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中央環境審議会野生生物部会議事要旨


1.日時

平成18年5月31日(水)10:00~12:00

2.場所

中央合同庁舎第5号館 共用第7会議室

3.出席者

(野生生物部会長) 岩槻 邦男
(委員) 大塚 直 石井 信夫 石井 実 石原 收 磯崎 博司
磯部 力 市田 則孝 岩熊 敏夫 齋藤 勝 桜井 泰憲
佐々木洋平 速水 亨 増井 光子 山岸 哲 和里田義雄
鷲谷いづみ

(50音順)

(環境省) 南川 自然環境局長
黒田 大臣官房審議官
泉  自然環境局総務課長
名執 自然環境局野生生物課長
瀬戸 自然環境局鳥獣保護業務室長
三村 自然環境局外来生物対策室長

4.議事概要

○諮問事項1:

事務局より善王寺長岡アベサンショウウオ生息地保護区等の指定について説明。生息条件の保持のための環境管理の指針について若干の表現修正を行う必要があるものの、ほぼ事務局案のとおりとして差し支えない旨了承された。主な意見・質疑は次のとおり。

  • 竹が過密になると乾燥化が起こると言われているが、どのように竹林を管理していくのか。

    →サンショウウオは湿潤なところを好むので、その状況の維持が重要と考えている。竹林の具体的な管理方法については、現地で検討会を作り検討していきたい。

  • テング巣病などの竹の枯死についても注意して欲しい。

    →その点も踏まえ、適切な管理を進めていきたい。

  • 資料に生息を脅かしている要因の一つとして道路建設が挙げられているが、今回の対象地では何か対策がとられているのか。

    →今回の指定区域やその周辺で具体的な道路建設計画があるわけではない。また、現場の状況から、今後周辺に道路建設が予定されることも考えにくい。

  • この地域のアベサンショウウオの生息数はどのくらいか。また、天敵はいるのか。

    →アベサンショウウオの成体は非常に確認しにくいため、現時点で生息数はわかっていない。今後生息数の調査を行っていきたい。天敵としてはサギなどの鳥類が考えられる。

  • アベサンショウウオの生息地保護区は2箇所目であるが、1箇所目の大岡の生息地保護区指定時に今回の地域を指定しなかった理由は何か。

    →平成7年の国内希少野生動植物種指定時に大岡と善王寺長岡の2箇所を重要地域として認識していたが、善王寺長岡は私有地が多く関係者との調整に時間がかかったもの。

  • 管理地区の指定の考え方と、指定の際に苦労したことについて教えて欲しい。

    →当該管理地区は、生息地保護区のうち、特に重要な産卵場所である池や水路を含め、また生息が多く確認されている箇所を中心に指定した。管理地区の指定は土地所有者の了解を取ることが鍵となるが、地元でアベサンショウウオの保護活動を行っている方が本地区内に土地をもっていたこと、またその方が他の土地所有者の方に働きかけしてくれたことが大きな力となった。

  • 両生類の保護対策として、アベサンショウウオについてのみ生息地保護区を指定しているが、優先順位や全体戦略について教えて欲しい。

    →両生類も含め希少野生生物対策については、絶滅危惧の度合いによって優先度を決めている。両生類の中で、絶滅危惧IA類なのは現時点で当該種のみであり、優先度は高い。なお、国内希少動植物種に指定されているのも当該種のみである。

  • 田んぼの脇に幼生の生息地である水路があるが、除草剤などが水路に入り込み生息に影響を与えることはないのか。

    →除草剤の影響については手元にデータがないが、今後、周辺農家の除草剤使 用状況などについても留意していきたい。

○諮問事項2:

事務局よりアカガシラカラスバト保護増殖事業計画の策定について説明。
事務局案のとおりとすることが適当とされた。主な意見・質疑は以下のとおり。

  • 本亜種はもともと数の少ない種であると思うが、なぜ今になって計画を策定するのか。また、ノネコが問題というが、フェンスを作ることを検討しているのか。フェンスを作る場合はその他の動物の移動の妨げになることが懸念される。

    →平成5年より林野庁が、平成12年より東京都が本亜種の保護・調査を進めてきたが、その中で島しょ間で移動していることが明らかになり、一部で個体数のダブルカウントが明らかとなった。その結果、推定個体数が従来より少ないものと判断された。また、各主体がそれぞれ保護や調査を進めてきたが、共同で保護増殖事業計画を策定し、より一層の連携を図ることなどにより、事業効果の高まりが期待される。ノネコについては、地域住民に対して適正な飼育を呼び掛けていくことで、生息地への侵入を防ぎたいと考えている。

  • 上野動物園で飼育下繁殖の成果を挙げているようだが、個体数が増えるにつれて収容場所の確保が困難になる。放鳥の計画等についてはどのような進捗にあるのか。また、分散飼育についてはどのように考えているのか。

    →今後本亜種の専門家等による分科会により詳細を検討していきたいと考えている。

  • 外来樹木としてガジュマルとアカギが小笠原に入っているが、それらの対策をどのように進めるのか。

    →ガジュマルについてはできるだけこれ以上広がらないように、アカギについては駆除を進めていきたいと考えている。

  • 野生下で40羽程度の生息というが、火山列島を含むのか。また、火山列島の調査の予定などについて聞きたい。

    →40羽という推定個体数は、火山列島を含む。また、火山列島の調査については、アクセス面など難しいことも多いが、今後検討していきたい。

  • 目標としては、どの程度の個体数まで回復することを目指すのか。

    →具体的には今後分科会を通じて検討していきたいが、少なくとも今の個体数は非常に少なく、状況の維持改善が必要と考えている。

  • 父島で捕獲した3羽のうち、1羽がこの前死んでしまった。できるだけ早く飼育下繁殖や再導入のために必要な検討を進めていただきたい。

  • 個体数のダブルカウントがあったとのことだが、他の様々な種についてもしっかりと個体数の推定などを行ってほしい。

    →保護増殖事業計画が策定されている種については専門家等による分科会が設置されており、その中でしっかりと検討していきたい。また、レッドリストについては5年おきに見直しを行っており、個体数の推定も含め、絶滅のおそれを的確に評価していきたい。

  • 種ごとの分科会のメンバーや検討内容の公表状況はどのようになっているのか。

    →生息地情報などが含まれるため、基本的に検討内容は公表していない。また委員の名前についても、積極的には公表していない。

  • 検討委員の名前まで非公表とする必要はないのではないか。

    →ご指摘のとおり

  • 林野庁によるサンクチュアリーの設定と資料にあるが、その広さは適切なのか。また、成果は上がっているのか。また、森林施業などで伐採されてしまう可能性はないのか。

    →十分に広いとは必ずしも言えないが、サンクチュアリー内またはその付近で繁殖していることが確認されており、成果は上がっていると考えている。 サンクチュアリーは林野庁により森林生態系保護地域に指定されており、森林資源として伐採される可能性はないと考えている。

  • 本計画を踏まえた具体的なアクションプランはどこで決まるのか。

    →本種の分科会の中で具体的な事業内容について検討していくことになる。

  • 他の種も含めて、科学的知見が少ないものが多い。科学的な調査をモニタリングにより順応的に対応するよう、様々な主体と連携してほしい。
○諮問事項3:

事務局よりアホウドリ保護増殖事業計画の策定について説明。
事務局案のとおりとすることが適当とされた。主な意見・質疑は以下のとおり。

  • 新たな繁殖地の形成により、物質循環の観点から見ると海鳥が増加するとリンが増加し、植物などに影響を与えることが予想される。

    →新たな繁殖地の候補地については、今後現地調査を行い、ご指摘の点も含め慎重に検討を進めていきたい。

  • 繁殖期の採餌海域については知見はあるのか。

    →繁殖期の採餌海域については昨年度から調査をしており、鳥島の個体は銚子沖などで採餌していることが確認されている。

  • 小笠原群島に新たな繁殖地を形成した場合、餌場がより遠くなることが懸念されるので注意して進めてほしい。

  • 農林水産省と文化庁の役割は。

    →文化庁は普及啓発を、林野庁は新たな繁殖地(聟島列島を想定)における巡視や生息状況の確認等の調査をそれぞれ担うものと考えている。

  • 安易に普及啓発を進めると、かえって生息を圧迫するような行動をとる者がでてくる。普及啓発の進め方はどのようにするつもりか。また、文化庁のみに任せて良いいのか。

    →普及啓発について、文化庁のみが行うというわけではなく、環境省も当然行う。分科会等の場を通じてよく検討して慎重に進めていきたい。

  • 文化庁は教育と天然記念物のどちらの観点から普及啓発を行うのか。

    →天然記念物の観点だと聞いている。

  • 本種が増加しているのなら、鳥島以外の島でも生息環境が良好であれば、自然と分散し、繁殖を始めると思うが、なぜ聟島にはやってこないのか考える必要はないか。また、分散先の候補としてなぜ南大東島ではなく、聟島なのか。

    →本種は育った場所に戻ってくる性質が強く、鳥島で育ったものは鳥島で繁殖し、他の島に自ら分散することが期待できない。分散先の選定は、過去にアホウドリが繁殖していた地域であること、ヒナを移動するためには鳥島から比較的近い地域である必要があることから、小笠原諸島聟島列島を候補として考えている。

○諮問事項4:

事務局より、鳥獣の保護を図るための事業を実施するための基本的な指針について、諮問の背景等について説明。

  • 12月上旬に基本指針が取りまとめられるよう、鳥獣保護管理小委員会において、検討を進めることが了承された。

○小委員会での議論に係る留意点について、主な意見・質疑は次のとおり。

  • 基本指針に係る検討課題の中に島嶼部などの著しく生態系・生息環境が異なる地域への言及があった。外来生物法では国内移動に関しての規制が入っていないが、それを補強するというような観点での検討まで含まれるという解釈でよいか。

    →この趣旨は、例えば東京都でいうと区部と多摩、さらに小笠原など、1つの都道府県でも鳥獣の生息環境が大きく異なる場所があるため、1つの鳥獣保護事業計画の中においても、異なる状況の生息環境等については、そこに応じた方向性というのが必要ではないかということ。

  • 「鳥獣被害を受けにくい地域づくりへの取組」の中の「耕作放棄地の適切な管理」とはどういうイメージか。

    →中山間地域では、人口減少などにより、耕作放棄地が増えており、そういった場所では下草やかん木などが茂り、例えばイノシシなど、鳥獣の生息環境として非常に好適なものとなる。それが鳥獣の分布を広げ、農作物被害を招くとも考えられるため、鳥獣の生息場所にならないように耕作放棄地であってもしっかり管理して鳥獣被害を防止しようとするもの。

○報告事項:

事務局より外来生物法の施行状況について説明。主な意見・質疑は次のとおり。

  • 一次指定された37種類の特定外来生物の飼養等許可申請の数が約1600件とのことだが、これは実態を反映しているものと考えているのか。

    →オオクチバス等指定の際に注目されたものについてはほぼ網羅できていると思われる。二次指定対象種の申請に係る申請期限を8月に控え、必要な申請がより積極的に行われるよう周知に努めていきたい。