中央環境審議会第14回環境保健部会議事要旨



<日 時>平成10年11月16日  10:00〜12:00
<場 所>東條会館本館「シルバーの間」


《環境安全課早水補佐が資料2を説明》
 毎日新聞が金曜日にPRTRの記事を掲載したため、金曜日の午後以降、土曜日、日曜日で80件近く意見が環境安全課に届いている。金曜日の正午までに届いて資料2にまとめた意見が26件なので、全部で100件程度意見が届いている計算になる。金曜日中に届いた意見については把握しているので、適宜補足するが、土日に届いた意見については委員のみなさんに送付するなどの手段を検討しているところ。

・国民意見は、郵便、FAX、Eメールで募集したが、どの媒体で届いたのが一番多かったのか。
 →FAX、Eメール、郵便の順。

《環境安全課長が資料3を説明》
 第13回環境保健部会の資料2の肉付けと若干の項目の追加を行った。

・環境保健部会における議論、参考人の意見、国民意見を踏まえ、よくまとまっている。通産省の審議会がまとめてしまっているのに、こちらがいつまでもまとめないのは問題。諮問内容が膨大なので、全部に答えようとすると膨大な時間がかかるが、2月までに取り組み状況を報告するというOECDとの約束を考えると、PRTRに関係する部分だけでもそろそろ第1次答申なり、中間答申として環境庁長官に答申するのが適当。
大きな筋書きはこの通りでよい。OECD原則にしたがって、PRTRを環境保全上の基礎データを収集する手段としてきちんと位置づけ、自主的取組だけを強調しないでほしいということをこれまで主張してきた。環境モニタリングだけでは莫大なコストと時間がかかってしまうので、PRTRと環境モニタリングが合わさってはじめて満足に機能する。また、PRTRに基づく自主的取組だけで環境リスクが下がるという考え方も疑問である。P5、P6で以上のような点が強調されているのは意義深い。省庁の立場によって資料のスタンスが違うのは当然。勝った、負けたの話ではない。
企業秘密の話がたくさん出てきており、これはこれでよい。ただ、「一定のルールを定めて」だけでは抽象的で、企業秘密が拡大解釈されるおそれがあるので、「関係する他の法律との整合を図りつつ」と入れて企業秘密を広く捉えることができないようにすることが必要。手続の透明性ということが分かるようにしなければならない。これまで企業秘密は排出に関するものだけだと意識してきたが、国民意見を読んでいて思ったのだが、製品中に使われている化学物質にも企業秘密がある、つまり、化学物質を使用した製品の成分情報についても企業秘密の問題を考える必要があるのではないか。ただちに報告に書くのは難しいかもしれないが、検討課題である。まあ、外国ではこの問題をうまくクリアしているみたいなので、実際はあまり問題ではないのかもしれない。

・企業の立場から発言する。P2の、1つ目の○は従来から行われているクロの物質について言及しており、これはこれでいい。5つ目の○で「科学的知見が必ずしも十分でない化学物質〜」という記述があり、このような物質について行政が政策立案のために基礎データとして情報を収集するという意義は理解している。ただ、対策については、企業が自ら対応し、代替物質への転換などを行っていくべきである。つまり、1つ目の○の物質については行政による規制に基づき厳しく管理し、5つ目の○の物質については企業が幅広く自主的に行政に報告ということでいいのではないか。
できるだけ幅広くという観点からみると、P4の3つ目の○には欧州諸国がPRTRを許認可と結びつけているという記述があるが、許認可を求めるときに排出量データを提出するだけであって、許認可とPRTRは関係ないのではないか。結びつけるように書くのはおかしい。
P9に「企業秘密と判断された件数が少ない」という記述があるが、企業秘密が1件であっても企業の存立に関わることなので件数は関係ない。しっかりと配慮してほしい。明確なルールを定めるのは結構だが、企業秘密の解釈に異議が出ないようにするルールが必要。

・P1から「地方公共団体」という記述が何回か出てくるが、これは都道府県のことなのか市町村のことなのか。地域の関与という観点からはどちらなのかは重要な点。
P5の最後の○で人材育成について触れているが、今後これが重要。もう少し何か表現を膨らませて説明してもらえないか。
P7(3)の2つ目の○には裾切りについての記述があるが、裾切りが法の抜け道とならないよう検討してほしい。人の健康保護の観点がまず重要。
事務局が苦労しているのは分かるが、少しトーンダウンしている感じ。
 →地方公共団体については、大防法、水濁法などに基づく事務は都道府県が基本的に担っているが、さらに人口20万人から30万人の市町村にも再委任されている。しかし、地方分権により、制度的に従来の機関委任事務といった曖昧な方法が使えなくなっており、法律に明記する形での法定受託事務か自治事務となってしまう。これらのことを踏まえて検討していきたい。
人材育成については、企業、自治体のOBなどに活躍してもらいたいと思っている。
裾切りについては、捕捉率を高めるという観点ではなく、実際に環境行政のための基礎データとして有効なものとなるようにという観点から考えていきたい。
資料はshrinkしていない。わが国として誇れるような、国際的評価に耐えるような制度を作っていきたい。

・P6のPRTRの導入の基本的な枠組のCはPRTRの枠組からはずれているのではないか。つまり、@〜BはPRTR自体だが、CはPRTRを基にさらに環境への負荷を低減するということなのではないか。記述を考えてほしい。
P9のリスクコミュニケーションの在り方は、3つ目の○の前でいったん切れないものか。企業によるリスクコミュニケーションが円滑にいかない場合に、補足的に「中立性が確保された者」が関与するということではないのか。

・P9のリスクコミュニケーションの在り方の1つ目の○に、化学物質による環境リスクの管理は社会的な合意に基づいて行われるべきとあるが、むしろ科学的知見に基づいて行われるべきなのではないか。P2の記述をそのまま持ってきてもいい。社会的な合意だけでは奇異な感じがする。
PRTRの名前について何か考えがあれば教えてほしい。

・企業秘密は、他の委員が発言したとおり企業にとって死活問題。厳密に判断してもらいたい。その判断を環境庁がやるのは問題。その企業の業種のことをよく知っている省庁に判断してもらいたい。
また、報告先は国に統一してほしい。国家公務員、地方公務員共通に守秘義務がかかるので、企業秘密という観点からというわけではない。地方によって色々運用に裁量が入るのは、PRTRの理念から考えると問題があるのではないかという観点。

・P5の一番下に「我が国にふさわしい制度」とあるが、これは具体的にはどういう制度か。また、P9の2つ目の○に「個別事業場データについても開示の請求があれば可能な限りそれに応ずる」とあるが、どのような人に開示請求権があるのか。NGOなどすべての人に開示請求権があるのか。さらに、P9の下から2つ目の○に「行政やそれと同様に中立性が確保された者が関与」とあるが、これはリスクコミュニケーションのために何か特別の委員会を設置するという趣旨か。
 →委員のPRTR導入の基本的枠組に関する指摘については、色々な考え方があり、さらに
検討する。何が法制度として必要なのかを検討する必要がある。リスクコミュニケーションについては、当然ながら円滑性が必要であり、どのようにしてその円滑性を確保するかを検討していく必要がある。
先ほどの委員の1点目の指摘はもっとも。2点目のネーミングの指摘については、いいものがまだない。
委員の企業秘密に関する指摘については、不正競争防止の観点が大きい。直接環境庁だけが判断するのがおかしいということは認識している。報告先については検討する。
委員の1点目の指摘について、PRTRには現在、アメリカ型とヨーロッパ型があるが、そういったことに日本型は必ずしもならないと考えている。また、情報開示請求については誰でも可能となるような制度を考えている。中立性がある者についてどういう者が適当かということについては検討が必要。できれば、リスクコミュニケーションを効率的に行うために何らかの行政的な新しいかたまりが必要だが、行政のスリム化の議論もある。

・委員のP9の記述に関する指摘は、○をつけているので誤解しているのではないか。4つ目の○の記述は単に3つ目の○を受けて外国の例を述べているだけ。表現を工夫する必要がある。
中立性の確保については、パイロット事業においても論点となった。大学教授など専門家の集まり、NPOなどでいいのではないか。必ずしも行政の組織でなくてもいいと思う。

・よく書けているペーパー。生態系を明文化していることも評価できる。化学物質の使用者も報告することは重要。
地方公共団体の関与について、きちんと制度を作っておけば、都道府県に報告することにしてもそんなに裁量は入らないのではないか。むしろ、地方公共団体が動きやすいようきちんとデータを提供することの方が重要。
対象物質の選定は有害性と暴露量に基づいて行うということだが、後者についてはとりやすいが、前者は困難。
PRTRで得たデータの信頼性をいかに確保するかというのは重要。アメリカのEPAでは、同業種の企業の排出量を比較している。もし両者に大きな齟齬があれば、どちらかの報告が間違っているということ。環境庁も努力してほしい。

・P9の4つ目の○の「企業秘密も含めて」の話は、○をとれば分かりやすいのかもしれないが、要検討。企業秘密の話については、情報公開法との関係をどうするかを考える必要がある。ただ、まだ成立していないのであまりまじめな議論にしない方がいいのかもしれない。理想は情報公開法とPRTRが一体として運用されること。情報公開法の方で企業秘密は保護される。情報公開法にしたがえば、企業秘密が過剰に保護されるということはないはず。情報公開法では、行政官庁がそれぞれの立場で企業秘密を判断し、それに問題があれば第三者機関が判断する仕組になっている。もし、情報公開法と一体とはできないときは、PRTRの中で線引きを作る必要があるが、しっかり検討してほしい。そのためには、この制度の狙いと形が何であるかをしっかりと定める必要がある。環境行政のための基礎データを集めるための制度であり、ついでに国民に対して公表するのか、それとも両者一体なのかがはっきりしていない。企業活動の社会への報告を責務として考えるのか。制度を考える際にはこれをはっきりさせる必要がある。

・全体をみると、とてもよくまとまっている。P9のリスクコミュニケーションの在り方の「社会全体の合意」について、「科学的知見」に置き換えるべきという意見があった。環境リスク評価についてはもちろんそうであるが、環境リスク管理はそれを背景にした社会全体の合意である。「科学的知見を基礎に置いた社会全体の合意」でどうか。
P5に人材育成についての記述がある。どのような形でPRTRのブースターとして活躍するのかは分からないが、人材の育成は重要。PRTRの各過程においてどういう人材が不足しているかをまず考え、どう育成し、どう使うのかを考えてほしい。

・P9のリスクコミュニケーションの「社会全体の合意」のところは書き込みが不十分。委員の案でもいいが、科学的知見と科学的判断は別物。不完全なデータからいかに適切な判断を下すかが科学的判断であり、PRTRにおいてはこちらの方が大事。「正確なデータと科学的判断に裏付けられた社会全体の合意」ではどうか。
人材育成については、環境リスクなどについてきちんと説明できる人を育成する必要がある。
P9のリスクコミュニケーションの在り方の2つ目の○の「データの一人歩き」という言葉は国際性がない。もっと品のいい言葉に代えてほしい。

・P6の対象物質の1つ目の○の記述はこのままでいいが、対象物質の範囲が限定的であるような印象。表現に少し工夫を。

・PRTRは一方で科学的データ、他方で社会的制度であることをしっかり認識する必要がある。環境アセス法も同様。委員の指摘に環境行政のための基礎データの収集と情報の公開についての話があったが、「知る権利」の観点から後者を無視するわけにはいかない。国民意見の募集でかなりの意見がきたように、国民の側からの環境行政に対する要求がある。意見をもらうためには、情報の開示は不可欠。環境行政としては、データの収集と情報開示の両方が必要。どちらを上位に置くという話ではない。
事業者の自主的取組については温暖化法でも位置づけられたが、環境保全には重要。PRTRでもきちんと位置づけ、事業者にきちんと対策を講じてもらう必要がある。事業者が自主的取組を行うのに一番適している。ただ、事業者が取り組んでいるから信用してくれというのは問題。何らかの方法で透明性を高める必要がある。省エネ法でも審議会の場において自主的取組の評価を行うことになった。
報告をまとめるときは、国民からの要求に対して環境庁としてはギリギリどこまで応えることができるのか、企業秘密をギリギリどこまで保護するのかということをはっきりさせる必要がある。はっきりさせないと、制度化するときに困るのではないか。

・よくまとめている。P6のPRTRの基本的枠組のCの扱いについては、PRTRを狭く捉えると宮本委員の指摘のとおりかもしれないが、社会的な仕組と捉えれば自主的取組を補完するという視点も重要。報告の義務化が法律を作るときのエッセンスとなるのだろうが、国としても事業者を支援、補完するとした方が立法化になじむ。
地方公共団体との関係で報告をどうするかという話があるが、報告は地方公共団体経由の方がいいのではないか。ルールをきちんと作れば問題ない。地方公共団体が主体的に取り組むためには、データを与えるだけでなく、集める方もやるべき。
 →情報公開法との関係については総務庁と議論しているところ。ただ、前国会でも継続審議となってしまい、成立の見通しが立たない。情報公開法と整合性をとるように制度を作っていきたい。
データ収集とデータの公開については一体であると考えている。それを踏まえて制度を作っていきたい。
人材育成の部分については新たな文面を考える。
「一人歩き」の語については、国際共通語になじむよう新たな用語を考える。
対象物質については狭める意図はない。新たな文面を考える。

《環境リスク評価室長が資料4を説明》
 →小委員会の設置が了承。

(部会長)
今日は活発な議論があった。この議論を取り入れた形で資料を作成する。