平成20年11月26日(水)14:00~15:27
都道府県会館4F 401号室
資料 | 微小粒子状物質リスク評価手法専門委員会報告案 |
【岡部課長】 皆様、お待たせいたしました。定刻となりましたので、ただいまより第6回の微小粒子状物質のリスク評価手法専門委員会を開催させていただきます。
委員の皆様方におかれましては、ご多忙中にもかかわらずご出席いただき、大変ありがとうございます。
本日のご出席の状況につきまして申し上げます。現時点で9名の委員の方々にご出席をいただいてございます。定足数でございます過半数に達しているということをご報告させていただきます。
お手元に、議事次第の紙をつけまして、資料配付をさせていただいております。
資料として、微小粒子状物質リスク評価手法専門委員会報告案でございます。ご確認ください。
もし、マスコミの方、いらっしゃっておられましたら、カメラ撮りにつきましては、恐縮ですが会議の冒頭のみとさせていただいておりますので、ご協力方お願い申し上げます。
それでは、これ以降の進行につきまして内山委員長にお願いを申し上げます。よろしくお願いします。
【内山委員長】 今日は、お忙しいところ、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
今日も2時から5時までと3時間とってございますが、前回までの議論を踏まえまして、できれば、今日取りまとめということでございますので、また、いろいろご議論のほど、よろしくお願いいたします。
早速、議事に入りたいと思いますが、議題1の微小粒子状物質リスク評価手法専門委員会報告案の審議でございます。
前回の会合におきまして、ご審議をいろいろいただきまして、また、宿題あるいは修正点をいただきました。基礎的な考え方、それから、解析に用いる信頼できる疫学知見の抽出の考え方、定量的解析手法について、この部分につきまして、前回からの修正点についてご確認いただいて、その後、私の方を中心としてまとめさせていただきました「はじめに」という部分、目的及び背景、それから、まとめについても、今日ご審議いただければというように思っております。
それでは、前回からの修正点につきまして、作業会合を代表いたしまして新田委員の方から、特に修正点のところを中心にご説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
【新田委員】 それでは、私の方から、前回、専門委員会でご議論をいただきましてご意見が出た点を中心に、作業会合のメンバーを中心に修正をいたしましたので、ご説明をさせていただきます。
本日の資料では、前回の資料1、2、3に当たるところが2章、3章、4章に当たります。
まず、2章では、前回色々なご議論をいただきました点、まず、5ページの2番目の段落にございます「微小粒子状物質の健康影響の現れ方は」というところの段落でございます。前回の専門委員会では、有害大気汚染物質に関しての記述がここに入っておりまして、香川先生等からご意見をいただきました。基本的には削除した形になっておりますが、それをその前のページ、4ページの2の2節、これまでの環境目標値設定の考え方の最後の段落でございますが、「一方、有害大気汚染物質については」というところで、5ページでご議論があった点が既に4ページのところで記載されているということで、繰り返し、しかも、少し誤解を招くような表現というところでありましたので、削除という修正をさせていただいております。
引き続き2章に関しての修正点ですけれども、日本において、今回、微小粒子状物質のリスク評価をどういう基本的な考え方でという点がやや不明確であるというご趣旨のご発言もございましたので、6ページの基本的な考え方のまとめ的な段落でございますけれども、一番上のところ、本日の資料では「我が国においては」というところから始まる文章ですが、ここを、今申し上げたように「我が国においては、大気汚染が人の健康に好ましからざる影響を与えることのないように、微小粒子状物質の健康リスクに関する現状を踏まえた手法を採用することが考えられる」ということで、基本的スタンスをここで述べて、具体的な「健康影響を生ずることが確からしいとされる濃度水準を見出し」というような、「環境目標値の目安となる数値を検討する際の出発点」に関する考え方をこの段落で示すということを、より明確にしております。
2章に関しましては、その他細かい、いわゆる「てにをは」の点、修正しております。基本的には、主語が不明確な点について主語を明確にする、それから、文章の長いところを句読点で区切るというようなことで、読みやすさという点での修正でございますので、省略させていただきます。
それから、3章の方の修正点でございますが、ここは統計的なモデルの表現を、より正確を期すということで、椿委員の方からコメントをいただいて、そのコメントに沿った修正をさせていただいております。結論に至るところで大きな影響を与える点はないというように考えておりますけれども、統計的な表現として、例えば14ページの2段落の中で一般化加法モデル、GAM、ガムと呼んでいるものの説明のところ、「統計モデルとしては共変量の非線形な影響に対する柔軟な調整が可能な一般化加法モデル」というのを、その修飾語のところを修正しております。
また、16ページの統計モデルの相違のところで、やはりGAMの説明のところ、16ページの最後のところの段落でございますが、「短期曝露による影響に関する時系列的な解析についてはGAMが最もよく用いられてきた」と、このあと「この手法は」というところのGAMの説明を少し追加修正しております。基本的に「ポアソン回帰モデルを含む一般化線形モデルのノンパラメトリック回帰への拡張である」というような表現は、この中に既に前回の資料にも含まれておりましたけれども、ここを整理して、かつ、GAMの問題点としてパラメータ推定の際の収束条件のことは書いておりましたが、自由度の恣意的設定の問題があるということで、それも加えた形で、ここで表現をしております。
それから、前回の専門委員会でもご指摘いただいた点で、17ページの3の2の3節の中ですけれども、共存汚染物質に関する問題点をより明確にということでございましたので、3の2の3節の中ほどでございますけれども、「微小粒子状物質と共存大気汚染物質との相関が高く、いわゆる多重共線性がみられる場合や相互作用がみられる場合には」ということで、多重共線性という、統計的なこの種のモデルの中で見られる問題点、それから、相互作用の問題で偏りが生ずる場合があるというようなことの説明を加えております。
3章に関しましては、大きいところは以上です。
それから、続きまして、4章の定量的解析手法でございますが、まず、冒頭の説明のところ、これは前回の専門委員会の資料の3の中では、本日の資料で申し上げますと22ページの4の2、国外の定量的解析手法というところでこの説明が入っておりました。これを4章の冒頭に移しております。
それから、4.2.1.1.長期曝露影響に関して、国外の定量的解析手法の紹介ということで、基本的にはWHO、米国のEPA並びにカリフォルニア州EPAの評価手法の紹介をここで述べていたわけですけれども、前回の資料で少しその3機関の手法に関して、飛び飛びの記述になっていたようなところもございまして、流れがわかりにくいということがございましたので、内容は変わっておりませんが、段落等について少し前後を入れかえて、初めの方にEPAの考え方を紹介して、引き続きWHOの考え方、最後に25ページの冒頭ですけれども、上の段落ですけれども、カリフォルニア州EPAの考え方ということで、どの機関の基本的な考え方かということがより明確にわかるように整理をいたしました。内容的には段落ごと、もしくは文章を入れかえたと、順番を入れかえたという修正になっております。
それから、28ページの4.3でございますけれども、不確実性に関しての表現で、Coxの比例ハザードモデルのところで、ここも先ほどのGAMの説明と同様に、少し統計的な意味で、より正確な表現に変えているところがございます。本質的な修正ではございません。
それから、同様に30ページの最後の方でGLIMという一般化線型モデルに関しての説明に関しましても、より統計的な意味で正確を期すということで表現を変えております。
2章から3章、4章に関しまして、先ほど申し上げましたように、主語が少しあいまいなところに言葉を足した点、それから、字句を修正した点、それから、用語の統一を図った点がございますけれども、大きな修正点としては今ご説明したとおりでございます。
以上です。
【内山委員長】 ありがとうございました。
ただいまご説明ありました2章から4章について、ご質問、ご意見、あるいは前回の修正点、まだ十分でないというようなご意見ございましたら、お願いいたします。よろしいですか。
あと、新田先生、細かいところで、平均的な濃度のデータのところで影響が強く出るとかというようなところの細かい修正がありましたね、ちょっと。もう一回読み直しておきますと言われたところ。あれはどこでしたっけ。
【新田委員】 それは25ページの冒頭のカリフォルニア州EPAの紹介として、ここに記載しております。前回の資料では、米国のEPAの方の紹介のところと少し流れが混線するような記述になっておりました。基本的には田邊委員の方からご指摘いただいた点は、カリフォルニア州EPAの文章に記載されている内容でございます。そういうような記載がございますのでそのまま残しておりますけれども、前回の資料ですと、EPAの資料からの引用にも受け取られるところがございましたので、そこを整理して、25ページの上の段落にまとめております。
【内山委員長】 加藤先生。
【加藤委員】 27ページですけれども、これ、作業会合でも何度か議論になった点の繰り返しになってしまうのですけれども、27ページの3番目の段落の3行目です。「死亡率・morbidity」となっているのですけれども、やっぱり、日本語の言葉と英語が組み合わさって入っているというのが、作業会合でも、これを残すか残さないかと議論しましたのですけど、やっぱりちょっと、でき上がってみると、何か違和感があるかなという感じがちょっとしますけれども。
【内山委員長】 なるべく英語の部分、あるいは横書きの部分は日本語にということでやってきたのですが、morbidityだけがこのまま、いい日本語訳がなかったので英語のまま残っていますが、新田先生、何かお考えはありますか。
【新田委員】 何か漢字の単語として的確な、誤解を招かないような表現というのはなかなか難しいのかなと。辞書を引いても色々な表現で出てまいりますが、ここでの趣旨、元々EPAの文書、それからWHOの文書等に英語で、この環境汚染の健康影響の文脈で使われているmorbidityは、死亡以外のエンドポイントを全部まとめたような概念になっております。ですから、何か罹患率とかというような用語を当てはめるのは、ちょっと用語として狭過ぎるような気がいたします。4月に報告がありました健康影響評価検討会の報告書の中では、書き下したような形で、死亡以外の健康影響指標というような、説明的な日本語として置きかえております。私としては、文章の綺麗さよりも、正確を期して、morbidityという英語は確かにご指摘のように違和感をちょっと持ちますので、やや説明的ですけれども、前回の健康影響評価検討会報告書で使ったような説明的な日本語をここにあてはめるということでいかがかなと思っております。
【内山委員長】 前回のところでは、死亡以外の健康影響指標ということで、いわゆる、一般にmorbidityというと罹患率と言ってしまうのですけれども、どうもここで使っているのはそのようなものではなくて、もっと広いものだということは何回か議論されたのですが、死亡率に対するような一つの熟語として余りないので、ちょっとこのままになっていますが、いかがですか。死亡率・死亡率以外の健康指標というような。
富永先生、どうぞ。
【富永委員】 あえて日本語をというと、morbidityは罹患率というよりも有病率が近いですね。というのは、罹患率というと、どうしても一定期間の新しい疾患の発生ということになりますけれども、有病率というと、病気がある率、そのポイント、その時点での率、あるいは、一定期間での率、必ずしも新規発生でないもの。だから、一番実態に合いまして、罹患率という言葉が一番よく使われるのはがん登録、あるいは循環器疾患登録、感染症のようになると思いますので、余り満点というのか、パーフェクトではありませんけれども、有病率が近いし、疫学の教科書では大体そういう言葉が使われていると思います。
【内山委員長】 ただ、ここでは率という形では使っていないのですよね。富永先生、ここでは率という形では使っていないので、数の場合、入院数の場合もあるし、回数という場合もあるし、だったと思うのですが。
【富永委員】 いや、でも、全体の死亡率となっていますから、それに対するポツで、対するのは率じゃないかと思うのです。数といったら、全然、分母によりまちまちになりますし、大きさの判断ができませんので、やっぱり、人口1万人当たりとか10万人当たり、この時あるいはこの期間という率でないといけませんので、有病率の方がいいと思いますが。
【内山委員長】 新田先生、それでよろしいですか。
【新田委員】 私、「有病率」と書いて、いわゆる英語で言いますと、prevalenceの訳と誤解をされないように、何かさらに括弧書きでmorbidityとかというようなことの方が、誤解がないのかなという気もしますが。文章全体を、この報告書を読んでいただければ、morbidityがそういう広い概念だということは、全体としては誤解がないことだろうとは思っております。
【富永委員】 新田先生の言われるprevalenceは、日本語で何ですか。
【新田委員】 通常、有病率、有症率と訳しているのかなと。
【富永委員】 有症率というと症状ですね。有病率というと、何か診断基準によるちゃんとした病気ですね。ですから、それは同じことです。ですから、有病率に一番近いのはincidence、これは罹患率ですね。じゃなくて、prevalenceになりますので、それでいいのではないかと。誤解されることはないと思うのです。それが正解じゃないかと思っているのですけど、祖父江先生、どうですか。
【祖父江委員】 いや、何かやっぱり、prevalenceの方がスペシフィックなテクニカルタームのような感じがしますね。morbidityはちょっと、新田先生が言われるようなブロードな意味が合うようで、特定の日本語にちょっと対応しにくいという気はします。
【富永委員】 日本語ではそうかもしれませんが、実態として疫学調査をやった場合には、そういうものになると思うのですが。incidenceがprevalenceになってしまうと思いますが。
【祖父江委員】 そうだと思うのですけども、ですから、ここのmorbidityの訳語として、有病率、罹患率、どちらか1個を選択するというのは、ちょっと難しいかなと思いますけども。
【内山委員長】 わかりました。そうしたら、ここは、例えば、死亡率以外の健康影響指標と書いて(morbidity)と、morbidityはそのまま残しておくということでいかがでしょうか。
【新田委員】 もう一点よろしいですか。さらに、ちょっと議論が混乱するようなことを申し上げて恐縮ですが、ここの27ページのところは、リスク削減予測に基づく影響度評価手法という、いわゆるrisk-basedの具体的なリスクの推計の手順での文脈で出てくるmorbidity、28ページにも同じようなmorbidity、英語になっておりますが、ここも、基本的にここの説明はリスク削減予測の文脈ということで、ここに関しまして、morbidityは入院率とか、そういう具体的なものですけれども、疫学知見の、疫学研究で用いるエンドポイント全体で言えば、morbidityというようなものに関しましては、例えば、肺機能の伸び率みたいなものも含めて、どのエンドポイントをすべてmorbidityと、非常に広い意味で使っている文脈と狭い意味で使っているもの、一部使い分けているようなところもございます。ですから、ちょっと、この文脈で言えば、富永先生がおっしゃるような用語でも、基本的には、全体の中でのmorbidityの使い方よりも誤解が少ないのかなという気がいたします。
【内山委員長】 そうしますと、新田先生は、この場合だったらば、罹病率なり有病率でいいということ、この文脈の中では。28ページの方のmorbidityはどうですか。これもそれでよろしいですか。
【新田委員】 ここも同じですね。
【内山委員長】 そうすると、報告書の方では全体のmorbidityのあらわし方としては、死亡以外の健康指標ということで言っているので、ここでは定量評価の削減手法のときに用いるものということで、日本語的に訳してしまっても間違いではない、と。はい、わかりました。それでは、ここはそのように直させていただくことでよろしいでしょうか。
(了承)
【内山委員長】 ありがとうございます。
その他にいかがでしょうか。椿先生、どうぞ。
【椿委員】 大変細かいことで恐縮で、私がちょっと修文させていただいたときに漢字等を間違えてしまったのが2点だけありますので、それだけご報告させていただきます。
まず17ページ、先ほど新田先生がおっしゃったとおりで、従来、このGAMのソフトウエアの収束条件以外に恐らく自由度の問題があって、「実効自由度」の「効」という字が「行」となっているのですが、これは効率とか効果の「効」の方でございます。大変申しわけありません。失礼いたしました。
それから、2点目ですが、30ページで、最後のパラグラフの上から3行目で、「大気汚染物質濃度と健康影響事象の時間単位の頻度との間に対数リスク関数を想定し」となっているこの「リスク」が「リンク関数」、その下にも何カ所か使われていますけれども、「リンク関数」の誤りでございます。大変申しわけありません。恐縮でございます。
【内山委員長】 はい。よろしいでしょうか。後ろの方は、30ページの最後のパラグラフの3行目ぐらいでいいですか。対数リンク関数。
【椿委員】 はい。「リスク」を「リンク」に直していただければと思います。
【内山委員長】 ありがとうございます。それでは、それはそのように修文させていただきます。
よろしいでしょうか。香川先生、何かよろしいでしょうか。
そうしましたら、まず、とりあえず、1の目的、背景及び5のまとめで、それで最後にまた全体的なこともご議論いただくかもしれませんので、次の目的及び背景ということについて、それから、第5章のまとめということで作成しましたので、これは事務局から読み上げていただいて、その後にご議論いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
【松田課長補佐】 それでは、第1章と第5章の目的及び背景、まとめについて読み上げさせていただきます。
まず、資料の1の1ページ目ですが、目的及び背景。
「我が国では、粒子状物質に関する取組みとして、大気中に比較的長く浮遊し、呼吸器系に吸入される粒径10μm以下の粒子を浮遊粒子状物質と定義して、昭和48年に環境基準を定め、総合的な大気環境保全施策を進めてきた。近年、これらの浮遊粒子状物質の中でも粒径2.5μm以下の微小粒子状物質(いわゆるPM2.5)が呼吸器系の奥深くまで入りやすいこと、粒子表面に様々な有害な成分が吸収・吸着されていること等から健康への影響が懸念されるようになり、欧米においては浮遊粒子状物質に加えて、このような微小粒子状物質の環境目標値を設定する動きが生じた。米国では微小粒子状物質の大気環境基準が1997年に設定された後、2006年9月に基準の改定が行われた。WHO(世界保健機関)では、微小粒子状物質の環境目標値に関するガイドライン2005年版(WHO,2006,以下「WHO 大気質ガイドライン」という)を2006年10月に公表した。また、EUにおいても、2008年6月にPM2.5の限界値に関するEU指令が公布された。
一方、我が国においても、これらの動向を踏まえ、環境省では、平成11年度(1999年度)より「微小粒子状物質曝露影響調査研究」を開始し、平成19年7月にその成果をとりまとめ公表した(環境省,2007)。さらに、微小粒子状物質(PM2.5)に係る健康影響を評価する「微小粒子状物質健康影響評価検討会」を平成19年5月から開催し、国内の調査研究結果やその他の国内外の科学的知見を踏まえ、平成20年4月に検討結果が、「微小粒子状物質健康影響評価検討会報告書」(環境省,2008)としてとりまとめられた。
上記報告書では、従前から認められている粒子状物質の呼吸器系への影響がみられるとともに、新たに微小粒子状物質による循環器系や肺がんの健康影響もみられ、総体として一定の影響を与えていることが示された。また、微小粒子状物質の測定精度の改善や生成機構等の情報整理といった課題とともに、環境目標値設定のための定量的リスク評価に係る手法については充分に検討すべきとされた。
これを受け、微小粒子状物質の定量的なリスク評価手法について審議するため、平成20年6月、中央環境審議会大気環境部会に本専門委員会が新たに設置され、微小粒子状物質に係る定量的リスク評価手法に関する専門的事項を調査審議することとされた。
専門委員会では、各国機関より公表されている資料や、平成20年7月から8月にかけて実施されたWHO、EPA及びカリフォルニア州EPAへの加藤委員、武林委員及び新田委員による現地調査結果を踏まえ、これらの機関のリスク評価手法の分析・整理を行った。さらに、短期及び長期曝露に関する国内外の疫学知見の情報も踏まえて、リスク評価手法に係る基礎的な考え方、解析に用いる信頼できる疫学知見の抽出の考え方、定量的解析手法について、審議を重ね、その成果をとりまとめたので、ここに報告する」。
それで、後ろの方にいきまして、ページ数でいきますと、35ページからがまとめでございます。
5番、まとめ。
「本専門委員会では、欧米におけるリスク評価手法に関する調査結果や国内外の知見を踏まえ、リスク評価手法の[1]基礎的な考え方、[2]信頼できる疫学知見の抽出の考え方、[3]定量的解析手法に関する微小粒子状物質のリスク評価手法の審議を進めてきた。ここでは、一連の審議により得られた成果についてまとめる。
(1)リスク評価手法の基礎的な考え方。
微小粒子状物質については、様々な不確実性の存在にもかかわらず、微小粒子状物質が総体として人々の健康に一定の影響を与えていることが、疫学知見ならびに毒性学知見から支持されている。この微小粒子状物質の健康影響は、現下の大気環境においては、個人の健康への作用として日常的に臨床の場で観察されるものではなく、比較的小さな相対リスクが幅広い地域において疫学的に観察されるものである。しかし、微小粒子状物質の疫学知見に基づく評価においては、様々な不確実性が存在し、集団における微小粒子状物質への短期的、長期的曝露に対する影響に閾値の存在を明らかにすることは難しい。このため、微小粒子状物質の濃度が低い環境下においても幾らかの残存リスクはある可能性は否定できない。我が国においては、大気汚染が人の健康に好ましからざる影響を与えることがないように、微小粒子状物質の健康リスクに関する現状を踏まえた手法を採用することが考えられる。したがって、当面、現下の大気環境においてみられる一般地域集団における健康影響を低減していくという公衆衛生の観点を考慮し、疫学知見に基づく曝露量-反応関係から健康影響が生じることが確からしいとされる濃度水準を見出し、それを微小粒子状物質の環境目標値の目安となる数値を検討する際の出発点にするのが適当と考える。
この環境目標値の設定に関する検討に際して、主として以下の事項の内容も含めることが適当である。
1)毒性学の知見も踏まえた健康影響メカニズムを含めた総合的な評価が必要であること。
2)大気汚染物質の影響に対してより敏感と考えられる高感受性者・脆弱者の健康影響にも慎重に配慮することが必要であることから、高感受性者・脆弱者が含まれる人口集団を対象とした疫学知見に基づいた検討を加えること。
3)考慮すべきエンドポイントは科学的知見の総合的かつ包括的な評価から、疫学的因果関係を示している可能性が高いと考えられる様々な重篤度の健康影響の中から選択するべきであること。
4)長期曝露ではより低濃度で慢性影響が起こり、短期曝露ではより高濃度で急性影響が起こると考えられる場合には、曝露期間による健康影響の発生に質的な差があるかを評価した上で、それぞれの環境目標値設定の必要性を検討すること。
(2)解析に用いる信頼できる疫学知見の抽出の考え方。
大気汚染物質への曝露による健康影響を評価するための疫学研究は、様々な手法が適用されている。この中でも、長期曝露による影響をみる方法としてはコホート研究が優れており、短期曝露による影響をみる方法としては時系列解析よる研究が優れている。
これらの手法を用いた研究も、曝露評価統計モデル仕様、共存大気汚染物質などの交絡と影響修飾曝露と健康影響の時間構造に関する不確実性が存在することにも考慮し、複数の疫学知見によって総合的かつ包括的に評価すべきである。
定量評価を行うべき具体的な疫学知見の選定にあたっては、短期曝露と長期曝露による影響について広範囲なエンドポイントに関する質の高い疫学研究を評価の対象とすべきである。特に、対象者の暴露指標として、十分な期間について、空間的な代表性をもった微小粒子状物質の実測値、ないしは適切な方法による推計値が示されている研究を採用することや共存大気汚染物質についても適切な評価が行われていること等、曝露評価が適切に行われていることが必要である。
国内知見と国外知見の取扱については、総合的、包括的に評価することが考えられるが、国内知見と国外知見で微小粒子状物質の曝露との関連性が認められるエンドポイントの一致性やそれぞれの知見の特徴に留意して検討すべきである。国内知見と国外知見に一致性が認められる場合には、それらを包括的に評価し、一致性が認められない場合には、エンドポイントごとにリスクファクターの分布の違いなどの観点についてさらに検討を加えた上で、個々の疫学知見の妥当性を考慮して、総合的に評価すべきである。
(3)定量的解析手法。
環境目標値の目安となる数値を検討する具体的な定量的解析手法として、疫学知見を主体とした科学的証拠に基づく影響度評価手法(疫学知見に基づく影響度評価手法)と、曝露量-反応関係から一定の濃度水準を伴うリスクの大きさ、あるいは一定のリスクレベルに対応する濃度水準を見出すリスク削減予測に基づく影響度評価手法の二つの方法が存在する。
本専門委員会で検討を加えた結果、現下の大気環境においてみられる健康影響を着実に低減していく観点から、微小粒子状物質の環境目標値の目安となる数値を検討するためには、「疫学知見に基づく影響度評価手法」を優先して取り組むことが適当である。
米国やWHO等の手法や定量評価に用いられた解析手法などの情報を整理した上で、微小粒子状物質の長期曝露影響ならびに短期曝露影響それぞれについて、我が国において実施可能と考えられる具体的な定量的解析の手順を示した(4.4説参照)。なお、この手順にしたがって定量的解析を行うにあたって、低濃度領域における曝露量―反応関係に関して、疾病構造や大気汚染状況の国内外の差異等の不確実性が大きいことを十分に考慮すべきである。
これらの成果は、今後、疫学研究や解析手法などの新たな科学的知見の積み重ねによって見直しを行うべきものであるが、現在の微小粒子状物質に関する科学的知見の評価から、本専門委員会でまとめられた成果を微小粒子状物質の当面の定量的な評価手法とすることが適当であると提言する」。
あと、参考文献の一覧を、38ページ、39ページに載せるとともに、40ページに本専門委員会の委員名簿、そこで作業会合に参加していただいた先生のところには*印をつけております。
また、一番、最後には、この委員会の審議経緯、それと海外に現地調査の概要について、訪問機関と訪問日と参加委員について記してございます。
以上です。
【内山委員長】 ありがとうございました。
今、第1章、目的及び背景、それから、第5章で、これまでの2章から4章のまとめということでお示しいたしましたが、何かご意見、ご質問あればお願いいたします。
どうぞ、坂本先生。
【坂本委員】 35ページのまとめの最初の文章が、ちょっとしっくりこないのですが。「本専門委員会では、欧米におけるリスク評価手法」、何のリスク評価手法なのかということを入れるべきで、その一方で[1][2][3]の後に、また、「……に関する微小粒子状物質のリスク評価手法の審議を」という形で、何か全体として、ここの文章の並びというか、少し修飾された方がいいような気がいたします。
【内山委員長】 わかりました。
そうしましたら、ここはまとめなので、ちょっと省いてしまったところがあるのですが、ここは「欧米における微小粒子状物質の環境目標値を設定するためのリスク評価手法」ということをまず入れまして、「に関する現地調査結果や国内外の知見を踏まえ、リスク評価手法の[1][2][3]に関する」。そうですね。ここでまた、もう一回出てきていますので、「関する」……。
【坂本委員】 リスク評価手法の[1][2]、それでまた最後に。
【内山委員長】 そうですね。ここの前後が逆でしたので、「に関する審議」で、ここもう2回目は削除してしまってよろしいでしょうか。「本専門委員会では、欧米における微小粒子状物質の環境目標値等を設定するためのリスク評価手法に関する調査結果や国内外の知見を踏まえ、リスク評価手法の[1]基礎的な考え方、[2]信頼できる疫学的知見の抽出の考え方、[3]定量的解析手法に関して審議を進めてきた。ここでは、一連の審議により得られた成果についてまとめる」というような形にしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(了承)
【内山委員長】 ありがとうございました。ちょっと、前後がおかしいところがありました。
そのほかにいかがでしょうか。香川先生、どうぞ。
【香川委員】 37ページの定量的解析手法のところですけれども、私もちょっと自信がないので教えていただきたいのですけれども、これ、同レベルで書かれていますよね。「定量的解析手法として、疫学的知見を主体とした科学的証拠に基づく影響度評価手法」と「リスクレベルに対応する濃度水準を見出すリスク削減予測に基づく」。これ、私、二つは違ったものだと思うのですね。私の理解するところでは、リスク――要するに疫学知見を主体とした科学的証拠に基づく影響度評価手法で得られた影響濃度のリスクの程度を評価するためにこのリスク削減をやって、どのぐらいのリスクがあるかというのを。この文章でいきますと、リスク評価するには、同等レベルの方法が二つあるという書き方なので、私はこれ、ちょっと違う。私の理解するところは、最初に述べた。もし違っていたら……。
【内山委員長】 4のところ、21ページのところの定量的評価手法についてということで……。
【香川委員】 これ、リスク削減予測手法では、疫学知見を主とした影響度評価手法で得られたものと同じものは得られないですよね。ですから、ここの書き方は、二つ、何というのですか、同じ価値レベルで並べられているので、私は違うと思うのですね。最初にあって、それがどの程度のリスクが削減できるかというのを見るので、ここはきちんと区別して書かれた方がいいと思いますけれども。
【内山委員長】 わかりました。ここもまとめですので、21ページのところの後半の方の、「疫学知見に基づく曝露量―反応関係から一定の濃度水準に伴うリスクの大きさ、あるいは一定のリスクレベルに対応する濃度水準を見出す「リスク削減予測に基づく影響度評価手法」の二つの方法が考えられる」という、その前段を抜かしてしまいましたので、ちょっとおかしくなったので、ここはちょっと長くなりますが、正確を期す意味で、そのとおり省略しないで、まとめのところにもこれを書かせていただきたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。その中で、「本専門委員会では、疫学知見に基づく影響度手法を優先して取り組むことが適当であるとする」ということでいたしたいと思います。ありがとうございます。
そのほかにございますでしょうか。加藤先生、どうぞ。
【加藤委員】 作業グループでもここの専門委員会でどこまでやるかという話をしまして、それで、ここの場でもここが手法をつくるところまでで、その先はまた別で、手法をつくるというところもどこまでだろうかというのが、ちょっと今まで何度か話題に出てきたと思うのですけれども、EPAにしましてもWHOにしましても、基本的には疫学の知見から見ているわけですけれども、そうはいえ、リスク評価というものは物すごく不確実性が大きいから、根拠にするには足りないと言いつつも、何らかの試しにやってみているというか、数字の感覚とか、公衆衛生上のインパクトの感覚とか、そういうものをつかむために、そういうことをやってみているわけですね。
それで、ここでやるのか、次でやるのか、というか、ここはもうこれでおしまいなので、この報告書の中には、多分ここでおしまいになるのだと思うのですけれども、そういうことをやってみるのかみないのかというところを、ちょっと何か知りたい気持ちがあるのですけど。
【内山委員長】 その点に関しては、何かフレームを、それ用に使うために利用するという記述が。何ページでしたっけ、22ページですか。22ページの4.2の前の段落のところに、「一方、リスク削減予測に基づく影響度評価手法については、国内知見と国外知見との一致性に留意して実行可能な手法を検討する。可能であれば環境目標値の平均化時間や環境目標値の数値と測定データを比較して環境濃度が目標値を達成したかを評価するための評価方法の検討材料に援用することが考えられる」ということで、やらないということではなくて、こういうことに使うために「援用することが考えられる」ということと、最後のまとめの方では「疫学知見に基づいた影響度評価手法を優先的に行う」、まず、そちらから優先して行いましょうということです。決してリスク削減手法をやらなくていいという形では書いていないので、「援用するということが考えられる」ということで、日本のデータということではないのですけれども、可能であればそういうものに使いたいということが、一応は書き込んであると思うのです。
新田先生、そういう考えでよろしいですか。
【新田委員】 基本的には、そういうように理解しております。加藤先生のご意見は、まとめのところにも、今、内山先生がお話しになった22ページのリスク削減予測の手法をどう使うかということに関して、まとめの部分の方にも何らかの記載があった方がいいのではないかというご意見と伺いましたけれども。
【加藤委員】 そういう意味です。いろいろやってみて、最後にそれがどうなるかというところが何か見えない感じがして、それを言い出すと、例えば、4.4のところでも余りそのことがないですよね。ですから、それはどうなっちゃうのかなというところが見えないので、それを主力として使うということではないのかもしれないのですけども、ちょっと触れてもいいのかなという気持ちですね。いや、でも、うんと書いちゃって、できなかったら困るので、そこのところ、私はどうなのかなと思って、伺っているのですけど。
【香川委員】 よろしいですか。これ、私、先ほどの質問と関連するのですけども、37ページのところを前のところのように書き直していただければ、必要ないのではないかと思うのですね。要するに、疫学的な手法があって、そして、その次にリスク削減のことをやるということを書いてあるわけですから。まずは疫学的手法に基づいてやりましょうということを書いてあるわけですから、この、(3)の先ほどのところを前の文章を持ってきていただければ、必然的にこれが終わった後やるということは書かれているわけですから、これでいいと思いますけども。
【内山委員長】 加藤先生、どうですか。先ほどのところで、並列に書くのではなくて、まず疫学知見のものがあって、それを評価するためのリスク削減モデルであると。本委員会では優先して、まず疫学的知見で影響度評価を取り組んでいくことが適当であると書いていると。
【加藤委員】 まとめの方は、何か確かに香川先生がおっしゃるように、そういうように書いたら、そうかなという感じになりますね。4の方は、全く何もなしになるのでしょうか、4.4。
【内山委員長】 4.4.1ですよね。1、2のところで、ここには疫学的知見に基づく定量的評価手法の進め方が書いてあるということで。
先生方のご意見もありますでしょうか。新田先生はいかがですか。ここに4.4のところにも書き込むような。
【新田委員】 私の理解は、4.4のところ、4.4.1が長期曝露影響、4.4.2が短期曝露影響の、疫学知見に基づく定量評価手法の手順を示しているものという様に理解をしております。確かに、ここで次のステップとしてくるだろうリスク削減手法のところをどういうような使い方をするのか具体的にというのは、なかなかちょっと難しいところがあるのかなとは思っていますが、4の先ほどの22ページの4.1の最後の段落のところの内容、それからもう一つは、4.4のところの最後のなお書きの部分、このあたりもリスク削減予測というような観点でのところが少し入ってきているのかなとも思っています。
あえて申し上げますと、ここはまとめにも疫学知見に基づく影響度評価手法を優先して取り組むと、明確に書いてあって、その優先して取り組む手法を、そこにも書いてある4.4の手順を具体的に示しているということで、すべてここの報告書で手順をすべて関係するものを具体的に示すというところまでは、私自身は記載することはないのではないかなと思っております。
【内山委員長】 いいですか。特に4.4の後には、ここはリスク削減手法のことまでも具体的には書かないで、このままでいきたいと思うのですけれども、よろしいですか。
それで、先ほど言われましたリスク削減に基づく評価手法に関しては、少し3の定量的のところの香川先生からご指摘のあったところで表現を直して、それは忘れていないよということを書き込んでおくという形にしたいと思いますが、よろしいでしょうか。そこはそのように、少し修正させていただきたいと思います。
そのほかにいかがでしょうか。田邊先生。
【田邊委員】 やはり、37ページの(3)の二つ目の段落の、今話題になっていた部分ですが、何も知らずにさっとここを最初、耳から聞いたときに、「現下の大気環境においてみられる健康影響を着実に削減していく観点から」という言葉が、何かすごく疫学的知見に基づく影響度評価手法に優先的に取り組む理由のように聞こえてしまって、決して、そういう趣旨ではない文章だと思うので、ちょっと誤解があるかなという気がしたのですが。私の解釈が間違っているのかもしれないのですが。
【内山委員長】 ここの部分は、公衆疫学的観点が抜けているのかな。
新田先生、何かありますか。
【新田委員】 今、田邊委員のご指摘の点ですが、35ページの5のまとめの(1)のところの基礎的な考え方にも同様の内容が示されていて、その基礎的な考え方の結論に基づいて、手順を読んで具体的に示したというところの前段階として、今ご指摘の段落の内容があると思います。(1)の基礎的な考え方の結論は、確かに理由ではなくて、35ページの中ほどですが、「現下の大気環境においてみられる一般地域集団における健康影響を低減していくという公衆衛生の観点を考慮し」となっていて、確かにご指摘のように「観点から」だと理由のようにちょっと受け取られてしまうということがあると思います。ですから、そこの表現を合わせる必要があるのではないかなと思います。
【内山委員長】 ありがとうございます。私もどこから引っ張ってきたのか、すぐに見つからなかったのですが、その35ページのところの「公衆衛生の観点を考慮し」というところから持ってきたと思いましたので、ここは「現下の大気環境下における健康影響を着実に低減していく」という、「公衆衛生の観点を考慮し」という言葉に修正したいと思いますけれど、よろしいでしょうか。
【坂本委員】 いいですか。今の「考慮し」というのは、今、疫学的な知見で影響評価手法をやり、そして、そのあとにそういうものがあるよというように読んでよろしいわけですね。
【内山委員長】 はい。35ページの基本的な考え方に書いてあるところは省略して、定量的評価手法としてこれを採用するという点で、「疫学知見に基づく影響度評価手法を優先していく」という意味です。
【坂本委員】 そして、そのあとに、だから、リスク削減評価というものもすぐには考えていくのだよということが入っているということですよね。
【内山委員長】 はい。
【佐藤(洋)委員】 ちょっとよろしいですか。今の話というのは、要するにPM2.5の影響だろうというように見ているということでいいのですか、この「現下の大気環境下」というのは。
【内山委員長】 これはなかなか、それだけではないですけど、それは総体として一つの原因となっているという。
【佐藤(洋)委員】 でも、何かそこはちょっとポイントのような気がするのですけどね。「現下の大気環境下」というのが、中身が何なのかというのが、トータルとしてなのか、PM2.5に着目してなのかは、大分違うような気がするのですけれども。
【内山委員長】 何か佐藤(洋)先生、いい修文の方法はありますでしょうか。
【佐藤(洋)委員】 いや、だから、どちらなのかというのが私の質問だったのですけれど。
【内山委員長】 ですから、この35ページのところに、様々な不確実性が存在するけれども、総体とみて微小粒子状物質が現状の大気汚染濃度で何らかの影響を与えている……。
【佐藤(洋)委員】 与えているかもしれないという。
【内山委員長】 ということは否定できないことが、ずっと今までの意味ですね。
【佐藤(洋)委員】 疫学的な知見があるという。そういうことですよね。
【内山委員長】 だから、ここで、それがなくなって、ただ、「現下の大気環境においてにみられる」と、これはPM2.5だけの影響というようにとられる。
【佐藤(洋)委員】 うん。それで、そういうように言っているのだろうなというようには思うのですけれども、それをちょっと確認しておきたかっただけです。
【内山委員長】 ですから、ここだけ取り出してみると、何か非常にあいまいですが、リスク評価手法の基礎的な考え方から読んでいくと、それほど違和感はないのかなという感じはしたのですが。いや、もし、こういうように修正したら、もっとわかりやすくなるという、誤解を招いていることがあれば。
【佐藤(洋)委員】 今、委員長がおっしゃるように、上から読んでくれば、当然そういうことだろうと思います。
【岡部課長】 事務局からすみません。一番、最後のまとめの構成ということで、いろいろご意見をいただいております。
それで、5の(1)リスク評価手法の基礎的な考え方というところで、先ほど新田先生にお話しいただきましたように、ここで、要は「公衆衛生上の観点を考慮して」というような考え方を述べている。これは本文をそのまま持ってきたような部分で5の(1)は構成されていると。
それから、今、話題を呼んでおります5の(3)の定量的解析手法というのは、恐らく私自身の理解としては、Evidence-basedのアプローチと、それからRisk-basedのアプローチとの関係をどういうように考えるかということで、一応、本文中のことで、これまで整理いただいたところがあるわけなので、それをどのような形でここに引っ張っていくかということで、大体、今、内山先生、新田先生のご指導で、大体直すべき姿は見えたと思うのですが、少し、もし、本文中のまとめ方に、なお、議論を要するということであれば、それを根っこから議論しなければいけないのですけれども、ある程度、本文に即して少し、例えば、5の(1)と(3)の基準のディプリケーションをどう考えるかということですので、また、ご指導いただいて、直していけるような話かなというようには思っています。
ちょっとすみません。余計な口を挟みました。
【内山委員長】 はい。佐藤(洋)先生も本文とか、この5の(1)のところは、これでよろしいのですよね。そうですよね。
【佐藤(洋)委員】 はい、いいと思います。
【内山委員長】 ですから、そこから上から読んでいっていただけば、5の(3)のところも、まあわかるだろうということなので、根本的には、このままでよろしいかと思うのですが、そういう考えでよろしいでしょうか。
そのほかにいかがでしょうか。
そうしましたら、また、全体的なことに戻っていただいても結構ですが、これで一応1から5まで、参考資料を含めて報告書の形がまとまるということになりますが、いかがでしょうか。
【坂本委員】 あと1点、細かいことですが、用語の統一がまだなされていないかなというような気がいたします。例えば、EPAがあったり、米国EPAがあったり、それから、カリフォルニア州EPAというのをCal EPAというか、幾つか、どこかで1回言ったら、あとはそのあと、略語を使うのか、そういった形で統一された方がよろしいのかなということ。
それから、引用文献の書き方のところも統一がされていない部分があるかなという気がいたします。要は、クエスチョンマークの後にコンマがあったりとか、それから、2人のオーサーのところでアンドがないやつがあったりとか、中身の問題ではなくて体裁の問題ですけれども、そういったところもお考えいただいた方が、最終的にはいい報告書になると思いますので、お願いいたします。
【内山委員長】 わかりました。大分見直したつもりですけれども、まだ用語の統一がとれていないところがあるようで、申しわけありません。では、そういう点は十分に……。
富永先生。
【富永委員】 これはむしろ要望に近いのですが、この報告書が出ますと、あと、マスコミの方とか一般行政の方とか、読まれると思うのですね。多くの方は、疫学、統計の専門家じゃないわけです。この報告書の中には、随所に非常に高度な統計用語が出ておりまして、それを何か、例えば、一番、最初に出てくるのは14ページの「一般化加法モデル」、GAMですね、これが出てきまして、その次に出てくるのが16ページの「統計モデルの相違」という項が起こしてありますけれども、「Cox比例ハザードモデル」、「ポアソン回帰」、それから「ノンパラメトリック回帰」と、こういう言葉がございますし、それから、Coxの比例ハザードモデルはもう一度28ページの中ほどにポイントが出てまいります。それから、極めつけに近いところ、30ページの下の方の「GLIM一般化線型モデル」、それから、下から3行目の「分散関数」、「リンク関数」、こういった言葉がございます。これを、これでも統計のプロなら、なるほどと、ぱっとわかると思うのですけど、一般の方は、ほとんどわからないと思います。ですから、十分わからなくても、ああ、大体そういうことがとわかるような、一つのモデルを二、三行で書いてもらえるといいと思うのです。
今日、佐藤俊哉先生、ご欠席でして、あの先生の頭の中には、これはもう全部きれいにあると思うので、それを一般人にわかるように、二、三行以内ぐらいに解説してもらって、そういう統計・疫学用語の解説のようなものを作ってもらって、それを文献の次に入れるとかして、その案は、椿先生、今日ご出席ですから、プロの椿先生に、レビューしてもらうと、これでいいだろうというお墨つきがあると、非常に、私、参考になるのではないかと思います。
今日は、morbidityの訳だけがちょっと問題になりましたけれども、もう一つ、私がどう言ったらいいか困り果てているのは、エンドポイントです。エンドポイントという言葉が出てきまして、6ページに、一番下から3行目、2.4、考慮すべきエンドポイント、あと、随所にエンドポイントが出てまいりまして、わかりますけれども、これは臨床試験とか疫学研究でよく使われる言葉ですが、何かいいのがないかなと、これは自問自答で、宿題は私の方に返ってくるわけですけれども、これはどうでもいいのですが、要は、非常に難解な統計モデルの非常に簡単な解説ですね。大体の道筋とか長所、特徴がわかるような解説があると、非常に助かると思います。これは今日でなくて、後で仕上げの段階ですから。
【内山委員長】 わかりました。
結構、難しいご注文だと思うのですが、短ければ短いほど難しいのではないかと思うのですが。用語集は、入れる時間はありますか。
【松田課長補佐】 追補的に。
【内山委員長】 追補的にということで、よろしいでしょうかね。
【富永委員】 いいです。それはいいです。
【内山委員長】 日程の問題もあるので、椿先生、佐藤(俊)先生が、二、三日でぱっと出してくだされば、大助かりですが。
多分、1週間、2週間せずに公表はしなければいけないと思いますので。もし、間に合えばあれですけど。
【椿委員】 短く書くことは、なかなかチャレンジングなことですが、トライしてみようと思います。
【富永委員】 では、もう、先生に。椿先生、お願いします
【内山委員長】 はい。では、できるだけこの報告書の中に入れ込むような、もしスケジュール的に間に合えばそうさせていただいて、間に合わなければ、追補という形でさせていただきたいというように思います。では、椿先生、佐藤(俊)先生、特に椿先生、よろしく、ちょっと、ご苦労をお願いしますが。
【坂本委員】 今の質問に、関連して、「重篤度」という言葉ですが、お医者さんには普通の言葉なのだけれども、それ以外にはわからない言葉の典型として、あれは厚生省か何かがなるべくわかる言葉に置きかえようという形でやったものに入っていました。それも考慮していただくとありがたい。
【内山委員長】 はい。ですから、それ以外の色々な専門用語も色々入っているので、すべて考慮すると時間がない可能性があるので。わかりました、「重篤度」も「重症度」にしようかと、色々まざったりして、結局、最終的には重篤度になってしまったのですが、これも「重篤」というのは余り使うべきでないという、以前、環境審議会の先生のご意見もあったのですが、このピラミッドが出てくると、重症度というと、どうも合わないな、重篤度になってしまうなという。わかりました。できるだけ、そういう言葉の、また、EPAなんかは、EPAのもうグロッサリーとして、色々こういう環境問題に関する言葉が冊子になっていますので、環境省としても、環境問題に関するグロッサリーを、これに限らず、色々、ホームページを見れば、あるいは冊子として完備できるようにやっていきたいと、お願いしたいと思いますので。
とりあえず、今回は、非常に難しいこの統計的な用語だけでも簡単に説明するようなことを追補的にできればというように思います。ありがとうございました。
そのほかに全体を通じて何かございますでしょうか。
(なし)
【内山委員長】 そうしましたら、今幾つかご意見が出まして、こういう方向で修正すればということと、あるいは、もう実際にこの場で、こういう修正でということでご了承いただきましたので、あとは、私と、それから、作業会合の先生方とご相談しながら調整して、最終的に修正させていただくというご一任をお願いできれば、ここで微小粒子状物質リスク評価手法専門委員会報告として、本専門委員会としてご了承いただいたということにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(了承)
【内山委員長】 それでは、今日、いただいたご意見に関しましては、私、委員長一任ということで修正させていただきたいと思います。ありがとうございました。
それでは、特に他にご質問ないようでしたら、今日の議論はこの辺で終わりにしたいと思います。
本専門委員会の報告につきましては、取りまとめた後、環境省にて公表の手続をしていただくことになると思いますが、時間的なものも色々あると思いますので、先ほど言った用語の説明に関しては、できるだけその中に含めるということで、間に合わなければ追補という形で出していただくということになると思います。
次に、議題の2のその他ですが、本日は白石局長がお見えですので、白石局長の方から、一言ごあいさつをお願いいたします。
【白石局長】 本日は、この専門委員会、うまくおまとめいただきまして、最終回ということになりますので、一言ごあいさつをと思います。
委員長をお務めいただきました内山先生を初め、委員の先生方、本当にありがとうございました。
大気汚染、非常に厳しい大気汚染があったころは、どちらかというと、特異的な関係がわかりやすかった。この状態は、ある意味、今の難しい言葉というお話もありましたけど、このエンドポイントは、この条件によってもたらせるということは、割とわかりやすく、その当時でも難しかったわけですけれども、それなりにわかりやすい説明ができて、環境目標値というものは、個人の健康への作用とか、あるいは症状としての健康影響とを踏まえて設定されてきたわけでございますけれども、この微小粒子状物質というものは、従来型の手法だけでは、なかなか解明なりも難しいということもありましたが、その後、いろいろ多くの知見あるいは解析方法が充実したということがありまして、より低濃度な領域のリスクというものも、評価手法をきちんと整えれば、ある程度反映することができるのではないかというようなことが、何回かの議論で語られてきたのではないかというように思います。
もちろん、科学でございますので、森羅万象すべて説明できるわけではないという限界はありますけれども、限りなく科学的な方法で考えるとどういうことなのかということを、大げさな言い方になるかもしれませんけど、我が国の英知を結集していただいて、方向性を出していただいたのではないかというように思っております。
特に、今年6月から11月にかけて6回、この専門委員会は開催されたわけでございますが、これにあわせまして、加藤委員、武林委員、新田委員、WHOあるいは米国等の外国の機関にも現地調査に行っていただく等、ということで、非常に精力的にご活動いただいたことを感謝申し上げます。
今、色々なご指摘を踏まえまして、本専門委員会の報告が提言の形で取りまとめられることになると思いますが、私どもの方で大臣の方につまびらかにご報告いたしまして、来週から12月でございますが、関係の先生方とともに中央環境審議会大気環境部会にご報告させていただければというように思っております。
そういった意味で、今後とも色々ご指導賜りますよう、よろしくお願い申し上げまして、ちょっと長くなりましたが御礼のごあいさつとさせていただきます。本当にありがとうございました。
【内山委員長】 それでは、本日がこの会合が最後ということでございますので、私の方からも一言御礼申し上げます。
この委員会は、昨年から行われておりました微小粒子状物質の健康影響評価検討会の報告書で一つ宿題とされました、定量的評価手法に関しての宿題を一つ解決できたのではないかということで、やっと、また一つステップが進んだなという感じでございます。
委員の方々には、非常に、今、局長の方からもご説明いただきましたけれども、本委員会のほかに作業会合で何回もまた案を、ドラフトをつくっていただき、また、委員会での議論をそこで練っていただくという非常にご努力をいただきまして、本当にありがとうございました。
ここで何とか、今日でまとめさせていただきましたので、また、次のステップ、今、局長からもお話がありました次のステップに行くのかなということで、まだまだこれからハードルはあると思いますが、皆様にこれからもまた色々ご協力をお願いして、私の御礼にさせていただきます。どうもありがとうございました。
それでは、その他になければ終了したいと思いますが、事務局にお返しいたしますのでよろしくお願いいたします。
【岡部課長】 皆様、長い間ご審議いただきまして、どうもありがとうございました。
それでは、これをもちまして、本日の専門委員会は散会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
【内山委員長】 どうもありがとうございました。
【岡部課長】 すみません、一言申しおくれまして。
本件につきまして、環境省においての公表に先立ちまして、先生方に最終版ということでご確認をいただくというような手順をとらせていただこうと思います。その節はよろしくお願いいたします。どうも、失礼いたしました。