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中央環境審議会 野生生物部会
会議録


1.日時

平成19年5月25日(金)10:32~12:07

2.場所

経済産業省別館10階1028号室

3.出席者

(野生生物部会長) 山岸  哲
(委員) 加藤 順子  鷲谷いづみ
(臨時委員) 石井 信夫  石坂 匡身  磯崎 博司
市田 則孝  岩熊 敏夫  是末  準
齋藤  勝  高橋 佳孝  西岡 秀三
速水  亨  三浦 慎悟  矢原 徹一
山極 壽一  和里田義雄
(環境省) 黒田審議官
星野野生生物課長
猪島鳥獣保護業務室長
水谷外来生物対策室長

4.議事

【山岸部会長】 それでは、ただいまから平成19年度第2回野生生物部会を開催いたします。
本日の審議に先立ちまして、黒田審議官よりごあいさつをお願いいたします。

【黒田審議官】 皆さん、おはようございます。審議官の黒田でございます。きょうはご多用中のところ、ご出席いただきましてまことにありがとうございます。また、自然環境行政を始め環境行政にいろいろな形でご指導、ご協力をいただきまして、まことにありがとうございます。
 きょうは諮問案件が一つでございますが、トキに関してご討議をいただきたいと。ご承知のとおり、トキに関してはずっと新潟県の皆さんのご協力をいただきまして、人工増殖に取り組んできております。ことしも順調にヒナが誕生しております。きょう現在で110羽というところまでなってきておるところでございます。野生復帰を目指しまして、野生復帰の訓練をする順化ステーションを整地して、4月からは私どもの職員も佐渡に常駐させました。さらには、4月に中国から温家宝総理がお見えになりましたが、トキの個体を提供するということで、大変ありがたいお話をいただいたところでございます。個体そのものにつきましては、年内には日本に受け入れるようにいろいろな準備を、検疫等の準備もございまして、諸般の準備を進めているところでございます。
 本日は諮問案件一つ、鳥獣保護区の指定についてということで、トキの生息地として現在も国指定の鳥獣保護区を指定しております小佐渡東部鳥獣保護区につきまして、野生復帰というものを見越して区域の拡大をしようではないかということでご提案をさせていただきます。そういう来年度、トキの試験放鳥ということを何とか実現できないかということでございまして、そういうものを見通して区域の拡大をしたいと、こういうものでございます。
 また、鳥獣保護区の区域の拡大のことだけではなくて、後ほど報告案件として野生復帰に係る現在の状況につきましても、ご報告をさせていただきたいというふうに思っております。
 限られた時間ではございますけれども、どうぞいろいろなご意見を賜りたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。ありがとうございました。

【山岸部会長】 どうもごあいさつありがとうございました。
 これより、本日の議事に入らせていただきます。まず、5月11日に環境大臣より、中央環境審議会に対し国指定鳥獣保護区の指定についての諮問がなされたこと、これを受けまして、同日付で中央環境審議会会長より本件を野生生物部会に付議されましたことをご報告いたします。
 初めに、国指定鳥獣保護区の指定についての諮問内容について、事務局よりご説明願います。

【星野野生生物課長】 野生生物課長の星野でございます。お手元にお配りしてあります資料1をごらんください。諮問書を朗読させていただきます。
 諮問第214号、平成19年5月11日、中央環境審議会会長、鈴木基之殿、環境大臣、若林正俊。国指定鳥獣保護区の指定について(諮問)。鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律第28条第9項において準用する同法第3条第3項の規定に基づき、下記国指定鳥獣保護区を別添案のとおり指定することについて貴審議会の意見を求めます。
 記として、国指定小佐渡東部鳥獣保護区の指定について。
 以上でございます。

【事務局(山崎)】 野生生物課の山崎と申します。よろしくお願いします。
 それでは、国指定鳥獣保護区の指定について説明させていただきます。資料2として指定計画書案、公聴会、公告縦覧及びパブリックコメントの結果資料をお配りしておりますが、説明はスライドを用いて説明させていただきます。また、参考資料としてこれから説明しますスライドのコピーも配付しておりますので、ご参照ください。
 諮問案件は、小佐渡東部鳥獣保護区の拡大でございます。鳥獣保護区の区域の拡大を行う場合には、鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律、鳥獣保護法の規定によりまして、本審議会に諮問することを定められております。
 次に鳥獣保護区制度について説明いたします。昨年10月の野生生物部会でも鳥獣保護区制度を説明しておりますが、10月以降に新たに委員になられた方もおられますので、今回も説明させていただきます。鳥獣保護区とは、鳥獣保護法に基づき、鳥獣の保護を図るために指定するものでございます。このうち環境大臣が指定するものを国指定鳥獣保護区といいまして、国際的または全国的な鳥獣の保護の見地から指定することとされており、これまで全国で66カ所指定されております。また、都道府県知事が指定する都道府県指定鳥獣保護区もございまして、全国で約3,800カ所が指定されております。鳥獣保護区に指定されますと、学術研究や有害鳥獣捕獲などの一部の場合を除きまして、全面的に狩猟が禁止されます。
 鳥獣保護区の存続期間は20年以内とされておりますが、必要があれば更新が可能でございます。なお、鳥獣保護区の更新については、本審議会への諮問の対象にはなっておりません。
 鳥獣保護区の中に鳥獣の生息地を保護する観点から必要な区域を特別保護地区というふうに指定することができます。特別保護地区内では、建築物、工作物の新築、改築、または増築、2点目といたしまして、水面の埋立または干拓、3点目といたしまして木竹の伐採の3つの行為につきましては環境大臣の許可が必要になります。特別保護地区の存続期間は、鳥獣保護区の存続期間内で定めることとされております。なお、特別保護地区は鳥獣保護区のように更新できるという規定はございません。存続期間が終了した場合、必要があれば改めて指定することになります。
 諮問案件の説明に入ります。小佐渡東部鳥獣保護区の拡大についてです。位置についてです。新潟県佐渡島については、平成16年3月の市町村合併によりまして、全島が佐渡市となっております。佐渡島の標高1,000メートルを越える山々を擁する北部の大佐渡山地、そして標高600メートル台の山々を擁する南部の小佐渡山地、そしてその間に挟まれております国中平野という地形になっております。この南方が小佐渡という地名で呼ばれておりまして、小佐渡東部鳥獣保護区が文字どおり小佐渡の東部に位置しております。
小佐渡の東部を拡大した図面でございます。現在は旧トキ保護センターの周辺のみ鳥獣保護区及び特別保護地区になっております。トキにつきましては、昭和56年に佐渡にいました最後の野生のトキ5羽をすべて捕獲いたしまして、旧トキ保護センターにおいて人工繁殖させ、野生復帰させるための取り組みに着手いたしました。現在では、中国との協力の結果、人工繁殖に成功いたしまして、現在の佐渡トキ保護センターにおきまして成鳥では94羽が飼育されるまでに増えております。人工繁殖の成功を受けまして、トキの野生復帰に向けての取り組みが進められております。今回、来年度に予定されておりますトキの試験放鳥に向けまして、鳥獣保護区を大きく拡大するものでございます。
 もうご存じの方も多いと思いますが、ここでトキについて簡単に説明いたします。学名はNipponia nipponでございまして、コウノトリ目トキ科でございます。大きさは全長が76センチ、翼開長が130センチでございます。生態といたしましては、春から夏に大径木に営巣しまして、主な食べ物は水辺や湿地に生息する小動物でございまして、具体的にはドジョウ、カエルなどでございます。
 今回新たに拡大する区域は、昭和56年に一斉捕獲される以前に野生のトキが最後まで生息していた区域でございます。ピンク色の丸印が昭和39年、44年、48年、49年にトキが確認された記録のあるところでございます。山合いの棚田や沢筋、渓流など採餌場となります湿地で多く確認されております。一部確認がとれた区域も外にありますが、鳥獣保護区は可能な限り海岸線、山の稜線、道路、行政区界など現地で容易に確認できる明瞭な界線で区分することとしておりまして、当該区域、北側と東側は海岸線、それから南側は昔の旧両津市とか旧新穂村と旧畑野町との旧市町村界というふうにしております。また西側は県道、それから加茂湖の東方の護岸線というものをしております。
 当該区域、餌場となることが考えられます棚田の様子でございます。これは鳥獣保護区の北東部にあります片野尾地区における棚田の写真でございます。この地区では地元の農家の方がトキのよりよい採餌場となるよう一部の水田の農地ですが無農薬、有機栽培や減農薬、減化学肥料の環境保全型農業にも取り組んでいるところであります。こちらもう一つは鳥獣保護区の中央にございます生椿地区における棚田の様子でございます。このような棚田が点々と存在しております。
 営巣とねぐらに関しまして、当該区域の尾根の周辺にはアカマツ林が広く存在しておりまして、トキの営巣木やねぐら木としてよく利用されていたところでございます。写真のようなアカマツの大径木がトキの営巣に適していると考えられています。マツ林につきましてはマツ枯れが問題になっておりますが、営巣木、ねぐら木として重要な樹種であることからマツ枯れ対策も行われているところでございます。
 鳥獣保護区の指定区分、面積、存続期間について説明いたします。指定区分はトキを対象としました希少鳥獣の保護区としております。鳥獣保護区の面積は既指定区域が734ヘクタールでございましたが、今回の拡大で1万2,620ヘクタールとなります。特別保護地区の方は現在734ヘクタールでございまして、そのまま今回は拡大はいたしません。
 存続期間でございますが、平成19年7月1日から平成23年10月31日までの4年4カ月としております。これは、既指定の今ある鳥獣保護区の存続期間が平成23年10月31日までということになっておりますので、それと存続期間をあわせたものでございます。拡大した部分も今の既指定の部分も、平成23年11月1日に指定更新となりますので、その際に報告されたトキの営巣状況なども考慮いたしまして、特別保護地区を見直すことも考えております。
 次に公聴会について説明いたします。公聴会は本年3月29日に新潟県佐渡市で開催されました。公述人でございますが、いろいろ皆さん関係者の方が多うございますので、公述人もこちらの方々で、かなり人数としては多くなっているところでございます。
 公聴会の実施結果ですが、指定に関しまして公述人全員から賛成の意思表示がございました。その中で公聴会での要望事項でございますが、これは森林組合などの方々からですが、森林整備の実施に支障がないようお願いしたいということとか、また地域住民・関係者の理解・協力のため、パンフレットの配布などの普及啓発をお願いしたいといったご要望がございました。これにつきましては、今後とも適切に実施していきたいというふうに考えております。
 次に公告縦覧の結果についてです。公告縦覧は本年3月7日から20日までの2週間で行われました。その結果、特段のご意見はございませんでした。
 次にパブリックコメントの実施結果についてですが、パブリックコメントにつきましては本年3月7日から4月5日まで約1カ月間、環境省のホームページ上で行いました。その結果、特にご意見はございませんでした。
 最後に今後の手続についてですが、本日諮問した案件につきましては、本審議会から答申をいただければ6月下旬には官報告示を行う予定でございます。官報告示の後、本年7月1日に施行を予定しております。
 以上で国指定鳥獣保護区の拡大についての説明を終わらせていただきます。

【山岸部会長】 どうもありがとうございました。ただいまのご説明につきまして、ご意見、ご質問がございましたらご発言願います。どうぞ、速水委員。

【速水委員】 ここは多分、鳥の性格的に里地里山の管理というものが非常に大事になってきますし、その管理が適切にうまくスムーズにいっていて、目標が達せられるだろうというふうに思っております。先ほどの意見の中にも、森林の管理に関して妨げにならないようにという話が出てきておりますが、妨げにならないというよりも、適切な里地里山の管理が、どのようなものが適切なのかというのが、なかなかきっちりと確定されていないというのが事実だと思います。森林組合等もさまざまな努力をされていることは間違いないと思いますが、いろんな対応をしていく中で、一番大事なのは、臨機応変でスムーズな対応だというふうに思っております。あることをやっていると守るべき対象に対していい状況が出ないような状況になってきたら、すぐに変えていただくとか、逆に森林管理の方にうまくいかないような状態ができたら、そこにすぐ相談をして対応していただくとか、より人間の活動が活発になり産業がうまく回りながら鳥との共生ができる状況をつくることが、この保護区が長く続いて、結果がよくなることだと思うので、ぜひその辺の対応の仕方というものがよりスムーズになるような体制をつくっておいていただきたいと思っておりますし、先ほどの意見を聞いた対象も農林水産がほとんどでございますので、当然のことながら農林水産省との連携をより密接にしていただいて、先ほど意見が出たような森林組合だとか、あるいは農協なども、これはまた農林水産省の管轄でもございます。その辺を本当にしっかりやっていけば、非常にいい結果が出るんだろうと思っておりますし、多分地域の人たちも、いい結果が出ることを望んでいるんだろうと思うんですが、そこでまた生活もしているということもございますので、その辺をいかにスムーズにするかというのが、やはり横の連携と臨機応変な対応ということに尽きるんだろうと思いますので、ぜひともよろしくお願いしたいと思います。

【星野野生生物課長】 今のご指摘につきまして、後ほど佐渡でどういう取り組みをしているかというのはご説明したいと思っていますですが、ちょっと話をさせていただきますと、野生復帰を今後進めていきたいと思っているんですけれども、生息環境をどう整えていくかというのは非常に重要でして、もう数年前から地域で30ほどの団体、これは農民の方々、地域住民、NGO、学生も入ったり、大学の協力も得たりという仕組みで、放棄された水田をビオトープとして再生をしたり、環境保全型の農業を山間地で取り入れていただいたり、いろいろな取り組みが起こっているんです。3月には、そういったトキに関して取り組みをしている人たちが一堂に会する協議会も、国も環境省はもちろん入っておりますし、農水省、国土交通省、県、市、あらゆる自治体が入ったような場をつくりまして、環境省としての取り組み方針をご説明しながら、地域の方々それぞれが同じ方向を向いて進むような、そんな体制づくりをやっているところでございます。林野庁におきましても、営巣木が確保されるような、マツくい虫対策を精力的にやっていただいたりということもしておりますし、農水省も水田の整備に当たって水路をどううまくトキのえさが生きられるような形で整備するかということも、いろんな取り組みをやっているところでございますので、今ご指摘の点も含めて、一層そういった連携を図りながら取り組んでいきたいというふうに思っております。

【速水委員】 よろしくお願いいたします。

【山岸部会長】 ただいまのご説明で鳥獣保護区になると、従来とどこが違うかというと、ここに書いてあるのがまず狩猟禁止されるというのはわかるのですが、そのほかの点で、これまでと一体そこが指定されることによって、どのような違いがあるのかをちょっとご説明いただければ、皆さんご意見出しやすいと思いますけれど。

【事務局(山崎)】 ハンターの皆さんの狩猟ができなくなるという点につきましては、トキはそもそも国内希少野生動植物種でございますので、そもそも狩猟の対象になっておりませんので捕獲も狩猟もできないという状況です。トキ自体は守られているのですが、トキが生息している同じ場で例えばカモなどの狩猟が行われれば、トキの生息に影響があるということで、そういったことを行うべきでないという判断で小佐渡を鳥獣保護区にしております。
 あと、鳥獣保護区になりますと、実際、環境大臣がここでは採餌施設を設けるべきというようなことになった場合には、法律上は狩猟者の方はそれを受け入れなければならないという受忍義務が生じるということになっております。あと、実際、現地では鳥獣保護区になりますと、鳥獣保護区管理員というのを配置して、いろいろ鳥獣のモニタリングなどもしたりするわけなんですが、今回の拡大をすることによりまして、この1万2,000haを超える鳥獣保護区域に鳥獣保護区管理員を導入いたしまして、鳥獣の生息のモニタリングとか、トキについても放鳥してどういうふうに生息エリアを拡大していくのかというようなモニタリングもしてまいりたいというふうに考えております。

【山岸部会長】 ありがとうございました。ただいまの追加説明も含めまして、何かご意見、ご質問がございましたらどうぞ。

【石井委員】 ここが鳥獣保護区になると狩猟が禁止になりますね。ちょっと気になるのは、移入種の外来種のホンドテンがここに入っていますよね。トキも捕食される可能性があると思うんですけれども、狩猟禁止になると、今までとられていた分もとられなくなるということの影響はないのかなと思ったんですね。それを今まで何か調査をされて、今度、鳥獣保護区になった場合には、テンに関しては、こういう管理を考えているとかということをお聞かせ願えればと思います。

【山岸部会長】 事務局、どなたが。課長、どうぞ。

【星野野生生物課長】 トキの野生復帰のこれからの取り組みでございますけれども、その過程で天敵の問題をどう考えるかというのは大きな課題だと思います。そういう意味で、今回鳥獣保護区にした区域でトキが実際、自然の状態で生息するような状況になったときに、どんな天敵が問題になってくるのかというのは、しっかりモニタリングをしながら、必要があればホンドテンに対する対応も考えていきたいと考えております。
 冒頭、審議官のあいさつの中にもございましたけれども、4月から環境省の職員を佐渡に配置しております。自然保護官1名と自然保護官補佐、それから野生生物の専門員を1名、合計3名体制で野生復帰をするステーションに配置しておりますけれども、この職員はこの保護区の中で今後野生復帰をしていったときに、トキはどういうふうな動きをするのか、トキが存続を続けるためにどんなことが必要なのかということを考えながら、しっかりモニタリングをしていきたいと思います。そのためという意味も込めて、新たに4月から職員を3名配置しておりますので、今おっしゃった点につきましては、十分管理をしていきたいと思います。

【山岸部会長】 三浦委員、これに関連した話でしょうか。

【三浦委員】 鳥獣保護区の国指定ということで、これについてはもう賛成でありまして、ぜひよろしくお願いしたいと思うんですが、それを踏まえて、今、石井委員の指摘の問題と、もう一つお願いがあるんですが、特別保護地区の指定で伐採等が制限されるということになるんですけれども、実際にここへトキの野生復帰を実現していくためには、やはりもとにあった棚田といいますか、そういうものを復元していくという作業がさまざまな団体で今取り組まれているわけですが、特にこの特別保護地区についても棚田を復元していくということ。この棚田の復元というのは、今やもう里山の一部になっていますから、おそらく大量の伐採といいますか、そういう行為がこれから必要になるんではないかなというふうに思うんです。そういうビオトープの造成ということと、木竹の伐採ということを状況を見ながら積極的に取り組んでいただきたいなと。これは特別保護地区の従来のものとはちょっと精神が反しますけれども、積極的に取り組んでいただきたいということが一つ。
それからもう一つ、石井委員が指摘した点ですが、これはテンが外来種、移入種として非常に増えているということが危惧されるのと、あともう一つカラスも、今の個体数レベルがどうなのかというのはよくわかりませんけれども、明らかにこれはトキの営巣に対して、かなりのインパクトを与えていくものだろうというふうに考えますので、これも状況を見ながら移入種、それからカラス等の狩猟も含めての捕獲というのも積極的に進められるようにしていただきたいという、2点のお願いです。

【山岸部会長】 三浦さんのご提言は速水委員の先ほどの話と非常に密に関連していると思うんですが、いかがでしょうか。

【星野野生生物課長】 伐採の件でございますけれども、ここの鳥獣保護区の指定目的が希少種の保護ということであります。全国には、国指定鳥獣保護区、特別保護地区がたくさんございますけれども、地域ごとに何を守るための保護区なのかということを十分考えて対応していきたいと思っております。

【山岸部会長】 三浦委員、結構ですか。それでは、ほかのことで、いかがでしょうか。
 どうぞ、和里田委員。

【和里田委員】 先ほどのご説明があった中の、パブリックコメントの件数がゼロ件ということだったんですが、資料で拝見しますと、ホームページに載せただけでなく、記者発表もされているということではあるんですけれども、記者発表して新聞だとかNHKだとかは応じてくれているんでしょうか。その上でゼロ件なのか。その辺、なかなか読者の人でないと書かないでしょうから、これはこれだけにかかわらないと思うんですが、環境省としてパブリックコメントを求めるということも、報道機関の使い方、何ももう記者発表だから報道したものというよりも、新聞などにコーナーを設けて、そこでパブリックコメントを求めるということを必ず書いておくということか何かにしないと、何か決定しないんではないかというふうに思います。

【山岸部会長】 ありがとうございました。よろしゅうございますか。パブリックコメントは多くは反対の場合にたくさん出てくるんで、今度は出ないというのはきっといいことだからということだと思いますが。関係する団体としては、猟友会なんかが関係するんですが、是末委員、いかがでしょう。

【是末委員】 カラスの場合はたくさんのご意見が出ましたが、我々の方も特にカラスは営巣を襲うので困っています。特にキジなどを放鳥しますとカラスに全滅させられるというようなことがございますので、そういうことです。

【山岸部会長】 加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】 すみません、今いろんな方のお話を伺っていますと、鳥獣保護区に指定することによって狩猟禁止ということです。ですから保護しようと思っているものの狩猟はもちろん禁止されるわけですけれども、それでなくても、このトキの場合にはそういうことは起こらないんでしょうけれども、それ以外のものも狩猟禁止ということになって、そうすると天敵の場合とかカラスとか、どうなりますかというお話だったと思うんですね。そういうふうに考えますと、このトキを守る、これに似たようなケースのときに、この鳥獣保護法の枠組みで対応するのがよろしいのか、もっと別の枠組みがあるのかどうかということなんですね。それで、同じような例がたくさん出てくるとすると、この枠組みで対応し切れない、むしろ対応がうまくいかないというケースも出てくるんじゃないか。それでそのあたりの仕組みとして、この仕組みを使うのが最適なのか、もっといい仕組みでこの問題に対応する方がいいのか、そのあたりのお考えはどうでしょう。

【星野野生生物課長】 天敵の問題ですけれども、鳥獣保護区では狩猟は禁止されております。狩猟というのは狩猟鳥獣というのが定められておりまして、それを狩猟期間中に狩猟の免許を持った方が自由に狩猟をできるわけで、狩猟鳥獣になっているものがいろんな影響を及ぼすという場合には、確かに鳥獣保護区になると自由な狩猟としての捕獲ができなくなる。ただし、農林水産業に及ぼす被害、生態系に及ぼす被害、人の生活に及ぼす被害、そういうものがある場合には、有害鳥獣として駆除する仕組みがございます。ですから、鳥獣保護区の中であっても、全国でそのような問題のあるものについては許可を与えて捕っているという仕組みがございます。その辺りは、問題の程度に応じて対応しております。
 外来生物の場合には大規模な対応としては、例えば奄美大島ですと希少なアマミノクロウサギに対して過去に持ち込んだマングースが非常に脅威となっております。これについては、国として直接的な駆除をやっておりますが、これは外来生物法の枠組みの中で、マングースが特定外来生物ということで日本への輸入も禁止するし、駆除すべきものと指定されておりますので、大規模な捕獲をやっているということでございます。ケース・バイ・ケースでございます。この佐渡の場合には、これからその辺りについて、どの程度影響が出てくるのかということを見ていきたいと思っております。

【加藤委員】 どちらの法律で優先するとか、そういうことがあるのかどうかとか、それから、そういう場合に先ほど速水委員がおっしゃったような機動的なということがうまくいくのかどうかというところが、ちょっとよくわからないんですけれども。

【星野野生生物課長】 優先関係ということは、問題に対してどういう取り組みをするのが最もいいのかというのがまず先にあると思います。あえて優先関係ということでいえば、例えばマングースを外来生物法に基づいて手続でとった場合には、鳥獣法の手続は要らなくなります。そういう重複にはならないという仕組みがございますけれども、問題に応じてどういう法律の仕組みで対応するのがいいのかということも、予算も法律についた形でございますので、予算的に余裕があるかどうかということも含めて、総合的に考えていった方がそのときの動きを調べて生かせると思います。

【山岸部会長】 加藤委員のご意見も貴重なので、来年には間に合わないと思いますが、事務局でほかの仕組みがあるものかどうか、また議論いただいて模索していただきたいと思います。それでよろしゅうございますか。
 それでは矢原委員、どうぞ。

【矢原委員】 鳥獣保護区の指定自体には賛成ですけれども、指定した場合に生じるいろんな問題について、臨機応変に対応するというのが非常に重要だと思うんですが、臨機応変に対応する場合に、やっぱり基準とか計画とかという全体像がしっかりしていないと、例えば関係する人の間で意見が割れて立ち往生するみたいなことが起きかねないと思って、今ネットで関連の文書とかざっと見たんですけれども、どうも生態系全体を見て、トキだけでなくて、このエリアをどういうふうにしていったらいいかということを、ちゃんと科学者が集まって検討する場というのがまだきちんとできていないような気がします。環境省の方では再生ビジョンというのを出されていますが、やっぱりトキ中心になっていて、水田、水路に例えば七、八センチくらいのドジョウが1平方メートルに1匹以上生息するとか、そういう目標を出されていますけれども、ドジョウといっても1種類じゃないし、希少なドジョウがいないのかとか、今言ったような外来種も多分いますしとか、ドジョウだけ取り上げてもいろいろな問題が出てくるんですけれども、ドジョウだけでなくて、その里山の生態系の水辺環境と森のバランスとか、全体をどうするのかということを、トキを中心にしながらきちんと考えていく科学委員会みたいなものが必要なんじゃないかと思うんですけれども、その点についていかがですか。

【山岸部会長】 あとの説明のときにやりますが。どうぞ。

【星野野生生物課長】 環境省で地球環境研究総合推進費という予算の枠がございます。この枠で本年度、九州大学の島谷先生が研究代表となって、トキの野生復帰のための持続可能な自然再生計画の立案とその社会的手続という3カ年の研究課題の提案がございまして、採択をされて今動き出してございます。その研究課題の中では、例えば採餌環境としての河川生態系の評価ですとか、採餌環境としての水田・草地生態系の評価、餌場創出維持技術の確立、営巣環境としての森林生態系の評価等々ということで、かなりさまざまな分野の研究者の方々に入っていただいて、総合的な研究のチームができて、我々行政サイドで野生復帰に向けた取り組みを進めようとしているんですが、まさに研究者サイドでも佐渡において、トキに焦点を絞った研究体制が今でき上がったというところでございます。

【山岸部会長】 よろしゅうございますか。

【矢原委員】 その事情はある程度知っているんですけれども、ほかに佐渡市の方でも助成金を出していろんな研究をされていて、そういう形で個々に研究者の方に研究していただくということに加えて、そういう研究成果をどうやってトキの野生復帰事業に生かしていくかという相談をする場というのがやっぱり必要だと思うんです。そこがこれからの課題かなという気がします。

【星野野生生物課長】 トキの野生復帰に当たりましては、環境省で二つの専門家会合を設置しております。一つは山岸先生に座長をお願いしております野生復帰の専門家会合です。それからもう一つが飼育繁殖の専門家会合でございまして、この野生復帰の専門家会合のメンバーとして今申し上げました研究チームの方にも入っていただいております。山岸先生自身もその研究チームの一員ということでございまして、特別に専門家会合とこの研究チームとの会合という形を公式に位置づけるということは、今考えてございませんけれども、事実上、そこの研究の内容が専門家会合の議論に反映される、そういう進め方をしていきたいと思います。

【山岸部会長】 矢原さんの言っていることはそういうことではないと思うので、例えば研究会が今のようなクローズされたものではなくて、開かれたものになって、しかも科学者のスクリーニングを得ないといけないと思うんですよね。ですから、今やっている地球環境研究推進費の結果を生態学会や何かで特別の自由集会をやるとか、シンポジウムをやるなど、生態学者が集まるところでオープンにして、意見をいただくというようなことは、これからぜひやっていかなければいけないことだと私は思っています。

【矢原委員】 そうなんですけれども、私は自然再生ハンドブックというのを生態学会で出すものですから、その原稿の取りまとめも最終段階なんですけれど、ここ数年間の間に北海道から沖縄まで自然再生に関連するような事業のウェブサイトとか文書をかなり見たんですけれども、佐渡についてもそのときにちょっと見たのですが、佐渡は参考になる事例として取り上げてはいないんです。だから、そういう点でまだ自然再生的な計画の目標設定とか、現状認識の明確化とか、それを運営していく体制、科学者の役割とか、そういう部分がすっきりした形で整理されてみんなに分かるようにはなっていないなというのが率直な印象です。

【山岸部会長】 大変貴重なご意見、ありがとうございました。そのようにしたいと思います。
 ほかに何かご意見ありますでしょうか。どうぞ。

【岩熊委員】 再生に関して、関連する省庁との調整はどうなっているか、特に農林水産省ですね。棚田も絡んできますし、それから作物の管理とかいろいろな問題が入ってくると思います。その辺いかがでしょうか。

【山岸部会長】 今、矢原さんや岩熊さんから出ている問題、この次に説明することに非常に関係するんで、一応、この鳥獣保護区のことについては、ほかに意見がなければ。どうぞ。

【和里田委員】 佐渡島の土地利用状況だとか、詳しくないのでわからないのですが、一応この区域設定をされるわけですが、鳥は飛んでいくものですから、素人流に考えると、佐渡島全部かけなくてもいいのかと、こういうぐらいに思ってしまうのですが、その辺はこれからさらに様子を見ながら区域拡大だとか、いろんなことも含めて検討していかれるということなんですか。

【星野野生生物課長】 そうしたいと思っております。設定期間が平成23年までということでございますので、その時点の状況に応じて、先ほどもありましたけれど特別保護地区が必要であれば地元の方々と狩猟者と相談もしたいと思っておりますし、考えたいと思います。ただ今回設定したのは、一応、過去の生息状況を見ながらトキを野生に放した場合に餌場となるようなところを大枠でくくって、かつそこに住んでいる方々のご理解が得られている範囲でということで取り上げて、1万2,000ヘクタールを設定するということでございます。

【山岸部会長】 よろしゅうございますか。
 それでは、時間の関係もございますので、この議題についてお諮りします。国指定鳥獣保護区の指定については、事務局案が適当と認めてよろしいでしょうか。
(異議なし)

【山岸部会長】 ありがとうございました。ご異議がないようですので、本件は適当と認めることとし、この事務局案を当審議会の答申案として中央環境審議会会長に報告することといたします。
 それでは、引き続きまして矢原さんや岩熊さんから出ている、トキは野生復帰についてはどうなっているのかということを、事務局の方から説明していただいて、もう少しご質疑を深めたいと思います。どうぞ、それではお願いします。

【事務局(中村)】 野生生物課の中村と申します。
 それでは、本日の議事次第の報告事項、トキの野生復帰に係る最近の動きについてご説明させていただきたいと思います。資料の方は資料3、1枚の両面で概要を説明します。スクリーンの方をごらんいただきながらご説明させていただきたいと思います。
 トキの保護増殖事業の実施状況ということでございまして、種の保存法に基づく保護増殖事業として実施しています。
 現在、トキの飼育繁殖状況でございますけれども、現在94羽とあとヒナが現在16羽ということで、合計110羽となって増加してきております。トキにつきましては、1955年ごろに既に35羽程度になっておりましたけれども、その後地道な生息地の保護活動等が佐渡島で進められましたが減少いたしまして、1981年、昭和56年に野生のトキの一斉捕獲が行われました。これは一斉に捕獲して人工繁殖を進め個体数が回復したら、それをさらに野生に戻すということを目的として行われました。また、たまたま同年トキが再発見された中国とも繁殖協力を進めて人工繁殖の努力が続けられてきました。
 しかしながら、1995年になりまして、トキは1羽だけになってしまいました。1999年になりまして中国よりトキが贈呈され、これより人工繁殖が初めて成功し、さらに翌年、中国よりもう1羽、美美が贈呈されまして、それ以降、順調に個体数が増加してきていると、このような状況になってございます。
 続きまして、トキの野生復帰の取り組みでございます。先ほどの鳥獣保護区の説明ですとか質疑の中で重複する部分があると思いますが、大きな流れをご説明したいと思います。
 まず、野生復帰の取り組みを目標にし始めたのは、中国から個体をいただいて、人工繁殖に成功したことで、これを受けまして、平成12年度から14年度、3カ年をかけ環境再生ビジョンの策定をいたしております。さらに、その環境再生ビジョンを踏まえまして、平成15年度にトキ保護増殖事業計画を改訂しております。さらに保護増殖事業計画の改訂を受け、平成16年度から関係4省庁による生息環境整備方策調査ですとか、トキ野生順化施設、現在、トキの野生復帰ステーションの整備を進めてきたということでございます。
 続きまして、これらそれぞれの取り組みを少し詳しく説明したいと思います。
 まず環境再生ビジョンでございますが、平成12年度から14年度の3カ年にかけまして、佐渡島におきまして共生と循環の地域社会づくりモデル事業ということで、トキの野生復帰を目指してどういうふうに地域社会づくりの共生と循環を進めていくかを検討するため、地域住民あるいは関係機関の参加を得まして自然環境調査の実施、保全活動の実施、共生のあり方を検討する地元も含めたシンポジウム、こういったものを開催いたしまして、平成15年3月に環境再生ビジョンをまとめております。スクリーンの右側ですけれども、その再生ビジョンの中で当時の大きな目標として小佐渡東部地域、左側の図面の佐渡島、ちょうど4分の1ぐらいのところ、今回、鳥獣保護区の設定もされますが、ここに今60羽のトキを定着することを目標にして、みんなで一緒になって取り組もうという大きな目標を設定しています。
 その中で取り組む事項として三つ大きく設定をしております。一つがトキの個体数の確保で、野生復帰のための人工増殖個体数を確保するということと、野生の中で生きていけるような個体の確保をしていこうという目標を策定しました。二つ目にトキが生息できる自然環境づくりで、棚田ですとか、そういった整備をする。三つ目が地域の社会環境づくりで、トキの野生化訓練ができたとして地域の方々がトキと一緒に住んでいこう、共生していこう、そういう意識がなければなかなかうまくいきませんので、そういった地域社会環境づくりを進めていこうという、この大きな三つの取組を平成15年3月に発表しまして、以後、佐渡島におけるトキの取り組みの原点ともいえるビジョンを策定したところでございます。
 特に地域との共生というところでございまして、やはり環境省だけではなくて、関係する市町村、あと特に地域ということを考えますと、農協ですとか営農組織、森林組合、教育委員会、観光協会、そういったみんなが集まってトキを中心にどういう風な地域をつくるかという仕組みをつくろうという提言が出されました。
 続きまして、平成15年に、野生復帰に取り組もうという動き、さらに実際に個体数が順調に増えていったので、種の保存法に基づくトキ保護増殖事業計画を改訂いたしました。種の保存法が策定された際に、トキ保護増殖事業計画はできていたのですが、その中ではその当時飼育されている2羽をどうやって飼育していくかの点だけだったわけですが、平成15年度にはそれをこの野生生物部会の審議を経まして改訂したものでございます。
 この計画ですが、事業の大きな目標としまして、一つ目の丸、飼育個体群の充実を図るという目標を掲げております。二つ目の目標が本種の生息地であった新潟県佐渡島において生息に適した環境を整えた上で再導入を図り、そして自然状態で安定的に存続できるようにするという目標を掲げております。
 これに向けた事業の内容を記載しておりますけれども、まず個体の繁殖及び飼育、生息環境の整備、再導入の実施、また飼育個体の分散、中国との相互協力の推進という、大きく5点を事業の内容として進めることといたしました。その際、再導入を図るということですので、特に生息環境の整備については棚田、水田ですとか湿地が関係しますし、コナラなどの営巣木などは林野庁さんとの関係ということで、この計画は農林水産省、河川を担います国土交通省、そして環境省と、この4省庁で計画が策定されているところでございます。
 そのようなことで再生ビジョンに基づく三つの大きな柱を模式的に書きますと、健全な飼育個体の確保と野生順化訓練が一つの柱、生息環境の整備、社会環境の整備、この三つの柱がバランスよくトキの野生復帰を支えていく、こういう考えのもとに現在進めているところでございます。
 まず、一つ目の個体の確保、そして野生順化訓練ですが、今年の3月、3カ年をかけまして野生復帰ステーションが竣工をいたしました。ステーションの中には順化ケージという高さ15メートルぐらいでございますが、このケージの中で、トキが狭いところではなくて広いところで自由に飛ぶ訓練をしております。また繁殖ケージの中では、トキがなるべく自然の状態で自ら巣をつくったりするといった訓練を進めるための繁殖ケージが設置されております。
 そういった野生復帰ステーションの中での野生順化訓練はこの後の説明でも出てきますが、専門家の皆様の意見を聞きながら考えているところで、現段階ですけれども、野生下で生存・繁殖できる能力を獲得・向上させるという目標のもと、野生下で想定される環境をケージの中で再現して本能を引き出す手法で、採餌、飛翔、社会性、天敵回避、繁殖の5項目について行うというふうに考えております。またケージの中ではトキと人との関係について、人がこういうふうに日常的な社会活動をしているといった状況はなるべく意識させないというために、まるっきりトキに近づかないというのではなくて、人が中に入っていって、トキがそれを知らぬふりができるという関係づくりが必要ではないかと、こういった議論がなされております。
 続きまして、二つ目の柱になりますが生息環境の整備、自然再生の取り組みということで、現在、実施主体としましては地元の自治体、新潟県、佐渡市が環境省、農林水産省、国土交通省、林野庁、それぞれの所管事業を活用しながら地元の方で取り組みが進められております。また行政機関以外では、地域・生産者グループ、大学、NGOが集まってできました例えばトキの野生復帰連絡協議会というような集まりがございます。こういった団体が方向づけしながらビオトープの整備ですとか、水田と用排水路を結ぶ魚道の設置、環境保全型農業の普及、川づくり、ねぐら・営巣木の保全、こういった取組が徐々に進められているという状況でございます。
 それぞれの取り組みの広がりを簡単に表したものですが、現在、先ほどのトキの野生復帰連絡協議会の方からお借りしたものでございます。
 いろいろな主体が様々な取り組みを進めているわけですけれども、これらの取り組みがばらばらにならないよう、それぞれの課題となる取り組みはどんなものかというものを情報共有していく必要があるということで、今年の3月、佐渡市が事務局をしております人・トキの共生する島づくり協議会で、どんな取り組みを進めるべきかという議論をしていただくことになっております。この参加主体は、地域生産者グループ、農協、森林組合、観光協会、土地改良区、大学、NGO、佐渡市、新潟県、農林水産省、林野庁、環境省で構成して、いろいろな情報を共有していこうという取り組みがスタートしております。
 これらの取り組みを進めるに当たりまして、それが適切な方向に向かうように、大きく三つの領域に分けまして対応を考えております。トキを生み育てる飼育繁殖の領域、それを野生復帰させる領域。そして生息・社会環境を整備する領域。この三つの領域をうまく進めていくため、環境省では、飼育繁殖の領域に飼育繁殖専門家会合、野生復帰の領域に野生復帰専門家会合を設けて、専門家の皆様の意見を聞きながらトキの野生復帰が適切に進むようにご意見、アドバイスをいただいているという状況でございます。また、それらのご意見を踏まえて、実際に現地でどんなふうに進めていくかということも現地検討会を配置しておりまして、現場である佐渡トキ保護センターへの指導ですとか野生復帰ステーションへの指導を行っていくということでございます。あと、重複になりますが生息・社会環境の整備につきましては、人・トキの共生の島づくり協議会が設置されております。それぞれがばらばらではありませんので、二つの専門家会合に重複する先生方にお願いしたりして、意見・意思の疎通が図られるように、工夫をしております。
 飼育繁殖専門家会合では、今後の野生復帰に向けた飼育繁殖個体群の充実といった内容で、遺伝的多様性の確保とか、それぞれの施設における飼育・繁殖の考え方、緊急時の備え、分散飼育について議論をしていただいているところでございます。
 野生復帰専門家会合につきましては、目標の設定ですとか、どのように進めるかという段階的な手順、人とトキの良好な関係をどうするか、情報共有をどうするか、訓練をどうするか、こういったことを議論していただいております。
 こういった取組をしっかり進めて、野生復帰ステーションが完成いたしましたので、本年度より野生順化訓練を開始しまして、早ければ来年には試験的な放鳥を目指す、このように考えています。
 もう一つ、トキに関しましては日本と中国のトキの保護協力が一つ大きなテーマとしてあります。1981年に日本でトキ5羽を全鳥捕獲しましたが、くしくも同じ年に中国で7羽が発見されました。それ以降、中国と日本との中で国際希少種であるトキの保護をどうやって進めていくかということとなり、本格的なトキの協力が1985年、昭和60年に開始し、中国トキの借り受けや日本のトキを婿入りさせたりして人工繁殖の努力を続けてきました。1999年には中国から友友、洋洋が贈られまして、優優が人工飼育下で誕生いたしました。またその翌年に美美が贈られました。2003年、平成15年に日中共同トキ保護計画が大臣級で署名されました。この中でさらに日中間でトキの保護をどう進めていこうということが書かれています。この年、日本産最後のトキ「キン」が死亡しております。
 冒頭、黒田審議官からもございましたが、今年の4月に日中首脳会談で中国側から2羽のトキを供与していただけるというお話がございましたので、この後、中国側との協議を進めて、2羽をいただいて、トキの個体群の充実を図るということが期待される状態になっております。
 以上で、現在のトキ保護増殖事業の動きにつきまして説明を終わらせていただきます。

【山岸部会長】 恐らく岩熊先生の聞きたかったことは何も出てこなかったと思うのですが、もう少し立ち入って説明していただけませんかね。省庁間の協力をするというのは、そこに出ていたのだけれど、それがどんなふうにやってうまくいっているのか、うまくいっていないのかとか、そんな話をきっと岩熊先生は聞きたかったと思うのですが。後の質問で受けていいですか。それでは、鷲谷先生。

【鷲谷委員】 私は佐渡のことを余りよく存じ上げていないのですけれども、地域の受け入れ体制のようなことに関して、十分なのかどうかをお聞きしたいと思うんです。どういうことかといいますと、協議会をつくって多様な主体の協力のもとに進められるということは、とても重要だと思うのですけれども、地域の自治体の役割というのが非常に大きいんではないかという気がするんですね。佐渡市がこのことに関してどういう政策を持ち、また佐渡市としてどういう取り組みを進めていらっしゃるのかということが知りたいと思いました。
 と申しますのは、多少似た取り組みをしているコウノトリですけれども、あそこは豊岡市がコウノトリの問題を非常に重要な政策として位置づけていて、かつてはコウノトリ共生課だったものが、今は課を超えて共生部というところです。一方で、農林部局などが農林と観光ですけれども、地域づくりに関する政策を持っていると同時に、コウノトリそのものをケアするといったらいいでしょうか、その体制をつくっているわけですね。恐らくその両方があって、初めて成功に導かれるんじゃないかと思うのですが、そういう佐渡市の役割なんですけれども、その地域づくりについて、もうある意味ではメニューのようなことは当然だと思いますので、もう一方のトキのケアという点ですけれども、大きなポイントとなるのがたくさんの地域の方が見守ってくださるということだと。それはある意味では、参加型のモニタリングということになるんだろうと思うのですけれども、たくさん参加されているNGOなどが個別の取り組みをされるということを超えて、恐らく、どなたでも参加できるようなモニタリングのプログラムを提供して、情報を集めて一元的に分析したり評価して、速やかにインターネットなどで公表して、地域の人も、あるいは地域を越えて日本中でトキに関心を持っていらっしゃる方がいらっしゃると思いますので、情報を共有できるようなシステムというのをつくる必要があると思うのですが、佐渡市の中にそういうことをするような部局とかがあるのか、それとも他にそれにかわる、そういう役割を果たすような主体があるのかというようなことについて、ご質問したいと思います。

【山岸部会長】 今の鷲谷先生のご意見、ご質問と関連した質問がありましたら。

【高橋委員】 私も佐渡のことはよくわからないので申し訳ないのですけれども、里地里山を論じるとき、もちろん研究とか重要だし行政も重要なんですけれども、どうやって担い手を循環的に確保するかということが一番のテーマになるだろうと思うのですね。トキを守るにしても里山、さっき伐採して、竹林も伐採してというお話があったのですけれども、里山というのは当然力を加えていかなければいけない、それなりに資本投資しなければいけないわけでして、担い手の循環というのがイメージできているのかなと。今はとりあえずはやる、ということなのだろうと思いますけれども、それを考えたときに、どういう形のものをやるかは、やはり協議会の中である程度グランドデザインをつくらなければいけないのだろうなと思うのです。
 それは実際の作業にも当然かかわってくるんだろうと思うのです。例えばさっきのお話だとマツ枯れを防除するようなことを森林側がやる、それから水田の方はドジョウがたくさん住むような水路管理をやるということなのですけれど、それぞれが別々の仕事をしていても、やはりだめなんだろうと思うので、その辺も含めて担い手がそこにどうやって関わっていくか、あるいは外部セクターとか観光の人たちとどうやって調整して、方向性、グランドデザインを出していくかということを、それは協議会なのか、さっき鷲谷先生がおっしゃった市町村なのか、その場でいろいろ違うとは思うのですけれども、それをきちんと考えないと、里山というのはちょっとやっていけないのじゃないかなというのが一つ。
 それからさっきコウノトリの話があったのですけれど、コウノトリの郷と、恐らく交流をしたり勉強したりしていると思うので、そこでコウノトリの何が参考になったのか、あるいはコウノトリでここは失敗だなと思ったんで佐渡ではこうしますよ、とかというようなものを、私の方に提示していただくと非常にありがたいなと思いますし、恐らくそういうものというのは、今度普遍的にほかの里山や野生動植物を守るときに重要になってくるんじゃないのかなという気がします。

【山岸部会長】 記録しておいていただいて、後でまとめてお返事をいただきますから。
 それでは磯崎先生、違う問題。

【磯崎委員】 公聴会のところで、漁業関係の団体との話し合いとかがどうなっているのか。特に加茂湖は区域設定からは外れているんですけれども、養殖をやっていたり、内水面での漁業活動が結構あるかと思うのですが、それとの関連でお聞きしたいのが一つです。
 あとは最初の議題の方で、加藤さんから出て一部回答が来ているのですけれども、野生復帰を目的にするときに鳥獣保護法、あるいは鳥獣保護法の区域でというのは、種の保存法の場合もそうなんですけれども、特にコウノトリやトキのように野生状態からいなくなって30年、40年とか経ってから行う場合と、それから現在少なくなってきて対処する場合とでは、やはり対処するやり方も、そして制度も違うわけなんです。できれば野生復帰に関わるような法律があればいいというのは当然ですけれども、ただトキ、コウノトリのほかでこれと類似するような同じものがあるのかどうかということとも関連するので、必ずしも法律をつくる必要はないかもしれませんが、鳥獣保護法や種の保存法で、そういう場合に対処するために必要な制度については考えてもいいかなと思いますので、コウノトリとそれからトキとの関連で出てくる現行法では射程が短い、あるいは現行法の政令や区域指定で射程が短いところについては、改正するなりということは考えてもいいのかなと思っています。

【山岸部会長】 漁業の問題と法律の問題、二つ出たのですが、同じようなご質問ありますか、磯崎先生と。

【三浦委員】 これも前からお願いし続けているのですが、やはり鳥獣法の世界の中で今回対応という格好では、全体としてやはり弱いのではないかなと。SSCのガイドラインでも、特にリイントロダクションに当たっては長期的なサポートを必要とするという格好になっていて、種の保存法の中でも生息域外保全は積極的にうたっているんですが、それをもう一度リイントロデュースするというところは弱いわけですね。そういう点でいきますと、生物多様性条約の第9条のABCに生息域外保全とリイントロダクションが明確に書かれているわけですから、先ほどの加藤先生と、それから磯崎先生の意見に私も非常に賛成で、今みたいな様々な要素を取り込みながら、特化していくようなものがやっぱり必要なんではないかなというふうに思います。

【山岸部会長】 そうしましたら石坂委員。

【石坂委員】 意見というか質問ですけれども、中国は日本もトキをいただいていますし、トキの保護の先進国と一応考えてよろしいのでしょうけれども、そこでどれぐらい中国にトキが存在しているのか、それから中国で打っている対策でこの日本で参考にすべきものがどういうものがあるのかとか、そういうことをちょっとご紹介いただければと思います。

【山岸部会長】 今の石坂委員と同じような意見、質問ありますか。
そうしたら違うので、市田さん、どうぞ。

【市田委員】 私、岩熊先生の意見の補強というか続きなのですけれども、先ほどの発表を聞いていて、いろんなことが動いていて、これを調整してやるのは本当に大変だなとしみじみ思いました。だから、どなたが派遣されるのか知りませんけれども、これから佐渡に行く人は本当に大変な思いをするんだろうという気がするのですね。実際問題として研究が行われて、その研究に基づいて方針がつくられて、それから施設がつくられてという順番ならよかったのですけれども、実際、施設はもうつくられているし、研究はこれからやるわけですし、方針は今検討しているという段階ですね。そういう中で、来年くらいには放鳥したいということになるとすると、バックグラウンドがない中で事業を進めるという辛さがすごく出てくるだろうという気がするんです。そうすると、地元の派遣された人に任せて、さあ頑張れという段階の話ではなくて、相当本腰を入れてまとめなりをやっていかないと、これだけ注目されている鳥の場合には本当に難しいだろうという気がします。
 先ほど省庁間の調整ということがちらっとお話がありました。それなんかでも、恐らく何回もあちこちで相当大変なことが繰り返されたことでしょうけれども、今、例えばヤンバルでヤンバルクイナを守るという善意のために道路部局が何か変なことをやっています。とんでもないことをやっているんですね。しかし、それがもう省庁を超えてしまったというだけで交渉が本当に難しいという状態がありますね。それは単なる道路の問題だけですけれども、ここは田んぼも川もいろんなことを含むわけで、本当に派遣される人は頑張ってもらいたいと思うのですけれども、それと同時に、環境省全体で本気になってやっていただきたいという、エールをここで特にお送りしたいと思います。

【山岸部会長】 岩熊先生、省庁の話ですか。

【岩熊委員】 今日文化庁の方はいらっしゃっていないんでしょうか。
 幾つかの保護の網のうちの特別天然記念物ですね。もし放鳥するとかになりますと、現在は種指定だと思うんですけれども、地域指定とかというようなことも今後考慮されていくのかなと思いまして、その辺、ご意見伺いたいと思います。

【齋藤委員】 意見、質問ではないのですが、お願いなんですが、先ほど協議会ができまして、まとめるということになりました。大変な団体が参加してくださっているわけですけれども、ぜひ統一した見解を住民の方にできるだけわかりやすく説明をしていくこと。これから先、本当に関係している人だけがわかっているんじゃなくて、住民の方が十分に理解できるような形でPRする方法をお願いしたいなというお願いです。

【山岸部会長】 矢原さん、最後にでは質問、意見を言っていただいて、それにまとめてこちらからお答えいただくということにしたいと思います。

【矢原委員】 先ほど自然再生事業指針でいっている現状認識の明確化ができていないということを申し上げたのですけれど、今の説明を伺ってもやっぱりそうだと思うんですよ。そもそもトキがなぜ減って、どういう対策をとれば増えると考えるのか。対策というのは一つの仮説ですから、こういう対策をとったらこうなるだろうという予測と、その根拠を示してやってみて、うまくいかなかったら、こういうときには止めるということをはっきりさせておかなければいけないということを、自然再生事業指針で書いているんですけれども、環境省が中心になってつくられている再生ビジョンの中に、先程のようにドジョウがこれだけいたらいいとか書いてあるので、恐らくエサさえあればうまくいくというふうな仮説として考えているというふうにとれるんですけれども、本当にそれでいいのかどうか。
 あと、ねぐらとしての高木というのを挙げられていますけれども、本当にそれだけでいいのかどうか。その認識が関わっている科学者の間でもまだ一致していないんじゃないかという気がするんです。私のお願いは、まず関わっている専門家のところで、どういう仮説を持って、どういう対策をとればどういう効果があると考えているのか、その部分に関して現状認識を一致させる。それに基づいてわかりやすい説明を関係者にしていくということでないと、いろんな関係者が集まってきて現状認識が明確になっていないと、それぞれの立場というのがありますから、漁協はこうして欲しい、林業からはこうして欲しいという、いろんな意見が出て、結局その利害調整だけになってしまうと。一番肝心なのは、やっぱりトキを復帰させること、及びそれに関連する里山の生態系管理ですから、そのためにどういう仮説を持って、どういう対策をとって、どういう予測をしているのか。その予測がどういう点で間違ったら、いつその対策を中止するなり変えるなりするのか、そこをはっきりさせて欲しいなというふうに思います。

【山岸部会長】 まだまだあると思うのですが、今あったご質問について、まとめて事務局の方からご説明いただきたいと思います。

【星野野生生物課長】 それでは答えられる範囲でご説明をして、幾つかは担当から細部の説明をさせていただきたいと思います。
 まず、鷲谷先生の佐渡市の取り組みということでございますけれども、佐渡市は非常に熱心にトキの問題に関わっていただいております。昨年、東京でトキに関するシンポジウムを開いたのですが、佐渡市長さんにも参加いただいて、まさに絶滅しかかったトキを地域の人たちがどう守っていくかということで、地域の農民の方、保護活動をしている方が非常に熱心な取り組みをしてきたという背景がございまして、現在のこうした野生復帰に向けた動きに対しましても、佐渡市は非常に熱心な取り組みをしているということでございます。佐渡市の中にも担当のセクションがございまして、野生復帰、飼育繁殖、いろんな会議に必ず出て状況はしっかり掴んでいただいているということでございます。また、生息環境整備に当たっても、佐渡市は非常に大きな役割を果たしておりまして、関係省庁の関連事業を市が実施する場合もございますし、県と協力してやっているケースもあり、市長または市役所自身がこの問題に非常に積極的にかかわっているという、そういう認識を我々はしております。
 次に、参加型はもとより、地域の方々を取り込んでということでございますけれども、まさに野生復帰の検討をしていく中で、試験的な放鳥をした後、どうモニタリングをしていくかということ、野生復帰専門家会合でご議論いただいているところでございますけれども、コウノトリの例でいきますと、地域の人たちがまさにモニタリングに積極的に関わっているということもございまして、専門家会合のメンバーにコウノトリに関わっている池田先生にも入っていただいており、佐渡の住民の方々をどう巻き込むかということも視野に入れて、モニタリング体制の検討をしているということでございます。
 あと、高橋先生から担い手のお話がございました。協議会で担い手をどう取り込んでいくかということを含めたグランドデザインをということでございますが、確かにそのとおりだと思っております。今、地域の人たちにトキと共生する地域づくりということでいろいろな取り組みが地域でなされておりまして、環境省でも関わってやったという部分がございます。その中で地域の集落ごとに、要するにトキを野生復帰させることが目的ではなく、その地域を自ら住みやすい地域にする、自分の子どもや孫がその地域で誇りを持って住んでいけるような、そういう地域づくりということを中心に置いて集落ごとの話をこれまで行ってきております。そういう観点でトキの住める環境づくりもやっていただいているわけでございまして、そんなところから担い手を今後どうしていくかという議論も含めて、地域の方々と共に取り組んでいきたいというふうに思っております。
 また、里山や野生動植物を守る教訓を示すということでございますけれども、そういった点も十分踏まえて、我々佐渡でこれからいろいろなことが起こると思いますので、その辺の情報発信には努めていきたいと思っております。
 公聴会における漁業関係者との関係でございますけれども、これは後ほど担当からご説明させていただきます。
 それから、野生復帰を考える上で、現在の法制度上にうまく乗ってこない。現行の法制度をどんな形で使ったらいいのか、また新規の法制度の検討も必要ではないかということで磯崎先生、三浦先生からございました。これにつきましては、確かに今、非常に広範に様々なことを同時並行でやっていかなくてはいけない取組だと思っています。ただ、そういう取組が法的な仕組みがあるからできるのかというと、ちょっとその辺は十分な検討が必要かなと思っております。まずは、野生復帰させるためにいろいろな人たちの動きをどう連絡調整を図りながら、コーディネートして同じ方向に向かわせるのかが大事だと思っておりますので、そういう観点でもちろん新潟県、それから佐渡市も大きな役割を果たしてきていただいておりますけれども、4月から環境省の職員も佐渡に駐在させましたので、環境省も一緒になって中心的な役割をこれから図っていきたいと思っております。
 あと、中国での取り組みということでございますけれども、中国のトキの数は飼育下のもの、それから野生のものもあわせておよそ1,000個体ぐらいに増えていると聞いております。中国では野生復帰の取り組みが既に進められております。専門家の方に中国に行っていただいて、そういった状況の詳細を見ていただくということや、さらには、中国でそういった取り組みをしている人を日本に呼んで、技術的な面での情報交換を今後進めていきたいと思っております。
 それから、市田委員からは環境省全体で本腰を入れてというご意見がありました。4月から現地に職員を駐在させておりますけれども、もちろん、我々これは国家プロジェクトという認識をしておりまして、引き続き私ども野生生物課、それから関東地方環境事務所もかなり大きな役割を果たしていかなくてはいけないと思っております。今後ともこういった積極的な取り組みを本省としてもやっていきたいと思っております。
 岩熊先生からの特別天然記念物に係るご意見でございますけれども、これは文化庁の所管の件でございますから、私から地域指定云々ということはちょっとお答えできないということでご理解をいただきたいと思います。
 それから、齋藤先生からは地域の住民の方へ、今行われていることをわかりやすく説明すべきだというご指摘をいただきました。我々もそういう取り組みは非常に重要だと思っておりますので、全国レベルでシンポジウムを開いたりすることも考えたいと思っています。それ以外にも地域で様々な取り組みがございますので、環境省の職員も特別にトキに関わっていない佐渡の人たちに、いかに取り組みをご理解いただくかということについて努力をしていきたいと思っております。
 矢原先生からは、トキの現状認識の関係で、どういう仮説でどういう取り組みをすればどうなるのかということについて、専門家の間でしっかりと現状認識を伝えていくことが重要だというご指摘をいただきました。野生復帰に関しましては、専門家会合を設けてさまざまな検討をしていただいておりますので、その専門家会合の中でも今ご指摘いただいた点、ご報告をして、検討していきたいというふうに思っております。
 以上でございます。それでは漁業関係の説明をいたします。

【事務局(山崎)】 公聴会におきます漁業者の関係で今お話があったかと思いますが、鳥獣保護区を指定する場合、公聴会を行うことにしておりまして、その公聴会の公述人につきまして、まずは国の関係行政機関、地元の市町村の方、それから狩猟ができなくなるために猟友会の方、地元の野鳥の会など自然保護関係のNGOの方をまず入れるというふうにしております。あと関係のある方、例えば湖などを水鳥の保護区としている場合には、漁業の方も利害関係が大きいものですから漁業者の方を公述人に入れたり、逆に里山の場合でしたら農協の方、土地改良区の方、それから森林組合の方、山でしたら森林組合の方というようなことで公述人の方を選んでいるという状況でございます。
 今、お話がありました加茂湖の方につきまして、加茂湖は接してはいるのですが、エリアには入っておりません。実は加茂湖の方はもう既に新潟県の指定のカモなど水鳥の集団渡来地として鳥獣保護区になっておりまして、これは確認しているわけではございませんが、県の方が指定する際に漁業関係者の方を公聴会に呼んで話をしているというふうに考えております。
 今回の鳥獣保護区の公聴会におきまして、基本的に棚田とか山地が対象ですので、森林組合の方、それから農協、土地改良区の方、それから観光方面におきまして観光協会の方も含めてかなり大人数でやっております。組織としては漁業関係者の方は特に入れてはいないのですが、土地所有者の方々、その地域の方々を対象に環境省の新潟事務所の方が中心にかなりの数の地区に入って説明しておりますので、そういう中で何か問題があるようであれば対応できることはありますが、今回の場合は特に漁業面の問題は聞いてはいないということでございます。

【山岸部会長】 ありがとうございました。一つ石坂委員の中国情報について、私の方からつけ加えさせていただきます。実は、中国語で書かれたトキの研究という本があります。私は、中国はもう全く後進国だと思っていて、何かと指導することの方が多いんだと思っていたのです。今、市田さんのところで訳し終わったと思うんですが、7月には訳本になって出ますのでお手元に届くと思いますが、中国では実に研究が進んでおります。我々が物すごく役に立つことがこの中にたくさん入っていますので、今のご意見などにきっと役立てることができることがあると思います。
 まだまだあると思うのですが、時間も来てしまって、私はトキの問題というのは齋藤さんが言われた、知る人は知っているが知らない人は知らないというのが、これが一番の問題だと思います。できれば、少なくとも野生部会を佐渡で開いて、一度ぐらいはトキを見ていただいて、知る人は知るじゃなくて少なくとも部会の審議会の人は知っているというぐらいのものにしていただくと、きっと誤解がなくなるんじゃないかと思うんです。貴重なご意見をたくさんいただいたので、事務局でよく検討していただきたいと思います。
 どうしてもという意見がございますか。ございませんようでしたら、今後に生かしていただくということで。その他、何か事務局からございますか。

【事務局】 1点。事務局としましては、次回の野生生物部会の開催を夏ごろと考えております。今別途つけさせていただきましたが、8月の最終週、27から31日までの間で調整がつきましたら、開催させていただきたいと思います。よろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。

【星野野生生物課長】 次回の内容は、ワシントン条約の締約国会議が6月にございます。ここで附属書、規制対象種の変更が出てくると思われますので、それに応じた省令の変更をする必要がございまして、審議会の答申をいただきたいと思っております。その内容についてのご説明をさせていただく予定です。

【山岸部会長】 それでは、以上をもちまして、本日の野生生物部会は閉会といたします。
 どうもご協力ありがとうございました。