(部会長) | 坂本 和彦 | |
(委員) | 浅野 直人 | 磯野 弥生 |
加藤 順子 | 佐藤 洋 | |
松尾 文矩 | ||
(臨時委員) | 石川 義紀 | 伊藤 桂子 |
岩崎 好陽 | 内山 巌雄 | |
浦野 紘平 | 香川 順 | |
北野 大 | 小林 悦夫 | |
小柳 正治 | 櫻井 治彦 | |
佐藤 信彦 | 後藤 卓雄 | |
関澤 秀哲 | 大聖 泰弘 | |
中杉 修身 | 萩原 清子 | |
樋口 忠夫 | 松原 純子 | |
若松 伸司 | ||
(参考人) | 新田 裕史 | |
(環境省) | 水・大気環境局長 | 総務課長 |
大気環境課長 | 自動車課長 | |
環境管理技術室長 | 総務課長補佐 | |
大気環境課長補佐 | 大気環境課長補佐 |
配付資料
・中央環境審議会大気環境部会委員名簿
資料1 | 微小粒子状物質に関する取組みについて |
資料2 | 中央環境審議会大気環境部会における微小粒子状物質に係る審議経緯 |
資料3 | 微小粒子状物質リスク評価手法専門委員会報告について |
資料4 | 微小粒子状物質(PM2.5)測定法評価検討会報告について |
資料5 | 微小粒子状物質の曝露関係に係る取組みの進捗状況 |
資料6 | 微小粒子状物質に係る環境基準設定について(諮問) |
資料7 | 中央環境審議会大気環境部会の専門委員会の設置について(案) |
参考資料1 | 欧米における粒子状物質に関する動向について |
参考資料2 | 微小粒子状物質曝露影響調査報告書概要 |
参考資料3 | 大気汚染に係る粒子状物質による長期曝露調査結果概要 |
参考資料4 | 大気汚染に係る環境目標値設定状況 |
参考資料5 | 平成19年度大気汚染状況について |
参考資料6 | 平成19年度有害大気汚染物質モニタリング調査結果について |
参考資料7 | 電気自動車に係る実証試験事業について |
議事
【総務課長】皆様、長らくお待たせいたしました。定刻となりましたので、ただ今から中央環境審議会第25回大気環境部会を開催させていただきます。
本日、委員総数37名のうち22名の方のご出席を現時点でいただいてございます。定足数であります過半数に達しておりますことをご報告申し上げます。
本日、微小粒子状物質に関する取組みに関連いたしまして、坂本部会長のご指示をお受けしまして、定量リスク評価の専門委員会、先日レポートをまとめていただきましたが、この専門委員会の委員としまして報告作成の作業に携わっていただきました国立環境研究所の新田先生にもご出席をお願いさせていただいております。
それでは、まず初めに、環境省の白石水・大気環境局長よりごあいさつを申し上げます。
【水・大気環境局長】水・大気環境局長の白石でございます。前回は審議官として出席させていただきました。改めてごあいさつ申し上げます。
また、本日は年末の押し迫った時期、本当にお忙しいところご出席を賜りましてありがとうございます。
議題となります微小粒子状物質の件でございますが、各方面、大変関心の高い事項でございます。私ども環境省といたしましても、この件について、しっかり受けとめて臨んでまいりたいと考えているところでございます。
前回、4月11日に開催いたしましたこの部会におきましては、微小粒子状物質健康影響評価検討会報告を先生方とともに報告させていただき、定量的リスク評価方法、それから測定精度の改良、また曝露情報の整理等の課題につきまして検討を進め、本年内を目途に改めて部会に報告するということになっておりました。
環境省におきましては、前回の部会以降、部会のもとに微小粒子状物質リスク評価手法専門委員会を設置いただきまして、定量的リスク評価手法につきまして先月末にご報告を頂戴いたしました。また、測定法等の検討も進めてまいったところでございます。
これまで大気汚染が大変厳しい時代におきまして、環境基準は個人の健康への作用、あるいは症状としての健康影響等も踏まえ設定されてきたことはご案内のとおりでございます。
微小粒子状物質の定量評価手法におきまして、多くの知見あるいは解析方法の充実ということを考え、より低濃度領域におけるリスクをどの様に反映していくのか、大切な論点の一つだったなという様に受けとめておったわけでございます。
これらの取組みの詳細は、後ほど会議の中で先生方とともに報告をさせていただきますけれども、こういった知見の集積を踏まえまして、微小粒子状物質に係る環境基準を新たに設定する必要があると考えまして、去る12月の9日、中央環境審議会に微小粒子状物質に係る環境基準の設定について諮問をさせていただいております。環境省といたしまして、この課題、今後ともしっかりと取り組んでまいりたいと思っておりますので、皆様方の専門的見地からの審議を通じて、格別のご指導ご鞭撻をいただきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
【総務課長】それでは、皆様お手元の配付資料の確認をさせていただきます。
お手元の議事次第の紙下半分で配付資料の一覧をリストとして記載しております。中央環境審議会大気環境部会の委員の先生方の名簿、資料1、微小粒子状物質に関する取組みについて、資料2、中央環境審議会大気環境部会における微小粒子状物質に係る審議経緯、資料3、微小粒子状物質リスク評価手法専門委員会報告について、資料4、微小粒子状物質測定法評価検討会報告について、資料5、微小粒子状物質の曝露関係に係る取組みの進捗状況、資料6、微小粒子状物質に係る環境基準設定について(諮問)、資料7、中央環境審議会大気環境部会の専門委員会の設置について(案)。
それから参考資料でございます。参考資料1、欧米における粒子状物質に関する動向について、参考資料2、微小粒子状物質曝露影響調査報告書概要、参考資料3、大気汚染に係る粒子状物質による長期曝露調査結果概要、参考資料4、大気汚染に係る環境目標値設定状況、参考資料5、平成19年度大気汚染状況について、参考資料6、平成19年度有害大気汚染物質モニタリング調査結果について、参考資料7、電気自動車等に係る実証試験事業について。
大変資料が大部になりまして恐縮でございます。それから、委員の先生方のお机に、これまた審議の参考としまして、微小粒子状物質健康影響評価検討会報告書の冊子、それから、微小粒子状物質曝露影響調査報告書の冊子及びその概要版ということで置かせていただいております。もちろんお持ち帰りいただいても結構でございますし、すべてホームページ上で全文テキストも明らかになっておりますので、このままお机に置いていただいても結構でございます。
それから、今申し上げました資料関係ですが、万一、不足、不備等ございますれば、随時事務局にお申しつけいただければありがたいと思います。
報道関係者の方々にお願い申し上げます。冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただければということで考えております。
それでは、これ以降の会議の進行につきまして、坂本部会長にお願いを申し上げます。よろしくお願いします。
【部会長】それでは、早速でございますけれども、議事に入らせていただきます。
前回4月11日に開催いたしました大気環境部会において、微小粒子状物質健康影響評価検討会報告について紹介した上で、課題に対する今後の進め方について審議をいただいたところでございます。
これらの課題につきまして、環境省において作業に取組み、年内を目途に作業の経過ないし結果を報告いただくということでご了承いただいたところでございます。4月から大分時間が経ちましたので、まず、最初に微小粒子状物質に関する取組みや前回の大気環境部会における微小粒子状物質に係る審議経過について、事務局からご説明をいただき、その上で、課題の一つであった微小粒子状物質の定量的リスク評価方法に関して、専門委員会報告を内山委員や事務局から説明をいただいた後、皆様方にご議論をいただきたいと思います。
では、まず事務局から説明をお願いいたします。
【総務課長補佐】それでは、事務局から説明をいたします。
まず、資料1の微小粒子状物質に関する取組みについてというものからご説明をいたします。この中で、概ね微小粒子状物質に関する所見、後は環境省で行っている調査などをコンパクトにまとめております。
まず、一つ目にPM2.5とは、ということですが、従来から大気中に漂う粒経10μm以下の粒子を浮遊粒子状物質と定義をして環境基準を定め対策を進めてきましたが、その中でも粒経2.5μm以下の小さなものを微小粒子状物質と呼んでおります。
参考として、下の図の方に粒子状物質の大きさということで、人の髪の毛、これは70μmですが、この中にSPMが10μm以下ということで数珠のようにつながっています。さらに、その中にも2.5μm以下ということで非常に小さいということがよく分かると思います。
微小粒子状物質は粒経がより小さくなることから、肺の奥深くまで入りやすくなるということです。これは下の右の図を見ていただければと思いますが、10μm以下ということであれば、気道の中にまで入っていくということで呼吸器に影響を与えるということになっておりますが、2.5μmより小さい微小粒子というのは、さらに肺胞部分にまで入り易いということが色々な知見でも示されておるところでございます。
次に国外の環境目標値の設定状況ということです。詳しいものとしては、参考資料1に国外の動向ということをつけておりますが、ここでは簡潔に述べたいと思います。
まず、米国におきましては、1997年7月に新たにPM2.5の基準を、その当時、年平均値15μg/m3、日平均値は65μg/m3と設定しております。2006年9月にさらに知見を踏まえて、PM2.5の基準を強化し、日平均値を65μg/m3から35μg/m3に強化したという改正を行っております。また、米国の基準につきましては、基本的に国民の健康を保護するのに必要とされるレベルということで、健康影響のみの知見から設定をしているということでございます。
次にEUの基準ですが、これは2005年9月に欧州委員会がPM2.5の基準を提案しました。その後、欧州議会や理事会で長い間議論をしていたところですが、今年の6月に官報告示がなされました。年平均値の基準として25μg/m3、これが達成時期2015年1月1日まで、また、2020年1月1日までは20μg/m3と、こういった数値を定めております。日平均値については設定されておりません。この基準値については、健康に対する過度に高いリスクを防止することを目的として、一定期間内に達成し、その達成後は超えてはならないという限界値という意味で設定されております。
また、WHOにおきましても、2006年10月に大気質のガイドラインを設定しておりまして、年平均値10μg/m3、日平均値25μg/m3の数値を定めております。このガイドラインは、世界各国を対象に情報を提供することで、公衆衛生の保護に必要な大気質を確保するための対策を各国がとることについて支援をすることに目的があります。一方、各国政府が目標を立てる時は、それぞれの国の状況を考慮して独自の基準を設定することを妨げるものではないということとしております。
その次に3番目として、PM2.5の測定法ですが、大まかに言いまして秤量測定法、これはフィルタによって捕集をして、粒子状物質の質量を測定する方法です。これと自動測定法ということで、これは毎日毎日の測定の手間を省いて連続的に測定値を得るために開発された方法です。それぞれの方法で色々な測定法があるということでございます。
次のページにいきまして、国内における粒子状物質PM2.5の測定結果ということですが、一つ目に、秤量測定法による質量濃度、これはSASSというもので成分分析もできる方法ということで、この測定法を用いて全国19カ所で測定したデータでございます。
この傾向を見ると一般環境大気測定局、自排局ともに平成13年から15年まで減少し、17年まで横ばい、18年から19年と減少している傾向にあります。このデータにつきまして後ほど説明しますTEOMの自動測定法と同じですが、過去に微小粒子状物質の曝露影響調査や試験的に行った測定結果を集計したものですので、測定局の数は限られたものでして、日本全国の現状を示すものではないということに留意する必要があります。
また、下にあります自動測定法による質量濃度ですが、これはTEOMという自動計測機の一種で測定した結果が、このグラフに示されております。
傾向としては、自排局では年々減少しておりまして、都市部の一般局、平成13年から19年までやや減少と、非都市部の一般局はほぼ横ばいと、このような傾向を示しておるということでございます。
その次のページにいきまして、PM2.5の成分濃度ということでございます。PM2.5の主要な成分としては元素状炭素、主に不完全燃焼過程で発生する煤が主成分ということですが、また有機炭素、オーガニックカーボンということで、これは有機化合物状の炭素で揮発性有機化合物なども含みます。あとは硝酸イオン、硫酸イオン、アンモニウムイオンということで、気中に存在する硝酸塩や硫酸塩、こういったものを測定する際には、こういうイオン化をして測定をするということでございます。
そこで、非都市部、都市部、自排局ということで、数は少ないですが、それぞれの測定局による平均的な結果というものを、下の円グラフに平成13年から18年の平均値ということでお示しをしております。
この傾向を概括的に申しますと、一般局での最多成分としては硫酸イオン(SO42-)これが多いと、自排局での最多成分としては元素状炭素が27%ということで、この中では多くなっていると。また、都市部の一般局と非都市部の一般局での割合としては、硝酸イオンは都市部に多く、硫酸イオンは非都市部に多いと、こういう傾向になっております。有機炭素、アンモニウムイオン、塩化物イオン、これについてはそれほど大きな差は見られないということです。
これは見ていただければと思いますが、必ずしもある一つの成分に特化して非常に多いということではなくて、様々な成分がこの微小粒子状物質に含まれているということです。その中でも多少の大小について自排局と一般局で傾向が少し異なっていると、こういうことでございます。
次にいきましてPM2.5の組成と主要な発生源ということです。環境大気中に存在する粒子の化学組成としては、無機成分としては硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウムがあります。また炭素成分としては、有機炭素、元素状炭素、炭酸塩炭素等があります。金属成分としてはアルミニウムやナトリウム、鉄、カリウムなど、後は重金属類があります。また土壌成分ということで、これはこれで存在しているということです。
また発生源としては、主に三つの起源がございまして、人為起源と自然起源と、後は越境移流の部分があります。人為起源については、固定発生源として工場等のばい煙、粉じん発生施設等から出てくるようなものがあり、移動発生源としては、自動車や船舶、航空機などから出てくるものがあります。また自然起源としては、土壌粒子、海塩粒子、火山の噴煙等から発生し、また越境移流としては、大陸からやってくる黄砂等、こういった他の地域からやってくるもの、こういうものがございます。
次のページにいきまして、PM2.5の大気中の生成機構ということですが、大きく分けて一次生成粒子ということで、発生源から直接排出されるもの、また二次生成として、環境大気中で実際に生成されるものがございます。
一次生成のものとしては、まさに堆積物が破砕などをして物理的に発生するようなもの、燃焼に伴って排出される粒子、次に、二次生成というものにつきましては、光化学反応を起こしまして、例えばVOC成分が光化学反応を起こして粒子になるようなものや、またNOxやSOxのものについて光化学反応を起こして硝酸塩、硫酸塩になるようなもの、こういったようなものが存在をしております。
主に、この下の図を見ていただければと思いますが、燃焼起因で発生するようなものや、また二次生成で発生するようなもの、これについては基本的には小さい粒子ということで微小粒子ということでございます。また、物理的に破砕をして出てきたようなもの、また自然起因のようなものについては、比較的大きい粒子ということで、このPM10の外側の方に分類されます。ただ、その中の一部にはPM2.5に含まれるようなものもある、こういうことでございます。
また、7番にいきまして国内のPM2.5に関する調査研究ということですが、詳しくは会議資料としては参考資料2につけておりまして、さらに、その資料の基になっている資料として、委員の方の机に本日お配りしている調査研究の報告がございます。
目的としては、一般大気環境下の微小粒子状物質の曝露と健康影響との関連を明らかにするということで、平成11年度から平成18年度にかけて計8年間実施しております。曝露、疫学、毒性学の三つの分野について、各種調査研究を継続的に実施しています。その中で検討会を設置して、それぞれのワーキンググループを作り、計画に基づいて年次的に研究報告をして、毎年調査の結果についてフォローアップをして、さらに評価をしていただくという作業を行っていただきました。
その次のページにいきまして、その結果を簡単に示したものがございます。
曝露評価ワーキンググループとしては、先ほどもご説明をしましたが、PM2.5の質量濃度や成分組成の調査、測定調査を実施しております。また、その測定法や成分分析法の暫定マニュアルを作っております。また、個人曝露量の実測方法などを選定しています。
疫学ワーキンググループでは、個人曝露量調査ということで、環境大気濃度と個人曝露量の関係が良いのかという評価をしていただき、概ね関連が見られるという結果が得られています。短期影響調査については、日死亡との関連、その他は呼吸器症状等の関連を見るようなものもございますが、主には日死亡との関連について、諸外国における知見と概ね一致はしていますが、循環器系死因についてはやや異なる結果になりました。長期影響の調査については、子供の呼吸器症状のぜんそく症状の発症等についての関連を見たのですが、それの関連していることを示す知見は得られなかったということでございます。
毒性評価のワーキンググループは、PM2.5の抽出物の気管内投与実験と、またCAPsと言いますPM2.5成分を高濃度に濃縮したものを曝露する装置を用いた動物実験を行い、その結果、細菌毒素による肺の炎症の増悪が見られました。また高血圧ラットを用いた実験では、曝露中に心拍数が低下する傾向が認められたということはありますが、循環器系に及ぼす影響に関して明確な結果は得られなかったということでございます。
これらの中の一例として、特に代表的なものとして疫学調査の短期影響調査として日死亡との関連に関する検討をお示ししたものがございます。この下の図の左側が死亡リスクの全国の統合結果、20市町の統合結果ということでございます。
この見方としては、全死因、呼吸器、循環器の死亡ということで、この0、1、2、3、4、5というように書かれているのがラグというものでございまして、大気環境中の濃度と、その曝露した日から、例えばラグが1であれば、次の日の死亡者数はどれぐらいリスクが伸びるかということを示しているものでございます。
端的に申しますと、このそれぞれのラグの中のリスクの数値が95%信頼区間ということで、上限値と下限値が示されておりまして、このリスクの大きさが1より大きいというものであれば関連が見られるということですが、特にその中の一部において、95%信頼区間の下限値も1を超えるような有意に影響が見られるようなものもあったということでございます。また、右の方におきましては、20市町のそれぞれのデータが示されておりまして、一部の市町、東京都23区などでは統計的に有意な上昇が見られるものもございました。
次のページにいきまして、これらの疫学研究や毒性学の研究の結果から、呼吸器系については、こういった疫学研究でPM2.5濃度と指標に関する関連性が一部見られたところです。また動物実験においても、この結果も合わせて見ると興味深い示唆が得られました。一方、循環器系については、呼吸器系に比べるとPM2.5曝露による影響を明瞭に示唆する知見は得られなかったと、こういった結果になっております。
また、もう一つ大気汚染に係る粒子状物質による長期曝露調査ということで、参考資料3に示している調査があるのですが、これを簡潔にご説明します。
この調査は、旧環境庁時代から調査を行っているものでして、主に東北大や愛知県のがんセンター、大阪府の成人病センターの研究者の方々と協力してコホート調査をお願いしまして、その結果を国立がんセンターの方で統合解析をしていただいたというものですが、こういった特に肺がんなどの死亡との関係を、大気汚染との関係を見ることを目的として昭和57年度から調査を開始したものがございます。
この調査では、最初にベースライン調査を行いまして、その後、対象とした方がお亡くなりになるか転出をするかという追跡調査を行いまして、15年間実施をしてきたということでございます。
対象者としては、地域がん登録が行われている宮城県、愛知県、大阪府の都市地区と対象地区を選定して、40歳以上の地域住民約10万人を対象としております。
結果としては、次のページにいきまして、この下の方の三つのグラフがあり、プロット図というものですが、循環器疾患、肺がん、全死因ということで並べています。これが大気汚染濃度の大きさ、それと死亡リスクとの関係を見ているものですが、これに六つの点がございまして、これが宮城の対象地区・都市地区、愛知の対象地区・都市地区、大阪の対象地区・都市地区ということで、それぞれの地区ごとの大気汚染濃度と死亡リスクとの関係を見ております。
これを見たところ、肺がん死亡については、喫煙を含むリスク要因を調整した後で大気汚染レベルとの正の関連が見られています。
その一方、循環器疾患等、その他の疾患の死亡については、大気汚染レベルとの関連は見られない、もしくは大気汚染レベルとは負の関連が見られるものもあったが、血圧などの主要なリスク要因が調整できていない点に留意する必要があるとされています。
肺がんは、喫煙が最も重要な発症要因と考えられますが、大気中微小粒子状物質に関する死亡の相対リスクは、それに比べて大きいものではありません。ただし、この研究の結果で、この粒子状物質の曝露が肺がん発症の要因の一つとなることを示しているのではないかという結果が得られております。
また、この他8番として、国外の主要な疫学研究ということで、先ほど米国、WHO、EUがそれぞれ目標値を作ったという事実をお話しましたが、それらの根拠になっている主な知見として、ACS研究ということで、アメリカのがん学会の方で実施された調査研究がございます。これは微小粒子状物質濃度のデータのある50都市地域の30万人を対象としたコホート調査であり、ここで15年間に及ぶ長期間のコホートの調査を行っております。
この結果では、微小粒子状物質の濃度が上昇することに伴って、相対リスクは全死亡、心肺疾患死亡、肺がん死亡、それぞれで増加が見られている、こういうことでございます。下の図は、この大気汚染濃度とそのリラティブリスク、対数リラティブリスクを示したもので、濃度が高くなるとリラティブリスクは高くなると、こういった関係が見られるということが示されております。
次のページにいきまして6都市調査、これはハーバード6都市調査ということですが、これは6都市に関する研究でして、微小粒子状物質濃度の大きさと、それと一番濃度が低い都市のリスクを1として、その都市に比べてどれだけ相対リスクが上がるかというものをお示ししたものです。
これを見るとPM2.5の濃度が増加することで全死亡や肺がん、心肺疾患、その他、こういった結果が得られまして、特に心肺疾患死亡のリスク、全死亡のリスクが有意に高く見られるという結果が得られております。
また、下の③の死亡リスク増加に関する時系列研究ということで、米国EPAでは、こういったPM10、PM2.5、PM10-2.5、これは粒経が2.5から10の間の粒子ということですが、それぞれの短期影響と健康影響との関連性を見ています。
それで死亡リスクについて、実際に大気汚染濃度が上昇するとリスクが上昇するという知見がかなり数多く見られるということで整理をしております。こういった知見を踏まえて、PM2.5の目標値を米国EPAでは作っているところでございます。
以上が、資料1のPM2.5、微小粒子状物質に関する取組みということです。次に、資料2に、微小粒子状物質に係る審議経緯ということで、前回4月11日に内山先生や新田先生ともご報告をしていただいた内容を簡潔におさらいしたいと思います。
一つ目に検討会報告ということで、平成20年4月4日に、今日机の上に置いています資料で、健康影響評価検討会報告書が取りまとめられたということでございます。
4月11日に開催した前回の大気部会において、この後ろにつけております資料2-1と、資料2-2の報告書の内容の一部と、また報告書に示された今後の課題についてお示しして、今後の取組み方針の審議をお願いいたしました。
そこで、審議会での審議を踏まえまして定量的リスク評価手法、測定精度の改良、曝露情報の整理等の課題について、改めて整理を行って、年内を目途に改めて部会に報告することとされたところです。
簡単におさらいをしますと、次のページにいきまして、資料2-1ですが、検討の経緯ということです。微小粒子状物質の健康影響を見るために、国内外の知見を踏まえ、微小粒子状物質の呼吸器や循環器などへの健康影響についての評価の専門的な検討を進めることを目的として、11回に及ぶ審議を行いまして、4月4日にまとめております。
ここで、報告書の概要としては、2番目の(1)ですが、微小粒子状物質の健康影響について、先ほども紹介しましたが、様々な疫学知見から微小粒子状物質において従前から認められている呼吸器系の健康影響が微小粒子状物質においても認められること、さらに、新たに循環器系や肺がんの健康影響が微小粒子状物質による影響として見られたこと、こういった評価については、欧米と我が国の生活習慣等の違いによる疾病構造の相違や、微小粒子と粗大粒子の影響の判別、他の共存汚染物質の影響など不確実性のもとに評価されたことに留意する必要があるものの、総合的に評価すると、微小粒子状物質が総体として人々の健康に一定の影響を与えている、これが疫学知見並びに毒性知見から支持されたということでございます。
その一方、こういった大気中の粒子状物質の曝露に関して観察される相対リスクは、他の曝露要因と比較して必ずしも大きくはないものの、公衆衛生の観点から微小粒子による健康影響を軽視することはできないことから、さらに定量的な評価に関する考察を進める必要があるとされております。
それで、今後の課題として(2)番目にお示ししておりますが、リスク評価手法、それと測定法の精度の改良、また微小粒子の生成機構等の曝露情報の整理に関する課題が示されておりまして、これらの内容が資料2の一番後ろの資料2-2の検討会報告における今後の課題ということで、前回の部会にこのような形で報告をさせていただいております。
また、その他としまして不確実性をさらに小さくする知見の集積も行うべきというようにされたところでございます。
こういった経緯もございまして、その後、課題について取り組んできているというところでございます。
【部会長】それでは、引き続き微小粒子状物質リスク評価手法専門委員会報告について説明を伺いたいと思います。
まず、専門委員会の委員長を務めていただきました、内山委員からお願いをいたします。
【内山委員長】微小粒子状物質リスク評価手法専門委員会の委員長を務めさせていただきました内山でございます。資料3の微小粒子状物質リスク評価手法専門委員会報告の概要につきましてご説明させていただきたいと思います。
本専門委員会は、微小粒子状物質のリスク評価手法を検討することを目的といたしまして、平成20年6月30日に第1回の専門委員会を開催した後に、本日、部会に出席していただいております加藤委員や新田先生、また慶應義塾大学の武林先生に海外調査にも行っていただきまして、合計6回に及ぶ熱心な調査、審議を行いまして、資料3の報告を取りまとめたところでございます。
資料3にその概要として2枚紙、それから、その後に資料番号ございませんが本文の報告書がございます。
まず、本報告書の冊子を1枚めくっていただきますと目次がありますので、そこを見ていただきますと、本報告書の大きな概要がおわかりいただけると思います。まず、欧米におきます微小粒子状物質の環境目標値を導くためのリスク評価手法に関する調査結果や国内外の知見を踏まえまして、この目次にありますように、1として目的と背景、2として基礎的な考え方、3として解析に用いる信頼できる疫学知見の抽出の考え方、それから4として定量的解析手法、そして5のまとめという構成で報告書をまとめさせていただいております。
基礎的な考え方といたしましては、資料3の方の概要に戻っていただきますと、そこにまとめてございますが、微小粒子状物質の健康影響は、現下の大気環境においては、個人の健康への作用としては日常的に臨床の場で観察されるものではなく、比較的小さなリスクが幅広く疫学的に観察されるものとして整理してございます。
その上で、当面、現下の大気環境において見られる地域集団の健康影響を低減していくという公衆衛生の観点から、疫学知見に基づく曝露量-反応関係から健康影響が生じることが確からしいとされる濃度水準を見いだして、それを微小粒子状物質の環境目標値の目安となる数値を検討する際の出発点にする。そういう考え方が適当であるということで、これが基礎的な考え方ということでございます。
その次に、解析に用いる信頼できる疫学知見の抽出の考え方といたしましては、定量評価を行うべき具体的な疫学知見の選定に当たりましては、短期曝露と長期曝露による影響について広範囲なエンドポイントに関する質の高い疫学研究を評価の対象とすることとまとめております。
国内知見と国外知見の取り扱いにつきましては、総合的かつ包括的に評価することが考えられますが、国内知見と国外知見で微小粒子状物質への曝露との関連性が認められるエンドポイントの一致性や、それぞれの知見の特徴に留意して検討すべきということを示しております。
次に、定量的解析手法でございますが、定量的解析手法につきましては、欧米諸国あるいは米国、あるいはWHO等で疫学知見に基づいて影響度評価を行い、さらに疫学的知見に基づくリスク削減予測に基づく影響度評価というものが行われておりますが、本専門委員会では、当面、先ほど申しました公衆衛生の観点を考慮して、疫学知見に基づく影響度評価手法を優先して取り組むことが適当であるということを提言しております。
それで、実際に米国やWHO等の手法や定量評価に用いられた解析手法等の情報を整理した上で、微小粒子状物質の長期曝露影響や短期曝露影響それぞれについて、我が国において実現可能と考えられる具体的な定量的解析の手順をこの報告書の中で示させていただきました。
この手順に従って定量的解析を行うに当たりまして、低濃度領域における曝露量-反応関係に関して、欧米と日本の疾病構造の違いですとか、あるいは大気汚染状況の違いなどの不確実性が大きいことを十分に考慮しながら、この手順によって定量的解析をすべきであるというようにまとめさせていただいております。
以上が主な内容でございますが、本日出席いただいております新田先生は、疫学に関する評価についてのご専門で、この報告書も中心となって取りまとめていただきましたので、補足の説明があったらお願いしたいと思います。その後、また事務局に説明をお願いしたいと思います。
【部会長】お願いいたします。
【新田先生】それでは、私の方から2点ほど追加で発言をさせていただきます。
まず、ただ今内山委員の方からご説明がございましたけれども、今回の微小粒子状物質の定量的評価に関しましては、疫学知見に基づく曝露量と反応関係から健康影響が生じることが確からしいとされる濃度水準を見いだすということが最も重要な手順というように考えております。
従いまして、具体的に用いられる疫学知見の選択におきましては、曝露量と健康影響との定量的な関連性に関する検討に耐え得る十分な曝露データを持っている疫学知見を選択していくということが重要かと思っております。もちろん、この疫学知見は一般的、学術的な疫学知見に関する評価を十分加えた上で曝露評価の観点も加えていくということでございます。
それからもう1点、国内知見と国外の知見の取り扱いに関しましては、国内の知見がより重要であるというように考えておりますが、微小粒子状物質の健康影響に関する知見の蓄積という点から見れば、国外の知見が数多いということも事実であります。微小粒子状物質の健康影響の問題に限らず、疫学知見に基づく曝露と健康影響との関連性に関しましては、多くの知見の一貫性や整合性といった観点を重視した評価を行うことが重要であります。その点を考えまして、この報告書では国内知見と国外知見の取り扱いについては、総合的かつ包括的に評価すると示しておりますけれども、具体的にはそのような一貫性、整合性といったものを国内、国外の知見あわせて評価するということが重要であるというように考えております。
以上でございます。
【部会長】ありがとうございました。それでは、事務局から、今の報告に関しまして補足説明を資料に基づいてお願いいたします。
【総務課長補佐】それでは、事務局の方から補足説明をいたしたいと思います。
資料3につきまして概要の資料がございますが、その後ろに報告がございます。微小粒子状物質の定量的リスク評価手法についてということですが、それで目的及び背景は飛ばしまして、次の基礎的な考え方という部分でございます。
ここで最初に微小粒子状物質の健康影響、これまでの二酸化硫黄等の環境目標値の基準の設定の考え方と、こういったものを整理した上で、その上で4ページにあります微小粒子状物質の環境目標値の設定の考え方ということで整理をしていただいております。
一般的に環境目標値の目安となる数値については、その物質の濃度がその水準以下であれば曝露により好ましからざる健康影響が起こらないということを目安として設定されるものだと、具体的には、健康影響の重篤度の観点から好ましからざる健康影響の種類(エンドポイント)を定め、さらにその健康影響と曝露濃度との関係を明らかにすることによって、健康影響が起こらない濃度水準を見いだすことができる、こういう一般論が最初に書かれております。
こういった閾値の概念で、これまでは毒性学のNOAELの考え方を疫学研究の知見に当てはめて解釈がされてきたということがございます。
その一方、次の5ページにいきまして、ここの最初に微小粒子状物質についての閾値を特定するのがなかなか困難であるということが書かれておりまして、集団を対象として、こういった微小粒子状物質の短期曝露、長期曝露について影響に閾値の存在を明らかにすることは難しいこと。こういったことから微小粒子状物質の濃度が低い環境下においても、幾らかの残存リスクがある可能性は否定できないとされております。
それで、先ほど内山委員からもお話がございましたが、微小粒子状物質の健康影響の現れ方は、日常的に臨床の場で観察されるものではなく、比較的小さな相対リスクが幅広い地域において疫学的に観察されるものといえるということがまず一つ書かれております。
その後、WHOのガイドラインの考え方、また米国EPAにおける考え方、こういったものを示した上で、その上で次の6ページにいきまして、我が国においては、大気汚染が人の健康に好ましからざる影響を与えることのないように、微小粒子状物質の健康リスクに関する現状を踏まえた手法を採用することが考えられること。当面、現下の大気環境において見られる一般地域集団における健康影響を低減していくという公衆衛生の観点を考慮し、疫学知見に基づく曝露量-反応関係から健康影響を生じることは確からしいとされる濃度水準を見いだして、それを微小粒子状物質の環境目標値の目安となる数値を検討する際の出発点にするのが適当であること。また、毒性学の知見も踏まえたメカニズムを含めた総合的な評価が必要であるとされております。
また、この説において高感受性者・脆弱性を有する者の健康影響にも慎重に配慮することが必要だということでして、こういった者が入っている疫学研究に基づいて、微小粒子状物質の健康影響が生じ得る濃度水準を見いだすということによって、これらの者を保護する環境目標値を検討することができるということが示されております。
2の4にいきまして、考慮すべきエンドポイントということで示されております。これは過去からのエンドポイントを整理しておりまして、7ページ目に図の1に健康ピラミッドの概念図というものを、五つの概念図が示されておりまして、それとまた、WHOの大気質ガイドラインにおけるエンドポイントに関する考え方もご説明をここでしております。
次の8ページにいきまして、我が国における、これまでの環境基準が定められている項目についての重視をしたエンドポイントについて、それぞれ列挙されていまして、科学的知見の評価において重視したエンドポイントは異なっていることが示されております。
こういったこれまでの経緯なども含め、微小粒子状物質の環境目標値の検討過程においても、微小粒子状物質への曝露と種々のエンドポイントとの関連性に関する疫学知見や毒性学の知見も踏まえた健康影響メカニズムも含めた総合的かつ包括的な評価に基づき、様々な重篤度の健康影響の中から考慮するエンドポイントを選択するべきということが示されております。
2の5にいきまして、短期曝露影響と長期曝露影響ですが、一般に大気汚染の曝露による健康影響につきましては、これは10ページです。比較的濃度の高い大気汚染物質への短期曝露による影響と低濃度の長期曝露による健康影響に分けられます。長期曝露では、より低濃度で慢性影響が起こり、短期曝露ではより高濃度で急性影響が起こると考えられる場合には、それぞれの影響について環境目標値の目安となる数値を選択することが妥当であると考えられます。従って、このような曝露期間による健康影響の発生に質的な差があるかどうかを科学的知見に基づき評価することが重要である、というようにされております。
次のページですが、3番目ということで、解析に用いる信頼できる疫学知見の抽出の考え方ということで、まずは優先すべき疫学手法として、冒頭に様々な疫学研究の手法が紹介をされております。パネル研究やコホート研究、時系列研究等々です。このそれぞれの研究の特徴について書かれておりまして、結論としては14ページ、この節の最後のところですが、これらの定量的に評価する上で重要なことは、微小粒子状物質とともに、他の共存汚染物質への曝露評価が適切に実施できること。また種々の交絡因子の調整が的確に行うことができることであること。従って、長期曝露による影響を見る方法としては、適切に計画された場合には交絡因子の調整や複数のエンドポイントに関する検討もできて、曝露との関連も継続して見ることができるコホート研究が優れていると考えられます。一方、短期曝露による影響を見る方法としては、時系列研究やケースクロスオーバー法を用いた研究が適切であると考えられるということが示されております。
また、次に疫学知見の不確実性ということで、曝露評価、統計モデルの相違とか、共存汚染物質の交絡についての様々な不確実性がある、このような不確実性も考慮していく必要があるということが、ここで示されております。
その次の17ページに、定量評価の対象とすべき疫学研究が示されております。これについては、先ほど内山委員、新田先生からもお話がありましたとおり、それぞれの研究について特に、より広い曝露濃度範囲が観察され、高感受性者を含む一般集団を対象として実施された研究を重視することが考えられます。また、短期影響についても、複数の都市研究に基づく知見を優先することが考えられるといったようなことが書かれております。
具体的な疫学知見の選定に当たっては、短期曝露影響と長期曝露影響について広範囲なエンドポイントに関するより質の高い疫学研究を評価対象とするということが示されております。四つの事項を考慮するということが書かれております。また、曝露評価に関する事項についても示されております。
また、次の18ページにいくと、国内の疫学知見と国外の疫学知見の取り扱いということが示されております。冒頭にWHOのガイドラインの考え方が示しておりまして、各国の基準の設定については、国ごとの粒子状物質曝露による健康リスク、技術的実現可能性、その他の要因のバランスを考慮した手法によって異なり、ガイドラインにおいてそれらの多様性を認めること。各国の基準を設定する際には、ガイドラインを適用する前に自国の地域環境を慎重に考慮すべきということが示されております。米国では人口統計学的特性や大気汚染物質特性から、米国とカナダの研究を重視しているということが示されております。
そのようなことで、先ほど両先生からお話があったとおり、国内知見と国外知見を総合的、包括的に評価をすべきということが示されております。
次の20ページにいきまして、定量的解析手法ということです。主に米国やWHO等の評価手法について内容を確認したところ、主に二つの方法がある。
具体的には疫学知見に基づいて曝露量-反応関係から健康影響が生じることは確からしいとされる濃度水準を見いだす疫学知見に基づく影響度評価手法、それと、その疫学知見に基づく曝露量-反応関係から一定濃度の水準に伴うリスクの大きさ、あるいは一定のリスクレベルに対応する濃度水準を見いだすリスク削減予測に基づく影響度評価手法、こういった二つの方法が用いられております。
これらの方法の具体的な内容については、4の2と4の3に書かれておりますが、色々と手法を見て、これらの動向も参考にしたところ、21ページの三つ目のパラグラフですが、微小粒子状物質の環境目標値の目安となる数値を検討するため、まずは疫学知見に基づく曝露量-反応関係から健康影響が生じることは確からしいとされる濃度水準を見いだす作業を出発点とするのが適当であると考えられ、さらに、この知見にあわせて毒性学の知見による用量効果関係も考慮する必要がある。一方、リスク削減予測に基づく評価手法につきましては、国内知見と国外知見の一致性に留意して実行可能な手法を検討する、可能であれば、この環境目標値の平均化時間、または環境目標値の評価方法、こういった検討材料に援用することが考えられるということが示されております。
その後、4の2、4の3と海外の定量的評価手法、また、さらに解析手法について整理してまとめていただきまして、そこで最後に31ページにありますとおり、実施可能な定量的解析手法の考察ということで、全体の2章及び3章に示す基礎的な考え方や疫学知見の抽出の考え方、またあわせて定量的解析手法について長期曝露影響と短期曝露影響の両者についての評価手法の手順を示しております。長期曝露影響については六つの手順、六つの事項に関する手順と、短期曝露影響についても五つに関する手順が示されております。
最後に、低濃度領域における曝露量-反応関係については、考慮すべきとされたエンドポイントに関する疫学知見の基盤となる疾病構造や微小粒子状物質のバックグラウンド濃度(人為発生源以外の発生源に由来する濃度)などの大気汚染状況の国内外の差異などの不確実性が大きいことを十分に考慮すべきであるとされております。
その後、5番目にまとめということで、この2、3、4の示された事項について整理をしていただいておりまして、専門委員会の中で、この結果が当面の定量的な評価手法とすることが適当であるという提言をいただいたところです。
以上でございます。
【部会長】ありがとうございました。ただ今の説明につきましてご質疑、ご意見等ございましたらお願いいたします。ご質問、ご意見ございます方は、できれば名札を立てていただければ、こちらの方でわかりますので、よろしくお願いいたします。いかかでございましょうか。
はい、松尾委員、お願いします。
【松尾委員】基礎的なことで二つほど伺いたいと思います。この最初のパワーポイントの図の中にもありましたが、これまでのデータの中で、PM2.5がないような、バックグラウンドデータというか、非常に少ないような地域がどこかにあるのかとか、そのような情報があるのかどうかを伺いたいと思います。それは発生源にも関わると思うので、人為的な発生源が非常に影響の多い地域と、そうじゃないところがあるのかとか、示された19地点のデータの平均値がありましたけれども、そこにばらつきというのか、もう少し地域の特性がそれにどういうように関わっているのかを伺いたいというように思いました。
それからもう一つは、国内と国外のデータの問題ですけれども、何が国内と国外で違うのか、どういうことが違いの基になっているのかということで、人体のそういう生理的な問題なのか、それから他の大気汚染物質の問題なのか、分析方法の違いなのか、その要素について伺えればありがたいと思いました。
【部会長】ありがとうございました。事務局の方からお願いします。
【大気環境課長】大気環境課長の早水でございます。私どもの方でモニタリングを担当しておりますので、第1点目のご質問にお答えをさせていただきます。
今日の先ほどの資料ですと、2枚目の6ページに当たるところかと思いますけれども、自動測定法による質量濃度、これは自動測定法自身がまだ固まったものではない、仮にこれを使っているという試験的に行っているものでございますけれども、この中で非都市部というのが色んな影響が比較的少ないということですが、さらにこの中で国設局が一つありまして、箟岳という宮城県の近くのかなり人為的な影響がないであろうと思われるところのデータを見ますと、例えば一番直近の値でいうと12μg/m3ぐらいの濃度というのが、そういう意味では一番低い濃度として観測されております。バックグラウンドという定義はなかなか難しゅうございますけれども、全体の中ではこれが一番低い濃度として観測されているので、人為的影響が比較的少ない、特に国内の人為的影響が比較的少ないものとしては、こういうものではないかと考えております。
【部会長】それでは、2点目の方は、そちらからお願いします。
【新田先生】2点目に関しましては、私の方から簡単にご説明させていただきます。
まず、国内、国外の違いに関しましては、ただ今早水課長の方からお話がありました曝露側の問題があると思います。バックグラウンドの違いもあり得るのではないかと考えておりますし、一部成分の構成にも違いがあるという知見もございますが、ただ、健康影響の面から見ますと、どの成分が一番疫学知見で示されているような影響に寄与しているのかという、確固たるデータはまだ確立していないというように考えております。
それからもう1点、健康影響の面から申し上げますと、先ほどご紹介がありました米国等での環境基準の設定に当たって一番重要視されていた疫学知見からのデータの中で重要な点として、循環器系疾患と微小粒子状物質の曝露との関係ということが示されております。ご承知のように循環器系疾患に関しましては、欧米の死亡率、有病率等々、我が国とはかなりの開きがございます。そういった点も考慮すべきということで報告書の中でただし書きとして疾病構造の違い、生活環境、ライフサイクルの違いというのは、そういうことを念頭に置いて記載をしております。
【部会長】よろしいでしょうか。それでは大聖委員が先に出ていたと思います。お願いします。
【大聖委員】この調査の中で、今、少し触れられましたけれども、粒子状物質の成分自体の差というのがやはりあるのではないかと思います。それから固定発生源、あるいは移動発生源によっても成分の差がありますので、そういった有意な差が認められるのかどうかというようなこと。
それからもう一つ、前に千葉県での調査の結果を記憶しているのですが、例えば沿道での児童の健康の影響を調査した結果によりますと、やはり生活環境自体がかなり影響しているというような結果も出ております。つまり、日頃運動しているとか、肺の基本的な機能が、そういった疾患の発症の有無に影響を与えるというようなこともあるようですので、そういった差というのがどういうようになるのか。
それからもう一つは、最近アレルギー性のものが随分指摘されておりますけれども、そういったものが誘引になっているケースもあるのではないかというように思いますので、その辺についての何か知見がありましたらお願いいたします。
【総務課長補佐】最初にお話をしていただきました成分の部分につきましては、先ほど私の方からご説明したパワーポイントの資料の中で非都市部、都市部、自排局ということで、これらのそれぞれの測定局、ページは資料1の7ページ目ですね、枚数は4枚目ですが7ページ目です。こちらの方の成分濃度ということでエレメンタルカーボン、オーガニックカーボンという、それぞれの成分ごとのものを出しているということですが、一般的には自排局と一般局のデータについて傾向として、大まかに自排局はエレメンタルカーボンが多いと、一般局は硫酸塩が多いというようなことが言えるわけですが、必ずしも明確に有意にこの成分が非常に多いということが言えるものではないという程度なのかなと思います。
つまり何を言いたいかというと、微小粒子状物質というのは様々な成分で構成をされていて、どの地域でどの成分が非常に多いということまでは言い切れない、様々な成分で構成されているということが、この一つの資料として言えるのかなというように思います。ただ、成分データとしては、まだこの資料は19地点の資料ということですので、今後さらにその他の知見の収集に努めること、あわせて、さらにもっと詳細な調査を行って、こういった成分の分析を進めていきたいというように思っております。
また先ほど、千葉大の恐らく調査のことかなと思います。今回の微小粒子状物質の健康影響評価の過程においても、様々な疫学知見を評価していただきました。特に今言っておられた呼吸器症状についても、粒子状物質と呼吸器症状との関係を見る評価というのも行っていただきました。その中では粒子状物質とぜんそくとの関連では、新規の発症については、はっきりしないということが言えるということでございますが、これはこれで自動車排出ガスによる人への健康影響、これについて局地的な汚染が、どの程度影響があるかというものについては、環境省においても「そらプロジェクト」というものを行っておりますので、こういった中でさらに呼吸器症状への影響について、どのようなものが見られるのかというものを見ていきたいというように思っております。
また、このアレルギー性の問題につきましても、これは一般的に呼吸器症状についての疫学調査はATS調査票というものが用いられているということですけれども、これについては、新田先生の方からの方がよろしいのではないでしょうか。
【新田先生】私の方から、少しアレルギー性疾患に関しまして、先ほど事務局の方から説明がございましたように、微小粒子状物質との関連、数多く検討されております。今日、報告書をお示ししております微小粒子状物質健康影響評価検討会の報告書の中でも、アレルギーとの関係を検討しておりますが、ただ今ご指摘のあったような子供達の生活状況との関連というようなものに関しましては、様々な報告がございまして、冒頭で申し上げましたように、結果の一貫性というような観点を重視して全体的な評価を行いたいというように思っております。
【部会長】それでは、小林委員。
【小林委員】恐れ入ります。基礎的な話についてお聞きしたいのですが、1点目は、大聖委員からのご質問とよく似ているのですが、今回のこのリスク評価に当たって、その要因というのは物理的要因なのか、化学的な要因なのかということについて、大分問題点があるのではないかなと思うのです。つまり化学的要因によって健康影響が起こっているのか、物理的要因によって健康影響が起こっているのか、この辺の評価で大分違ってくるのではないかというのが1点。
それからもう1点、もしそれが物理的要因だとした場合、今回のリスク評価の指針に使われているのが重量的濃度で実施されているわけですが、これを例えば粒子数で評価した場合どうなのか、それについてご検討されたかどうかについてお聞きしたいのですが。
【部会長】事務局の方、お願いいたします。
【総務課長補佐】小林委員、今の質問についてお聞きしますが、物理的要因と化学的要因というお話がございましたが、化学的要因というのは、まさにその成分ということでしょうか。物理的というのは、まさに重量濃度ということですね。
【小林委員】重量濃度というよりは、その粒子そのものが、例えば体内の細胞とかそういうものを刺激することによって疾患が起こると。そういう意味での物理的要因なのか、化学物質の毒性によって発生するかという意味です。
【総務課長補佐】今のご指摘ということであれば、微小粒子状物質健康影響評価検討会の中で、疫学の知見のみならず毒性学の知見による評価というのも行っていただきまして、その毒性学の評価においても、化学物質の、例えば微小粒子状物質が構成する成分ですね。例えば金属類、例えば硫酸塩類など、色々な成分について具体的に、ある成分が影響をきたしているのか、どの様な成分が基調として悪さをしているのか、こういったものについても評価をしていただいたところです。
ただ、色々と知見について評価をしていただいたところ、どの成分が、非常に問題があるというところまで特定できるに至らず、ひとまず包括的な形で粒子として一定の影響が見られるということで、特に特定の成分ということで問題があるということではなくて、微小粒子全体ということで影響があるということで評価をしていただいたということでございます。
その内容としては、資料2-1の7-17ページですね。粒子成分と健康影響の関係と、ここで様々な成分ごとの毒性に関する研究というものについて見ていただきましたが、特定の成分により影響が引き起こされる明確な証拠はなかったと、こういう形で整理をされております。
また、粒子数と濃度の関係ですが、特に粒子数と健康影響の環境を見いだす知見というのは、なかなかないということですが、粒径に着目して評価をしていただいております。粒径に着目した評価としては、毒性学によるものとしては7-17ページにあるのですが、小さい粒子ほど炎症や酸化ストレスなどの影響が強いことを示す知見は多いが、大きい粒子にも炎症等の影響を認める知見が存在し、粒径によって気道内沈着箇所や沈着率が異なることに加えて、成分や組成も異なる可能性があるため、粒径の大きさのみによって影響が決定されるとは断定できないということで、非常に小さい粒子、やや大きい粒子と、こういった粒子それぞれの影響があるということですが、非常に小さければ影響があるかというと、まだそこまでは言えない。これが毒性学による評価ということでございます。
また、これは毒性学による評価ということですが、疫学知見と重ね合わせた評価につきましては、7-20ページですね。「7.4.1.4」ということで、ここで粒径及び成分ということで、疫学知見による評価、それと毒性学による評価というのを重ね合わせた評価ということで書かれております。
ここで微小粒子が人々の健康に一定の影響を与えることは疫学知見並びに毒性学知見から示されています。一方、微小粒子の影響に比較して、粗大粒子に関しては、その影響が示唆される疫学知見は少ないこと。この粗大粒子というのはいわゆる2.5μmから10μmの間の粒子のことです。しかし、毒性学研究からは先ほどもお話ししたとおり、一概に粒径の大きさのみによって毒性が決定されるものではないことが示唆されています。また超微小粒子、これはナノ粒子のことですが、0.05μm以下と言われている超微小粒子は健康影響にどのように関連しているかは、まだ検討は加えられつつある段階ということで、この中では、それぞれの粒子の小ささによって評価をしているという段階では、まだないということでございます。
【部会長】よろしいでしょうか。今のお話は成分別に影響がどうかという形の疫学とあわせて見られるようなデータはまだ十分ないという状況。それから、数についてもそうでございます。
中杉委員、お願いします。
【中杉委員】今、色々ご質問があったのに絡んだ話ですけれども、この方法自体、やり方自体は色んな成分が入っているということで、動物実験から求めるというのは難しいし、疫学的にこういうような方法でやらざるを得ないだろうと。もっとすっきりすればいいのですけれども、どうしてもそういうようにならないので、こういう方法で決めていかざるを得ないと思うのですが、一つ疑問になるのは、最初に松尾先生が言われた日本のバックグラウンドがかなり高くて、それが海外では、そこのところでは影響がもう出て見えているというところをどういうように説明するかと。これはやっぱり説明を求められるように思うのですね。
そういう意味でいきますと、PMの組成ということで日本の非都市部の組成がありますよね。海外の部分について、こういうデータがあるのかどうか、そこら辺を少し比較してみると議論ができるかもしれない、議論ができないかもしれないというように思いますので、そこら辺を教えていただければ。
それからもう一つ確認ですが、資料1の、これは8ページの5のところ、下の方ですけれど、PM2.5の組成と主な発生源というように書いてございます。発生源という中に、それぞれ下に書いてございますけれども、海塩粒子とか黄砂が挙がってきているのですが、本当にPM2.5はどのぐらいあるのですか。海塩粒子が本当にPM2.5の原因であるとすれば、日本は海に囲まれているからバックグラウンドが高いのだという議論になりかねないのですけれども。多分、海塩粒子はPM2.5よりは大きいのではないかと思うので、そこのところちゃんと書かないと、これはこのままだと誤解を与える可能性があると思いますので、それをチェックしていただければというように思います。
【総務課長補佐】今、中杉委員の方からバックグラウンド濃度の指摘がございました。先ほど早水課長の方からも、今の測定データの中でバックグラウンド濃度に近い地点におけるデータの紹介をしていただきましたが、我々としてもリスク評価手法専門委員会の中でも、やはりこういったバックグラウンド濃度の違いといったようなものについても、しっかり踏まえて定量評価を進めていくというような提言もいただきましたので、今後、実際にバックグラウンド濃度というように考えられる自然地域ですね、例えば離島とか海浜地区とか、あとは本当の山の中とか、いろいろな地域の成分濃度、重量濃度、こういったようなものを測定して、バックグラウンド濃度についての実態というのを把握していきたいというように思っております。
またあわせて、海外のバックグラウンド濃度というものについても、その知見を色々集めていきたいというように思います。それを行うことで日本と海外のバックグラウンド濃度の違いというものも見ていくということを行っていきたいと思います。
また、先ほどパワーポイント資料の8ページ目、5番のPM2.5の組成と主要な発生源の中の自然起源、これは海塩粒子だけではなくて土壌粒子も同じことが言えます。粒子状物質というのは基本的には微小粒子のものと粗大粒子ということで、大きく分けて二つの粒子で構成されるのですが、必ずしもPM2.5というのは、2.5μm以下のところで概ね微小粒子が全て含まれるということですが、一部粗大粒子のものも含まれるということで、この土壌粒子や海塩粒子の中でも、どれぐらいの割合かということは言えませんが、小さい粒径のものについてはPM2.5の中に含まれるものもあるのかなというように考えております。
ちなみに、この7ページ目にございますとおり、この成分分析のデータですが、これはエレメンタルカーボンやオーガニックカーボンなどについては、それぞれの分析法に従って行っているのですが、元々これについては重量濃度の測定データからそれぞれの成分データを引いたものを、この「other」ということで算出しております。この中には実際に土壌に関連する粒子なども一部含まれているという話も聞いておりますので、PM2.5の中にはこういった自然起源のものも含まれるということでございます。
ただし、土壌粒子や海塩粒子というのは、基本的には大きい粒子が大半だと思いますので、例えば土壌粒子の一部、海塩粒子の一部と、今後はそういった形でお示ししていきたいと思います。
【部会長】ありがとうございます。今、海塩粒子と、それから土壌粒子ですけれども、2.5μmという形で切りますと、2μmまでぐらいのところには、ごくわずか入ってくる可能性があると。中杉委員のおっしゃられたのは、ここの8ページの表現を、こういった形だけで書いておくと、あたかもそれが主要成分のごとくとられるから、ご注意いただきたいと、そういうお話だったと思いますので、十分理解しているところでございます。
【総務課長】ちょっと補足します。4月にまとめました微小粒子状物質健康影響評価検討会の報告の中で、いわゆる曝露分野につきまして、実は坂本部会長が担当の取りまとめをしていただいておるのですが、お配りしております資料の2の7のページに一つの知見ではございますけれども、微小粒子と粗大粒子の比較というようなものについて、どのような発生源であれば主にどういうようなところに区分されるかというようなことで、多少の説明を加えていただいているところはございます。曝露についての記述がその前後、このレポートの中に入っておるのですが、例えば3-33を見ていただきますと、米国における各種発生源からの微小粒子状物質の排出量というようなことで、排出量とそれから主要成分の関係などということも、EPAの資料として、2004年版ということになっておりますが、このようなところも少しやっておりますので、こういった知見の蓄積を生かして、今後ご議論をさらに深めていただければありがたいなというように事務局としては思っております。どうも失礼しました。
【部会長】佐藤委員、よろしいですか。
【佐藤洋委員】すみません、割って入って。バックグラウンドの話で箟岳というのが出ていたのですが、箟岳というのは、私が住んでおります宮城県の北の方にある、平野から少し出た小さい山でして、神社があるところで、それから近くにゴルフ場があったりして、必ずしもバックグラウンドというか、リモート地域ではないように思うのですね。
ただ、県内では一応人が住んでいる近くの中では空気のきれいなところだろうというようには理解されていると思いますけれども。先ほど松田さんがおっしゃっていた、非常に自然の豊なというか、自然の中にあるようなところではないということなので、ちょっと理解をしていただくために、そういう説明をさせていただきました。
【部会長】今の話は、国設の測定局の中で、いわば箟岳が一番低い方に相当するということで、人為起源の影響が非常に少ないという意味でのバックグラウンドにはならないというように思うところがございます。
色々ご質問をいただきたいのですが、最初に早い方から挙げていただいた方が、たしか浅野委員だったと思いますので、大変恐縮ですが、この次の審議もございますので、簡潔に質問をいただければと思います。
【浅野委員】議論がすこし手戻りになっているような気がいたします。前回、既に検討会の報告書をいただいており、この部会ではその内容を了承しております。本日は、その上でその後の専門委員会のご議論の結果の報告を受けるという次のステップに来ているはずだと思うのです。今日はまるで前回すませたはずの点について同じような議論が行われているので、いささかその辺は問題ではないかと思います。これはちょっとした感想にすぎません。
ところで本題ですが、環境基準をどうしようかというのが今日の話題になっているわけです。この点に関しては、少なくとも健康影響がどのレベルで問題なのかということが、今日のご報告の内容だったと思うわけです。これをどう評価すればいいのか、そこのところをきちんと議論しなければいけないわけで、今のアジェンダはその点に重点を置くことになるのだろうと思いますから、その点に関し、一つだけ少し荒っぽい質問をさせていただきます。
この冊子になったリスク評価手法についてという報告書の8ページに、かなり重要なことが書かれていると思います。それは、環境基準というと何でもみんな同じように考えているのですが、物質によって環境基準の決め方、考え方というのが大分違うということであり、この点についてきわめて明瞭な記述が出されております。例えば二酸化硫黄や粒子状物質ではとか、光化学オキシダントとはこうだとか、二酸化窒素はこうだとか書いてあって、それぞれに違いがあるわけです。その違いが、今回のこの報告書の微小粒子状物質に関しては、どのレベルの話になるのかな、これがよくわからないのです。多分、二酸化窒素のように健康状態からの隔たりにも留意して考察されているというくだりの次にこれが出てきて、こうこうこういうことだと書いてあるのですが、実はこの報告は、幾ら読んでも規範的に環境基準というものを考えるときに、どのレベルで環境基準を決めればいい、という報告がされているのか、すこし理解しづらいわけです。
ですから、荒っぽい質問で恐縮ですが、これは二酸化窒素レベルのことを意識しているのか、あるいは、もうちょっとそれよりも閾値そのものが怪しいようなレベルだから、もっと広いか。そこら辺のところをもう少し明確に専門委員会からお聞きした方がいいと思います。
その上で、環境基準をつくるということに関しては、政策目標としてこういうレベルを維持しなければいけないのだという基準を定めるわけですから、その点を十分考えなければいけないのですが、仮に環境基準が決まったとして、その次のステップで、では、どういう対策を講じるのかという段階になるわけですが、その場面では今日の、委員の皆様方からの種々のご議論が意味を持ってくるのだと思われます。つまり、一体どういう組成で、どこが一体由来なのか。その辺があいまいなままで環境基準ができたからといって、それはその基準でもってある特定の対象分野だけにいきなり規制をかけるというような発想にはなりにくいのだろうと思いますから、その次のステップのところでは、今日の議論が生きると思います。先ほどは、少し私は意地悪な言い方をしましたが、決して無意味な発言があったというわけではありません。この点はご理解いただきたいのですが、ちょっとアジェンダから言うと次のステップの議論になっているのではないかなという気がしました。
それで、次のステップの話です。十分に議論をすると先ほどから事務局のご説明ですから、私は納得できているのですけれども、13地点くらいのこれまでの調査データだけで物が言えるかどうかとか、さっき佐藤委員がおっしゃったように、個々のポイントの特性がどうか、とかというようなことも問題になるのではないかと思われます。例えば、私の住んでいる福岡についても、千代町という地点がデータに出ているのですけれど、その地域の特徴を考えればどうだろうというような話が必ず出てくるのだろうと思われます。
ですから、さらにこの点については、この段階での発言としてはすこしフライングということになるかもしれませんが、十分慎重に調べていかなければいけないということになろうかと思われます。しかし、そのことと、この段階で、ともかく環境基準を決めなければいけないのだということとを、結び付けて議論するのではなく、二つのことはとりあえず切り離して議論するという議論の仕方もあり得るのだろうと思います。従来は、環境基準を設定する場合に、それが決まったら次は規制法を改正して規制することになる、というわけで、常に次の規制のことを念頭において議論をしてきているといった傾向があったのですが、それは、本来の環境基準のあり方から言えばおかしいのではないかと、前から考えておりました。それだけに、この報告書の8ページの記載は非常に重要な記載で、こういう点での違いがあるのだから、またその次の対応の場面でも従来とは違いが出てくるということを認識しておかなければいけないと考えます。
【部会長】ありがとうございました。今の件につきましては、今回のものは定量的リスク評価手法についてという形でまとめて報告をさせてございまして、今、おっしゃっていただいた部分も、一番、最後のところに二つの方法という形で考えて、そのうちどちらを採用して値を見いだそうという形に報告をされていると思いますので、事務局の方から、もしくは委員の方からお願いいたします。
【総務課長補佐】まず、一つ目のエンドポイントに関する事項でございます。ひとまずは専門委員会におきまして、過去の環境基準に定められた項目についての評価文書を見て、さらに重要視したエンドポイントはどうかというものをまず見ていただいたと。
今回の微小粒子状物質のリスク評価手法の部分につきましては、微小粒子状物質の健康影響に関する疫学知見において、様々なエンドポイントに関する知見が示されております。例えば死亡リスク、日死亡が増加するとか、あとは入院受診が増えるとか、実際に機能や症状、呼吸器症状等の知見とか、様々な知見が見られるということでございます。
この知見の中で、どの様な知見が重視すべきなのかというものについては、この評価手法の専門委員会の中では、まだ整理はされていないということです。この部分については、今後の評価の中で、総合的かつ包括的な評価に基づいて、様々な重篤度の健康影響の中から考慮すべきエンドポイントを選択すべきであるということが示されているということでございます。
その一方、10ページ目にいきまして、この委員会の考え方としては、今言ったとおり、様々なエンドポイントの中から総合的に見ていくということですけれども、現在のエビデンスの中から見ても、特に死亡リスクの増加と、こういったものが非常に影響として見られる知見が非常に多いということでございます。この死亡というものについては、最も考慮すべきものだということですが、それ以外のエンドポイントについても数多くあるということですので、今後、これらのエンドポイントについての考察も行って、健康影響の種類と曝露量-反応関係をあわせて推定をしていくということになろうかというように思います。
【内山委員長】非常に重要なご質問をいただいたと思います。この報告書のまとめの34ページのところ、基礎的な考え方のまとめというところに、一応そういう点を書いたつもりでございますけれども、ここでは結局、この真ん中あたりに微小粒子状物質濃度が低い環境下においても幾らかの残存リスクがある可能性は否定できないということをまず認識させていただいています。これはこの粒子状物質の閾値があるかどうか、有無ということ、それからそのメカニズムということが複合体であるということも含めて、それから疫学から閾値を求めるということはなかなか難しい、個人の問題、集団の問題がありますので、そういうことを考えといくと、濃度が低い環境下であっても、残存リスクがある可能性は否定できないということが大前提にあります。その上でどういうことで基準なり目標値を考えていくかということですが、現在の疫学から、そのエンドポイントは、また死亡にとるのか、あるいは症状になるのか、それはまだもう少し次のステップで考えさせていただきたいと思うのですが、今のところは死亡が一応、各疫学の結果から一番確固たる証拠がある。ただし、それが一番低いものになるのか、それよりもさらに低いものがあるのかということは、また異なってくると思います。
そこで、先ほど申しました疫学的手法の確からしさというところをまず求めて、それを出発点にしたいということでございます。そこを環境目標値の目安とするのではなくて、そこを出発点として、さらに先ほどのご指摘があったようなことも考えて決めていくというのが次のステップになろうかと思います。
この委員会のミッションとしては、こういう手法で行っていけば、少なくとも環境目標値の目安となるようなところまではいくだろうということを、今日お示しさせていただいて、それで次のステップにいけるかどうかということをご判断いただければということですが。
【部会長】関澤委員が中途で退席するということで、先にお願いいたします。
【関澤委員】申しわけございません、退席するので一言だけ。
まだ議論がそこまでいっていないのですが、今後の進め方についてだけ一言お願いしておきたいと思います。
ただ今色んなご説明、あるいはご議論の中でもございましたように、環境基準を設定していくということは、色々かなり難しい課題が残っていると思っておりまして、今後、こういった残された課題を含めて検討が行われていくわけですが、これは非常に専門性が高い、そしてまた非常に難しい問題が多いと思います。そういう意味で、ある共通の理解をしながら進んでいかないといけないと思いますので、是非、今後の進め方の中では、当部会への中間段階での報告をお願いしておきたいと思います。
それから、報告いただく場合には、結論に至る過程を、できるだけ理由も含めて段階を追って、わかりやすくご説明していただけると大変ありがたい。
また、PM2.5というのは新聞報道にもありましたが、社会的にも高い関心事でございます。新聞にも出ておりますので、環境基準の検討に当たっては公開で審議することをお願いしておきたい。
それからパブリックコメント、これも実施して広く意見を求めていかれたらいかがかと思っております。
最後に、環境目標値。この資料の6もそうですが、環境目標値という言葉が今までの色んな資料の中で使われていたのですが、今回、環境基準を検討する、というようになっていますがその経緯と理由を知りたいと思います。
以上です。
【部会長】ありがとうございます。幾つかは今後の部会の運営についてということもございましたので、最後の目標値と、それから環境基準、この報告書のところで、なぜそういう表現をしたかというところについて、事務局の方からお願いします。
【総務課長】ご説明申し上げます。
環境目標値という用語につきましては、私ども環境基準値のような性格のものを含めて、あるいはそれに準じた、例えば有害大気汚染物質で設定しておりますような指針値というような、環境基準ではないのだけれども、そこに至るような知見が、少し不確実性があるものについて指針として出していると。このようなことも含めて、少しガイドライン的なもの、これはWHOが出しているガイドラインでございますけれども、少し広目の概念として環境目標値という言葉を使わせていただいておりました。
環境基準値というような、今回の諮問ということにつきましては、今まで環境影響につきまして、あるいは評価手法につきまして、ご審議をいただいた結果として、環境省としては、環境基準の設定を求めるに至る科学的知見は、蓄積されたものだという判断をいたしまして、環境基本法に言うところの環境基準値というところで、今回諮問させていただいた経緯でございます。
【坂本部会長】部会につきましては、途中の段階で今後いろんな共通理解をしないと、今日の色々な質問の部分におきましても、最初にご指摘ございましたように、前に戻るような話に、今日、4月にあって大分時間がたったということで、あえて少し説明を追加した部分にかかわるようなところの質問の方がむしろ多かったということで、その辺については共通の理解。
それからまたもう一つは、部会の方に中間の報告をしてほしいという要望。それから、その後、基準値を決めるときにはパブコメ等の他のところからの意見も求めることをやってほしいと、そういうご要望があったということは、今後の運営についてのことということで了解をいたしました。ありがとうございます。
残された時間が大分なくなってまいりましたが、報告事項につきましてはよろしゅうございましょうか。
ありがとうございます。
ただいま微小粒子状物質に関する取組みにつきまして、一つの報告でございます定量的リスク評価手法について、これについて報告をいただいたわけでございます。
それでは、続きまして次の課題といたしまして、測定精度の改良、曝露情報の整理について説明をお願いしたいと思います。
【大気環境課長】大気環境課長の早水でございます。8月1日付で着任しておりますので、この部会は初めてでございます。よろしくお願いいたします。では座って説明させていただきます。
それでは、資料4でまず測定法についてご説明をしたいと思います。微小粒子状物質の測定法につきましては、今日お配りしております資料の2-2にありますけれども、測定精度の改良について取組みを行う必要があるというご指摘がございました。これは当然ですけれども、濃度を適切に把握するということでございます。
これにつきましては、実は環境省では、その前から色々検討しておりまして、資料4にも上の方に書いてありますけれども、測定の暫定マニュアルというものを作り改訂を重ねておりまして、最近では昨年改訂しております。そういうことで、先ほどもご紹介した国設局のデータなどは、一応ある一定の方法を仮に定めて、試験的に測定をしているという状況でございます。
しかしながら、そこにもありますが、資料4にも書きましたけれども、まだ測定法は開発途上ということで、評価が十分されていないというところもあるということで、検討会につきましては昨年から、業務の請負先に微小粒子状物質測定法評価検討会というものを設置いたしまして、検討をいただいてきたというところでございます。
検討委員のメンバーは、次の3ページの下の方に書いておりますけれども、坂本部会長に座長をお願いいたしまして、7名の先生方で議論していただきました。昨年から今年にかけまして7回開催をして、議論をいただいたということでございます。
その結果が、資料番号がついておりませんが、もう一つの冊子でございます「大気中の微小粒子状物質の測定方法について」という検討会報告書として、最近まとめていただいたということでございます。
以下、報告書の内容でございますけれども、報告書の方をめくっていただきますと、「はじめに」というところがありまして、検討委員名簿、それから検討会の開催状況がございまして、今ご説明したように7回開催してきたということです。その次に目次がございます。
検討会におきましては、PM2.5の測定法につきまして、まず測定法の現状を整理していただいて、これは2章でございますが、その結果、手分析のフィルタ法を標準法としていったらいいじゃないかということで、それを基に、それと自動測定法との測定並行試験を実施しながら、それらの測定法の評価をし、基本的条件についてまとめていただいた、これが3章でございます。
そのときに並行試験を行う地点を選ぶ妥当性の検証のために成分分析も行っておりまして、その結果を踏まえて各種自動測定機の並行測定試験、その自動測定機の評価なども行って、その結果をまとめております。ですから、この3章というのが、この検討会報告の中心というところでございます。
最終的に、まだ課題が残っているということで、5章に今後の課題をまとめていただいているということでございます。
以下、この報告書は非常に専門的で細かい内容でございますので、主には資料4の紙の方でご説明をいたします。
まず、測定法の現状でございますが、報告書では3ページから21ページのところに入っておりますけれども、これは前回の部会でもご説明をしておりますが、フィルタ法、それから自動測定機による方法があるということで、資料4の紙の、めくっていただきますと4ページから5ページにかけてまとめております。フィルタ法というのは、フィルタ上に捕集した粒子状物質の重量を測定する、重量濃度を測るという方法でございます。代表的なものは、アメリカEPAのFRMという連邦標準測定法があるということでございます。
また、自動測定機につきましては、手分析ではなかなか大変だということと、1時間値も測定できるということで開発をされてきたわけですけれども、大まかに言うと三つの方法がございまして、一つはフィルタ上に捕集された粒子状物質の質量の増加に伴って、素子の振動周波数が減少するという原理を使いましたTEOMという、フィルタ振動法というもの。それから粒子状物質にβ線を当てて、その強度で質量濃度を測定するというβ線吸収法。それから粒子によって光が散乱するため、この量を測定することで間接的に質量濃度を測っていくという光散乱法。この三つが自動測定法として今使われているということでございます。
これらの測定法の評価でございますが、1ページに戻りまして、まず標準とすべき方法についてはどうか、その満たすべき基本的条件はどうかということで、報告書で言うと23ページから25ページでございますけれども、最も基本的な方法は、やはり捕集した粒子状を秤量することによるフィルタ法ということで、諸外国でもそれを標準法としております。これは水分あるいは半揮発性物質の影響によるデータの差異を極力除くような配慮もされてきているということでございます。このアメリカのFRMというのがきちんと評価されているということで、我が国におきましても、それに準じたフィルタ法を標準測定法とすることが適当ではないかという結論になっております。
また、その基本的条件ということで幾つか挙げておりますが、JISあるいはFRMに準拠して、この六つの条件というのを一応定めてはどうかということで提案がありまして、2ページでございますが、まず、2.5μmで50%カットオフとすると。それから、フィルタの部分と外気との温度差というものを±5℃以下とすると。それからフィルタの材質について。それから吸引流量の設定方法について。それから、フィルタの重さを測るときのコンディショニングの条件ということで温度、それから湿度の条件、それから天秤の感度。それから、測定濃度範囲としては2~200μgと。こういったものが大体の条件ということで、そこにあります例えば相対湿度は35±5%、あるいは温度は21.5±1.5と、こういった数字を挙げて、このようなものが適当ではないかということが、この検討会で結論づけられております。
ただ、これらの条件につきましては、まだ十分決めきれていないところもございますので、そのあたり、まださらに検討する必要があるということでございます。
また、これを標準法としたときに、常時監視を行う場合には、やはり自動測定を行う方が、質量濃度がリアルタイムで得られる、あるいはコストがかからないということもありますので、等価法として自動測定機の使用を推進するということが望ましいと考えられるとしておりまして、この条件につきまして九つ挙げております。
アは、これは当然ですけれども、測定されるものが質量ときちんと関係があること。あるいは補正をすることで明確に測定できるということ。それからカットオフは2.5μmで50%。それから、平均化時間としては1時間値を測れるというのが自動測定機の良い点ですけれども、これを検証する方法が今はないということで、一応平均化時間として基本は24時間、1時間値を参考値という形で位置づけてはどうかという考え方でございます。それから測定範囲は5~200μg。それから精度を維持するということで、測定法の恒常性が維持されて点検、校正法が確立している。それから、複数測ったときに一定の範囲できちんと日平均が測定できるということ。それから、次に吸引、流量の話。それから、やはり湿度の影響を受けやすいので、除湿装置などを有することが望ましいということでございます。また当然ですが、標準測定法であるフィルタ法との関係として、良好な直線関係が得られることということでございます。
こういったような条件を満たすものを等価測定法としていくということでございますけれども、これにつきましても、まだ十分決めきれていないところについては、さらに検討する部分があるということでございます。
それから、次の3ページでございますけれども、フィルタ法との並行試験による各種自動測定機の等価性評価というものをある程度行っていただきまして、これは報告書では37ページから55ページまで、グラフも含めて非常に大部の部分が記されておりますけれども、様々な測定法、先ほどご説明した3種類の測定もございますが、その中でも例えば除湿機がついているもの、ついていないもの、あるいは光散乱法とβ線を組み合わせた方法とか、色んなものが使われております。それら市販されているものについて、並行測定試験を実施いたしました。
この等価性の評価という方法も、まだきちんと決まったものではないので、仮にアメリカの方法などを使って評価などをした結果ですけれども、先ほどもちょっとご説明しましたが、標準測定法と等価性があると判断されるものは、やはり試料導入管に除湿装置をつけて湿度コントロールできるというものであると。これの装着がいいのではないかということが、とりあえず結論づけられております。
ただ、そのデータにつきまして、まだ十分な評価が出るデータが出ておりませんので、これにつきましては、引き続き除湿装置をつけたものを設置して並行試験を継続して行っております。
以上で標準測定法、それから自動測定につきまして、概ねこんな考え方で定められるのではないかということで結論づけられておりますけれども、今後の課題といたしまして、先ほど申し上げましたように、基本的条件について、なお一部課題が残っているということ、その部分の検討。それから自動測定機については、さらに改良、研究開発が必要であるということ。それから、自動測定機につきまして評価方法、それから精度管理についてきちんと定めておく必要があるということなどの課題がまだあるということでまとめられております。
以上、検討会におきまして、測定法につきましておおむね標準測定法とそれと等価とみなされる自動測定法につきまして、考え方を整理していただきまして、大体まとまってきて、こんな形で測定できるのではないかというところまでいったわけでございますが、なお一部課題があるということで、引き続き検討するという状況でございます。
以上が測定法でございまして、これにつきましては、座長をお願いいたしました坂本部会長から後ほど補足のご説明があるかと思いますが、引き続き私の方から資料の5の方もあわせて説明をさせていただきます。
前回の部会では、資料2-2にありますけれども、曝露関係につきまして微小粒子の生成機構、大気中の組成解明及び多岐にわたる排出源の把握に関する情報の整理ということで、そういったものを行った上で曝露評価をしていく必要があるという御指摘がございまして、前回の部会のときに私の前任の岩田課長が、曝露関係に関する20年度の調査研究内容につきましてご紹介をさせていただいております。
これらについては、まだ今、年度途中でございますので、いずれも結論が出ているものではありませんけれども、今日は進捗状況のみ簡単にこの1枚紙でご説明をさせていただきます。
まず、モニタリングにつきましては、先ほどもちょっと出てきましたけれども、国設局で平成10年度以降、順次拡充して実施してきております。現在は17局、一般局4局、自排局13局ということで行っておりまして、TEOM法またはβ線吸収法によります自動測定で実施しております。
これは先ほどの資料の1のグラフの中にデータとしては含まれております。今年度、さらに5局追加をして、来年度からこの改良型TEOMというTEOMの方法に除湿機を加えたようなもので行っていきたいと考えております。
また、自治体でもモニタリングはできるようにということで、今年の10月に応募のあった自治体から20局を選定いたしまして、今年度中にβ線吸収法と光散乱法を複合したハイブリッドの自動測定機、今までの評価の中で一番標準測定法との相関がよかったもの、これを試験的に導入いたしまして、自治体で試行をしていただくということを考えております。また、来年度の予算状況を踏まえて、さらに拡大していきたいと考えております。
それから、成分分析と粒径別分析の調査でございますけれども、これは現在、関東・関西におきまして夏季・冬季のPM2.5の成分について実施しております。年度内に中間取りまとめを行う予定でございまして、その結果を踏まえてPM2.5の濃度予測、それからシミュレーションの構築、あるいは今後の施策の検討に活用していきたいと考えております。
それから、発生源インベントリの作成とシミュレーションモデルの構築ですけれども、これはやはり関東・関西地区におきまして発生源インベントリ、なるべくその成分も含めたものにしたいと思っておりますけれども、実績値それから予測値を算出できるように、その作成を今進めております。また、その結果、あるいは上にあります成分分析の結果を活用して、平成19年の関東地域を対象に既存のモデルを使いましてPM2.5の成分濃度の試算を今行っております。まだ、仮にデータが出ている状況で、これからさらに観測結果との成分別の比較、それから排出インベントリの更新など改良を加えていって、要するに実測とシミュレーションの結果が合っているかどうか、合っていない場合はどういうように改良していったらいいかということを繰り返しまして、シミュレーションモデルの構築、精度の向上というのを図っていきたいと思います。
次は自動車の部分です。これは私どもの課ではなく環境管理技術室というところでやっておりますが、私からまとめてご報告をさせていただきますと、粒子状物質に関する実態調査ということで、自動車からの粒子状物質の車種別の排出係数、それから排出総量の推定・予測を実施しておりまして、最新規制適合車に関するデータの更新を実施しております。
また、自動車から排出されます粒子状物質の粒径分布・組成などの実態調査の実施、それから粒子数測定法の確立のための試験調査なども行ってきているということでございます。
これらの調査につきまして、今年度だけで終わるものではなくて継続するものがほとんどでございますけれども、区切りのついたところで中間的なものでもこちらにご報告をするということになると考えております。
5の対策についてでございますが、これらの調査結果で発生源の状況を色々把握する必要がありますし、発生源の状況と、それから粒子状物質につきましては、PM2.5という形ではないですけれども、PM全体として固定発生源なり、あるいは移動発生源の対策が、これまで実施されてきておりますので、その対策の効果なども踏まえまして、今後のPM2.5に関しての対策のあり方というものを検討していきたいと考えております。
以上、中間報告という形で進捗状況をご報告させていただきました。
【部会長】ありがとうございました。ただ今事務局から説明をいたしましたけれども、先ほどの話にございましたように、微小粒子状物質、PM2.5の測定方法、これに関しては私が少し関わってございましたので、補足をさせていただきたいと思います。
報告書の方でごらんをいただきましたように、約1年間でこういった検討を進めてまいったわけでございますけれども、PM2.5の測定方法につきましては、フィルタ法、自動測定法が米国では規格化されてございまして、欧州においても同様の取組みができ上がっているところでございます。
こういう状況の中で、日本における測定方法を決めていく必要があるわけでございますけれども、水分それから半揮発性物質、こういったものの影響をPM2.5の場合には、これまでのPM10とかSPMよりも大きく受けるわけでございます。そういう意味で、単純に欧米の測定方法を用いればよいというわけではない。これは、我が国は非常に湿度が高いということをご存じだと思いますが、そういった温度、湿度、こういった気象条件の違い、こういったものについても十分な検討が必要でございますので、これまで議論を行ってきたわけでございます。
それから、1年間連続して並行測定を、フィルタ法と、それから自動測定機、こういったものでやったわけでございますが、その資料の整理を行いまして、先ほど事務局の方からお話しいたしましたように、各種測定機の特徴を把握することができましたので、どういった点を改良すれば今後使えるかと、そういう手がかりが得られたところでございます。
そして、本検討会におきましてPM2.5の測定方法、これは先ほど申し上げました報告書でございますけれども、それで概ね確定することができたわけでございますが、まだ検討課題が残されているところもございますので、今後さらに検討していくということでございます。
そして、この測定方法以外に、先ほど事務局の方から資料5でございましたように、一般の環境中の粒子の状況、それから発生源、それから発生源データを入れてシミュレーションをして、濃度予測をするとか、その後の対策にもかかわるようなことも引き続き調査をしていくということでございます。
以上、ただ今測定法、それから曝露関係の説明を申し上げましたけれども、これにつきましてご質問、ご意見ございましたらお願いいたします。また恐縮ですが、ご質問、ご意見のある方は名札を立てていただければと思います。いかがでございましょうか。
浦野先生、お願いします。
【浦野委員】今のご説明については、よく理解できたのですが、少し追加のご説明をお願いしたいと思います。
一つは、PM2.5の影響は非常に低濃度長期の影響を中心に見るという場合に、自動モニタリングは非常に短時間での変化がずっと見られますが、いわゆる標準法というのは24時間の平均値ということになります。現在、他のVOCも24時間平均値をとっているのですが、測定回数がかなり多くないと、求められた年平均値というのが、実際の本当の平均値、要するに自動測定した平均とかと必ずしも合ってこないことになります。地域にもよりますし、気象にもよりますが、そういうこともあるので、いい装置ができれば、少なくとも1週間ぐらいの長期の捕集の平均値も別に測定する、要するにコンポジットサンプルの測定になり、楽に、より正しい平均値や季節変動などが分かるので、そういうことも考えられないのかということが1点。
それからもう一つは、報告書の最後の方に少し書いてあるのですが、自動測定機を全国に相当数設置するのは相当大きな負担になるし、標準法で測るのも結構回数やるとなると、きついと思います。そうした場合に、簡易測定をうまく導入して、それである程度高いというところだけ詳細な測定をするというようなことも、非常に効率的な管理のために必要だと思います。簡易測定法について少し書いてあるのですが、これについては、もう少し詳しい情報があるのか、あるいは今後、何らかの新しい開発を期待して支援をするようなことがあり得るのか、その2点についてご質問いたします。
【部会長】事務局の方でお願いします。
【大気環境課長】2点ございますが、測定につきまして、1週間ということについては、自動測定はどこまでとっていくかということで、ある程度長期間採取可能ということもあるかもしれませんけれど、基本的にはやはり1日ごとの値ということです。ただ、1日ごとのデータを当然7日間続けてとれば1週間の値になるということなので、それで代用するという形になるのではないかというように考えております。
それから2点目、簡易測定ですが、これは今、浦野先生ご指摘のように、確かに大事だというように考えています。この報告書でも、疫学調査などを実施する際に、同時に色んな所で測れるというのは簡易測定法だろうとされておりますし、ご指摘のように、高い濃度と低い濃度があるので簡易測定を活用してはということですけれども、残念ながら、これまで本体の方の測定法について検討してきており、簡易測定法についてはまだ検討に至っておりませんので、まさしく今後の課題ということで、今後検討させていただきたいと思っております。
【部会長】よろしいでしょうか。その他、こちらにつきましてご質問、ご意見ございますでしょうか。よろしゅうございましょうか。
それでは、今、PM2.5の測定方法、それから、その前にリスク評価手法という形でご説明を申し上げ、ご質問、ご意見をいただいたところでございますが、この両方を通しまして、何か全体的なところでご質問、ご意見ございますでしょうか。
どうぞ、櫻井委員。
【櫻井委員】今日の議事次第でも、微小粒子状物質に係る環境基準の設定についてということで、それが一番の基本的な課題だろうと思いますが、今までのデータの蓄積等から、やはり環境基準を設定するに十分なデータはあるだろうと私は思います。
ただし、その基本的な前段階として、定量的リスク評価手法についてまとめてくださっている。これはもう本当にそのとおりだなと、それに従ってきちんとリスク評価をやっていただいたものを、これはもう非常に専門的な領域になりますので、素直に受けとめるべきだと思っておりますが、その中で環境影響を生じることが確からしいとされる濃度水準を見いだすと。
これが最重点課題で、その際、私は長い経験からしばしばございます点を一つだけ申し上げたいのですが、曝露の評価の問題ですね、非常に大きな、どうしても誤差がある。それはもう重々ご承知で、この中でも繰り返し述べておられますが、2点だけ特に気になっている点を申し上げますと、一つは、非常に慢性曝露を見ておりますので、相当昔の過去の曝露の影響、これが測定されている濃度と同じかどうかという点ですね。むしろ、高かった可能性の方が低かった可能性より強い場合もある。そこいら、どっちにバイアスがかかっているか、よくお考えいただきたいと、それが1点です。
それからもう一つは、閾値に近い領域で一定のグループの平均値を使って、それと影響との関係を見ているわけですが、閾値に近い領域では曝露量-反応関係というのは右上がりですよね。そうしますと、その中で含まれている個人の曝露は幅がある。平均より低い曝露と高い曝露、どちらが影響にきいてくるかというと、高い曝露の方は影響を示す方向、それから低い曝露は全然それを示さないか、少しあっても少しだけ上がると。必ず平均値をとると影響が出る方向へいきますので、その点、欧米の疫学の情報、閾値を発見できないというところについて、そういう誤差がどの程度入っているか。専門家が揃っておられますので、十分検討していただきたい。その上でこれが確かだというのを出してくださったら、その濃度よりもちょっと低いところ、どこか低いところで環境基準を皆さんでお決めになるという方向で、是非やっていただきたいと思います。
以上です。
【部会長】ありがとうございました。今の提案はこちらの方でお答えしなくても、今後こういった櫻井先生のご意見に合った形で対応していくことになろうと思いますので、ありがとうございました。
その他。
【磯野委員】これは質問というよりもお願いということでございます。
先ほどからずっとリスク評価の手法についてというようなことがありましたけれども、先ほど浅野委員からも出ていましたように、これは環境基準をどの様に定めていくのかという極めて重要な課題があるので、先ほど言われていた、大気汚染が人の健康に好ましからざる影響を与えることがないように微小粒子状物質の健康リスクに関する現状を踏まえた手法という形で書かれておりましたけれど、まさに人の健康に、エンドポイントのところが死というわけではなくて、きちんとした健康に生きていくための目標値というものを、このリスクの中でとらえて考えていっていただきたい。つまり安全性の方へ、きちんとしたものをとらえるような手法として作っていっていただきたいなということ。
それから、その中で、やはりきちんとした目標値として設定できるようにしていただきたいということです。科学的にいかに正確にするかということも大事なのだろうと思うのですけれども、どう安全性に比重を置いて、きちんと考えていくかということに関して考えて、今、予防原則等々の議論もありますので、そういうものもしっかり前提に置きながらのリスク評価みたいな形で考えていっていただきたいなというように思っております。
【部会長】ありがとうございました。今のお話も今後の考え方ということで、対応させていただきたいと思います。ありがとうございます。
そのほか、どうぞ。佐藤委員、お願いします。
【佐藤洋委員】今回の検討で、色々環境基準の方向へいくということは、私、原則的にはそういう方向でいいだろうというように思っております。ただ、今まで幾つかご指摘があったように、今までの考え方と若干違うところがあるのだろうなというように思っております。
一つは、微小粒子のキャラクタライゼーションというのでしょうかね、何であるのかというのが、私この検討会、幾つか出させていただいていますけれども、何となくよくわかっていないし、中身がわからないと中毒学やっている者としては、何となく気持ちが悪いなというところが残ってしまうので、今までご説明がありましたように、測定法の開発の中で、成分の分析とか、色んなことをやっているのですけれど、そこをもっとしっかりやっていただければというように思います。
それからもう一つは、健康影響の方ですけれども、これは集団で見たとき、ごくわずかに見られるような影響であるというところが、またかなり特徴的なのだろうなと。個々人の何か症状であらわれるというのは、今まで従来のものとは大分違っている。実は、他の物質でも色々あるわけですよね、化学物質であったり、あるいは北野先生もおいでですけれど内分泌撹乱であったりとか、集団で見ないとわからないもの。例えば内分泌撹乱なんかだと、その出生性比が変わるというようなことが見られたりしているわけです。
これは新たなリスク評価のエンドポイントだろうというように思うのですけれど、これは、この部分だけじゃなくて、もう少し広く、そういう集団として見たときの影響が、どういうようにとらえて、どういうように評価していくのかというようなことを、もう少し横断的に考えるような機会があってもいいのではないだろうか。そういうものをきちんと整理した上で、基準を作るなら作るという方向へいった方が、何か新しいところへ私は結構踏み込んでいるような気がいたしますので、そういう考え方もあり得るだろうなというように思っております。
【部会長】ありがとうございました。微小粒子状物質は、冒頭の説明でもございましたように、非常に成分的にも多成分である。それから粒径が非常にそれぞれ違うというようなことで、今回色んなものを考えた場合に、全体としてPM2.5を包括的に取り扱って、まずは考えていこうというようなことになっているわけでございますが、当然、物質、成分、そういったものがわかることによって、他のところへいく、それから発生源の問題もそう。そしてさらに、場合によってはPM2.5という形で見たところに、あるものも入っている可能性もあるというようなことも、色んなことで横断的に考えていく必要があるというようなことをおっしゃっていただいたものと思います。
そういう意味では、先ほど来申し上げました、健康リスクを判断するような方法と、それからもう一つは曝露影響、それから成分を測定する方とが、同時に一体となって進んでいかないと、これは最終的なところには至らないというように思うわけでございます。どうもありがとうございました。
松原委員、お願いします。
【松原委員】すみません、30秒ほど。実は私は、この審議会に放射線の分野で専門的に議論をする人が必要ということで、元原子力安全委員会の委員をしておりましたので、その関係で参加させていただいておりました。
幸い、今まで日本で放射線汚染の広がるような大きな事故はなかったのですが、実際は人々にとって一番の心配は、色々な健康影響がありますと、放射線のせいではないかというように思われる一般の方は非常に多いわけでございます。それで実は、今日の委員会でも曝露データが非常に重要であるということで、この環境省の委員会の活動として、大気汚染については非常に長年きちんとした曝露データが積み上げられてきたわけでございます。
一方、放射性物質についても、非常に検出が安価に簡単に汚染状況をテストできることから、曝露データがたくさん、毎年、測定ステーションから出ているわけです。そういう意味で、きちんとした曝露データから健康影響を推定する、非常によいデータを持っている分野は放射線分野と、それから、こういった大気汚染等の分野であろうかと思います。
それで、実際には、一般の人は健康影響について一番関心があるわけでございますので、その実態をきちんと調べるということは、国民のために非常に重要なことなのでございますが、今まで放射線については、相当調べてあるにもかかわらず、放射線の、この曝露の程度でこういう健康があったという、そういう学問的な事実は証明できないほど微量な、量-反応関係がそのような状況でございまして、実際は、現実は環境にある様々な化学物質とか、あるいは感染その他が健康影響に大きく影響している場面もあるのではないかと、私は想像しております。
そのようなことで、とても大事なことは、本当の現実を一般の方に知っていただくということでございまして、今後とも私はこの委員会におかれましては、着実に曝露データを貯められまして、また、健康影響についても専門的な見地から、是非きちんと議論、検討していただければありがたいと思います。
そういったことで、この委員会の責任についてお願いを申し上げたいと思いまして発言させていただきました。
【部会長】ありがとうございました。今、曝露情報ということで、放射線の場合はかなりパッシブサンプラーとか、色んな形で比較的色んな多点で測定できるものができていて、色んなデータがある。そういったところも含めて今後考えて欲しいというようなことでございます。ありがとうございます。
いずれにしろ、曝露データがないと、今回の健康リスクの判断というところにはつながらないと思います。ありがとうございました。
その他よろしいでしょうか。どうぞ、北野委員。
【北野委員】言わずもがなですが、環境基準の設定に当たっては、環境基本法における環境基準の考え方ですね、望ましい基準といいますか、その辺のところは私たち、忘れてはいけないのではないかと思っております。
それから、今日説明がなかったのですが、ある環境基準が定められた時に、それを下げる努力をしないといけないと。その対策技術といいましょうか、それについても、どういう状況にあるかということが、いずれご報告いただければ大変ありがたいと思っております。
以上です。
【部会長】ありがとうございました。その他ございますでしょうか。
どうぞ、後藤委員。
【後藤委員】先ほどから色々ご議論があるわけですけれども、環境基準設定につきましては、まだPM2.5の生成機構だとか、あるいは、その共存物質などの撹乱、影響修飾の問題などに加え、日本の気候風土とか諸外国との生活習慣の違いによる健康影響といったようなことも勘案する必要があり、他の物質とは異なり、まだまだ明確になっていない、難しい重要な課題が残っているというように思っています。
そういった意味で、基準の設定に当たっては、こういった残された課題も含めてご検討いただきたいと思います。よろしくお願いします。
【部会長】ありがとうございました。
よろしいでしょうか。
それでは、先ほど申し上げましたけれども、前回の4月に部会を開きまして、そこでの課題として定量的リスク手法、それから測定方法、こういったものの精度の改良、こういったものをやっていただくということをお願いしたわけでございますが、今日お話し申し上げましたように、その成果が示されたわけでございます。曝露情報の整理につきましては、今色々委員からもご指摘がございましたけれども、そういったものを今後もとっていき、整理をしていくということでございます。
次の議題でございますけれども、微小粒子状物質に係る環境基準の設定についてでございます。
これは、冒頭で白石局長のあいさつにもございましたが、これらの取組みを踏まえまして、12月9日付で環境大臣より中央環境審議会長に対して微小粒子状物質に係る環境基準の設定についてという諮問がなされてございます。そして、その後、大気環境部会にこれが付議されているところでございます。
諮問の趣旨及び内容につきまして、それから今後の検討体制として二つの専門委員会を設置していこうという考えでございますけれども、事務局から説明お願いいたします。
【総務課長】恐れ入ります。お配りの資料6をご参照いただきたいと思います。
報告をする事項としまして、冒頭、水・大気環境局長の方から申し上げました微小粒子状物質に係る環境基準の設定について、12月9日に斉藤環境大臣から中央環境審議会会長あての諮問をいたしたところでございます。
諮問理由、ここの中の第2パラグラフ、第3パラグラフにあるところが、その一番のポイントにございますけれども、要は科学的知見の蓄積を踏まえて、微小粒子状物質に係る環境基準を新たに設定する必要があると、こういう認識をいたしておるものでございます。
資料6の裏のページをごらんください。
同じく同日、12月9日付で中央環境審議会会長から、当大気環境部会長あてに、この設定についての付議をいただいているということをご報告させていただきます。
次に、資料7をご参照いただきたいと思います。
資料7は、審議事項として一つお願いをしたいことがございます。大気環境部会に専門の事項を審議していただく専門委員会を設置する際に、これは中央環境審議会の決定事項であります議事運営規則に基づきまして、部会レベルの部会決定を行っております。
この参考の方でちょっと様子を見ていただいた方がよろしいかと思って、おめくりいただければと思うのですが、この部会決定は、中央環境審議会大気環境部会の専門委員会の設置についてという表題で、平成13年の3月に決定されて以来、新たな専門委員会の設置が必要になるたびごとに改正を加えさせていただいております。
今回のご提案について申し上げます。審議事項がかなり専門性を帯びるということと、これまでの大気環境基準の審議の前例にかんがみまして、二つの専門委員会の設置をお願いしたいというものでございます。1ポツのところにございますように、名称としては、環境基準そのものについての専門の事項を調査いただく「微小粒子状物質環境基準専門委員会」、それからもう一つ、これは測定法に関する専門事項を調査いただきます「微小粒子状物質測定法専門委員会」という二つの専門委員会の設置をお願いしたいと思いますので、ご審議をお願いします。
なお、この会則の一番、最後の8の項をごらんいただきますと、部会に設置する専門委員会に属すべき委員、臨時委員、専門委員は、部会に属する、こういうようなことがありまして、こういったこととの並びで、現在議事運営規則と、それから中環審の決定によりまして、委員の選定につきましては、部会長の指名というような形での仕切りになっておることをご報告させていただきます。
以上でございます。
【部会長】ただ今ご説明申し上げました資料6、7に基づきまして諮問が出てございますので、今、お話を申し上げました二つの専門委員会について設置をさせていただくということのご審議でございます。ご質問、ご意見等ございましたらお願いいたします。
どうぞ、浅野委員。
【浅野委員】諮問を受けた形で審議をすることについては、専門委員会を設置することは適当だと思いますので、ご提案には賛成をしたいと思います。
ただ、多くの方からご意見がありましたように、環境基準といっても、大分今までとは趣の違う対象を取り上げる環境基準ということは、何度も言われているわけですし、かつ環境基準を設定した以上は、それをどう達成するかということが大きな課題であることは言うまでもない訳でありますので、その辺を十分考えなければいけないと思います。
つきましては、私は、度々色んな場所で申し上げていますけれども、公害対策基本法をつくったときの環境基準というのは割合シンプルに物を考えて処理できるものであったのですが、その後、数多くの環境基準が水の分野、騒音の分野、色んなところでできていまして、よくよく見ると一つ一つの環境基準の持っている性格がかなり違ってきているのですよね。
例えば当部会でもリスクレベルで考えるという、ベンゼンのような、リスクで考えまして、そのときは多少無責任に水の基準でいいじゃないかとかとやったようなことがあるので、割合荒っぽく決めているものもあるのですね。今回のように非常に精緻に議論しているものもある。相当環境基準の中身が多様化してきています。ですから、これは水・大気局の所管というよりも、むしろもっと省全体で考えなければいけないということは、度々申し上げておりますけれども、当面、一番関係があるのは水・大気局でありますので、所管の環境基準の持っている性格をきちんとグルーピングをして、今回できる環境基準というものがどういう性格のものであるかということが、国民に誤解を生じないような形の整理をしなければいけない。そういう時期に来ていると思いますので、あわせてその作業を是非事務局でやっていただきたい、こういうことでございます。
【部会長】ありがとうございました。その他ございますでしょうか。
よろしいでしょうか。
今、浅野委員から専門委員会の設置については賛成という形で、その際の要望という形でご意見をいただいたということでございます。
それでは、もしよろしければ大気環境部会に微小粒子状物質環境基準専門委員会及び微小粒子状物質測定法専門委員会を設置するということで決定させていただきたいと思います。
(異議なし)
【部会長】ありがとうございました。
なお、両専門委員会の委員でございますけれども、先ほど事務局の方から説明を差し上げましたけれども、中央環境審議会議事運営規則第2条第2項に基づきまして、私の方から委員長を指名させていただきたいと思います。
微小粒子状物質環境基準専門委員会の委員長は、これまで微小粒子状物質健康影響評価検討会の座長を務めていただきました。それから、その後、さらに微小粒子状物質リスク評価手法専門委員会、今日の前半の報告ですね。この委員長を務めていただきました内山巖雄委員を指名したいと思います。
それから、もう一つの委員会でございます微小粒子状物質測定法専門委員会の委員長でございますけれども、これまで私自身が測定方法の検討会で座長を務めさせていただいた経緯もございますので、私がこれは務めさせていただくこととしたいと思います。
なお、これらの専門委員会につきましては、これまで委員の皆様方からいろいろな微小粒子状物質にまたがる、かなり学術的な問題、難しい問題等々ご指摘いただいてございますので、それぞれそういった分野の専門家、学術的な成果をお持ちの方で、こういった方にご造詣の深い方々、こういった方を内山委員とも相談をしながら指名をさせていただきたいと思います。
今日の部会に出席いただいている先生方、一部指名される方がいると思いますが、是非その節はよろしくご協力のほどお願い申し上げます。
今後、諮問事項につきましては、二つの専門委員会で審議をいただくことでお願いをしたいと思います。
今申し上げましたような形で、二つの専門委員会、それから委員の選任について、よろしゅうございましょうか。
(異議なし)
【部会長】ありがとうございました。
それでは、続きましてその他の報告事項でございます。その他報告事項として、事務局から何かございましたらお願いします。
【総務課長】恐れ入ります。お配りしております参考資料の5番、6番、7番につきましては、皆様方への情報提供として配らせていただいております。時間の関係で説明は省略しますが、二酸化窒素等の大気汚染状況、それからベンゼン等の有害大気汚染物質のモニタリング結果、それから電気自動車に係る実証試験事業についてということでございますので、また担当課に適宜お問い合わせいただければ、大変幸いです。以上です。
【部会長】ありがとうございました。ただ今お話がございましたように、この資料の内容につきましては、大変恐縮ですが時間が今日はございませんので、質問等は直接事務局の方へお願いをしたいと思います。
最後に、事務局から何か連絡事項など、さらにございますでしょうか。
【総務課長】次回の大気部会の日程は、未定でございますが、追って事務局の方からご連絡をさせていただきます。ありがとうございます。
【部会長】それでは、司会の不手際というよりは、非常に重要な問題でございますので、皆様方から忌憚のないご意見をいただく形で進行させていただきましたために、予定の時間を大分超過してしまいましたけれども、皆様方のご意見で、今後の環境基準設定についての審議が、ご意見を考えながら進められるというように思います。大変ありがとうございました。
それでは、今日の会議はこれで終了させていただきます。どうもありがとうございました。