第1回地球温暖化防止対策検討小委員会会議録

 
 
1.日  時  平成12年8月23日(水)10:00〜12:00

2.場  所  環境庁22階第1会議室

3.出 席 者
   (委 員 長) 安 原   正
   (委   員) 浅 岡 美 恵      浅 野 直 人
           天 野 明 弘      太 田 勝 敏
           佐 竹 五 六      猿 田 勝 美
           佐 和 隆 光      塩 田 澄 夫
           品 川 尚 志      寺 門 良 二
           西 岡 秀 三      松 野 太 郎
           松 原 青 美      宮 本   一
           村 上 忠 行      横 山 裕 道
 
   (事 務 局) 浜中地球環境部長
           竹本地球環境部環境保全対策課長
           一方井地球環境部企画課長
           石飛地球温暖化対策推進室長

4.議  題
  (1)小委員会の検討方針について
  (2)諸外国における地球温暖化対策と推進メカニズムの現状
  (3)我が国におけるポリシーミックスの検討事例
  (4)我が国における地球温暖化対策と推進メカニズムの現状
  (5)我が国における温室効果ガスの排出構造

5.配 付 資 料
資料1 「地球温暖化防止対策の在り方の検討に係る小委員会」委員名簿
資料2 今後の検討方針について
資料3 諸外国における対策と推進メカニズムの現状
資料4 IGESオープンフォーラムの概要
資料5 IGESオープンフォーラムでの主なポリシーミックスの提案の概要
資料6 我が国における地球温暖化対策と推進メカニズムの現状
資料7 我が国における温室効果ガスの排出構造
参考資料1 環境基本計画の見直しに係る「地球温暖化対策検討チーム」報告書
参考資料2 「環境政策における経済的手法活用検討会」報告書(概要版)
参考資料3 「排出量取引に係る制度設計検討会」報告書
参考資料4 今後の温暖化防止対策の在り方について(中間答申)
 

6.議  事
【安原委員長】 それでは皆さん定刻となりましたので、まだ何人かの委員の方お見えでございませんが、追々お見えになると思いますので始めさせていただきたいと思います。
 きょうは大変お暑い中、ご多忙のところご出席をいただきましてありがとうございました。ご案内のとおり、中央環境審議会の企画政策部会のもとに「地球温暖化防止対策の在り方の検討に係る小委員会」というのが設置されたわけでございまして、その会合の第1回目でございます。私は森嶌部会長からこの小委員会の小委員長を拝命いたしました安原でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは始めに浜中地球環境部長よりごあいさつをちょうだいしたいと思います。どうぞよろしく。
 
【地球環境部長】 おはようございます。環境庁地球環境部長の浜中でございます。本日は地球温暖化防止対策の検討に係る小委員会第1回会合に大変委員の皆様方お忙しい中、お集まりをいただきましてまことにありがとうございます。
 今さら申し上げるまでもないことでございますが、地球温暖化問題は、人類や生態系の存続に深刻な影響を及ぼすおそれのある地球規模の重大な課題であるというぐあいに認識をしております。中央環境審議会の先生方のご指導をいただきながら、環境庁においてはさまざまな取り組みを進めてまいりました。3年近く前になるわけでございますけれども、平成9年12月、地球温暖化防止京都会議、いわゆるCOP3がございまして、その結果を踏まえて、この中央環境審議会におきましては今後の地球温暖化防止対策のあり方について環境庁長官から諮問を申し上げ、ご審議をいただいた結果、平成10年3月に中間答申をいただき、それに基づきまして政府におきましては「地球温暖化対策の推進に関する法律案」の策定を行い、国会でご審議の上、この法律が制定をされたわけでございます。この法律は昨年4月に施行されまして、現在この法律に基づいて閣議決定されました地球温暖化対策に関する基本方針、あるいは政府としてやはりCOP3の成果を踏まえて合意をいたしました地球温暖化対策推進大綱に基づく各種の国内施策を関係省庁挙げて推進をしているところでございます。
 このような国内対策というものが各界のご努力によって進められたということもございまして、我が国の温室効果ガスの排出量は1998年度、エネルギー消費に伴う二酸化炭素排出量の速報値で見ますと、前年に比べて3.5%減少をしているということでございます。政府としてはこれ以上の新しいデータはございませんが、民間の調査機関の速報データ等によりますと、99年度は若干これがまたリバウンドと申しますか、少しふえているというようなことも一部そういうことが出ているようでございますが、いずれにいたしましても多少の減ったふえたということはあるにしろ、依然として1990年度に比べますれば、かなり上回っていると。98年度で見ましても、5%以上上回っているということでございますから、6%削減目標という京都で約束したこの目標までの隔たりというものは非常に大きいという現状であろうかと考えております。
 一方、国際交渉の面に目を移してみますと、京都議定書を実施に移すための具体的なルール、これを定めようということで国際交渉が進められておりますが、昨年11月ボンで開催をされましたCOP5、それからことし4月に滋賀県大津で開催をされましたG8環境大臣会合におきまして、我が国はCOP6においてこれらのルールに合意をして、京都議定書を2002年までに発効させることの必要性というものを表明をし、多くの国からも同様の主張があったわけでございます。京都議定書早期発効のためには、各国が京都議定書を確実に締結することが前提でございますが、そのためには排出量取引などの京都メカニズム、あるいは遵守、吸収源の取り扱いなどについて関係諸国が締結しうる内容のルールに合意することが必要であります。このような合意を実現し、COP6を成功させることに向けまして、現在、国際交渉に積極的に貢献をしているところであります。
 さて、2002年までに京都議定書の発効の必要性を主張している、こういう我が国といたしましては、みずからも2002年までに京都議定書を締結することが必要であり、そのためには議定書の6%削減目標を確実に達成するための国内制度の確立が不可欠であります。このため一方でCOP6に向けた国際交渉を鋭意進めながらも、同時にこうした国内制度の確立のための検討をさらに進めることが喫近の課題となっております。
 現在、中央環境審議会企画政策部会において環境基本計画の見直し作業が行われておりますが、その一環として地球温暖化対策について検討が行われ、平成12年6月に報告書が作成をされたところでございます。この報告書におけるご提言も踏まえまして、本小委員会では6%削減目標を遵守するための国内制度のあり方、例えば自主的な取り組み、あるいは税排出量取引といった経済的な手法、規制的な手法、環境投資など、さまざまな政策手法の適切な組み合わせ方、あるいはこうしたポリシーミックスを適切に実施するための仕組みなどについて、ぜひ先生方にご審議をいただき、国内制度の確立に向けた総合的、戦略的な地球温暖化対策についてのご指導をぜひいただきたいと考えている次第でございます。
 そのような意味で本日第1回の会合でございますが、先生方の忌憚のないご意見、ご審議を賜りたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 以上でごあいさつとさせていただきます。
 
【安原委員長】 浜中部長、どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入ります前に、本日の資料の確認を事務局からお願いいたします。
 
【事務局】 では、資料の確認をさせていただきます。まず資料の1番目といたしまして、地球温暖化防止対策の在り方の検討に係る小委員会の委員の名簿をつけさせていただいております。資料の2といたしまして、本小委員会における今後の検討方針についての資料でございます。資料の3番目が諸外国における地球温暖化対策と推進メカニズムの現状の資料でございます。資料の4番目がIGESのオープンフォーラムの概要の資料をつけさせていただいております。資料の5といたしまして、IGESのオープンフォーラムにおける主なポリシーミックスの提案の概要についての資料をつけております。資料の6番目といたしまして、我が国における地球温暖化対策と推進メカニズムの現状の資料をつけております。最後資料7といたしまして、我が国における温室効果ガスの排出構造についての資料をつけております。なお参考資料といたしまして、環境基本計画の見直しに係る地球温暖化対策検討チームの報告書を1番目の資料として、参考資料の2番目として環境政策における経済的手法活用検討会の報告書、概要版ではございますけれども、つけさせていただいております。参考資料の3番目といたしまして、排出量取引に係る制度設計検討会の報告書をつけさせていただいております。3−1として概要版、3−2として本体をつけております。最後に参考資料の4番といたしまして、今後の地球温暖化防止対策のあり方について、平成10年に出されました中間答申についてつけさせていただいております。
 資料は以上でございます。
 
【安原委員長】 もし不足するものがございましたら事務局に申し出ていただきたいと思います。
 それでは今回この小委員会にご参画いただきますメンバーにつきましてはお手元の資料1のとおりでございまして、20名の方に参画をいただいております。既にお互いにもうご存じだと思いますので、ご紹介は省略させていただきます。
 では、ここで資料2にお配りしておりますが、本委員会の検討方針につきまして、まずご説明させていただきます。
 本小委員会は、中央環境審議会企画政策部会のもとに設置され、地球温暖化防止対策のあり方について検討するというのが任務でございます。具体的には京都議定書の締結に必要となる6%削減目標を遵守するための国内制度の一環として、ただいま部長からも言及がございましたように、自主的取組、税、排出量取引等の経済的手法、規制的手法、環境投資など各種の政策手法を組み合わせた、いわゆるポリシーミックスによる複数の政策パッケージを作成するということが第1でございます。そして第2に、こうした政策パッケージを適切に実施するための基盤となる仕組みにつきましても検討してまいりたいということでございます。
 今後の大まかなスケジュールでございますが、月1回程度開催を予定しておりまして、12月をめどに企画政策部会の方に小委員会から報告をしたいと考えております。この検討の過程では関係省庁にもご協力をお願いしたいと思っております。本日も関係省庁からオブザーバーの方々がご出席いただいております。どうぞよろしくお願いします。
 なお、本小委員会は、中央環境審議会のルールに基づきまして企画政策部会と同様公開としますので、ご了承いただきたいと思います。
 以上の点につきまして何かご質問がございましたらどうぞお願いいたします。
 よろしゅうございますか。それではございませんようですので、次に移りたいと思います。本日の議題でございますが、お手元の資料に議事次第としてお配りしておりますが、この後、まず諸外国における地球温暖化対策と政策措置の現状につきまして報告をいただき、意見交換をしていただきたいと思っております。その次に、第2の項目としまして、我が国でこれまでポリシーミックスとして検討されてきた事例が幾つかございますので、これのご紹介をしていただくというのがございます。それから第3番目が我が国の地球温暖化対策の現状について比較資料を出していただいておりますので、これにつきまして議論をしていただきたいと思います。第4番目が我が国における温室効果ガスの排出構造につきましてレビューをしていただきたいということでございます。
 それでは時間的には2時間足らず、12時までを予定しておりますので、よろしくご協力をお願いいたします。
 では、まず第一に議事次第の2でございますが、諸外国における地球温暖化対策につきまして竹本課長から資料3に基づきましてご説明をお願いいたします。
【環境保全対策課長】 お手元の資料3でございます。諸外国における対策の現状につきましてご説明をしたいと思います。まず第1でございますが、この諸外国における対策の現状、3つの国を例に挙げております。海外におけるポリシーミックスの検討事例のまず第1はオランダでございます。オランダは1999年6月に温暖化政策の実行計画を発表しております。大方の目安のために参考として90年のCO2排出量というのは日本の約15%、EU内での京都議定書を踏まえた目標というのが−6%、二つ目がイギリスでありまして、2000年の3月、温暖化プログラム案というのを発表しておりまして、各方面からの意見を求めているというところであります。また参考としてCO2の排出量というのは日本の約54%、EU内での目標としては12.5%で、みずからの公約として20%削減というのを目標として掲げていると。三つ目がフランスでありまして、2000年の1月に温暖化対策の国家プログラムというのをやはり発表しております。排出量というのは、90年ですが日本の約34%、EU内の目標をゼロ%になっております。
 それではオランダから見てまいりたいと思いますが、まずオランダは3段構えの政策パッケージを組んでおります。まずその基本となる基本パッケージでありますが、先ほど申し上げましたEU内目標達成−6%達成のため、実行可能で確実な対策を推進をしようという考え方であります。次に、予備パッケージというのを考えておりまして、2005年までに基本パッケージの政策効果を評価をしまして、不足をする場合には実施をすると。具体的には炭素税、燃料税の増税など考えております。そして3番目としまして、革新パッケージでありますが、2013年以降、すなわち第1約束期間以降のさらなる削減目標に備えるために準備をしておるパッケージでありまして、ここでは排出量取引の導入なども考えておるというところであります。既に2種類の炭素税というのを導入済みでございます。ビジネスアズユージュアルとして90年比、2010年には20%の増加というものが見込まれております。そういう意味では、そのBaUに対しては26%の削減が求められていることになっております。それから排出量の現状では、95年時点の情報でございますが、7.6%、90年排出量に比べてふえているという状況でございます。
 次に、この基本パッケージの中身について少し紹介をしたいと思います。この基本パッケージを分解をいたしますと、エネルギー転換部門、産業部門、民生部門、運輸部門、それぞれに分けまして、ここに掲げられております推進する対策というものを整理をいたしておりますが、エネルギー転換部門であれば石炭火力の効率向上であるとか、燃料転換、再生可能エネルギー利用促進、それぞれ右側に主な推進メカニズムというのを紹介をしておりますが、例えば効率向上であれば、協定を締結する。それから再生可能エネルギーの利用促進については炭素税の免税を行う。合わせて同様に産業部門でございますれば、省エネルギーについては協定の締結、HFC等の代替削減には補助金、また民生部門の省エネにつきましては省エネルギーアドバイスというのを行っておりますし、また施設の整備に向けての補助金、それから運輸部門につきましては燃費向上車の取得促進のため、税制のグリーン化を図り、また省エネ促進のための車載機器の設置促進、これは燃費メーターというもののようでございますが、こういったものを設置するように協定を締結したり、補助金を与えたりしているということであります。
 続きましてこのオランダのケースを特徴的な政策をピックアップをしてみたいと思いますが、特徴的な政策としましては、まず第1に協定の活用というのが挙げられます。その協定の中身でありますが、政府と企業との私法上の契約としての明確な位置づけを行っていると。それから協定の達成判断につきましては、第三者として独立の委員会が行っておると。それから協定の内容、達成状況につきましては公開原則であります。
 それから特徴的な第2点目は、自主的なアプローチを採用しておるわけでありますが、その自主的アプローチも将来的に規制もありうるという、その可能性も含めた自主的なアプローチというのが特徴でございます。具体的には住宅・ビルに対しまして省エネルギーのアドバイスを行い、自主的な取り組みを促すとともに、対策実施の際には補助金を支給するということでございます。削減が進まない場合は、規制的措置(住宅・ビルに対するエネルギー消費の基準設定などの導入の可能性を明示しておるところであります。
 以上がオランダにおける基本パッケージの概要、またその特徴でございました。
 続きまして2番目に、イギリスの事例を紹介をしてまいりたいと思います。
 イギリスにおきましては、本年の3月、このドラフトを発表しまして、現在パブリックコメントを求めておりますが、その後、本年の秋までに計画を決定する方向でございます。具体的には、よく報道もされましたが、新たに炭素税(Climate ChangeLevy:CCL)を導入するということでありまして、現在2001年の4月から導入予定であります。また協定の締結、業界ごとに協定を締結する場合は税率の軽減、またその後の目標を達成していくために排出量取引なんかも組み合わせが可能というようなミックスになっております。排出量取引の制度設計において民間の企業が多数参加をしておるということでございます。また規制とか補助金、情報提供というような、また研究開発といったようなものもこのパッケージの中に入っておるところであります。BaUはイギリスの場合は2010年、90年に比べて既に−13ということが見込まれておるわけでありまして、EU内の目標をそういうことで達成をしますが、さらに国内対策を推進することによりまして20%まで削減を目指したいということでございます。
 同様に次にイギリスのこの政策パッケージの中を少し見てみたいと思いますが、それぞれの部門ごとに推進する対策、先ほどのオランダの場合と類似する部分がございますが、例えば再生可能エネルギーの促進、コージェネの促進といったようなものに対してこれを推進するメカニズムとしましては、グリーン証書の購入の義務づけであるとか、炭素税の免税であとか、また産業部門につきましては、省エネルギー、最新技術の導入ということによる省エネルギー、これに対しまして炭素税の導入、先ほどのLevyというやつですが、それに自主的な協定と、それから排出量取引の活用の組み合わせと、こういうものが考えられております。民生部門については、省エネルギーについてはエネルギー供給者に対しまして、ユーザーに向けた啓発をするという義務化がなされております。それから運輸部門でございますが、燃費向上車の促進については自動車工業会との協定であるとか、税制であるとか、移動輸送の効率化に当たっては総合的な交通政策の転換、こういうようなこととなっております。
 それからイギリスの特徴的な政策について少し述べてみたいと思いますが、特徴的な政策としては、やはり炭素税、Levyと協定であるとか、排出量取引の組み合わせをしているというところが特徴であると思います。課税の対象というのは産業用、商業用の電力、石炭、ガスでございます。税収というのは企業の社会保障費の負担の減、また省エネ投資にも活用をするということであります。エネルギー集約型産業については政府と省エネルギー目標に関する協定を結ぶということによりまして税率を80%まで軽減をすることができると。それから協定は政府と業界団体とで交渉をして締結をするということになっております。協定の目標達成を目指す場合に排出量取引を活用することを認められております。協定対象外の企業も参加可能ということのようであります。実際には2001年の4月からこの導入を目指しまして、現在関係方面との意見調整などをやっているところということでございます。
 以上がイギリスの例でありまして、最後にフランスの例を紹介したいと思います。
 フランスの特徴ですが、運輸部門に対して重点を置いておるということでございます。温室効果ガスの排出量が多くて、伸び率も高いということでございます。炭素税(エコタツクス)の導入、2001年から考えておりますが、当初は1トン炭素当たり150から200フランという税率から始めて徐々に引き上げていこうということでございます。それからフランスでは従来から汚染事業総合税というものがございます。この枠組みをエネルギーの分野まで拡張するとともに、民生にも適用しているというのがポイントでございます。全体でこの社会保障負担減を図りまして、税制の中立を図っておるところであります。それからフランスは特にEUレベルでの政策の協調というものを非常に指摘をしております。それからBaUでありますが、11%のプラスでありまして、EU内の目標としてはゼロ%、これをすべて国内対策で達成をしようという計画になっております。
 次に、フランスの計画の中身でありますが、同様に四つの部門ごとに切り口で整理をいたしました。推進する対策のメニューとそれを実施に至らしめる、実行に至らしめる推進メカニズムを並べて書いてございまして、例えばエネルギー転換部門でございますれば、複合ガス化発電への転換には炭素税というものを活用、再生可能エネルギーの促進というのは、先ほど申し上げましたこれまでの総合税、こういったものから軽減を図ると。省エネについては炭素税であるとか、代替フロン等3ガスの排出抑制については規制をかける。また民生部門については、税及び奨励を図るとともに、運輸部門については、税制のグリーン化または総合交通の政策と、こういったものを総合的に組み合わせているというのが特徴でございます。
 以上が三つの国についての事例紹介でございます。
 資料につきましては、その後、今先ほどまでご紹介した三つの国におきます、より具体的な資料を添付させていただいておりますので、ご参考にしていただければと思います。
 以上で私の方からのご説明を終わらせていただきます。
 
【安原委員長】 ありがとうございました。それではただいまの説明に対しましてご質問とかご意見ございましたら、どうぞよろしくお願いします。
 
【横山委員】 オランダで95年時点の排出量7.6%増と出ているんですが、97、98年度とか、京都会議後はどうなったかというような数字というのは、全まで3国では出てないのでしょうか。
 
【環境保全対策課長】 今のところ、私ども条約事務局に報告された情報しかないものですから、今のところ95年の資料しかございません。そういう意味ではご指摘の京都会議以降の資料というのは、できれば我々も入手したいと思っておりますが、今のところ私どもございません。
 
【宮本委員】 一つは意見、一つは質問したいんですけれども、ここの中で、例えば省エネルギーであるとか、新エネルギーに対して炭素税というのが書いていますね。これは炭素税を普通かけているけれども、新エネルギーとか省エネルギーを行った場合は炭素税が軽減されるとか、新エネルギーや省エネルギーを行うことにより、税金が少なくなるために効果があると、こういうことなんでしょうね。
 
【環境保全対策課長】 そこは両方ありまして、ちょっと言葉足らずでございますが、税金を免税していると、明示的に書かせていただいたところは今、委員がおっしゃったとおりでございます。それ以外は、例えば省エネに向けての努力を引き出すというような意味での具体的には税金がそれぞれの燃料とかエネルギーにかかっているという意味です。
 
【宮本委員】 例えば省エネルギーを行って税金をかけられたら、だれも省エネルギーを行わないですね。だから、例えば省エネルギーを行わなければ、それだけかかったものが、省エネルギーを行うことによって、それだけ軽減されるということによって初めて効果が出てくると思うんですが。
 
【環境保全対策課長】 そういうことになるんですね、おっしゃるとおりでありまして、省エネルギーをやるきっかけとなるような。
 
【宮本委員】 インセンティブとしてかけると。
 
【環境保全対策課長】 そうですね。失礼しました。
 
【宮本委員】 もう一つちょっと私は意見を申し上げたいんですが、フランスはそうなんですけれども、オランダとか、それからイギリスなんかはかなり石炭とかそういう化石燃料を使っているわけですね。だから、もともとCO2の発生量が多いんだろうと思うんですね。そういうことから考えると、例えばGDPあたりのCO2排出量についてオランダとか、それからイギリスが例えば日本に比べて、どのように違うのかと。それならばそれを削減することによって、かなり大幅にCO2排出量を下げることができると思うんですね。
 それからもう一つは、石油換算エネルギー消費量に対してCO2がどのぐらい出ているかというようなことも調べておいた上で、こういう議論をしていくことが一番客観的な評価につながるのではないかなと思うんですけれども。
 
【環境保全対策課長】 ご指摘のとおりだと思います。我々もさらに研究、勉強を進めたいと思います。ありがとうございます。
 
【佐竹委員】 オランダの政策で協定の活用がございます。これは特に私法上の契約としてというふうに書いてあるわけですね。これはその意味ですね、というのは、私法上の契約だと、企業は締結しない自由があるのかどうか。それから具体的イメージとしては、ここにエネルギー転換部門、推進する対策等に書いてあることが契約の内容になるかと思うんですけれども、達成できない場合の効果、つまり強制事項というのはちょっと考えにくいので、損害賠償というようなことになるのかどうか、その辺についてちょっとわかっている範囲内で教えていただければ。
 
【環境保全対策課長】 大変申しわけございませんが、今のご指摘の点、ちょっと明確に今直ちに正確に答えられないところがございますので、改めましてちょっとメモとしまして整理をさせていただきまして、佐竹委員及び各委員にもご連絡させていただくようにさせてください。
 
【寺門委員】 オランダの場合は、私どもが調べたところでは、ベンチマークコブナントということで、業界産業連盟と協定をするわけですね。そのときに、一応企業が最高の水準を責任を持って達成するというこで、言ってみればトップランナー本式的な方法を、要するに世界の同じような業界、業種の10%上位レベルぐらいを達成しよう、するというふうな目標を、例えば日本の場合、これをやると多分みんな10%に入るかもしれないですね。だから国によって、このレベルがオランダの場合、世界じゅうの平均値のそれぞれの産業が平均値レベルだったら、かなりの改善になるし、こういうふうな目標を立てるわけですよ。だから国の実情に応じて目標レベルというのは、立てるのには相当のデータベースといいましょうか、そういうものをして、それで、かなりこれはしんどいねというふうなことをやっていかないと、これはなかなか難しいわけで、そこら辺がどういう準備といいましょうか、そういうものをやっていって、それがかなり公平だというふうな理解を得ないと、これはなかなか意見が割れるところでありますので、そういうことを十分に中身を見ながら、それぞれそんなむちゃくちゃはやっていないということをやっぱり理解しないと、ただ表向きだけやりますと、これはなかなか意見が後でばれますから、そういうことは評価していくべきだろうというふうに思います。
 例えばイギリスの場合でも業界単位での交渉というのをやるわけで、交渉というものにもいろいろ、ではレベルはどういうレベルで交渉したのかということについては、なかなかこれは調べてもわかりませんのですけれども、そういう場合にCCLの8割を免除しましょうと、こういうふうな考え方ですけれども、だから結局そこの目標レベルというのは、予想を立てて、それがなるほどというところをつくるところに、相当のやはりエネルギーを割かないと、こういうものは表向きだけだと、「ああ、そうですか」と、こういうことでいくんですけれども、そこをぜひやっていく必要があるということを。だから僕は環境整備というか、最初のところにありましたけれども、基盤整備といいましたかね、基盤というのはどういうものなのかというのを、そこら辺言葉だけだと、基盤というと、非常に広いんですけれども、そういうことをよくやらないといけないし、第三者機関ということも極めて不透明なわけで、第三者といっても、この前もお話ししたように1名しか2名しかいないところを第三者機関というのか、あるいは審議会のようなものを第三者機関というのか、そういうのをよくここら辺は実情を、本当に第三者機関というならば、その第三者機関というのはどんな内容のものなのかということを十分データを置かないと、第三者機関というと、いかにも格好いいんですけれども、実はこういうものですというのは、よくデータとしては整理しておく必要があるのではないかというのは、私の今のこの全体としての感想でございます。
 
【安原委員長】 ありがとうございました。
 
【寺門委員】 それから、もう一つ、宮本委員からもお話がありましたけれども、やはり英国とかドイツとか、この辺は石炭大産業国でありましたのが産油国にかわり、ドイツは別ですけれども、変わってきて、エネルギーのいわゆる基盤ですね、エネルギーの基盤というものが大きく転換したからBaUで既に達成してしまうというような、そういう柔軟性といいましょうか、エネルギー構造の柔軟性というものが確保されていくということを、やはり国としてどういうふうな上限をつくったときにエネルギー転換ができるのかということがないと、なかなかこれはただ「すぐするから、エネルギー変えろ」というわけにはなかなかいかないと。これはエネルギー需給調査会等のものがどういうふうに国としてエネルギーの構造というものをこういうふうに持っていくんだというふうなことをやっぱり明示していく必要があると思いますね。そういうベースの上にどうしていくのかというふうなことを議論を重ねていくべきではないかというふうに思います。
 
【安原委員長】 今、コメントをいただきましたが、それに対する事務局、何かございますか。
 
【環境保全対策課長】 今、ご指摘の点、ごもっともな点だと思います。ご指摘のとおりだと思います。それで、なお今回こういう形でご紹介したのは、ご指摘のとおり、それぞれの国の事情によって対応が異なるというのが当然のことでございますし、それぞれの国の実情に合った対応というのを考えていくというのは、そのとおりだと思います。
 また目標をこれでもって日本がどうしようとか、そういう話ではなくて、むしろそれぞれの国がそれぞれ目標を持っておられて、それにどうアプローチをしておられるか。もちろんその詳細について当然研究を進めてまいりますけれども、それをそっくり何かやるというよりも、それぞれの国が今こういうように取り組んでいるというところをご紹介をさせていただいているというようにご理解をいただければ、ありがたいと思います。
 以上でございます。
 
【村上委員】 そういう意味からいけば、一番CO2を出しているアメリカが現在どうなっているかという資料をぜひいただきたいなと。それから将来へ向けて大変大きなCO2排出源になる中国、インド、この辺の現状はどうなっているかという意味では、いろいろなことを考える上で参考資料にしたいものですから、現状について資料をぜひお示しいただければと思います。
 
【環境保全対策課長】 努力いたします。ただ、中国、インドについては、どういうような対応をしているのか、ちょっと情報が限られている部分がございますが、その範囲の中でできるだけ参考になる資料を整えたいと思います。
 
【天野委員】 どういう政策をどういうやり方で決めていくかというのはおっしゃるとおり国によって随分違いがあると思うんですが、最近ヨーロッパにしろ北米にしろ、こういう非常に国民全体に大きな影響が及ぶような政策を決めるというときには、かなりの程度ステークホルダーといいますか、いろいろな種類の利害関係者に入ってもらって、できるだけ情報を公開して決めていくというやり方をしているところが多いと思うんですが、先ほど産業界とのいろいろな協定のやり取りのお話がありましたけれども、産業界と一口にいってもいろんなレベルがあると思うんですね。ですから、どういうレベルで、どういうことをやっているか。それからNGOというのはかなりヨーロッパでは活躍をしておりますけれども、こういう政策形成にどの程度関与しているのか、その辺、特にそれから運輸、民生、こういう非常にたくさんの主体がいて、排出をしているようなところで、どういう進め方をしているのか、その辺もお調べいただくと、大変我々には参考になると思います。
 
【環境保全対策課長】 そのようにできるだけやっていきます。
 
【安原委員長】 それでは、この資料またお持ち帰りいただきまして、お目通しの上、何かご質問等、あるいはさらに調査をしてほしいという事項がございましたら、事務局の方に後ほどまた文書ででも連絡をとっていただければと思います。
 それではとりあえずこのテーマはこの程度にしまして、次に進ませていただきたいと思います。次は我が国におけるポリシーミックスの検討事例でございます。これにつきましてはIGESと申します地球環境戦略環境研究機関というのがございますが、ここがオープンフォーラムという公開の議論をことし7回にわたって開催されておりまして、西岡委員がこのフォーラムの議長をされておりました。ここでそういう事例が検討されておりますので、西岡委員よりオープンフォーラムにおける検討につきましてご紹介をいただきたいと思います。よろしくお願いします。
 
【西岡委員】 西岡でございます。ご紹介にありましたように、地球環境戦略研究機関というのでございまして、そこがこの地球温暖化対策につきまして公開の討論会といいましょうか、どんな対策があるかを国民的な場でもって検討する一連のフォーラムを開いてみようということになりました。その何回かの報告をしたいと思っております。この会自身は委員でもいらっしゃる天野明弘先生、それから森嶌IGES理事長、それから福川電通総研の所長という方々が発起人となられまして、やはりこういう大切な問題、先ほどお話がありましたように、多くのステークホルダーが関係するような話については、なるべく早めにいろいろな案を出して、それを国民の目から検討しながら政策決定に役立てほしいということで、この会合を開こうということになりました。私がその一連の会議の議長をさせていただいたわけであります。
 この6%削減に向けてのこの議論ですけれども、こういう議論が公開の場で行われている例というのが余り日本ではなかったなと、私は思っておりまして、ぜひこのようなプロセスを確立したいなというのも趣旨の一つでございました。
 先ほどオランダの話がございましたけれども、聞くところによりますと、オランダでは、もう既に五十何回の、これはもう数カ月前の話なんですけれども、話し合いをそれぞれの団体とやっており、こういったオープンフォーラムも進めているという、コンサルテイションプロセスと言われているものが確立しているということでございます。そういうことを日本にも根づいていかせるべきではないかなというぐあいに考えているわけであります。
 このオープンフォーラム、全くオープンなんですが、オープンという意味は、これは国民の各層だれでもが参加できて、もし手を挙げてくだされば、だれでもがもちろん提案できるということで設定しました。最初5回ぐらいのつもりだったのですけれども、やはり回数が少ないということで7回になってしまったんですが、本年の1月から7月の間、7回やりました。全国で413人の参加者、これは延べでいきますと885人だそうです。大体企業、それから役所の方、調査会社、それからNGO、大学、さまざまなところからの参加者がございました。毎回提案を温暖化の対策、こういうポリシーのオプションがあるよと、それからその組み合わせがあるよということで提案をお二人ぐらいにいただき、ディスカッションと2人つけまして、ちょうちょうはっしやったわけでございます。結果につきましては、また1カ月後ほどたちましたら、何らかの形で出したいと思っております。
 それで、その内容でございますけれども、お手元にございます資料4の2ページあたりを見ていただきたいと思います。全部でその次のページまで含めまして7回ぐらいの議論がございました。1回目は議論の導入ということで、国内、国外ではこういう問題があるだろうという議論の導入ですが、2回目からは国内制度の全体的な枠組みということで、天野先生の国内排出許可証取引を中心とした国内制度を初めといたしまして自主行動計画の提案、それから炭素税、この三つを題材にいたしまして討論し、その次、第3回でございますが、これを定量的に見たらどういうぐあいになるんだろうかということで、モデル分析をもとにした国内制度の提案、黒田さん、それから森田さんにお願いしております。それからさらに技術的にはどこまで詰められるんだろうかということで、次の回は3人の方に、茅さん、それから西堤さん、飯田さんと、自然エネルギー、自動車の関係も含めまして、技術的な面からどこまでいけるか。それにはその技術を促進するためにはどういう制度がいいだろうかという話をいたしました。
 次のページに移りますが、第5回には、一番難問であります民生、運輸部門に対しては、どういう手があるだろうか、また、それを促進するための政策はどんなものがあるかということで、民生、それから交通、それから燃料転換といったことで提案がございました。この第4回、第5回は、どちらかというと、技術を中心にして話が進んだわけでございます。そして最後にもう一度国内制度の全体的な枠組みの提案ということで、やや総括的でございますが、3人の方にお話を、佐和委員いらっしゃいますけれども、それからNGOの方から畑さん、それからIGESの方からは松田さんということで、またポリシー、オプションあるいはポリシーミックスについてのお話がございました。最後にそれを総括して今後どういうことが議論として残ったとかという話でございます。
 この幾つかの提案を総括したのが3ページの一番下にございますけれども、主な力点の置き方がちょっとずつ違います。全体としてまだポリシーオプションという感じの個別の政策についてのよしあしの判断が多かったのではないかなと思っておりますが、それでもそれぞれ皆さん濃淡ございまして、エミッショントレードを主とした天野さん、それから諸富さんが税金を主としたオプション、それから自主的取組については細谷さんの方からの提案、それから国内取引とそれから炭素税を組み合わせたものはどうかということ、あるいは炭素税と補助金を組み合わせたものはどうかということで森田さん、それから税金も含めましてグリーン税制等の話が茅さんの方からあったわけであります。4ページの方に移りますと、西堤さん、トヨタの方ですが、企業における自主取組をどうやって進めていくか、あるいはそれに対するインセンティブをどう外からつけていくか、飯田さんの方が新エネルギー、あるいは自然エネルギーのための直接規制、補助金、中上さん、それから林さんにつきましては直接規制、特に交通部門、あるいは民生部門におきましては、どちらかというと税とか取引ということよりも技術的な面を強調し、それを規制的な、あるいは目標を設定するような形での政策を進めていくのがいいのではないかというお話があったかと思います。それから佐和さんには炭素税を中心とした取り組み、それから畑さんには、これはもうすべてのオプションを導入していくべきだということで、力点は少々直接規制にあったかと思いますが、必ずしもそれだけではないということでございます。最後に松尾さんの方は国内の取引制度を中心としたものでございますが、最終的には個人に割当制度を当てはめてはどうかといった話がございました。
 全般的にこのように幾つかのオプションと言われる国内取引、それから税、それから自主的取組、直接規制、補助金等のオプションをどう組み合わせるかということについては、余り十分検討はまだ至ってないような感じがしたわけであります。
 しかしながら、この一連の成果といたしましては、大体のオプションなるものは出尽くしたのではないかと。それからある程度の共通認識、例えばいろいろな手段の組み合わせがどうしてもいるんじゃないかとか、それからそれぞれのオプションの短所、長所といったものが共通認識として得られている。確かにその点はそうだねという了解がいろいろなステークホルダーの間で得られたのではないかなというぐあいに考えております。
 具体的にどんなそれではポリシーミックス、あるいはオプションが提案されたかということについて簡単にご紹介したいと思いまして資料の5を用意いたしました。ここでは極めて代表的な四つを挙げただけでございますが、今、パワーポイントの方でも出してございますが、そこのお手元にある資料5の方を中心にお話をしていきたいと思っております。ここで紹介いたしますのは四つの提案でございまして、後ほど簡単にお話しいたしますけれども、天野、森田、松尾、畑、先ほどお話ししましたこの四つの提案についてでございます。
 最初に、天野さんの提案でございますが、これはこの委員会の前身の委員会の方でもお話がございましたので、余り詳しくは申し上げる必要はないのかもしれません。基本的にはこの提案は、グリーン・クライメイト・プログラム、緑の気候計画という名をつけておられますけれども、排出取引制度であります。一番最初にハイブリッド・キャップ&トレード型国内排出量取引とございますが、天野先生の方は排出量というのはちょっと妥当じゃないので、排出取引制度というぐあいにおっしゃっております。これは国内全体のCO2のキャップを設定した後で、その排出権を企業に配分して、後は自由な取引を認めるというものでございます。排出枠をどこに与えるかと、規制ポイントをどこにするかということが一つの論点にこの場合はなるわけでございますけれども、その排出枠は上流と下流に分ける。まず上流については、上流といいますのは燃料を販売するところ、それから燃料を消費するところは下流部門としまして、その両部門に配分するんだということでございますが、その配分の仕方が下に書いてございます。基本的には下流部門の方が種々の需要の変動、あるいは技術の変動に対してフレキシブルに動けるということで、下流部門に期待している。下流部門に対してはグランドファザリング、今まで過去の排出実績に応じて配分、これをグランドファザリングといいますが、応じて基本的には無償で配分いたします。しかしながら、無償といいますと、やや公平性に欠けるところもあるということで、幾らかの低率課金をいたしまして、その課金をまた別な用途に使うという人もございますが、そして上流部門の方はどちらかというと、この下流部門のところで規制に漏れるようなものが幾つか出てくるだろうから、それがうまくここで集約できるんじゃないかということで、上流部門にも割当をする。ただし上流部門についてはオークション、競売でもって割当を売るという形にしましょう、このような提案でございます。
 このオークション等の収入は、結局収入が幾つか上がるわけですけれども、これは所得の減税、あるいは企業の社会保障費の負担減、あるいは新エネルギーの補助金等に用いて、政府の収入中立とするということを考えておる。さらにこれにいろいろな付属的な規制が必要なんですが、例えばそれが守れなかったときどうするかと。不遵守の課金といったことがございますが、あるいは長期的な効率性を促すためにはどうしたらいいかということでありますが、こういったことに対する考え方も幾らか入れていこうということでございます。下に全体の部門別にどういうものが適用されるかということで図が載っておりますけれども、この図は上でお話をいたしましたように、全面的に上流部門に枠を一つ与える。それから下流部門にも与えて、それからそこからの収入をまた別な用途に使おうということでございます。
 次に二つ目、次のページになりますけれども、森田さんの提案ですが、森田さんは特に役割分担としてというお話を彼はしていましたが、特に税金を中心に考えてみようということのようです。ここでは炭素税を中心にして四つのオプションを考えております。四つといいますのは、その炭素税をどれだけの大きさにして、それをどう回すかという違いがあるということでございますけれども、まず@というのは炭素税のみをかけて、それを一般会計に入れてしまうということであります。この場合、彼のモデルで計算をいたしますと、大体税率がトン当たり3万円程度になる。なかなか大きな収入であるということがありますし、それからある一部の部門、例えば鉄鋼などはこのままでいきますと1兆円ぐらいの負担増となるということで、この負担増を軽減するような経過措置をとるにしても、それはちょっと公平性を欠くようなことになりかねないということで、彼はこの案は余りいい案ではないのではないかということを言っておるわけですが、2番目の案が炭素税プラス税収を削減技術、あるいは設備導入の補助金に回すことにすると。そうしますと、補助金に回すことによってCO2が減るということの効果を入れますと、税率というのは3,000円程度でいいだろうと。そうしますと、これは税と取引の問題といいますのは、取引の方は確実にキャップした分の量が減るということがありますが、税の分は必ずしもその効果が炭酸ガスの削減にあらわれてこない可能性があります。このような場合、この不足分をこれは国際市場から枠を買ってこなきゃいけないだろうと。そのお金にこの補助金等も使っていいんじゃないかということでございます。
 3番目の案ですけれども、企業に対しては炭素税をとるか、あるいは国内排出量取引をとるか、どちらでもいいから選んでくれということでお任せする。そして炭素税の一律適用をベースとして公平性を確保しようということであります。これだと割当のやり方についての問題がございまして、余り恣意的に国内取引のベースを、これは結局割当のことですけれども、決めるということの問題が一つは残っている。
 4番目はさらにこの考えを進めまして、独立会計的ではなくて、さらに環境産業育成に回してはどうかということを提案しているわけであります。この提案をまとめますと、下の2というものになりますけれども、基本的には炭素税をベースにして、それをどう使うかによって、その税率、あるいはその使い方を変えていこうというのがこの提案であります。
 3番目に挙げましたのが次のページでございますが、松尾さんの提案でございますが、松尾さんの提案は、これは2段構えになっております。@とAという2段構えといいますのは、まず1段は2007年まで、すなわち約束期間に入る前まではどうするかと。そして約束期間の後をどうするかということはAでやっています。この提案は極めてドラスティックでございますが、2の方は最終的な形というのは、個人割当による国内排出権取引、一人一人に割り当ててしまう。2008年までの技術進歩を考えますと、LCAも進んでいるだろうし、あるいはIT技術も進んでいて、カードでもって取引ができるといったこともあるかもしれないということが前提となっているかと思いますが、それを前提といたしまして2007年までにどういう我々はトレーニングをしておくかということを考えております。基本的にこの提案は、これまで経団連環境自主行動計画というのが進んでいて、それなりに非常によく動いているということでございますので、それを中心にして、さらにそれを協定に持っていった形でやっていったらどうかということでございます。この自主行動計画をベースに企業内で、あるいは企業間で国内排出量取引というものをまず始めてみてはどうだろうか。そうすると、この排出量取引というのは経済的には一番安いところで減らせるという可能性がございますので、いいのではないかということで、まず産業内での排出量取引をやってはどうかと。それからそれだけでは不足な分は、ぜひCDM、これ2000年からまだ十分動いてはおりませんけれども、議定書といたしましては2000年からもう動いているわけでございますから、CDMあるいはよその国との国内排出量取引、これなかなか非常に難しいところでありますが、すなわち政府間の協定が多分いるだろう。国内での取り引きをそのまま国際的取引に持ち込むには、国としての承認がいるわけですから、その辺が問題ございますが、それともリンクさせてはどうかと。それから排出量取引参加企業以外は炭素税ということで、これもやはり炭素税との組み合わせがいるということが前提であります。
 このトレーニングの期間に政府による省エネ情報の収集、普及をどんどん進める形、どこをどのように重点的に対策を打っていったら減るだろうかということに対する情報をこの間、十分政府が勉強しておけということでございますが、その後、2008年以降、個人割当、一人一人に割り当ててしまって、その自由な取引を認めるということで、物を買ったときには必ずLCAでもってCO2がついてくる。その分のお金を支払うなり何なりするということで、全く下流に全部割り当ててしまうという提案であります。
 この提案を総括してみますと、下にございますように、これは経過措置、すなわち2008年までの分でございますけれども、排出量取引と、それから特にこれ産業内ですけれども、それから炭素税を並列させてやったらどうかというのがこれのポイントではないかと思っております。
 最後に、4番目の提案ですけれども、これは気候ネットワークが種々のNGOと共同で提案しようとしているものでございます。まだこの段階では最終的な提案ではないということで、COP6前に最終案が出ると聞いております。いろいろな研究者、専門家、NGOが集まってつくっていただいた案でございます。
 この提案といいますのは、現在の政府が考えております種々の提案とある枠組みとしては非常に似ておりますが、大きく違っておりますのは、まず国内対策のみで目標達成を行いたいということが一つあります。それからさらにシンク、今、議論になっておりますシンクをベースにした対策は採用しない。それから長期的に2013年以降、長期的にも削減が続くようなことを念頭としてやっているということでございますが、主として直接規制、省エネ法や新しい法律をつくってやるということと、それから業界の自主行動計画の協定化によって、まず基本的なところは減らしていく。非常に経済的インセンティブの働きにくいところでございますが、自動車税制グリーン化、ロードプライシング、あるいは電気・ガス料金逓増制強化等の実施、さらに政府等からの情報提供による消費者・企業行動の誘導、全体を後押し、補強するための炭素税、それから税収は温暖化対策へ補助金として使うといったことがございます。このように幾つかのオプションをさまざまに組み合わせて効果を上げていきたいというのがこの気候ネットワークの提案でございます。
 このほかに幾つか、特に民生部門、それから交通部門に対する提案というのが多くあったわけでございますが、このような提案をベースにして、どう後はポリシーミックス、すなわちこれを組み合わせていいものにつくっていくかという議論に入っていく段階になってきたのではないかというのがオープンフォーラムでの結論でございます。
 
【安原委員長】 西岡さん、どうもありがとうございました。それではただいまのご説明に対しまして質問、ご意見がございましたらどうぞお願いします。
 
【佐竹委員】 こういう形で政策問題が議論されるのは大変結構なことだと思うんです。確かに私ども官僚出身ですけれども、政策論議が官僚だけに限られているということは、双方にとってマイナスであって、そういう意味ではこういう形でオープンに議論されることは大変結構だと思います。
 ただ申し上げたいのは、やはり政策というのは執行段階のことを考えなければいけない。論理的に非常に整合性のとれた施策でも、ストリートレベルの政策形成というような観念が政治学にもあるようですけれども、それが末端でどういうふうに運用されるかということも当然政策を取り上げるかどうかに当たっては十分判断しなければならない。そうしますと、例えばETですか、でも、あるいは直接規制でも、これを末端におろしたときどういうことが起きるかということについては、ただいまお話を伺った範囲内では余り突っ込んだ検討は、論理的にはいろいろお考えいただいているようですけれども、そういう現場情報でチェックするというようなことは、いささかどうかなという感じが率直に申し上げてあります。特に個人に、排出権、排出をする権利という観念を使うのは適当でないかもしれませんが、わかりやすく簡単に言うために排出権ということで使わせていただきますけれども、一人一人に割り当てるというようなことは果たして行政的に可能であるかどうかというようなことは当然もう少し詰められていいのではないかと、こういう感じがいたします。
 
【安原委員長】 西岡委員、何かございます。
 
【西岡委員】 おっしゃるとおり、今の最後の松尾提案についてはちょっと理想的かなと私も思っておるんですが、取引につきましては、既にどこの市場で、どういう取引をしようかということは、この中にいらっしゃる方も実際いろいろな商社なども入ってやっている状況がありまして、私の方ではきょうはそこまでお話はできませんけれども、結構実態的には進んでいる。我々のここでの議論以上に実態的に進んでいるということがございます。ですから、本当に今おっしゃったように、執行段階のことをもう考えろということはまさにそのとおりでございまして、深く静かにどうも進んでいるような感じが私はいたします。
 
【佐竹委員】 別にこれ反論で申し上げるわけではないんですけれども、例えば大企業であれば相当なスタッフも抱えておられますし、さまざまな検討、当然進んでおられると思います。だけれども、これはそれを制度として運用する場合には当然比較的情報の乏しい中小企業の方々にも大変影響が出てくるわけでございますから、そういうことをカバーするのは当然官庁等でカバーしなければいけないわけですけれども、そこのところもやはり考えなくてはいけないのではないかと。つまりそれを制度として動かした場合には、当然非常に影響を受けるべき人々が発言できているかどうかということでございます。これは別に反論ではございませんけれども。
 
【西岡委員】 反論というよりも非常に我々にとっての何と言いましょうか、励ましではないかなと思っています。IGESの方では、別にIGESのことだけではないんです、どこでもそうですが、ブレーストミングセッションというのをずっと続けておるんですが、割と小ぶりなところで細かいところを詰めていくのもやっておりまして、そういう面で大いに情報流通の中心になっていきたいというぐあいには思っております。
 どうもありがとうございます。
 
【安原委員長】 IGESのフォーラムに参加されました方がまた委員でこの小委員会にも参加していただいていますが、何か追加的なコメントございますか。天野さん、それから佐和先生、あとは浅岡さん、畑さんの関係で。
 
【天野委員】 フォーラムは確かにオープンなんですけれども、オープンだからそこで発言した人は全部のステークホルダーを代表しているかというと、そうじゃないわけですね。つまり学者とか、あるいは業界で専門的にそういうことをやっている人が案を出すということですから、これは我が国でのこういう検討がまだコンサルテーション・プロセスまではいっていない、その前段階で、どういうオプションがあるのかということをはっきりさせようという形をとられたので、こういう結果になったと思うんですが、当然これを具体的に下へおろしていくときには、もっと具体的な政策立案をして、それからコンサルテーションをやってという手順が含まれて、ここから先は普通環境庁がおやりになっているようなことが進んでいくんだと思うんですね。ですから、今回はオープンフォーラムだけれども、必ずしもステークホルダーの意見が全部通っているわけではないというふうにはご理解いただけたらというふうに思います。
 
【佐和委員】 特に発言しようと思っていなかったんですけれども、せっかくご指名いただきましたので一言申し上げますと、ここで主として炭素税と排出量取引という二つの措置といいますか、経済的な手法というものを中心にさまざまな提案がなされて、それで人によってさまざまなバージョンはありますけれども、基本的には炭素税または、アンドは排出量取引という、そういうふうな政策提案というふうになっているというふうに見ることができるかと思うんです。私はかねて排出量取引というものは、これはアメリカで硫黄酸化物なんかについての排出量取引というのは、これは実際に行われているし、それは電力とかという非常に限られた産業部門に対してのみ取引といいますか、排出枠を配分するということで、そういう意味でインプルメンテーションは非常に容易なわけですけれども、この二酸化炭素ということになりますと、ここでも上流部門に割り当てるのか、あるいは下流部門にどうするのかというようなことがいろいろところで文脈で議論されているようですけれども、確かにインプルメンテーションという点で非常に難しい点があるということが一つ。それからもう一つは、仮にいわゆるグランドファザリングといいますか、つまり去年の例えば排出実績に応じた配分をすると、それの何%増しだとか、あなたの産業は衰退途上にあるからマイナス5%だとか、そんなことで割り当てるということになると、これは産業統制的な色彩が非常に強くなるということが一つ。それからもう一つは、非常に産業構造の転換のフレキシビリティを弱めるというのでしょうか、そういう意味で決していい制度ではないと思うんです。
 それから加えて、万一、非常にことしのような物すごい猛暑で、そして電力需要が非常にふえたということで、秋になると、排出量取引の市場の価格が冒頭するというようなことになったら、そうしますと、例えばある鉄鋼メーカーがせっかく輸出をしようと生産しようとするんだけれども、実は割り当てられた排出量では足りなくなって買ってこなくちゃいかん。そしてマーケットに行ったら、とんでもない高値がついていると。そしたら、それはとてもじゃないけれども、そんなにコストがかかったのでは輸出ができなくなるとかというようなことで、非常にやっぱり市場が混乱するわけですね。そして結局むざむざそういうせっかくこれだけつくって注文があったんだけれども、その輸出がでくなくなるというようなことにもなりますし、第一、念書に排出量の価格に対する不確実性というものが大きいために、実は経営計画を立てるのも非常に難しくなるというような、そんなふうなことがあって、なかなかこれは事実上、非常に部分的にオーバーオールにこういった制度を導入するということは、恐らく実際問題として困難ないし不可能じゃないかというふうに私は思っております。
 炭素税に関しましては、もちろんこれは既に先ほどご紹介がありましたように、ヨーロッパの国々では多くの国が既に導入済み、あるいは導入を計画していると、あるいは予定しているということでございますが、これは非常にそういう意味でインプルメンテーションが容易で、税というのはもともと税務署というのはどこの国にもあるわけですから、税務署が集めればいいわけですから、追加的な行政コストというのはさほどかからないわけですね。ただし、炭素税の方の欠点というのは、要するに例えば京都議定書に定められた削減目標というのを達成することが必ずしも保証できないということなんです。つまり排出量取引の場合だったら、皆がうそをつかない限りは、これは確実に排出量を、例えば3億トンなら3億トンというのにコントロールすることができるわけですね、そしてあとはもしすべて価格メカニズムで排出量の値段が高くなれば、それで排出量が減るというようなことで、そういう意味では非常に京都議定書というものをしようとしたときには、大変合理的な政策ではあるわけですけれども、炭素税の場合は、例えばトン当たり1万円の税金をかけて、これでもってどの程度削減できるというふうに思っていたけれども、実際にやってみたら、全然効果がなかったとか、あるいはそもそもさっきの猛暑のようなせいで実際の思惑どおりには進まなかったと。しようがないから、今度は2万円に上げて、また様子を見ると。そうすると今度は税金を高くし過ぎたから今度はまた下げるというようなことで、そういう意味で、税率による調整というものが必要であって、結果的に仮に炭素税をかけて、そして2008年から12年の排出量が京都議定書に定められた水準をオーバーした場合には、これはそのときにはやむを得ざる措置として京都メカニズムを利用して、排出権を海外から調達するというようなことにならざるを得ないというようなことで、炭素税にせよ、排出量取引にせよ、一長一短なわけですが、私は実際にインプルメンテーションが容易であるという意味では炭素税の方が当面の措置としては望ましいのではないかというふうに個人的には思っております。
 以上です。
 
【安原委員長】 ありがとうございました。それでは浅岡委員、どうぞ。
 
【浅岡委員】 私もこの会合に3回ぐらいは傍聴させていただきました。確かにさまざまなお立場の方が大変自由に参加しておられるという場面を拝見しました。皆さん熱心に参加をしておられまして、こういう場はいいなと思いましたですね。
 京都会議の前の設置目標の国内の議論をやっておりましたときには全くそういう場がありませんでしたから、それから見ますと、97年から3年間の間に議論をしようではないかということも広まりましたし、参加していきたいとお考えの方が広がっており、また産業界の方も随分多彩な分野からご参加のように思いました。これはいい機会であったと思います。その中に私たちのNGO側からの意見というものも取り上げていただきました。ちょうど我々も、IGESのオープンフォーラムのためということではありませんで、COP6を迎えるに当たって日本の外交交渉上どういうポジションをとるのかというのは、まさに国内対策でどのような準備ができているのかということの裏返しでありますので、6%削減を国内措置で達成していくというための方策を提案をしていけるようにしたいと準備しています。素人と言えば素人でありますけれども、それなりに整合性もとれるように、あるいはリアリティもあるように努力していきたいということでやっておりましたところのタイミングであったものでありまして、この機会がより議論を深めるのに大変役立ったということは感謝しております。
 こういう審議会等でいろんな省庁で同じような関心事から行われているんですけれども、やはり委員として参加する方も少ないですし、公開といいましても限定でありまして、傍聴される方も限りがありますし、議論の時間としても十分ではないというふうに思います。これからも並行して、より具体化をしていくときのそれぞれの得失をさらに深めていくような場というようなものも必要になってくるのではないかと思いますので、何らかの方法で議論を継続していただくということも、こういう審議会の外で必要なのではないかなと思っております。
 
【安原委員長】 ありがとうございました。ほかにオープンフォーラムの検討につきまして何かご発言ございますですか。天野委員、どうぞ。
 
【天野委員】 別に佐和委員に反論するわけでは決してありません。このフォーラムでいろいろな案が出てきて、一長一短があると。そういうものを適切に組み合わせる必要があるというような認識が出てきたと思うんですが、どういう状況を考えなければいけないか。例えば今から2007年までに日本の排出総量がどういう経路をたどっていかなきゃいけないか。それから排出削減をするときに、主に削減する主体のいろんな経費の負担がどういうふうになってくるか、それをできるだけ小さくして、公平に配分するような仕方はどうか。そういうふうなことをいろんな条件をそれぞれ考えていくと、一つの手法だけではとても対応できないということは言えると思うんです。ですから私は別に排出取引と炭素税とどっちがいいかという議論ではなくて、それぞれ一長一短がありますし、価格の暴騰が起こるというのは別に排出取引に限らなくて、非常に厳しい制約をかければ価格というのは上がるわけですね。炭素税でも税率が非常にはね上がったりするわけですから、企業の予測がつけにくいというのは政策をどういうふうにつくっていくかということによって大きな影響を受けますので、つくり方によっては非常に企業の不確実性が高くなるつくり方もできれば、ずっと先まで見通せるようなつくり方もできるということで、このフォーラムでは必ずしもそういうところに議論が集中したわけではないんですけれども、先ほど浅岡委員がおっしゃったように、今後はどういうふうにして第一約束期間の直前まで我々は進むべきか、あるいは第一約束期間でどういうふうにして約束を実行するか、第一約束期間の後はどうかというふうなことの中で、どういうふうにすれば各主体が進んで削減をするようなインセンティブが生まれるのか、あるいは負担と公平が確保できるのかと、あるいは先ほど佐和委員がおっしゃったような非常に不確実性が大きくなるような状況というのは、どういうふうにすれば防げるかと、そういうふうないろいろな要件を上げていって、それを満たす長所を持ったような政策手段をどういうふうに組ませればいいかということを検討する材料としては、私はかなりのものが出てきたじゃないかというふうには考えております。
 
【安原委員長】 ありがとうございました。それでは時間の関係もありますので、IGESにおける検討事例の議論はこれぐらいにしておきたいと思います。宮本委員、ございますか。
 
【宮本委員】 今、お話を聞かせてもらいまして、非常に有意義であると思うんですけれども、こういう議論は立場によって、考え方によって、これだとか、あれだとか、こういう組み合わせだということは情緒的に、または非常に定性的に議論がされているわけですね。多分この委員会というのは、このようなポリシーミックスをやるんだとか、そういうことを提案するところではなしに、こういうようなものを今後考えながら政策に提言していくべきだということを最後に言うことになるんでしょうね。
 そういう意味からも、ここで議論したからこれだけだということでは、なかなかできないので、私は先ほどからこれを深めていくということをおっしゃったので二つお願いしたいと思うんですね。一つは定量的な詰めのことですね。できるだけ詰められるところまで詰めてほしいなと思うんです。これについては一つはこういう計算とかを行っているところもございますし、また例えば炭素税ですと、海外で導入されたケースがあるわけですから、それによってどのように消費が減っていったかというような分析もあるかと思うんです。そういうような量的な検討事項というのが一つであります。
 それからもう一つは、それを行うことによって、先ほどから出ているところのいろんな利点ではなしに、弊害という問題もあるわけですね。例えば炭素税ですと、ほかの今までのエネルギー税とのバランスをどうするのとかいうような話がいっぱいあるわけですから、そういうようなものもある程度議論として出しておいた上で、最後の提言になっていくのではないかなということです。最終的な結論を出すのではなしに、それに至るところの一つの考え方みたいなもの、ちょうど筋道みたいなものをつくっていただいたら、非常にいいのではないかなと思います。
 以上です。
 
【安原委員長】 伺っておきます。
 それではIGESの関係はこれぐらいにしておきたいと思います。
 次の議題でございますが、我が国における地球温暖化対策と政策措置の現状につきまして資料を用意していただいておりますので、事務局の方からご説明をお願いいたします。
 
【地球温暖化対策推進室長】 それでは資料6、A3の大きい紙でありますけれども、これに基づいて我が国の対策と推進メカニズムの現状についてご説明申し上げます。この資料、こういう形でつくりましたものは、もともと部門別にこんな対策があって、このぐらいの削減見積量があるといいますのは、きょうも参考資料の1で温暖化対策検討チームの報告書を用意してございますけれども、その報告書の一番最後に参考資料がございまして、それをそのまま持ってきたものでございます。さらにこの資料6は、先ほど諸外国における温暖化対策と推進メカニズムの現状、議題の2としてご説明をいたしました。恐れ入りますが、資料3の6ページに戻ってごらんをいただきたいと思いますけれども、資料3の6ページでございます。資料3の6ページにはオランダの温暖化対策実行計画の基本政策のパッケージ、そしてそれが7ページまで続いております。それからちょっと飛びますけれども、10ページからは英国におけるプログラム案について同じようなフォーマットで対策ごとの推進メカニズム、これを縦横にした表を用意しておりますけれども、なるべくイギリスやオランダのこの様式に対応するような形で我が国の現状の対策と推進メカニズム、これを整理するように試みたものでございます。もちろん先ほどから議論ございますように、一つ規制とか協定とかいいましても、それぞれの国の事情の背景がありますので、○をつける、つけないだけで判断できるものではございませんけれども、一応ここはかなり機械的に、しかもほかの国と比較しやすいように試みにつくったものであるということを最初にご説明をしておきたいと思います。
 それで資料6に戻ってまいりまして、まず表の見方でございますけれども、○と△がところどころついておりますけれども、△がついておりますのは規制のところでありまして、産業の省エネ法に基づく省エネ対策、これは△になっておりますけれども、これはもちろん省エネ法に基づいて産業部門の指定工場制度でいろいろな対策を講じることが求められておりますけれども、もちろんこれは完全に規制で罰則がかかるというものではありませんし、すべての工場にかかるというものではありませんので、規制はもちろん規制的な色合いの濃い対策が部分的に行われるという意味で、この△を施しております。
 同じく民生の住宅・建築物の省エネ性の向上、これも省エネ法上の対策があるわけでありますけれども、これもどちらかといえば部分的ということになります。それ以外のもの、例えば規制で民生の省エネ法に基づく機器の効率改善、これにつきましては最初に勧告があり、公表があり、そして命令が下されるという、かなり規制的な色合いの濃い施策が用意されておりますので、これについては守らなければいけないという義務に限りなく近いということで○印を施したと、こういう違いを○と△につけております。
 それから左側の下の方に分類という注釈をつけております。ABCDEというのがありますけれども、これも私ども便宜上試みに分類したものであります。まずAというのは、先ほどの省エネ法の機器の効率改善というものにも該当いたしますけれども、実施が法的に担保されているということで、規制的な手法でありますので、比較的目標の達成が確実に行われるであろうというものをAに分類しております。それから一つ飛びましてCというのは普及促進施策があるということで、さまざまな普及促進をやっている、非常にソフトな対策をやっているというものであります。そしてBはAとCのちょうど中間的な色彩のものという意味で設けております。それからDは基本的に啓発が主で、効果が利用者に依存ということで、いろいろな普及啓発をするけれども、例えば民生の冷暖房の温度設定であるとか、こういったものにつきましてはやはりそれぞれの利用者がどれだけ自主的にやるかどうかにかかっているという、逆の意味で言えば不確実性が伴うというものであります。それから一番最後のEにつきましては、まだ現時点では実用段階ではなくて、今後技術開発を行う、そしてそれを普及していくということで、少し将来的なフェーズにかかってくるようなものであると。そういう分類を試みにやったものが各施策ごとに書いておるわけであります。
 それでこれについて逐一ご説明するのは省かせていただきますし、大体概観していただきますと、我が国の状況をおわかりいただけると思います。もちろん現時点では協定、排出量取引といったようなものは現状はありませんので、ここはすべての施策で空欄になっているということでございます。こういうことを一つ出発点として現状から今後どうするかという検討のたたき台として用意させていただいたものでございます。
 ちなみにこのABCDEというふうなことで分けたもの、それぞれ数字が左側の欄に書いておりますので、これを足し合わせてみますと、全体の百分率、全体に占める割合で申しますと、Aに該当するもので削減効果が見込めるものが19%、約2割ございます。それからB、これが41%、約4割でございます。それからC、普及促進施策、これが8%、それからDとEがそれぞれ16%といったような割合になっております。この割合がいい悪いという議論ではありませんけれども、現状がそういうことになっているということをご紹介したいと思います。
 今後、この小委員会でこういうものを一つのたたき台、現状としてご理解いただいた上で今後の適切なポリシーミックスをいろいろとご議論いただくということで、最終的な目標達成をより確実なものにしていくということが、我々としては求められてくるものだというふうなことでの資料とご理解いただければと思います。
 以上でございます。
 
【安原委員長】 ありがとうございました。それではただいまの説明に対しましてご質問とかご意見をよろしくお願いいたします。
 今のABCDEの割合のウエートをおっしゃいましたですね。それは排出量ベースですか。
 
【地球温暖化対策推進室長】 削減量ベースでございます。
 
【安原委員長】 削減量ベースですね。どうも失礼しました。
 
【佐竹委員】 質問ですが、削減期待量ですね。ですから、それに対して実績が1年しかないものもあるだろうけれども、既にもう90年代の初めからやっているわけですから、何遍もつくっているわけですね、何回か。それの実績というのが当然あってしかるべき。したがって評価があってしかるべきであると思うんですが、その点はどうなんでしょう。
 
【地球温暖化対策推進室長】 ご指摘のとおり、これは期待値といいますか、計画上の削減量の割合でございます。
【安原委員長】 実績ではなくて、ここの検討チームの報告書の末尾に乗っかっている計画ベースの削減量のウエートを分類したものですね。
 
【地球温暖化対策推進室長】 そうです。
 
【安原委員長】 ですから実績はまだ出ていない。
 
【天野委員】 出所を見ますと、これCOP3のときにつくられたように、平成9年ですから、大分前の資料ですね。これ以降こういう作業はなさっていらっしゃらないかというのが一つと、それからもう一つコメントですが、AとBというのはかなり量的に確保できるような手法というふうに考えますと、本当に微々たるものだということですね。先ほどのご説明では、それでもAとBで削減は60%ぐらいになるという話ですが、ほとんど産業部門の一部、転換部門の一部、それから運輸部門の一部ということで、ほかは全部AとBだけだと抜けてしまうということですから、それを見ても今後どういうことを考えなければいけないかというのはわかってくるんじゃないかというふうに思います。
 
【佐竹委員】 このごろの、これは環境庁に限らないんですが、施策一般を見まして、過去の政策分析と評価が不足しているように思います。これは各省通じてそういうことが言えるんです。これは無理もないことであって、結局過去にやった先輩の仕事に対する評価になってしまうわけですね。ですから帝国海軍以来、そういうことは余りやらない。利口な役人やらないということがあるんですが、それでは政策の進歩はないと思うんです。それはその時々のベストと思ってやったことでも、それは検討時間も限られてどうしてもやらなければならないということもあるので、別に個人の仕事を評価するわけではなくて、客観的に見てどうだったか、それはなぜかということの分析がなくて進歩はあり得ないと思うんです。これは政策形成のイロハだと思うんですけれども、意外とそのイロハが守られていないわけです。また守られにくい、特に日本のような。アメリカのようなシステムですと、これはほっておいたって政権交代すればやるわけですけれども、日本の場合にはやられにくい、そういう背景があるわけですから、意識的にその点はきちっとやっていただきたいと、かように思います。
 
【寺門委員】民間企業は投資をしたときには必ずこれは目標値があって、それに対して達成したものはAとかBとかというのは全部評価して、それに対して達成していないのはなぜかというのは、もうぎりぎり汗が出るぐらい説明をさせられるというのが民間企業ですから、投資とかそういうものの成果評価というのは非常に厳しいわけで、それでないと経営は成り立ちませんので、それは大変厳しいんだということはよく。だから、そういう観点でやっぱりいわゆる目標値というものを明確にした過程で、それに向かっていくというのは、かなり大企業の場合は組織的にはできるというのは、できてくれないと困るんですけれども、そういうふうにできていくので、自主行動計画でみんながやって、それがどういうふうに、小企業の方はもっと別のところに意識があるんでしょう。例えば省エネよりも優先すべき項目というものが例えばあると。そこのやつをこちらにシフトするというのは、なかなか難しいと。それをどういうふうにしていくのかというのは、相当インセンティブというのでしょうか、そういうものを働かせないといかないと。だから、そういうことを議論を、例えば産業部門のそういうより数の多いところについては、どうしていくのかとか、そういうふうに考えていく。それの延長線上に個人というのがあるわけですね。家計を持っている家内に私は全部財布を預けておるわけですけれども、家内がどういうふうに金を、消費をどういうふうにシフトするかというときのインセンティブというのは、どうしたら分けやすいのかと。ここに確かに項目としてシャワー1分間減らしたらどうだと書きますけれども、これは書いただけであって、では何なんだと。冷房の1度を下げるのを、上げるのを何なんだと、こういう議論をこれをどういうふうにするのかと。この前、たまたま省エネ部会の方がありましたときに、いわゆる消費者団体の方から、やっぱり知らないうちに省エネができる方法でないと個人はできませんと、こういうふうにお話がありまして、これは真理を突いた非常に率直なご意見だと思います。もちろん国民の何十%が意識を持って取り組んでくださるように時間をかけて教育を積み重ねながらいくというのは、これは20年、30年の世代を超えてやっていくということは重要だと思いますけれども、今それではどうするのかというときに、やっぱり知らないうちにということは、こういう機器ですね、機器が知らないうちに省エネをしてくれていると。そういうものをやっていただきたいと、そういうこであれば、多分買うんじゃないでしょうかと、こういうことなんですね。節約性というのはなかなかこれは難しいというのは、僕は非常に真理を突いたお話だったと思いますので、そういう意味では規制というレベルでも、規制というのは目標規制ですよね、機器の個々の目標規制というのがやっぱり技術と連関しながら進んでいくという形をどうやって持っていくのかと、これは住宅を含めてでありますけれども、それをもっと手法的に示していくということが非常に大事じゃないかというふうに私は思います。
 
【安原委員長】 ちょっとよろしいですか。今、佐竹委員がおっしゃいました実績をベースにした政策評価をやらなければいかんと。それが重要なことはそのとおりなんですけれども、なかなか実際上まだ期間が短い等のいろいろな事情からそれが的確にできにくいという事情もあるんですね。ですから単に役所の体質とかいうことだけではなくて、そちらの方が大きいと思うんですね。それで、その点はこの前の検討チームでも大変議論になりまして、できるだけそういう努力はしたんですが、結果的には佐竹委員がおっしゃるような形での実績評価というのができていないということでございます。
 そこで、ここの参考1の検討チームの報告書の8ページにございますように、8ページの第1節の前にございますが、制度的に確実な削減効果を有するのかどうかという定性的な評価に終わらざるを得なかったということなんです。その事情はまだ続いておると。やはりいろいろな分析をする場合に、この政策によってどの程度本当に効果が上がったのか、その他の要因とかなんかいうのは、分析はやっぱり学者の先生によれば五、六年ぐらいかけて、いろいろな分析をしないと、的確には出てこないという事情もございまして、そういうことになっております。その点はご理解いただきたいと思います。
 
【佐竹委員】 おっしゃることはよくわかるんですけれども、たしか90年ですか、一番最初に行動計画、それ以来、このシャワー1分間短縮的な話はライフスタイルの変更ということで随分使われてきているわけですね。その結果がこういう状況になっているわけで、先ほど寺門委員からのご指摘のとおりでございますので、そういう意味での評価ならできるのではないかと。そういう意味で、必ずしも数字を云々ということは申し上げているわけではないので、少なくとも行動計画をつくって、それ以来90年につくって現在まで10年近くたっているわけですから、そういう意味での政策評価はそれなりにできるはずですから、あってしかるべきではないかと、そういう政策評価がですね、ということを申し上げております。
 
【安原委員長】 できるだけの実績に基づく評価という努力はしなきゃいかんと思います。
 松野委員、それから佐和委員、それから村上委員。
 
【松野委員】 この資料の制度といいますか、そういうことと位置づけについてお伺いしたいんです。前の検討チームのときに参加させていただいて言ったことで、何かしつこく言うみたいなんですが、非常に詳しく調べてあるんですが、全体の信頼性、それからそのとき私が疑問に思ったことで、事務局の方からお答えいただいたことは、これは地球温暖化対策ということで取り上げた、この施策による排出量の減少であって、それ以外のものを含まないというお話ですね。それ以外のものがどれだけCO2の排出がふえるか減るかということはわからなかったわけですね。トータルとして最終的にどうなるかわからないと思うんです。
 具体的にどういうことかといいますと、運輸部門で1,300万トン動きかありますが、この中の細かいところで、この中身について建設省、運輸省からプレゼンテーションがあったときに質問したことで、その結果わかったこと。これは事務局の方でもちゃんと整理してくださいましたけれども、実は交通量がふえる、今後いろいろな意味で自動車がふえたら交通量がふえることによって、1,000万トンCO2の排出量がふえるということが別に考えられていると。しかしながら、道路をよくして、建設省ですから道路をたくさんつくって、そして渋滞などをなくすことによってその分はちょうど1,000万トン減ると。その部分はだからここに計算に入っていませんというお話で、つまりそれは別の施策であると。それだけのプラスとマイナスで、たまたまこれはゼロですが、明らかにそれはたまたまゼロではなくて、何か別の数え方をしていったか、それは別にゼロにしたのであることに間違いないですね。これはだって、もともとは交通量がふえることに対して道路をよくするというのは、CO2をちょうど減らすようにやるわけじゃないんですから、ちゃんと自動車が早く遠方に到達できるように交通渋滞をなくすんだから、決してちょうどゼロになるはずはないし、そういう大きなものがこの外側にあったら、これは一体なんだということになるので、その点たまたま私が疑問に思ったでかい1,000万トンだけが例外で、ほかはもっと全体的な検討をしてあるのかどうか、そのことをちょっとお伺いしたいと思います。
 
【環境保全対策課長】 ご指摘の点、前回の検討チームでもご指摘いただいたところでございまして、その道路整備によって渋滞を減らして削減をすると。これは実は大綱の中ではなくて、繰り返しになりますけれども、道路整備による渋滞解消の効果についてご担当の役所の方からご紹介があったところでございます。それで先ほど室長の方からご紹介しましたこの資料というのは、決して完全ではございませんが、今、政府として、大綱として京都会議に向けて関係省庁で案を出して用意をしたといいましょうか。6,800万トンの削減の中身を今具体的に示せる計画というのは、実は政府レベルでつくっているというのは、一つは先ほど佐竹委員からございましたが、90年の行動計画、それから最近のものでは大綱というものが上げられます。したがいまして、今、松野先生のご指摘の点も踏まえて、いろいろもし課題があるとすれば、そういった点も含めて、これから具体的には結果的に京都議定書での目標を達成をするという、そういう制度の検討、また対策を整備をしていくと、こういうのが基本的に審議会でのご審議いただきたいというところでございます。そういう意味では我々事務局として議論の素材を提供する中では若干限界がございまして、今、政府ベースで最新時点の数字とすれば、この分析をしたり、議論のベースとしてお出しする中では制約のあるぎりぎりのところと。新たに議論を始めるというような意味で数字をつくるということではなくて、今既にある資料の最大限のところでご説明をさせていただいたというところでございます。
 
【安原委員長】 ちょっと時間もなくなっていますので簡潔に。
 
【松野委員】 ということで、もしこれを直されるとしたら、さっきのように別の、これの施策だけじゃなくて、あらゆるものを含めてその結果どうかということにしないと意味がないと思うんですが、当然そういう方向でまとめられると。今までのやり方ではなくして、それ以外のものを全部洗い出してやらなければ意味がないと思うんです。
 
【環境保全対策課長】 繰り返しになりますが、そういうようなことも含めて政府全体でまた洗い直しをして、そういう数字が出てくれば、ぜひそれを使いたいと思っております。
 
【佐和委員】 これは質問というより意見なんですけれども、結論からいうと、私はビジネスアズユージュアルで、このままほっておけば、何の対策もやらなければ、例えば2010年に90年より27%ふえるとか、30%ふえるということがよく言われるわけですが、それは随分前提のあやふやなものであって、私自身はビジネスアズユージュアルというのはCO2の排出量がそんなにふえるとは思わないわけです。その理由を簡単にご説明しますと、85年から95年の10年間というのは物すごく伸びたわけですね。それはなぜそうだったのかというと、まず初期のころはいわゆるバブル経済ということで、例えば3ナンバーの高級車が大はやりにはやったといって、自動車の平均的な燃費効率が経年的に悪化したとか、それから電力多消費型の大型の家庭電化製品だとか、家庭用ファクシミリというものが猛烈な勢いで普及したとか、そしてエアコンディショナー自体がまだまだ85年から95年にかけてのころまでは普及途上にあったということなんですね。85年から95年でほぼ100世帯当たりの台数は倍増しているわけです。そういうこともあって、85年から95年というのは非常にふえたその辺の理由があるわけですね。そのトレンドを先に延ばすというのは、これは大きな間違いです。
 それからもう一つ、今現在、例えばちょうど申し上げた90年前後には、シーマ現状と言われていたのが、今やビッツ現状と言われるように、むしろ自動車は小型化の方向に向かっているということがございますし、そして今現在路上を走っているくるまで、2010年に依然として走り続けているのは恐らく5%ぐらいでしょうね。言いかえれば95%の車がリプレイされるわけです。そのときに、例えば自動車税制のグリーン化等によって低燃費車を普及させるというような政策措置を講じれば、例えば今現在自動車の排出するCO2というのは総排出量の20%ですから、燃費効率が平均的に30%改善されれば、それだけで6%削減ということになるわけですよね。そういうことで合わせて考えますと、10年後というのは、そんなにもほっておいてもふえないと思うんですね。
 それから第一、経済成長率が通常は2%とか2.5%というふうに想定して予測されるわけですけれども、まずこれから向こう10年間の平均年率の成長率が2%いくとはちょっと考えにくいということもございます。
 それから何と申しましても、こういう議論をするときに、一切触れられないのが産業構造の変化なんですね。転換なんですね。1985年と97年を比べますと、85年には製造業のGDPに占める比率、製造業が生み出した価値、比率というのが29%ぐらいだったのが、97年12年間で24.5%まで減っているわけです。約6%減っている。ヨーロッパの国々というのは大体製造業の比率が20%なんですね。言いかえれば、要するにポスト工業化というのでしょうか、あるいは経済のサービス化、あるいはソフト化というのが今後とも進行すると。これは自然の流れですから、いいとか悪いとかということは別にして、これは一つのまさにビジネスアズユージュアルとしてそういう変化は予想されるわけです。そういう意味で、GDPに対するエネルギー減単位みたいなものは明らかに低下するということもやっぱり考慮に入れなければならないと思うんですね。
 それから家庭電化製品の普及というのも、私はほぼ飽和状態に達しつつあるというふうに思っております。大型化とか、あるいは電力多消費型のものの普及というのも、ほぼ飽和状態に達している。これ以上お金持ちになったからといって、自動開閉ドアを取りつけたり、エレベーターを取りつけたりする健常者はまずいないというふうに思っております。
 そういうことも考えますと、決して今までのトレンドを伸ばして予測するという手法自体を根本的に考え直して、もう少し定性的にいろいろな要素を加味した上で2010年を見通す必要があるということを申し上げておきたいと思います。
 以上です。
 
【安原委員長】 貴重なご意見をどうもありがとうございました。それでは村上委員、どうぞ。
 
【村上委員】 一生懸命ライフスタイルの見直しをやっている、運動をやっている立場から寺門委員に一言申し上げておかなければいけないわけですが、ライフスタイルの見直しを私はやらない限り、なかなか日本全体が循環型社会へ変わるスピードは遅いだろうと。ライフスタイルの見直しが進めば、消費行動も変わってくる。そのことが企業行動も変える。また製品も変えていくと。こういう構図というのは、ある意味で想定できないことないですね。例えば私どもは1年間取りくみ、その結果を各組織から集めました。十分とは言えませんけれども、浸透して新しい動きも始まっております。結局はエネルギー量の提示の仕方とか、いわゆる創意工夫とか、結局は継続ですね、根気よくやると、そういうことでやっていかなければ、なかなかライフスタイルは一遍には直りませんし、特にこれをみんなでやろうなんていうのは古うございまして、みんなでいっぱい提示して、やれることからやろうよと、それで一つでも二つでもやってくれと、そうすれば何かの役に立つんだよという運動のやり方の切りかえておりますし、また今年の秋からはいろいろなNGOの方々と連携しながら、もっと広いライフスタイルの見直し運動というものを国民運動としてやっていきたいと思っております。消費者団体は消費者団体の責任を果たしてもらいたいと思っていますので、消費者団体の方々とも一緒に運動をやっていきたいと思っています。そんな一遍にはできませんが、根気よく創意工夫を加えながらやることがライフスタイルの見直し運動を成功させるもとだと思っております。1年でもある程度の成果は上がっていますから、継続してやっていきたいと。そのことは結果としていろいろなものを変えていくと、こういうことを申し上げておきたいと思います。
 
【安原委員長】 どうもありがとうございました。予定の時間がもうなくなりつつありますので、申しわけございませんが、ちょっと10分か15分ぐらい延長させていただきまして、最後の議題の我が国における温室効果ガスの排出構造、これにつきまして事務局からご説明お願いします。
 
【地球温暖化対策推進室長】 資料の7に基づきまして、手短にご紹介をしたいと思います。このデータは、既存の公表データ、表紙にも書いておりますけれども、今後、条約事務局に提出する予定のインベントリの報告書の案での暫定値の排出ケースを用いて試算を行ったものでございます。そういう位置づけのものでございます。
 まず、1ページ目でございます。図の1でありますけれども、これは部門別のガスの排出量で、左側がそれぞれの部門から実際に出てくるCO2等の排出量であります。それから右側のグラフがこれが発電に伴う排出量を電力消費量に応じて配分したものでございます。つまり電気を使用するところがCO2を排出するとみなしたものでありますので、エネルギーの転換部門がそれぞれの他の部門に配分されたというものでございます。HFC等3ガスについては、部門ごとではなくて、注にも書いてありますけれども、潜在排出量でございまして、これはまだ部門別に分けてはおりません。このような状況になっておりまして、左側のグラフごらんいただきますと、エネルギー転換と産業のエネルギー部門、これが25%強、そして配分した右側のグラフですと、産業部門が33%程度を占めているということで、これは非常に多くなって、次いで運輸部門が第2番目の部門になっているということでございます。
 それから図の2は、エネルギー転換部門における、これはCO2だけでございますけれども、排出量を示しております。若干これは細かく一般電気事業者の北海道電力から沖縄電力まで、それから卸電気事業者等も若干細かいですけれども分けてみたものでございます。さらに各電気事業者の自家消費等というのが下から2番目にあります。こういった状況になっているというものでございます。
 それから図の3は、産業のエネルギー関連の部門における産業別のCO2の排出量ということで、これも電気事業者の発電に伴うものを配分したものがそれぞれのグラフの先端の部分、ピンク色でつけ加えた部分がそれに当たりますけれども、鉄鋼それから化け学、窯業土石、紙・パルプ、こういった順番で排出量が多くなっているという状況です。失礼しました、金属機械、パルプという順番です。
 それから図の4が民生の家庭部門における都道府県別のCO2の排出量であります。左側のグラフがCO2の排出量そのものであります。それから右側は一人当たりのCO2の排出量を示したものであります。左側は当然大都市を抱える都道府県の量が非常に多くなっているということであります。右側のグラフを見ますと、北海道、青森を初めまして、やっぱり寒冷地のところがCO2の排出量が多くなっている。暖房に要するエネルギー消費というものが効いているのではないかというふうなことが見てとれるかと思います。
 それから次の図の5−1、運輸の旅客部門における輸送機関別・地方運輸局別CO2排出量ということで、上半分水色のグラフは、これは鉄道でございます。それぞれJRの会社別なんですけれども、東日本、東海、西日本は、いわゆる関東中部とか近畿とか、複数のブロックにわたっておりますので、これだけ別件にしておりますけれども、こんな状態であります。それからその下の濃い赤い色が自動車でございます。排出量を見ても、また輸送人キロ当たりのCO2排出量を見ましても、やはり非常に大きいということです。下から2番目が船であります。総排出量はそうでもないんですけれども、単位当たりのCO2排出量を見ますと、非常に大きな数字になっている。一番下が国内航空による排出量で、船よりも総排出量は若干多いわけですけれども、単位当たりのCO2排出量を見ますと、若干自動車よりも少ないという状況であります。概して鉄道が最も単位当たりの排出量は少ないということは言えると思います。
 それから5−2が運輸部門の貨物のCO2排出量であります。縦軸は先ほどとほぼ同じであります。やはり自動車の排出量が総量としても多いわけでありますし、単位当たりの排出量も多くなっている。船と航空機は、先ほどの旅客と逆転いたしまして、単位当たりの排出量は船は貨物は非常に少ないということで、やはり船舶による輸送というのはCO2の排出抑制という観点からは非常に有効であるということが言えると思います。
 それから一番最後、図の6でありますが。これは90年から97年、若干3年前のデータになってしまったんですけれども、それぞれの部門のCO2に限った排出量の推移でございます。一番右の方に部門別のこの7年間の増減を示しておりますけれども、産業部門は0.6という微増におさまっておりますが、運輸が2割強、そして民生(家庭・業務)が10%以上というようなところでありまして、やはり増加の著しいところをどうやって抑えていくかということがこの全体の対策の中の一つとしてやはり重要になってくるであろうということがうかがえると思います。
 簡単でございますが、説明を終わらせていただきます。
 
【安原委員長】 ありがとうございました。では、ただいまの説明に対しまして質問等ございましたら、どうぞお願いいたします。
 それではご質問がないようでございますので、一通り予定しました議題が消化できましたので、きょうはこのぐらいで議論を終わりたいと思います。大変長時間にわたりまして熱心なご討議をいただきましてありがとうございました。
 それでは次回会合でございますが、から具体的なポリシーミックスの議論を開始してまいりたいと思います。議論の出発点としまして個別の温暖化対策を確実に推進していくための政策措置につきまして、その特徴を整理した上で、幾つかのポリシーミックスのひな型のようなものを事務局の方でたたき台として作成してもらってはどうかと考えております。それから排出構造につきましては、非常に簡単に見ていただいたわけでございますが、次回には排出量のモニタリングを行う場合のデータ整備の現状と課題ということで事務局の方に整理をしていただきたいというぐあいに考えております。
 日程でございますが、お手元に日程調整のための皆さんの予定を書いていただく紙がございますので、これを事務局に出していただきまして調整したいと思いますが、9月下旬から10月の上旬ぐらいを次回日程として予定おります。調整をしまして固まりましたら、事務局の方から個別に連絡をさせていただきたいと思います。
 そのほか特に何かございますか、ご発言。なければこれをもちまして閉会としたいと思います。長時間どうもありがとうございました。