第3回地球温暖化防止対策検討小委員会会議録

 

1.日    時  平成12年10月19日(木)15:00~17:20

2.場    所  虎ノ門パストラル新館4階「松の間」

3.出 席 者
(委 員 長) 安 原 正
(委    員) 浅 岡 美 恵
 太 田 勝 敏
 猿 田 勝 美
 塩 田 澄 夫
 松 野 太 郎
 宮 本 一
 横 山 裕 道
天 野 明 弘
佐 竹 五 六
佐 和 隆 光
西 岡 秀 三
松 原 青 美
村 上 忠 行
 
(事 務 局)浜中地球環境部長
小島長官官房審議官
竹本地球環境部環境保全対策課長
一方井地球環境部企画課長
石飛地球環境部地球温暖化対策推進室長
後藤企画調整局調査官

4.議    題
  (1)ポリシーミックスについて
  (2)部門別の推進メカニズムの考え方について
  (3)その他

5.配 付 資 料
   資料1-1 ポリシーミックスのたたき台(前回提出資料)
   資料1-2 排出取引制度をめぐる小委員会の議論について(天野委員提出資料)
   資料1-3 我が国の総量規制制度について(猿田委員提出資料)
   資料1-4 ポリシーミックスの逐次的実施(西岡委員提出資料)
   資料1-5 産業界の取組と実効性確保の方策について(浅岡員提出資料)
   資料2   部門別の推進メカニズムの考え方について
   参考資料1 地球温暖化対策検討チーム報告書

6.議    事

【安原委員長】 定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会企画政策部会「地球温暖化防止対策の在り方の検討に係る小委員会」の第3回会合を開催いたします。
 本日は大変御多忙のところ御参集いただきましてありがとうございました。
 まず最初に、本日の資料の確認を事務局からお願いいたします。

【事務局】 では、資料の確認をさせていただきます。
 まず資料1-1として、前回も提出させていただきましたが、「ポリシーミックスのたたき台」の資料でございます。資料1-2は、天野委員から御提出いただきました「排出取引制度をめぐる小委員会の議論について」という資料でございます。資料1-3として、猿田委員から御提出いただきました総量規制制度について、資料名が「温室効果ガス排出削減における総量規制基準の適用について」でございます。資料1-4が、西岡委員より御提出いただきました「ポリシーミックスの逐次的実施」でございます。資料1-5が、浅岡委員より御提出いただきました「産業界の取組と実効性確保の方策について」でございます。続きまして、資料2として、部門別の推進メカニズムの考え方について、資料名が「温室効果ガス排出削減対策の推進メカニズムの現状と課題」でございます。最後に参考資料として、環境基本計画の見直しに係る地球温暖化対策検討チームの報告書を提出させていただいております。
 資料は以上でございます。

【安原委員長】 もし資料に不足がございましたら事務局まで申し出ていただきたいと思います。
 本日の議題は、お手元に議事次第ということでお配りしているとおりでございます。
 まず最初に、ポリシーミックスについて議論していただきたいと思います。前回「ポリシーミックスのたたき台」としてご議論いただきましたが、今日は4名の委員から書面で追加意見を頂戴しております。そこで、4人の委員から、それぞれの資料に基づきまして御意見を御紹介いただいた後、質疑を行いたいと思います。
 その後、第2の議題でございます「部門別の推進メカニズムの考え方について」という資料が用意されておりますので、事務局から説明していただき、これについて御議論いただきたいと思っております。
 時間は2時間程度を予定しておりまして、17時頃に終わりたいと考えておりますので、よろしく御協力をお願いいたします。
 それでは、早速審議に入りたいと思います。
 議題1の「ポリシーミックスについて」、各委員から順次お願いいたします。まず最初に天野委員から御説明をよろしくお願いいたします。

【天野委員】 私は前回、所用があって欠席いたしましたが、議事録の案をお送りいただきまして、それを拝見しまして、少し意見の違うところがありましたので、書面で意見を提出させていただきました。そうしたら、今日ここで報告をするようにという御指示がありましたので、少しお時間をいただきます。
 私のテーマは、国内の排出取引制度についてですが、前回の御議論で3点ばかりちょっと奇異に感じる部分がありましたので、その3つの点について私の意見を述べさせていただきます。
 まず最初の点は、排出取引制度というのは、排出総量は国が規制するのだけれども、排出許可証価格がマーケットで決まって、それが変動する。ですから、削減費用が大変不確実になる制度であるというふうな御議論があったように思います。確かに教科書では、排出取引制度と炭素税を比べますと、排出取引制度の方は、数量は確実なのだけれども、削減費用がマーケットで決まるので予測が大変難しい。それに対して炭素税は、税率といいますか、1トン当たりの削減費用は政府が決めますので、それが確実にわかる。しかし、排出総量というのは、マーケットの価格に対応して決めるから不確実になる。こんな比較がされるわけです。しかし、この議論というのは、そのままの形で今の問題には適用できないと私は思います。
 というのは、この小委員会で何を議論しているかといいますと、数量的な排出削減目標が京都議定書で決まっていまして、これを遵守するのにどういうやり方がいいのかという議論だと思います。排出取引制度は総量を規制しますので、約束の遵守は確実だけれども、確かに教科書どおり費用が不確実になるので、それに対するリスクは対応が必要になってくる。ただし、取引制度というのはマーケットを使いますので、そういったマーケットでリスク対応ができるような手段が発達することが予想されます。炭素税を使って京都議定書の目標を遵守しようとしますと、数量がなかなか確定しないわけですから、目標の数量に合うように炭素税の税率を変えていく必要があるわけです。総排出量が多すぎると税率を上げる、少なすぎると税率を下げるというふうな調整が必要になりますので、同じターゲットを目的にする限りは、排出削減費用は上がったり下がったりすることになります。しかも、こちらの方は、マーケットで上がったり下がったりするのではなくて、政府が税率を変更する、そういう形の変わり方の変動が起こるわけです。ですから、結局、炭素税の方が安定的な価格がわかるということは、同じ数量目的を達成するという議論のときには言えなくなってしまうという点は考慮すべきではないかと思います。
 今の話が1つありまして、したがって、私の結論は、京都議定書の約束を遵守できるような制度としては、国内排出取引制度の方がやりやすい。ただし、削減の費用というのは変動しますので、その変動に対する対応が必要になってきますが、これは炭素税をとった場合には、もっと難しい不確実性が起こる。というのは、炭素税の場合には、数量もわかりませんし、価格も不確実になる。両方の面で不確実性が高まりますので、そういう比較をすれば、排出取引制度の方が望ましい制度ではないかと思うわけです。
 2つめの論点に移ります。それは、排出取引制度が効率的な制度であるという議論の背景に限界削減費用というのが出てくるのですが、その中身がよくわからないというコメントがありました。そのコメントがどういうことを意図しているのか、私も正確にはわかりません。1つは、排出取引というのは、費用効果的な制度である。つまり、ある目的を達成するときに一番少ない費用でその目的が実現できるという特徴がある。そういう意味で効率的というのであれば、むしろ費用効果的と言ったほうがよいでしょう。
 しかし、たくさんの排出主体があるとき、それぞれの排出主体の最後の1単位の排出削減の費用が、鉄鋼産業であろうが、セメント産業であろうが、全部同じにそろっていくという意味で、これは経済学的にいうと、効率性の1つの条件になりますので、そういう意味から「効率性」という言葉を使っても間違いだとは言えないと思います。
 もう1つの点として、排出取引制度というのは、排出削減の費用を最小にする。つまり目的を達成するときに、国全体が負うべき費用を最小にするという特徴がありますが、そのときに最小にする費用の内容はどういうものか、という点があると思います。ここでは削減費用 (abatement costs)を一番小さくするという意味で使われています。しかし、新しい制度をつくるわけですから、費用の中身には、取引をするための費用、、取引費用がある。それから遵守手続の費用、つまり、いろいろな主体が排出削減をした分と、自分の提出すべき許可証の量とをきちっと合わせる、そういった手続上の費用もかかってきます。それから、政府がいろいろな制度をつくるときに、その制度を管理する行政費用が当然かかります。これはもちろん炭素税の場合にもありますし、排出削減取引の場合にもあります。ですから、こういった取引費用とか遵守の手続上の費用とか、システムを管理する費用というのは最小にする費用の中には入っておりませんので、これは別途比較して、炭素税の方が少ないのか、取引制度の方が少ないのかという議論をしなければなりません。
しかし、このような議論は外国でもよく行われていますけれども、1つは、排出削減費用が他の費用に比べて圧倒的に大きいだろう。ですから、ここが一番小さいような制度を選べば、他の費用はもちろん重要ですが、まず制度をつくるときにはこれを考えるというのが1つ。
 もう1つは、こういった費用は、排出取引制度だけにかかってくる費用ではなくて、京都議定書を遵守するためのいろいろな取組をすれば、多かれ少なかれ、同じ種類の費用がかかりますので、そういった費用はその都度制度間で比較して、二次的な議論として考慮すればいい。私はそういうふうに考えます。
 ここまでの説明では、詳しく説明せずに、御理解いただいているものとして話を進めてきましたが、全体の討論を聞いておりますと、これは後で取り上げる議論と関係がありますけれども、一般的に使われている「キャップ&トレード」という言葉について誤解があるように思います。「キャップ」というのがどういう意味かということで、ここで私が考えている意味での制度あるいは一般的に議論されている制度で、キャップというのは、対象になっている排出物質の全体の総量のことをいいます。ですから、個々の主体ごとに1つ1つ排出量を決めて割り当てていくという意味では全くありませんで、全体の総量だけを決める。それをキャップといいます。日本の場合ですと、京都議定書で決まっている全体の第1約束期間の中での排出すべき量がキャップです。それ以外は何も強制したり枠を決めたりするわけではありませんので、個々の企業とか個々の家計とかにキャップがかかるわけではない。こういうことを説明するために、この5段階のやり方が必要だというのを引用してきたわけです。これはこういう名前が書いてありますけれども、一般的にこういう表現をするわけですね。
 その次に「規制ポイント」と書いてありますが、これは排出量をモニタリングしたり、自分の排出量に等しい許可証を政府に対して提出すべき主体はだれか、これを決めなきゃいけない。それをどういうふうに決めるか。決められた主体は、一定の期間、例えば1年間なら1年間の排出量に見合った許可証をそろえて政府に提出する。もちろん、途中の経過をきちっとモニターして、そのモニターしたものを報告する、こういう主体的な義務も一緒に負いますけれども、一番基本的な義務は、排出量に相当する許可証を何らかの形で入手して政府に渡す、こういう義務が発生する主体はだれかということを決めなければいけない。
 そして、この[2]と次の[3]は一緒くたにしては困るのですが、[3]の方は、政府が決める総量をどういう形でマーケットに出していくか。基本的には2つあります。規制ポイントに無償で配分するか、あるいはオークションといって、公開市場で政府がそれを売りさばく、この2つの法があります。ですから、2番の方で、無償の配分を受けないような、しかし、この規制ポイントに入った主体は、ここで調達をしてそれを渡すというやり方もあります。無償で配分を受けるというのは、調達をする必要がありませんので、そういう意味では、そういった責任を負わされた主体が財政的、財務的に有利になるような制度であります。ですから、基本的には、オークションで考えて、オークションで調達すべき許可証の量を無償で配分する。無償で配分する理由は、もし全額を調達させれば、国際的競争力が落ちたり、あるいは企業そのものが倒産したりすることが起こり得るので、そこの部分を無償にする、こういう考え方です。ですから、キャップは総量ですし、ここは自分で調達してくるわけですから、個々の主体が数量的な規制で縛られるということはこの制度ではないわけです。あと、主体の義務としては[5]のようなことがありまして、もし条件が満たされなければ、不遵守ということが起こって、そのときにどういう罰則をするか、あるいはどういう猶予をするかということは制度として決めることができます。
 こういう議論の中でよく出てくる考え方ですが、不遵守のときの罰金のようなものをつくって、それを非常に低く決めるという制度もあります。イギリスなどで提案されているのがそういう考え方を含んでいるのですが、それは逆に言いますと、不遵守の際の課金が非常に低ければ、それを払ってわざと遵守しないという選択肢もありますよということですから、ここのつくり方いかんでは、排出量の基準は守られなくて、少し多めの排出になってしまっても、単位当たりの排出費用が低くすむような制度の運用もできるということです。実際には遵守の目的をしっかりするためにはこういうことは余りやってはいかんのですが、逆に、不遵守の料金を非常に高くすると、アメリカの二酸化硫黄の場合のように、100%の遵守を確保することもできます。企業は不遵守が起こらないように徹底した削減管理を行ったという経緯があります。ですから、不遵守課金をどう決めるかは、制度の性格を決める1つの重要な要素になります。
 排出量取引制度と炭素税をいくつかの点で比較しますと、第1に排出量取引制度で規制ポイントになる主体というのは、炭素税の場合には炭素税を納入する義務を負う主体ですね。しかし炭素税の場合でも、あらゆる主体が税を課せられるわけではありませんで、実際に適用されている炭素税の場合には、大口の排出主体は免税になるということが多くあります。それは、排出量をゼロにしないかぎり、現在排出している分については炭素税額を負担しなければならず、その負担が大きくなると、国際競争力が低下したり、企業倒産がおこったりする可能性が大きいからです。そのようなことを避けるために、炭素税制度では、産業部門やエネルギー転換部門の大口排出主体が除外されることになります。排出取引制度でも、オークションによって許可証を配分すると、同様のことが起こります。  
 そこで、無償で許可証の配分を受けられるようなグランドファザリング制度にしますと、規制ポイントの主体は、許可証を提出する義務は負いますけれども、それを調達する費用の負担は負わないで済むことになります。      
 ここで注意すべき重要な点は、炭素税の場合には、免税してしまいますと、排出を削減しようという誘因は一切なくなってしまいます。デンマークやノルウェーなど、炭素税を導入している国は、これで困っている面があるわけです。ところが、排出取引制度の場合には、無償で許可証をもらいますから、財務的な負担はない上に、有価証券を受取るわけですから、それを売ることができれば、利益が得られる。したがって、排出を削減して、それを売って利益を上げようという誘因が働きます。オークションで有償で許可証を手に入れる場合でも、無償で取得する場合でも、排出削減という点では同じ誘因が働くという点が大変違うわけです。そういう意味で、排出取引制度のほうがインセンティブが高いという評価を受けているわけです。この前のときに、米の配給制度とか闇経済とかいう話が出てまいりまして、排出取引制度はこういう制度なんだという御議論がありました。私はそれは無茶苦茶な議論だと思います。今までの私の説明を御理解いただければ、どうして暴論であるかということがおわかりいただけるかと思いますが、米の配給制度というのは、個々の家庭の消費量を決めてしまうということですね。しかも、配給制度で米を手に入れる以外の米を手に入れることは全部違法行為になったわけですから、大変困った制度で、超統制経済である。
 もしそういう超統制的な制度であれば、現在検討を進めている先進国がたくさんあるのは、なぜでしょうか。アメリカ、カナダ等。それから、カナダのように、実際にパイロット・プロジェクトをつくって、それを動かしている国もあります。英国のように、政府が導入を決め、その具体化をこれからどうするかということを図っていて、しかも、英国の産業連盟(CBI)は、政府に対して排出取引制度をつくってくださいという提案をしている。デンマークは、さっきも申しましたけれども、電力部門に限ってですが、排出取引制度を既に導入して実施している。そういう例を見ますと、もし米の配給とか闇経済ができるという統制的な手法であれば、こういう国々は全部、市場経済をあきらめて統制経済の方へ進んでいるのかという議論になってしまうわけで、そんなことは全くない。さっき言いましたように、統制されているのは排出総量だけです。しかも、その総量は国際協定によって削減するということを決めたもです。国内排出取引制度というのは、その国際的約束を遵守する際に市場ペースのやり方を活用しようというもので、どの国においても、伸縮性の高い制度として産業界や消費者の受容度が非常に高いやり方だという理解を得ています。だから、たくさんの国がこれを採用しようという方向に進んでいるわけです。ですから、戦争直後の非常に混乱した強度の統制手法と同じだという議論をするのは、私は、何か別の目的があってそんな議論をされているのではないかという気さえするわけで、そういう認識は改めていただきたいと思います。
 もう1つ、今後の議論の進め方について付言させていただきます。今のお話でも出てきますけれども、排出取引制度というのは、それだけを取り上げてよしあしを考えるというのではなくて、いろいろなオルターナティブがあって、そのオルターナティブがすべて京都議定書を遵守するという1つの目的は共通に持っていて、その次に、いろいろな他の費用が少ないとか、公平性が高いとかという基準をにらみながら、どういう制度を選択するのがいいかという議論を我々はこれからしていかなければいけないと思うんです。ですから、1つの制度が提案されたときに、その制度の欠点をあげつらうということはこれ以上しない方がいいと思うのです。そういうことをすると、いい制度が全部落とされてしまって、結局、現状が残る。現状が不備だから新しい制度を入れようというときに、どの制度も欠点をもっているわけですから、欠点だけを言っていますと、全部落ちてしまいます。そういうことはやめて、この委員会では、建設的な代替案をいくつか並列的に並べて、どれが我々としては推奨すべき制度であるかというのを検討しなければいけないと思います。

【安原委員長】 天野さん、どうもありがとうございました。明快な説明をいただきました。ただいまの説明に対して御質問、御意見がございましたらお願いいたします。

【宮本委員】 私は基本的によくわからないのです。どういうことかというと、全体のストリーを規制する、これは個々の規制ではないとおっしゃるんですね。日本全体として-6%にするのだ、これはよくわかります。その次に、各排出主体から許可証を出すというわけですね。それは排出の実績を報告するということですね。それと総量との関係と、それが総量をオーバーしたときには、どのような格好でそこをやるのか、そのメカニズムが
わからない。

【天野委員】 総量というのは、個々の主体の総量ではなくて、全体の量。

【宮本委員】 それはわかっているんです。各主体は、私のところはこれだけ出しましたと。

【天野委員】 出しましたと報告するのと一緒に、出した分の許可証をどこかから手に入れてきて--

【宮本委員】 その許可証の量はどういうふうにして決めるのですか。

【天野委員】 企業が自分で決めるんです。

【宮本委員】 それを決めたときに、全部を合計すると、例えば日本全体としてオーバーしたとしますね。

【天野委員】 そんなことは起こりません。排出の許可証の量は決まっているわけです。

【村上委員】 ですから、最初の排出の許可証はどうやって決めるのですか、という質問です。

【天野委員】 それは京都議定書で決まっています。

【宮本委員】 それは全量なんですが、各主体に対して。

【天野委員】 各主体は排出を自分が決めるんです。

【安原委員長】 私も聞いていてむしろ御質問したいのですが、総量の点はいいのですが、各主体がオークションで許可証を取得するときは、天野さんのおっしゃるとおりなんですが、グランドファザリング方式で、実績とか何かをベースにして、個別の主体に割り当てるようなケースの場合はどうなんでしょうか。

【天野委員】 順番に説明していきますと、基本的な理屈は、オークションで考えるのが一番分かり易いんです。オークションの場合には、企業は自分の排出量を決めて、自分の決めた排出量に相当する許可証をマーケットから手に入れてきて、政府に出す。そうすると、許可証の量は決まっていますから、もし全体の量が多すぎると、許可証の値段が上がっていくわけです。ですから、上がっていく値段では、買うのをやめる人が出てくる。あるいは、効率的な企業の中に売るほうに回るものがでてくる。結局、最終的に総量が許可証を超えてしまいますと、不遵守の主体が発生するということになるわけです。そうすると、不遵守の課金がかかる。ですから、ある程度モニタリングしていきますと、全体の量が超えそうだということになれば、市場は価格の信号を送りますから、各主体は、自分の排出量だけの許可証が手に入るような生産技術や生産方法に調整していくというプロセスが動くわけです。これがオークションの場合です。
 では、グランドファザリングのときにどういうふうに割り振るかというのは、先ほど言いましたように、オークションでやったら、これだけ自分は排出するだろうという大きさでグランドファザリングが行われたら、ちゃんと過不足なしに、しかも個々の企業は不遵守に陥ることなしに遵守できる、そういう制度ができるわけです。グランドファザリングの量をどのような方式で決めるかというのは、交渉で決まるわけです。

【宮本委員】 そうすると、オークションに入れるような企業とか大きいところはいいですが、例えば自動車輸送とか個人とか中小企業でそんなことができないところがありますね。そこはどうするのですか。

【天野委員】 それは、外国でいろいろな議論がありますけれども、個々の小さいところまで全部責任を負わせる規制ポイントに入れるというのは、行政費用がかかりすぎて非現実的なんです。ですから、実際に国全体の排出をどういうふうに対象に入れてくるか、つまり範囲をどうするかということを議論するときに、行政的にコントロールできるぐらいの大きさ、例えば今の省エネ法の第1種ぐらいの数ですと、行政的に対応できますから、そういう大口の排出主体については、グランドファザリングの方法をとる。そうすると、中小とか個別の主体は残ってしまいまして、日本の場合はそれがかなりのウエートを占めるわけですが、そこの部分についてどうするかというときに、今度は一番上流、化石燃料が日本経済に入ってくるところで、少数の精製業者とか輸入業者とかというところに排出規制ポイントを置く。そうすると、そういうところで自分の販売している化石燃料を精製したのに対して許可証を提出しなければいけません。ですから、その2つのやり方をハイブリディングにすれば、かなり広い範囲がカバーできるという議論があります。
 ただし、これは1つの議論であって、いろんな国の提案を見ておりますと、そこの部分は炭素税で扱うという考え方もあります。実際にノルウェーなどで現在入っている炭素税はそれなんです。大口の排出源は全部免税になっていますから、そこにはかからないので、実際に炭素税を払っているのは、家庭のエネルギー消費とかガソリンの消費などです。排出量の大きいところは発電所です。発電所などが抜けていて困るので、デンマークでは、特に電力部門だけに限って排出取引制度を導入したわけです。ですから、宮本委員がおっしゃっているようなグランドファザリングをやっているわけです。
 それ以外の国の提案でも、大口のところだけをまず導入して、小口のところはしばらく置いておいて、大口の方の動きを見ながら考えようとするものもあります。ですから、最初の段階では、規制ポイントが大変偏った形で、全体をカバーしないで、ごく一部の大口取引のところだけにかかるような制度を考えている国もあります。この辺は排出取引制度をどう設計するかという議論の中で行われることであって、制度そのものがおかしいとか、動かないということではないわけです。

【宮本委員】 今の申告する量というのは、例えば2010年とするのですか、それとも来年、再来年と毎年やっていくのですか。

【天野委員】 それは、これからどういう制度をつくるかということであって、国際的な京都議定書が発効すれば、2008年から2012年という第1約束期間があって、その期間の中では国際的に取引が行われることになるでしょう。その国際的な制度に見合った国内制度として導入するという考え方もあります。しかし、それ以前、早期の行動として国内の排出取引制度を導入しようということを検討しているのが、私が先ほど申し上げた国々なんです。これは早いところでは2001年からということを言っている国もありますが、デンマークはもう既にやっています。そうすると、現在から2007年までの期間を一応考えて、そこで国内的な制度としてこの排出取引制度を考えようという提案を、ノルウェー、イギリス、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアの国々が行っていて、一般の意見を聞いているという段階です。

【宮本委員】 今の先生のお話ですと、普通は大企業とかエネルギー産業が対象になりますね。みんなが出したオークションというものを足しますと、きっと総量よりも少ないでしょうね。そうすると、そこのところには取引が起こってこないと思うんです。日本全体の総量が14億何千トンと決まっているわけですね。それに対して、大企業だけを足しますと、10億とか12~13億トンぐらい。民生用とか個人用というのは微々たるわけですから、当然そのぐらいにしかなりませんね。そうすると、オークションということになり得ないのではないか、というのが1つ。
 もう1つ、そういうことをやることが果たしてどんな意味を持つのだろうか。それよりも、今、産業界なりは自主目標を持って、自主取組をしようではないかと言っているところに、そういうものを入れてくると、自主取組という元気とか意欲とか正義感とかというものを阻害してしまうのではないかという気がするのですが、その辺はいかがですか。

【天野委員】 イギリスの例ですが、イギリスは、Climate Change Levy(気候変動税) の実施を政府が決めたんです。Climate Change Levy というのは、二酸化炭素とか温室効果ガスの排出に対して課税するわけですから、簡単にいえば炭素税なんですが、イギリス政府の提案というのは非常に手が混んでいまして、民間との自主協定、つまり国と、これだけ削減しますという自主協定を結んだ場合には、Climate Change Levy の税率をうんと下げます、非常に安い税をかけますと。ということは、民間の企業が政府との間で、今おっしゃったような自主取組でこれだけの削減をしますという目標を立てて、それを政府の監視の下でやりますという協定を結んだときには、炭素税の税率をうんと下げますという提案をしているわけです。それに対して、民間の意見を求めたところ、英国の産業連盟(CBI)がどういう対応をしたかといいますと、それも結構ですが、取引制度を導入してもらえないかという逆提案をしているのです。ですから、もし宮本委員がおっしゃったように、民間がそんなことを言うはずがないというのだったら、今の英国で進んでいるこういう状況をどう理解したらいいのでしょうか。

【宮本委員】 私はそういう点は調査していないのですが、いろいろな国で考え方も違うわけですし、資本拠率も違うわけですから、どうなるかわかりませんけれども、私が一番心配するのは、まず1社でないわけですから、いろいろなグループがあるわけですね。例えば鉄鋼もおれば、化学もおれば、エネルギーもおる。そうすると、目標を多めに申告しておいた方が得なのではないかという形になるかもしれませんね。そうすると、オークションのときには有利になるかもしれないから。

【天野委員】 そういうことを誘発しないようにオークションの制度をつくらなければならない。それは各国で、そうならないような制度を検討しています。

【宮本委員】 実現可能かなという気が私はものすごくしますね。

【天野委員】 これは実際にアメリカの二酸化硫黄削減制度がずっと適用されていますね。そのときもオークションをやったり、グランドファザリングをやったり、いろいろなことをやっているわけです。おっしゃるように、グランドファザリングを下手につくれば、実績をつくって、たくさんもらおうというのが出てきますから、逆に排出が増えてしまうわけです。そういうことが起こらないようにグランドファザリングの制度を考えて、導入している。もちろん温室効果ガスの場合にもそういうことを防止するようなグランドファザリングの方法、つまり、ずっとさかのぼって企業が変えようがないところで決めるというやり方をする。それでは、後から入ってくる新規算入企業に対して大変厳しいやり方になる。新規算入企業は過去に実績がありませんから、過去にさかのぼって実績を決めると、新規参入企業は全部マーケットからオークションや2次市場で買ってこなければいけないので、差が出るわけです。その差が出るのをどういうふうに考えるかという問題もあって、それを検討しながら制度がつくられています。
 京都議定書というのは、もともと国際的な制度としてそういうものをつくろうというわ
けですが、そういう国際制度ができれば、当然、国内にも対応する制度がなければ、国際的な取引に参加できないわけですから、京都議定書の制度が整ったら、どんな国でも参加できるというのではないんですよ。ちゃんと参加できる要件があって、その要件をずっと調べると、そういう要件を満たすためには、国内である程度計画が進んでいないと参加できないということになります。ですから、ロシアも今一生懸命準備をしていると思いますけれども、今のままだったら、そういう制度に参加できる可能性がある国というのは、ごく少数だと思います。ですから、他の国は議定書のI国とかB国であっても、自動的にそれに入れるわけではないというので、そういうことも含めて各国では検討を進めているところがあります。

【宮本委員】 私は、今の議論をやられるのは非常に結構だと思うのですが、一番重要なことは、今のCO2の発生量も、その原因分析をもっとやる必要があるのではないかと思うんです。考えてみると、1997年ぐらいまではどんどん増えていったわけです。ところが、そこから2~3年は横ばいか、かえって減っているわけですね。これは短期的になぜ減ったかという問題がありますけれども、1つは、GDPが伸びていないということ以外に、産業構造の転換とか省エネルギーの推進とか、いろいろな制度が出てきたことによって、機器も改善された。生活パターンもある程度変わってきた。産業のCO2に対する厳しい考え方も出てきたということで、大分下がっているだろうと思います。この辺の原因分析ができないままに、こういう制度があるべきだ、あるべきだということを軽々に言うのがいいのかなと。
 一方では、自主取組をやろうとして、自分らはそれで分析しているわけですから、そういう情勢をよく踏まえた上で、今の制度をやっておかないと、制度そのものが先に走ってしまって、その制度を悪用する人たちが出てくる可能性がものすごく高いと私は思うんです。そういう意味で、もっと現実の分析と今の自主取組を見た上で、制度の導入をお考えいただいたらどうかというのが私の意見です。

【天野委員】 今の御意見は私も全く賛成です。つまり、制度を導入するときに、既存の制度を放ったらかしにして、新しい制度だけがかぶさってくるという制度のつくり方というのはよくないと思います。ですから、どういうオプションがあって、そのオプションの中で、日本にとってどの制度が一番いいかということを議論するときには、当然今やっているものとの関連を議論しなければいけません。ただ、私がここで申し上げているのは、初めから排出取引制度はないというふうに議論するのではだめで、これは他の国でもいろいろ利点が認められている制度ですから、それを含めて、他の制度と並べて検討していった結果、排出取引制度が落ちるとなれば、それは当たり前の議論だと思うんです。頭からそれを除外して、他の制度だけで議論しようというのに対して私は反論しているわけです。排出取引制度にはどういう利点があって、日本にとって、京都議定書を批准する、国際制度を利用する、そういうことを全部考えた上で、排出取引制度はどんな役割を果たしているのかという検討をちゃんとして、現在の制度との比較検討をすれば、当然、他の国でやっているように、排出取引制度が単独で入ってくることはまずないと思うんです。既存のいろいろな制度と組み合わせて排出取引制度を修正したものが日本に導入される可能性が非常に高いと思いますから、英国などの経験はそうだと思いますが、そういう選択肢の1つとしてこれを入れて、入れる以上は、その性格をきちっと理解して、正しい理解の上で議論に参加させるべきだ、こういう主張をしておりますので、闇経済が発達するなどという議論は御遠慮願いたい。ちゃんとした議論をしていただきたいということです。

【塩田委員】 天野委員の御説明ありがとうございました。1点だけ、今の御指摘に関してお伺いしたいのは、今の御説明で私なりの理解では、排出権取引というのは、排出権取引だけではなかなか実際問題としては難しい。したがって、炭素税などとの併用が要るというお話。
 もう1つは、その場合に、併用していかなければならないときの炭素税というのは、もし排出権取引をする人に対しては免税ないし低税率を適用するということであれば、排出権取引と同様に、温室効果ガスの排出抑制に非常に有効な程度の高率の炭素税とのセットということが今の御意見の前提になっているのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。

【天野委員】 これもこの委員会を始めいろいろなところで今後検討していく必要があると思います。今の私の議論は全部、制度の性質というか、クオリタティブな面に関する議論だけであって、数量的な裏付けは一切ないわけです。しかし、おっしゃるように、制度を実際に動かすときには、そういう数量的な背景がきちっとわかって、正確といいますと語弊がありますが、将来のことですから不確実性が高いのですが、それなりの根拠のある数字を確認して、いろいろな制度の選択をしていかなければいけないと思います。ですから、もし炭素税と排出取引制度を組み合わせるときには、どういう税率から始めて、将来、例えば第1約束期間にはどのぐらいのレベルになるだろう、炭素税が導入されるとすれば、どのぐらいのレベルが必要だろうというふうな計量化というのは当然必要になってくると思います。私は別に、非常に高い、例えば1トン当たり1万円というふうなことを想定しているわけではありませんで、こういう全く新しい制度を導入しなければいけないような状況の場合には、一ぺんに大きな制度改革をするというのは大変難しいし、余りいいやり方ではなくて、計画期間をちゃんと見通した上で、どういうふうな経路をたどって税率が変わっていくかというふうな考え方が必要だろうと思います。どちらにしても、今、塩田委員がおっしゃったような数量的な詰めというのは、どこかの段階から始めなければいけませんし、そういう情報を得た上で、どういう選択をするかという決定をしなければいけないと思っています。ですから、当然、私は、最初から高い炭素税率が必要で、それを導入すべきだという議論をしているわけではありませんし、炭素税を併用すべきか、あるいは炭素税の代わりに、先ほど言いましたような上流型の取引制度というのもあります。炭素税と上流型のやり方というのは、一長一短がありまして、どちらが圧倒的にいいということではないのですが、そういう比較もする必要があるだろうと思っています。

【塩田委員】 問題は、今おっしゃったような組み合わせが実際に移入しやすいようなものができるかどうかです。さっきのお話ですと、かなり高い炭素税を前提にして排出権取引が成り立つのではないかという印象を持ったのですが、今皆さんがお伺いのような低率の炭素税でも排出権取引は両立するのかという疑問が若干あるわけです。

【天野委員】 数量の話ではないのですが、今の国内制度というのは、仮に2002年から始めて2007年までの5年間ぐらいしかないわけですね。2008年になれば、第1約束期間が始まりますから、第1約束期間が始まりますと、国際取引に参加できるような条件を日本が整えていれば、国際取引ができるようになります。そうすると、そこでは、国際的な排出の価格が成立しているわけですね。ですから、そこへいく前に、日本だけで1トン1万円というような値段が成立するような排出取引市場をつくる理由がないわけです。つまり非常に大きいギャップができて約束期間に入りますから、そこの間はスムーズに移行できるようなことを考えていかないと、制度としては非常におかしなものになる。そういうことは申し上げたいと思います。

【佐和委員】 いろいろ御議論をお伺いしていたのですが、感想を申し上げると、まず、オークションで排出権を政府が売り渡すという場合には、排出総量を、例えば3億トンなら3億トンを与えた上で、結果的には総排出量が3億トンにおさまるように、炭素税率がいわば内省的にといいますか、まさにマーケットで決まるということですね。ところが、炭素税の場合は、最初から1万円にしようが、3万円にしようが、それによって、結果としてどれだけ削減できるかということは、予想がつかない。そういう違いがあるわけです。
 ただし、今申し上げたことというのは、実は1年間というのが一瞬のもとに起こる場合の話なんです。つまり、1年の間にオークションの価格は当然変動しますね。ですから、例えば年度末になって、排出権自体がものすごく欲しい人が、つまり需要が供給を大きく上回るようになれば、暴騰しますね。そこが問題なんです。つまり、1秒も1年も同じだと考えれば、そういう変動がないわけです。ざっと価格が決まって、それでいいわけです。ですから、課税と同じことになるわけですね。しかも、3億トンなら3億トンということできちっと総量をコントロールできるというメリットがある。
 ところが問題は、排出権というのは、一体いかほどの期間有効か。仮に1年だとすると、1年の間に排出の価格は変動する。そうすると、年度末になって、例えば今年のような猛暑で電力会社がガンガン火力発電をした。その結果、電力会社は当然排出権が不足するから、マーケットで買う。買い取りもある。そうなると、当然、排出権の価格が上がりますね。そうすると、例えばどこかの製鉄会社が輸出契約をして、鉄をつくろうとして石炭を買おうと思ったら、そのために排出権の価格が暴騰していて、こんなに石炭が高いのだったら、輸出契約は取り消すということにもなりかねないわけです。つまり、時間があるというのが、つまり1年と1秒は違うのだということが1つの大きな問題だということ。
 それから、実績按分無償配分といっても、例えば、ある企業にとってみれば、たまたまその年の売れ行きがさっぱりで、排出権が余って、それで余得を得たということにもなるし、逆に、その会社のつくるものがどこかにどんどん輸出されて、結果的に足りなくなるということで、かつての為替管理などとよく似ているところがあって、今年1年、関西電力が何キロワットアワーの石炭火力をしたということを政府が大体見通して、去年はこうだったから、今年は1割増しかなということで、そういう意味での無償配分をしても、天野先生がおっしゃったとおり、これは有価証券なんだから、節約するという動機が働くというのは、そのとおりなんです。しかし、ここでのある種のフェアネスといいますか、そういう配分の仕方が、政府の決め方がフェアかどうかということが問題なんです。神ならざる政府が決めるのは難しいのではないかという気がするのですが。

【天野委員】 マーケットの話ですが、マーケットというのはどこのマーケットでも、今おっしゃったようなことが起こるわけですね。

【佐和委員】 ただし、1つ付け加えるのを忘れたのですが、もし国際的なマーケットが整っていれば、国内で暴騰するということはあり得ないわけです。つまり、国際価格に平準化されるということで、さっきのように暴騰・暴落ということも余りないと思うんです。だけど、国際マーケットが整備されていないという前提の下での排出権取引の導入ということに関して申し上げたのです。

【天野委員】 ここのマーケットは、供給量がわかっているわけです。政府がどれだけ供給するかということが決まっていますし、制度をつくるとすれば、第1約束期間までに毎年政府がどれだけ出すかということがわかった上で行動する。そうすると、値段がなぜ変動するかというと、需要が動くから変動するんですね。これは普通のマーケットよりももっとわかりやすいマーケット。普通のマーケットは供給量も変動するし、需要量も変動して、しかし価格の暴騰というのはそんなに起こらない。価格の暴騰が起こっているのは、例えばOPECのような政策的な主体が大量の供給量を制限したりするということで起こるわけです。通常の国内マーケットで国際市場がないと、価格が年末になったら暴騰するということはまず考えられませんで、そういう暴騰が起こる可能性があれば、他の理由が出てきて、必ずそれに対応して価格のスムージングを行うわけです。ですから、排出取引市場ももし制度がうまくつくられて、外国、例えばアメリカの市場のようになれば、いろいろな副次的な市場が発達してくる。二次市場が発達しますし、派生商品の市場も発達します。そういう市場を通して企業はリスクヘッジをする可能性が開けるわけです。こういう市場がなくて、例えば政府が急激に削減しなきゃいかんというので、ぼんと炭素税を上げるというようなことは、マーケットでは起こり得ないのです。そういうことが予見されれば、すぐに対応して価格が変動しますので、佐和先生のおっしゃったような、年末になって暴騰するというのであれば、それは市場のでき具合が悪いというか、いい市場が発達するような規制とか計画をしなかったからそういうことが起こるのであって、一般的な議論では、排出取引市場はそういうことも含めて、将来温室効果ガスを削減しなければいけないということで、各企業は非常に大きな不確実性を持っているのですが、その不確実性を減らす1つの手段にもなるという議論があるわけですから、私はむしろ逆ではないかと思います。

【佐和委員】 技術的なことについてはよくわからないので、もし御存じだったら教えてほしいのです。SOxなどの場合は、お金をかければ削減ということは可能なわけですね。しかも、連続的にここまで減らせと言われれば、ここまでお金をかければいいということが割合はっきりしていると思うんです。特に電力業界なら電力業界の中で。ところが、CO2の場合は、自動車を走らせれば必ずCO2を出すということもあって、SOxの規制で排出権取引がうまく機能したからといって、CO2の場合、ちょっと事情が違うのではないかという感じがするのですが。

【天野委員】 そういう議論もありますが、特にSOxの場合には、排出の一番最後の段階で脱硫装置をつけるとか、エンド・オブ・パイプの手法が使える。ところが、炭素の場合にはそれがないと言われていますね。大変難しい。ですから、最後のところで投資をすれば、それですぐ簡単に排出量が減らせるというものではない。

【佐和委員】 ただ、自動車のNOxなどの排ガスの規制を強化されたら、別に脱硫装置とか脱硝装置という大きな設備をつけなくても、ちょっとした触媒のいいものを使うということで割合自由自在に、お金さえかければできるようなものですよね。そういうところとの違いというのはあると思うんです。

【天野委員】 先ほどのOHPのスライドにも小さい字で書いてありますけれども、温室効果ガスの場合の排出削減というのは、別に生産量を減らすだけが唯一の手段ではなくて、ほかにもいろいろな手段があって、ただ、今まで各企業とかがそれをどうして使ってこなかったかというと、排出削減の費用というか、制約になるような価格がなかった、価格がゼロなわけです。価格がゼロの場合には、企業は排出削減費用をどう対応するかというと、限界費用ゼロで対応しますから、何もしないということなんですね。ですから、一挙に高い税率をかけるとか、許可証価格が暴騰するような導入の仕方はまずいと思うのですが、ゼロに限りなく近いところから値段がずっと上がっていけば、それぞれの値段に対応した削減費用の削減機会というのを使う、そういう機会はたくさんあると思うんです。そこにずっと羅列しておりますけれども。ですから、削減費用というのは、1つのソースがあって、そこを削減したらいくらというふうなことではなくて、いろいろな手段があって、その集団の中から、今の排出量の価格に見合った限界費用を持っているものを探してくる。高くなれば、また高いものに対応するものを探してくるという可能性がいっぱいあると思います。何もいい技術が出てくるということではなくて、マーケットというのはそういうものであって、企業は自分の費用削減に躍起になりますから、そういう価格が成立すれば、それに見合った行動を必ずとるはずだ、そういう可能性を探してこないと、企業というのは競争から脱落するわけです。

【宮本委員】 今の佐和委員の意見に非常に賛成なんです。その一例としてこんなことを申しますと、例えば電力の場合、使用電力量が増えてきたからといって、原子力はフルに動いているわけですから、これ以上動かすわけにいかないですね。そうすると、他の方法はないわけでしょう。だけど、やらなければいけないとなると、非常に高い価格になる。それはどういう例で実証できるかというと、今のアメリカの電力料金を簡単に御説明しますと、今アメリカでは局部的に非常に電気が足りない場合があるんです。例えばカリフォルニアなどは温度が上がったときにものすごく足らない。そうすると、今まで10セントぐらいの使用電力料が1ドル50セントに上がっているんです。そういう時代になって、しかも停電が起こると、また増えるんですね。これが本当に国民にとっていいのかというのが今アメリカですごい議論になっているのですが、これに近いような、CO2の問題というのは、先ほどおっしゃったように、SO2 とかNOx の問題とはすぐに代替できないという問題もあるわけですから、論理としては非常にあり得るのですが、現実運用するといろいろな問題点が大きく出る可能性はあるということを、電気料金のアメリカの高騰の状態から御説明しておきたいと思います。

【天野委員】 おっしゃるようなことは、やり方によっては起こると思いますけれども、そういうことを含めて、ちゃんとした制度をつくるのが我々の仕事ではないか。ですから、排出取引制度が必ずそういうものを起こすものであれば、それはもちろん採用できませんけれども、それは決して排出取引制度があるためにということではなくて、これから制度をつくるわけですから、そういう条件を十分加味した制度づくりができると思います。
 価格の暴騰というのは、ある制度が全くないときにはそういうことを想像するのですが、現実にそういうことが起こるということが予見されているときには、そのときまで企業は何もしないということは考えらないと思うんです。暴騰することが将来見通せるような制度ができれば、前もってそれに対応するようなやり方を企業はとるだろう。ですから、仮定の議論になって、こういう制度がいきなりぽんと入ってきて、その途端に対応できないという導入の仕方にはならないし、そうするべきでもないと思います。

【安原委員長】 まだまだ御意見があると思いますが、別のテーマもございますので、排出権取引をめぐる議論はこの程度にしたいと思います。排出権取引をめぐる大変重要な論点について意見交換ができ、かなりの程度クラリファイできたのではないかと思います。ありがとうございました。
 それでは次に、猿田委員から「我が国の総量規制制度について」御説明を賜りたいと思います。よろしくお願いします。

【猿田委員】 今OHPが出ておりますけれども、排出削減に関わる排出総量規制を何とかできないだろうかというような意味で申し上げたいと思います。
 前回まで各委員の方々から御意見がたくさん出されまして、その中では、経済活動の自由度を担保し、温室効果ガスの排出量をどう管理するか、これをいかにして両立させるか、その辺がいろいろと論点になってきたわけです。
 そういう中では、経済活動の自由--先ほど宮本委員からも自主的取組のお話がございましたが、そういうものを尊重しながら、環境負荷の総量をどう管理していくのか。そういう手法として、今まで大気汚染防止法あるいは水質汚濁防止法という個別法がございますが、大気汚染対策あるいは水質汚濁対策の中で、大気汚染物質に関わる総量規制を我々は経験してきているわけです。今後のポリシーミックスの検討の一助と申しましょうか、御検討いただければということでございます。
 まず、大気汚染ではどういうことをやってきたのかということを参考に申し上げたいと思います。
 大気汚染防止における総量規制の考え方としては、まず、原料及び燃料使用量をもとにして算定する方式、排出ガス量をもとにして算定する方式があるわけです。ただ、ここで問題になるのは、「いずれの場合も」と書いてありますけれども、将来の排出総量が削減目標量と合致するように算定する。しかし、その中で、経済動向、新規算入も予測しつつ、いわゆるリザーブ分を残しておくわけです。というのは、現状維持でいきますと、今後新たな開発も、あるいは工場等における増設もできないということ。最近は、増設するなら、現状の中で、その分減らしてやりなさいというように変わってきていますけれども、この総量規制方式の中では、新規算入、いわゆるリザーブ分も配慮して基準を算定して、そういう係数を定める。
 それぞれの規制対象者にとっては、燃料使用量等に応じた総量規制基準、エネルギー量に応じた基準が適用されるわけでして、石炭なら、油に換算して何ぼというふうに換算した上で使われております。
 総量規制基準というのは、必ずしも固定的な上限値を設けているわけではなくて、燃料使用量や排出ガス量等に応じて弾力性がそこで担保されているという状況の中で、こういう方式が使われているわけです。
 次に、どのような方式を使っているか。Q=a・Wb 、Q=k{Σ(C・V)}l という[1]と[2]の式がございます。[1]の方は、原料及び燃料使用量を基礎として算定しております。[2]の方は、どちらかというと、排出ガス量を基礎として算定しております。例えば[1]のQ=a・Wb ですと、硫黄酸化物などの総量規制の中では、例えばaが1.5・W0.865というのも、地域によって違いますけれども、もう1つ、2.5・W0.865 というのもあります。bは 0.8~1.0 と書いてありますが、これは排出量が多くなるほど厳しくなっていくというカーブになってくるわけでして、そういう方式を使っている。これがそれぞれの企業というか、工場等に対する1つの総量規制という形が使われてきているわけです。大気ではこういう形で原料及び使用燃料規制として使われているのが一番多いわけですが、NOx の場合には、[1]式の方ですと、1.06というaを使っておりまして、bは0.865 と同じなんですが、そのように物質によって係数が違っているということはございます。
 そういう形で大気汚染物質に関わっては、硫黄酸化物あるいは窒素酸化物についてはこういう総量規制がかけられているということが、総量規制地域とか、特定地域等の問題もありますけれども、行われております。 では、水の方はどうなのかということでございます。水質の方ですと、水質汚濁物質に係る総量規制基準は、規制対象となる工場、排水量が1日50m3以上、地域によっては条例などで厳しくしているところもありますけれども、1日50m3というのが基本的には対象になる。そういう工場からの排水量に比例した形で設定されております。
 共通の計数というのは、技術的に実現可能な範囲で設定されるため、環境保全上必要な範囲に排出総量が抑えられない場合があるということ。これは奇異にお感じになるかもしれませんが、広域的な閉鎖性水域として東京湾、伊勢湾とか瀬戸内がありますが、人口・産業が集中している地域で閉鎖的な水域についてこういう総量規制が導入されているわけです。例えば東京湾の場合ですと、今年度、来年の3月までには第5次の削減目標を設定しなければならないということになっているわけです。それは平成16年度を目標年次にして削減。東京湾の第5次と申し上げたように、現にそういう技術的な問題も加味して厳しくなってきております。例えば下水処理場の整備状況を見ますと、東京、神奈川は大体100%近くいっていますけれども、まだ他の県でいってないところがあるわけでして、そういうところも下水道が整備されているところと同じような計数ではもっていけないという問題もあります。それから、下水処理場などですと、高度処理がどれだけ導入できるかという問題もある。今年度、13年度はまた東京湾のCODの負荷量をさらに削減する計画が立てられることになっておりますけれども、そういうふうにいろいろ削減技術などで実現可能な範囲で水質の場合もやっているわけです。
 大気の硫黄酸化物などの場合には、先ほど佐和先生もおっしゃいましたけれども、S分を下げた燃料を使えば減ってしまう、脱硫装置をつければ削減することが可能だと。そういう意味では水の方はもっと難しい面があるわけでして、そういう形で実現可能な技術を考慮しながら行っている。5年ごとに技術評価を行って、共通の計数を見直すこと、第5次云々というのもそういうものとの関連も出てくるわけです。
 次に、水の方の総量規制基準の決定方法で、先ほどの大気と同じようなことで、一定の濃度に排水量を掛けて求める。その場合に排水量に比例して出てきますけれども、CODのmgをどう設定するか、それに対応する技術があるかどうかということで、ここをどう厳しくしていくかということになってくるわけです。そういう形で総排出量、いわゆるCODの総量を抑制していこうということです。[2]も同じように、これは排水量に比例する。施設の増加分などを考慮してやってきているわけです。
 こういうことを前提にして、それでは、温室効果ガスである二酸化炭素などにこれを適用することはどうなのかということで、ここにまとめを書いてみたわけです。これまで大気や水質についての総量規制制度は、先ほど申し上げましたけれども、汚染物質の固定的な排出上限値の基準を設けているわけではない。それはある意味では技術的な問題でもあるわけでして、事業活動に比例するという弾力性を持たせて、燃料使用量、排ガス量、排水量に比例するという形で。ただ、先ほどの数式にもございましたが、大きくなると厳しくなるというふうな規制がかかってくることは当然ですが、そういう形でやっております。
 そうすると、二酸化炭素を排出する場合、CO2 の除去技術は実験的にはいろいろと行われておりますけれども、実際に技術的にどうかということになると、まだ非常に困難な面があります。「排煙処理に相当する技術こそまだないが」とありますが、研究段階ではいろいろ行われておりますけれども、実用化の段階には至っていない。そういう中で、硫黄酸化物や窒素酸化物と同じように何かできないだろうか。燃料転換することによる、石炭から油に、油からガスにというのであれば、それでCO2 を削減することもできるわけです。また、工程管理などによって削減が可能であろう。そういうことによって、CO2の排出管理の手法として、先ほどの大気であれば、a・Wb という式、これを使うべきだとか、そういうことではございませんけれども、このような考えを導入していけば、総量規制の仕組みを適用できる可能性があるのではないかということを1つ御提案申し上げたいということでございます。 以上です。

【安原委員長】 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明に対して御質問、御意見がございましたらお願いします。

【西岡委員】 水質汚濁防止の要件は、割り当てが排水量に比例した形になっていますが、これは濃度との関係はどうなるのでしょうか。総量といいますから、当然、汚染物質が……。というのは、これはまたグランドファザリングに関係してくるのではないかと思いまして。

【猿田委員】 基準については、大体都道府県知事が決められるようになっておりますね。そこで、ある幅があって、その中でどこを採用するか。排出量の多いところは厳しい数値を採用する。例えば今50?と申し上げましたけれども、 1,000トン出しているところもあるわけです。例えば宮本委員の会社であれば、電力会社の冷却水はまた別の話ですから、そうではなくて、排煙処理になると、数百トンから数千トンまで出す。ですから、そういうトン数に応じて、法律の中でも、条例で上乗せできることも認められておりますので、そういう形で厳しくして総量をいかに減らすかという努力をしているのが現状です。

【佐竹委員】 総量規制については、現行の総量規制制度がどの程度有効に機能しているかどうかということについての評価が要ると思うんです。これは水局にはいやがられるかもしれませんけれども、ノンポイントとか、CODもノンポイントの問題もあると思います。洪水時の問題とか、零細排出源とか、まさにそういう問題を抱えていて、評価がなかなか難しいと思うんです。温暖化ガスについても同様であって、どういう手法をとっても、排出量の大きい大企業の方々は、それなりの社会的責任も自覚されているでしょうから、それ相応の実績は上げられると思うのですが、6%減ですから、横ばいではいけないわけで、そうなると、どうしても民生、運輸という行政技術的に非常に難しいところをどうするかということが非常に問題になるのではないかという感じがいたします。

【安原委員長】 ほかにございますか。
 それでは、排出権取引の方で大分時間をとりましたので、次のテーマに移らせていただきたいと思います。西岡委員から「ポリシーミックスの逐次的実施」について説明をお願いいたします。

【西岡委員】 それでは、資料1-4を用いて説明いたします。
 前回、経路についての議論が一番最初にありまして、後で急にがくっとなるような形というのはどうなのかという議論もいろいろあったかと思います。私、提案内容といいましたけれども、これは提案というほど大それたものではなくて、当然、政策を段階的に実施することになるのだろうなと思いながら聞いていたわけですが、それを文章にして出した方がいいということで、出させてもらったわけです。
 提案内容というのは、全体として政策を一気にやるということではなく、また、最初に最後の形をきちっと決めて政策を打ってしまうということではなく、段階的にフィードバックしながらやっていくということで、提案内容に書いてありますように、そうすることによって、不確実性や合意に対する柔軟な対応を残しながら早期の対応を可能にする。余り議論ばかりしていて先へ進まないということでは困りますので、早期の対応を可能にす
るということです。
 手順ですが、この文章よりも絵を見ていただいた方が早いものですから、1枚開いていただきまして、左のページには、個々のポリシーオプション(推進メカニズム)に対する考え方の例が書いてあります。右側には、ポリシーミックスとして考えた場合にも同様なことが言えるだろうということで絵が描いてあります。この絵を見ながら、1ページに書いてある話をします。
 まず、可能な限り早期に、一部導入あるいは緩やかな形で導入してはどうか。
 国際温暖化政策の動きや京都メカニズムの進捗状況、国民各層への意識の浸透と合意形成の進展を踏まえながら、非常に大切なことなんですが、政策効果をモニタリングしながら、対策を調整していったらどうか。この絵では、調整といいましても、はじめきつくやって、後で緩やかというのは余り考えられないのではないかと思いまして、多分、だんだんと厳しくなる方向ではないかと思いますが、役所の言葉として「調整」がいいかなと思ってと書いてあります。
 いつがそういう調整をするタイミングがあるかということで、ここにも書いてありますけれども、2005年というのが、条約の方では「約束の達成について明らかな前進」が求められておりまして、これが1つのタイミングか。
 さらに2008年になりますと、先ほどお話がありましたように、国際市場との一致ということも必要になってきますので、このあたりで再度の調整が要るのかなということであります。
 ただ、この10年ぐらいの間に、モニタリングの結果とか効果とか、そういったことに関して、透明性のあるディスカッションができるような場が設けられておくことが必要であると思います。
 ここに書かれているとおり、あるものは対象を変えていくとか、あるものは、例えば低税率で導入しておいて、様子を見ながら段階的に税率を上げていくとか、もしくは、今議論にありましたように、総量が十分削減できるように調整していくということが行われるかと思います。また、自主的取組、協定に基づくものであるかどうかわかりませんが、それとの対応で一部減免して税を導入したり、排出権取引と税との組み合わせで、どちらか1つでやっていく主体があってもいいとか、いろいろな形が考えられるわけですが、その組み合わせでどれがいいかを考えまして、少しずつ変えながらやっていく必要があるのではないかと思います。
 この提案の背景ですが、まず、前回議論にあったように、約束期間のぎりぎり最後になって摩擦の大きいと思われるような政策実施は非常に危険である。ですから、目標達成に向けながら、なだらかな形での政策実施が望ましいということについては、この前の議論の中でもほぼ合意になっているのではないかと思います。そのためにも早期の政策導入が必要である。
 それから、早期に政策の方向性、こういう方向で決意表明をすることによって、各層へのアナウンスメント効果があるし、投資する方、これは設備投資等々は長期の回収期間が必要ですが、そういう長期投資の目標設定、あるいはだんだん合わなくなってきたものから取り替えていくという段階的実施が容易になるだろう。また、その間に技術進歩も推進される等々ございまして、初めに、ある程度の方向性をきちんと定めておくことは、非常に重要かと思います。このタイミングの議論については、前回も私申し上げましたが、技術進歩あるいは資本の効率性ということを考えますと、きちんとした段階的な方策が必要ではないか。
 しかしながら、今の時点でいろいろな不確実性がある。私はここでは政策効果の不確実性、先ほどからの議論のように、税を入れたけれども、どうなのだろうかとか、市場がうまく動くのだろうかとか、いろいろ議論がありまして、そういう政策効果についての不確実性がある。
 国際情勢については、京都メカニズムの設計、シンクの扱いなどCOP6の決定状況を目にしてございますが、多分その後にもいくつかの国際的調整が行われると思います。さらに排出権取引市場が各国で形成されたり、試験的な市場が形成されたりする可能性もあります。CDMの規模がどれぐらいあるのか。これはホットエヤー等々のことを考えますと、いろいろと論議されているところで、だんだんとわかってくるだろう。また、他の国の様子を見なければいけない。日本だけが高い税金があって、国際競争力が落ちるといったことでは困りますから、そういった連携等も考えなければいけません。
 さらに国内情勢というのは、国民的な合意形成に時間がかかる。また、国内排出権市場の形成、試験的な形成であったり、それを国際市場につなげるやり方についていろいろな見極めが要るかと思います。
 科学的知見のことを申し上げますと、現在、IPCC等では温暖化の進行状況の把握に非常に力を入れておりまして、こういうことでいくらかのことがまた明らかになってくることもあるかと思います。
 結論として、このような場合、6%削減するという目標を明確に設定して、達成手段については、時間的にも、対象的にも、あるいは政策の強さについてもある程度フレキシブルにしておきまして、プラン・ドゥ・チェック・アクションという過程をこの政策プロセスの中に盛り込み、Learning by doing による探索的逐次政策形成手順がいいのではないか。
 摩擦をおそれて無策のまま短期が長期を先食いしたり、制度が目的化して長期が短期に対して専横にふるまうことがあってはならない。これはどこかの教科書に書いてあったのをそのままもってきたのです。
 以上です。

【安原委員長】 西岡さん、どうもありがとうございました。では、ただいまの説明について御質問、御意見がございましたらお願いいたします。

【横山委員】 関係者間の透明性のある話し合いの場を常設するということですが、どんなことをイメージなさって、どんなリーダーシップをとるようなことが一番いいのか、その辺をお伺いします。

【西岡委員】 どのような内容ということですが、まずモニタリングの結果、この前も出ましたけれども、常に迅速に計測できるということが1つあるかと思います。それがもちろん迅速に公表されること。もう1つは、例えば先ほどいろいろポリシーの組み合わせについてありましたけれども、この内容についても、それぞれの主体が、よく言われますのは、自主的取組の件もございますが、どれだけの努力をしたかということをどこかで集約できるようなうまいシステムが欲しいなと考えております。
 あと、常時、それだからどうするのだという論議をする場が各省庁間横断的に設けられる必要があるかと思いますが、私自身は、役所のシステムの中で、どこが主導権をとってということは、あとの議論になるかと思いますので、私ははっきりしたことは申し上げません。

【佐竹委員】 西岡先生の御議論は大変説得力があるのですが、制度的な枠にこれを受け止めますと、言葉は悪いのですが、昔の国家総動員法みたいに、かなり広範な授権をしていただいて、各種制度をあらかじめ用意しておいて、政令なり何なりで適用を決めると。国家総動員法と違って、手法なり何なりについて骨格は全部決めておいて、よく御議論いただいて、ただ、その適用の仕方については、それぞれの制度の成果に応じて弾力的に発動できるような仕組みをとる、そういう仕組みをつくれば、必要があるのではないか。国家総動員法といったのはたとえが悪くて、単に授権ではだめなので、あらかじめ制度の中身の骨格なり狙いははっきりさせておく。そういう仕組みをつくれば、おっしゃるようなことはできるかもしれません。ただ、例は余りないわけですね。本邦初演ということになると思います。

【西岡委員】 私はこの文章を書きながら、COP3のあとで決めたどの部門で何%減らすというのはまだ生きているようで、いつもみんなあれにこだわりすぎて、先へ進まないということがございまして、ああいうところもフレキシブルにしなきゃいけない1つの反省点と考えておりまして、最後の文章になったわけです。

【天野委員】 今おっしゃられたような制度づくりの点は大変重要だと思いますので、私もぜひいい御提案いただければと思いますが、他の国でこういう議論をしているときは、大体、京都議定書を批准できる自信を得るために各国がこういう措置を考えるというふうな提案の仕方になっていると思うんです。ですから、何年頃に批准するかということと合わせて、その国の最高決定機関でその批准を決定するのに十分な根拠を提供するにはどんな施策が要るか、そんな議論の仕方をしていると思います。ここの御議論ですと、2005年というのは一応入っているのですが、いつから始めて、批准がどういうふうになってということも1つ重要な区切りになるのではないかと思います。

【西岡委員】 誠にそうだと思います。私も実はこれを書いていて、「早期の導入」の早期というのは何だろうかと自分でも考えていたのです。2001年にするのか、2002年にするのか、この調子でいくと、2001年では難しいのかなとかいろいろ考えながら、そのままにしていたのですが、おっしゃるように、2002年が1つのポイントでもあるかと思います。
 それから、先ほどの御意見のときに申し上げなかったのですが、「Stakeholders間の透明性のある話し合いの場」というのは、ここでも御紹介がありましたけれども、オランダのように、いつも対話する場を設けてやっているところもございますので、ぜひああいう形も考えていただきたいと思います。

【浅岡委員】 私もその点を強調したいなと思いました。国家総動員法と違う点は、行政に対しても、授権するのではないということだと思います。こういう協議のシステムを設けておいて、そこに広範な層あるいは関係者が参加して、透明性をもって議論をする。だから、だれかに決定権を与えたということではないという点が非常に大きな違いで、これから重要な点だと思います。
 私もデンマークで、電力関係で排出権取引制度、国内で出ていくについて、交渉を担当した行政の人が、COP5か、その前か、交渉の場で報告されていたのをお聞きしたときも、デンマークなどは、農家が風力発電計を建てているような小規模業者もあるわけです。そういう業者の組合ではなく、プロなども含めて電力関係事業者になるわけですね。それに消費者側も加わるとか、いろいろな組合が加わる。1年か、もっとかけたと言いましたか、本当に交渉らしくて、随分交渉に時間もかけて苦労もしましたけれども、そういう方々も含めて、こういう排出権取引制度を入れて、石炭を使わなくて、あるいは輸入しなくてすむような仕組みをとりあえず合意して、炭素税とのバランスもとりながらというふうな説明をされていた。そういう協議の仕組みになっていくことも合わせて、少しずつそれができる部所から導入するということで、電力あたりが最初に入ったのかなと思いましたけれども、そこを重要視していただきたいと思います。

【佐和委員】 2つぐらい感想を申し上げたいのです。1つは、効果というのが、短期的な効果と中期的な効果と長期的な効果があるわけですね。例えば炭素税を導入した途端にはほとんど排出量は減らなかったけれども、3年、5年で設備の置き換えや車を買い換えるとか、家電製品を買い換えるということもあって初めて目に見えた効果が出てくる。そういう場合が非常に多いということ。
 それから、個々の政策の効果というものをデータから検出することは非常に難しいんですね。特にポリシーミックスということで、3つか4つの政策を同時にやれば、何がどれだけ効いたのかというのはわからないわけですね。だから、政策効果というのを見極めるというのは、実は、西岡先生もそれは当然御存知の上でおっしゃっているのだと思いますけれども、少なくともこの文面から推察されるほど容易ではない。だからやるなと言っているわけではもちろんないですが。

【西岡委員】 1998年度の落ち込みがなぜ起きたのかということをちょっとやってみたのですが、おっしゃるとおり、そのベースにあるデータもなかなか難しいですし、個別に聞いてみたりしなきゃいけないところもありまして、なかなか楽ではないということは承知しておりまして、1つのチャレンジではないかと思っています。

【宮本委員】 確かに効果判定というのは難しいんです。しかし、これから一般大衆とかみんなを説得しようと思うと、それなりの説明が要ると思うんです。だから、状況証拠みたいな格好ででも分析する手法はいろいろあると思うんです。これだからこれだというように足し算したり引き算したり掛け算して出るものと違って、この視点から見ていくとこうでしょう、こういう視点から見たらこうでしょう、だからこれに近いのではないですかとか、そういう判断というのはあると思うので、私がお願いしたいのは、今後、環境庁が環境省になられるわけですから、そういう分析力をおつけいただくことがものすごく重要ではないか。
 それから、データをもっとしっかり握っていかなきゃいけないと思うのです。それと迅速なデータ。データというのは、この前も私はブロック別ヒアリングで聞いたのですが、とにかく2年ぐらいたたないと出てこないから、なかなか遅いということがあるので、データの精度の問題もありますけれども、速度の問題もある。これは地方自治体とか、そこら辺の努力によって可能なこともあるわけですから、そういうものが1つ。
 もう1つは、今後の環境行政というのは、何も環境省だけの問題と違って、経済企画庁も通産省も建設省もみんな入らないといけないと思うんです。そういう分析総力というのですか、そういうものはお持ちいただくような構造もつくっていただいたらどうかと思うんです。そういうことから、だんだんみんなが、なるほどこういうのはやはりやらなければいかんなというように説得していかないと、方法ありきと、これでやるのだ、外国でやっているから、では、なかなか理解は得られないと思うので、そういう努力を積み重ねていっていただきたいということを要望としてお願いしておきます。

【塩田委員】 個別の政策の効果の測定の問題で、今、佐和委員から、なかなか個別の政策の効果の測定は容易でないというお話がございましたが、そういうことでやっていると、結果はよくないのではないかという気がいたします。1つずつの政策の効果が、6%の削減にどの程度寄与しているかということは、すべての政策については無理でしょうが、ある程度のレベル以上の寄与をする政策については、その効果を時系列的に把握することが必要であると思います。
 交通の分野について申し上げますと、交通は大体1/5ぐらいのウエートだと思いますけれども、そのほとんどが自動車の関係ですから、今、大気汚染の測定局、一般大気測定局と自排局が、そこのデータをできるだけ精密にとるようにして、どういう状態のときに排出ガスがたくさん出ていくかということを、フォローしてみると、場所と時間によって、かなりいろいろなことがわかってくるのではないかと思うのですが、そういうこと
を環境庁さんはお考えになったことがあるかどうか。
 私はその関係で特に申し上げたいのは、交差点が混雑することによって、自動車の走行時間が極端に違うんです。10kmぐらいのところが10分で行けるか、2時間ぐらいかかるかということはしょっちゅう起こっているわけですから、その場合には、多分、同じ走行目的を達するためのCO2 の排出量は10倍ぐらい違うだろうと思うわけです。問題がある交差点に限って、その近くに自排局を沢山設置して、そこのデータを精査をするとCO2排出量増大の原因がわかってくる。そうすると、車の交通量が増えたのが原因か、渋滞が増えたのが原因かとか、そういうことがわかれば、対策も検討しやすいのではないかと思います。そのような具体的な政策による効果も把握していかないで、トータルで計算してみて初めて排出抑制量が6%に達するかどうかということですと、それぞれの政策と温室効果ガスの削減との因果関係がはっきりしないので、政策の推進を期待しにくいのではないかと思います。

【安原委員長】 ありがとうございました。まだ御意見があるかと思いますが、もうお一方御説明をお願いしておりますので、そちらのテーマに移りたいと思います。それでは、浅岡委員、お願いします。「産業界の取組と実効性確保の方策について」ということでございます。

【浅岡委員】 前回、前々回等から、経団連の環境自主行動計画の評価あるいはそれに対する考え方、今後の対応ということについて随分議論になりました。いわずもがなかなとも思うところがありますけれども、我々も6%削減を市民側からの提案を考えている途上でありまして、そのプロセスで検討している部分から若干申し上げたいと思います。
 前回も寺門委員から、産業界、経団連を中心にして大変熱心にやっているのであるから、そういう自主的な活動を尊重すべきである、素直に受け取るべきだというお話がありましたが、それはそれとして、それが目標達成されない場合は一体どうなるのだろうかということから考えますと、それは今のところ、経済界からの一方的な宣言文書であるという性格よくみておかなければいけないと思いますので、そうした趣旨の説明をさせていただきます。
 まず、前提として、日本の場合、産業界からの二酸化炭素の排出構造についての特徴を改めて確認いたしますと、大変読みにくい文章で失礼しますが、98年度のCO2排出のうち、エネルギー転換部門と産業部門、製造部門からが約60%、をエネルギー転換分を最終需要で配分いたしますと、エネルギー転換から6.9%、産業部門から40%、あと民生、運輸等にばらまかれるということであります。そういう意味で、エネルギー転換部門と産業・製造部門、工場等、廃棄物処理・工業プロセス等を合わせますと、6割を超えているというだけではなくて、先ほど民生部門、運輸部門の対策が大変だというお話がありましたが、民生も約半分は業務部門でありますし、運輸部門も約半分は業務関連の自動車等であるということからしますと、全体の約80%が、産業部門における製造ないしは業務に関連して排出されている。約8割について産業界のイニシアティブで排出削減の効果を発揮する可能性があるという点では、非常に重要な役割を担っておられることから、そこがリーダーシップをとってくださることを私どもは期待するわけです。
 経団連の自主行動計画の中で、31業種からの排出が全体の42%であると報告されています。1990年レベルで日本全体の42%を占め、産業部門・エネルギー転換部門の75%を占めるということであります。逆にいえば、産業界関連の80%のうちの残り40%部分というのは、どこに入っているのかということになりますが、経団連の自主行動計画に加わっていない業界と加わっている事業者の民生業務部門とか運輸部門にばらまかれている部分もあり得るのかなと理解した方がいいのかなというつもりでおりますけれども、間違っていたら、御指摘いただきたいと思います。
 そういう全体の枠組みの中で、自主行動計画というのはどういう特徴をもっているか、改めて確認しておきたいと思います。これは全体として、31業種が「2010年度にCO2 排出量を90年レベル以下に抑制するよう努力する」というのが目標である。そういう意味で努力目標であるということが全体としての枠の中にあります。
 個別業種は、31業種とか42業種ということで細かく報告書を見せていただきましたけれども、業界ごとの目標の中に入っているシェア率というのは、参加企業数ではもっと大きくばらつきがありますが、エネルギー消費量とか排出量のシェアでいきますと、30%ぐらいから100%まで、これもなかなか大きなばらつきが実際あるようであります。
 何よりも大きなのは、目標に大変ばらつきがあるということであります。4ページから8ページまで、CO2 排出量を目標数値に掲げている業界、CO2 排出原単位をとっている団体、エネルギー消費量を目標にしている団体、エネルギー消費原単位を目標にしているところ、さらに、それにも入らないで独自の目標を立てているところ等、大きく目標設定の仕方も分かれておりますし、CO2 排出量におきましても随分いろいろな数値のかけ方があります。総量で書いているところとか、削減率で書いているところとか、ばらばらでありますし、中には目標年もいろいろになっていたりします。という意味で、大変いろいろでありまして、これらが全体として、先ほどの大きな目標、2010年度に90年レベル以下に安定化する、90年排出水準に抑える、0%にするということ、どこでどう計算するとそうなるのかというのが我々にはわかりません。わかるように説明してもらわないと、「こうなりますから信用してください」と言われても、難しいのではないかという点がそもそもあります。
 その上に、目標の中にも、電機事業連合会など、これは努力目標であるということを明示している業界もそこそこにあります。いくつか気づいたところをピックアップして1ページ目に書いておきましたので、また後で御覧いただきたいと思います。そういう意味で、全体として、結果的にこれがどうなるのかという点はなかなか難しいということがあります。また、大きく漏れている業界もあります。それから、排出量で減らすというのは、生産量が減ったから減ったというのであれ、減っていけばそれはいいということになるのかもしれませんが、排出原単位を採用している業種は、生産量が増加するということを前提にして計画を作っておられる。CO2 排出量としては増える、しかし原単位はよくなるという形になっていましたり、そもそも自然体として相当に下がるが、それよりも原単位は少し緩やかにしか下げられないとして原単位目標が出ているというように見受けられます。こういう目標の立て方そのものが適切なのだろうかという議論が必要だと思います。
 98年分の報告では、CO2 排出量が減少している業種は、生産減によるものだという
自己評価をしている業種も相当にありましたので、その要因が大きかったのかと思います。近く99年分が公表されると思いますが、少し増えていくという予測も聞いておりますけれども、90年、2000年とを合わせて、だんだんとその辺は評価されてくるでしょう。
 もう1つ非常に大きな問題は、電力の原単位が変化することによって排出量が下がったり排出原単位が変わったり、そういうところに計算のあやのようなものがありまして、その業種自身の努力分の評価が必ずしも今の目標達成率の中には見えていないというものがあります。そのあたりは少し気づいたところを書いておきました。
 掲げている目標を既に達成しているような業種さんもいらっしゃって、今後2010年までにもっと増やすということが今の目標になっているわけですね。
 それに、原単位データの開示がない業種や、目標以外のデータはもう出さないということで徹底している業界もある。そういう意味で、先ほど宮本委員から、データを収集しながらチェックしていかなければいけませんといわれましたが、そのためにも、データを開示するシステムづくりが本当に大事だなと思ったところであります。
 細かく申す時間もありませんが、あくまでこれは自主的な努力宣言であって、それはそれで尊重したいと思いますけれども、その結果は実際どうなるのか、やってみなければわからないということでは、議定書の批准において、産業界の排出が全体の8割を占め、主要業種による経団連関係がその約半分関わっているということからみますと、全体のコンプライアンスに関わるということになってくると思います。そのことが議定書の発効に向けた交渉におきまして、日本がコンプライアンスにおきまして大変特異なる消極的な態度をとっていることにもつながっていると思います。強制的な措置といいますか、不遵守に対する措置は、政策措置の勧告にとどめるというものです。まると。勧告というのは、法律的には、とても強制措置とはいえません。お勧めでありますので、コンプライアンスという発想にはなじまないものなんですが、一生懸命交渉で主張しています。その立場は日本ぐらいですので、非常に違和感を国際的に抱かせていますが、それも、経団連自主行動計画に依存していていることに大きく起因しているのではないかと思います。
 このように、透明性を補充していくシステム的な問題と併せて、一方的な宣言から、国民や政府に対して約束をするという仕組みにすることが求められていると思います。そこで、自主行動計画から協定化が求められているものです。目標の妥当性についてももっと議論がなされないといけないと思いますし、その目標を守るべき約束とすることも必要です。ギュウギュウ締めるばかりではなくて、約束を達成したところに対しては、メリット、御褒美があるというシステムも入れたらいいと思いますし、しっかり努力しようとするという方向で取り組むところには、先ほどから議論がありますように、炭素税等で配慮するということも十分出てくる。このあたりを柔軟に組み合わせを考えるというところがポリシーミックスとして大事なところになるのかなと思います。
 協定すればいいということではなく、この間ずっと議論が出ていることでありますけれども、約束の履行の担保のために情報を公開し、共有して、更にとり得る対策を広く議論して、一定の段階で変更する措置も加えていく。
 もう1つ、産業界に対して、約束を守れない、あるいは協定化がいやだというところに
対するムチといいますか、厳しい措置として活用できるかなと思うのは、炭素税もありますけれども、省エネ法の事業者ごとの1%ずつ効率改善していくという現にある規定を、本来の法の趣旨に従って、しっかり実効性あるものにして、罰則等の適用も含めて、本来の形で適用していくということもありますし、1年で考えないで、2~3年単位で考えていくことなど、省エネ法の事業者ごとの1%効率改善という仕組みが活用できるのかなと思ったりしています。
 最後に1枚付けましたのは、国内対策で6%削減ができないとおっしゃるけれども、そうだろうかということを、NGOとして検討したものです。どれくらいの費用をかけて、どういう対策をとれば、どれくらいでその対策コストが回収できるかを検討しました。結構短い期間で、2~3年ぐらい、せいぜい3~4年ぐらいで費用を回収できて、燃料費等の節約分がむしろメリットになって返ってくるというものだけでも十分達成できるのではないかという計算です。29日にその報告をする機会をもつ予定で、内部で議論しているところです。政策措置の欄で「新規」と書いてありますのは、今の大綱の中にないもので、こういうものを加えましょうという項目であります。右の方の5番目のところに斜線がありますのは、現在の大綱に基づく対策について、前々回でしたか、環境庁サイドから出された評価書の中に丸が付いていた部分でありますけれども、できるだけ左の欄の目標達成に信頼性のあるような仕組みと、啓発等の右の欄の取組みとを組み合わせながらやる。啓発だけに頼るような形では実現できません。余り数字に目を置いていただかないで、全体的に、どういう対策を強化しいくということを、これは中途のもので、確定的なものではありませんけれども、御参考までに提起したいと思います。
 最後に1点、こういう議論をしながら、私たちなりに勉強しておりますのは、対応策というのは1つではないといいますか、様々、バラエティがあり得る。その選択には、タイミングもありますし、組み合わせ方も様々ある。そういう気持ちをもって考える必要があるなということを学んでいるところでございます。

【安原委員長】 浅岡さん、どうもありがとうございました。それでは、ただいまの説明に対して御質問、御意見がございましたらお願いしたいと思います。
 残念ながら今日は寺門委員がお見えにならないのですが、宮本委員、何かございますか。

【宮本委員】 私は産業界の代表で出ているわけではないのですが、今のものを聞かせいただいて私は思うのですが、産業界がどうとか、企業がどうとかいいましても、結局、最後の製品はすべて国民のものになっているわけです。だから、国民が一番利益を得て、環境がよくなる方法がどうであるかということが、持続可能な社会の実現というのになっているんですね。産業が多いからというのは、工業製品をたくさんつくれば当然出てくるわけですから、それはそういうことになるだろうと思うので、それが多いの、少ないのというよりも、天野先生がおっしゃったように、今後の限界費用が一番安いものにもっていくというのが、国としての選択肢だと思うんです。だから、本当はそういうようなトライができれば一番いいと思うのですが、なかなかそういうふうには決定的にできないということがあって、いろいろな手法なり、いろいろな対策が考えられていると思うのです。そのような手法で果たしてどのぐらいの金がかかって、どのような効果があったか、これが環境会計なんですね。そういうところ辺がずっと出てくると、国全体として最も効率的な対応対策は何かということが出てくる。そういう体制に今全体が動きつつあるのではないかと思います。環境会計を相当入れている企業もありますし、また、自治体でもそういうものを検討しているところもあるわけですし、環境庁もそれを推奨されているわけですから、そのような動きを見ながらやっていくのが1つ。
 もう1つは、自主取組というのもまだ始まってそう長くないわけですし、それの一例としては、PRTRなどはわりにうまく成果が上がった方だと思いますので、ああいうようなことを初めから悪だと決めつけたり、大きいから抑えた方がいいというような考え方でなしに、もっとその辺の分析をしながら、私が前から言っているのは、分析をした上で方向を決める。しかし、それは時間的余裕がない、だから早くやれということになるのですが、そういうことをやりながら進めていく方法が一番重要ではないかと思っています。
 もう1つは、原単位で出しているところと総量で出しているところというのは、確かに将来は方向としてまとめていかなければいけないでしょうが、その業界業界の今までの経緯もいろいろあるんでしょう。だから、最初から一律にできるというのはどうかというのは問題がありますが、これは今の問題でなしに、もう2~3年たてば、最終的には環境庁さんがどのようなバランスがいいのかということは試算されるべき性質のものではないかと思うんです。だけど、それを規制するということが、果たしてこれからのサステイナブルにつながるのかという議論は十分あると思うのですが、そういうことを考えてみると、今まさに動き出して成果が上がり出した。省エネルギー法とかリサイクル法とか、そういうものも出てきた。そういうものの分析の中から方法というのは出てくると思うので、今、最初から規制ありきとか、最初から協定ありきとか、そういうのには業界というのはなかなかなじまないし、それをやると、かえって、今急にやると後で損だからゆっくりやろうかなと、そして、そのときにぜい肉をもっと切った方が得かなというような考え方に移る可能性は非常に高いと思います。だから、その辺は十分考えながら、今まじめにやろうとしている業界の動きというものも評価して十分いいのではないかと私は思います。コメントとして。

【佐和委員】 今の浅岡さんに対するコメントですが、重要な問題で全然考えの中に入れておらないようなことがいくつかあると思います。1つは、産業構造の変化、転換というのですか。明らかな傾向として、例えばGDPに占める製造業の比率は低下傾向にありますし、今日は寺門さんがいらっしゃらないので言いやすいのですが、製造業の中でも鉄を始めとする素材型産業の比率は明らかに減るんです。ですから、そういうことで、同じGDPが仮に一定程度の成長率で成長しても、エネルギー消費あるいはCO2 の排出量は今までのような勢いでは伸びない。むしろそういう産業構造の転換というのは、産業部門のCO2 排出を削減する方向に働く。それをなぜ考慮に入れられていないのかということが1つ。
 もう1つは、ライフスタイルの変化です。私はこれも繰り返し言っていることなんですが、家庭電化製品の大型化とか、エアコンがどっと普及したとかいうのもそろそろ飽和状態に近づきつつあると思うんです。だから、今までの傾向がこうきたから、こういくというわけにはいかない。例えばエアコンでいいますと、普及率が85年に100世帯で80台だったのが、10年後の95年に160台になったんです。だれも2005年に320台になるとは思わないですよね。1部屋に2つつけるような人はまずいませんから。そういうこととか、自動車の大型化とか燃費効率の悪化というのも関わっていて、かつての「シーマ現象」が「ヴィッツ現象」になっている。こういうのもある意味で1つの消費者のライフスタイルの変化だと思うんです。そういうことの効果というのは非常に大きいと思うんです。
 繰り返しになりますが、産業構造の転換とライフスタイルの変化。私はそういう意味で6%削減ということに対して人一倍というか、人十倍ぐらい楽観しているんです。余り大変だ大変だということを政府も言いすぎているのではないか。ですから、例えば10年先のことを考えるときに、10年というのは長い期間ですから、10年先までに、もちろんいろいろな対策を講じなければいけない。それこそだめ押しをする必要があると思いますけれども、ビジネス・アズ・ユージュアルとして政府が想定されている値が余りにも大きすぎるという気がするんです。

【安原委員長】 ありがとうございました。
 それでは、予定の時間に近づいておりますので、今日は、産業界の取組に対するいろいろな改善措置の御提案をいただきましたが、寺門さんもいらっしゃいませんので、寺門さんが恐らく次回お見えになると思いますので、この問題についてはまた次回に議論を継続したいと思います。
 議題の2番目でございますが、あと15分ぐらい延長していただいて、せっかく用意していただきました資料の説明だけ事務局からしていただきまして、これに対するコメントをまた考えておいていただいて、次回の議論に譲りたいと思います。説明だけお願いします。

【地球温暖化対策推進室長】 それでは、15分間延長の時間をいただいて、資料2について御説明いたします。
 資料2は、削減対策の推進メカニズムの現状と課題ということでまとめたものでございます。1ページに主旨が書いてございますが、今も産業界、民生、運輸に係る部門別の様々な特徴についての御議論がありましたけれども、そのとおりに部門ごとに対策、推進メカニズム、見積もり削減量それぞれ特徴があり、異なっているわけです。そこで、今後どういう対策を講じるか、その対策を推進するためのメカニズムをどう打っていくかということの前提として、まず現状の推進メカニズムについて、どういうものが打たれていて、そこにどういう課題があるかということを整理したものでございます。
 併せて、本日、参考資料1として、本年6月に企画政策部会の地球温暖化対策検討チームでおまとめいただきました報告書を用意してございます。既にこの報告書の中でも、環境基本計画に基づく対策の実施状況ということでのレビューがございますので、それと照らし合わせながら御覧いただければと思います。
 それでは、1ページ目の上は、1~6の部門に分けて検討しております。
 下半分は、前々回の小委員会でも御説明いたしましたし、推進メカニズムを私の方で分類したA、B、C、D、Eという定義であります。
 2ページ目は、先ほどから出ております、政府で現状持っている当面の対策の概要ということで、それぞれの部門ごと、対策ごとの排出削減量の見積もりでございます。
 それでは、3ページの産業部門に移ります。これは先ほどの参考資料1でいきますと、13~14ページの「二酸化炭素排出の少ない生産構造の形成」というところに対応するものでございます。
 資料2に戻りますが、産業部門につきましては、我が国の温室効果ガス排出量の約36%を占めております。これは6種類のガス総体の排出量に占める割合でございます。
 4ページには、これまでのトレンドと、BAUと対策ケースの点線での将来予測がグラフとして示されております。
 また、3ページの1-2には、現行の推進メカニズムの分析が表にまとめられておりますし、それに対応する形で、4ページの右下には、我々の推進メカニズムの分類を施した形でのどれに当たるかという丸を付けた表があるわけでございます。
 3ページの下半分の「主要な課題」というところでございますが、産業部門全体として7%削減ということが現在の対策ケースの目標になっております。これを確実に実施していくためには、どんなメカニズムを講じることが適切か? その際、既存の仕組みをどのように活用していくか? ということで、現在の温暖化対策推進法に規定されている「事業者の計画」、省エネ法における措置、自主行動計画、こういった仕組みがあるわけですが、これをどういうふうに活用していくべきか? ということが課題として挙げられます。
 [2]対策をやっても、予定された削減量が不足した場合、目標に達しなかった場合、どういう措置を講じることが適当か? ということがあります。これについては、他の部門でも全く同じような記述になってございます。
 [3]産業部門の中での公平性、部門間での公平性をどのように考えるのか? ということで、自主行動計画に入っている事業者と入っていない事業者との公平性をどう担保するか? また、部門間の他の部門との公平性をどう考えるか? ということがございます。
 最後に、我が国の経済、国民生活に与える影響をどのように考えるか? これも他の部門と全く共通の課題として挙げております。
 5ページ、6ページには、参考として、先ほど来議論の中でも言及されております経団連の環境自主行動計画について簡単にその概要を触れております。5ページの上の方に書いてありますが、経団連の自主行動計画は産業部門を中心とした自主的取組でありますけれども、民生・運輸部門についても一部含まれているということで、それを6ページに、民生部門、例えば不動産協会の目標とか、運輸部門の日本船主協会、定期航空協会といったものも含まれておりまして、民生・運輸部門は中小の排出事業者が多いわけですが、場合によっては非常に大口の排出事業者も含まれておって、その自主的な計画が現に進められている。ということをお示ししたものでございます。
 7ページにまいります。民生部門、これは業務部門と家庭部門がありますが、これは参考資料1でいきますと、8~12ページの「二酸化炭素排出の少ない都市・地域構造の形成」、16~17ページの「二酸化炭素排出の少ないライフスタイルの実現」、この両方に関連するものでございます。
 資料2に戻りまして、民生部門は、我が国の温室効果ガス排出量の約22%を占めております。そして、今後の対策ケース、BAUの伸び、これは8ページにあるような伸びが予測されているということでございます。
 また、現行の推進メカニズムについても、7ページ、8ページの表にあるとおりでございます。
 7ページの「主要な課題」でありますが、民生部門の場合に、その上の2-2のところにあります表を御覧いただきますと、Bの「定量的基準と普及促進施策がある、又は自主的取組」というところ、これは住宅・建築物の省エネルギー性能向上というところがこの部門の全体の38%と、最も大きな削減が見込まれているわけです。したがって、全体に対する寄与も多いわけですので、まずはこれを確実に進めていくためには、どのような推進メカニズムが必要か? ということが第1の検討課題になろうかと思います。
 次に多いのはAの「省エネ法に基づく機器の効率改善」、これは現在も、法的な担保があるということで進められているわけですが、問題は、Dの冷房を28度にするとか暖房を20度にするというのが、国民、事業者の行動に依存する不確実性の高い部分について、
より確実な削減を進めていくためには、どのような推進メカニズムが必要か? これが挙げられます。
 [3]、[4]、[5]は、先ほどの産業部門と全く同じ課題でございます。
 続きまして9ページには、関連するグラフとして、90年から最新の98年までのエネルギー消費量とCO2 排出量を示したものでございます。上が家庭部門、下が業務部門であります。エネルギー消費量、CO2 排出量はほとんど正比例で推移していくといわれているわけですが、この4~5年を見ますと、電源の構成比率の変化等から、CO2 排出量
は減少もしくは横ばいでありますけれども、エネルギー消費量だけを見ますと、必ずしも減少に転じたというところにはなっていないわけですので、エネルギーの消費をこれからどうやって抑えていくかという観点は、我々としても持ち続けていく必要があるのではないかということをお示ししたかったためのグラフでございます。
 11ページにまいりまして、運輸部門。これは参考資料1の10~13ページの「二酸化炭素排出の少ない交通体系の形成」に対応するものでございます。
 運輸部門からの温室効果ガス排出量は、我が国全体の排出量の約19%を占めております。トレンドは、資料2の13ページに飛びますが、過去ほぼ右肩上がりでずっと伸びてきておりまして、このままですと、BAUケースに非常に近いトレンドを示しておりますが、対策ケースでは90年度比17%増まで抑えるということになっているわけです。
 戻りまして、11ページの3-2に「現行の推進メカニズムの分析」というのがございますが、運輸部門の場合、非常に対策が複雑に入り組んでおりまして、これだけ見て全体のイメージがつかめるというものでございませんので、これを補足する意味で、12ページの右上に少しこれをかみ砕いた図を用意してございます。もちろん運輸部門の最大の排出源は自動車でありますので、まず交通量を減らすこと。そして、1台1台の排出原単位を改善する。この2つが柱になるわけですが、そのための対策としては、物流効率化から最後の燃費改善まで様々な対策がありまして、これも必ずしも独立に存在していないわけでして、相互に関連しながら削減効果につながっているわけです。
 さらに、これをもう少し束ねたものが一番右のものでありまして、ユーザー、このユーザーには我々国民も入りますし、事業者も入りますが、自動車を使う人という意味であります。ユーザー自らの取組に委ねられているもの。主として公共事業等でインフラを整備することによって改善が見込まれるような対策。さらには、省エネ法の効率規制ということで、法的な規制がなされている。こういうふうに分けられるだろう。
 こういうふうに見ますと、12ページの中ほどにございますように、ユーザー自らの取組に関連する排出量というのは、実は運輸部門全体の80%を占めていることがわかります。もちろんこれはユーザーだけがやれば対策が進むというものではありません。ユーザーが関わってくるというものでございます。
 それから、追加的なインフラを整備するということで、公共事業もありますし、共同輸配送施設といったようなものもありますが、こういうものに関連するものが46%あるということを見ますと、こういう切り口から考えての課題の整理ができるのではないかということで、12ページの3-3にありますように、ユーザー自らの取組に依存する不確実性の高い部分について、削減をより確実なものにするためにはどうしたらいいのか? ということがまず1番目に挙げられる。
 2番目には、インフラ整備をより確実にするためには、どのような推進メカニズムが必要か?
 3番は少し具体的でありますけれども、省エネ法による燃費効率の達成をより確実にするために、現在もいろいろと議論がなされております自動車の関連税制を環境に配慮したものに改正することが必要ではないか? という1つの課題であります。
 [4]、[5]、[6]は、先ほどと同じ課題を挙げております。
 14ページは、先ほどの推進メカニズムの現状を少し細かく対策に割り振ったものでございます。既にお示ししたものでございますので、説明は省略させていただきます。
 15ページにまいりまして、エネルギー転換部門。これは参考資料1の14~16ページの「二酸化炭素排出の少ないエネルギー供給構造の形成」に対応いたします。
 エネルギー転換部門の排出量全体に占める割合は、配分前で約26%、電力として配分した後の自らが排出しているものとしては約6%となります。
 トレンドは、16ページにあるとおりでございます。
 15ページの4-2、「現行の対策の分析」ということで、これは原子力の立地推進、原子力発電の稼働率の向上、新エネルギーの普及促進等の理由から、発電量当たりのCO2の原単位の改善が進んでいるということが現状あります。
 それを示したのが16ページの下のグラフでございます。このように大きくは減少傾向にあるだろうということであります。
 また、この排出原単位が下がるということは、末端で使うユーザーの立場からすると、最終消費部門では、同じ電力消費量であっても、原単位が下がると、CO2の排出量が下がるという効果をもたらすという意味がある。その根拠、を述べているわけです。
 また、自らも電気事業者の所内電力等の対策をやっておられるということを記述しております。
 そして「主要な課題」として、今申し上げた発電量当たりのCO2原単位の改善につながる対策をここに例としていくつか挙げておりますけれども、このような対策を一層推進するためには、どのような推進メカニズムが必要であろうか?
 [2]として、これは最終消費部門での電力消費量を減らすということを確実にするために、エネルギー転換部門としても何かできるようなことがないか? その推進メカニズムが必要ではないか? ということで、普及啓発、情報提供、料金制度の活用といった工夫ができないか? ということを課題として挙げさせていただいております。
 17ページ、18ページは、非エネルギー起源のCO2及びメタン、一酸化二窒素の排出ということで、これは全体に占める割合は9.5%であります。トレンドは、18ページのようなことになっております。
 現状でも、工業プロセス(セメント等のプロセス)、廃棄物、農業部門で様々な対策、調査検討が進められているということが紹介されております。
 また、5-3では、「主要な課題」として、これはほかと全く同じような記述でありますけれども、[1]~[4]のような課題がこの分野にも当てはまるのではないかということであります。
 最後に19ページ、20ページは、HFC、PFC、SF6の排出であります。これは参考資料1で該当するところは17ページ以降になります。この分野では潜在排出量ということになりますけれども、全体の7.4%、占めているということであります。トレンドを御覧いただきますと、過去5年間は少しなだらかな下り坂になっておりますけれども、今後、特定フロンの代替物質としての利用が拡大されてくることが予想されますので、それを見越してBAUケースも、また、対策ケースも右肩上がりという予測になっているわけであります。
 この3ガスについても、産業界の自主行動計画に基づく対策が講じられているということでございますが、6-3の「主要な課題」として、20ページにありますようなことで、BAUケースですと、95年度比で120%伸びるところを50%増まで抑える。これが温室効果ガス全体では2%のプラスということに対応しているわけですが、この2%程度にとどめるというのが当面の目標でありますけれども、これを踏まえて、一層の削減を進めていくためには、どのような推進メカニズムが必要か?
 [2]で、これは一昨年に化学品審議会の中間報告で出されたものでありますけれども、最大限の努力をした場合には、2010年で95年比でやや増加する程度に抑えるということになっております。ですから、自主行動計画等において現在進められている対策をより確実なものにするためには、どのような推進メカニズムが必要か? ということであります。
 [3]、[4]、[5]は、先ほどとほぼ同じようなことでございます。
 併せて、HFCにつきましては、現在、特定フロンを中心とした、冷媒で使われているフロンについての回収をより確実に進めていくために、自民党を中心としまして、法律の制定の検討が進められております。その中で、HFCについても代替フロンとして今後伸びることが予想されるので、これも回収の法律の対象にすべきであるという議論がかなり出てきておりますので、その暁には、冷媒用のHFCにつきましては、その回収が法律で義務づけられていくというような形で、かなり強制力をもった対策がこの分野では先行して進められるという可能性が高いわけであります。そのことを御紹介しておきます。
 以上で、長くなりましたけれども、御説明を終わらせていただきます。

【安原委員長】 ありがとうございました。
 それでは、時間の関係もございますので、今説明いただきました資料2についての議論は次回に譲りたいと思います。
 今日はいろいろなテーマにつきまして貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。いただきました御意見は、ポリシーミックスのたたき台に反映させていただきたいと思っております。
 今日御発言がありませんでしたけれども、こういう意見があるということでございましたら、事務局の方にどんどん御連絡をいただければ幸いでございます。
 それでは、今日はこのぐらいで審議を終わりたいと思います。
 次回は、11月6日(月)の午後3時から5時までの会議を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。場所は未定で、追って御連絡させていただきます。
 それでは、これをもちまして閉会とさせていただきます。大変熱心なご討議をいただきましてありがとうございました。

--了--