瀬戸内海環境保全審議会総会(第27回)会議録


 
 
1.日  時  平成12年1月27日(木)14:00〜16:00
 
2.場  所  通産省別館 944会議室                 
 
3.議  事
(1)平成12年度 環境庁重点施策等について(報告)
(2)第5次水質総量規制の在り方について
(3)瀬戸内海環境保全基本計画の変更について(計画部会における審議状況の報告等)
(4)その他                               
 
4.配付資料
資料1 平成12年度環境庁重点施策及び組織・定員
資料2 平成12年度水質保全局予算案
資料3 第5次水質総量規制の在り方について
3−1 総量規制専門委員会での審議状況
3−2 第5次水質総量規制の在り方に対する意見の募集結果について(案)
3−3 第5次水質総量規制に係る意見交換会において得られた意見について
資料4 瀬戸内海環境保全基本計画の計画部会における審議状況について
4−1 瀬戸内海環境保全基本計画の枠組み
4−2 埋立ての抑制
4−3 海砂利採取への対応
4−4 環境教育・環境学習の推進
 
議  事
 
事務局:水質保全局長の挨拶、配付資料の確認後、議事に入った。
 
会 長:本日は中央環境審議会に諮問され、審議されている第5次水質総量規制の在り方についての最終報告(案)がまとまったので、その内容を本審議会に報告いただく他、昨年9月に本審議会に諮問され、計画部会で審議している瀬戸内海環境保全基本計画の変更について、9月の総会からこれまで2回計画部会を開催しているが、その審議状況について報告し、委員の皆様から意見を伺う予定である、
 では、議事次第に従い来年度に向けた環境行政の動きということで、平成12年
度環境庁重点施策についての報告をお願いする。
 
事務局:資料の1の平成12年度環境庁重点施策及び組織・定員と資料2の平成12年度水質保全局予算案に基づき説明する。
 
会 長:環境庁の重点施策等の説明について何か質問、あるいは意見があるか。
 
事務局:議事の2について、資料の3、枝番の3−1,3−2,3−3それに参考資料第5次水質総量規制にかかわる意見交換会の概要、これらの資料に基づき説明する。
 
会 長:第5次水質総量規制の在り方についての説明だが、意見、質問なり何かあるか。
 
委 員:資料3−1の15ページ、表4、資料7のところで、先ほど植物プランクトンは増殖したときにそれをCODに換算すると、4割程度が内部生産の有機汚濁になるのではないかという説明だが、もう少し具体的な内容と、2つ目の質問ですが、17ページに富栄養化のプロセスのところ、左右にあるが、魚介類の種の変化、漁場の変化というのに赤潮の発生等から矢印が引いてあるが、この具体的な説明をお願いしたい。
 
事務局:内部生産の量が4割という分析の内容だが、CODという指標は海の中の有機物の程度を示す指標として酸素の消費量ということだが、当然、太平洋など外洋にもCOD分というのは含まれる。また当然陸域からの有機汚濁負荷がそのままカウントされる分もある。そういったあたりを非常に大ざっぱだが外洋水の濃度をバックグラウンドと仮定すると、あと内部生産によってカウントされるCODというもの、これは幾つか方法があるが、例えば植物プランクトン量をあらわすクロロフィルAという指標があるが、それとCODの直線的な相関関係というのが各湾とも見えるので、それをもとに推定をしている。これは東京湾、大阪湾、伊勢湾でもやっているが、概ねどの海域においてもバックグラウンドが大体2割ぐらいであろうと、流入負荷による直接的CODが大体4割、残りの4割が内部生産というような傾向をつかんでいる。これは湾全体を一括して大ざっぱに推定したものであること並びに当然内部生産というのは夏場に高くなるので、夏場においては高いところでは6〜7割まで内部生産量が上がることもある。そういったものを年平均すると大体先ほど申し上げたような数字になっている。その辺を資料3の8ページから9ページにかけて概略まとめてある。
 それから先ほど資料3−1の17ページの図からの質問だが、主として東京湾における漁業者の方の発表をもとにした1例として、これは参考資料の中の要点にもまとめてあるが、例えば昔、青潮、貧酸素水塊というものが単発的に局所的に発生をしていた。そういう場合はそういうところを魚が逃げていくので、ある一方向というか、一地域に集まるというと、逆に漁業はやりやすかったという状況の報告があった。ところが近年は貧酸素水塊が頻発をして魚の逃げ場所がなくなって魚がほとんどとれなくなった海域も出てくるという報告もあった。赤潮については従前だと当然夏場の赤潮ということであったが、意見発表、交換会では、11月の下旬になっても赤潮が出ているというような、非常に危機的な状況であるという報告があったので、先ほどのようなご説明をさせていただいた。
 以上でございます。
 
委 員:私、この総量規制の専門委員会をお預かりしているが、手元にいろいろデータを持っていないので、内容的には事務局の説明で結構だと思うが、内部生産の割合というのが4割というのは、あくまでも目安、平均値であって、夏だと6割台ぐらいになることも当然あるし、冬ですと3割ぐらいあるいは25%ぐらいというようなこともあって、大ざっぱにいうと幾つかの方法で、大体平均値が4割というぐらいに見ていただければよいと思う。
 それから貧酸素水塊の方だが、これは当然DOがなくなるので特に魚というよりも、魚は逃げられるが貝類は逃げられませんので、例えば東京湾のアサリ、あるいはほかの貝類、底生動物なんかもそうだが、ほとんど壊滅的に死んでしまうというようなことで、当然、種の変化というよりも非常に限られた汚濁に強いものだけに限られてしまう。
委 員:総量規制も第5次になってきたので、新たな論点を加えて専門委員会の方でまとめていただきました。この結果については非常に結構だと思っている。先ほどの事務局の説明で、瀬戸内海全体としてはどうだということは、ほかの伊勢湾とか東京湾と比べてわかったように思うが、この場は瀬戸内海の審議会なので、瀬戸内海の中では一体どうなっているのだというところの説明を簡単な資料でもつけていただければよかったと思う。
 瀬戸内海全体として横ばいだということだが、どこもかしこも横ばいなのか、あるいはどこかで改善されて、どこかで悪くなったということもあるのかどうか。それから大阪湾の奥の方で若干水質が改善されてCODがよくなったということだが、伊勢湾の奥もそうだということだが、この3−1の11ページに大阪湾のCODの図が出ているが、改善されたと言われているけれども、相変わらず横一文字で真っ直ぐ、一向にグラフにあらわれていないではないかというふうに思うが、そのあたりどうなっているのか。
 
事務局:瀬戸内海の中をより小分けにして説明できなかったのは申し訳けなかった。
 12ページ、大阪湾の奥でという話だが、平面的にあらわすとこのような図になる。実際のデータというのは実はこの別途お配りしているピンク色の本の、例えば青い紙のあとの30ページだが、ここに載っている。実は資料3−1で示したグラフというのは、環境基準の達成率ということで、実は大阪湾の中に環境基準点といいうか、水域は3つ設定をされている。そのうち2つはずっと達成をしてきているが、残る1つがなかなか達成されないということがこの結果にあらわれている。具体的には、この資料集の方の30ページの上にCODの灘別の数字の推移というのがあるが、今手元に具体的な当てはめの資料がないが、この中のどれかが達成をされていないために環境基準達成率としては3分の2がずっと続いているという状況である。
 今、詳しいことまでお示しできないが、そのような事情があるということでご理解いただきたい。
 
委 員:窒素・隣の総量規制という基本的なところはいいと思うが、内部生産の話がさっきから出ているが、内部生産CODが減らないからというのが規制の目的としては、気になる。例えば今の最後のところにある富栄養化の水質汚濁のメカニズムというところで、例えば窒素、燐の流入によって赤潮が発生するとか、だから赤潮を減らすために窒素・隣を減らすというような論理はいいと思うが、CODという指標でそれを減らすためにというのはどうも釈然としない。内部生産というのは基本的にプランクトンとか何とかの生産であって、それ自体は悪ではないと思う。極端にいうと内部生産ゼロということは、生き物が住めない海ということになるわけだから、それを単に減らすという考え方というのは何か釈然としないところがある。当然多過ぎるので減らさなければいけないというのはあるとは思うが、そこら辺の考え方   の整理がもう少し必要なのではないかという気がする。CODということで流入したCODと内部生産CODを一くくりにしてトータル幾ら減らさなければいけないというのは少し問題ではないかという気がする。
 
事務局:その点については、当然専門委員会あるいは水質部会の中でも議論があった。資料3、報告本体の10ページを見ていただくと、先ほど省略をして説明したが、10ページのUの1の上の方で、CODについては内部生産の問題もあるので、CODの削減だけをもってCODの環境基準を達成しようと、そういうことは既に限界にきていると言わざるを得ない。これは現実として受けとめている。
 次に窒素、燐については、今までいろいろな削減指導等の経緯があったが、ようやく平成10年度になって瀬戸内海において、すべての水域で環境基準という目標が設定された。こういった流れの中での赤潮等による被害が依然深刻な状況にあるということで、窒素、燐の環境基準の達成に向けて水質改善努力を一層促進することは必要な状況にある。この2つの基本的な認識に立って、第5次はどうあるべきかというのを次以降にまとめているが、窒素、燐の一層の削減をすることは、当然窒素、燐の環境基準の達成を加速をするということがまずある。それにあわせてCODにかかわる環境基準の達成に向けて、より効果的な施策の選択ということで、この報告は一応考え方の整理をした。ただご指摘のとおり、両方どっちつかずという言い方もできるかもしれないが、必ずしもどっちかに特化した整理ではないということなので、多少あいまいさというか、それは指摘のとおりだと思うが、一応このような論理構成でこの報告を取りまとめた。
 
委 員:委員のおっしゃることはわからないわけではないが、そもそもCODの総量規制ということでやってきた。そのときには窒素、燐のことは全く考えずにCODの総量規制をやった。それが第4次までやったが、結果として環境基準を達成していない。その原因は何だろうかということを考えると、どうしても海にあるCODで、一部はプランクトンに起因しているということだ。窒素と燐の環境基準について目標を設定している。当然これは望ましい窒素、燐のあり方ということで瀬戸内海についても設定している。設定されている類型は、概ねU及びVの類型だと思うが、大部分の水域は概ねUの類型なので、窒素、燐の削減を図れば水質は改善されるということです。もちろん今CODの環境基準はオーバーしています。窒素、燐もオーバーしている。その環境基準も達成しなくてはいけない。それを達成させることによってCODの方にもよりよい効果があるだろうという発想でやったことなので、環境基準として両方あるが、今CODだけの話をしたからこうなってしまったが、窒素と燐も環境基準が策定されて、やや超えているところがあるので、両方達成させなくてはいけない。CODの削減には窒素と
燐もかかわりがあるという理解をしていただければと思う。 
 
会 長:委員のおっしゃることはよくわかる。なるほどというところはあるが、CODそのものは有機汚濁として総体的に考え、CODの中身の議論はしていないわけだ。有機汚濁ということでCODを1つの環境水質汚濁の指標にするということだ。CODで環境基準を決めているが、これは利水基準だから海の利用を考えてCODのそれぞれの類型指定している。そのCODを減らす手段としてどう考えられるかというと、突き詰めていくと内部生産の問題は避けることはできない。これは研究的には20年ぐらい前から言っているが、現実にある行政ベースにのってきたのが最近ということだからCODの中身を委員のように議論すると、これはまた議論が幾らかあるわけだ。内部生産しているCODは悪者ではないという議論をすれば、これまでの論理構成はコロッと変わってくるわけで、今までの水質行政を全部CODトータル有機汚濁ということでずっと通してきた。その思想にのって今この規制がかかっているというふうに私は解釈している。
 
委 員:先生おっしゃるように、外から入ったCODも中で生産されるCODも同じ汚濁だ。
 
会 長:同じ環境に対する有機汚濁という点では同じ見方をするということだ。
 
委 員:この資料3でCODと結びつけるかどうかは別にして、赤潮はまだかなり起こっているということなどから考えると、私は窒素、燐を削減することについて、これは結構ではないかと理解できるが、これを読んでいて、それでは具体的にどういうような施策でそういう窒素、燐を削減していくのかというあたりが、もう1つ理解できないところがある。今、資料3−1の3ページを見ると(3)窒素、燐については云々、各般の施策の総合的、計画的な実施の枠組みづくりとその定着化が必要というふうに書いてある、これで行政の方は大体イメージがわくのかもしれないが、私なんかは具体的にどういうことを言っているのか全然わからないが、その辺説明いただきたい。
 
事務局:報告の中では例えば12ページのところに、生活系、産業系、その他系の対策についてどういったメニューがあり得るだろうかというのを例示をしている。こういったあたりを具体的に総量削減目標量の設定だとか、そういう積み上げの作業に生かしていくというのが今後の作業になる。実は総量規制制度はこれからが具体的な中身の検討に入る時期であって、総量規制基準もこれから新たに検討を始めて年内ぐらいに設定をする。また、こういった施策がそれぞれカウントしがたい対策も種々あるが、関係機関とも詰めながら、できるだけその目標を置けるものは置いていくということで、総合的に5年後に窒素をどのぐらいまで減らせるだろうかという検討を年内ぐらいをかけてやっていく。今回の報告ではそういったあたりの入り口の基本的な交通整理をやった。
 
委 員:それに関連して11ページ、資料3の12ページ、いろいろ書いてあるわけだが、例えば下水道の処理の高度化は窒素、燐なども除去するような高度化をやるというようなことが出ているが、現在の下水処理場の中で高度化はどのぐらい行われていて、それでどのぐらい除去できて、見込みとしてどのぐらいこれが何年で、目標年度のうちどこまでいけるだろうかとかといったある程度の見込みというのを持った上でこういう施策を立てられているのかどうかというあたりを伺いたい。
 
事務局:総量削減基本方針を年内あるいは年度内ぐらいをめどに策定をする段階で、例えば下水の話だと建設当局とも十分すり合わせの上、結果として各県が最終的に策定する総量削減計画の中で数値としてそういったものが反映されるということになる。ただ高度処理に具体的にどこまで目標を設定できるか、費用負担の問題等難しい問題もあるので、それはこれからきっちりと関係のところと詰めていきたい。
 
委 員:資料の3の第5次水質総量規制の在り方について5ページに水質の状況について全面的に改善の傾向にあると述べているが、CODについては昭和54年当時からほぼ横ばいで推移している。ずーと横ばいで推移しているというのは、今、お話にあった水質汚濁のメカニズムについてプランクントンの内部生産が4割ということだが、今後ともこれはメカニズムに関係している問題というのであれば変わらないものなのかその辺をお尋ねしたい。もう1点は、船舶航行の問題で鉱石運搬船、タンカー、コンテナ船等は、外国向け航行中バラスト水を積んでいる。1992年からIMOの場で問題が提起され、議論がなされている。
 外国の港で貨物を積載する時、バラスト水を投棄するわけだが、アメリカ、カナダ、オーストラリアなどは特に厳しい条件をつけており、入港にあたっては沖のきれいな水と入れ換える、或いはクリーンな水にして投棄するということを要求しております。バラスト水に混入するプランクトンがいたずらをして生態系を破壊しているというのがその理由である。
 オーストラリア向けの外航船については、ほとんど排他的経済水域200海里が存在しない。バラスト水は船舶航行の安定を保つ上で必要不可欠なものである。
 3億トンの日本の水が外国の港で捨てられていると推定されている。IMOでバラスト水管理条約をつくるという動きも出ているが外国の港で捨てても問題のない水質にしてほしいということを要望したいと思う。東京湾、伊勢湾、瀬戸内海等の閉鎖水域の水質の評価についてその達成率はこの資料で見ると必ずしも十分ではないと思われるが、このまま横ばいで推移していくと考えざるを得ないのかどうか、お尋ねしたい。
 
事務局:資料3の9ページにあるとおり、CODのみの削減ではやはりそうはかばかしい改善というのは見込めないが、CODと窒素、燐をあわせて削減をした場合、指標をどれで見るかという話もあるが、例えばCODとあわせて窒素及び燐を削減した場合のCOD濃度低下というのは、CODだけを減らした場合に比べて約1.5倍から3倍と予測されている。これを着実に実行すれば現実的に相当長い時間はかかると思うが、ほぼ環境基準達成の領域までいくという予測はこの専門委員会の検討の過程でしているので、今までみたいに横ばいということは対策をやっていけばないというふうに我々は考えている。
 
会 長:総量規制の在り方についての報告はこれで終わりたいと思う。
 この報告については、2月8日の中央環境審議会の水質部会に答申をする予定だ。
 次に議事の3の瀬戸内海環境保全基本計画の変更について事務局の説明をお願いしたい。
 
事務局:計画部会での議論がまだ途中の段階だが、この機会に各総会の委員の方々からご意見を伺い、今後の検討に反映させていきたいということで、これまでの計画部会の審議状況について資料4に基づき説明した。
 
会 長:計画部会の審議状況について説明いただいたが、まだ方向を出すまでに至っていない段階だ。本日の委員の方、特に計画部会に属していない委員から広くこの基本計画の変更に関するご意見をいただきたいと思う。
 
委 員:漁業者の立場からお願いだが、ご承知かと思うが、水産庁の方では昨年の末に水産基本政策大綱というのを取りまとめた。ここ1年の間に水産基本法、仮称だが、制定していこうというような動きがある。その内容は非常に多岐にわたるが、国内の漁業生産が漸減傾向をたどっている中で、これから200カイリ体制という前提の中で漁業については資源管理型の漁業を進めていかなければいけないといううようなことが1つの柱になっているわけだが。資源管理という側面は、いろいろな側面がある。例えば漁獲努力量をコントロールするとか、あるいは栽培漁業を促進してつくる漁業を目指すとか、その一環として漁場環境の維持というようなものが関係してくるわけだが。ちなみに瀬戸内海での漁業生産というのは国内生産の約2割を占める主要な地位にある。そういった意味で瀬戸内海の環境保全というのは漁業生産の立場からも非常に重要であるといえる。宣伝になるが、我々漁業者の傾向としては、小さなこともあるが、例えば合成洗剤の使用の禁止運動とか、あるいは植林の運動とか、あるいは海辺の清掃の運動とか、こういった運動を婦人部の組織が中心になって取り組んでいるが、今日の報告の中に埋立てというところがあるが、漁業者の立場からすれば抑制というよりも、より一歩踏み込んだ厳しい基本的な方針で望んでいただきたいというようなことで考えているところである。その点を踏まえてよろしくお願いしたい。
 
会 長:計画部会以外の委員の方にお願いしたい。
 
委 員:計画の意義という欄に計画策定の意義に新しく加えたところがあるが、継承するにふさわしい環境と失われた良好な環境と2つの環境が出てきた。非常にこれが私関心というか、重大なことだと思っている。これがどのような想定で焦点でいくのかという点で、瀬戸内海の基本計画については、私は景観とか空間とか、そういうような観点で意見を述べたい。瀬戸内海という地域の特徴は一言で多島海景観という一くくりにされているが、私も四、五年瀬戸内に住んでいたが、非常に内容は多岐にわたり、変化がある、極めて他の地域と比べて変化に富んでいると思うが、そういう多様性というような問題が今まで取り上げられなかった。これからの基本計画の中では基本的なものとして焦点をあてていくべきではないかと思う。土地の固有的な価値とか、独自性という問題で、まず焦点をあてる。それと同時に人々が地域にもつ愛着であるとか、土地柄であるとか、土地の趣であるとか、そういうものを大事にして、それを継承していく、育てていくということが重要なことだと思う。それは、この瀬戸内は長い歴史と自然環境と文化が渾然一体となった、パック状の自然と文化が重層する地域となっている。その環境こそ我々の継承すべき、また育成すべき対象ではないか。それを一言でいうとその地域のアメニティを守り育てることだと思う。アメニティという言葉は快適性というように狭く訳されているが、私はアメニティというものはしかるべきところに、しかるべきものがあるということであって、その場所でなければ成立しない必然的な環境、自然と人間の愛とか生命とが織りなす総合的な空間であろうと思う。瀬戸内だけが持っている他に例をみない地域特性に焦点をあて、継承にふさわしい環境とか、良好な環境の保全と育成計画を立案していただきたいと思う。
 
委 員:水質の総量規制も計画部会も大変ご審議が進んでいるということだが、この計画部会の中で環境教育、環境学習というのがある。山口県も地方分権時代の行政、環境行政というものに力を入れている。環境学習もやっていきたいという分野である。
 2001年、来年だが、きらら博という博覧会をやるが、この博覧会自体を環境教育、環境学習またゼロエミッション博覧会というものにしたいと考えているところである。また博覧会の会場が阿知須という干拓地、瀬戸内海の干拓地だが、その一画をエコパークにして環境学習施設をつくろうという計画を、まだ予算がついていないが取り組もうとしている。問題はその学習施設で何を教えるかということだが。特に学習施設というと、子供を対象に考えることが多いが、子供だけではないと思う。どうも学校の環境学習なんかを見ると、人間の活動はすべて悪いみたいな教え方が非常に多いと思う。例えば砂糖が虫歯のすべての原因みたいな教えられ方をすれば砂糖が悪いというように、環境学習についても非常にスローガン的なドグマチックな教え方がかなり多いのではないかというふう感じている。
 人間の存在自体が自然だから、私どもが存在していること自体エコロジカルシステムをある程度壊していく、発展をするならば壊していくという側面もあると思うのだが、エコロジカルシステムと環境との兼ね合いみたいなものをきちんと科学的に客観的にわかるような学習の仕方をさせる必要があるのではないかというふうに思っている。ではどう教えるかということについて、この計画部会で環境の大切さを教えるというところから、もう一歩踏み込んで、何をどう教えるかというところまでご議論いただければ大変うれしく思う。
 
委 員:実は私、去年の秋に2カ月ほどミクロネシヤのキリバス共和国のタラワ環礁のブアリキ村というところに2カ月ほど滞在した。ここの島はどうやら温暖化によって一番最初になくなってしまうらしい島ということで有名らしいが、私はそんなことを知って行ったわけではなくて、目の前にあるこの本の最初の3ページにあるリヒト・ホーフェンさんなどが絶賛した瀬戸内海に住んでいながら、ここでは得られない美しい海を求めて潜りにいったのがたまたまキリバス共和国だった。人口300人ほどの小さな電気もガスも水道もないブアリキ村に滞在していたら、大潮の日に庭まで潮水が入ってきた。思っているよりも早くこの島は水没するのではないかと思ったが、ただ彼らは知らされていないので、のほほんとしている。何か最近変だなと思っているだけだ。私の父の遺言で人を泣かせてまで自分だけ幸せになろうと思うなと言われているが、日本という国に住んで文明生活をしている限り、どうも加害者になりそうだ。あの国の人たちがかなり近い時間で難民になりそうだということを身をもって危機感を感じて帰ってきたが、日本人が自分たちが贅沢したそのことで自業自得で苦しむのはしようがないが、全く罪のないむしろあの方たちが私たちのような贅沢をしないからこそ保たれている地球だから、大変感謝しなければいけない人たちを泣かせる羽目にどうもなりそうで、環境問題というのは経済とか、少子化とか以上に、とても大事な問題ではないかということを非常に強く思って帰ってきた。
 
会 長:ほかに何かないか。
 
委 員:海砂採取及び埋立占有の問題だが、同じ瀬戸内海においてこの問題については、法律と条例と両方でかぶさっているわけだが、条例の場合、各県によって温度差があると思う。例えば海砂利採取については広島県は10年から禁止だということになっている。全国の45%を瀬戸内海で取っているわけだが、この海砂利採取の法律自体が砂利採取業の発達というのが目的の1つにある。それを許可するのは県知事の権限である。又、埋立占有についてはその法的取り扱いが県によって違う。この辺は同じ瀬戸内海の管理上の問題として、ある程度整合性をもたせる必要があるのではないかと感じている。
 卑近な例で、広島県の水域でいかだを作ってそこを住居とした事例があったが、広島県では海の管理条例でもって規制しているが、山口県では条例規制ができない。そこで取り締まりを免れるために山口県の水域に移動したという話があった。結局、台風で座礁して結末がついたが、そういった法のすき間をくぐってなされる行為がある。
 このような瀬戸内海をどのようにして管理して行くかという問題については、県によって取り扱いに差がないよう整合性をとることが必要ではないかというふうに考える。
 
会 長:ほかにご意見あるか。
 
委 員:環境教育の必要性と言うことだが、私も現場の短大生を教えているが、環境教育は必要だと思ってそういう話をしているが、合成洗剤とか、生活排水、川とか海の汚染あるいはいろいろな廃棄物、ごみの捨て方とか、自分たちの身近な生活のところから言っているが、生活の便利さと環境保全ということをあわせていくことの難しさというのを感じている。人々が忙しくなって除草剤でパッとまけばすぐ草が取れてしまうというその便利さを使ってしまうと、いろいろな生き物たちが死んでしまうとか植物がもう生えなくなるとか、地中が汚染されてそれが川や海に流れて、海や川が汚染されていくという先のことまで考えられない人たちもいる。それらを学校教育だけではもちろんいけないと思う。各家庭で大人たちが、自然環境の大切さを暮らしの中で、態度や言葉で示してゆくことが大切だと思う。この間対談をしたが、その中で、今の子供たちや若い人たちは、海とか山に目的を持ってしか行かないということを言っていたが。何か泳ぎにいったとか、潜りにいくだとか、そうではなしに私たちは子供のときはもっと自然に触れて、ただはだしで波と戯れるとか、ザリガニをとるとか、そういうような自然の触れ方をしていたが、それがこのごろは目的を持ってしか行かない。そして、だんだん汚れるから、川に行かない、海へ行かないということになってくる。触れ合って自然というものは大事さがわかる。大人たちも子供たちもそういうふうに思っていくような生活をしていくようにに仕向ける必要があるのではないかという話をした。
 
委 員:先ほど水産関係の方も言っていたが、瀬戸内海へのいろいろな対策、例えば海砂利採取問題にしても府県によって対応の仕方が違うというお話があったが、私自身もそれは強く感じている。例えば香川県はあと5年後には全面禁止になるわけだが、まだ方向が出ていないといった県などには環境庁である程度の方向性をできれば出してほしい。なるべく早く出してほしい。いろいろ調査はしているのだろうが、幾つか懸念されている問題が現実にあるわけだから、手遅れにならないようになるべく早く手を打ってほしいと思っている。
 もう1点、窒素、燐の負荷についてだが、その他系が結構多い。これも環境庁が多分調べていると思うが、水産養殖による負荷、私はかなり大きいと思っている。これも別の面から、例えば今瀬戸内海で天然の魚をとるのと、養殖物のどちらが多いかというと養殖物の方がかなり大きくなっている。これは私はあるべき姿から逸脱しているだろう。私自身としては瀬戸内海では天然の魚がとれることが第一で、それについでそれを補強するというか、業者が生活安定のために養殖漁業があるというふうな形が望ましいと思っている。
 
会 長:ほかに何かご発言はないか。
 
委 員:環境保全基本計画という話に馴染むかどうかわからないが、将来の瀬戸内海というものを考えたときに、先ほどキリバスの島が温暖化で沈むという話があったが、グローバルな環境変動に応じて瀬戸内海が変わっていく可能性があるという視点をどこかに持っておく必要があるのではないかと思う。それは、単に水位が上がったら沿岸が沈むとか、それだけの話ではなくて、私自身は最近懸念をしているのは、豊後水道とか伊予灘、あの辺の海域はどうも貧栄養傾向にある。夏場は紀伊水道や豊後水道を通して、太平洋から瀬戸内海に栄養が入っているということが最近大分確かになってきているが、そういう状況が90年代に入って大分減ってきているという状況がある。そうするとそういうものが瀬戸内海の栄養環境を変えていく。つまり陸からの削減努力とはまた無関係にそういうものによって瀬戸内海は変わってくるということもありそうだ。先ほどの資料を見ていても、窒素の負荷が全然減っていないのに窒素の存在がちょっと減っているような傾向があったが、ひょっとしたら太平洋からの供給の減少のせいである可能性もある。そういう大規模な地球規模の変動に伴ってどういうふうに瀬戸内海が変わるかということを、もちろんこれは我々研究者としてのテーマでもあるが、そういうところをどこかに、施策の中に中心的に置くということではないと思うが、どこかで頭に置いておく必要があるのではないかと思う。
 
委 員:先ほど貧酸素水塊、無酸素水塊によって大量の水産生物が死亡するというお話を伺ったが、私、3日ほど前にいただいた瀬戸内海区水産研究所の研究員で貝毒の研究室にいる方の資料では、赤潮は発生季節も海域も最近では一定しないようになって、非常に難しい問題になってきている。低密度な状態での植物プランクトンの遷移が徐々に進行しているようにも思われるというような指摘があった。九大の水産増殖環境学講座の皆さんも貝の運搬、例えば伊勢湾から長崎の方の湾に二枚貝を運搬するときに貝の中に含まれている水があるが、その中に有毒なプランクトンも入っている。そういうものをよそに運搬するということと同時に、瀬戸内海の場合にはかなり閉鎖性が高いわけで、そういうところに外部からまたそういういろいろな生物を移入するケースが多々あると思う。そういうことも長い瀬戸内海の環境保全を考えるときには1つの重要な観点ではないかと思う。
 
会 長:一通りご意見をお伺いしたが、貴重な意見たくさんいただいたので、このことを反映して今後の計画部会の審議を進めさせていただきたい。
 議題の最後その他ということだが、全般について何かあるか。
 
委 員:簡単に1つだけ教えていただきたいが、先ほど瀬戸内海への地域の愛着という話があったと思うが、環境省になって瀬戸内海という名前が組織から消えるという説明があったが、これは閉鎖性海域という言葉で、いわゆる発展的に解消されるのか、あるいは瀬戸内海をそういう組織の中でいわゆる展開するのか、そのあたりの議論がどういうことがあったのか。
 
事務局:基本的には発展的に解消したということだが、もう少し広い目で行政を行う方が瀬戸内海にとってもよいのではないかという考え方で閉鎖性海域室にした。実際、今日の総量規制もそうだが、非常に密接にかかわりがあって、そういう意味でも実態にあっている。そういう意味で名称を変更した。
 
会 長:瀬戸内海の審議会としても、ぜひ発展的にということでお願いしたい。
 事務局から何か他にないか。
 
事務局:先ほど総量規制に関してのご質問にお答えした中で、訂正と追加をしておきたい。
 大阪湾の水質だが、CODの当てはめ水域数は12水域あって、3水域というのは窒素・隣の話で、その中で不適合の水域というのはB類型で1水域、A類型、きれいな方で3水域ということで、感覚的には陸地から離れたところの水域で未達成の状態が続いているという状況で、結果的に12分の8の67%で推移している。お詫びと訂正をする。
 
事務局:事務局のメンバー自然保護局の計画課長の交代があった。
 もう1点だが、次回の総会の日程等については、計画部会における審議がまだ途中段階ということで、まだ現段階では具体的なことは申し上げられないが、部会報告がまとまった段階でまたご意見を伺う機会を設けさせていただきたいと思っている。
 
会 長:第27回の総会を終了する。