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中央環境審議会 瀬戸内海部会 企画専門委員会(第1回)議事録


平成23年10月13日(木)

開会
議題
  • (1)企画専門委員会の設置について
  • (2)今後の目指すべき将来像と環境保全・再生の在り方に係る論点について
  • (3)今後の進め方について
閉会

午前10時00分 開会

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐 皆様、おはようございます。本日は、お忙しい中、また、朝早くからご出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 定刻となりました。白山委員につきましては、ちょっと遅れて参られるという連絡を受けております。そのほかの委員の皆様方、皆さんおそろいでございますので、ただいまから中央環境審議会瀬戸内海部会の第1回企画専門委員会を始めさせていただきます。
 本日の出席状況でございますが、委員12名中、現在8名のご出席をいただいておるところでございます。
 それでは、まず最初に、議事に先立ちまして、鷺坂水・大気環境局長よりごあいさつを申し上げます。

○鷺坂水・大気環境局長 おはようございます。環境省の水・大気環境局長の鷺坂でございます。本日は、委員の皆様方、いろいろお忙しい中、この第1回瀬戸内海部会企画専門委員会にご参集いただきまして、ありがとうございます。また、平素より委員の皆様方には、本当に、環境省の水環境行政にさまざまご協力、あるいはご指導を賜っておりますことを、この場をかりてお礼を申し上げたいと思います。
 瀬戸内海の環境ということでございますけれども、瀬戸内海環境保全特別措置法に基づきまして、特定施設の規制とか、埋め立ての抑制等、各種施策を行ってきているところでございますし、また、先日、第7次の総量削減基本方針を策定しておりまして、この中で、水質総量削減の継続的な取組をはじめ、いろいろな皆様のご努力によりまして、水質というのは大変改善されてきていると認識をしているところでございます。
 しかしながら、一方で、栄養塩の適正管理の問題、あるいは人々の海への関心の低下、あるいは生物多様性の問題など、新たな課題、あるいは新たな社会的なニーズ、こういったものの対応も求められているところでございまして、瀬戸内海の保全・再生という観点に立ちますと、より広い視点に立った取組、また、こういった取組を着実に推進させることが必要ではないかと、このように考えているところでございます。
 昨年度、今後の瀬戸内海の水環境の在り方懇談会ということで、今日、資料にも提出させていただいておりますけれども、瀬戸内海についての現状等を踏まえて、さまざまなご意見をちょうだいしているところでございますが、こういった懇談会でのご議論も踏まえまして、今回、環境大臣から中央環境審議会の会長に対しまして、瀬戸内海における今後の目指すべき将来像と環境保全・再生の在り方ということで、諮問をさせていただいたところでございます。
 瀬戸内海部会のもとに、この企画専門委員会が設置されたということでございまして、そういった観点から、さまざまな論点、あるいは今後の進め方等についてご審議をいただき、そして、よりよい瀬戸内海の保全・再生に資するようご審議を願えればと、このように考えているところでございますので、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 以上、簡単ではございますが、私からの冒頭のごあいさつとさせていただきます。本日はどうかよろしくお願いします。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐 どうもありがとうございます。本日は、第1回の委員会となりますので、まず最初に、委員のご紹介をさせていただきたいと考えます。
 お手元にお配りしております資料の議事次第の次に、委員名簿がございます。また、お手元には、本日の配席図をご用意しておるところでございます。座席順にお名前のみご紹介をさせていただきたいと存じます。
 まず最初に、足利由紀子委員でございます。
 大塚直委員でございます。
 白幡洋三郎委員でございます。
 中瀬勲委員でございます。
 松田治委員でございます。
 浜野龍夫委員でございます。
 柳哲雄委員でございます。
 鷲尾圭司委員でございます。
 なお、本日、木幡邦男委員、西田修三委員、森川格委員については、欠席とのご連絡をいただいております。また、最初に申し上げましたが、白山義久委員におきましては、遅れて来られるとのご連絡をいただいておるところでございます。
 続きまして、環境省側のご紹介をさせていただきます。
 鷺坂水・大気環境局長につきましては、先ほど紹介をさせていただきました。
 その右に参りまして、関水環境担当審議官でございます。
 吉田水環境課長でございます。
 私の右に参りまして、富坂閉鎖性海域対策室長でございます。
 私は、閉鎖性海域対策室室長補佐の橋本でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、閉鎖性海域対策室主査の千野でございます。
 続きまして、お手元の資料の確認をさせていただきたいと存じます。
 議事次第。それから委員名簿の次でございますが、資料1-1が今回の瀬戸内海における今後の目指すべき将来像と環境保全・再生の在り方についての諮問と付議の写しとなってございます。
 それから、資料1-2が、諮問の背景、審議事項の概要というものでございます。
 それから、資料2が、瀬戸内海における今後の目指すべき将来像と環境保全・再生の在り方についての論点(案)というものでございます。
 それから、資料3が、瀬戸内海部会企画専門委員会の審議の進め方についてというものでございます。
 それから、参考資料1といたしまして、中央環境審議会瀬戸内海部会の専門委員会の設置について。参考資料2といたしまして、諮問関係資料集というのを用意しております。この参考資料2の後に、今後の瀬戸内海の水環境の在り方の論点整理というものと、冊子でございますが、今後の水環境保全の在り方について(取りまとめ)というものがございますけれども、そこまでを含めて参考資料2となってございます。
 また、各委員のお手元には、瀬戸内海の環境保全資料集という冊子と、瀬戸内海環境保全基本計画フォローアップの第8回瀬戸内海部会版というものをご用意させていただいております。この二つにつきましては、今後毎回使わせていただきたいと思っておりますので、委員会終了後、席に置いておいていただければと存じます。
 資料は以上でございます。
 なお、傍聴者資料につきましては、参考資料2につきまして、資料の量が非常に膨大になることから、添付をいたしておりません。後日、環境省のホームページからダウンロードして入手をいただきますようお願いをいたします。
 資料のほう、不足等がございましたら事務局にお申し付けいただければと存じますが、よろしいでしょうか。
 本日の会議でございますけれども、中央環境審議会の運営方針に基づきまして、公開とさせていただいておりますことを申し上げます。
 それでは、本専門委員会委員長のご紹介をさせていただきます。専門委員会の委員長に関しましては、中央環境審議会の運営規則に基づきまして、部会長が指名をすることとなっております。瀬戸内海部会の岡田部会長から、松田治委員を、本専門委員会の委員長にご指名をいただいておるところでございます。松田委員におかれましては、どうぞよろしくお願いいたします。
 プレスの方は、これ以降の写真撮影等はお控えをいただきますようお願いいたします。
 それでは、この後の議事進行につきまして、松田委員長、よろしくお願いいたします。

○松田委員長 皆様、おはようございます。企画専門委員会の委員長を仰せつかりました松田と申します。私自身、いささか微力ですけれども、よろしくお願いしたいと思います。
 初めに、ちょっと個人的なことになって恐縮ですが、私、広島大学に赴任したのが1971年でして、当時かなり公害問題が盛んで、研究室には赤潮海水を一升びんに詰めた漁師さんが詰めかけたり、テレビや新聞のメディアの人が大勢来たり、緊迫した感じでした。その年に、環境省の前身の環境庁ができまして、かなり正義の味方のような感じで、社会的にすごく歓迎されたのを覚えています。
 その後、1973年に、いわゆる瀬戸内法(瀬戸内海環境保全臨時措置法)ができました。ということで、私、大体この40年間ぐらいの瀬戸内海で起きたことを一応現場で実感しているつもりなんですが、今回、この委員会に付託された内容というのが、相当新しいテーマといいますか、かなりこれまでにないことを少し方向づけしなければいけない。恐らく、多分ここで審議されたり出てきたアイデアというのは、今後の日本の他の閉鎖性海域にもさまざまな影響を及ぼすことにならざるを得ないと思います。あと、国際的に見ても、まだ負荷をどんどん削減しなきゃいけない、あるいは総量削減の制度を導入しなきゃいけないという国が多い中で、今この瀬戸内海で新たに直面している問題というのは、相当新しい課題といいますか、ある意味でトップランナー的な役割を果たさざるを得ないところがあると思います。私自身、ちょっと荷も重いんですけれども、幸い、ここ数年間、かなり総論的な議論が進められてきておりますし、それから、大変すぐれた委員の先生方がおそろいですので、ぜひ、時間とか、現実的に限られた制約はありますけれども、なるべく内容のある議論をしていただいて、それから、できれば長期的視野とか、このごろはやらない言葉ですけど、少し志を高く持った議論もしていただいた上で、具体的な方向性を定めていただけると、非常にありがたいかなというふうに思います。
 議論の進め方について、いろいろ至らない点が出てくるかと思いますけれども、どうかよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、早速でございますけれども、この議事を始めさせていただきます。
 本日は、その次第にございますように、全体としては12時までということで、議題が三つございますけれども、初めは、この諮問の内容とその背景といった、事務局からの主に説明になると思いますので、理解を深めていただきたいと思います。
 それから、2番目の議題が、本日の主な議論の、そのメインのところでございまして、事務局から案のご説明がありますけれども、本日は第1回でもあり、委員の皆さん全員にご発言をいただきたいと思いますので、後で詳しくご説明しますが、そのことを心得ていただきたいというふうに思います。
 それから、3番目は、今後の進め方ということで、案の了承、あるいは問題があれば審議すると、そういうような形で進めさせていただきたいと思います。
 それでは、早速でございますけれども、(1)企画専門委員会の設置について、こういうタイトルでございますけれども、7月20日付で環境大臣から中央環境審議会長に対して、瀬戸内海における今後の目指すべき将来像と環境保全・再生の在り方について、諮問がなされております。この専門委員会は、この諮問を受けた調査を行うため、瀬戸内海部会に設置されたものであります。
 そこで、最初に、この諮問の内容とその背景につきまして、事務局よりご説明をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐 委員長、白山委員が見えられましたので、ご紹介をさせていただいた後で、資料のご説明をさせていただきたいと存じます。
 それでは、白山義久委員でございます。
 どうもありがとうございます。それでは、資料の説明をさせていただきます。

○千野閉鎖性海域対策室主査 それでは、企画専門委員会の設置についてということで、ご説明申し上げます。資料1-1をご覧いただけますでしょうか。
 これは、「瀬戸内海における今後の目指すべき将来像と環境保全・再生の在り方について」ということでございまして、環境大臣から中央環境審議会会長への諮問書になっております。
 7月20日に諮問をさせていただきまして、中央環境審議会から瀬戸内海部会へ付議されたものでございます。
 1枚めくっていただきまして、諮問理由でございます。
 瀬戸内海においては、環境保全を推進するため、瀬戸内海環境保全特別措置法や同法に基づく基本計画等に沿って、各種施策を実施しているところである。その結果、近年、水質については一定の改善が見られ、大規模な埋め立て等は減少傾向にある。しかしながら、古来より多島美や白砂青松と呼ばれている世界に誇るべき景観や、生物の生息・水質浄化・親水などの多様な機能を有する藻場・干潟等が、過疎化・高齢化といった社会構造の変化や、人と海との関係性の希薄化等の要因もあって、改善がはかばかしくないことに加え、生物多様性の低下、漁獲量の低下の観点から水質改善中心の環境保全の在り方が問われている。
 また、瀬戸内海環境保全特別措置法に基づく瀬戸内海環境保全基本計画の前回改定から10年以上が過ぎ、この間に、海洋基本法において海洋の開発及び利用と海洋環境の保全との調和、海洋の総合的管理などの基本的理念が、生物多様性基本法において生物の多様性の保全及び持続可能な利用に関する基本原則等が、それぞれ示された。瀬戸内海においても、海洋環境の保全に関する新たな理念や体制の整備に加え、生物多様性と生物生産性の向上等の新たな課題への対応も必要となってきている。
 今回の諮問は、このような背景、課題を踏まえ、瀬戸内海における今後の目指すべき将来像と環境保全・再生の在り方について、貴審議会の意見を求めるものである、ということでございます。
 続きまして、資料1-2をご覧いただけますでしょうか。
 諮問の背景といたしまして、まず1点目としまして、瀬戸内海環境保全基本計画推進の中での課題の指摘というものがございます。
 瀬戸内海の環境保全の取組は、「瀬戸内海環境保全基本計画」に基づき推進してきておりまして、平成12年に改定をしております。瀬戸内海部会におきましては、この基本計画のフォローアップといたしまして、その進捗状況を確認し、今後重点的に取り組むべき課題の整理を行ってきております。
 また、昨年度には、「今後の瀬戸内海の水環境の在り方懇談会」というものを開催いたしまして、さまざまな意見をいただきながら、論点整理として取りまとめたところでございます。
 これらにおける指摘を踏まえた環境保全・再生のための適切な方向性の提示というものが必要となってきているということでございます。
 1点目でございます。瀬戸内海環境保全基本計画フォローアップにおける指摘でございます。
 瀬戸内海環境保全基本計画における目標は、大きく二つございまして、水質保全等に関する目標と自然景観の保全に関する目標とがございます。
 例えば国と地方とが適切に役割分担をしつつ、各海域において中長期的に目指すべき将来像を明らかにした上で、その実現に向けた具体的なロードマップを提示する必要があるといった指摘や、大阪湾以外の瀬戸内海において、栄養塩類の不足によるノリの色落ちというものが発生しているといった指摘、また、その解明に向けた総合的な調査研究を進めていくといった指摘がございます。
 また、埋め立てについても、より厳しい規制が必要といった指摘もございまして、失われた藻場・干潟等の再生につきましても、いまだ十分な再生がなされているとは言えず、海砂利採取跡地についても、さらなる取組を講じていく必要があるといった指摘がございます。
 さらに、各々の地域の特性に応じた多様な魚介類等が生息し、人々がその恵沢を将来にわたり享受できる「里海」の創生を図っていく必要があるといった指摘。また、より多くの自然と触れ合う機会を提供できるような場の整備を積極的に行っていくべきだといった指摘がございます。
 次に、自然環境の保全に関する目標に対する評価でございます。
 人口減少に起因する島の荒廃が、瀬戸内海の全体の景観を含めた悪化につながっているといった指摘がございまして、「里海」の創生に向けた取組を活用しつつ、島嶼部の景観の保全といったものを図っていく必要があるといった指摘。また、瀬戸内海には多くの貴重な自然海岸が残されておりまして、これを積極的に保存していくことが重要であるといった指摘。また、未利用の埋立地につきまして、これらの自然の再生を検討するといった指摘がございます。
 続きまして、今後の瀬戸内海の水環境の在り方の論点整理における指摘でございます。
 瀬戸内海が抱える課題といたしまして、特に、瀬戸内海の人と海との関わり方の希薄化であるとか、いまだ水環境上の課題があるとか、生物多様性の低下や漁獲量の減少といった課題に加え、新たな課題といたしまして、地球温暖化による影響といったものがございます。
 次のページに、論点整理の概要といったものを示してございます。
 論点整理の中で、瀬戸内海の価値といたしまして、「道」としての価値、「畑」としての価値、「庭」としての価値。
 また、今後の基本的な考え方といたしまして、五つの基本的な考え方。今後の方向性といたしまして、13の方向性。今後の方向性に加え、情報提供、広報の充実等といった、三つを加えた今後の取組といったものが示されております。
 ここで概観いたしますと、瀬戸内海の水質というものは改善されてきている一方で、埋め立て等による藻場・干潟の減少、赤潮や貧酸素水塊の発生、漁業生産の低迷など、多くの課題というものがいまだ存在しておりまして、豊かな海に向けて、新たな施策の展開が求められているといった結論でございます。
 続きまして、瀬戸内海の環境を取り巻く動きとして、環境行政全体の動きでございます。ここで紹介する内容は、簡単に説明させていただきますけれども、先ほどの参考資料に、諮問関係資料集としてまとめておりますので、適宜ご参照ください。
 一つ目でございます。第三次環境基本計画の策定でございます。
 今後展開する取組として、「市場において環境の価値が積極的に評価される仕組みづくり」ですとか、「環境保全の人づくり・地域づくりの推進」などが挙げられております。なお、中央環境審議会の総合政策部会におきまして、第四次環境基本計画策定に向けた検討がなされております。
 次に、21世紀環境立国戦略の策定でございます。
 これは、地球環境問題に対して、日本政府としてどのように取り組んでいくのかといったことと、持続可能な社会をどのように目指していくのかといった目的のために策定されたものでございまして、藻場・干潟・サンゴ礁等の保全・再生・創出といった総合的な取組を推進することにより、豊穣の「里海」を創生していくことが位置づけられております。
 1枚めくっていただきまして、水質総量削減の在り方でございます。
 第6次総量削減基本方針におきまして、大阪湾を除く瀬戸内海について、扱いを異にするということでございます。特に、大阪湾を除く瀬戸内海におきましては、環境基準の達成率は良好であり、現在の水質を悪化させないという観点からの取組を実施することとされております。本年6月に策定いたしました第7次総量削減基本方針におきましても、第6次の方針が継続されております。
 次に、今後の水環境保全の在り方についてでございます。
 これは、将来を見据えた水環境行政の展開を図っていくため、今後の水環境保全の在り方の検討会というものを、昨年度まで開催させていただきまして、お手元に冊子として配付させていただいておりますけれども、これからの水環境保全・再生の取組に当たっては、特に「地域の観点」ですとか、「グローバルな観点」「生物多様性の観点」「連携の観点」を念頭に置いて、個々の取組を進めていく必要があるといったことが示されております。
 続きまして、5番目と6番目として、海洋に関する取組でございます。
 海の再生に向けた総合的な取組でございますけれども、都市再生本部による都市再生プロジェクトの第3次決定によって、海の再生というものが位置づけられております。大阪湾におきましては「大阪湾再生推進会議」が設置され、広島湾におきましては「広島湾再生推進会議」が設置され、それぞれ行動計画が策定されております。
 次に、海洋基本法の制定と海洋基本計画の策定でございます。これは、沿岸域だけではなく、広く海洋一般の施策の総合的かつ計画的な推進を図るために制定されたものでございます。基本的な方針といたしまして、海洋の開発及び利用と海洋環境の保全との調和が掲げられるとともに、生物多様性の確保のための取組であるとか、環境保全のための継続的な調査・研究の推進が位置づけられております。
 続きまして、生物多様性基本法の制定と生物多様性国家戦略の策定でございます。
 本戦略におきましては、2050年といった中長期的な目標ですとか、2020年といった短期目標が設定されるとともに、「科学的認識と予防的順応的態度」といった五つの基本的な視点、「森・里・川・海のつながりの確保」といった四つの基本戦略が示されております。
 また、昨年度開催されました生物多様性条約締約国会議(COP10)におきまして、生物多様性の状況の改善ですとか、生態系サービスから得られる恩恵の強化といった戦略目標として、愛知ターゲットというものが設定されております。
 続きまして、海洋生物多様性保全戦略の策定でございます。
 本戦略の策定のための検討会というものを開催させていただきまして、ここにおられる白山委員に多大なるご指導をいただきながら策定したものでございます。海洋の生態系サービス(海の恵み)というものを持続可能なかたちで利用することを目的といたしまして、策定された戦略でございますけれども、基本的な視点といたしまして、地域の知恵や技術を生かした取組ですとか、生物多様性の保全のための手段の一つとして、海洋保護区の考え方が示されております。
 次に、審議事項になります。
 一つ目といたしまして、瀬戸内海の目指すべき将来像でございます。この将来といったものが、数年先というよりも、もっと長いスパンで見たときの瀬戸内海のあるべき姿はどういったものなのか。また、過去の基本計画のフォローアップ等で指摘されております「豊かな海」というものは、どういったものなのかと。それを表現するために、どのような指標を用いていったらいいのかと。また、瀬戸内海の環境保全といったものを考えたときに、どこまでの範囲を対象とするのか、といったことを審議していただきます。
 続きまして、瀬戸内海における今後の環境保全・再生のあり方の基本的な考え方でございます。
 今後の瀬戸内海の水環境のあり方の論点整理で示されました以下の五つの基本的考え方に沿って、何を行っていくべきかということで、五つの考え方を示させていただいております。
 これにつきましては、後ほど、議題(2)といたしまして、詳しく説明させていただきますので、以上で、企画専門委員会の設置についての説明を終わらせていただきます。

○松田委員長 ありがとうございました。ただいま、この議題(1)について、特に諮問の背景、審議事項の概要について、非常に簡潔にご説明いただきましたが、内容は相当多岐にわたっていて、たくさんの分量があります。これについて、ご質問やご意見、コメントなど、ございませんでしょうか。
 よろしいですか。もし必要があればまた戻っていただくとして、次の議題に進めさせていただきます。
 それでは、次でございますけれども、今後の目指すべき将来像と環境保全・再生の在り方に係る論点について。これについて、まず事務局からご説明いただきたいと思います。

○千野閉鎖性海域対策室主査 それでは、論点ということでございまして、資料2に基づきましてご説明申し上げます。
 まず、瀬戸内海における今後の目指すべき将来像ということでございますけれども、今までどのようなものに向かって環境保全の取組がなされてきたのかといったものを踏まえまして、今後の将来像の設定の意義というものを次に、さらに、事務局から、目指すべき将来像の案というものを説明させていただきまして、最後に論点というものを説明申し上げたいと思います。
 まず、これまでに掲げられてきた将来像でございますけれども、瀬戸内海環境保全特別措置法における価値というものがございます。
 昭和40年代の高度経済成長期におきまして、瀬戸内海の水環境については、赤潮による漁業被害ですとか、油流出による環境汚染ですとか、瀕死の海とさえ言われる状態が続いてきておりまして、これがきっかけとなり、同法が制定されております。
 同法におきまして、瀬戸内海の価値ですとか特徴といたしまして、以下の二つというものがうたわれております。
 我が国のみならず世界においても比類のない美しさを誇る景勝地、また、貴重な漁業資源の宝庫といったものがございまして、これらの二つの価値が保全され、後代に継承されていることが瀬戸内海環境保全特別措置法における「目指すべき将来像」でございます。
 次に、瀬戸内海環境保全基本計画で掲げられた目標でございます。
 瀬戸内海環境保全特別措置法におきまして「目指すべき将来像」の実現のために、基本計画においては、以下の目標というものを掲げてございます。
 先ほども申し上げましたけれども、水質保全等に関する目標と自然景観の保全に関する目標といったものがございます。水質保全等に関する目標につきまして、キーワードといたしまして、水質環境基準ですとか、赤潮や漁業被害、また底質、藻場・干潟、さらには自然海浜などが挙げられます。自然景観の保全に関する目標のキーワードといたしまして、自然景観ですとか、緑や自然海岸、ごみ、汚物、油といったものと、文化財といったものがございます。
 続きまして、今後の瀬戸内海の水環境の在り方の論点整理における三つの価値でございます。
 瀬戸内海は沿岸域をはじめとしました市民、漁業者、事業者により、景観鑑賞や、漁業、レクリエーション、船舶航行など、人々の中で多種多様に利用されてきております。論点整理におきまして、このような多面的機能を有する瀬戸内海の価値を、「道」としての価値:物流を担う重要な海上航路、「畑」としての価値:世界的にも海面漁業生産力が高い漁業生産の場、また「庭」としての価値:多島美、白砂青松を代表とする景観、観光の場として、それぞれ例えて挙げられております。
 以上が、これまで掲げられてきた将来像ですとか価値といったようなものでございます。
 続きまして、今後の目指すべき将来像の設定の意義についてでございます。
 瀬戸内海は、温暖な気候に恵まれ、世界にも類いまれな美しい自然と、豊かな漁業資源の宝庫として、人々の暮らしと密接に関わってきてございます。しかしながら、この、人との関わりを多く持つ「瀬戸内海の美しさ、豊かさ」といったものは、経済成長とともに失われていってございまして、かつて、海は身近な存在であったという認識、また、砂浜や藻場・干潟などといったものが多く存在していたんですけれども、今はその面影を残すといったところは少なくなってきている認識、このような現状認識、また、瀬戸内海環境保全特別措置法制定時とは時代背景や瀬戸内海の環境を取り巻く状況というものが変化してきている状況というものを踏まえて、今後の目指すべき将来像を設定し、その上で望ましい将来像の認識の共有のために、瀬戸内海環境保全基本計画への位置づけ等について考慮していくべきではないかといった意義でございます。
 それでは、続きまして、瀬戸内海の今後の目指すべき将来像といたしまして、事務局からの提案をさせていただきます。
 今後の瀬戸内海の水環境の在り方の論点整理におきまして、いまだに多くの課題が存在しており、「豊かな海」に向けて多くの施策の展開が求められるといったことですとか、今後の瀬戸内海については、「豊かな海」として瀬戸内海の多面的機能を踏まえ、その在り方について熟慮していくことが重要であるといった指摘ですとかを踏まえて、瀬戸内海の目指すべき将来像といたしまして、「豊かな海」というものを提案させていただきたいと思います。
 論点1といたしまして、「豊かな海」とはどんな海か、というところでございます。また、下のほうにポンチ絵のようなものを示させていただきますけれども、「豊かな海」を構成する要素といたしまして、きれいな海ですとか、美しい海ですとか、そのような体系で整理させていただいておりますけれども、豊かさを構成する要素は何なのかということ、また、その要素の意味や定義といったものが論点となっております。
 続きまして、「豊かな海」を構成する要素について、個々にご説明申し上げます。
 まず1点目のきれいな海でございますけれども、ポイントといたしまして、水質が良好な海ですとか、陸域からの汚濁物質の流入が抑えられている海ですとか、それを表す指標例といたしまして、環境基準ですとか、透明度、また赤潮の発生件数といったものでございます。
 次に、美しい海でございます。ポイントといたしまして、自然景観にすぐれた海、文化的景観にすぐれた海、それらの自然環境と文化的要素が一体となり、すぐれた景観が形成されている海ですとか、それらを表す指標といたしまして、国立公園、自然公園等の指定面積ですとか、自然海浜保全地区の指定延長がございます。
 次に、生物多様性の高い海でございます。ポイントといたしまして、多様な種類の生物がいる海、多様な場を有する海ですとか、指標例といたしまして、生物の種類数、個体数、藻場・干潟の面積、渡り鳥の飛来数といったものが挙げられます。
 次に、生産性の高い海でございます。ポイントといたしまして、魚介類が持続的にとれる海、観光資源が豊富な海、エネルギーを生み出す海でございます。指標例といたしまして、基礎生産力ですとか、漁業生産量や藻場・干潟面積といったものがございます。
 次に、人々の生活を潤す海でございます。ポイントといたしまして、海にまつわる歴史や文化・行事に富んだ海、自然や環境について学べる海ですとか、水産資源の豊富な海、産業の基盤となる海といったものがございます。指標例といたしまして、環境保全活動のイベント開催数ですとか、海水浴場や潮干狩りの場の数ですとか、観光客数、国立公園の利用者数といったものがございます。なお、指標例の中でイタリックで示させていただいているものは、指標としてはございますけれども、今後検討が必要といったものでございます。
 最後に、六つ目といたしまして健全な海がございます。ポイントといたしまして、外的変動に対し安定な海、物質循環が太く長く滑らかな海、海域の利用が支障なくできる海でございます。指標例といたしまして、生態系の健全性といたしまして、生物の組成ですとか、藻場・干潟の面積、また基礎生産(透明度、赤潮発生頻度)や、貧酸素水塊の出現状況といったものがございます。
 次に、論点の二つ目といたしまして、各要素がどの程度あれば豊かな海と言えるのかということでございます。また、その要素をどのようにバランスさせ、調和させていくかということでございます。
 各要素におきましては、それぞれが並列する場合に対立する例でございますとか、各要素が両立または共通しているといった例がございます。
 対立する例の一つといたしまして、例えば「きれいな海」と「生産性の高い海」がございます。すなわち、水質の改善と生産性を支える栄養の不足といった対立がございます。また、両立する例といたしまして、「生物多様性の高い海」と「健全な海」といったものがございます。これは、生物多様性が高い状態で維持されることで、外的変動に対し安定な海というものが維持されるということでございます。
 これらのように、その水準を、豊かな海を構成する要素から一つ取り上げて、その水準を高めようとすると、豊かな海を構成する別の要素と対立する場合というものが生じてございます。豊かな海を実現するために、どのような場合に対立が生じるかということを認識して、それらが互いに両立できる関係となるように、バランスを図っていく必要があるということでございます。そのバランス点の設定につきましては、直接的な当事者はもちろん、不特定多数の関係者への影響に配慮しながら合意形成を行うことが必要となってくるということでございます。
 次に、瀬戸内海の今後の目指すべき将来像のイメージということで、最終的なイメージのアウトプットとして、わかりやすいイメージというものをご提示させていただいたところでございます。
 真ん中に「豊かな瀬戸内海」というものを示させていただきまして、それらを構成する要素がそれを囲っているといったようなイメージになります。
 続きまして、地域に応じた豊かな海でございます。瀬戸内海において、大阪湾や、それ以外の湾や灘、それぞれの環境の状況といったものは異なりますので、各地域が目指す豊かな海の姿も異なってくると考えられます。地域の特性を生かした取組を推進させるために、各地域において、このような目標像の検討を行い、これを共有することが求められているのではないかということでございます。
 論点の三つ目といたしまして、地域が目指す豊かな海というものを考える際に必要となってくる視点は何かということでございます。地域の特徴づけですとか、対象とすべき目標像における要素の重みづけですとか、関係者の意見を広く、また地域間の調整を図るための仕組みといった論点がございます。
 参考といたしまして、瀬戸内海の環境保全や再生に係る他の計画ということでございます。
 平成17年には、瀬戸内海環境修復計画が策定されてございまして、また、先ほどもご説明したように、大阪湾において大阪湾再生行動計画が、広島湾において広島湾再生行動計画、また、備讃瀬戸環境修復計画といったものが策定されております。
 続きまして、瀬戸内海における今後の環境保全・再生の在り方についてでございます。
 基本的考え方といたしまして、先ほどご説明したとおり、今後の在り方の論点整理で示された五つの考え方に加えまして、東日本大震災の教訓を踏まえた考え方といたしまして、防災と環境保全の両立を進めるといった考え方を加えまして、以下の六つの考え方を基本として提案させていただきます。
 論点の四つ目といたしまして、基本的な考え方はこれでよいのかということと、ほかに必要な視点はないのかといったことでございます。
 次に、これらの基本的な考え方に沿った取組といったものを、今までのご指摘ですとか意見を踏まえて、整理させていただいております。
 論点の五つ目といたしまして、基本的な考え方に沿って整理させていただいておりますけれども、重点的に取り組むべき事項は何かといったものがございます。
 一つ目といたしまして、水質管理を基本としつつ、豊かな海へ向けた物質循環、生態系管理への転換を図るということでございますけれども、今後の水質管理につきましては、生物多様性や物質循環の問題の調査研究を十分に行った上で、また、水質総量削減や環境基準の達成率についてしっかりと評価を行った上で、今後の目標、今後の在り方について議論すべきであるといった意見。また、水質総量削減について様々な意見が出されておりますけれども、窒素とリンの規制によって、どのような現象が起こっているのかといったものを十分に検証すべきであるとか、汚濁負荷を物質循環ととらえた新たな管理方策への転換を視野に入れた調査研究を実施すべきですとか、また、現在の総量規制の運用の中で、季節的な対応を行っていくべきではないかといった指摘ですとか、また、現在の上限だけではなくて下限値を設けるといったことについて検討をすべきですとか、ということが意見として挙げられております。
 また、健全な物質循環を確保するためには、陸域と沿岸海域の一体的な管理によって、物質循環システムとして、森・川・海のつながりを回復させる必要があるといった指摘がございます。
 二つ目といたしまして、藻場、干潟、砂浜等の失われた沿岸環境と悪化した底質環境を回復させるということでございます。藻場、干潟、砂浜等におきまして、保全・再生について、より積極的な対策を行っていくといった指摘。また、藻場や干潟が有する機能、自然浄化能力でございますとか、二酸化炭素の吸収機能ですとかを評価し、政策に反映するといった指摘。また、海砂利採取や海面埋め立ての原則禁止の厳格な運用を続けていくべきであるとか、海砂利採取後の深掘り跡地につきまして、課題の整理、また埋め戻しを行うことによる効果や影響の把握等を明らかにしていくといった指摘がございます。
 三つ目としまして、白砂青松、多島美と評される瀬戸内海の自然景観及び文化的景観を保全する取組でございます。
 自然景観の保全のみならず、景観の修復、海から見た景観や文化的景観を含めた保全と再生について、目標の合意形成を図るための取組を検討すべきといった指摘。また、環境保全とツーリズムが連携した地域産業の活性化の取組を推進するといった指摘。また、未利用の埋立地が、本来の土地利用の目的に支障を及ぼさない範囲で、これらの自然の再生を検討すべきといった指摘がございます。
 四つ目といたしまして、地域で培われてきた海と人との関わり方に関する知識、技術、体制を生かして、地域における里海の創生を図るといったものでございますけれども、湾や灘ごとの特性の評価を行い、海域ごとの里海創生の具体的な取組と、その効果について把握すべきではないかといった指摘。また、底層DOや透明度といった新たな水質環境基準の検討状況も踏まえつつ、湾や灘ごとの水環境目標や指標の設定を検討すべきであるとか、里海創生に関わる市民や漁業者、企業や行政の連携と、それぞれの取組を実行しやすくするための仕掛けの検討をすべきといった指摘というものがございます。また、景観保全のために、かつて地域の人々がどういうふうに石や砂と関わってきたのかを明らかにしていくといった指摘がございます。
 五つ目といたしまして、瀬戸内海の生態系構造に見合った持続可能な利用形態による、総合的資源管理を進めるといったことでございます。
 生物生息状況に関する指標など、生物多様性や生物生産性に関する調査や評価を推進すべきであるとか、良好な環境の保全を最優先にしつつ、海洋空間計画の考え方や、風力発電、潮力発電といったエネルギーの観点も考慮に入れ、海域利用の基準というものを検討すべきではないかといった指摘。また、今後の瀬戸内海における総合的な水産資源や漁業管理の在り方について、生態系の規模に応じた漁業を地域ごとに見直して、総合的な資源管理を進めていくために、行政や研究者、漁業者、市民を含めた議論を行うべきであるといった指摘がございます。
 また、新たに加えました防災と環境保全の両立を進めるといったことでございますけれども、今後、沿岸域の防災機能を高めるための護岸等の整備や、既存の護岸等の補修・更新時に、積極的に環境配慮型の護岸の採用を推進すべきではないかとか、環境教育や学習と防災教育や学習を一体で推進すべきであるとかいった提案でございます。
 続きまして、基本的な考え方に基づきまして取組を推進するための方策でございます。
 これらの六つの基本的な考え方すべてに共通していくような取組でございまして、それらを推進するための方策でございます。
 論点の六つ目といたしまして、取組を推進させる方策として必要な事項は何か、といったものでございます。七つ挙げさせていただいておりますけれども、抜けている事項はないかといったような論点でございます。
 一つ目といたしまして、目標項目や目標年次の設定でございます。
 瀬戸内海の環境につきましては、各種規制や関係省庁、NPO等の取組により、総合的に保全・再生されてきておりますけれども、その瀬戸内海の環境保全上主要となる瀬戸内海環境保全基本計画におきましては、定量的な目標ですとか、目標年次の設定の明記がございません。したがいまして、瀬戸内海環境保全基本計画というものを時代の変化に適応させ、今後の目指すべき将来像の実現に向けての強力な原動力や推進力とさせていくために、目標項目の再構成や具体的な数値目標といったものを盛り込むべき必要があるのではないかといった指摘でございます。
 二つ目といたしまして、瀬戸内海の環境保全の推進体制の充実でございます。
 各主体の役割の明確化ということでございますけれども、瀬戸内海の環境保全の取組は、先ほども申し上げましたように、多様な主体によりまして、総合的に行われてきておりまして、今後も、これらの取組を推進するとともに、さらなる環境保全の再生を進めていくため、各主体の役割、また責務といったものを明らかにしていくことが重要ではないかといったことでございます。
 さらに、広域的な連携の強化ということでございますけれども、現在、瀬戸内海の環境保全のための管理体制の一つといたしまして、13府県・政令指定都市・中核市の首長による瀬戸内海環境保全知事・市長会議というものが組織されておるわけでございますけれども、一方で、瀬戸内海におきましては、12の海域に区分され、それぞれに対応する各自治体が抱える問題というものには違いがございます。今後、湾や灘といった、湾・灘ごとの管理につきまして、現在の行政区分を超えた新しい地域区分での対応が必要となってくるために、それらを推進するための体制を整えるべきであるといった指摘がございます。
 次に、地域の参加・協働の促進でございます。
 環境保全活動では、多くの人々に瀬戸内海に来てもらい、瀬戸内海に関する体験を経ることが重要であるといった点や、観光振興から環境保全へとつながるツーリズムの取組が必要であるといった指摘。また、環境保全活動には地域のネットワーク化であるとか、そのネットワークを支える支援体制といったものが必要となってくるといった指摘がございます。
 次に、環境教育・環境学習の充実でございます。
 環境学習は、森と川と海という水環境が一つのつながりとして行われるべきでございまして、行政等の多種多様な人々の連携のもと、推進していく必要があるといった指摘。また、瀬戸内海の湾・灘ごとの地域で実施する水環境に関する取組について、環境学習といったものを積極的に組み込んでいくべきであるといった指摘がございます。
 次に、調査研究や技術開発の推進でございます。
 瀬戸内海の環境保全を推進するために、生態系をはじめとした現状の的確な把握や、精度のよい将来の予測といったものの調査研究を、より一層充実させ、知見の集積、蓄積を図ることが求められております。また、調査研究に当たっては、地方の試験研究機関や大学、また博物館による情報交換等の密接な連携のもと、総合的に取り組んでいくべきであるとか、そのための研究体制、効率的な研究を行うための仕組みというものを構築していくべきであるとかいった指摘がございます。さらに、海域の環境保全の再生に必要な海藻や海草、付着生物を中心とした生物の生息場としての緩傾斜護岸、浚渫土砂やスラグ、石炭灰造粒物といったようなものの利用手法に関わる技術開発の研究及びその活用を推進するべきであるとかいった指摘がございます。
 六つ目といたしまして、情報提供や広報の充実があります。
 表面的な環境問題を取り上げるだけではなく、その背景にある瀬戸内海の環境全体の状況も示して、その関係性について理解が得られるようアピールするですとか、国民全体に持ってほしい瀬戸内海のイメージや、訪れてほしい景勝地、体験してほしい観光地等の情報を地域で共有し、国内外に情報発信していくといったものがございます。
 七つ目といたしまして、世界の閉鎖性海域との連携でございます。
 日本の公害克服や環境保全の経験から、瀬戸内海における水環境保全の取組をパッケージ化して、国際的に情報発信、協力していくといったものでございます。また、瀬戸内海と同様に、閉鎖性海域を抱える諸国と連携して、環境保全対策に協力して取り組んでいくといったものでございます。
 以上が、事務局で提案させていただいているものでございます。どうぞよろしくお願いします。

○松田委員長 大変ありがとうございました。ただいま事務局から、この将来像について、かなり膨大な内容を含む提案がありましたけれども、これから少し時間をとって、理解を深めながら審議を進めていきたいと思いますけれども、初めに、今の説明に対して、何かご質問とか、これはこういう意味かとか、何かそういったご意見がございますでしょうか。
 総論としては、全体のキーワードといいますか、コンセプトとして、「豊かな海」というのが出ているわけですけれども、この「豊かな海」を目指すということは、これまでのいろんな議論も踏まえて、大方のご賛成は得られるかなと思うんですけれども、これについて、そもそも論でも結構ですので、ご意見ありましたらお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
 もし、ございませんでしたら、今具体的に示された論点がこれからの課題になる、特にこれをいかに具体化していくかというあたりが焦点になるかと思うんですけれども、今回、1回目ですので、冒頭に申し上げましたように、皆様から、今のこの案に対して、ご意見あるいは感想でもいいですし、こういうところが足りないんじゃないかとか、あるいは、現時点では、これはもういいんじゃないかとか、そういったことを含めて、お一人ずつ、ご発言をお願いしたいと思います。時間があまりありませんので、まとまった意見じゃなくて結構ですので、印象とか、あるいは何回に分けても結構ですので、大変恐縮ですけど、先ほどの委員紹介の順で、足利さんから何か口火を切っていただけるとありがたいんですけれども。一回にまとめてではなくても結構ですが、時間の関係で、5分程度まででということでお願いできれば幸いです。

○足利委員 瀬戸内海の一番隅の、周防灘の一番隅っこの、大分県と福岡県の県境のところの豊前海の中津の干潟でNPO活動をしております足利と申します。よろしくお願いいたします。
 一番最初に指名をされて、何からと思っているんですけれども、全体的に拝見して、ちょっと盛りだくさんで、これが本当に実行していかれるのかなというところが少し気になりました。
 あと、一番最初のところから申し上げますと、2ページに「道」としてというのと、「畑」というのと、「庭」としてというのがあるんですけれども、私は、この中にもう一つ、もともとある自然自体をそのまま、ありのままのものを残していくというものも一つあるのかなと。庭というイメージだと、自分が手を入れてよくしていくというイメージがあって、そうではなくて、もともとある自然、まだ残っている、現存しているものを、手をつけずにどうやって残していくかという観点も必要なのかなと思いました。
 あと、例えば大阪とか広島とか、沿岸に汚染の問題があったりとか、住民の方が非常に多くて関心のあるところはいいんですけれども、そうではない、瀬戸内海の田舎の片隅の海岸というのは、もうほとんど手をつけないまま、護岸がされ、埋め立てられ、気がついたときには海岸がなくなっているというような状況であったり、それから、漁獲がどんどん減っている、漁業者も非常に疲弊しているという状況もありまして、やはりそういう人の目についていないところというか、活動する人もいないから誰も知らないうちになくなってしまうというようなところをどうやって拾い上げていくかという視点も大事なのかなと思います

○松田委員長 ありがとうございました。足利委員は、中津干潟で大変注目される活動の中心人物の一人ですけれども、ご意見、ありがとうございました。多分、少し盛りだくさん過ぎるというのは、現時点ではいろんなメニューがやや並列的に挙げてありますので、それをウエイトづけするというか、どれに重点を置いて、どれは当面少し後回しにするとか、そういうプライオリティーといいますか、それをつけていくということが、この委員会のミッションの一つでもあると思いますので、ありがとうございました。
 それから、「道」「畑」「庭」論は、これはもともと柳さんの提案が取り上げられていると思いますけれども、これについて、柳さん、何かありますか。

○柳委員 自然をそのまま残すというのは、わからないことはないんですけれども、ちょっとスタンスというか、後でまたゆっくりしゃべりますけど、ここに、私自身としては、三つと並列にそれを挙げる気にはならない。詳しい理由はおいおいしゃべります。
 一番問題というか、中心は「豊かな海」の定義の問題だと思うんですけど、豊かな海というのは、私から言わせれば、一つは、まずメインは、漁民が暮らせる海ということですよね。今、瀬戸内海のいろんな漁村が限界集落化していて、高齢化して、どんどん減っているんですけども、そういうのを、もう一回若い漁民がちゃんとそこで飯が食えるような海、瀬戸内海になるということが、基本的に将来の目標だと思います。
 ただ、問題になるのは、現在、瀬戸内海の漁民というのは3万人で、流域人口は3,000万人で、0.1%なんですよね。99.9%の漁民以外の人は、その豊かな海とどう関わるかといったら、どう考えても、ここに書いてありますけど、ツーリズムとか、いろんな仕掛けのもとで瀬戸内海と密接な関わりを持つということが、豊かな海を実感することになると思うんですけども、それをやるにはやっぱり、ツーリズムにしても、今、一部の漁村で修学旅行を受け入れたり、漁民の直営のマーケットとか、いろんな仕掛けをつくって関係を深めようとしているわけですね。
 そういうものが新たなビジネスで、それで飯が食える人が増えることが、漁民が生活できるということで、瀬戸内海自体が豊かな海になって、漁民のみならず市民との関わりも深まって、ここに書いてあるような関係性を深めるということになると思うんで、どっちにしろ、とにかく瀬戸内海に依存して飯を食う人の数を増やすというのが、私は一番大事だと思っています。

○松田委員長 ありがとうございました。足利さんからいただいたもう一つの論点は、田舎の海岸といいますか、疲弊している海というのは、確かに島ですとか、田舎へ行けば行くほど過疎化、高齢化が激しくて、逆にそういうところほど環境や生態系が残っている部分もあるかと思いますので、今後どうするかということで取り上げさせていただきたいと思います。
 それでは、すみませんが、大塚委員さん、お願いできますか。

○大塚委員 法的な観点から3点ほど申し上げて、あとは若干追加したいと思いますけれども、先ほど座長がおっしゃってくださったように、瀬戸内法が、特別措置法ができて、あるいは、その下の計画がかなり厳しい対応をしていただいたために、かなり実効性が上がってきたという点は非常によかったなと、歴史的には考えています。
 3点ほど、印象として申し上げておきたいこととしては、一つは、先ほど来ご指摘がありましたように、窒素、りんに関しては、むしろ減らし過ぎたんじゃないかというふうな議論もあるようですので、この9ページに書いてあるように、どういう現象が起きているかということをきちんと検証して、新しい管理のあり方を、総量管理のあり方を考えていく必要があるというのが、非常に重要ではないかと思っています。
 今までの総量削減の考え方をどうしていくかということですので、ある意味、非常に先進的な話じゃないかというふうに考えていますけども、それが第1点でございまして、先ほどご議論があった漁業をどうやっていくかということとも大いに関連する点であろうと思います。
 それから、二つ目に印象として思っているのが、12ページに書いてある、地域の参加・協働、あるいは里海という考え方を広めていくということでして、これは環境政策全般に関連することですけども、社会参加型の環境施策をとっていくということが、方向性としてますます強化されていく点ではないかと思っています。これは、基本計画を立てるときに関連してくるのではないかと思います。
 それから、第3点ですけども、これもどこかに話があったと思いますけれども、瀬戸内の特別措置法では許可制をとっていて、これが水濁法との関係では、水濁法は届出制をとっていますので、そこは大分違っているわけですけども、私としては、むしろ世界的に見ると、許可制のほうが一般的なので、瀬戸内法の許可制を届出制に変えるのではなくて、水濁法をむしろ許可制に変えていくほうが、方向性としては望ましいと思ってはいます。ただ、規制緩和の問題もあるので、そんなに簡単ではないことは認識していますけども、方向性としては、欧米は基本的に許可制をとっているということを考えると、これを簡単に届出制に変えてしまっていいというふうには、あんまり考えにくいということを申し上げておきたいと思います。
 あと、細かい点ですが、細かい点というのは、別に重要でないという意味ではないんですけど、一つお伺いしておきたいのは、10ページに風力発電の話が出ているんですけども、風力発電は、日本全体で見ると東北とか北海道のほうに、かなり採算が合うというか適地がございますけども、瀬戸内のあたりは風力発電がどのぐらい有望なのか、お伺いしたいところがございます。どうしても、いろんな話を書くことになると、何でも書くというところがひょっとしたらあるかもしれませんので、よくわからないので質問させていただくということです。風力発電というのは、どのぐらい有効なのかというのをちょっとお伺いしておきたいところでございます。
 あと、豊かな海については六つの分け方がしてあって、非常に上手だなというふうに思いましたし、指標もたくさん挙がっているので、第四次の環境基本計画を検討しておりまして、指標づくりというのは非常に重要なものですから、この辺も環境基本計画に上げていくといいんだろうなと思って、伺っておりました。以上でございます。

○松田委員長 ありがとうございました。3点に整理していただき、それから指標づくり、あるいは評価システムといったものが重要であろうと。大変ありがとうございました。
 風力発電について、事務局から何かつけ足すことはございますか。今後の検討でも結構ですし。

○千野閉鎖性海域対策室主査 風力発電の現状につきまして、正確な把握というものはしておりませんけれども、先般、通称再生可能エネルギー特別措置法というものが制定されまして、今後、海域利用について再生可能エネルギー、風力ですとかといったものが、瀬戸内海におきましても推進されていくといったときに、環境保全というものを考えたときに、しっかりと海域利用を考えていくべきですといったような問題意識を持って挙げさせていただいております。

○松田委員長 ありがとうございました。それでよろしいでしょうか。
 あと、大塚委員さんから2番目にご指摘のありました、社会参加型というんですかね、市民参加型というのは、私は全然素人ですけど、この10年ぐらいのいろんな海関係の法律も大体そうなっていますので、それが何といいますか、個人的な感じでいうと、法律はできているんだけど、なかなかそれを担保する具体的な仕組みがないという感じがしますので、瀬戸内海で、それをいかに実現していくかというあたりも、かなり重要なテーマかなというふうに思います。ありがとうございました。
 それでは、白幡先生、お願いできますか。

○白幡委員 豊かな海というのが、水質・大気のところから提案されたというのはびっくりしたんです。あんまりそういうイメージしていなかったものですから、豊かな海って、どう数値化できるのかなと、目標をどう立てればいいのかというのは大変難しいと思うんですが、豊かな海というのがあったので、委員会に出てきたような感じがするので、ぜひここを、どれぐらいわかりやすく説明ができて、現実的な施策に反映できるかというのが大きい獲得目標だと思います。ですから、これを立てられたのは、僕は大変期待するというか、大事だと思うんですが、先ほど足利さんがおっしゃったように、論点だから、豊かな海はつかみどころがないので、いろいろ、それをどういうふうにつかめばいいか説明いただいたんですが、見ていたら、例えば三つの価値です。これは柳先生が言われている里海の考え方の中で、そういうイメージとしての里海のよさというのは、三つの価値からできているというふうに私は理解しているんですけど。三つの価値と、五つの基本的考え方、論点が六つ、どれをどのレベルで議論していいかというのは非常に見えにくい。これを次回以降からでしょうか、整頓していただかないと、私も整頓するのに努力したいと思いますが、わかりにくかった。
 瀬戸内海の価値は、柳先生がまとめていただいたのを基礎に書かれていると思うんですが、道、畑、庭というのは、やっぱり何か1個欠けている。これは足利さんが一つおっしゃったんですけど、私は比喩でいうと座敷というか、居間みたいなのがないんじゃないかと。つまり、道というのは歩いているわけですね、歩いたり、物が動いてるわけですね。畑というのは働く場所ですね。庭というのは何かつくる、一生懸命何かやっている。休むところがない。瀬戸内海というのは、いつも働いてなきゃいかんという。柳さんが今、大変上手に説明していただいたと思うんですけど、漁民の観点だとおっしゃったんで、ただ、漁民の観点は、私もまず第一に考えなければいけないだろうとは思うんですけど、漁民も休みますしね、休養しますし、毎日暮らすので、居間、座敷というようなイメージを今ちょっと思いついたんですが、日々、飯を食い、休み、何か考えたり、暮らしの充実感を味わったりというところがやっぱり要るだろうと思うんですね。それが瀬戸内海で、それを一部利用させていただいてというか使って観光とか、訪問客というのは、そういうふうなところで、ああいいな、豊かな海だなと思っていたんです。私は大阪に生まれて、大阪湾沿岸に出かけていくというのは、瀬戸内海の豊かさを享受していたわけですけど、全く利用者で、漁業を見ているわけでもなしに、やっぱり暮らしというか、落ちついた、ほっとした時間帯というのを共有しているという感じなんですね。生産者も、訪問客も、それから通りすがりの人たちも、そういうすべての価値観の中から、豊かさというのをどう分類して、今欠けているのは何かというような観点で見たらいいのではなかろうかと。里海の考え方は大変画期的な新しい海域に対する価値づけですので、その辺を少し、さらに議論を深めていっていただきたいと思います。
 美とか景観というふうに言いますけど、それはちょっと生活と離れていて、その点を考えるというのは悪くはないんですけども、それはこれまでになかった観点というよりは、これは別の観点で、昔から国立公園であるとか、そういう制度的なところで保障されていたと思うので、むしろ安らぎとか休養とか、居間・座敷という感じの観点で見た海の価値をどうするかというのが大きな課題かなというふうに自分では考えております。以上です。

○松田委員長 どうも大変ありがとうございました。
 初めに、豊かな海というのが、ある意味、多様に表現されているので、これをいかに具体化していくかが必要である。多分それは、この専門委員会の非常に基本的なミッションだと思いますので、これからぜひ皆様の議論を通じて、詰めていきたいというふうに思います。
 それからもう一つ、比喩的ですけど、非常に重要なご提案がありました。いわば安らぎの確保をどういうふうにするかという、座敷あるいは居間、訪問者というあたりのことを先ほどの足利さんの議論と含めて今後詰めていければというふうに思います。ありがとうございました。
 引き続きまして、中瀬委員さん、お願いいたします。

○中瀬委員 私、所属を大学の研究所に書いていただいているんですが、実はこの研究所ともう一か所、人と自然の博物館というところで働いていています。丹波の森公苑という兵庫県の山間部でも働いています。そこでは限界集落の研究をしております。それから、この3月までは淡路島にございます景観園芸学校というところに2年間おりました。そういう意味では、山の中から瀬戸内海まで、いろんなところで活動しておりまして、今の白幡先生とは対比的に、現場に即した話をしてみたいと思います。
 実は、ここで書いておられることで、自然環境の情報のデータベース化をどうされるのかなというのが非常に興味あると同時に、例えば、今、国立の科学博物館が自然史系の博物館の持っている情報のデータベース化をほぼ完了されているところです。そうすると海洋関係の自然環境情報データベースは、どこにどういうふうにあるのかなというのが見えないんですよね。私たちは、西日本自然史系博物館ネットワークということで、瀬戸内を囲んでいる博物館では共有データベース化をやってみたり、博物館がNPOをつくって活動をやっておりますので、そこら辺の主体がどんなふうにされるのかなというのがちょっと気になっています。
 それから、三田の博物館では環境学習というか、生涯学習を完全にテーマにしております。生涯学習ということで、我々の博物館のモットーは、胎教から墓場までなんです。妊娠されたときから生涯学習が始まるということでやっておりまして、今、博物館で一番重点に入れているのは、幼稚園、保育所からの環境学習というのを今年4月から重点的にやったところです。そういうチームまでつくっております。そういう意味では、環境学習は小学校に入ってからではもう遅いと思うんです。物心がつくころからの環境学習、生涯学習をどう瀬戸内でされるのかなということも非常に大事なことになってくるのかなと思いました。
 さらに、個別的にいきますと、例えば、10ページの3)のところで未利用地を何とかしようという話は非常にいいと思います。ここら辺、調べていましたら、シンガポールの土地利用が多くがそうですね、インテリム・ユースということで、一旦、暫定的な土地利用をしておいて、あと将来的に恒久的な土地利用に変える、インテリム・ユースという仕方はインターネットで調べたらいっぱい出てくると思いますけども、とりあえず何らかの形で自然回復しようよというような議論があったと思います。こんなこともぜひ考えられたらおもしろいと思います。
 それから、先ほどの白幡さんの話に絡んでいくんですけど、生物多様性と美しさはどう考えられますか。我々の博物館では、生物多様性こそが美やという人が大分出てきております。そこら辺の議論は、ぜひこれから、結論づける必要はないと思うんですが、生物多様性議論と、先ほどの豊かさ議論と景観性議論、どうするのか、これは日本中でこれからしていかなければいけない問題だと思います。ぜひやっていただけたらと思います。
 それから、地域の参加・協働、私は今、博物館関係で10ぐらいのNPOと一緒に活動しております。今度、六甲山関係で、山のNPOと住吉川の川のNPOと、アマモバンクといって海にアマモを植えているNPOと、その三つが流域ネットワーク、そういうのを設立してやろうというので、地域が結構動いています。足利さんも言われていたように、そういった人々とのネットワークをどう組んでいくかということをぜひやっていただけたらいいと思いました。
 それから、最後、13ページで情報提供、広報の充実と書いておられますが、瀬戸内海というので、ぜひテーマ性を見つけてほしいんです。我々の県の前の貝原知事さんの演説は、良く明治のころの文献引用から始まるぐらい、瀬戸内海の美しさにほれ込んだ人なんですよ。そういう意味で、瀬戸内海がどう美しいのかというのを発信する。これで終わりますけど、我々の博物館で、山陰海岸ジオパークの応援をしているんです。ジオパークの研究部をつくってやっているんですが、そうすると、ジオパーク、ジオパーク言い出したら、結構、日本海の山陰海岸と、それからロシアの海岸線が離れてきたとか、いわく因縁、故事来歴を聞くとものすごく興味が出てくるんですね。そういう意味では、瀬戸内海の楽しさというのをどう情報発信するのかというネタをいっぱい出してこられたらいいかなという気がします。

○松田委員長 大変ありがとうございました。
 中瀬委員さんの人と自然の博物館、私も個人的にはファンで、いろんな活動の拠点になっているところですが、そこでのデータベース化、あるいは環境学習などの知恵もぜひ生かしていきたいと思います。
 それから、ご提案のありました未利用地の利用、それから生物多様性との関係、ネットワーク化、あるいは広報、これも非常に重要だと思いますので、ご意見ありがとうございました。
 私は、交通整理係ですので、次、浜野委員にお願いいたします。

○浜野委員 私は四国にいるわけですけど、沖に出ます。沖に出ると何も見えないわけですね。陸が見えなくなってくる。夜に漁をする。船にはできるだけ長いロープを積んで、水を持ちます。これは、もし電力がだめになって船が流れたときに、生き延びるためのものです。港の前で流れて、そのまま何も持っていない人が、次の日に、例えば室戸岬の沖で船だけ見つかるということが割と最近でもあったりするわけですね。それに比べますと、瀬戸内海というのは、常に島が見えるわけです。漁業をやる上で、陸が見えることがいかに安心感を持つか。先ほど柳先生、庭だとか、そういう話をされて、まさにそのとおりで、これからの漁業生産性を高めるにおいて、これは日本でも最も重要な場所であるというふうに思っています。人命が非常に尊重される時代になってまいりました。そのことを考えます。だから、これは将来の我々の食料の糧としても、非常に重要な場所になると。その自給率を高めない限り、日本というのは国際的になかなか発言力を高めることができない。という意味で、環境省の考え方と違う部分はあるかもしれませんけど、そこは非常に重要だろうと、私自身は、瀬戸内海をそう感じております。
 次に、もう一つ、今報告というか論点いただいた中に、視点が人に偏り過ぎているような気がいたしました。人としてどういうふうにこれを利用するかというのがありまして、生物側からの視点が少ないのかなと。それを感じた一つの理由は、水中については景観のことを何も語られてないんですね。見えないところだというふうに考えられていますから。ただ、生産をする場とか、命を育む場ぐらいにしか思われていない。それがちょっと残念です。非常にきれいな場所だと、潜ってみたらわかりますけど、美しい、いいところがたくさんあるというふうに、私は思っています。
 それともう一つは、13ページにあるんですけど、スラグとか石炭灰というような具体的なものが出てる中に、何かこういうものも実際に文章に含めるのかなと。何となくグレーな部分があるもので判定がついてないようなもの、浚渫土砂は持ってきて動くものですから、私に言わせれば自然から自然なんですけど、何か加工して持って入るものというのは、こういう中に踏み入れるのはなじまないんじゃないかという気がしております。
 その3点、ちょっと申し上げておきます。

○松田委員長 ありがとうございました。瀬戸内海の特徴を含めて、一つは食糧自給率を高めていくというようなことも必要であろう、それから、全体の視点が人間側に偏り過ぎているのではないか、あるいは外から見たという感じが強くて、水中での景観とか生物相についての観点も入れたほうがいいのではないか。それから、少し具体的な技術については、どこまで具体的に表現するか、検討が必要ではないか、大体そういうことだったと思います。ありがとうございました。
 次は、柳委員、お願いいたします。

○柳委員 もういいです。

○松田委員長 いいですか。また発言していただいて。鷲尾先生、よろしくお願いします。

○鷲尾委員 水産大学校の鷲尾です。というより、瀬戸内海の話ですと、明石の漁協職員をやっておりましたので、まさに漁業の立場から、このことについては非常に関心を持っております。
 海苔の色落ち問題が大きくなってきたのは10年前です。そのときから、窒素、りんの削減し過ぎということに着目して、どうにかならんかということをやってきまして、10年たって、ようやくこういう場ができたというのに、非常に感激しております。
 一方、現場の兵庫県など、海苔生産県では、経営体が2割、3割減っていくということが常態化していっておりまして、死活問題であるということで、火を噴いております。そういう意味では、さまざまな声、あるいは政治的圧力も出てこようかという状況になっております。海苔が色落ちするだけではなく、魚も痩せております。明石ダコの味も落ちてきております。漁業生産が落ちているというのは、乱獲のせいだろうというふうに高をくくられますけれども、実態として、瀬戸内海の生物生産の質自身が落ちているということは認識して、それに対処しなければならないと思います。
 今日の話題についてですけれども、先ほどから出ておりますように、内容が非常に並列的であるというところで、網羅的に押さえるという点では、かなりできているかとは思うんですけれども、重みづけをどうするかというのは非常に大きな課題になります。
 先ほど、道、畑、庭というところにも、議論が出ておりますが、私はここに、暮らし、生活というのをぜひ入れていただきたいと思います。各論点、議論の中にもありますように、生活者の知恵、その場での経験というものを反映させていかなければならないわけですけれども、その知恵というのは各要素に対してあるのではなくて、生活総体の経験、あるいは折り合いのつけ方が知恵として働いてきたと思うんですね。だから、ご紹介の中にありましたような、対立関係、トレードオフになるような問題も、日々の暮らしの中では折り合いをつけないといけませんから、何とか三方よしとか、最終的にはウィン・ウィンの関係に持っていくというような工夫がなされてきたわけです。ですから、要素間を並列して、それぞれ頑張るというのではなくて、折り合いをつけるというプロセスをどうするのかというのが、今回与えられた問題に対する次の新しい考え方ではないかというふうに思います。
 そういう意味で、生活という要素をぜひ議論の中に加えていただきたい。もちろん、その中で一番大きいのは漁業であるというふうに私も思っております。しかし、単に海で働く者だけではなく、中瀬先生がおっしゃったような、周辺、瀬戸内圏に暮らす者が、山から海までつながって、この環境をつくってきたということがありますので、そこへの配慮というのは、ぜひお願いしたいところだと思っております。
 それと、社会参画の問題ですけれども、それぞれが力を合わせて一つの問題を解決していくという形から、今日のまちづくりでは、協働、ともに力を出し合って働く、協力して働き合う、そういう関係の中でお互い相手の立場がより理解できて、折り合いのつけ方ができるという、そういう意味で、まちづくりの方法論も、この中に置いていくことが重要ではないかというふうに思っております。そういう意味で、自然科学系のデータで数値目標をつくるのではなく、そういう文化社会的な面で何らかの目標づくりができればいいなというふうに思っております。

○松田委員長 大変ありがとうございました。非常に文化社会的な目標といった大きなご提案もありましたが、全体として内容が網羅的なので、少しこれをウエイトづけしましょうというのは委員会の基本的なミッションでもありますので、今後ぜひ進めていきたいと思います。
 それから、先ほどの道、畑、庭に加えるに、暮らし、あるいは生活といった観点もかなり重要なのではないか。それから、場合によっては対立するかもしれないような中で、このごろの言葉でいうと、さまざまな生態系サービスの中で、それをどうやってバランスさせていくか、折り合いをつけていくかというあたりに注意したいと、そういうことだったかと思います。大変ありがとうございました。
 では、白山さん、お願いします。

○白山委員 だんだんしゃべる内容が残っていないという感じもいたしますけれども、最初に、一番気になるのは、先ほど、省庁間の連携みたいなことが少し書いてありましたけれども、例えば、漁業みたいなことをここで一生懸命議論しても、それは水産庁マターでしょうといって、最後は全然意味がないというようなことになるのが非常に危惧されるということもございまして、ほかの省庁との連携とか、あるいは調整とか、そういうところについて、事務局にはぜひよろしくお願いしたいと思います。あと、特に海洋政策本部みたいな、いわゆる調整のための組織もあるわけで、そのあたりとの連携をしっかりお願いしたいというのが1点でございます。
 それから、全体として、スケールですね、時間のスケールと、それからもちろん平面的なスケールと両方あるのですが、どのあたりを考えたらいいのか、いまひとつはっきりしない。つまり持続可能なというイメージからいうと100年のことを考えなきゃいけないのでしょうかというのが一つあります。それから、場所といっても、瀬戸内海を一つのパッケージで考えるのと、何々灘で考えるのと、あるいはある特定の干潟を考えるのとで、全然視点も、何から何まで違うので、どのあたりの視点で物を考えたらいいのだろうかというのが、いまひとつ整理されていないので、そういうあたりを一度検討してみていただければということをお願いしたいと思います。
 あとは、この中には道という言葉が入っているのですが、それに関する評価とか、影響評価とか、あるいは規制とか、そういうことに関することはほとんど何も書いていないですよね。ですが、現実には海運という人間活動は、環境に対する負荷も結構大きいし、それなりに考慮しなきゃいけない重要なファクターの一つだと思います。少し、海運というものに関する視点を加える必要があるかもしれません。結局、海運というのを考えると、それに対する港というものとか構造物も出てきますし、割に大きなポイントかもしれません。
 それと、先ほど水面の話ばかりで、水が考えられてないというお話でしたが、もっと考えられていないのは海底の話でありまして、実は一旦汚染された海の生態系の中で、一番最後までインパクトが残って、きれいにできないのが海底なのです。水は入れかえてしまえば、一応、基本的にはきれいになるわけですが、いまだに、例えば大阪湾の漁業は、浮き魚類に関してはかなり戻ってきていますけれども、例えば、貝の仲間、二枚貝とか、そういうものの漁業生産は完全に壊滅したまま、全く戻ってきていない。少しその辺にも視点が必要なのではないかと思います。
 それと、ちょっと長くなって申し訳ないですが、あと、今までの瀬戸内の問題というのは有機物に非常に強く焦点を絞っていて、重金属とか、そういう問題はあまり深く掘り下げられていないという印象がありますが、大阪湾の中などでは、重金属のレベルが非常に高いですし、PCBなど、陸域からのいわゆる有害物質と呼ばれるものの汚染の度合いも、それなりに高いということを一度視野の中に入れて、いや、それより有機物が大事だという結論でも結構ですけれども、一旦考えて見てから、全体としてのあり方の将来像を検討していただければありがたいと思います。
 長くなって申し訳ありません。大体こんなところです。

○松田委員長 大変ありがとうございました。一つは、省庁連携というんでしょうか、ほかの省庁の施策との関係をどのように組み立てていくか。私の個人的な感想だと、実は農林水産省とか国交省とか、海に関する政策がかなり生態系とかそういうものに重視というか、ある意味似通っているというか、歩み寄っているような印象もありますので、さらに今、白山委員からありましたように、海洋基本法に基づく事務局が、総合本部が内閣官房の中にありますよね、そういったところにも各省庁から人材が集まっておられると思いますので、そういったところとの関係も重要かなというふうに思いました。
 それから、時間的・空間的スケール、事務局の案の中にも、基本計画の中にあんまり具体的に、いついつまでに何をしなさいというのは書かなくていいというふうになっているというあたりも、何かの形で詰めていく必要があるのかなと。
 それから、道の話としては、単に航路あるいは海運というだけではなくて、道としては当然、港湾ですよね。瀬戸内海の平面図で見ると、実は大阪湾なんかも港湾域は港湾法に基づいて管理されている。大阪港とか堺港とか、神戸港、すごく大きい面積なんですよね。そこが多分、全体の仕組みに与える影響も大きいと思いますので、非常に重要なご指摘をいただいたと思います。
 それから、底質は非常にいろんなもののたまり場ですので、瀬戸内海では化学汚染とか重金属汚染とかが一段落したように思われているけれども、引き続き安心せずに、そういった問題にも対処していただきたい、大体そういう感じでよろしいでしょうか。ありがとうございました。
 さまざまなご意見をいただきまして、大変ありがとうございました。今までの議論を通じて、あるいはこれまでのご意見に対して、さらに追加ですとか、あるいは先ほど発言し忘れたとか、そういったことがございましたらお願いします。

○千野閉鎖性海域対策室主査 すみません、ちょっと補足でございます。
 先ほど、並列で示させていただいて、ちょっとわかりづらいというご指摘がございましたけれども、基本的に、今まで取り組んでいる環境保全ですとか取り組みについて、うまくいっていない部分ですとか、新たな課題に対してこうしていくべきですとかといったものを抽出して、記載させていただいた次第でございますけれども、最終的なこの委員会の報告といったものを考えたときに、項目として環境教育ですとか調査研究の充実ですとか、情報発信といったものはやはり必要となってくるといったものでございまして、今までやっているものについても記載させていただいている次第でございます。
 また、アウトプットといったものを考えたときに、先ほどおっしゃっていましたように、生産のことは環境省ではやるべきではないというか、調整を図っていくべきではないかといったご指摘でございますけれども、基本的に考えておりますのは、瀬戸内海環境保全基本計画に基づいて、今、瀬戸内海というものが保全・再生されてきているんですけれども、実際にやられているのは、例えば関係省庁であれば国土交通省であり水産庁であり、また地方自治体であり、NPOであるといったものでございまして、この基本計画を、この委員会で重点化され、重みづけされたものが今後計画に反映されて、それが各省庁なり地方自治体なり、NPOなり、今やっているものがさらに取り組まれるように、また新たに進んでいくような、ドライビングフォースとなるようなものにつくり上げていきたいといった思いがございます。そういう意味で、並列で示されておりますけれども、具体化して重みづけしていったものは、基本計画に反映させて、推進力としていきたいという思いでございます。以上です。

○松田委員長 ありがとうございました。資料2の1ページ、ちょうど真ん中より上あたりに、瀬戸内法に瀬戸内海の価値として、以下の二つがうたわれていると、世界にも比類のない美しさ、それからもう一つが貴重な漁業資源の宝庫ということで、その下にアンダーラインがありますが、これら二つの価値が保全され、後代に継承されていることが瀬戸内海環境保全特別措置法の目指すべき将来像であるということで、これが瀬戸内法の第3条にあるということなんですが、そもそも論としても、貴重な漁業資源の宝庫を守るということがミッションであると、そういう理解でよろしいですかね。
 そのほか、どうぞ。

○鷲尾委員 先ほどは全般的なことでコメントさせていただきましたけれども、先ほど言いましたように、10年来、色落ち問題というのは非常に切迫してきて、漁業の現場では非常事態の状況にあります。そういう意味で、10年先を目指したような検討というのも一方で大事なんですけれども、とりあえず何か手をつけられることはないかということで、条件の整うところであれば、何らかの社会実験をこの中で行うということは検討できないかということなんですね。
 先ほども出ましたように、多様な議論を経ないと答えが出てこないような問題が錯綜しております。ただ、一つの県であるなり、一つの島の周りであるなり、そういうところをモデルにして、実際に取り組んでみる、緊急に取り組むということも考えられるのではないか。その際には、環境省さんだけではなく、国交省や農水省などの協力も得なければならないかとは思いますけれども、その中に、今から議論することの非常に大きなヒントが得られるんではないかというふうに思います。だから、恒久的な法律制定というところまではいかなくても、社会実験として取り組んでみる。そして、その成否なり、検証というものを長期的なプランの中に生かしていくということ、そういうことをぜひご検討いただけたらと思います。

○松田委員長 ありがとうございます。非常に具体的な進め方についてご提案がありました。この瀬戸内海一律の、全体的な施策にする前に、特定のテーマについては、社会実験のようなものを行ってみて、そういうところで検証しながら今後どうするかを決める、大体そういうような進め方ですよね。ですから、場合によっては、今後社会実験をしたほうがいいようなテーマをまとめてみるとか、そういうことも可能かもしれませんね。ありがとうございます。
 そのほか、いかがでしょうか。どうぞ。

○中瀬委員 この前、茨城県の大洗町に防災の話で行ったんですが、あのときに大洗海岸を見たときに感動しました。瀬戸内海界隈で生きている人間にとって、大洗のあの海岸というのは、全然スケールが我々にとってアウトなんですね。あんな大きい海岸見たの初めてなんです。何を申し上げたいかというと、今これも見ていたんですが、瀬戸内海というのは、きめ細やかな土地利用の集合体なんですね。砂浜も小さい小さい砂浜だし、そういうのがずっとミックスした、いわゆる多様性に富んだ土地利用の集合体が瀬戸内海であると。何かそういったとこら辺の、この瀬戸内海の特性をどこかでばちっと書けないかなと思いまして。多分、瀬戸内海ですね、美しいとか、いろいろ言っているんですが、島がいっぱいあって、土地利用がわっと入り組んでいて、そこに集落がうまく点在しているという、何かそんなことをどこかで書いていただいたら、共通のイメージがつくれるかなと思います。

○松田委員長 ありがとうございました。こういった施策の基本情報となる瀬戸内海の特徴みたいなものをなるべく生き生きと表せないかと、そういうような感じでしょうかね。ありがとうございました。
 そのほか、いかがでしょうか。何か、言い残したこととか。あまり先の話を言っても何ですが、恐らく、今までの議論を踏まえて、事務局で少しステップアップしたといいますか、もう少し絞り込んだり、整理したりした案を次までにつくっていただくというような進め方になると思うんですが、よろしいでしょうか。ぜひ、この際というご意見はございませんか。

○大塚委員 社会実験も大事だと思うんですけども、さっきの海苔の色落ちとかの問題に関して、9ページに書いてあるような、窒素とかりんの規制によってどういう現象が起きているかという検証は、どの程度進んでいて、今どういう段階にあるかというのをお伺いしたいところなんですけど、これは科学的な話なので、現状をお伺いしたいんですけども、いかがでしょうか。

○松田委員長 これはどなたかあれですか。志願して説明したいという方はおられますでしょうか。これは、またちょっと宿題といいますか、よろしいですか。

○大塚委員 その辺がわからないと、総量管理の議論が非常にしにくいんじゃないかという気がしたものですから。

○松田委員長 わかりました。いろいろな取り組みとか、実験的なことも行われていると思いますので、承りたいと思います。
 そのほか、いかがでしょうか。どうぞ。

○足利委員 ところどころで里海という言葉が登場するんですけれども、里海は柳先生が提唱されていて、私も里海というのは、ああ、すごくいい言葉だなというのをずっと思って、活動に使わせていただいてきたんですけれども、どうも最近、里海がどんどん一人歩きしていって、里海の概念自体、受け止め方が、いろんな形に変わってきているのかなというのがすごく気になるんですね。この中で、里海とはどういうものかというのは、1回きちんとしておいたほうがいいのかなというのを感じました。
 最近、里海という名のもとに、どんどん耕耘したりとか、いろいろいじればいいというような感じがなきにしもなんですね、現場にいると。そうではなくて、適正な漁業資源の管理と保全というか、環境の保全とかも含めて里海であって、そこに生業としている人たちがいるのは前提なんですけれども、何か言葉だけが歩き始めて、手を入れること自体が里海みたいな認識になりがちなのかなと、私はちょっと感じているんですけど。

○松田委員長 ありがとうございました。里海論がいろんな意味で広まって、ある意味で、皆さんで議論されるようになったり、説明がありましたように、さまざまな制度のようなものに入っているのはいいんだけども、ある意味、ひとり歩きしている部分があるので、何か一定の歯止めが必要じゃないかと、そういうようなことかと思います。ありがとうございました。
 そのほか、よろしいですか。
 それでは、ちょっと時間の関係もありますので、今後は、ただいまいただきました議論を事務局で整理の中に使わせていただくということで、少し宿題が重いかもしれないですけども、よろしくお願いしたいと思います。
 それでは、3番目の議題として、今後の進め方について、ご説明をお願いしたいと思います。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐 それでは、本企画専門委員会の今後の審議の進め方についてご説明をさせていただきます。
 資料3をご覧ください。こちらに審議の進め方について記載をしておりますが、先ほどもいろいろと委員から幅広いご意見もいただきまして、瀬戸内海、生活という視点も大事であるというお話もございましたし、今回の委員会、瀬戸内海という具体的に特定の場所を対象とした検討ということで、その地域におられる方々の意見を聞いていくということが非常に大事なことであると考えております。
 そうしたことから、資料3の1番の進め方のところに書いてございますように、いろいろな関係、文化ですとか、歴史、生活といったところの瀬戸内海との関わりを広く住民の方々から意見を聞いて、この委員会としての取りまとめを行っていく。意見をお伺いするには、非常に幅広いテーマでございますので、ある程度議論が発散してしまわないように、具体的な案といいますか、考え方というのを提案をさせていただいて、それに対するご意見を伺うということでございますとか、あるいはまた、それぞれ具体的な取り組みといたしましては、それぞれの主体、地域が主体となった取り組みという考え方も重要であろうという、そのあたりを留意をして進めていきたいと考えておるところでございます。
 そうしたことから、1枚目の真ん中のところにございますように、比較的早い段階からいろいろな方々の意見を聞いて、案を取りまとめて、また再度、意見をお伺いするという進め方を検討しておるところでございます。
 2番のところで、具体的な意見の収集、募集について少し記載をしてございますが、意見を求める検討項目といたしまして、現行の施策、取り組みに対する意見でございますとか、本日、今いろいろご意見をいただきました瀬戸内海の将来像、それから今後の保全・再生のあり方についての意見を聞いていきたいということで、本日のご意見を踏まえて、意見を求める際に使用する資料等を用意してまいりたいと考えてございます。
 その方法として、1枚目、最後のところ、対象としては、瀬戸内海に関係する各機関ということで、1枚目の裏側に参りまして、各省庁、自治体、業界団体、学識経験者、NGO、一般市民の方々と、広く意見を聞いてまいりたいと。その中で、比較的広域的な機関、瀬戸内海全般について関わっているところからのご意見というのは、次回の企画専門委員会の中でのヒアリング等を考えておるところでございます。また、それぞれの地域で取り組みをされておられるところについては、現地での小委員会という形での意見の聞き取り、それからさらに幅広くということで、一般市民の方々を対象にした意見の募集、公募ということを考えてございます。
 3番のところ、企画専門委員会による意見の聴取といたしまして、広域的な機関等を対象として専門委員会において意見を聴取するということで、先ほど委員からも、関係省庁との連携というご指摘がございましたが、自治体、研究者、業界団体のほか、関係省庁からもご意見を伺うというようなことも検討してまいりたいと考えてございます。
 それから、4番が現地小委員会、ここでは仮に現地小委員会という呼び方で記載をさせていただいておりますが、現地において関係者からもご意見を聴取するということで、瀬戸内海と一言で言いましても、それぞれ湾・灘によって状況が異なってくるということから、それぞれ、より現場に近い方々から意見を現地でお伺いする機会というのを持っていきたいと考えてございます。主として地方自治体、いろいろな事業者の方々、NPOの方々ですとか、先ほど中瀬委員からもいろいろ地域で活動しておられる方々がおられるというお話もございました、そういった方々からできるだけご意見を直接お伺いするようなことができればと考えております。ただ、瀬戸内海は広うございますので、対象としては、大体、西部・中部・東部という大きく三つぐらいに分けて、そういう場を持っていくのかなというところで検討をしておるところでございます。
 現地小委員会の進め方等、[4]のところで書いてございますが、本日のご意見を踏まえまして、具体的な調整を行いまして、次回、第2回の企画専門委員会で改めてご提示をさせていただければと考えてございます。
 それから、3ページ、本企画専門委員会、全体の審議スケジュールを図で示してございます。本日は第1回ということで、次回、11月頃ということで記載をしてございますが、本日のご議論を受けた整理と、先ほど申しました広域的な取り組みを実施されている機関からの意見を伺うというふうなことを次回やってまいりたいと考えてございます。
 次回でご確認をいただいた内容で、現地でそれぞれ意見を聞く、あるいは一般の方々から意見を伺うというようなことをやりまして、そのあたりから出てきたご意見を踏まえて、第3回、第4回と、本委員会での取りまとめを進めてまいりたいと考えております。
 その段階で、一度中間報告という形で、瀬戸内海部会、親部会に報告を申し上げ、また親部会の意見を聞く、それからある程度、取りまとまった形で、また再び一般意見を募集しまして、ご意見を聞くということを踏まえて、最終的な取りまとめ、最後、第12回の瀬戸内海部会、24年6月頃と書いておりますが、また最終的な取りまとめについては、親部会に報告をさせていただくと、このようなスケジュールでご提案をさせていただきたいと考えております。
 以上でございます。

○松田委員長 ありがとうございました。今後の進め方について、特に、本日の委員会だけで審議を進めるのではなくて、さまざまな機関ですとか、関連の方からお話を聞いたり、あるいは現地小委員会的な、より現地に即した会も持ちながら進めるという話、それからスケジュールとして、来年6月の瀬戸内海部会ぐらいまでの時間スケジュールでのあらかじめの予定をご説明いただきました。
 これについてご質問、あるいは進め方に対するご提案とか、ご意見ありましたら、ぜひお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

○鷲尾委員 言わずもがなのことですけども、こういうことを自治体に問い合わせ、聞き合わせをされる際に、そこの環境部局だけですと偏りますので、それぞれの自治体の港湾、土木関連、あるいは農水関連も含めて、ぜひ意見を集めていただきますようにお願いしたいと思います。海岸漂着ごみの問題なんかも、別のところで取り組んでいただいていますけども、やはり関連部局が多くなりますので、自治体の環境担当だけでは対処できないことにつながってまいりますので、ぜひそのあたり、ご配慮願いたいと思います。

○松田委員長 具体的なご提案ありがとうございます。これは連絡や情報を流すときに、そういったご配慮をお願いできますでしょうか。ありがとうございました。
 そのほか、いかがでしょうか。
 それでは、今の鷲尾委員からの提案を含めて、先ほどご説明いただいたような形で今後進めることになると思いますので、引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 それでは、(1)(2)(3)の議題について、ここまで進めてまいりましたけれども、全体を通じてとか、あるいは先の議題で、少しつけ加えたいことがあるとか、そういったことがありましたら、全体を通しての議論をお願いしたいと思います。

○柳委員 さっき、海のことが何か対策がいるのではないかと言われて、委員長は港湾のことを言われましたけど、具体的にはバラストとか、有機水銀の話を考えているわけでしょうか。

○白山委員 それだけではないですね。例えば、油の汚染のこととか。

○柳委員 船が出す油。

○白山委員 ええ、そういうことも結構聞いています。

○松田委員長 文章の構成としては、道というのが書いてあるのに、それに対する言及がないというか、初めはそういうきっかけですよね。それについてはご検討いただけますか。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐 はい。

○松田委員長 ありがとうございました。
 それをどの程度重視するかは、また次の会議なりで検討させていただきたいと思います。

○柳委員 さっきの栄養塩の話なんですけど、社会的実験をしていて、実は今、兵庫県で、ため池を冬の間に干して、ため池の栄養の高い水を流すとか、博多湾では、今までのりん収支を全部まとめて、現在、もうDIPは特に冬はなくなっているので、下水局にそのデータをもとに振り出してくれと申し入れているんですね。ただ、問題は、栄養塩を増やしても、海苔に行くという保証がないんですよね。特に播磨灘の場合は、ユーカンピアとか、コシノディスカスという大型の珪藻が最近冬に出るようになって、そいつが栄養分をとっちゃうんですよね。だから、増やしたら必ず海苔がもとに戻るという保証があれば、多分すぐ出すと思うんですが、行政も踏み切れないんでしょうね、今。

○鷲尾委員 やりたくてたまらないところでもあるんですけれども、やはり瀬戸内法という大きな枠組みがありますので、それを逸脱した実験をするわけにいきません。ですから、そういう規制値の範囲内で、下水処理場の調整運転という形で夏は絞り込むけれども、冬は少し緩和する。規制値以下ですけれどもね。そういう運転をしていただいて、放水口近くでは、改善の兆しもあります。
 ただ、今、柳先生がおっしゃったように、大型珪藻が食ってしまうということもあります。ただし、その大型珪藻はいつから出てきたかというと、瀬戸内法の取っかかりで、りん規制をかけてりんだけどんと落ちた、あのときからなんです。窒素過剰な環境下では、大型の珪藻がわきやすいということも知見としてあるようですので、そういうことが引き金で、要は生態系の栄養の流れ方が変わっている可能性があると思うんです。そういう意味で、窒素、りんのバランス、小型のエネルギー循環の早い種組成が中心になるように持っていければ、かつての瀬戸内海のプランクトン組成に似てくるのではないかということを期待しておりますが、その辺は、やってみないとわからないという面もあります。

○柳委員 今の話に関しては、瀬戸内海研究会議という、これは松田委員長が会長ですけど、そこに委託研究を受けて、今から2年の間に答え出しますけど、鷲尾さんが言ったように、単に栄養塩の量だけじゃなしに物質循環の全体の仕組みというか、だから、今やっているのは栄養塩と干潟、藻場と、あと底質からの溶出の話を含めて研究をやっているので、多分2年後には、しっかりした答えが出ると思っていますから、ちょっと待ってください。

○松田委員長 いろんな情報をありがとうございます。ある意味では、社会実験的なものが、例えば岡山県でも、吉井川・高梁川水系のダム湖の緊急放流とかやっていますし、そういったものも実際どんな状況なのか、例えば、先ほどの現地小委員会でしょうか、ああいったものの中でも情報を集めながら、取りまとめに役立てていけるといいかなというふうに思います。
 そのほかに、全体を通じてございますか。よろしいですかね。
 それでは、これで一応、私の担当のところを終わりまして、事務局にお返ししますが、何か連絡等がございましたら、お願いいたします。
 どうも長時間のご審議、ご協力ありがとうございました。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐 ありがとうございます。
 連絡事項でございますけども、本日の議事録についてでございますが、速記がまとまり次第、各委員にお送りをさせていただきたいと思いますので、ご確認をお願いいたします。全員のご確認をいただきましたものを、環境省のホームページで公開をさせていただきたいと考えてございます。
 また、次回の委員会の日程につきましては、改めて調整をさせていただきたいと考えておりますので、ご協力よろしくお願いいたします。
 以上、本日はいろいろとたくさんの貴重なご意見を賜りまして、どうもありがとうございました。以上をもちまして、本日の第1回の企画専門委員会を閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。

午前11時58分 閉会