平成18年10月27日(金)10:00~12:22
環境省 22階 第1会議室
(委員長) | 内山 巌雄 | ||
(委員) | 浅野 直人 | 浦野 紘平 | 香川 順 |
小林 悦夫 | 櫻井 治彦 | 中杉 修身 | |
江馬 眞 | 大前 和幸 | 川本 俊弘 | |
島 正之 | 中館 俊夫 | 松下 秀鶴 | |
村田 勝敬 | 本橋 豊 | 横山 榮二 | |
(環境省) | 竹本水・大気環境局長 | ||
岡部総務課長 | |||
松田総務課課長補佐 | |||
久保大気環境課課長補佐 | |||
(国立環境研究所) | 松本主任研究員 |
資料1 | 中央環境審議会大気環境部会健康リスク総合専門委員会委員名簿 |
資料2 | 「指針値算出の具体的手順の一部改定について」並びに「アセトアルデヒド、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン及び1,3-ブタジエンに係る健康リスク評価について」に対する意見募集の結果について |
資料3 | 指針値算出の具体的手順の一部改定について(案) |
資料4 | アセトアルデヒド、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン及び1,3-ブタジエンに係る健康リスク評価について(案) |
別紙1 | アセトアルデヒドに係る健康リスク評価について(案) |
別紙2 | クロロホルムに係る健康リスク評価について(案) |
別紙3 | 1,2-ジクロロエタンに係る健康リスク評価について(案) |
別紙4 | 1,3-ブタジエンに係る健康リスク評価について(案) |
資料5 | 今後の対応について |
参考資料1 | 有害大気汚染物質対策について(これまでの経緯) |
参考資料2 | 今後の有害大気汚染物質対策のあり方について(第7次答申) |
参考資料3 | Environmental Health Criteria 167Acetaldehyde(抜粋) |
参考資料4 | 林野庁・WHO間の文書 |
参考資料5 | 八木ら(2004)新築木造住宅のアセトアルデヒド気中濃度の現状 |
参考資料6 | IARC monographs volume71(1999)抜粋 |
参考資料7 | Maltoniら(1980)Long-term carcinogenic bioassays on ethylene dichloride administered by inhalation to rats and mice. |
参考資料8 | 松本ら(2006)ベンチマークドース法を用いた1,2-ジクロロエタンの吸入曝露による発がんユニットリスクの算出. |
参考資料9 | Baertschら(1991)Effect of inhalation exposure regimen on DNA binding potency of 1,2-dichloroethane in the rat. |
参考資料10 | D'Souzaら(1987)Physiologically Based Pharmacokinetic Model for Ethylene Dichloride and Its Application in Risk Assessment. |
参考資料11 | Risk Assessment forum USEPA(2005)Guidelines for Carcinogen Risk Assessment 抜粋 |
参考資料12 | Boormanら編、Pathology of the Fischer Rat. 抜粋 |
参考資料13 | 平成17年度地方公共団体等における有害大気汚染物質モニタリング調査結果について |
【松田課長補佐】 おはようございます。定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会大気環境部会第6回健康リスク総合専門委員会を開催いたします。
会議に先立ちまして、水・大気環境局の職員に異動がございましたので、ご報告をいたします。平成18年7月19日付で総務課長に就任いたしました岡部でございます。なお、局長の竹本は国会業務が終了次第、出席するという予定となっております。
それでは、お手元の配付資料のご確認をお願いいたします。配付資料一覧をお願いします。
資料1は、中央環境審議会大気環境部会健康リスク総合専門委員会委員名簿。
資料2は、「指針値算出の具体的手順の一部改定について」並びに「アセトアルデヒド、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン及び1,3-ブタジエンに係る健康リスク評価について」に対する意見募集の結果について。
資料3は、指針値算出の具体的手順の一部改定について(案)。
資料4は、アセトアルデヒドなど4物質に係る健康リスク評価について(案)。
別添1から別添4までの資料はそれぞれの物質に係る健康リスク評価書です。
資料5は、今後の対応について。
また、参考資料に13の資料がございまして、参考資料1に有害大気汚染物質対策について(これまでの経緯)。参考資料2に第7次答申。参考資料3にWHOのEHCのアセトアルデヒドの抜粋版。参考資料4にWHOの文書。参考資料5から資料12まではパブリックコメントに関連する文献。参考資料13に、平成17年度の地方公共団体等における有害大気汚染物質のモニタリング調査結果をつけております。
もし、資料の不足がございましたら、お申し付けいただければと思います。
それではマスコミの方、もしカメラ取材が来ている場合ですが、マスコミの方におかれましては、カメラ撮りは恐縮ですけれども、冒頭だけですので、ご協力をお願いします。
それでは、これ以降の会の進行は内山委員長にお願いいたします。
【内山委員長】 おはようございます。今日は本当にお忙しい中をお集まりいただきまして、ありがとうございました。今日は、専門委員会報告案につきましてご審議をいただきまして、検討を行いたいと思います。本日の報告を基に、後日大気環境部会で答申案についてご審議いただきたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げます。
今日は議題が二つございますけれども、まず議題1は、前回ご審議いただいたものに対するパブリックコメントの実施結果についてでございます。前回の専門委員会におきまして、当専門委員会の報告案をパブリックコメントにすることにいたしました。これにつきまして、多くのご意見をいただきました。その結果を事務局にまとめていただきましたので、まず事務局よりご報告をいただきたいと思います。
まず、資料2について事務局にご報告いただいて、その後パブリックコメントの結果についてご議論をお願いしたいと思います。それでは、よろしくお願いします。
【松田課長補佐】 それでは、資料2のパブリックコメントの経過についてご報告いたします。パブリックコメントのご意見は、事業者団体・民間事業者関係で76通、個人・その他の関係で30通、合計106通、意見数は172件ございました。意見の内訳としては、全般的事項36件、指針値算出の具体的手順の一部改定4件、アセトアルデヒド関係77件、1,2-ジクロロエタン関係63件、1,3-ブタジエン関係2件提出されております。意見に対する考え方につきましては、その意見の内容から学術的な観点からの意見も多く含まれておりましたので、専門委員会ワーキングを開催して委員のコメントをいただきながら専門委員会事務局として作成したものです。意見の数も非常に多いので、特に複数の意見があった事項について、意見の概要と回答案についてご説明します。
それでは、全般的事項の1枚目です。左の番号1ですが、リスク評価作業は、非公開のワーキンググループで検討されており、審議のプロセスについて透明にするとともに、事業者を初めとする利害関係者と十分な協議を経て設定されるべきとする意見です。
この点につきましては、ワーキングでは専門委員会で審議するリスク評価文書の素案を作成するための作業会合であり、その過程で評価文書への活用を検討する各文献に対する委員の自由な議論を妨げるおそれがあること、また議論する過程で利害関係のある事業者などから委員に対しての働きかけなどの公正な議論が行われないおそれがあることから、非公開で行うとしていると回答しております。
また、専門委員会で審議いただいた評価文書は、第7次答申に示された「今後の有害大気汚染物質の健康リスク評価のあり方について」に基づき作成したものであり、評価文書、指針値策定の際に用いた文献・出典を全て掲載しており、パブリックコメントにより広く意見聴取する機会を設けていることから、評価文書及び指針値策定のプロセス及び透明性は十分確保されていると考えております。実際にいただいた意見を踏まえ、評価文書をよりよいものにすることができたと考えております。
左の番号3番について、「環境基準」と「指針値」の意味及びその違いを明確にして、地方行政に対してその運用を文書にて徹底すべきとする意見です。
この点につきましては、指針値の性格や機能につきまして、第7次答申においても既に示されており、また、同答申の趣旨等について地方公共団体へ文書で通知しておりますが、今回も同様に地方公共団体に通知を行っていきたいと考えております。
左の番号4番について、リスク評価を行って得られた評価値が指針値又は環境基準として適用するか否かを含め、リスク評価の専門家で構成される委員会で「有害性の評価値」を指針値とすることを決めるのは不適当ではないかする意見です。
この点につきまして、データの信頼性については第7次答申に基づきまして、4物質に係る定量的データの科学的信頼性についてそれぞれ検討を行った結果、いずれの物質も科学的信頼性IIに該当して、指針値に該当すると判断したものです。指針値は、有害性評価に係るデータの科学的信頼性に制約がある場合も含めて、環境中の有害大気汚染による健康リスクの低減を図るために設定されるもので、ヒトの健康に係る被害を未然に防止する観点から、科学的知見を集積し評価した結果として設定されるものであり、本委員会で指針値設定の決定を行うことは適当と考えております。
左の番号14番について、アセトアルデヒドについて、WHOのガイドラインを参考に2005年に厚生労働省により室内濃度指針値48μg/m3が定められたものであるが、2003年11月に林野庁木材課がWHOにガイドライン値の算出根拠を問い合わせたところ、「50μg/m3は間違いであり、300μg/m3が正しい。」とする回答を得ており、指針値は300が正しい数値ではないかとする意見です。
WHOのガイドラインにおきまして、アセトアルデヒドの許容濃度はIPCSが作成したEHCを根拠に設定されたとしていて、EHC167を見ると、指針値と同じApplemanらの動物実験のNOAELを用いて、不確実係数1,000を用いて求めた数値を許容濃度としているということです。
実際にHC167は参考資料3、またWHOと林野庁のやりとりに関する書簡、これについては参考資料4に示しております。この点につきまして、アセトアルデヒドに係る指針値につきましては、Applemanらによる動物実験のNOAELに不確実係数1,000及び断続曝露から連続曝露への補正5.6も加味をした48μg/m3以下とすることを提案していたところですけれども、意見にあるとおりWHO書簡においてアセトアルデヒド許容濃度値50という数値は間違いであり、300が正しいとする旨が実際に示されています。WHOのエア・クオリティー・ガイドラインが正式に訂正されて公表されたことの確認はできないですけれども、その書簡に示された内容の趣旨を早急に確認した上で改めて指針値の算定方法の検証を行って、指針値を決定していくことと回答しております。
また、左の番号15につきまして、14と重複する事項もありますが、この中で示された事項として、木造住宅において木からの発生により超過する可能性があり、一般の方に木造住宅が健康の面で問題があるかのような誤解を与えかねないとする意見が出ております。
この点につきまして、今回の指針値につきましては、一般大気環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るための指針となる数値で、今回の指針値については一般大気環境中の有害大気汚染物質による健康リスクの低減を図るための指針となる数値で、住宅内や事業所内における指標になるものではないと回答しています。
また指針値は、長期的曝露による有害性を未然に防止する観点から設定されるものであることから、短期的に上回る状況があっても、直ちにヒトの健康に悪影響が現れるというようなものと解するべきではないというふうにも書いています。
また、参考資料5にも付けておりますが、八木先生らの木造住宅における木質材料からのアセトアルデヒドの放散、これは竣工から1年以内に急速に低減されるということを示す知見であり、またこれだけ木質材料を用いた建物が国内で広く分布しているにもかかわらず、大気環境中のアセトアルデヒドの濃度水準は一般環境中で昨年の調査結果において平均2.9μg/m3の水準にあります。その水準にある事実を踏まえれば、木造住宅から放散されるアセトアルデヒドの一般大気環境への影響は小さいと推察される回答案を作成しております。
参考資料5の図8に、この回答の根拠になっている図が添付されております。
左の番号16について、アセトアルデヒドによるヒトへの健康被害の症例、観測点での高濃度測定値のデータがないのであれば、指針値設定の必要性はないとする意見があります。
この点につきまして、アセトアルデヒドは中央環境審議会のこの有害大気汚染物質に関する第2次答申におきまして、この物質の有害性の程度、大気環境の状況から見て健康リスクがある程度高いというふうに考え、優先取組物質として選定をしております。この優先取組物質については、同じく第6次答申、第7次答申におきまして、環境目標値の一つとして指針値を設定し、迅速な指針値の設定を目指し、検討を行っていくことが適当というふうにされております。こういった答申を受けて、優先取組物質については順次指針値の設定を行っております。指針値は、現に行っている大気モニタリング評価に当たっての指標、または事業者による排出抑制努力の指標、こういった機能を果たすことが期待されており、アセトアルデヒドも指針値を設定するということが適当と回答をしております。
左の番号20について、事実上公開されていない文献、データや専門家によるレビューは行われていない文献、データを根拠として、1,2-ジクロロエタンの指針値案を決定するということは不適切ではないかとする意見があります。理由は資料にもいろいろ記述をしておりますけれども、公開されていない文献を根拠に評価文書を作成しても、第三者は確認できないとする内容です。
この点につきまして、1,2-ジクロロエタンの発がん性に係るリスク評価に使用したNagano先生の報告は公刊されておりまして、かつ参考資料6にも示すIARCのMonographにも表が引用される形で掲載されていると。こういうことで、国際的にも意識されたものと理解しております。
参考資料6でいくと、マウスは505ページ、ラットは506ページの中段あたりです。関連して表も507ページに付いております。あとは評価も522ページに付いております。このため、国際的にも認識をされていると考えております。
ラットにおける症例の重複に関する検討を行うため、Nagano先生の研究において実際の実験が行われた中央労働災害防止協会日本バイオアッセイ研究センターから実験の生データの提供を受けて、専門委員会のワーキング委員がその信頼性などを検討した結果、十分信頼に足りる実験データであるというふうな結論に至りました。このようにリスク評価を行う際に、研究者から詳細データの提供を受けて検討を行うということは諸機関でも一般的に行われており、適切な手法であると認識しているところです。
なお、Nagano先生の研究に関する論文については、フルペーパーとして平成18年2月9日にJournal of Occupational Healthに受け付けられ、専門家による査読を終了し、7月4日に受理されたと聞いているところです。
その次に、左の番号21番につきまして、Nagano先生のデータは世界中で唯一「吸入曝露でも発がん性あり」の結論を出した実験というふうに考えられるが、その実験データが「より信頼性が高い」と判断された理由、この点について明確にしていただきたいというコメントであります。補足として、同様の実験を行っているMaltoniらの試験では発がん性は認めていなかったというふうに書かれております。
その回答としては、まず第7次答申の「指針値算出の具体的手順」におきまして、動物実験からしかデータが得られない場合には、吸入曝露実験から得られたデータを重視する原則が示されているということになっております。Nagano先生の報告につきましては、低濃度による吸入曝露実験であり、量-反応関係を評価する上で十分なデータが存在していて、実験設備の面などでも他の研究よりも信頼性が高いと考えております。また、IARCのMonographでも、先ほど話したように表が引用される形でも掲載されていて、国際的にも認識されていると考えております。
また、意見として示されていたMaltoniらの報告、これについて参考資料7に添付をしておりますけれども、ここの知見では自ら発がん性は認めていなかったというふうにしておりますけれども、参考資料6に示すIARCのMonograph、この中におきましては、マウスでは特に雄で低い生存率だったこと、ラットでは低くばらつきのある生存率であることから、評価を行うには不適当な知見とされている。チャンバー内の雌ラットの腫瘍発生率は、いずれもチャンバー内の対照群と比較して統計学的に有為な増加が認められること。チャンバー内対照群で、生存率が低くなった実験は加齢によるものとする推測は著者の考えで、むしろチャンバー内の雌ラットの腫瘍発生率が統計学的には有為に増加していて、この研究から吸入曝露による動物実験での発がん性を認めないと判断することはできないのではないかと。この点について、専門委員会としてリスク評価文書について誤解を与えないような形でその考えを明記していく旨を回答しております。
また、次のページの23番です。1,2-ジクロロエタンのリスク評価につきまして、ベンチマークドース法により有害性に係る評価値を算出する方法の適用が妥当なことの理由を求める意見です。
この回答につきまして、発がん性物質におけるベンチマークドースからの低濃度直線外挿法などにつきましては、1996年におけるUSEPAの発がん物質リスク評価ガイドライン改定提案で示されて以来、様々な物質で使用されてきている。2005年におけるガイドラインの最終版におきましては、ベンチマークドースからの低濃度直線外挿法が基本となっている。また、評価に使用した数学モデル、これは1,2-ジクロロエタンの用量反応データに非常によく適合している。そのようなことから、ベンチマークドース法を用いた使用は妥当ではないかと考えております。
なお、動物実験に関するデータを用いて有害性に関する評価値の算出方法について、現時点では全ての物質について適用可能な手法が確立されている段階にはないということで、当面は個別物質ごとに、諸外国等で用いられている手法も参考にして、最適な算出方法について検討するということが適切というふうに考えておりますが、今回1,2-ジクロロエタンに係るリスク評価に用いたため、この具体的手順の部分におきましても例示としてベンチマークドース法を記載することとしております。
なお、1,2-ジクロロエタンの発がん性に関するベンチマークドースからの低濃度直線外挿法の知見につきましては、今日出席されている松本先生の論文が専門家による査読を受け、大気環境学会誌に掲載されております。この点についても、リスク評価文書に参考文献として記載しております。なお、参考資料8に松本先生の論文を添付しているというところです。
それでは、その次の左の番号24番です。この意見について、1,2-ジクロロエタンの発がん性に係るリスクの定量評価について、Baertschらの知見や作用様式が低用量で非線形であることを立証する十分な情報がある場合、非線形の外挿モデルを適用するというUSEPAリスク評価ガイドライン、またPB-PKモデルなど最新の情報を含む全ての知見を総合的に考慮した上で、低用量への外挿をより慎重に検討し直す必要があるとする意見です。
この意見に対する回答ですが、参考資料9にBaertschらの実験を付けておりますけれども、Nagano先生の吸入曝露実験による発がん性を報告する前に、低濃度である80ppmと極めて高濃度である4,400ppmの2用量において、遺伝子障害性を示すということを報告した研究なので、この2用量の実験結果が低濃度領域での非線形を示す論拠になると判断するのは妥当ではないというふうに考えているというところです。また、1,2-ジクロロエタンの中間代謝体が、低濃度領域において用量に対し非線形を示す十分な証拠があるとは考えていません。
さらに、1,2-ジクロロエタンのPB-PKモデルに関する知見、これにつきましては1980年代の参考資料に示すD’Souzaらの報告、これは調べた結果、恐らくこの知見なのだろうというふうに考えておりますが、経口投与モデルにおいて従来の体表面積による種間外挿方法によるリスクの過大評価を指摘しているというようなものですけれども、今回の1,2-ジクロロエタンのリスク評価というのは、吸入曝露実験結果を用いたものだと。体表面積による種間外挿というのは行っておりません。また、吸入曝露に関して、ヒトやラットにおいてPB-PKモデルとして評価できるデータもなく、このモデルを吸入曝露モデルとして使用することはできないのではないかと回答としております。
その次に、左の25番ですけれども、1,2-ジクロロエタンのように二つの代謝経路が存在する場合には各経路ごとに評価を行わず、発がん性も含め、高濃度曝露の影響を単純化して低濃度外挿とすることが適切であるということは検証されていないので、信頼する値が得られたとは考えられないという意見です。
用量、この代謝部分の意見に対する回答としては、用量-反応アセスメントにおいて、複数の代謝経路ごとの量反応関係に係る定量的データが明らかな場合、経路ごとの評価を行うということも考えられますが、そのような経路ごとの定量的データが明らかでない場合においては、ヒトあるいは動物の個体レベルで、曝露量と有害性の発現の関係を総合的に評価することが重要と考えおります。今回のベンチマーク濃度において、観察領域の濃度領域における量反応関係について指数関数を含む回帰曲線によりモデル化して、低濃度曝露データを活用して評価値を算出するということから妥当な方法と考えております。
次、26番です。意見の概要と主な理由というのを要約すると、乳腺の腺がん、腺種、線維腺種の三つを乳腺腫瘍としてユニットリスクを算出する点について、また良性腫瘍を悪性と見なすという観点で問題があるのではないかとする意見です。
この回答につきまして、1,2-ジクロロエタンに関するラットの乳腺腫瘍の評価におきまして、それぞれの腫瘍の発生組織が同じであること、また腺種は増大によって線維腺種、腺がんへ移行する関連が示唆されます。また、それぞれの鑑別判断の難しい例が少なくない。このようなことから、腺種と線維腺種及び腺がんを合わせた評価を行うことが適当と考えております。
また、アメリカのEPA発がん物質リスク評価ガイドラインにおきましても、良性腫瘍が悪性腫瘍に移行する可能性がある場合においては、良性腫瘍と悪性腫瘍を足し合わせて評価することも示されていることを併せて示しています。この部分に関連して、参考資料11にUSEPAガイドライン、参考資料12にBoormanらの知見を添付しております。USEPAガイドラインの部分としてはA-5、A-6に関連する知見が示されております。
また、左の番号28番、Nagano先生の曝露量評価はどのようになされているのかという意見です。この趣旨としては、吸入によってどれぐらいの量が実際に体内に吸収されたかを示すコンプライアンス指標、この指標によく用いられるのは尿中の代謝産物ですが、それを用いて腫瘍発生との用量反応関係を評価するという専門家の意見もある。根拠となった動物実験では、この評価がなされているかという意見です。
これについては、Nagano先生のこの発がん試験における曝露量。これは、ラットに曝露した1,2-ジクロロエタンの気中濃度を基に評価しているものです。曝露濃度と症例の有無の間の量反応関係を検討するのは、動物実験では一般的な手法です。尿中代謝産物を用いて曝露量を推定する手法というのは、ヒトの曝露において外部からの曝露量を正確に推定できない場合に用いられるのが一般的です。今回の大気環境の指針値を設定するための曝露評価、これについては、外部環境からの曝露濃度で評価をすべきで、Nagano先生の研究のようにGLP基準に沿った実験施設における動物実験では、曝露量が正確に制御されているので、尿中代謝産物により曝露濃度を推計する必要はないというふうに回答しております。
その次の、左の番号29番ということですが、「遺伝子障害性があれば、発がん性に係る閾値なし」とする学説というのは、学会では確定したものとは言えないのではないかと。確定していない学説を根拠とした1,2-ジクロロエタンの指針値案を撤回すべきとする意見です。
この回答につきまして、国際シンポジウム等で、「遺伝毒性発がん物質の多くに閾値が想定できる」とする発表があるということについて承知はしているものの、国際的な主流となっているとは認識していないこと。また、有害物質が遺伝子障害による発がん性を有する場合は、標的細胞に対し遺伝子障害に係るイニシエーターとして働くので、原則として閾値がないものと考えることとしており、この原則を変更するまでには至っていないというふうに考えていると。また、この考え方としては、WHOを初めEU諸国でも広く採用されていると、一般的な考え方であると認識しているという旨の回答としております。
その次のページに行きまして、8ページ目です。左の番号30番ということですが、40ppm以下では腺がんや腺種や線維腺種の有意な発生率増加が認められるとは言えないとするNagano先生の実験のFisher検定結果から、ベンチマークドース法により40ppmよりはるかに小さい指針値案を導くのは妥当ではないのではないかとする意見です。
この回答につきまして、1,2-ジクロロエタンの発がん性については、閾値がないものと判断をしていて、このような物質の量反応関係の評価に当たって、腫瘍発生等について統計学的に増加傾向が有意であると認められることがポイントになっていると考えているということを回答に示しています。その一方、Nagano先生の1998年のラットの吸入曝露実験の乳腺腫瘍発生データについては、中央労働災害防止協会日本バイオアッセイ研究センターの報告によると、Fisher検定を用いて160ppm群で腺種、線維腺種の有意な増加が認められていることのみならず、傾向性についての検定であるPeto検定等によっても乳腺の腺がん、腺種、線維腺種のいずれの腫瘍も統計学的に増加傾向が有意であると認められており、これらを基に量反応関係の評価を行うというのは妥当なものと考えております。また、腺種、線維腺種、腺がんを併せたデータにについても、Fisher検定(160ppm群)で有意な増加が、またPeto検定等で増加傾向が有意であると認められているので、この点についてはリスク評価文書にも明記をしていきたいと回答しております。
その次、左の番号31番ということですけれども、疫学研究データから算出をされたベンゼンの環境基準値、塩化ビニルモノマーの指針値に比べて、1,2-ジクロロエタンの指針値が年平均1.6μg/m3以下ということは、従来からある労働安全衛生法の作業環境評価基準の基準濃度と濃度関係が逆転して、関連法規との整合性がとれていないのではないかとする意見です。
この回答について、指針値は、長期的曝露による有害性を未然に防止する観点から設定されるものであるとともに、個々の物質ごとの有害性評価に係るデータの制約の下に個々の物質ごとに疫学的知見、または動物実験の知見による健康リスク評価により定められる値ということになっております。一方、労働安全衛生法に基づく管理濃度、これは作業環境管理を進めるための指標で、そもそも目的も違うというのもありますけれども、作業環境の実情も考慮して決められた数値であること。そのようなことから、それらの数値の大小について直接比較するべきものではないと回答しております。
また、以前は10ppmであったベンゼンの管理濃度が、知見の集積とともに1ppmに改定されているように、指針値も新しいデータや知見の集積に伴って見直しをしていく必要があるというふうには考えているということを付記しております。
その次に行きまして、32番のところです。USEPAの10-5の生涯過剰発がんリスクに対応する大気中濃度の0.4μg/m3をどのように評価するのか。また、1,2-ジクロロエタンに係る大気標準について、ルイジアナ州では条例年平均値で3.85、テキサス州ではESLs(Effects Screening Lebels)の規定で年間平均値4.12というふうになっていると。この二つの州の大気標準値及びその根拠になるリスク研究結果について、どのように評価をしているかと。
主な理由にも書いていますけれども、塩ビモノマー用EDCというのは米国が世界最大の生産国で、特にこの二つに集中しているということが付記されておりました。
この点について、USEPAのユニットリスクの算出については、NCIで行われたラットの経口投与実験のデータを使っております。今回の指針値の算出に用いたNagano先生のデータというのは吸入曝露実験によるもので、より信頼性の高いものというように考えております。
また、ルイジアナ州の1,2-ジクロロエタンに関するAmbient Air Standardについては、1991年にUSEPAが示した生涯リスクレベル10-4のユニットリスクに基づき算出されております。テキサス州における1,2-ジクロロエタンにおけるESLsについては、US NIOSHのRELの1/1,000の値としており、このデータもラットの経口投与実験データを考慮したものと。なお、この値自身は、主に環境大気の監視レベルを評価するもので、大気標準値ではないということを付記しております。
最後のページに行きまして、1,3-ブタジエン。USEPAは、1,3-ブタジエンの発がん性以外の影響として、生殖発生毒性を重視して、NTPII研究の結果から、濃度を2μg/m3というふうに算出をものと比較して、どのように評価をしているかというものです。
このリファレンス濃度の算出に利用しているNTPによる雌マウスの卵巣萎縮に関する結果は、雌マウスの老齢期の影響であるということで、低濃度曝露の範囲では繁殖に影響を与える可能性は低いと考えております。
また、1,3-ブタジエンについては、USEPAが示している発がん性10-5リスク濃度について、どのように評価をしているかというものです。
USEPAについては、Delzellらのコホートに対する研究結果に基づいたECHCの分析に基づいてユニットリスクを推定しているものです。その後、スウェーデンのカロリンスカ研究所は、Delzellらのコホートに対する研究結果に対し修正された曝露推定量を用いて量反応関係を推定し、ユニットリスクを算定しているものです。こういったことから、この定量的データを用いてリスク評価を行うことが適当であると回答としております。
以上、資料2について、パブリックコメントに対する回答案ということで説明をいたしました。
【内山委員長】 ありがとうございました。
今回のパブリックコメント、非常に数が多かったこともありますし、それから専門的なご質問が非常に多かったので、回答の方も非常に細かいところに立ち入った回答になっておりますが、これについてご意見、ご質問、あるいはワーキングの先生方からの補足のコメント等がありましたら、よろしくお願いいたします。
【小林委員】 何点かあるのですが、専門的な部分というのはよく分からないのですが、それ以外の部分がほとんどです。
まず1点目は、1ページの3のところでございます。3のところで、最後の文章になりますが、「往々にして地方行政は過度の解釈をしがちであり」云々という文章があるのですが、ここの部分について、私自身地方行政の出身者ということですが、10年ぐらい前までは結構地方行政において、そういう先陣争いではないのですが、結構過激な行動が多かったと思うのですが、最近そのような行動はほとんどないというふうに私は思っておりますし、そういう事実も確認しておりません。そういう意味からしまして、このご意見、ここ数年間同じ意見の繰り返しなのですが、どの審議会でも同じ意見を繰り返しされていて、その事実関係をどうも確認をされないまま書かれているのではないかという気がします。
そういう意味からしまして、回答文書の中でも、一番最後から2行目のところになりますが、「通知したところですが、今回も同様に」云々と書きますと、何か「通知したが」と書きますと、何かまだそういう行為が行われているような誤解を招きます。そういう意味からしまして、ぜひここの部分については事実確認をしていただかなければいけないのですが、できましたら最後の文章のところで「地方公共団体への文書について通知したところであり、適正に運用されていると考えている。なお、今回も同様に」というような表現に直していただきたいと思うのです。ほとんどそういう事実は私自身知りませんし、最近はないと思います。
それから4ページ、アセトアルデヒドの部分の14、15、16、17のくだりなのですが、WHOの問題について、例えば14のところの回答文書のところですが、これは回答案ということでこれから回答されるということであれば、この後その案文検討がなされるわけですが、その文との整合性からしまして、「公表されたことは確認できないことから、この書簡に示された内容の趣旨を早急に確認した上で改めて指針値の算定方法の検証を行い、指針値を決定していきます」と書いてしまいますと、これから検討しますということになってしまう訳で、この回答文書をいつ出されるかということとの時点の問題はあるのですが、もしこの後この検討をされ、ある程度答申案文に詰めてしまうのであれば、ここのところは時点的にはその検討した結果を書くべきではないかなというふうに思います。そこのところ、時点的な問題も含めて、文章の検討が要るのではないかなと思います。
それから5ページ、ジクロロエタンの20のところですが、いわゆる非公開文献を使われているということなのですが、それはそういうデータがあって、それを検証したということであれば、別にそのこと自身問題はないし、私はそのことはいいと思うのですが、ただ、主な理由のところの下から6行目ぐらいのところに、「実験委託元の厚生労働省、評価書(案)発行の貴省、または」という形で、いわゆるその文献について問い合わせしたけれど、入手できなかったという言い方をされているのですが、実際に環境省にどういう問い合わせがあって、どういうご回答をされたかという事実確認を、もしここでそのデータについての提供を拒否しておればちょっと問題になると思うのですが、この辺について事実確認をお願いしたいと思います。
それから最後になりますが、8ページ、32のところでございますが、内容的に問題はないのですが、回答文書の最後のなお書きの部分で、私ちょっと気になるのは、「なお、この値は、主に環境大気監視レベルを評価するのに用いられており、大気標準値ではありません。」という、この大気標準値って何なのかがよく分かりません。そういう意味で、回答されたときに、このいわゆる環境大気監視レベルを評価する値というのと、大気標準値という言葉、それと今回の出される指針値との関係が分からなければ、これは回答にならないのではないかと思います。そういう点で、ここの文章をもう少し熟慮していただければと思います。
以上です。
【松田課長補佐】 まず、1点目の3番目のところですが、小林委員からもご指摘がございましたけれども、実際に前回も同様な形で、やはり意見として地方行政は過度な解釈しがちであって、その環境基準と指針値の違いというものを徹底してほしいという意見もありまして、そういうことも含めて、答申の趣旨なども含めて地方公共団体の文書で通知をしているというところです。
しかしながら、その後、いろいろと大気環境課とかこちらの聞くところでは、ダイレクトにこのような問題が発生しているという情報というのは承知していないという状況です。ただ、もちろんこの意見を出す側とすれば、ひょっとすると将来的にはそういうこともあるかもしれないということで、このような意見を出されているのかなというふうには思いますが、そういう意味で言うと、確かに小林委員の方からご指摘がありましたけれども、ここに「文書にて通知したところですが」というふうにせずに、「……であり、適切に運用されている」というふうに。
【浅野委員】 「適切に運用されていると考えます」ぐらいにされた方がいいかと。
【松田課長補佐】 「考えます」と。
【浅野委員】 これだと、適正に運営されているという証拠がないという水掛け論になる。
【松田課長補佐】 はい。「適切に運用されていると考えます」という形で修正した上で、「なお」ということで修正をしていきたいというふうに思います。
【浅野委員】 今のご質問は、要するに改めてその趣旨を徹底するようにという、ご懸念の意を表明しておられる訳であって、何も事実関係を争っているわけではないですね。だから、ご懸念なきようということを丁寧に答えればいいということでしょう。だから、通知を一度流して、それで済ませますというような印象は与えない方がいい。繰り返し繰り返し、丁寧にご説明申し上げますということが必要でしょう。
それから、本当は地方公共団体だけではなくて、マスコミなどについても、きちっとこの点の情報を説明しておかないと、マスコミ情報で動く自治体の人がいない訳ではないという懸念も生じないように、元々の根本のところを押さえておかないといけないということがあると思います。
【松田課長補佐】 それでは、この文章をもう少し丁寧な形でご懸念に答えるような形で修文をしたいと思っております。
また、まだ現時点では確たることは申し上げられませんが、いずれ何らかの形でマスコミの方や一般の方にお知らせするというような場合がありましたら、この点についても丁寧にわかりやすいような形で説明をしていくということを考えていきたいと思っております。
それで、その次の14番。ここの部分については、最初の2行目のところに、指針値設定の考え方をエッセンスとして記述しておりまして、しかしながら、このパブリックコメントの意見に関してWHOの書簡が出ておりという部分があって、その点を確認、検証していこうということです。小林委員のご指摘の点については、この上の2行のところに当初のアセトアルデヒドに関する指針値設定の考え方をどのように考えていたかというのを、エッセンスとしてまとめていたものと事務局としては考えております。
それと、次の20番の件ですが、どのようなやりとりがあったかということですけれども、事務局の方にこの意見の提出者の方からレポートをどこに行けば入手できるのかというような連絡がありまして、その段階で、この実験の委託元の厚生労働省の担当部署を紹介しました。その際には、当事務局の方からその厚生労働省の担当部署に対して、このような電話をかけた方から本知見に関連して連絡もあるかもしれないということで事前に電話をしているとことです。その後、厚生労働省の担当の部署の方から意見提出者の言う本レポートの縮刷版を、この意見の提出者の方が入手したと考えております。その後、特に環境省の方には問い合わせはなかったというのが事実関係というところです。
あと32番ですけれども、確かに小林委員のご指摘というのは、この意見の概要のところで、両州の大気標準値についてどのように評価をしているのかと言いつつ、この値を大気標準値ではありませんというのは、矛盾しているところはありますので、この大気標準値という部分の記述について、これはいわゆるリスクを評価するという部分の指針値に近いものということで考えて書いたつもりだったのですが、その点についてはリスク評価をするような目標値ではないというような趣旨の文章で修正をしていきたいと思います。
【内山委員長】 質問をされた方が、大気標準値という言葉を使っていらっしゃるのではないのですか。
【松田課長補佐】 これは、そのまま意見の概要として大気標準値というふうに記載をされています。
【内山委員長】 意見に記載されていたので、こちらに書いてあるんですね。ですから、この質問をされた方が大気標準値というものをどのように捉えて、いらっしゃるのか、分からず、こちらで解釈しなければいけないことになってしまいますので、監視レベルを評価するものですということで、止めておいても別に回答としては問題ないのではないかと思います。
【松田課長補佐】 それでは、そのような形で修正をしていきたいと思います。
【内山委員長】 そのほかにございますでしょうか。
小林委員よろしゅうございますか。
【小林委員】 はい。
【内山委員長】 この後これを基に、またもう一つ案をどういうふうに修正していくかという議論に移っていきたいと思いますが、とりあえずこの回答案で、こういうところは少し直したらいいのではないか、あるいは曖昧であるということがあれば、ご質問をもう少し、ご意見をいただきたいと思いますが。
【浅野委員】 最初のところの1に対する回答で、「公正な議論が行われないおそれがあること」という書き方になっていますが、殊さらそれを強調しなければならないのでしょうか。確かに情報公開などでは、こういうようなことを理由に挙げなければ、ほかに理由として適切な表現がないので挙げるということになるのですけれど、別にここで情報公開法との関係を論じている訳でもないのです。書いて悪いとは思いませんけれども、何か妙に刺激するような感じがするので、それよりも単純に科学的に議論をするということが大事で専門性を重視するということから、従来からもこのようなワーキングの作業については公開でやっていませんでした。だから、今回もそれに倣ってやったというのでいいのではないかという気がするのですが。
どちらでもいいんのですけれども、私だったら、公開だろうと非公開だろうと別に堂々と言うことはいう訳ですから、公開されているから公正な議論ができなくなるとは思えない。そんなに弱い先生方ばかりがここにいる訳でもないでしょうし、従来からワーキングのようなものは一々公開でやっていませんでしたということの方がいいのではないですか。これが先例になってしまうと、ほかで行っているワーキングについても同じような議論になっていく恐れがあります。準備作業をやっているところが、全部公開の場でやっているかというと、やっていませんね、他の部会でも。検討が必要だと思います。
【松田課長補佐】 今、浅野先生からのご指摘もございましたが、このリスク評価の報告書をつくるに当たって、全く白紙の状態からこのような数々の文献を精読をして、こういう精緻な文章案をつくるという過程もかなりございまして、その中の議論というのを、オープンな場でというふうにすると、やはり議論がしにくい部分もあるということもありまして、非公開としているというようなこともあります。ただ、そういう意味で言うと、ここに書いてある記述というのが、確かに浅野先生の言うとおり、少し刺激的なのかもしれませんので、この点については修正を。
【浅野委員】 もう一回、情報公開法の条項をよく読んで、適切な表現の条項をうまく利用したらどうですか。例えば意思形成過程情報については、途中の段階で非公開ということを行うことがあります。そのような条項の方がむしろ、この場合は当てはまるのではないですか。つまり自由にディスカッションをする、そのためには議論の中で、議論が行きつ戻りつとか、自分が言ったことを後で修正するということがある訳です。それを断片的に捉えられて、外であの人が途中で説を変えたみたいなことを言われたら、全然この種の議論はできない訳です。
意思形成過程では、例えば場合によっては仮説を立てて議論を誘発するとか、自分が思っていないことを強く言ってみて反応を見るというのもやります。そういうことがない限り、サイエンスの議論はできない場合がありますから、それを途中で変わったとか、どうなったとかという議論は困る。それはだから、外から働きかけを受けるということよりも、本当にサイエンスの議論を皆が行っていて、納得できたから自分の考えを引っ込めましょうというようなことができなくなったのでは、どうにもなりませんということでしょう。だから、どちらかというと、意思形成過程情報についての非公開とかなり近いのではないかと思います。
【小林委員】 いいですか、ちょっとその件で。ほかの委員会でも同じようなところがあるのですが、このワーキンググループの位置付けなのですよね。要するに、この専門委員会から委託を受けて、ワーキンググループが検討されているのでしょうかと。そうではなくて、環境省がその専門委員会に掛けるための資料作成の段階でワーキンググループにお願いをして資料を作成していったということであれば環境省の内部事務の話であって、そこを公開しろ、しないという議論は対象外だというふうに思うのですよね。ですから、議論を公開するのは、この専門委員会に掛ってからの話ではないかということで、その辺を明確にしないと、この説明で行きますと、浅野先生が言われたとおり、ほかの問題にも皆波及してしまうので、いわゆる検討レベルの問題だというように整理された方がいいのではないかなと思うのですが。
【松田課長補佐】 今、小林先生からも言われたとおり、このワーキング自体は環境省としてリスク評価文書案を作成するための、その委託調査の過程の中で本専門委員会委員の中のメンバーの一部の方に入っていただいてその上で作成をしているということも、これは事実としてありますので、その点も踏まえて、また浅野先生からご指摘のあった意思形成過程の部分、それとこのワーキングの作業過程と、そもそも環境省の調査に関する事務委託の部分で行っているということも併せて、この中に今、書かれてある文章は修正をして回答案とさせていただきたいというふうに思っております。
【内山委員長】 はい、分かりました。では、この部分は今のような方向で、少し浅野先生と私の方と事務局でご相談させていただいて、多少の修文の後にまとめるということでよろしゅうございますでしょうか。今のような方向にしたいと思います。
(異議なし)
【内山委員長】 それでは、このパブリックコメントに出てきた回答案というものをご承認いただいたということで、次の議題に入りたいと思いますが、よろしいでしょうか。
(異議なし)
【内山委員長】 そうしましたら、次の議題は、議題2の専門委員会報告案についてということで、資料3、4につきまして事務局よりご説明をいただいて、また議論していただきます。よろしくどうぞお願いします。
【松田課長補佐】 それでは、5月30日に開催した前回専門委員会における本資料について、パブリックコメントの意見を踏まえ、修正した事項を中心に説明をしていきたいと思っております。
資料3にあります、「指針値算出の具体的手順」の一部改定と。これについて、パブリックコメントの意見により修正した事項はございませんが、簡単におさらいをしたいと思います。
まず、ここの資料3の中に、別添資料1ということで、7次答申を付けております。この中に指針値算出の具体的手順というものが書かれております。別紙6ページ目にですね。今回はここの一部改定を行うというものです。
この指針値の具体的手順としては、有害性評価、曝露評価及び総合評価の評価方法の考え方をまとめたものですけれども、ここの部分について少し見直しをしているということです。この中の内容を、5月30日から大分時間も経っていますのでもう一度おさらいをすると、有害性評価につきましては、発がん性、発がん性以外の有害性別に定性評価、定量評価に資する文献を抽出して、そのうち最も信頼性の高い文献から得られたデータを基に指針値を算出します。発がん性と発がん性以外の有害性がともに算出可能な場合は、ともに指針値を算出します。
指針値の算出は、疫学研究及び動物実験とともにデータが得られる場合は、疫学研究から得られたデータに基づいて算出します。
具体的な算出方法は、発がん性について閾値がないと判断される場合は、平均相対リスクモデル等を用い、閾値があると判断される場合や発がん性以外の有害性はNOAEL等に不確実係数を掛ける方法によることにします。動物実験データを用いる場合は、諸外国で実施された評価例を参考に最新の知見に基づいて行います。
指針値の算出に利用する曝露情報、これについては原則として大気経由の曝露のみを取り扱うこととします。総合評価として、有害性評価の結果得られる指針値と曝露評価の結果を比較して、現時点でのリスクを評価します。
発がん性、発がん性以外の有害性ともに指針値が算出されるものは、低い数値を採用するといった内容のものでした。
この部分について改定を行うというところで、資料3の2番目、2ページ目です。ここで三つのポイントがあるということですが、「指針値」と「有害性に係る評価値」の区別を行うこととしました。最終的に指針値を設定するまでに至る過程で、定量評価に資する文献から得られたデータに基づき算出された数値、これを仮に「有害性に係る評価値」と呼ぶこととして、指針値と区別して表記することとしました。これがまず一つ目。これは用語の見直しですね。
2番目、閾値がないと判断される場合の「有害性に係る評価値」の具体的算出方法の明確化です。これにつきましては、疫学研究の部分については、ユニットリスクを用いた平均相対リスクモデルということですけれども、動物実験の場合は、以前は先ほどもお話ししたとおり特に事例を付けていなかったということもあるのですが、今回1,2-ジクロロエタンの検討でもベンチマークドース法を用いました。これは、EPAでリスク評価指標として採用しているというようなものもありまして、そういった諸外国等で用いられている手法というのを参考にして最適な方法を用いることが適切であるということを明確にしているのが(2)の内容です。
(3)の発がん性、発がん性以外の有害性に係る評価値がともに算出可能な場合の「有害性に係る評価値」の算出方法に関する記述の明確化です。具体的には発がん性、発がん性以外の有害性、この二つに関する評価の知見がある場合に、算出に最適なデータが一方は疫学研究データ、もう一方は動物実験データ。この場合、疫学研究データがヒトの健康影響に関して、より妥当性のある情報であることも考慮して比較検討を行って、その上で両方のリスク評価値を算出する必要性がないと判断された場合は、疫学研究データのリスク評価値のみを算出することもできることとしたものです。
この見直しのポイントを踏まえて、添付資料2に修正した内容というのを盛り込んでいるものです。これが、資料3の主要部分です。
次に行きまして、資料4の4物質に関するリスク評価です。主に、先ほどパブリックコメントの意見に関する回答について、一部修正がございましたが、基本的には了承いただいたきました。それで、そのパブコメ、パブリックコメントの意見を踏まえて修正した事項を中心に説明に行きたいというふうに思います。まず、2ページ目の3ポツ目の環境中の有害大気汚染物質による指針値の概要という部分です。ここの中で、以前は「4物質について指針値の設定を行い」というふうになっておりましたが、アセトアルデヒドについてはWHOの書簡も含めて、その書簡の確認を行った上で引き続きその算定方法について検討していくということもございますので、アセトアルデヒドについては引き続き検討を行うこととしたということで、修正を行っております。
その次に行きまして、3.1 アセトアルデヒドということですけれども、ここは先ほどのパブコメの、パブリックコメント意見に対する回答という部分についての整合性ということで若干修正をしています。
4ページ目に行きまして、2番目、(2)の[2]発がん性以外の有害性に係る定量評価と。ここに元々、厚生労働省はアセトアルデヒドの刺激性のNOEL270を基に不確実係数及び曝露期間を考慮して、室内濃度に関わる指針値を48μg/m3としたという文章があったのですが、その下に「一方、WHOは、Guidelines for Air Qualityにおいて許容濃度は50μg/m3としていたが、2003年11月にWHOの人間環境保全部が部長名で、当該数値はIPCSの作成した環境保健クライテリアを根拠に設定したものであり、アセトアルデヒドの刺激性のNOAEL275mg/m3を基に、不確実係数を考慮した300μg/m3が正しいとする書簡を示している」と。この文章をここに付けました。
それと、その次のページの(4)の[2]発がん性以外の有害性に係るリスク評価についてのところでも、同様の文章を記述しております。
最後に、[3]指針値の提案ということですけれども、「アセトアルデヒドの指針値について、発がん性以外の有害性に関しAppelmanらの知見を基に、NOAELに不確実係数及び断続曝露から連続曝露への補正も加味した算定方法によって、48μg/m3以下と算出された。その一方、Applemanらの知見を同じく活用したとするWHOの人間環境保全部は部長名で、Guidelines for Air Qualityにおける許容濃度について、NOAEL275mg/m3に不確実係数を加味して300μg/m3が正しいとする書簡を示している。従って、このWHOの書簡に示された内容の趣旨を早急に確認した上で改めて指針値の算定方法の検証を行い、アセトアルデヒドの指針値の提案を行うことが適当である。」と修正をしております。
また、別添1にリスク評価文書を付けておりますが、こちらも同様に修正をしているところがございまして、27ページに指針値の提案と、5番目のポツの(3)ですね、ここにも概要と同じ文章をここの文章に合わせて修正を行っております。
あともう一つ、1点修正がございまして、18ページに行きまして、3.曝露評価の(1)大気中のアセトアルデヒドの起源という部分で、元々は「一方、届出外の発出源からは」という部分の「届出量をはるかに上回るアセトアルデヒドが環境中に排出されたと見積もられている」と。「そのうち、自動車排出ガスに含まれて大気中に排出されたアセトアルデヒドが6,189tと最も多く」、その次の「壁紙の接着剤からの揮発など」という部分について、いろいろパブリックコメントの意見もございまして、この点について事実関係を確認したところ、「たばこの煙による」ということが事実だということもございましたので、この点について修正を加えているというところです。これが別添1も含めた形でアセトアルデヒドの修正した部分というところでございます。
3.2 クロロホルムに戻りまして、概要とリスク評価文書ともに変更はございません。ただ、最後に8ページ目に指針値の提案についてということで、最後の[3]指針値の提案について、もう一度確認のために読み上げさせていただきます。「発がん性に係る評価値及び発がん性以外の有害性に係る評価値は、ともに18μg/m3と算出された。よって、クロロホルムの指針値を年平均値18μg/m3以下とすることを提案する。なお、この指針値については、現時点で収集可能な知見を総合的に判断した結果、提案するものであり、今後の研究の進歩による新しい知見集積に伴い、随時、見直していくことが必要である。」という内容となっております。
それで、その次に行きまして、3.3 1,2-ジクロロエタンについてです。これについて、概要について変更はありません。指針値の提案について、これについても11ページ(4)の[3]ですが、読み上げさせていただきます。「以上より、発がん性に係る評価値と発がん性以外の有害性に係る評価値は、それぞれ1.6μg/m3、420μg/m3と算出された。よって、指針値の算出手順に基づき、両値を比較し低い方の数値を採用することにより、1,2-ジクロロエタンの指針値を年平均値1.6μg/m3以下とすることを提案する。なお、この指針値については、現時点で収集可能な知見を総合的に判断した結果、提案するものであり、今後の研究の進歩による新しい知見集積に伴い、随時、見直していくことが必要である。」と書かれております。
なお、リスク評価文書につきましては、修正をパブリックコメントにおける意見の回答を踏まえて、記述内容の明確化を図っている箇所がございます。その点についてご説明をすると、まず7ページ目に行きまして、表3の動物実験に関する概要。ここのところの、吸入実験についてのMaltoniの知見について、これは先ほどパブリックコメントの意見、左の番号21番に対応して、この研究内容から吸入曝露による動物実験での発がん性を認めないと判断することはできないとする考えを明記しております。
あと8ページ目に行きまして、これはNagano先生の知見の件ですけれども、これはパブリックコメント意見番号30番に対応して、乳腺の腺がんとの傾向性について、検定により増加傾向が有意であること、雌の乳腺の腫瘍、腺腫、線維線種、腺がんを併せたデータについて、Fisher検定により有意な増加があることなどを明記しております。
また、32ページに行きまして、この指針値の提案に(1)というところで、パブリックコメントの意見番号23番に対応して、ベンチマークドースを採用した方法というのをここで付記をしております。動物実験の結果をヒトに外挿する手法について、USEPAの発がん物質リスク評価ガイドラインに示され、さまざまな物質について使用されている、ベンチマークドースからの低濃度直線外挿を用いることとするということで付記をしております。また、併せて松本先生の文献というのも追加をしております。
次、34ページ、別紙のユニットリスクの算出ということですけれども、パブリックコメントの意見番号26番に対応して、腺腫、線維線種、腺がんを併せて評価を行うことが適当である考え方を明記しております。ここは「雌ラットの乳腺の腺腫は、通常、線維腺腫と明確に区別するのが難しい場合があり」と、「以下の理由により、腺がん、腺腫、線維線種を併せて評価するのが適当である。」ということで、先ほどパブリックコメントの意見部分の回答でもご説明した内容の趣旨というのを、ここでも明記をしているということです。また、この件に関連して、参考資料12に示すBoormanの知見も文献として追加をしております。
あと、Nagano先生の知見も、パブリックコメントの意見番号20番に対応して、Journal of Occupational Healthに受理されているということも踏まえて、この点について文献として、例えば43ページにも書かれていますが、Acceptedということで書かれていることを、ここの中に追加をしております。これが1,2-ジクロロエタンの内容というところです。
最後に、3.4 1,3-ブタジエンです。これについても、概要とリスク評価文書ともに変更はありません。最後に、指針値の提案という部分について、読み上げさせていただきます。(4)の[3]ですね。「1,3-ブタジエンの指針値を年平均値2.5μg/m3以下とすることを提案する。なお、この指針値については、現時点で収集可能な知見を総合的に判断した結果、提案するものであり、今後の研究の進歩による新しい知見の集積に伴い、随時、見直していくことが必要である。」ということをここに示しております。
資料3と資料4の説明については以上です。
【内山委員長】 ありがとうございました。
ただいま資料3と4につきましてご説明いただきましたけれども、ご意見、ご質問あるいはワーキングを兼ねていらっしゃる委員から補足のコメントがありましたら、お願いいたします。
【大前委員】 資料4の4ページ、アセトアルデヒドのところですけれども、修正された部分です。アンダーラインが引いてあるところですが、ここに許容濃度という言葉が使ってあるのですけれども、英文はTolerable concentrationと書いてありますよね。これは耐容濃度の方がよろしいと思います。それはほかのところも全部修正された方がいいと思います。
【内山委員長】 はい、分かりました。ありがとうございます。
WHOのGuidelines for Air Qualityでは、Tolerable concentrationというのが本当の言葉ですので、日本語では耐容濃度というように言っておりますので、Acceptable concentrationとはちょっと違って、大気中にあって意図的でないものはTolerableであるということです。ありがとうございました。耐容濃度というようにさせていただきます。
ほかにございますか。
【横山委員】 今の大前先生の発言はそのとおりですけれども、当該数値はIPCSの作成した環境保健クライテリアを根拠に設定したものであるとなっていて、IPCSの算出した環境保健クライテリアでは50μg/m3となっているように受け取れるのですが、手紙を見ますとそうではなくて、要するに300μg/m3という数値がこのIPCSの作成した環境保健クライテリアにも引用されておりますというようになっていますので、ちょっと文面を変えないと間違った解釈になりますので、手を入れておいてくれませんか。要するに300μg/m3が正しいと。そして、この値はエンバイロンメンタル・ヘルスクライテリア・ドキュメントにも出ておりますというようになっておりますので。
【内山委員長】 できれば、どういうように直したらいいかというのもお示しを。
【横山委員】 要するにEHCではやはり300μg/m3と書いてあります、50μg/m3とは書いていない。だから、そこら辺のところをやはりきちんと、どういう理由であるのか検討すべきだと思いますけれどもね。
【松田課長補佐】 済みません、もう一度確認なんですが、例えば指針値の提案についての[2]などに「しかしながら」というところがありますけれど、「Appelmanらの知見を同じく活用したとするWHOの人間環境保全部が部長名で、Guidelines for Air Qualityにおいて耐用濃度を50μg/m3としていたものの」と、この後の2003年11月に50という数値は間違いであり、300が正しいとすると書簡を示しているというのがこの書簡の内容でして、今、横山委員が言われたのは、50としていたものという部分がどうかということですか。
【横山委員】 この部長さんからのお返事の第2パラグラフの下から3行目、これによるとそのようにとれるのですけれども。ただ、そのことだけです。この資料4では、IPCSが50μg/m3と言っているようにとれますよね。
【内山委員長】 そうですね、はい。
【横山委員】 訂正された方がよろしいだろうということです。
【浦野委員】 よろしいですか。関連して、今のところのこの手紙の取り扱いなのですけれども、国際プログラムが発表した環境保健クライチクアという文書では300μg/m3というように書いてあるという表現になっていて、WHOのガイドラインは50μg/m3のままで今のところある訳ですよね。
【内山委員長】 今これはホームページでは引っ込めてしまって、再検討するという状態だと思います。
【浦野委員】 一応、消えているということですね。
【内山委員長】 消えてしまって、その後がまだ何も出ていないということです。
【浦野委員】 2003年11月の手紙で、数カ月後には利用可能になると思いますとこう書いてあるけれども、それが2006年になってもまだ出きていないと。それについてさらに問い合わせをして確認をすると、そういう趣旨ですよね。
【内山委員長】 そうです。
厚生労働省からは大分問い合わせはしてもらっても、余りいい回答が返ってきていません。
【浦野委員】 そうすると非常に曖昧なので、その辺は曖昧なのだという、その事実関係だけをきちんと書けば、それ以上踏み込めないですよね。ですから、その辺はないように、事実関係だけをそのまま正直に書けばいいのではないでしょうかね。表現に誤解のないように、それから、ほかに質問よろしいでしょうか。
【内山委員長】 はい。では、ここは誤解のないように、IPCSの方では300μg/m3と書いてあって、その後、今この4ページに書いてあるのは、当該数値はIPCSの環境保健クライテリアを根拠にしてというのはそれが50μg/m3になったというように見えるので、そこは修正いたします。分かりました。
【浦野委員】 まず、資料3なのですが、「3」は以前から議論しているところで今さらというところもあるのですけれども、この最後の添付資料2の改訂案:見え消し版という別紙、その前の、改定前の別紙もあるのですけれども、そこのところの曝露評価のところなのですが、一般大気環境については、大気モニタリングデータを使用して行うとあります。それはそれでいいので、発生源周辺に関しての曝露評価は、モニタリングデータと環境省委託調査で収集された知見のうち信頼性の高いデータを使用して行うと。こう書いてあるのですが、これは今、環境モニタリングは自治体がかなり自主的にやれるようになってきて、環境省委託調査以外は一切受け付けないかのようにとられるので。逆に言うと、委託調査でも信頼性が高いとは限らないという表現ですよね、これ、裏返してみれば。その中から信頼性の高いデータを選んで使うということですから。ですから、そういう意味では委託調査だけに限らずに、発生源周辺の環境は非常に今いろいろ問題になっているところですので、「委託調査など」というふうにして、委託調査に限定しない表現にしておいた方が私はいいと思うのですけれども、いかがでしょうかというのが一つです。
それからもう一点は、先ほど修正されたアセトアルデヒドの資料の別添1のPRTRの排出源の問題ですけれども、これは家庭からの排出というのは、たばこだけだったということで確認済ですか。ほかの接着剤等からの排出は、一切計算されていないということでよろしいでしょうか。
【松田課長補佐】 その点については、実際に担当の部署に確認をして、そのとおりであるということです。
【浦野委員】 接着剤というのも届出外として扱っているけれども、アセドアルデヒドは家庭用としては一切使われていないという計算に今のところなっているということですか。
【松田課長補佐】 そういうふうに、はい。
【浦野委員】 そうですか。その辺が少しどうかなというので、確認でした。
では、曝露評価のところについてはどうお考えか、お願いします。
【松田課長補佐】 この2番目の曝露評価の(2)の部分ということなのですけれども、以前も平成15年の際にデータというのをどこの知見にするかということだったのですが、「等」というふうにしてしまうと、ではその「等」というのが一体全ての、最後の境界線というのをどこで線を引くのかという部分が、やはり線を引きにくいという部分もあって、それでこういう形でかなり限定化されているのではないかなというふうに思うわけでして。そういう意味で言うと、現時点で言うと、この大気モニタリングデータ及び環境省委託調査で収集された知見のうち、信頼性の高いデータで行っていくと。いや、もちろんそのほかの一般的にやられている知見も、非常に信頼性があるものももちろんあるとは思うのですが、その点については、ある程度信頼性という点で線引きをしてやっていく必要があるのではないかということで、ここはこういう記述になっていると。
【浦野委員】 そのいきさつは十分承知の上で提案ですけれども、私の申し上げたのは、発生源周辺については、PRTR情報がなかった時代と、今はあって大分状況が変わってきた状態、あるいは事業者自身が測るというようなこともされている時代になりましたし、それから環境モニタリング自身が環境省の委託事業ではなくなってきている訳ですよね。そういうことも踏まえると、表現をもう少し幅広にして、こういうデータがありますよと、もし環境省に提供があれば、それも含めて検討の対象にした方がいいというように思います。今の表見ですと、もうこれ以外は一切受け付けないと逆に閉めてしまっている訳ですから、オープンにしておいて、環境省としてはこういうデータを中心に今は扱っていますと。ほかにあって、情報があれば情報をくださいとか、そのようにオープンな形にしておいた方が今後はいいのではないでしょうか。例えば、ある自治体が非常に熱心に何かやった場合、それは環境省の委託でないから、全然要りませんよという必要はないのではないでしょうか。
【浅野委員】 環境モニタリングデータは、評価書の方では、地方公共団体によるモニタリングがと書いてあります、それから言うと地方公共団体によるモニタリングが含まれるということになっています。
【浦野委員】 ええ。ただ、それは環境省委託調査ではないのですよね。
【浅野委員】 大気モニタリングデータと環境省委託調査と、二つに分かれています。
【浦野委員】 大気モニタリングデータというのをどういう定義にするかですかね。
【浅野委員】 それは評価書によると、地方公共団体によるモニタリングについて書かれていますので、書かれた人はそのつもりで書かれたのではないかと思います。だから、そのモニタリングも委託によるものでなければだめだというように限定しているわけではなく、「及び」とありますので、両方それぞれ並列かと思います。
【浦野委員】 もちろんそうです。そのとおりです。
【浅野委員】 よって、全部が委託でなければいけないということではないですから、大気モニタリングデータということで十分評価できるものは入り得ると読める。少なくとも法律家の目から見れば、そのようにしか読めない。
【中杉委員】 よろしいですか。曝露のところは担当させていただいたので。これはあくまでも指針値の検討にあたっての参考情報ということで曝露評価をやっていますので、これで指針値超過についての議論をするものではない。そういう意味では、ある限定した中で得たものでこういう情報を出しているので、この後、これが実際超えているか超えていないかということに関しての議論のときにはもうちょっと幅広く情報を、信頼できるデータを得て利用していくのだろうというように思います。やはり現段階では、少なくとも今回の報告書の中では、「など」と記述すると、それは間違いになってしまうということになります。
【浦野委員】 その基本的な具体的手順というのは、今回の分についての記述だけというふうに理解するのですか。それとも、一応原則はこれで今後も行きますという議論なのですか。
【浅野委員】 やはり基準というか、指針値を考えて決めるというときに、どういう材料を用いたのかと聞かれたときに、ある程度公定性のある材料を使っていますという方がより説得力があるという趣旨でしょう。
ですから、「など」と書いてしまうと、余り確実ではないようなものまで含めて、その中の確実であるかどうかということも恣意的に考えられていると言われたら困るから、一般的に行政が常に汎用性がある情報として使っているものに基づいてやっていますということを言いたいということなのでしょう。先程、中杉委員がおっしゃったように、その後の監視等について考える時には違うけれども、ここで指針値を作る時はとりあえずこの手順でやりますということによって余計な批判は避けたいというふうな、書いた人の意図だろうと読んだので、しようがないかなという気はします。
【松田課長補佐】 やはり指針値を設定するための根拠となる評価のデータということで、ある程度規範性のあるというものを使っていきたいという意図があって、こういう形で、大気モニタリングデータ及び環境省委託調査という形になっているということです。
【内山委員長】 決してそれ以外の自治体のものを排除する訳ではないけれども、指針値を作るときには公的なデータを参考にし、さらにそれからのモニタリングになれば地方公共団体、それからそのほかのところでもこれを排除するものではないというようにとっていただきたいということなんですが。
元々、モニタリングデータというときには大防法に基づいてやられているものということだから、今のように自治体が自治体のお金でやるものも含まれるということで、環境省が委託したものでなければ駄目だと言っている訳ではない、という理解でいいですよね。
【松田課長補佐】 そうですね。
【浅野委員】 ほかのことですけれども、アセトアルデヒドについて、先ほどの修正を加えられたことについては理解はできる訳で、評価書の方の記載ぶりで、例えば先程の浦野委員がご指摘のPRTRのデータについて、壁紙ではなく、たばこの煙によるというように書かれたのは、一般大気環境を考えた場合にはこうならざるを得ないのでという趣旨だと思うのですね。
ですから、あくまでもここで言っている指針値は室内の話をしているのではなくて、一般大気環境を前提にしての議論だということである訳ですから、その点から言うと、この書簡のやりとりも少し文脈が違うという面もあるのですけれども、一般的な数値として50μg/m3か300μg/m3かという話があることは事実だから、そこはもう少しきちんとよく調べますということは、それでいいと思います。
それで、これはこれで別に構わないのですが、せめて評価書で消されてしまっている、算定された48μg/m3という数字が有害大気汚染物質モニタリング調査ではこの数字を超えて検出された例はありませんということまで消してしまう必要はないような気がいたします。だから、前の方で壁紙を消したのだったら、それとのバランスからしたら、これは残すべきではないか。要するに、室内の話をしている訳じゃないのだから、だから、「なお」としておいて、書きぶりはどのようでもいいのですけれども、48μg/m3という数字に関して言うならば、有害大気のモニタリング調査では、これを検出された例はないというのは、残しておいてもいいような気がするのですが。
将来的にこの300μg/m3の話に決着が着いたときでも、一般大気をどうするかという話については、それを参考にしながら、なお考えるということはあり得る訳で、機械的に300μg/m3でいいと、一般大気も300μg/m3でいいという結論にするというのだったら、今よりも汚してもよろしいということになりかねない訳ですから、それでは恐らく国民は納得しないのではないですかね。だから、ともかく数字がはっきりしないから、そこは確かめるから、少しペンディングにしますというのはいいのですけれども、全部消してしまうというのはどうなのでしょう。別に消して悪いとも思いませんけれども、バランスということで言うと、一般の大気について事実はこうですと、本文の中にも書かれている訳ですから、それを最後のところでもう一回繰り返しても構わないような気もしますが。ご検討ください。
【内山委員長】 どうでしょうか。アセトアルデヒドの評価文書の27ページの指針値の提案についてのところの修正で、「発がん性に係る評価値は算出されず」以下を6行消してありますけれども、全部消さずに、この曝露評価の部分は残してはどうかというのが今の浅野委員のご意見です。なお、この48μg/m3の値を大気濃度の調査結果と比較すると、有害大気汚染物質モニタリング調査では、2004年度までこの値を超えて検出された例は見られない、というのは残しておいても構わないのではないかというご意見ですが。
【横山委員】 浅野先生のご発言もわからないではないのですが、僕はこれは要らないのではないかと思います。こういうところに書くと、現実の濃度を勘案して指針値を決めたというようにとられる可能性がある。ワーキンググループではそのようなことは考えていませんし、やはり余り勘繰られないように、削除すべきではないかなというのが意見です。
【内山委員長】 中杉先生は。
【中杉委員】 さっきの室内からのたばこの煙によるというところで少し議論があったのでご説明しておきますけれども、これは実際にPRTRの届出外の推計で512トンの中身自体がたばこの煙だけだったということで、このように書いてあります。実際に家庭から出ているのは、たばこの煙が全てかというと、必ずしもそうではないだろうというように考えますけれども。
【浅野委員】 いや、室内の話をしている訳ではないから、こうなるだろうという話をしただけです。
【松田課長補佐】 済みません、今の浅野先生のご提案について。少し検討を事務局としてもさせていただくのがいいかと思いますけれど、まずこの(3)が指針値の提案についてという項目になっておりますので、そこに具体的な数字が出てくるということで、いろいろと誤解を招く面もちょっとあるかと思いますので、そういう意味で扱いについて少し慎重に事務局の中で浅野先生と相談しながら、検討してまいりたいと思っております。
【浅野委員】 別にこだわるわけではありません。
【内山委員長】 この委員会で再検討を全て含めてするという方針なので、どうでしょうか、事務局でまたご検討いただいてもいいのですが、できればここで意思疎通をしてしまった方がよろしいですよね。
【浅野委員】 では削除のままで結構です。そのかわり、ともかくどこかで、我々が議論しているのは、要するに一般大気の話ですということが分かるように、繰り返し繰り返し記載しておかないと、今後の議論も混乱をするという心配があるので、その辺ははっきりしてくださいというのが発言の真意です。
【内山委員長】 分かりました。これは室内と大気の問題であり、今までは室内指針値が決まっていて、大気指針値なり基準値が決まっているというのが、これは多分アルデヒドがその例で、そこら辺のところの混乱が大分あるのではないかということも考えておりますので、これは今回に限らず、ぜひいろいろなところで説明していきたいというように考えますが。
それでは、とりあえず今の指針値の提案についてというところですので、これは今回もう一回WHOの真意を調査した上で再検討するということでありますので、ここは評価文書としてはここで止めておくということで、事務局の方もそれでよろしいですか。
【松田課長補佐】 はい。
【内山委員長】 ありがとうございます。そうすると、先ほどの横山委員からご指摘のありました、WHOの書簡の表現ですが、例えば資料4の4ページのところに一つあります。「その一方、WHOは、Guidelines for Air Qualityにおいて耐用濃度は50μg/m3としていたが、2003年11月にWHOの人間環境保全部が部長名で、当該数値はIPCSの作成した環境保健クライテリアを根拠に設定したもの」というのは、これですと、当該数値というのが50μg/m3になっており、IPCSの作成した環境保健クライテリアにも50μg/m3と書いてあるようにとられますが、ここは300μg/m3ということですので、それを誤解のないように修正してほしいというご意見で、これはそうだと思います。よって、ここをどういうふうに修正すればいいか。もう、後10分ぐらいありますので、その間に少し検討していただいて、いい案文ができればそれでご了解いただければというように思います。今すぐうまい文章ができなければ、後で事務局と私にお任せ願えればというように思いますが。
この当該数値というと50μg/m3を指してしまいますので、当該物質の耐容濃度は、IPCSの作成した環境保健クライテリアを根拠に設定したものであると、それでよろしいでしょうか。そうしましたら、「当該物質の耐用濃度はIPCSの作成した環境保健クライテリアを根拠に設定したものであり、アセトアルデヒドの刺激性のNOAELを基に不確実係数を考慮した300μg/m3が正しい」とするのが、本来確かにこの部長の意見だと思いますので、「当該数値」ということを「当該物質の耐容濃度は」と、ちょっと意訳になりますけれども、それでよろしいでしょうか。
【浅野委員】 何よりもこれは公的な文書になる訳ですからそうすべきだと考えます。
【内山委員長】 それでは、「部長名で、当該物質の耐容濃度は、」ということにすれば誤解はないと思いますので、同じような文章がいろいろなところに、本文の方にも使ってありますので、そこは全部そのような表現で修正させていただきます。
そのほかにありますか。
【櫻井委員】 このWHOの部長は多分、明らかに間違っていると思うのですね。それだけは言っておいた方がいいと思うのです。要するに、IPCSのクライテリア・ドキュメントが間違っている。それはなぜかといいますと、IPCSは300μg/m3を出しているのです。その理由は275μg/m3を1,000で割っている訳ですね。その1,000の内容として、10が種間、それから10はその種内のバリエーションで、あと10をlong・term・study以下であることと、sevirity of effect、それだけ挙げているのですよ。それで、この実験が週5日の1日8時間の断続曝露のデータであるということを忘れているのですね、IPCSは、ですから、それを修正してWHOが5.6で割った数字を出したのだと思います。それと同じ結果に厚生労働省もなっている。ですから、この部長は間違っていると考えられます。
【香川委員】 これはそもそもIPCSのTolerable concentrationを出す時に、これに従って出すという文献が引用されています。それは、Tolerable concentrationは何かというのが、IPCSのエンバイロンメンタル・ヘルス・クライテリア170、これは1994年に出されている訳ですけれども、その中でtolerable・intakeという言葉が使われていまして、tolerable・intakeとは何かという定義がなされております。
アセトアルデヒドはTolerable concentrationとなっておりますけれども、それもこのエンバイロンメンタル・ヘルス・クライテリア170の中で、tolerable・intakeには、経口摂取とか吸入などいろいろあって、これは総摂取量を意味しているけれども、空気中の濃度を表す時にはTolerable concentrationと表すというようになっておりまして、そして、Tolerable concentrationとは何かという定義があって、これは評価できるような健康リスクがなく、生涯にわたって発生し得る物質の摂取量の推定、つまり環境基準的ないわゆる大気質のガイドラインの定義になっている訳ですね。ところが、片方では、このEHC170の定義の中で、そうは定義しているのですけれども、一般集団と職業性曝露のtolerable・intakeを導き出す際には、後者の場合有意に低い不確実係数を用いることは妥当であるということも認めているのですね。ですから、アセトアルデヒドで出されているエンバイロンメンタル・ヘルス・クライテリアのTI、Tolerable concentrationというのは、職業性曝露の指針を出している可能性も否定はできないのですね。
で、一般集団に関しては今、櫻井委員がご指摘のように、最後の10のところがどうしてもlong・termから、実験は4週間の曝露で、それを長期間曝露に直すのに10を加えて、しかも影響の10と、つまり発がん性も否定できないということで10。でも、それはもし一般集団に対するものを考慮するとしたら、10はちょっと低過ぎると思うのですね。ですから、私は今後の対応のところで専門委員会にお願いしたいのは、この10という数値、今となってはこのエンバイロンメンタル・ヘルス・クライテリア167を作ったのは1995年ですから、もうかなり古くなっているので、当時の人たちに確認するということはなかなか難しいのではないかと思いますけれども、元々こういったもの、WHOのこういった指針というのは、一応参考として出されていて、それぞれの国々の専門委員会が独自にそのデータを使って独自の指針を出していいということになっている訳ですから、ここの委員会でその辺をはっきりさせていただければいいのではないかと思います。
それから、WHOのRAに関しましては、私が独自に調べた範囲では、このGuidelines for Air Qualityという、WHOには二つ指針値がありまして、Air Quality Guidelines for Europe、ヨーロッパのものと、もう一つはWHOグローバルが出しているGuidelines for Air Qualityというものがあって、これは今、全面改訂しておりまして、その中の主要な大気汚染物質に関しては10月に改訂されたものが出ておりまして、そして、このアセトアルデヒドとかそういったものを含んだ修正版は今年度中に出るというように理解しております。
ですから、以上2点、つまり一番最後の10というところは、一般集団を対象にしているのか、職業性集団を対象にしているのか。もし、職業性集団を対象にしていると、この専門委員会が判断するのであれば、さらに厳しい基準、つまり5.6を含めて、それで出されるということであると思います。
【内山委員長】 ありがとうございます。そこら辺のところが、なかなか厚生労働省の委員会、それから今回の専門委員会、ワーキンググループでも随分議論をいたしまして、書簡で問い合わせたのではなかなかはっきりした回答が返ってもなかったというのが今までの現状ですので、今回の環境省の方は直接行ってインタビューをしていただくということですので、そういうことも含めて少しWHOの考え方を、今、香川先生がおっしゃったようなことも含めて調べてきていただいて再検討し、またこの委員会にお諮りして最終的な考え方を示したいというのが、この委員会としての意見としたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。アセトアルデヒドに関しては多少の時間をいただいて、もう一回再検討したいと。これは、その書簡の真偽というだけではなく、その考え方、先程おっしゃいました考え方も含めて再検討したいというのが今回の委員会のまとめとしたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
そのほかにありますか。
【松下委員】 ちょっと蒸し返しになりますけれど、このアセトアルデヒドの18ページのPRTRのところで、浅野先生や浦野先生がおっしゃったように、室内からの排出量512トン、それがほとんどたばこであるというようにはとても考えられないですね。私もよく計っていて、室内で非常に、誰もたばこを吸っていないところでも全部出てくるのですよ。だから、調理をしても出てくるのですね。だから、これだけだって決め付けるのは少し問題で、室内構造物とか人間の生活活動でも起こってきますし、喫煙でも出てきますから、そういうのも少し書くか、または家庭からの排出だけにしてしまうか何かしないと、何かある特定のものだけ、あとはみんな平気だというのは、ちょっと考えられないですね。
【浦野委員】 ちょっとそれに関連してですけれども、PRTRの推計がこれだけしかされていないというのは、事実として多分こう書かざるを得ないのだろうと思うのですけれど、そのほかに当然、室内での発生源があるということが何となく見えなくなるのはちょっと誤解を招くというのは、今、先生のおっしゃるとおりであると思います。
それに関連して、パブコメの回答と、それから今のアセトアルデヒドについての別添1のところとが、どうも整合性がとれていないというか、非常に問題がある。例えばパブコメの回答では、もう住宅からの排出量の影響は小さいというふうにはっきりと書いてある訳ですけれども、実は濃度は大気に比べて100倍ぐらいなのですね。それで、この文章に、別添の方も室内空気の方からが非常に高い濃度で検出されるということも明記している訳ですね。文献は、大体100倍ぐらいの濃度になっているのですね。それでいて、たばこと書いてあると、何か室内はたばこで、しかも100倍濃度が高くて、だけど、家庭というか、住宅からの排出は無視できると、そういうような感じが非常にこう整合性がとれていない表現になっている。
ですから、家庭からのものが全く本当に無視できるかどうかということとか、たばこだけだという表現はちょっと誤解を招くので、もうちょっと何か工夫してパブコメも事実関係だけにして、影響が小さいとか大きいとかいうように書かない方がいいのではないか。パブコメは4ページの15番ですけれども、一般大気への影響は小さいと推察されるというようにもう書いてしまっています。片方で濃度は100倍ぐらいありますと、こう書いてあって、そうした時に大気の曝露の指針値というのは、一体室内曝露を無視して100倍濃度が高いところで8時間とか12時間、場合によっては過ごしている人たちのことを一切無視して計算していいのですかという議論にも発展しかねないですね。ですから、この辺は慎重に表現をとった方がいいというように私は思いますが。もうちょっと丁寧な表現を、それは事務局と座長にお任せしてもいいのですけれども。
【内山委員長】 中杉先生、何かご意見はありますか。
【中杉委員】 ここの部分は、先ほど申し上げたように512トンという数字の根拠がたばこの煙によるので、それはそのままなのですね。この部分はそれ以上のことは書けないので。ただ、室内についてほかにあるのではないか、これは想像されるのですけれども、裏付けのデータが必ずしもないということで、ここでは書き込んでいません。そこを何か書き込むかですね。その中には、いろいろなものが多分あると思います。そういう意味で、そこを何か文章として必要があれば加える、ただ、ここでは一般環境大気の話をしています。この指針値は、一般環境大気対象の指針値なので、室内の空気の汚染の話であれば、当然その他諸々の室内についての発生源、細かく書き込む必要があるだろうと思いますけれども、この辺のところはどうかということであるかと思いますが。
【内山委員長】 特にパブリックコメントの回答を見れば、発生源という一つの中に木造住宅の木質材料というのも書いてありますので。ただし、これをPRTRの定量的なデータとするにはなかなか、たばこですと多分消費量又は、販売量から日本全国のを出していると思います。ですが、そのほかに、たばこ以外にあることはもう分かっているけれども、そういうほかの一般的な家庭からの排出量というのは、なかなか定量的に計算できないということで、まだ難しいということでPRTRデータには入れていないという、そういう解釈でよろしいのでしょうか。
【中杉委員】 それはPRTRの排出量の推定をやっている方に聞いてみなければわからないですけれども、基本的には木材の場合には当初、例えば当座非常に高くて、それから急速に下がってくるということがあるので、そこら辺を見積もらなければいけないという話になりますよね。
【内山委員長】 なかなかそれを定量することが難しいということでしょうか。
【中杉委員】 多分そういうことだろうというふうに推察はします。
【内山委員長】 今ここに使っているのは、PRTRデータで何トンというのが分かっているものをここに書いていらっしゃるので。ただし、パブリックコメントの方では、むしろたばこというのは1回も出てこないで、そう書かれているので、曝露評価で、家庭内からいわゆる非意図的に出てくるものがあるということを少し書けますか。これは、定量的ではなくて結構ですけれど、発生源としてはこういうものを考えるとか…。
【中杉委員】 それは、その文献を引用すれば、そういう発生源もあるということは書こうと思えば書けることだと思います。
【浦野委員】 少しよろしいですか。PRTRについては、家庭では、たばこの煙のみからの排出量が推計されて512トンとされていると、そういう事実を書けば、私はいいと思いますが。別添1の22ページに、野外大気からのアセトアルデヒドの曝露量の推定というものが書いてあって、その下に室内空気からの曝露についてはというものがあって、23ページの頭に室内空気の方から高い濃度で検出されると、約100倍ぐらいのデータになりますが。だから、そこでの曝露はどうですかということを、つい聞きたくなってしまうということになります。
それと、先程のパブコメの回答とも併せて、もう少し表現を工夫しないと変であるという気がしますけれども。一切、大気しか考えないというのでしたら、室内のことは触れないということもあるとは思いますが。今後アセトアルデヒドについては指針値を検討するということですが、WHOの問題も曝露の問題も詳細は今後検討するということでもいいと思いますけれども、何かこういろいろ書いてあって、数字計算したり、考え方を整法すると断定的に言うのは、どうもすっきりしないという感じですね。
【中杉委員】 基本的には、この曝露評価のところは屋外大気を中心に記述してあって、それが一番この指針値に絡むところですので、それはできるだけ正確に測定結果を基に書いています。ただ、その他についても、当然室内空気だけではなくて、経口も含めていろいろなところで曝露はされますので、それについては定量的ではないですけれども、書き込んでいると、そのような整理の仕方です。
【浦野委員】 下の方に、たばこを吸うとこのぐらい曝露するとか事例も書いてある訳ですけれど、室内の空気濃度は、松下先生がおっしゃるように、たばこのないところでもかなりの濃度、先ほどの新築住宅というのがあって、それは天然の木材からも発生しますけれども、接着剤、ホルムアルデヒドの規制が厳しくなって、アセトアルデヒドへ動いているということはもう現実の事実です。そういうデータもありますし、過去に比べてアセトアルデヒドの室内濃度はむしろ新築の場合は若干増えているデータも出てきています。ホルムアルデヒドが置換されている、代替されているという状況もありますので。ですから、そういうことを踏まえると、そういう議論を余りここでし過ぎても、少し違うかなという気もしますので、余りたばこでの摂取量とか室内での摂取量とかというのは、ここの時点では少なくとも余り記述しないでおいた方がいい。その議論も今後アセトアルデヒドの指針値を決める時点でもう少し議論を詰めるという方が、私はベターであるというふうに思います。
ただ、パブコメに対してはそれなりの回答をしなければいけませんので、こういう濃度になっているということはいいのですけれども、影響が小さいか、大きいかという判定は、今の時点でする必要はないというように思います。
【内山委員長】 でしたら、まず一つはパブリックコメントで、室内からの影響は小さいと考えられますについては、そこは確かにデータとしては余りありませんので、そこは削除ということでよろしいでしょうかね。
それから、評価文書の方の中の曝露評価につきましては、どうしましょう、これを全部また直し出すとまた時間が掛かかってしまうので、今後検討を続けるという中に曝露評価も含めているということで、また室内との関係もいろいろ出てくると思いますので、これはペンディングになりましたので、それも含めて今後検討ということでよろしいでしょうか。
【中杉委員】 あと、全体的にほかとのバランスもありますので、こういう書き方をしているということです。基本的には、例えばアセトアルデヒドにすると、経口から曝露されるものを含めて大変大きいものがあります。そういうものも含めてどうするのかというところを定性的にここでは書き込んである話で、余り細かい議論はしていませんけれども。だから、そこら辺の議論をし始めると、また大変なことになりますから。
【内山委員長】 先ほど言いましたように、室内指針値と大気環境指針値あるいは基準値というのは、今まで余りこういうダブって議論されたことがないので、今、混乱していると思いますが、私個人の考えもありますけれど、ここでは余り述べられないと思いますが、これも含めまして継続ということにして少し整理、次回の指針値を出すまでには整理したいというふうに考えて、今回はWHOの考えも含めて検討を続けるという形にしたいと思いますが、それでよろしゅうございますでしょうか。
(異議なし)
【内山委員長】 それでは、大体意見が出たと思いますので、いろいろ熱心なご討議をありがとうございました。これで指針値算出の具体的手順の一部改定案、並びにアセトアルデヒド、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン及び1,3-ブタジエンに係る健康リスク評価案について、一部小修正を加えまして、専門委員会として了承ということにさせていただきたいと思います。
その後、指針値の提案に関する部会へと、ここを含めて今後の対応ということになると思いますので、事務局から今後の説明ということで、お願いいたします。
【松田課長補佐】 それでは、資料5に基づきまして、今後の対応についてご説明をします。
まず、1番目のクロロホルム等3物質に係る指針値の提案についてです。クロロホルム、1,2-ジクロロエタン及び1,3-ブタジエンに係る健康リスク評価に基づきまして、この当該3物質の指針値の提案について、「指針値算出の具体的手順の一部改定について」と併せて、中央環境審議会大気環境部会に報告することとしたいと思います。クロロホルムの指針値は年平均値18μg/m3以下、1,2-ジクロロエタンは年平均値1.6μg/m3以下、1,3-ブタジエンは年平均値2.5μg/m3以下です。
その後、大気環境部会における審議も経て、地方公共団体にこの3物質の指針値について、その本来の性格や機能も含めて周知を図る予定ということとしたいと思います。
2番目に、今後の有害大気汚染物質のリスク評価の検討についてです。一つ目ということでアセトアルデヒドですが、今後WHOの書簡に示された内容の趣旨を早急に確認して、改めて指針値の算定方法の検証を行い、健康リスク総合専門委員会の審議を経て、アセトアルデヒドの指針値の設定について提案を行っていきたいと考えます。また、指針が設定されていない優先取組物質ですが、これは大気環境学会誌において既に掲載され、一定の信頼性のある科学的知見が集積されているヒ素及びその化合物、酸化エチレン及びベリリウム及びその化合物について、健康リスク総合専門委員会WGにおいてリスク評価文書案の検討を行った上で、同専門委員会において審議を行うということとしたいと思います。
その他の物質については、引き続き一定の信頼性のある科学的知見を集積していくということで検討していきたいと思います。
以上です。
【内山委員長】 それでは、今ご説明ありましたように3物質について、これは11月8日に開催が予定されております大気環境部会におきまして、本日の結論が出た指針値算出の具体的手順の一部改定についてと、それからクロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,3-ブタジエンに係る指針値についてをご報告いたしまして、アセトアルデヒドに関しましては本専門委員会の継続審議事項ということでご報告したいと思います。よろしゅうございますでしょうか。
(異議なし)
【内山委員長】 ありがとうございます。それでは、今後そのように取り扱っていきたいというように思います。
それではあと、その他ということで、事務局の方よろしくお願いいたします。
【竹本局長】 水・大気環境局長の竹本でございます。ご審議の前半は国会審議の関係で欠席をいたしましたが、後半のご審議について参加をさせていただきました。このご審議をいただいております有害大気汚染物質による健康リスクの評価につきましては、私ども大気環境行政の根幹をなすものでございまして、大変重要なものとして認識をしているところでございます。本日は委員の先生方、大変ご熱心にご議論をいただきまして、指針値算出の具体的手順、またクロロホルム等3物質についての指針値について、専門会報告を取りまとめていただきました。
また、アセトアルデヒドにつきましては、ご審議いただいたとおり、今後引き続きご検討をお願いするものでございまして、私ども事務局としましても、担当官をWHO事務局現地に派遣をいたしまして、確認を急いでまいりたいと思っております。いずれにしましても、今後大気環境部会におきまして、先ほど申し上げました報告について、さらにご審議をいただくことになるわけでございますが、今後とも有害大気汚染物質健康リスク評価につきましてご指導を賜りますよう、よろしくお願いを申し上げまして、私の方からのお礼のご挨拶にさせていただきます。どうもありがとうございました。
【内山委員長】 ありがとうございました。それでは長時間、20分ほど過ぎてしまいましたけれども、活発なご意見をありがとうございました。今日の会議はこれで終了いたしたいと思います。
【松田課長補佐】 本日は長時間にわたってのご審議、ありがとうございました。
本日の議事要旨及び議事録については、また各委員にご確認いただいた上で公開することとさせていただきたいと思います。よろしくお願いします。