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■議事録一覧■

中央環境審議会野生生物部会議事要旨


1.日時

平成18年10月16日(月)14:00~15:30

2.場所

三番町共用会議所第3,4会議室

3.出席者

(野生生物部会長) 岩槻 邦男
(委員) 石井 信夫 石井 実 石原 收 磯崎 博司 市田 則孝
大塚 直 加藤 順子 齋藤 勝 桜井 泰憲
佐々木 洋平 土屋 誠 速水 亨 増井 光子
三浦 愼悟 山岸 哲 鷲谷 いずみ 和里田 義雄

4.議事概要

○諮問事項:
事務局より国指定鳥獣保護区特別保護地区の指定(仙台海浜鳥獣保護区蒲生特別保護地区及び井土浦特別保護地区、屋我地鳥獣保護区屋我地特別保護地区)について説明。主な意見・質疑は次のとおり。
  • 仙台海浜鳥獣保護区の蒲生、井土浦特別保護地区の間にある海岸線周辺が特別保護地区に指定されていない理由は。

    →海岸線の中で干潟、潟湖等があるのが蒲生及び井土浦特別保護地区であり、シギ・チドリ類等が集中的に渡来する地域となっていることから、特別保護地区に指定している。両特別保護地区の間の区域には仙台市の下水処理施設等があるなど、特別保護地区に比べると鳥類の生息状況は低いため。

  • 屋我地と仙台海浜で指定期間年数が異なるのはなぜか。

    →鳥獣保護区の指定期間は最高20年であり、仙台海浜については最長期間の設定を行った。屋我地については現行の指定期間は10年であり、今回は20年にできないかと申し入れたものの、地元の名護市より、国道整備計画などがあるため10年にして欲しいとの要望を受けたもの。

  • 道路の計画があるからと簡単に引き下がって良いものか。公共事業に合わせて指定するのではなく、指定をベースにして公共事業を行うべきだと考える。

    →指定には地元公共団体の賛成が必要である。今後、道路整備について相談がある可能性もあるとのことで、10年間の指定とした。

    →10年間としたといっても将来の開発が決まった訳ではなく、開発計画があれば、今後調整をしていく。また、地元の方には、鳥獣保護区の重要性について理解頂けるよう努力をしていく。

  • 仙台海浜鳥獣保護区の特別保護地区を縮小する理由は、地権者の意思のみか。縮小に至るまでのプロセスを示して欲しい。今後、地権者の同意が無くて指定できないままでよいのか。特別保護地区の中でも本当に譲れない場所については地元と調整をして指定すべき場所として位置づけるなど、考えても良いのでは。

    →地権者に対しては、東北地方環境事務所の担当が何度も自宅を訪れるなどして理解を願ったが、同意を得られなかったもの。
    制度的には特別保護地区は木竹の伐採や建築物の新増築等を規制するものなので、地権者の同意を得られない以上、やむを得ず特別保護地区からは外した。

  • 当該地の地権者には開発計画があるのか。

    →現実化はしていないが、将来的にはあり得ると聞いている。

  • 仙台海浜鳥獣保護区について、指定以降の資料を用いて、人の活動による鳥類への影響について解析は行っているのか。

    →人の活動による影響については、サーフィンをする人々による干潟への入り込み等が問題となっているため、環境省として普及啓発に努めており、地元サーフィン団体の取組も始まるなど一定の進捗が見られている。

  • 南の阿武隈川の河口にも同じような干潟があり、それらとの関係性を考慮に入れると、より広い視野での保護が出来ないのではないか。

    →今後そのような視野も含めて検討していきたい。

○報告事項:
事務局より野生生物保護行政に係る最近の動きについて説明。主な意見・質疑は次のとおり。
  • ツシマヤマネコの分散飼育に関連し、野生生物の保護という観点から飼育する際の工夫はどういった点でなされているものか。特に野生生物らしい生活環境の整備という面において。

    →動物園等施設内での飼育であるため、スペースについて上限があるものの、繁殖の制限とならない施設の規模等を日頃の飼育の中で検討しながら実施していると聞いている。

  • アホウドリ保護増殖事業について、本年度は近縁種のヒナで飼育試験を行うとのことだが、その意味は何か。

    →アホウドリの繁殖地を小笠原群島内に形成する計画の中で、ヒナの移動や給餌等への配慮について検討するため、近縁種のクロアシアホウドリで飼育実験を行う予定としている。アホウドリは関係者の尽力により数が増えてきてはいるものの、国際保護鳥でもあるなど、取扱いには依然として慎重を期す必要があるため、近縁種でシミュレーションを行う。

  • レッドリストの改訂作業について、どういった手順で誰が進めているのか。検討会の専門家の恣意が働く可能性はないか。

    →レッドリストについては、分類群ごとに専門家の検討会を設けて改訂作業を行っている。選定基準についてもその検討会の始めに議論いただいている。選定にあたっては、専門家だけではなく、それぞれの種のデータをお持ちの方々にもご協力をいただき、種ごとにチェックシートを作成し、それを判定基準に照らしながら、どのランクに分類されるかというレビューを繰り返し、最終的にグループごとの会合で合意されたリストを環境省として公表している。審議会に諮問して答申を得るという手続きはとっていないが、判定はIUCNの定めた客観的な基準に基づき慎重を期して作成しているところである。

  • 生息域外で保全されている種の再導入については生物多様性条約の中でもre-introductionとして位置づけられており、国際的なガイドラインでも、非常に長期的に、安定したお金で行う必要がある旨記載されている。この再導入について、国内法を整理することが予算の獲得や制度の維持などに効果をもたらすのではないかと思うがどうか。

    →野生復帰の取組みが時間、資金ともに多くを要するという点は同様の認識であり、今後、予算の獲得に向けて取り組んで参りたい。法律については、既存の種の保存法の中で、保護増殖事業という枠組みを最大限活用して参りたい。

  • レッドリストなども海岸生物の部分が弱いのはないかとの印象があるが、どの様に考えるか。

    →色々と難しい面があるが、海の生物については例えば貝類等でも評価の対象範囲を拡げてきている。世界の潮流として海については注目が集まっていると認識しており、データの蓄積を図るなど努力を続けて行きたい。