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中央環境審議会 野生生物部会
会議録


1.日時

平成19年8月25日(金)10:32~12:07

2.場所

経済産業省別館10階1028号室

3.出席者

(野生生物部会長) 山岸  哲
(委員) 加藤 順子  鷲谷いづみ
(臨時委員) 石井 信夫  石井  実  石坂 匡身
石原  收  磯部 雅彦  是末  準
齋藤  勝  高橋 佳孝  西岡 秀三
速水  亨  三浦 慎悟  山極 壽一
和里田義雄  
(環境省) 黒田審議官
星野野生生物課長
猪島鳥獣保護業務室長
水谷外来生物対策室長
神田国立公園課長

4.議事

【山岸部会長】 お暑い中をご苦労さまでございます。
 それでは、ただいまから平成19年度第3回の野生生物部会を開催いたします。
本日の審議に先立ちまして黒田審議官よりごあいさつ申し上げます。

【黒田審議官】 おはようございます。審議官の黒田でございます。
きょうはお忙しいところ、お出ましいただきまして、まことにありがとうございます。
常日ごろから環境行政について、自然環境、特に野生生物に関していろいろお知恵をおかりしております。本当にありがとうございます。
この野生生物部会を開催させていただきますのは、佐渡の小佐渡東部の国指定鳥獣保護区の指定の時以来ですが、トキの最近の状況として2点お話をしますと、野生復帰を図るための順化施設が完成いたしまして、7月10日にトキ保護センターから順化ステーションの方にトキを移しまして、まだおりの中とはいえ、トキが舞う姿が佐渡で見られるようになったと、こういうことでございます。
それから、もう一つ、中国から3羽提供を受けて、現在107羽にまでなりましたが遺伝的な多様性も考え、中国と話をしていましたが、4月に中国の温家宝総理が来日されたときに、新たに2羽提供するというお話を安倍総理にしていただきまして、それの実行が秋の早い段階であろうということで事務的に詰めております。若林前大臣が中国に行って、向こうの関係省庁といろいろな話をしましたが、トキが非常に大きな話題でございました。今、鳥インフルエンザの関係で鳥の輸出入、中国との間では全く停止しておりますが、その特例として感染症予防法などの検疫の関係のルールも新たに中国側とつくり、合意をしておりますのでそういう検疫を速やかに済ませた段階でやりたいと思っておるところでございます。
我々の心づもりとしては、年が明けて来年には試験的な放鳥というものができないかと、生息地の再生といいますか、整備も含めて取り組んでおるところでございます。何とか成功させたいと思っています。
自然環境部会と野生生物部会の合同部会で生物多様性の第三次国家戦略をつくろうと、いろいろご審議いただいているところでございます。来年はこの新しい第三次の国家戦略をベースにして、いろいろな政策を展開していきたいというふうに思っています。来年度、20年4月からの予算というのは、今月8月末までに財務省に概算要求を提出しないといけないということで、今日は29日でございますので、ちょうど内閣改造がございまして、ばたばたというところでございますが、国家戦略の改定を見越して、いろんなことを弾込めしているところでございます。
まだ詰めの段階でございますが、野生生物に関して幾つか申し上げますと、トキだけではなくてヤンバルクイナの飼育下繁殖、あるいは、特にシカとかイノシシとかの鳥獣保護管理に重要な人材育成、鳥インフルエンザの感染経路の解明、こんなことにも力を入れていきたいと思っております。
おかげさまで、環境行政、特に自然環境の分野は、どんどん広げられるかなと思っています。渋谷の松濤というところで温泉が爆発しまして、私ども、温泉法も所管しておりますので、そういう爆発事故対策で温泉の制度を見直すとか、あるいは、中国産のドッグフードで、アメリカで犬が死んだということもあって、ちょっと仕組みを考えていかないといけないということで、それこそおかげさまで幅は広がってきております。幅を広げるだけではなくて、新しく鴨下一郎大臣を迎えて、鴨下大臣のもとでそれぞれの中身を深めていきたいと、そんなふうに思っておりますので、引き続きどうかいろいろな機会を通じてご助力をいただきたいと思います。
長くなりましたけれども、きょうは種の保存法に基づきます国際希少野生動植物種に関して追加、それから削除ということですが、これは6月にオランダのハーグでワシントン条約の締約国会議が開催されまして、このときに附属書が改正されております。それに伴う国内対応でございまして、幾つかの種を追加し、また、削除するものもあると、こういった中身でございます。
また、あわせて報告ということでございますけれども、レッドリストの見直しが各分類群全体につきまして、今回ワンクール終わりましたので、この概要につきましてご報告をさせていただきたいと思います。
限られた時間ではございますけれども、どうぞいろいろな立場からご意見をいただきたいと思います。よろしくお願いします。ありがとうございました。

【山岸部会長】 ありがとうございました。
それでは、これより本日の議事に入らせていただきます。
まず、8月10日に環境大臣より中央環境審議会に対し国際希少野生動植物種の追加及び削除についての諮問をなされたこと、これを受けて同日付で中央環境審議会会長より本件を野生生物部会に付議されましたことをご報告いたします。
初めに、国際希少野生動植物種の追加及び削除についての諮問内容について、事務局から説明を願います。

【事務局(中尾)】 それでは、ご説明差し上げたいと思います。私、野生生物課の中尾と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回ご審議いただきますのはワシントン条約の附属書Ⅰに掲載されている種の変更に伴う種の保存法に基づく国際希少野生動植物種の変更です。
具体的な種の内容についてご説明する前に、ワシントン条約を初め我が国の希少野生動植物種の取引規制の仕組みについて簡単にご説明したいと思います。
ワシントン条約、すなわち絶滅のおそれのある野生動植物種の国際取引に関する条約は、国際取引による過度な利用から野生動植物種を守るため、国際間の輸出入の規制等が求められ、1973年に米国のワシントンで採択され、日本では1980年に発効しております。25箇条の本文と附属書からなり、附属書は、商業取引により影響を受けている種を絶滅のおそれの程度に応じて3段階に類別しております。
ワシントン条約の附属書Ⅰに掲載される種は、絶滅のおそれのある種で、国際取引により影響を受けるものです。商業目的の取引は禁止、学術研究目的など例外的なものは取引ができます。
附属書Ⅱに掲載される種は、現在、必ずしも絶滅のおそれはないが取引を規制しないと絶滅の可能性のあるものです。商業目的での取引が可能です。
附属書Ⅲに掲載される種は、締約国が自国で規制を行う必要があると認め、取引規制に他国の協力が必要と認めて掲載するものです。商業目的での取引が可能です。
附属書Ⅰに掲載された種については輸出入に当たって輸出国の輸出許可書と輸入国の輸入許可書が必要となります。附属書Ⅱ及びⅢに掲載された種については、輸出入に当たって輸出国の輸出許可書が必要になります。附属書Ⅰ掲載種については、水際規制だけでなく種の保存法により国内取引規制を実施しております。
なお、ワシントン条約の日本における管理当局は、経済産業省及び海からの持ち込みについては農林水産省が行っており、科学当局につきましては、海のもの、そして植物については農林水産省、それ以外のものについて環境省が担当しております。
種の保存法では、国際的に協力して種の保存を図るべき絶滅のおそれのある野生動植物種として国際希少野生動植物種を施行令別表第2で定めております。国内希少野生動植物種は我が国に生息あるいは生育する絶滅のおそれのある野生動植物種を指定しております。種の保存法施行令別表第1に、国内希少野生動植物種としまして、トキ、ワシミミズク、ツシマヤマネコ、ベッコウトンボ等、73種が指定されています。
今回、ご審議いただきますのは、6月のワシントン条約第14回締約国会議において附属書Ⅰに新たに掲載された種、10種と、削除された種、2種について、種の保存法施行令別表第2の表2に掲載されている国際希少野生動植物種の追加、削除を行おうとするものです。
簡単にワシントン条約の締約国会議についてご説明差し上げますと、およそ2年半ごとに開催され、附属書の改正並びに条約の運用等に係る決議等の採択を行います。第14回締約国会議の結果概要につきましては参考資料2としてお配りしているところですが、主な議題として、アフリカゾウ等の個別種についての議題や、条約を遵守しない国に対して遵守のための必要事項の提示、あるいは支援を行うためのガイドラインの策定、そして、今後5年間の活動方針を定める戦略ビジョン等について話し合われました。
6月の時点で締約国数172カ国中151カ国が参加しております。我が国からは関係省庁から多数の者が出席し、また、私の今、隣にご臨席されている石井(信)先生もご専門家として出席していただいております。その上、ワシントン条約のもとに専門家の委員会として動物委員会、植物委員会、そして学名委員会というものがありますところ今回、これまでに引き続きまして動物委員会のアジア地域代表代理として、こちらの石井信夫先生が選出されております。
それでは、国際希少野生動植物種の追加、または削除する種について個別にご説明させていただきます。追加する種につきましては10種ございます。
まず、エドミガゼルについてです。こちらはアルジェリア、モロッコ、チュニジアに生息しております。アトラス山脈や隣接する山系に分布し、カシの森林、砂漠地帯などに生息しております。推定個体数は約3,000頭と言われております。
絶滅のおそれのある状況に至った要因といたしましては、主にハンティングトロフィーを目的とした密猟や違法取引、森林火災や畑等への人為改変による生息地の減少、集落に近い場所では幼少個体が人々が飼っている犬に食べられるなども要因として挙げられています。こちらにつきましては、生息国の一つであるアルジェリアの提案で今回の改正に至っております。
 次に、リムガゼルについでですが、こちらも生息国はアフリカのアルジェリア、チュニジア、マリ、エジプト、リビアとされています。分布状況につきましては、エジプト西部砂漠及び北東リビアと、サハラの砂漠地帯に分布しております。夜行性であり分布が散らばっていますので、生息状況の把握が難しいのですが、生息数は数百から数千以下と言われております。
生息を脅かす要因といたしましては、やはりハンティングトロフィー、違法取引、生息地の人為改変や降水量の減少等による植生の劣化が要因となっての生息地の悪化や喪失が挙げられております。こちらにつきましてもアルジェリアの提案で今回の改正に至りました。
次に、スローロリス属全種について説明させていただきます。生息国につきましては、バングラデシュ、インド、中国、ミャンマー、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、インドネシア、フィリピンとされています。スローロリス属は、バングラデシュからボルネオにかけての熱帯及び亜熱帯の常緑樹、樹冠が閉鎖した半常緑樹の多雨林に広く分布しています。深刻な生息地破壊に脅かされており、ただ、夜行性であり樹上性なので、正確な個体数の把握は困難とされております。しかしながら、中国やインド等で地域個体群の絶滅が見られており、全体としては生息数の減少というのが危惧されている状況でございます。生後2年になる前に性成熟し、繁殖が可能となり、妊娠期間は半年程度、出産間隔は1年半から2年程度と言われております。
主な生息を脅かす要因といたしましては、道路建設や木材供給、プランテーション化を目的とした森林伐採等による生息地の喪失、そして伝統医薬品や愛玩動物として、違法な国内、そして国際取引が行われていることが挙げられています。1977年からワシントン条約の附属書Ⅱに霊長目全種が掲載されております。我が国へは今年に入ってから100個体近くが税関等で任意放棄や押収がされております。こちらにつきましては、カンボジアの提案で締約国会議で改正されることとなりました。
次に、リオモタグアドクトカゲというドクトカゲの一種についてご説明させていただきます。生息国はグアテマラのみです。グアテマラのモタグア川流域の比較的乾燥した森林に、局所的に分布しています。生息数は約170から250個体のみと言われております。生長すると90センチから1メートル程度になると言われております。
個体数が減ってしまっている主な要因といたしましては、生息地の人為改変と、その美しい模様から、違法捕獲及び違法取引がされていること。そして有毒な動物として、地域住民によって一部駆除されているということも挙げられております。1975年からメキシコドクトカゲ属全種がワシントン条約附属書Ⅱに掲載されています。
こちらのリオモタグアドクトカゲという和名なのですが、これまで当該種につきましても亜種ということで特に和名というのはございませんでした。けれども、その美しい模様等から国内外のコレクターに人気が高いと言われていること。そして密輸等の可能性も否定できないこと。また、同種別亜種のメキシコドクトカゲが既に国内に流通しており、それと、わかりやすい形で名称上区別する必要があることから、国内の専門家の方々のご意見を踏まえて、今回、生息地にちなんだ和名リオモタグアドクトカゲとした上で、種の保存法の別表の方に掲げさせていただきたいと考えております。
次にのこぎりえい科の種です。のこぎりえい科の種は、現在7種に分布されております。のこぎり状の鋸歯の形状、あるいは鋸歯の数及び配置の仕方、あるいは口の形状、例えば、先細りの仕方や太さなどから識別がされています。附属書Ⅰに掲載され、国際希少野生動植物種に追加するのは、このうちのプリスティス・ミクロドンを除く6種です。分布といたしましては、インド洋から太平洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布しております。さらに河川、湖沼などの淡水域にも生息することが可能でして分布しております。砂泥質の沿岸域や汽水域を好むようです。えさは主に甲殻類や小魚です。のこぎり状の吻は砂を掘り起こすために使われたり、魚の群れに入って振りかざして魚を攻撃することに使われます。生長すると、ノコギリエイを捕食する捕食者はほとんどいないのですが、小さいうちはサメ等に捕食されるようです。
生息を脅かす要因として挙げられていますものは、やはり主な要因は漁獲であると考えられています。19世紀から20世紀初頭にかけてアメリカ南東部、1970年代にニカラグア湖、1960年から1980年代のブラジルなどで当該種を対象とした漁業が行われていました。現在は個体数が激減し、漁業コストに見合わないため、ほとんど当該種を対象とした漁業は行われていない状況です。しかし、多くの地域では混獲されることにより、生息状況に大きな影響を及ぼされていると言われています。世界の一部の地域によっては、食用のほか肝油や卵が薬として使われたり、吻の部分が装飾品等に用いられています。
こちらにつきましては、締約国会議でアメリカとケニアが当初のこぎりえい科全種を附属書Ⅰに掲載する提案を行いました。これについてオーストラリアの方がのこぎりえい科に含まれるプリスティス・ミクロドンという種については、生きた個体の輸出を行っているのはオーストラリアのみであるところ、当該種については比較的安定しており、年間一定量の捕獲であれば問題ないと専門家の間で考えられていること。そして、水族館等でも種の保存プログラム等のため、国際取引を行うことについては有益であると考えており、プリスティス・ミクロドンについては附属書Ⅱとして扱いたいという発言をし、それが締約国の間で支持されまして、今般のように1種を除く6種についてのみ附属書Ⅰに掲げるという決定に至りました。
以上が追加する10種についてのご説明でございます。
次に、削除する種についてご説明いたします。今回2種について附属書Ⅰから削除されています。
まず、アガベ・アリゾニカというりゅうぜつらん科の一種ですが、こちらにつきましては、りゅうぜつらん科の分類に関する知見の充実に伴い、この種につきましては附属書に掲載されていないりゅうぜつらん科2種の雑種であり、現時点で種として確立されていないことが判明したため、附属書から削除されることが決定しました。生育国はアメリカのみです。1992年以来約60個体が発見されています。全種については不明のようです。
次に、同じく削除するりゅうぜつらん科のノリナ・インテルラタについて説明いたします。こちらについては、アメリカとメキシコが生育国となっております。ノリナ・インテルラタは主たる分布国であるアメリカにおいて、生育状況及び国際取引実態について再検討した結果、かならずしも絶滅に危機に瀕しておらず、取引の需要もほとんどないとして、条約の附属書Ⅰから附属書Ⅱへ今回移行されました。推定個体数は約9,000個体と言われております。
個別種についての説明は以上です。
引き続きまして資料3を用いて本件に係るパブリックコメントの結果について、簡単にご説明申し上げます。資料3をご参照いただければと思います。
7月13日金曜日から8月11日までの間、パブリックコメントの募集をさせていただきました。意見提出者数は合計で11名の方々から意見をいただきまして、意見の内容を整理したところ、13件、そのうち審議会への諮問事項ではないものも含まれるんですけれども、主な意見といたしましては、スローロリス属の取引規制についてのものが11件ございました。
意見の概要について簡単にご説明させていただきます。スローロリス属の取引規制に係るものなのですが、既に国内で生存する希少動物を、出所が不明という事ですべてを登録できないようにしていくのはいかがなものかというご意見がございました。これにつきましては、規制適用日前に国内において取得された個体につきましては、種の保存法に基づく登録の要件に該当しています。この取得には、規制適用日前に国内で繁殖したことにより取得したものも含んでおります。
また、これ以外にスローロリスに係る意見といたしましては、現在日本にいるすべてのスローロリスをすべて無条件に近い形で登録させるべきだと。その上で期間を設けて、すべて登録させた上で、一定期間が過ぎた後は登録されていない個体を見かけた場合は、それを密輸個体とみなして厳罰にかけるべきというご意見もございました。そもそも国際希少野生動植物種の登録というものは、譲渡し等を行う前に環境大臣の登録を受けることにより通常は禁止されている譲渡し等が可能になるという制度なのですけれども、譲渡し等の予定がなくても、登録を受けていただくことが好ましいというふうに環境省としては考えております。そのため、この件については、現在、ホームページ等を通じて呼びかけており今後も広く呼びかけを行っていくこととしております。
そのほか、またスローロリスに係るものなのですが、一定のルールに基づいて日本国内でのスローロリスの繁殖を正当化すべきというご意見がありました。これにつきましても、先ほどの最初の意見と同様なのですけれども、規制適用日前に国内で取得したものであれば、これは登録要件に該当しますし、また、規制適用日後に登録を受けた個体から日本国内で生まれた個体についても、登録の要件に該当いたします。
そのほか、スローロリスの取引規制を行ったところで密輸は全く減らないので、このまま法を変えずにいてほしいというご意見もございました。こちらにつきましては、我が国では、ワシントン条約に定められた取引の規制が直接適用される水際規制については外国為替外国貿易法及び関税法で行っており、種の保存法は水際規制の確実な実施を担保するために、国内での取引を規制するものとされています。したがって今般、附属書Ⅱから附属書Ⅰへ移行することとなったスローロリスについては、改正附属書の効力が発生する9月13日以降、外国為替外国貿易法等により国際商業取引が禁止されることになります。絶滅のおそれのある種の保存のため、水際規制の強化とあいまって、今般、種の保存法でも規制対象種とし密輸の減少に資することとしたいと考えております。
1枚めくっていただきまして、こちらに掲げられているクチビロカイマンとクロカイマンの話につきましては、今回の諮問事項ではないので説明を割愛させていただきます。
そしてその他としまして、密輸全般に対する懸念として、ワシントン条約附属書Ⅱ及びⅢのものについても一定の規制をかけるべきではないかというご意見がございましたので、この機会にご紹介させていただきます。
担当からの説明は以上でございます。

【山岸部会長】 ありがとうございました。
それでは、ご意見、ご質問ありましたら、ただいまの説明に対して承りたいと思います。どなたからでも結構ですからお願いいたします。
どうぞ、山極委員。

【山極委員】 ちょっと教えてください。スローロリスのパブリックコメントが11件もあったということは、動物園でスローロリスを飼っていることは私もかなり把握しているんですけれども、個人でスローロリスを飼っていらっしゃる方が日本国内にかなりいるということなんでしょうか。

【事務局(中尾)】 これまでスローロリスの国内飼育については何ら規制がかかっておりませんで、こちらとしても正確な数というのは把握し切れていません。ただ、適正に水際規制を通過して入ってきた輸入個体数でも、経産省にお伺いしたところでは、600個体以上は入っているということです。それからまた繁殖した個体もいると思いますし、正確なところ、国内にどれだけ飼育されているのかというのは、こちらは把握し切れていない状況でございます。

【山極委員】 またも余り情報はないと思いますけれども、例えば、私自身でも、動物業者がスローロリスを売っているのを見たことがあるんですけれども、国内でもこれまで割と販売されていたものですか、これは。

【事務局(中尾)】 ペットショップ等で販売されています。

【山極委員】 それは禁止されるようになるわけですね、これからは。

【事務局(中尾)】 種の保存法に基づき原則禁止となりますが、適正に入手したものにつきましては一定の要件を満たせば環境大臣の登録を受けることができます。登録を受けたものについては、登録票というものが発行されます。登録票とともにであれば、譲渡し等が可能となります。

【山極委員】 わかりました。
もう1点だけ。ここに多分書いてあることの確認なんですけれども、登録されていれば、国内で繁殖をして、それを販売することも可能ということですね。

【事務局(中尾)】 登録された親から生まれた子については、また別途登録を受けていただいた上で販売等は可能になります。

【山極委員】 ありがとうございました。

【山岸部会長】 よろしゅうございますか。
 それでは、ほかのことでどうぞ。

【石井(実)委員】 パブコメの4番なんですけれども、それに対する答えも含めてですけれども、密輸は全く減らないという言い方、それから、対応方針については水際規制の強化というふうに書いてあるわけですけれども、実際にどういうぐあいに水際の規制というのを、だれがどのようにやっているのか、ちょっと教えてください。

【事務局(中尾)】 附属書Ⅰに掲載されたものの輸入に係る水際規制につきましては、外国為替外国貿易法にもとづき、ワシントン条約に基づく規制に準拠する形となるように、輸出国側の輸出許可書と、経済産業省の輸入許可書の両方を事前に取得することが必要となります。そして関税法に基づき実際の水際でも手続を行うということになっています。

【石井(実)委員】 書類上はそうだというのは私も理解しているんですけど、でも、なぜ密輸は全く減らないとか、登録可能にしても、全く密輸は減らないと、またしつこく書いていますけれども、これはそういう文書上のやりとりとは別の問題のことを言っているのかなというふうに思うんですけれども、その辺はいかがなんでしょうか。

【事務局(中尾)】 パブコメは文書で送っていただいているので、ここに書かれている以上のことについては、よくわからないのですけれども、この方ご自身もスローロリスを飼っていらっしゃるということでした。この4番のご意見と一番最後の6番のご意見は同じ方からのものです。ご自分が飼っていて、密輸が必ずなくなるように取り締まりの強化を強く願っているとおっしゃっている一方で、それを種の保存法の取引規制を行ったところで密輸は全く減らないだろうとおっしゃっております。

【石井(実)委員】 ロリスというのは結構大きいので、なかなか密輸って難しいのかなと思うんですけれども、私なんかがかかわっている昆虫なんかの場合には、簡単に密輸ってできると思うんですよね。その辺がどうなっているかと、ちょっとお聞きしたかったんですけれども、実は。このロリスのこともそうなんですけれどもね。とにかく文書上というか、法律上はこうなんだけれども、実際には港を通過しているのではないかということだと思うんですけれども、この辺を強化するとは一体どういうふうにやるのかというふうに聞きたかったわけでございます。

【星野野生生物課長】 税関で水際対策としていろんな努力をされていると思います。スローロリスも、今年になってからも摘発された例も幾つか出ております。大事な点は、種の保存法で規制することによって、合法的に入手されたものはしっかりトレースされるということだと思っております。それがあることによって、今後たとえ密輸で入ったとしても、それが販売をされたり、合法的なマーケットの中に入っていかないということをしっかり種の保存法の世界で確保するということが大事だと思っております。それによって輸入をしようとする動機が少しずつ減ってくるのかなと。
あわせて、愛好者向けの雑誌にも、規制内容を周知してもらうように働きかけて、現在飼っている方たちにはできるだけ登録してもらう。それによって合法的なスローロリスとそうでないものが明確になるような、そういう努力を環境省としてしていきたいと思います。

【齋藤委員】 ちょっと教えていただきたいんですが、スローロリス属を全種というふうに指定していまして、種を明記していないんですけれども、この辺には何か意図があるんでしょうか。

【事務局(中尾)】 スローロリス属を何種に分けるかというのが学会で議論があるようです。一方、種によって、今の生息状況やあるいは違法取引、生息地の破壊が行われている状況に違いがあるかというとないということで、であれば、個別に種を掲示するのではなく、属全種で附属書Iに上げようということになりました。ワシントン条約では、このような掲載のされ方は、特に珍しいことではないです。

【山岸部会長】 よろしゅうございますでしょうか。
 ほかに何かご意見ございますでしょうか。
今、動物の話ばかり出たんですが、植物の方で何か、鷲谷先生、よろしゅうございますか。
 それでは、これ以上、特段のご意見、ご質問がないようですので、この議題についてはお諮りいたします。
 国際希少野生動植物種の追加及び削除については、事務局案が適当と認めてよろしゅうございましょうか。
(異議なし)

【山岸部会長】 ありがとうございます。
ご異議もないようですので、本件は適当と認めることとし、この事務局案を当審議会の答申案として中央環境審議会会長に報告することといたします。
それでは引き続きまして、先ほど審議官のお話からもあったように、哺乳類などのレッドリストの見直しについて、事務局からご報告を願います。

【事務局(北橋)】 野生生物課の北橋でございます。よろしくお願いいたします。
 それではレッドリストの改訂につきましてご説明させていただきます。このレッドリストの改訂につきましては、昨年10月の野生生物部会におきまして改訂作業中ということで簡単にご報告させていただいたところでございますけれども、その後、昨年の12月に鳥類、両生類等の4分類、それからこの8月3日に残りの哺乳類、魚類等の6分類について改訂を行いましたので、その資料を参考資料の3ということでつけさせていただいております。
レッドリストについてですけれども、これは専門家の科学的知見に基づきまして、絶滅のおそれのある種を客観的に評価して選定したものということで、法的規制がかかっているものではございませんけれども、社会への警告として広く一般に周知したり、それをもとに環境影響評価などで使ったりということで、野生生物の保護対策を進める上での最も重要な基礎資料として作成しているものでございます。
おおむね5年をめどに改訂ということで、今後は基本的に全体をまとめて作成するということにしております。
ちなみにレッドデータブックにつきましては、今回改訂いたしましたレッドリストのそれぞれの種につきまして、種の概要、生息状況等の詳細を記載して本としてまとめたものでございます。こちらにつきましては、今回は改訂の予定はないんですけれども、今回、レッドリストで新しく追加された種などにつきましては、補足資料ということでレッドデータブックに相当するような説明資料を今年度中に作成するということで、現在、作業中でございます。
これまでのレッドリストの公表の時期についてですけれども、動物については8分類、植物については2分類、全部で10分類に分けておりまして、鳥類、爬虫類、両生類、その他無脊椎動物については昨年の12月、哺乳類、魚類等については、この8月3日に新しくレッドリストを改訂したところでございます。
このレッドリストの検討対象ですけれども、まず、親委員会といたしまして、絶滅のおそれのある野生生物種の選定・評価検討会を設置いたしておりまして、さらに、その下に各分類群について分科会を設置して、それぞれ5名から17名の専門家で構成していただいております。ちなみに、親検討会の方は分科会の座長に入っていただいて、合計9名という構成になっております。
この分科会で各分類群についての検討をしていただくわけでございますけれども、そのデータの集め方については、それぞれ分科会に参画していただいております専門家の先生の方から、例えば分類学会ですとか、それぞれの学会に協力をいただいた他、それぞれの研究者のネットワークなんかを通じていろんな研究者、あるいは有識者から個別種の現地の状況についてのデータも集めていただくなどして、なるべくたくさんのデータを集めて作業をしております。
次に、レッドリストの作成手順なんですけれども、まず1年目に評価の分類群の確定、カテゴリーの検討を親検討会の方でいたしまして、それを受けまして2年目以降、各分科会で評価対象種や評価方法の検討、それから情報収集を行い、各個別種につきましてチェックシートを作成いたしまして、その中で個別種毎の生息状況についての詳しいデータを整理しております。それから、4年目、5年目に、レッドリストの暫定リストを作成するなどして、専門家の方々に検討していただくということで、最終的なリストの確定、公表という流れになっております。
このレッドリストのカテゴリーの判定のための要件でございますけれども、基本的に日本のレッドリストでは、定量的基準と定性的基準の両方を併用しております。このうち定量的要件につきましては、IUCNの方で定めております数値基準を基本的に準用するという形で行っております。、参考資料の資料9というところでその詳細が全部載っておりますが、個体数の減少や、出現範囲の分断、あるいは個体数そのものが少ないというようなことですとか、数量解析による絶滅確率というような数値基準を使用してカテゴリーを判定しております。
ただし、この数量的要件を満たすだけのデータがそろっていない種につきましては、これまでのレッドリストで使っておりました定性的な要件、個体数の減少傾向とか、あるいは生息地の状況が非常に悪化しているとか、そういう定性的な要件も、数字的にあらわせない場合には併用して使いながらカテゴリーを決定しております。
このカテゴリーの仕分けといたしましては、もう絶滅してしまったものから、野生で絶滅して飼育下にしか生存していないもの、それから、絶滅危惧Ⅰ類、Ⅱ類とありまして、準絶滅危惧、情報不足という形になっておりますけれども、このうち、赤で囲っております絶滅危惧Ⅰ類と絶滅危惧Ⅱ類のところにつきまして、絶滅のおそれのある種という定義をしております。
今回のレッドリスト改訂によりまして、どのように絶滅危惧種が変わったかということなんですけれども、例えば哺乳類につきましては、絶滅危惧が42種ということで、前回の判定よりも6種の減、それから、汽水・淡水魚類につきましては144種ということで68種の増、貝類につきましても126種の増ということで、増えているところと減っているところとございますけれども、全体といたしましては、動物につきまして1,002種、植物等につきまして2,153種、合わせまして3,155種がレッドリストに絶滅のおそれのある種として掲載されているということで、全体といたしまして野生生物の生息環境は依然として厳しい状況にあるものと考えられます。
今回の見直しのポイントについてなんですけれども、まず、一つ目は、レッドリストの評価の対象とする種の範囲を拡大いたしました。具体的に言いますと、哺乳類につきましては、従来は海生哺乳類については上陸する種、つまりトドですとかアザラシですとか、そういった種だけを評価対象としていたんですけれども、今回から浅海域に依存する種につきましても新しく評価対象に加えました。また、魚類につきましては南西諸島に生息する種について詳細に評価し加えることができました。また、貝類につきましては、これまでは淡水産の貝類だけを評価対象としていたんですけれども、汽水域に生息する貝類につきましても新しく評価をしていくことにしました。また、植物Ⅱの方につきましては、生葉上苔類とか、生息場所が非常に限られているような種につきましても評価を細かくしております。
その結果といたしまして、全体で評価対象種がふえておりますので、絶滅危惧種の数がふえたというところの一つの原因としても、評価対象の母数がふえたというところがあるのかと思っております。
次のポイントですけれども、情報の集積や調査の精度の向上が進みました。特に哺乳類のうちではコウモリ類につきまして情報が非常に新しく集まりまして、大幅な変更がございました。全体で46種をコウモリ類は評価していますけれども、そのうちランクが上がったものが4種、ランクが下がったものが13種ございます。その結果といたしまして、哺乳類全体として絶滅のおそれのある種の数が減少したというところになっております。
また、植物Ⅰ(維管束植物)につきましては、全般的に調査精度がかなり向上した結果といたしまして、全体の絶滅のおそれのある種の数自体は余り変わっていないんですけれども、具体の中身を見ますと、212種についてランクが上がって、逆に187種についてランクが下がったということで、中身については大きく上下動しております。
次に生息環境の悪化が進んだところもございまして、特に里地里山の周辺が顕著なんですけれども、田園地帯に生息するタナゴ類やドジョウのたぐいですとか、あるいは湖沼やため池に生息する藻類のうちシャジクモの仲間につきまして状況が悪化しているということが明らかになりました。
また、外来種の影響を受けているところも非常に大きくありまして、特に小笠原諸島の昆虫類、陸産の貝類、それから、琵琶湖のニゴロブナ、ゲンゴウロブナなども新しくこのリストの中に入っております。
それから、逆の方向といたしまして生息数が増加したものもございまして、ヤクシマザルですとか、あるいは地域個体群になるんですけれども、ホンドザルの下北個体群なんかにつきましては、生息数が増加傾向にあるということで、今回ランクから外れております。
最後に、誤記等の修正がございます。このレッドリストを8月3日に発表したんですけれども、その後、幾つか専門家の方などからご指摘を受けておりまして、このことにつきましてご報告を。
一つは、植物Ⅰのコケタンポポにつきまして、セイタカアワダチソウの学名が誤って記載されていたというものがございました。それから、もう一つは、和名の取り違えということで、これはコモチイトゴケとなっていたものが、正式にはコモチイチイゴケとなります。それから、学名のつづり間違いが幾つかございまして、例えば、クビレミドロなんですけれども、後半の方のshiとなっているところが正しくはsiということで、hが余分についていたというような、こういうつづりの間違いが幾つかあるものでございます。
それから、学名の更新漏れということで、これはヒメウミヒルモについてなんですけれども、レッドリストの検討を始めた際は、この学名がovataということで動かしておったんですけれども、その後研究者の方で情報があって、現在のところdecipiensの方がいいんじゃないかというようなご指摘も受けておりまして、これにつきましては確認をとっているところでございます。
いずれにつきましても、全体を今、改めて確認しておるところでございまして、この修正につきましては全部がそろった時点で改めて公表したいというふうに考えております。
以上でございます。

【山岸部会長】 常々レッドデータというのは野生生物保護のバイブルのような基本になるもので非常に大事だと思うのですが、今回大幅に見直されて、それについてご意見、ご質問がありましたら、どうぞ。

【石坂委員】 手順のご説明の中で3年目に情報収集をするというふうに書いてありましたですね。結果はいろいろ調べる種類が広がったとか、新しいものがあっていろんな変更があったというお話は承ったんですが、情報収集というのは、具体的にはどういうやり方でやっておられるんですか。

【説明員(北橋)】 基本的には各分類群の専門家に入っていただいておりますので、その先生を通じまして、個別の学会ですとか、あるいは研究者の研究集団、ネットワークを持ってやっていらっしゃる方などに調査、データの収集をお願いしております。

【石坂委員】 そうしますと、その専門家の方の個人的な知見にまつわる新しい、例えばこういう種があって、これも調べなきゃいかんのじゃないかというような話は、そういうところを発端にしているわけですね。

【星野野生生物課長】 植物Ⅰにつきましては、植物分類学会にお願いをしておりまして、実際、現場でそれぞれの調査をされている方、総数500名以上の方々の知見が集約されて、植物分類学会でグループをつくっていただきまして、審議会委員にもなっていただいています九州大学の矢原先生を中心に情報の整理をして、その結果、ランクづけをしていくということでございます。植物のⅠが一番そういう意味で広範な学会の協力を得ておりますけれども。それ以外もその分野の分類関係の専門的な方々に検討会には入っていただいて、さらにその先生方を介して個別に研究されている方々の情報収集をして、それに基づいてチェックリストを種ごとにつくりました。それを検討会の場で精査をして、最終的なランクづけを詰めているということであります。

【山岸部会長】 よろしゅうございますか。
それでは続きまして、鷲谷委員、どうぞ。

【鷲谷委員】 植物の絶滅危惧種の現状や保全について生態学的、遺伝学的な面からかなり長く研究をしている立場から、植物の改訂を見せていただいて、私どもが把握している実態との齟齬というのがあるんですね。それで、どうしてそういうことが生じているかということを考えてみたんですけれども、植物の個体数の把握の仕方、その考え方が保全生物学と今回やっていらっしゃるようなものとに若干違いがあるために、そういう判断の差というのが出てくるんではないかというふうに、今、疑っているんですが、種子植物の個体数は、一つの種子から発芽して、クローン成長で広がった範囲、すなわち遺伝的な意味で同一な範囲というのを、ジェネットというふうに呼ぶんですが、それが個体の一つのとらえ方なんですね。そのジェネットを単位にして、遺伝的な要因も含めて絶滅リスクを評価するということが必要なんだろうと思うんですが、ジェネットというのは、すぐ目で見てわかる場合もありますし、容易に把握ができないということもあって、そうじゃない、例えば、シュートの数だとか、そういうもので評価されているのではないかと思うんですが、そういうすべての種について絶滅を考える上で意味のある個体数を推定するということは難しいかもしれませんけれども、研究者の努力である程度、全国レベルでのジェネット数とか、遺伝的な特性とか、そういうことがわかっているものもわずかながらあるわけですから、それについては、そちらの知見を使っていただいた方がいいんではないかと思います。
それで、国内に2けたしかジェネットが残されていなくて、有性生殖の可能性を持っている個体群が一つあるかないかという現状で、しかも、それが維持されているのがかなりの努力によって保全されているものが絶滅危惧種から外れてしまったという現状が、割合表面的に植物の多さを見ているところから来ているのかなというふうに思っていますので、なかなか一つの見方だけでリストをつくるのは難しい。知見が十分あるものからないものまでさまざまで、それを一律に使わなければならないとすると、ある程度大ざっぱなそういう多さというのを基準にしなければいけないのかもしれないんですけれども、せっかく保全のための研究の成果も蓄積していて、保全努力なども始められているようなものについては、そちらの情報とか知見をしっかり踏まえてリストの見直しをしていただければと。分類学会の先生方のお考えなので、ここで言っても仕方ないのかもしれませんけれども、そういうことがあれば、せっかくの保全活動をとめてしまうようなことのない体制というのが必要なのではないかと思います。

【星野野生生物課長】 ただいまの鷲谷先生のお話、レッドリストの改訂は、これで終わったわけではございませんので、環境省としては5年ごとに改訂をしていきたいと思っています。次の改訂の中で、今、鷲谷先生がおっしゃった点については、十分専門家の検討会の中で検討していただきたいというふうに思っております。
今回、植物Ⅰで発表した中で、保全によって数がふえてきて、その結果、ランクが落ちたという、環境省の発表資料の中で説明しているものがございます。ただ、それも保全の努力があるからこそこういう状況だということで、決して保全の手は緩めてはいけないということもあわせて発表させていただいておりまして、我々としてもリストから落ちたからといって、それがもう保全の必要がなくなったんだということではないということは十分肝に銘じて、今後も取り組んでいきたいと思っております。

【山岸部会長】 ほかに。どうぞ、西岡委員。

【西岡委員】 このレッドリストの、引き続きそれぞれの種に分けていて、それについては環境の変化を見るのに非常にいい材料になっていると思うんですが、調査の中で減ってきた原因について、幾らか書かれているものもあるし、必ずしも集約されていないところもあるんですけれども、調査のやり方としては、一応、これが減ったのはこういう原因だということは、推定になると思うんですけれども、それは書かれているんでしょうか。そうしたら、それをうまく集約されて、多分、本に刷るときはやると思うんですけれども、そのあたりはどうなっているんでしょうか。

【星野野生生物課長】 ランクづけにあたり、種ごとにチェックリストというものをつくって、その中に必要な事項を記載していただいており減少の原因が位置づけされております。ですから、レッドデータブックを作成する段階では、そこに記載されていた内容をもとに、説明の文章をつけていきたいというふうに思っています。

【山岸部会長】 ほかに何かございますでしょうか。
どうぞ、石井(実)委員。

【石井(実)委員】 私も昆虫の方にかかわっているんですけれども、嫌なことを聞きますけれども、参考資料3の7ページのところの下に、今後の対応というのがあるんですね。初版から今回3回目の改訂みたいな形になって、一方的に、哺乳類は少し減ったこともあるようですけれども、絶滅危惧種というのはふえているわけですね。やはり大事なことは、これ以上ふやさないようにすることだと思うんですけれども、ここの書き方だと、国民の理解を得るとか、関係省庁や地方公共団体の配慮を促すとか、あるいは場合によっては種の保存法にかけるというふうな書き方なんですけれども、例えば、里地里山なんかの種がレッドリストになっているものの大体50%ぐらいですか、そこにいるということですけれども、なかなか難しいと思うんですよね。こういう部分は、今、刻々と劣化していると思うんですけれども、環境全体としては。特に里地里山のレッド種に対する対応はどんなふうに考えていらっしゃるかということをお聞きしたいと思います。

【星野野生生物課長】 レッドデータブックの性格は、今、先生がおっしゃったとおりでして、法的な拘束力はないということで、科学的な一律の基準に基づいて日本全国の動植物種をレビューした結果として、3,000種を超えるものが絶滅のおそれのある種になったということで、これを広く公表していくのが一つの重要な点だと思っています。
ただ、今、おっしゃったように、里地里山の地域に生息する種がかなり絶滅のおそれのある種に位置づけられていて、それらについてどうするかという点でございますけれども、レッドリストの性格はそのとおりでございまして、いろんな里地里山で取り組みが行われております。そういう取り組みに当たって、配慮すべき種というものはこういうものだというのを国として明確に示して、認識していただくというのが一つ大事な点だと思っておりますし、現在、改定作業中の第三次の生物多様性国家戦略の中でも、里地里山地域を、どう維持保全していくかというのは、大きなテーマになっております。その中でも里地里山地域に生育する種、絶滅のおそれのある種の保全の問題も考えていきたいと思っております。
今、すぐここで里地里山の種の保全対策はどうかというと、なかなか抜本的なものは出てこないんですけれども、少なくとも里地里山で今まで行われていたような管理をしないと絶滅をしてしまうということをしっかりわかっていただく。それによって関係する省庁、さまざまな公共工事に当たっても十分な配慮をしていただくというのが大事だと思っておりまして、現にそういう方向での取り組みもかなり行われているとは思っております。引き続き我々、里地里山の絶滅危惧種の保全は重要な課題だと思って、いろんな方面に働きかけていきたいと思っております。

【山岸部会長】 山極委員。

【山極委員】 大体レッドリスト、どの分類群でもふえている傾向にある中で、哺乳類はさがっているわけですね。これはコウモリが大幅にランク外になったということと、それからサルが二つ外れた。これはもちろん理由が違うと思うんですね。哺乳類に関して調査が進んで、情報が新たに加わることによってきちんとしたランクづけが行われるようになったということと、それからサルのように増加傾向にあると、個体数がふえているといったような傾向にあるものと、いろんな理由があると思うんですけれども、レッドリストというのは、言うなれば、日本国内の絶滅に瀕している種というものを特定することによって、保全というものをしっかり行うという指針の一環であろうと思うんですね。この傾向をどういうふうに読んで、どういう今後の対策を考えていこうとされていらっしゃるのか、特に哺乳類に関して、いろいろ読めると思うんですけれども、ちょっとお考えをお聞きしたいと思います。

【説明員(北橋)】 哺乳類につきましては、ご指摘のとおり、情報が集まったということで、コウモリ類につきましては非常にランクの上下があったところですけれども、そのほかでいいますと、新しくジュゴンが評価対象に加わった結果、絶滅危惧ⅠA類となったということのほか、上下したところでいいますと、イリオモテヤマネコが減少傾向があるということで、これまでのⅠB類からツシマヤマネコと同じⅠA類に上がったというようなところもございます。各種によって、もちろんその状況が違いますので、哺乳類全体としてどうということはできないんですけれども、それぞれの種の減少の原因を分析した上で、必要な対策をとるというような形で対応していきたいと思っております。
さらに、減少傾向が非常に激しい種ですとか、緊急に対策をとる必要がある種につきましては、さらに調査を加えた上で、国内希少野生動植物種、種の保存法に基づく種指定などをすることによって、保護増殖事業の検討ということも行っていきたいというふうに思っております。

【山岸部会長】 山極さん、何か見えてくるものがありましたら、ここでかえって言われた方がいいんじゃないんでしょうか。

【山極委員】 一つそれぞれの種によって個別にというようなことをおっしゃいましたけれども、そうではなくて、いわゆる人と野生動物との接触がふえたことによって、かなり増加するという傾向のあるものと、接触がふえて、人々の生活様式が変わることによって、より絶滅に追いやられていく、あるいは、情報がふえたとおっしゃるけれども、コウモリ類の生態そのものが変わってきたというようなことも見てとれるんではないかという気がするんですね。ですから、こういうふうにリストの上での分類基準を変えるということによって、それぞれの種の対策を打つというのではなくて、総合的に、もちろん地域によって違うでしょうけれども、こういうさまざまな兆候が何を意味しているのかというのをきちんと見据えていただきたいと思うんですね。恐らく、随分いろんな調査をされていることでしょうから、情報を持っていらっしゃると思うんですけれども、具体的に私はサルのことしかわかりませんから、余り言えませんけれども、それをもうちょっときちんとした対策に生かすような、これだけではもったいない気がするんですね。ここからきちんとした日本の哺乳類、あるいは動植物の5年間の変化というのをきちんと読み取らないといけないような気がするんですね。

【山岸部会長】 大変貴重なご意見、ありがとうございました。
高橋さん、三浦さん、今のと関係していますか。別の問題ですか。三浦さんは関係していない。では、高橋さんの方から。

【高橋委員】 レッドリストというのは、レッドデータブックの方かもしれないんですけれども、生物多様性国家戦略なんかに比べて、ずっと市民権を得ているかなという気がします。ある意味で、活動の過程でもあるわけですよね。保全するときに非常にやる気が出る内容で、そういう意味で、現場と離れているというのは、ちょっと悲しいお話だなと思ったんですけれども。
そのほか、保全すべきかどうかというのも、種としてのレベルでは必要かもしれないんですけれども、例えば、保全活動に役立たせるとすれば、群集だとか、植物群落のレッドリスト的なものとか、あるいはホットスポットみたいもので、生物多様性国家戦略の中でも何か考えていらっしゃるようですけれども、そういうものを今後いろいろ整備したり、いろいろ市民の方に提供したりする気持ちがおありかどうかということと。
もう一つは、せっかく、チェックリストの中の内容は、詳しくはよくわからないんですけれども、例えば、生育環境みたいなチェックというのがあるんであれば、レッドデータブックとしてまとめるときに、例えば、その種ごとに生育場所、生育環境みたいなリストというのと一緒につけていただくと、すごくどの辺が問題なのかというのがわかりやすいような気がするし、あるいは、どこが重要なホットスポットかということもわかりやすくなるのではないかと思うんですけれども、そういうことは可能なのかどうかということで。

【星野野生生物課長】 1点目のことですけれども、ホットスポット、確かに今、検討中の生物多様性国家戦略の中でもそういうことを考えております。今までのレッドリストとは違う切り口で、環境省として何かできないかということの検討はしております。
それから、レッドデータブック作成に当たっての留意点ということでございますけれども、これについては、分類群によって情報量が異なりますけれども、今おっしゃったような点、できるだけレッドリスト作成の段階で収集した情報もございますので、保全活動に役立てるという観点から、次期のレッドデータブックの改訂に当たっては、内容を充実したものにしていきたいというふうに思っております。

【山岸部会長】 三浦委員、どうぞ。

【三浦委員】 私も要望なんですけれども、これも今、高橋委員がご指摘のように、非常に浸透している施策の一つだと思うので、よりよいものにしていくためにぜひ検討をお願いしたいんですが、その大きなものは、カテゴリーの問題で、特にこれはIUCNのカテゴリーがちょっと変わったこともあるわけですけれども、絶滅危惧のⅠ類、Ⅱ類で、しかもⅠ類がⅠA、ⅠBという、これはそれぞれ名前がついていたわけですけれども、これはやっぱり適当な標準和名に直していただくのが、より浸透するんではないかなと思うんですね。その際、順番からいうと、前の場合ですと、危機という言葉と危惧という言葉があって、それは一般的な感覚からすると、逆転していたような感じがするんですが、それも含めて、Ⅰ、Ⅱという言い方を、ABも、含めて考慮するよう検討をお願いしたいなというふうに思うんです。
それから、もう1点ですけれども、これもやり始めると、かなり大きな問題になるんではないかなと思うんですが、これは種レベルの話と亜種レベルの話と地域個体群という話が、少なくともリストには種と亜種が一緒になっているんですが、大きな整合性でいうと、種のくくりと亜種のくくりというのをごっちゃにしていくというのは、大変な作業になってしまうと思うんですが、永続的に続けていくという意味だと、この辺の処理も大きな流れとして検討をいただくというのは重要なんではないかなというふうに思いますので。
以上、よろしくお願いいたします。

【山岸部会長】 ほかに何か要望はございますか。どうぞ。

【鷲谷委員】 ちょっと舌足らずだったので、もう一度科学的な面での評価に対しても、もう一つ視点が必要だと思いまして、絶滅要因がどのぐらい取り除かれているかということがないと、一時的にどこかで系統保存とかして、ある意味では無理して保全していたら効果が上がったから、絶滅の危険がないというふうに判断されてしまうことがあると思いますので、絶滅要因に関する検討も必要なのではないかと思います。
それから、レッドリストの、先ほどから高橋先生もそのような趣旨のお話をしてくださったんですけれども、群数を評価するという観点ですが、それだけではなくて、レッドリストの周知自体が、フラッグシップとしてある種の生態系の保全や再生に随分大きな役割を果たしてきたんですね。そういう点は専門家の委員会の中ではなかなか考慮するのは難しいかもしれませんけれども、行政での判断ではそれは抜かしてはいけないことなのかなという気がします。
それで、里山や水辺の保全のためのフラッグシップとして、事業官庁が生態系保全とか自然再生事業の根拠にしていたような種がレッドリストの種でなくなる、先ほどはレッドリストの種でなくなっても努力してもらいたいという願望があるということだったんですけれども、それは非常にやりにくくなるということは事実としてありますので、そういう保全の取り組み、そういうものを旗印にして進んでいた取り組みに水を差すことになったということが確かだったと思いますので、それをどうやって、今後、取り返していくかという部分のことは考えていただかないといけないんではないかと思います。

【山岸部会長】 大体いいですか。私も一つ言っていいですか。
常々レッドリストについて言いたいことがあるんですが、生息の種類によっても違うので、一概には言えないんですが、先ほどのご説明の中で、定量的に把握して、それでできないものを定性的に把握すると。何か聞いていると、ほとんどが定量的に把握できて、それでできないものだけ定性的に把握して、補てんしているように聞こえるんですが、僕は逆だと思うんですね。それについて700種評価したといいますが、ほとんどは定性的な評価で、定量的な評価なんてできないのが実情だと思うんですね。そこにレッドデータリストのなんていうか、うさんくさいとまでは言わないけれども、問題点が出てきて、それを調べるのが、情報を吸い上げるのが、石坂委員が言われたように、研究者に丸投げで任せられているから、研究している種はいつまでもわかるけれども、研究されていない種はわからないという状況になっちゃうので、もうちょっと、物すごく難しいけれども、環境省が主体になって情報をきちっと体系的に集めるという努力をされない限り、何回改訂しても、たまたまそれを研究している人の、よく研究しているものが上がってくるというようなことにならざるを得ないんじゃないかと、僕は思うんですけれども、どうですかね。

【星野野生生物課長】 おっしゃる点、よく議論して参ります。

【山岸部会長】 それでは、最後に、加藤委員で締めてください。

【加藤委員】 先ほど、山極委員がおっしゃっていらしたことはすごく大事だなと思って伺っていまして、私は、この分野は個別のことは全くわからないんですけれども、レッドデータブックをまとめられるという作業は大変な作業で、ここまでされる皆さんの努力は大変なことだなと思って伺っているんですけれども、ここで安心してしまうのではなく、結局ここからこれをどう解釈して、どうつなげるかというその解釈のプロセスというのが、道筋というのが恐らくないということが、山極委員のおっしゃっていらっしゃったようなこととも関係するのかなという気がするんですね。このまとまったリストを実際にいろいろな、例えば、工事をするとか何かするときに使われるという、そういうことももちろんなんですけれども、全体として、やっぱり日本の自然がどうなっていると、生物の状況がどうなっているということの集大成でもあるわけで、それがまとまった段階で、これを解釈すると。それで、解釈したところから、今度は一つ一つの施策のときにどうこうというのではなくて、先ほどから皆さんおっしゃっていらっしゃるような、里地里山の問題とかというのも多分出てくるわけで、解釈したところから新しい環境省さんとしての政策につなげると、そういう道筋の使い方、そういう使い方をするための道筋みたいなこともお考えになったらいいのかなという気がいたしました。

【山岸部会長】 ありがとうございました。
それに、今、やっている生物多様性の国家戦略か何かに結びついていくというのが、一番の当面の道なんだろうというふうに思います。
その他に入ってよろしゅうございますか。

(はい)

【山岸部会長】 その他、事務局から何かございますでしょうか。

【事務局】 事務局の方からは特にございません。

【山岸部会長】 それでは、以上をもちまして本日の野生生物部会を閉会とさせていただきます。
どうもご協力ありがとうございました。