がない。そういう中で予期しなかったことが起こった場合にどうすべきかという、それももちろん理想としてはそうなのですが、それを現実の立場で例えば申請書を私が書こうとしたときに、本当に何が書けるのかなというのがよくわからない。しかも、予期しなかったことが起こるというのは、例えば出てしまったじゃないかということが問題なのか、現実的に環境に何か多大な影響があったからこうなのだということなのか、そこら辺もよくわからない部分でして。書かれていることを、だから私は今回の報告書自身はこれでいいと思っているのですが、だけど、現実的に書かれたことを実行しようとしたときの具体的なものが浮かばないケースが幾つか出てくるということをちょっと心配しているということです。
だから、それは、これから実際に法律化する中でそういうことも意識しながら多分具体案をつくらないと、非現実的な法律をつくってしまっては意味がないだろうと、そういうことでございます。

【岩槻委員長】多分、これまでの議論の中でもそのことは意識されながら議論されているのだと思うのですけれども、準備室長、何かコメントございますか。

【カルタヘナ議定書準備室長】今のお話で、まず最初のリスク評価なりチェックのところで、一体何をどこまでチェックすべきか、またできるのかという問題がございます。それから、それが必ずしも思うようにいかなかった、あるいは不測の事態が起こったときに追いかけていける仕組みはどういうふうにつくるのか。前の方と後ろの方の全体でうまく管理していくということになろうかと思います。
前半も、今までご議論いただいておりますようになかなか難しい面がございます。後半はまた一段と難しいわけでございますが、いずれにしても、この前と後ろの全体の組み合わせで大きな問題がないように、また社会の信頼が得られるような制度をつくるということかと思っております。その中で必要なことをやっていくということと、今、先生からご指摘ございましたように、現実に機能するものでございませんと意味がありませんので、そこら辺を見きわめていくということかと思って、悩んでいるところでございますが、今のご指摘を参考にさせていただきながら今後考えていきたいと思っております。

【岩槻委員長】ほかに。岩熊委員、どうぞ。

【岩熊委員】今までのとはちょっと違うのですが、申請書全般に関する意見で3枚目の一番最初の意見、これは生態系への影響というものをやはりなかなか判断できないじゃないかというのは、これ、非常に耳の痛い話で、そのためにモニタリングを行うわけなのですけれども、図の3と4がつくっている目的が違うので必ずしも対応する必要はないのですけれども、やっぱりモニタリングのところを、環境放出の開始のすぐ後にはっきり入れておいた方がいいかなと思うのです。図4ですと「条件に従った環境放出の開始」というところのすぐ後に「モニタリングを行う」、その下に「モニタリング結果等の報告」というふうに入れると、モニタリングということをきちんとやるのだという意思がもう少しはっきり出るかと思います。
それから、やはり報告書の意見の中でいろいろ見ていますと、感じるのはやっぱり委員会の情報、それからモニタリングの情報がどれだけ公開されるかということだと思うのですね。それに関しまして修正していた箇所があるのですが、13ページの第2パラグラフで「委員会等を設置し、専門的見地からの意見を聴取し」とあるのですが、その後に「意見を聴取する専門家については、専門性を有する」とありまして、専門性のない専門家というのは何なのかなというふうに感じます。
それで、ここは、例えば委員であって、専門性は本当になければいけないのかですね、その委員会の構成は。その辺が多分パブリックコメントを出す側でも気にされているのではないかなと思うのです。ですから、中立的であるときに本当に専門家だけでもいいのかどうか、もう少し、ほかの方を委員に入れてもいいのかどうかということを考えておいてもいいかもしれません。ただ、この段階では「専門家等による」というぐらいでよろしいのではないかなと思うのですけれども、「専門性を有する」ということはあえてここで言わなくても、その前に「専門的見地からの意見を聴取し」というふうにありますので、要らないのかなと思います。むしろ、中立的であるということをはっきり述べておけばいいのではないかと思います。

【岩槻委員長】いかがでしょうか。室長から、それでは。

【カルタヘナ議定書準備室長】文言のところは「……専門家については、専門性を有するとともに」と、専門性を有するのはもちろんのこととしてという気持ちでございましたが、表現はちょっと工夫をさせていただいた方がよろしいかなと思います。
ここのところが専門家だけなのか、もう少し幅広い人が要るのかというところはもちろん重要なポイントだと思っておりますが、ここはパートが特に環境放出のところについては厳格なリスク評価が要るということになっておりまして、そのためには専門家の見解が要るということを強調したものでございます。
その2段落下のところに、先ほどのコミュニケーションの確保というようにさせていただいた部分、これはもちろん開放利用の場合と封じ込めの場合と大分異なる面もあるのかもわかりませんが、もう少し全般的な見地からコミュニケーションの確保、特に情報の公開、あるいは、場合によってご意見をいただくというようなことを位置づけるべきということで、これは制度としてどういうふうに、一体化した方がいいのか、別にした方がいいのか、この辺はまた考慮があろうか思っておりますが、一応、事の性質として分けて書かせていただいたということかと理解しております。

【岩槻委員長】磯部委員。

【磯部委員】若干といいますか、基本的には日本語の問題のようなことを申し上げますけれど、まず11ページで「軽減措置」という表現があり、これについてパブリックコメントで軽減措置という表現では何か心配だというようなニュアンスのご意見があるわけですよね。しかし、これ、本文を読みますと「特定された影響が生じないような管理や、生じた際に対応が可能な管理」などを総称して軽減措置と言っているわけですけれど、普通
の日本語の感覚としてやっぱり、「軽減」というのは、ゼロにはできない、しかしなるべく和らげるのだということなのでしょうけれど、場合によってはゼロまで軽減できるというか、抑止できる、防止できる措置も含めての総称だというふうにお使いなのならば、「防止・軽減措置」とか……。いや、ちょっと、書かれている中身に比べて表現としての軽減措置がいかにも、完全防止はできないけれどなるべく和らげるのですよというだけの表現にとどまってしまっているような気がして、再考の余地はないのかなというふうに考えたことが1点です。
それから13ページの、先ほどの専門性のところは岩熊先生ご指摘のとおりで、これは日本語としてちょっと修正していただいた方がいいかと思いますけれど、その上に第1パラグラフで直っておりまして、計画を義務づけるのだと、計画の確実な実施の確保を図るのだという表現があって、この方が明確でよろしいかと思うのですけれど、そこで先ほどの無過失責任論とちょっとかかわるのですが、法的に言えば無過失責任制度を導入することにはまだちょっと距離があるなというのは日本の法律制度の一般的な相場観からすればおっしゃるとおりだろうと思うのですけれど、むしろそれよりもこういう計画を提出していたら、しかし計画どおりにやらなかった場合とか、そういう義務違反行為があった場合にどうするのかとか、これも罰則程度で足りるのか、むしろ原則は、原状回復というのは大変難しいのだというのは鎌田さんのご指摘のとおりで、そういう場合ももちろん多いでしょうけれども、いろいろなケースがあるでしょうから、義務違反とかその他もろもろのルール違反があった場合にどうするのか、罰則を含め、あるいはもうちょっと行政的な措置で緊急的なことを命ずるとか、さらにはそういったことを見逃した場合の行政の責任とか、いろいろなことがあるわけで、その最後にどうしようもなくなった場合、無過失責任はどうなるのだろうかというようなことがあるのだろうと思います。
そういう意味では、このパブリックコメントへの返答の仕方も、無過失責任は無理ですよというだけ答えるのはちょっと愛想がないので、そういうきちんとした仕組みを担保するために法的にどういう担保制度をつくっていくのかということに関しては、この報告書ではそこまでは細かくは書かないのだと、今後法制度化に当たって専門的な検討をするのだという理解だったと思いますので、私もそういう理解でここに余りごちゃごちゃ書かないということに賛成した記憶がございますので、ご指摘の趣旨はわかるから今後きっちり検討していくのだというスタンスが伝わるような表現で回答された方が、お互いにハッピーなのではないのかなということをちょっと申し上げたいと思います。
最後に、これも岩熊先生ご指摘にあった図の4のモニタリングの位置づけなんかは確かに環境放出が開始されたら直ちにモニタリングが始まるわけでしょうから、位置づけとしてはその方がいいのかなという気はしますけれど、私が申し上げたいのは、これもパブリックコメントにありましたように、結果を公表するのだということをチャートの上でも明示したらどうかということなのですけれど、これはその必要がないというご判断だと伺いまして、それもわかるのですけれど、わかるというかちょっとそこがどういうあれなのでしょうか。この決定内容の公表ですね。許容できるとかできないとか、変更を指示したとか、そういう公式な行政の判断、行政決定は公表するよと。そうではなくて単なるモニタリングの結果ならば、ちょっと性質が違うからわざわざ公表と書く必要もないというご説明だったのでしょうか。いや、行政の説明責任とか、情報公開という制度趣旨から考えれば、モニタリング結果等も当然公表するのだと言っておいた方がはるかに安心感を伴うのではないか。何かそこだけ線がない、頑張る必要があるのかどうかですね。むしろ、都合の悪い、ぐあいの悪い結果が出てきたら隠すつもりなのではないかみたいな、勘ぐられるリスクを冒す必要はないのではないのかなということをちょっと申し上げたいと思います。以上です。

【カルタヘナ議定書準備室長】多岐にわたるご意見をいただきまして、ちょっと簡単なところから申しますと、最初に専門家については云々のところはご指摘のとおりでございますので、先生方がよろしければ「意見を聴取する」、これ13ページのところでございますが、「委員会等は中立的な構成」というような、簡単にさせていただければいかがかなと思っております。
それから、2番目にございました11ページの軽減措置のところは、ちょうどここは各先生のご意見を伺ってと思っておりますが、極力影響がないにこしたことがないわけでございまして、そういう意味で「防止・軽減」という言い方もあろうかと思います。ただ、一方で対象が生態系への影響というようなことで、非常に従来の化学物質などを扱うものに比べますと、なかなか判然とわかりにくいところがございます。常になかなかわかりにくい部分があるということをむしろ前提に、いろいろなものを仕組んだ方がいいというようなご意見もあったかと思いまして軽減措置としております。ここはどちらの方がニュアンスが出るかということをご議論いただければと思います。
それから、モニタリングのところでございますが、確かに図の4のところはそもそもモニタリングというものが位置づけられずに、モニタリング結果の報告だけが書いてありましたところがややバランスがよくなかったかと思っておりますので、環境放出の開始の後にモニタリングというものを位置づけるということがよろしいのかなと、今、お話を伺って感じるところでございます。
結果公表のところが余り書いておりませんのは、実はこのモニタリング自体はどの程度どういうふうに位置づけるかということが、具体的なものを考えていきました場合にどこまできちんとできるかということも含めまして、検討課題でありましたものですから必ずしも書いてないと。それから、報告書全般の中では広い意味のモニタリングと申しますか、直接携わる方がしっかり見ていくという部分と、不測の事態について公的な部分が見ていくような、少し性格の違うものも書いておりまして、そういう意味でいろいろな中身があるということで必ずしも書いていなかったということでございます。
ただ、モニタリングの結果は問題があれば出さなければ非常に問題でございますし、問題がなければもちろん公表した方がいいわけでございますので、基本的に表に出てくるということが基調であるということは、そういう認識でいたところでございます。
ですので、ここは少なくともモニタリングというのを頭のところに位置づけさせていただいて、あとは具体的な検討にゆだねるというふうにしていただくか、やはり結果の報告のところは非常に重要であるということであれば、書いていただくという道もあろうかと思っております。

【岩槻委員長】どうもありがとうございます。山野井委員、どうぞ。

【山野井委員】今の磯部先生の、影響の軽減措置のところのゼロ化を目指すという言葉を入れるかどうかということについてなのですけれども、理想的にはそのとおりなのですが、実質私のイメージとはゼロ化というのはできないと思います。というよりも、ゼロ化を目指すと書くと、多分、ゼロ化かどうかというということが議論になって、いつまでたっても実行できないのではないか。と申しますのは、どの程度の範囲のことをもってそれをゼロ化と考えるかということで、例えば文章がどこかにあったかもしれませんが、LMOを投入することによって、単なる目に見える生物系の変化だけならある程度、それも非常に多様ですから難しいですけれども、その上に更に物質循環機能みたいなところまで考えて、それが結果的に何年かたってどういう影響が出てくるかというようなことまで想定するといったら、そこをクリアしなければ導入すべきではないということになると、多分、ほとんど、実質導入できなくなってしまうのではないかと。そういう意味からいって、私は軽減措置、ゼロ化を目指すという言葉を安易に使うと、ゼロ化が絶対条件みたいになってしまって動きがとれなくなる危険性があるので、これでよろしいのではないかというのは私の意見です。

【岩槻委員長】いかがでしょうか。

【磯部委員】科学的にはそのとおりなのだろうと思いますけれど、その11ページの軽減措置の文章の第1行目に「特定された影響が生じないような管理」とありますよね。影響が生じないような管理のことを、では何と言えばいいのでしょうかということです。

【岩槻委員長】どうぞ。

【市田委員】今の山野井さんのご意見ですけれども、現実問題として難しいことがあったとしても、最初からそうだという前提で全部を組み立ててしまうと、やっぱりそれはかなり危険だと思うのですね。なおかつ、社会的な合意は非常に得にくいだろうと思うのですよ。ですから、ここに「特定された影響が生じないような管理」という言葉が、言葉として入っていると思うのですけれども、全体的な考え方として、先ほど鎌田先生もちょっとおっしゃったのですけれども、もう放出してしまったものはどうしようもないのだという前提でこれが動いていくとすれば、これはやっぱり相当問題だと思っていて、私そのときに申し上げようと思ったのですけれど、また議論を蒸し返すのもなんだなと思ったのでちょっと申し上げなかったのですけれども。やはり科学的なことはいろいろわかっているようなお話がありましたけれども、科学的なことだって生態系の中でどのぐらい何がなっているかということはわからないことはいっぱいあるわけですよね。わからないことがいっぱいあるけれど、それを何とかしようという努力の中で物事が成り立っているというふうに私は思うのですけれども。

【山野井委員】努力目標は、さっき申し上げたようにそれは非常に大事なことです。ただ、今特定された影響というのは、これは、だからわかる部分の、今、想定できる部分について影響が出ないということはこれは当然なのですが、実はわからないことがいっぱいあるのではないかと。やってみないと。だからモニタリングの問題も出てくるだろうと。ですから、スタートの段階でわかる範囲においてゼロ化というのならまだわかるのですけれど、ただ単純にゼロ化と言ってしまいますと、将来何が起こってもそれはおかしいじゃないかと、こういう話になってしまうのではないか。なぜそこでチェックしなかったのですかということになってしまうので、それはやり過ぎではないかと、こういう意味でございます。恐らく実質できないのではないかということになる危険性があるのではないかという意味です。実際上の問題です。

【岩槻委員長】市田委員、どうぞ。

【市田委員】後で問題が起こったときに、なぜそのときにそれができなかったかという反省はやっぱり常にすべきではないんですか。

【山野井委員】それはそのとおりなのですけれど、要するにこれを導入する時点で、そのときの最新の科学的な知識を全部動員しても、わからないというケースがあった場合、それもわからなければスタートしないかどうかということを申し上げているわけです。
最新の、世界じゅうのあらゆる最新の知識を持ってきても、わからないことが数年後に起こったと。その時点ではわからなかったことを数年後に起こったというケースを、わからなければスタートできないといったら、これはちょっと私は難しいのではないかと、こういうことで申し上げたわけです。
ゼロ化というのは、厳密に言いますとそういう意味ですから。あらゆることが起こらないことをゼロ化と判断すれば、そういうことになってしまうと思いますので、それはちょっと言葉として強過ぎるのではないかという意味です。勿論決してゼロ化を目指すという姿勢そのものを否定しているということではないのです。ゼロ化を目指すということは、これは大事なことなのですけれども。

【岩槻委員長】鷲谷委員、どうぞ。

【鷲谷委員】これは英語と日本語のニュアンスの違いなんじゃないかと思うのですけれども、ミティゲーションと言ったときはゼロ化からいろいろな程度の影響を回避したり、少なくしたりすることが含まれるのですが、軽減というとある影響があるのを少し少なくするというようなイメージが強くなってしまいますので、ミティゲーションに当たるようなことをイメージするのだったら、「防止・軽減」にした方が正確なのかなという気もいたします。

【岩槻委員長】私も今の議論を踏まえて、防止だけにすれば確かに今おっしゃるような問題が生じるかもしれませんけれども、明らかに防止できることもあるわけですよね。ですから、その意味では防止・軽減という表現をとることによって、精神的な意図も含めて、ここで議論されたことからいうと、その方が落ちつくのではないかというような感じがしますけれど、いかがでしょうか。

【山野井委員】わかりました。結構です。

【岩槻委員長】よろしいですか。

【山野井委員】はい。

【岩槻委員長】それでは、この点はそういうふうに修正させていただくという形でまと
めさせていただくということでよろしいでしょうか。大塚委員、どうぞ。

【大塚委員】磯部委員がおっしゃったもう一つの点で、先ほど鎌田委員もおっしゃったことと関係しますけれども、原状回復が実際に難しいということは確かにあると思うのですけれども、このパブリックコメントの2つ目についての答えということでもあるのですが、う少し無過失責任ということだけではなくて、罰則だけで済むのか、それ以外はどうかというようなことについて、お答えいただいておいた方がいいんじゃないかということがあると思いますが、その点はいかがでしょうか。ちょっとご議論いただいた方がいいんじゃないかと思うのですけれども。

【岩槻委員長】いかがでしょうか。

【大塚委員】あるいは、ちょっと事務局にもお伺いしたいのですけれど、そういう原状回復がほとんど不可能な場合に、単に罰則というだけではちょっと足りないという気が確かにするのですが、しかし、無過失責任ということもとりあえずちょっと先ほど私申し上げたように難しいとすると、どういう方法があり得るかということは考えておかなければいけないと思うのですけれど、いかがでしょうか。

【カルタヘナ議定書準備室長】ここでは特に無過失責任、特に補償問題についてだけ書いておりますので、大塚先生あるいは磯部先生からご指摘ありましたように、もろもろの利用条件なり利用計画、これを担保するための仕組みを考えていくと、先ほど文章にも出てまいりました実行性を担保するというところの仕組みづくりを検討していくべき課題であるという趣旨をここに書き加えさせていただいてはどうかと思います。

【岩槻委員長】よろしいですか。

【大塚委員】仕組みはいいのですけれど、違反した場合にどうなるかということです。余りぎちぎち聞くと申しわけないのですけれども、単に罰則だけで足りるのですかね。原状回復がほとんど無理だと最初からわかっているとき、何かいい方法というのはございますでしょうか。

【カルタヘナ議定書準備室長】少なくとも緊急的に対応するべき状況が生じていれば、それに対して行政が一定の行為ができるというようなことは必要になろうかと思っております。それをどうやって知り得るのかとか、どこまでのことをやらせるのかというようなところはもう少し具体的に検討する必要があるのかと思っておりますが、手法としては罰則がかかってご本人にやっていただくということ。それから、もう少し行政が一定のアクションを起こすということ。あるいは、中間的に、あらかじめ起こり得る状況を予見して一定の計画なりを用意していくと、こういったものの組み合わせではないかというように思っております。

【岩槻委員長】難しいことで、すぐ答えが出てこないことではありますよね。加藤委員、ではお願いします。

【加藤委員】今の点についてはここの今までの委員会の場でもそんなに議論したことではなくて、しかもなかなか専門的な難しいことがたくさんございまして、やっぱり今ここで書き加えるとかどうするとかって決められることではないので、先ほど室長がおっしゃっていらっしゃっていたみたいに、対応方針の中でこれから検討するのだということを書いていただくのが限度かな、それぐらいしかできないのかなというふうに思いますけれども。

【岩槻委員長】磯部委員、どうぞ。

【磯部委員】先ほど申しましたように私もそう思っておりまして、報告書本文は、あるいはこのメンバーは、そういう問題を専門的に議論する構成ではないだろうと思います。
それから、あとはパブリックコメントの対応方針の書き方に関して一段ご配慮あった方がいいのではないかというご趣旨だと思います、大塚さんのは。

【岩槻委員長】よろしいでしょうか、大塚委員。
大分、活発な議論で時間をとりましたけれども、大体、議論出尽くしたというふうに理解させてよろしいでしょうか。
そうしますと、今までの議論を含めましてまとめさせていただきますと、まず11ページ、上から4分の1ぐらいのところの(c)「影響の軽減措置」というのを「影響の防止・軽減措置」というふうに改めさせていただくということと、それから、13ページの「また、行政当局は、」の2つ目といいますか、パラグラフの最後の専門性のところですけれども、これは「意見を聴取する委員会は中立的な構成とすることが必要である」と。「専門家については、専門性を有するとともに」云々は削除するということで、事務局の方もそういうことでよろしいですか。

【カルタヘナ議定書準備室長】上が「委員会等」になっておりますので、「委員会等」というふうに文言の方を……。

【岩槻委員長】「委員会等は」か。「委員会等は中立的な構成とすることが必要である」。
それから、先ほど9ページで矢木委員から提案が出ていました改変生物だけではなくて遺伝子を入れるべきであるというご意見に関しては、これは私も何人かの方のご意見にありましたように、ベクターなんかというのを特別に入れているのと違って、遺伝子というのは全体のやっぱり本質的な問題で、改変生物ということにむしろ中心的に含まれているというふうに理解できると思いますので、入れなくてもそういう理解だというふうに解釈させていただくということでよろしいでしょうか。

【岩槻委員長】それから、もう一点の変更点は、最後の図4のモニタリング結果等の報告の後に、これは決定内容といいますか、決定じゃないのですが内容の公表という矢印を入れさせていただくという、そういう3点を修正させていただいて、これでこれを報告としてまとめさせていただくということですけれども、そういうことでよろしいでしょうか。
(了承)

【岩槻委員長】いろいろ長時間ご検討いただきまして、どうもありがとうございます。それでは、室長の方から。

【カルタヘナ議定書準備室長】対応方針の方の2番目の影響の軽減措置のところにつきまして、「防止・軽減」というようになるのでございますが、基本方針をご了解いただきまして、具体的な文言につきましては、できましたら委員長とご相談をさせて、まとめさせていただくということでお願いできればと思います。

【岩槻委員長】どうも失礼しました。その点だけ整理させていただきたいと思います。
ここで案をまとめさせていただきますと、その後の取り扱いとしては野生生物部会長、中央環境審議会会長の同意を得て、中央環境審議会からの答申となるそうですけれども、この小委員会の決定が結局そのまま中央環境審議会からの報告ということになると理解されますので、そういうふうにご了承いただけたらというふうに思います。事務局の方から。

【事務局】今取りまとめていただきました報告につきましては、12日、今週の木曜日に予定されております中央環境審議会野生生物部会で決定の結果について報告をさせていただきたいと思っております。
それまでに、修正点につきましては委員長のご了解を得たいというふうに考えております。

【岩槻委員長】では、そういうことに。最後に総務課長からご発言をお願いいたします。

【総務課長】本年1月の第1回から、合計して7回にわたりまして非常に熱心にご議論いただいて、きょうは報告書を取りまとめいただきまして本当にありがとうございます。
冒頭に野生生物課長がご紹介いたしましたように、カルタヘナの国内法準備室というのを既に設置しまして、関係、とりあえず4省庁ですが、一緒になって検討を進めているところでございます。霞が関でもこういう体制というのはそうたくさんあるわけではなくて、今後、検討の過程で4省しっかりと連携して検討を進めていきたいと思います。今後、その報告書にのっとりまして検討を進めさせていただきますけれども、やはり検討が進むにつれまして、制度的な問題、それから科学的知見にかかわる問題、あるいはその相互関係に関する問題だとかいろいろ出てくると思いますので、またご助言をぜひよろしくお願いしたいと思います。簡単ですが、ごあいさつとさせていただきます。どうもありがとうございました。

【岩槻委員長】どうもありがとうございました。
それでは、これで委員会を終わりにさせていただきますけれども、きょうも5分ほど超過しましたし、何回か長時間にわたってご議論いただきまして、非常に難しい問題について案をまとめることができました。皆さんのご協力にお礼を申し上げたいと思います。
どうもありがとうございました。