中央環境審議会第78回企画政策部会議事要旨


<日時>平成12年6月2日(金)14:00〜17:00

<場所>中央合同庁舎第5号館2階 講堂

<出席>

森嶌部会長、安原部会長代理、浅野委員、天野委員、江頭委員、北野委員、木原委員、幸田委員、佐竹委員、佐和委員、塩田委員、鈴木委員、中野委員、平岡委員、福川委員、藤井委員、星野委員、松原(純)委員、松原(青)委員、三橋委員、宮本委員、村岡委員、村杉委員、谷田部委員、渡辺委員、飯田特別委員、石特別委員、太田特別委員、廣野特別委員、横山特別委員、寺門専門委員、西岡専門委員

官房長、企画調整局長、自然保護局長、大気保全局長、水質保全局長、地球環境部長、環境保健部長、官房審議官、企画調整局企画調整課長、水質保全局地下水・地盤環境室長、水質保全局水質管理課長、企画調整局調査企画室長、企画調整局環境計画課長、企画調整局計画官

<議題>

(1)環境基本計画の見直しについて
(持続可能な経済社会の実現のための投資の在り方(環境投資)検討チーム報告・環境保全上健全な水循環の在り方検討チーム報告等)
(2)その他

<配付資料>

持続可能な経済社会の実現のための投資の在り方(環境投資)検討チーム報告書
(持続可能な経済社会の実現のための投資の在り方(環境投資)検討チーム提出資料(抜粋))
環境保全上健全な水循環の在り方検討チーム報告書
(「環境保全上健全な水循環の在り方」に関する検討チーム報告書参考資料)

<議事経過>

 三橋委員と事務局から「持続可能な経済社会の実現のための投資の在り方(環境投資)」について報告をした後、議論。

【天野委員】
○第1に、環境投資の定義について、投資は大きなプロジェクトの中でいろいろな種類の投資が混ざって起こることが多いが、その一部だけが環境投資の定義に合い、残りの部分は定義に合わないという場合に、全体としてはどのように判断すればよいのかが曖昧になるのを、どのように整理するのか。
・第2に、「必要な投資のレベルが確保されない場合」あるいは「環境投資が所要の水準に達していないと判断されたら」という記述があるが、これは数量的に見て足りないということか、あるいは適切な分野に行われていない、つまり民間の苦手な分野だから公共部門が補うべきであるという質的なものなのかがわからない。もし数量的だとすると、国としてこれだけの量の環境投資がなされるべきだという考えが前提となるが、それはどこから出てくるのか。計画があり、将来像やそこへのシナリオを数量的に描いた上で、環境投資のレベルは全体の固定投資の何%くらいという基準があり、実際はそれに達していないことを示すのならば、前提となる数値目標が必要であるが、それは非常に難しい。あるいは、ある特定領域について民間の投資が不十分なのでそれを補う必要があるというのであれば、どういう基準でその領域を判定するかが重要。
・最後に、この報告書は国内の投資の話だが、日本からは多くの対外投資を行っており、それについて全く触れる必要はないのか。経団連は対外投資の際の環境配慮の方針を出しているが、民間に任せるという記述が必要なのか、あるいは政策的配慮が必要ならそれを書く必要があるのではないか。
【三橋委員】
○投資の一部が環境投資である場合にどういう配慮をするかについて、ここでは「投資のグリーン化」を言っているが、それはアセスなどこれまで開発された方法で対処していくという議論であった。量と分野の議論は、必要な分野に投資できないという議論があまり積極的に問題意識としてあがらなかったので、事務局に追加的に説明願いたい。国際的な投資をまともに扱っていないのは、基本計画があくまで国内問題を中心に作られているためテーマとして突き詰めた議論をしていない。
【福川委員】
○確かに設備投資には投資の中の一部が環境関係であるものが多いことは議論になった。産業構造が変化する場合について見ると、直接的に環境保全でないにせよ、全体として見れば経済のパフォーマンスがよくなる分野もあると思う。この非常に複雑な点をどう捉えるかであるが、ここで投資のインセンティブを与えるとすれば、環境の投資だと、環境に関する部分についての注目を集めた投資政策が重要になるだろう。もう一つ、広い視点でいうと、産業構造政策のような形で構造を変えていくところもあるが、そこまで広く環境投資というと焦点がぼけてしまうので、そこは全体の産業構造投資という観点で捉えてはどうだろうかというのが少なくとも自分の認識である。
・国際関係の問題については最後にも若干指摘しており、重要な点であるが、別途廣野先生の国際協力に関する分野の検討チームがあり、海外投資については国際協力銀行、貿易保険等、いろいろなインセンティブの手段がある。環境投資のグループでは主としてそのような問題があるということを「終わりに」で指摘したにとどまり、別途廣野先生の方で検討していると理解している。
・量か分野かということについては、結果として環境関連の投資の水準がどれくらいかは出てくるが、結局投資後のパフォーマンスがどうかということなので、議論としては主として質に関する分野、それこそ持続可能な状況であるか、その結果を見てその結果を実現するための必要な投資をどのようにするかということ。結果として投資効果がどうかを主として質の面で考え、それが十分でなければ量のインセンティブの方に転化していく。
【天野委員】
○経済と環境が大きく絡んでいる分野については何らかの数量的な裏付けが必要で、「所要の投資」、「必要な投資」を判断する際に、環境に関するインデックス、経済に関するインデックスを見比べて判断できるような材料を集めることが重要なので、環境省になったらしっかりとやってほしい。
【事務局】
○一番議論されたのは、環境に関する統計や情報が非常に不足しているということなので、天野先生ご指摘の点は検討したいと思っており、「情報に関することをきちんとやるべき」ということを4の(3)の2に書き込んでいる。数量か分野かという点は、例えば投資のスピードにタイムラグがあり、社会インフラと一体となって環境投資がなされるものについて、インフラ部分が遅れている場合に問題が出るであろう。あるいは環境上の「負の遺産」が増加する状態だと、必要な投資が十分になされていないという問題もある。更に非常に有望な環境負荷低減技術があってもその普及がゆっくりな場合は、必要な投資が必ずしも十分ではない。
【森嶌部会長】
○公害時代ならターゲットもはっきりしていた。地球環境になってくると、何を目指して投資した金額がどうかというのは作りようがないのかもしれない。経済学者の方で提言はないか。
【天野委員】
○長期的に考えれば例えば蘭、米、英など、いろいろモデルを作ってそれで意志決定をするわけではないが、モデルからいろいろ経済と環境に関する情報は出てくる。それで完全に解決するわけではないが、少なくともそれくらいのレベルの準備は必要である。
【浅野委員】
○「統計の在り方についての検討の必要性が議論された」という問題意識を持って議論されて、今後どのように展開するのか非常に興味がある。統計の数字がいくらあっても、統計の数字そのものは単に事実を表すだけなので、それをどう評価していくのか、どう使うのかと言う問題が最後に残っており、それはまさに指標の問題である。しかし、指標をただちに判断基準としてダイレクトに話し始めると、間違えた場合にとんでもないことになる。指標を直ちに判断基準だとすると問題になりうるので、「モデルを使ってその数字をじっくり見ながら考えることが大事である」というのはポイントである。
・何かの数字の目標を掲げて、それが達成できたかどうか、いくらお金を投入したか、という議論で解決できるものがあればそれはよいのだが、解決できないところは大変で、これは共通に課題として残っていることを意識しながら、環境基本計画の中で解決できる所はできるだけ解決の道を示していく以外にないと感じている。更に今後の他の検討チームからの報告を見ると答えが出てくるかもしれないのを期待している。
【佐和委員】
○この報告書においては、道路が依然として環境投資としてみなされるのかどうか、伺いたい。
・3頁「(3)民間投資の状況」について、「国際的に資源・エネルギーの制約が強まる見通しの下、資源の効率的利用や再利用など資源効率性の向上が極めて重要な課題となる」とされているが、制約が強まるというのは、資源・エネルギーの価格が上がるということ。価格が上がれば、資源効率性が高い設備投資を行うことは当たり前で、別に市場の構造が変わらなくても、ごく普通のマーケット・エコノミーで起こりうる。従って、エネルギーや資源の制約が強まった結果として市場の構造が質的変化を起こすというのも良く分からないし、同時に、産業構造の変化が市場の質的変化をもたらすというのも良く分からない。
・「環境のような外部経済性の強い事柄について全面的に市場に委ねることとした場合には、予定調和的に最適状態が実現することは期待できず」とあるが、環境を破壊しても、それによって経済効率を高めることが最適状態と考える人がいれば、「最適状態が実現されている」と言われても仕方ない。この辺の意味がはっきりしない。
・「市場価格への内部化のための措置など適切な政策対応や資源・エネルギーの使用の削減、効率化、再生可能なものへの転換等を、経済面から見ても強力に推進する必要がある」とあるが、ここでの「経済面から見て」の意味が分からない。
【森嶌部会長】
○道路に対する投資を環境投資と考えるかどうかという第1の点についてまず答えていただいて、第2の点について概括的な答えがあればお願いしたい。
【事務局】
○第1の点については、この検討会としてはっきりとした結論は出ていないということであり、12頁の「環境保全経費の改善」の中でどうするかということを議論しようということである。
・なお、現在の環境保全経費の中には、道路は入っていない。「運輸・交通の分野における施策の推進」という項目はあるが、これには例えば公害防止用の輸送機器の研究とか、交通体系をどういう形にしたら環境に良いかという調査研究は入っているが、道路そのものは入っていない。
・ただし、道路の中でも、沿道整備で木を植えるという形で、環境を良くするものが特別出せる場合のみ入れている。これに対しては、道路そのものは、例えばバイパスをつくることによって交通渋滞がなくなり、排気ガス対策に資するのではないかといった形で、道路はもっと幅広く環境に資するのではないか、という議論もある。
○第2の点については、整理が悪いのは、幾つかの点が混じり合って書かれたということではないか。
・一番最初のパラグラフは、民間投資全体がどちらの方向に向かって動いているのかということを書いたものである。民間投資は基本的に需要が引っ張っていくことが前提である。企業においても、そういう中で、消費者のニーズの変化というものを追っていく形になるのではないか。そういう流れの中で、持続可能な経済社会にふさわしい市場が形成される。その方向に沿った形で動いているということを記述した。
・なお書きの部分については、我が国の経済構造が今どちらを向いているのか、あるいは資源・エネルギーの制約が強まる中で生産構造がどちらの方向に向いているのかということである。言葉がよく熟していないところはあるが、そういうような大きな動きも生産と消費のパターンが持続可能な経済社会にふさわしいものになっていくということに反する方向ではないだろうということを記述した。
・「しかしながら、……」で書いているのは、市場に全面的に委ねることはなかなか難しい中で、市場価格に環境を内部化していく対応が必要だろうということである。
・その下に、資源・エネルギーの使用の関係で、「経済面から見ても」というのは、環境の面から見ても、経済面から見ても、方向性としてこの方向は支持されることである、ということを書いたものである。
【廣野委員】
○物理的な投資を投資として考えるという格好でかなり限定されており、ソフト的なものはあまり投資と考えていないのではないか。なぜ、環境教育投資が投資でないのか、伺いたい。
【福川委員】
○確かに教育投資も一種の公共投資といえるかと思うが、教育の中で環境の教育がどのくらいかということは、なかなか摘出しにくいこともあり、どちらかといえば、民間の設備投資に関する分野の投資の方向付けというところに焦点を置いた。問題の点は重要であると思っているが、ここではそこまで入れずに検討したということである。
【浅野委員】
○「環境保全経費の改善」という記述は、非常に重要な指摘でないかと思う。福川委員が御説明になった環境投資の全体フレームの話とこの部分は多少ずれがあるという気がしながら聞いていたが、環境保全経費として積算するときには環境教育分が上がってくる。現実には、政府が全体として環境保全のためにどれだけ予算を投入しているかというバロメーターである環境保全経費では、かなりはっきりした哲学で一貫した方針があるかどうか良くわからない面がある。
・幸いにも今の話で道路は入っていないということがわかったが、「これは環境保全経費だ」という省庁の主張をうのみにしていくと、前の地球温暖化の計画のように何でもかんでも入ってしまうということになることから、この辺のところを指摘されたのは非常に大事な点であると思う。
・「環境基本計画と一体的な運用が行われているとは言いがたいので、それを改善しなければならない」ということについて、結局は事務局に考えてほしいということであるが、チームの中でもう少し突っ込んだ御議論があったかどうか伺いたい。
【福川委員】
○普通、各省庁が予算要求をしているが、それについて環境庁がどこまで各省庁の予算にものが言えるか言えないかという点についていろいろ議論があり、「それを効率よくすることをもう少し環境庁で考えてはどうか」という意見もあったが、環境庁としてはなかなかそこまで手が回っていないのが現実。何か工夫ができないのだろうか、という点について委員からいろいろ意見が出たところである。
【三橋委員】
○環境保全経費に関しては、省庁間の縦割り行政にどこまで切り込めるか、環境庁が庁から省になる過程でどこまで実力が発揮できるかという大問題がその後ろにある。
・同経費について相当の意見があったが、その辺の書き方が非常に難しいという形でここに至っている。

休憩をはさみ、村岡委員と事務局から「環境保全上健全な水循環の在り方」について報告をした後、議論。

【北野委員】
○「環境保全上健全な水循環」の定義について、「自然の水循環がもたらす『恩恵』が基本的に損なわれていない状態」とあるが、その「恩恵」をどこまで考えるかが問題。報告書では、例えば親水公園等の水に親しむような点については触れられているか。
【村岡委員】
○ここでとらえた水循環については、スケールが大きい流域を対象としている。その中で当然親水に絡む、例えば下水処理水を公園に導水するような課題も出てくると思うが、流域全体の水の流れに絞って討議しており、そうした「親水面」の整備の在り方については報告書には載せていない。
【幸田委員】
○「健全な水循環」の「健全」という中の一つに汚染対策も含まれるか。今、下水管や地下鉄工事の凝固剤などの漏れにより、昭和30年代よりも深い井戸水でないと飲めないと部分的に言われている。インフラの責任をもっと強化する罰則とか対策については、どのようなことをイメージしているか。
・「浸透ます」はお金もかからないので今後の措置として大事であると思うが、例えば新築住宅、一戸建てなどに対する義務化は考えているのか。
・フライブルグ市などに導入されている分割下水道料金制度のような経済的なインセンティブをこれから導入していくことも必要と考えているのか。
【村岡委員】
○第一の質問である地下構造物等からの漏水の問題は確かに大きな問題であるが、検討に資する具体的なデータもなく、今回の検討事項の中で、その問題を取り上げて議論することはできなかった。
・種々の住宅地域における浸透促進装置に関しては、かなりの箇所で、特に大きな住宅地域で行われていて、不浸透でくるんだ住宅地と比べると、流出の状況を変えるというデータがはっきり出ている。地下に浸透させるという考え方については、今後、森林や農村地区でも進めていかないといけない。
・下水道に雨水が入るかどうかは、量的には、合流式下水道か、単独式かで押さえられる。その後、下水道の料金がどのようになっているかについては、事務局に説明願いたい。
【事務局】
○浸透ますや公的部門の貯留浸透施設の整備については、都市部では浸透涵養能力を高める施設整備の必要性があり計画的にやっていってはどうか、ということまで話しているが、民間部門に義務づける議論はしていない。おそらく、地域ごとに計画を作る中で、議論されると思う。規制以外にも助成的な、支援的な措置も必要であると思う。
・分割下水道料金制度のような料金等の問題については、節水の文化を考えなければいけないという指摘が検討会であり、突き詰めていくと経済的手法という議論もあるかと思うが、直接的な議論はなかったと思う。ただ、各流域での議論の参考として、下水道ではないが、神奈川県が上流の森林整備のために水道料金の一部を充てていることを報告書に載せている。
【横山委員】
○世界的にも水問題が大変叫ばれている中で、日本の水事情の将来がどうなるかという具体的な将来像が深刻であると分かれば、インパクトも違ってくると思う。水に関する6省庁の会議などでこうした話は出ているのか。
【村岡委員】
○水問題の将来については、直接的には報告書で扱っていない。ただ、国土庁が扱っている需要の将来予測や問題のデータを参考にすると、原単位(1人当たりの使用量)では、大都市では減りつつあるが、発展の可能性のある地方都市も多いので、必ずしも減少に向かっているわけではない。
・昨今は環境問題が大きい時代なので、いかに水利用を合理的するかという工夫はされているが、何年後に水需給がひっ迫するかという具体的な予測は、おそらくどの省庁でも行っていないと思う。
【事務局】
○本検討会においては、どちらかというと流域を念頭において、山林がもつ地下の浸透能力の低下や川の水量の減少という問題が健全な水循環の恩恵を損なうため、それらを健全にしようという方法を考えている。したがって、全国的に見て日本の水資源が将来どうなるかという議論は行っていない。
・関係省庁での議論については、おそらく国土庁などで心配していると思うが、検討会と同様に、将来的に日本の水資源をどうするかではなく、既にある水循環に係る問題を何とかしなければいけないという発想でやっている。
【森嶌部会長】
○将来日本の水がどうなるかを推測しているという情報は持っていないのか。
【事務局】
○結果や詳細は分からないが、国土庁が、温暖化が進むと日本の水資源がどうなるかを研究しているようである。
【村杉委員】
○今、日本では上水道と下水道という2本の道しか整備されていないが、ヨーロッパで行われている長期的な中水道の整備について報告書で触れられていないので、お尋ねしたい。
【村岡委員】
○中水道については、衛生上の問題もあり、検討し得なかった。ただ、中水道の考え方は当然あり、それに代わるものとして現在、ビルなどで屋根からため込んだ、浸透ますを経たりして雑用水に使うことが進んでいる。実際に、下水道の処理水を再利用する、雨水を再利用する、都市部の洪水対策として、地下河川や大きな貯留施設を地下につくることも行われている。中水道の活用は一つの課題であるが、まだ学問研究レベルと理解している。
【浅野委員】
○環境基本計画の議論を受けて一番最初に出されたのが、松尾座長の下での「水環境ビジョン」のプランであったと思う。本ビジョンは参考文献には入っていないが、本報告書をつくる際にここで書かれたことをどれぐらい意識していたか。
・水循環というときには、何となく河口で話が終わるのではなく、大きな循環があることを強調する必要があると思う。その意味で、28ページの「目指すべき健全な水循環の姿」と書いてある部分が基本計画見直しの際にかなり大きく取り込まれる部分であろうと思う。
・「カスケード利用(上流から下流にかけて繰り返し利用すること)」ということも非常に重要な政策の提案であり、こうした重要な指摘が報告書の中にあるので、これを評価しながら、全体として、水循環のための水循環ではなく、それを1つのキーワードとして考えようとしたということを生かしていく必要がある。
・あとがきの部分については、計画の中に取り込むべき。例えば、個別施策についていうと、地下水の流れについての研究が不足しているという重要な指摘がある。また、閉鎖性水域における水質問題についても、「水の流れの視点をも考慮した総合的な負荷削減対策の推進も重要である」とされている。
・環境基本計画の最初のところに環境基準を書いているが、これは、かつて環境基準があったからそれを落としてはいけないということで書いているのではなく、水循環を考えるときの基本がそこであり、そのことを意識しながら水の流れを変えよう、という考えで書いたものである。報告書においては、その辺がやや弱くなっていると読むのは間違いか。
・非常に貴重な提案がたくさんあり、基本計画の中に入れられるものも多数あると思っている。まずは、全体のフレームはどの枠の中で考えられているかを伺いたい。
【事務局】
○水環境ビジョンについては、参考資料には特に明示的には掲げていないが、この報告書を作るときにも、適宜参照しながら資料の作成などを行ってきた。
・「幅広くとらえるべきである」という意見については、検討チームの委員の先生方からも沿岸域も含めて議論すべきであるとの意見が出ていたが、あまり幅広い議論よりも、水循環の視点から、まさに重要な水の流れに絞った議論をしていただいた。
・水質の問題への対応も重要である旨は「あとがき」に明記しており、環境基本計画の改定に当たっては、積極的な対応を記述していきたいと考えている。
【藤井委員】
○報告書に、流域協議会の流れを展開する上で関係省庁で知恵をしぼり積極的に対応していく必要があるといっても、現場では全然できていない。環境庁が主導性を発揮して、流域協議会で非常に有効な形が打ち出せる方法までも含めて、盛り込んでいただきたい。
・非常に有効なこういう流域協議会があり、健全な水循環がかなり再生しているということがイメージされて議論されたとすれば、その具体的な例を伺いたい。
【事務局】
○協議会については、環境庁の委託調査により、富山県と静岡県の方で関係者が集まり協議会のような会議の場を設けて、その地域の水循環のあり方について検討している途中である。うまくまとまればモデルケースとして全国に示せると考えている。
・具体例については、地下水が特に貴重な生活用水となっている熊本市において、保全回復計画・地下水保全指針を作り、地下水汚染などに対しても回復に努めている。
【天野委員】
○下水道の普及率は都道府県により大きく異なると考えられる。水環境はかなり地域的特性が大きいと言われているのに、平均的な政策を論じるのはあまりふさわしくないと思う。もう少し地域の特性に合った、状況に応じた説明はどこかで必要でないかと思う。
【事務局】
○下水道の普及率については、水循環の変化に係る歴史的経緯を概観するため、全国レベルの状況を分析したものである。御指摘のとおり、水環境は、流域ごとに非常に異なる状況であり、そのため、計画を作るときには、流域ごとに実際に調査をして、対策を個別に考えていくという取組が示されるべきものと考えている。
【佐竹委員】
○山が荒れると魚がとれなくなる、あるいは養殖が駄目になるので、沿岸漁民は非常に山に関心を持っている。例えば、北海道、三陸、広島等の漁師が、山林所有者、森林組合系統と一緒になって、水質だけでなく、流域全体の水環境をよくする試みを行っている。
・もう一つ、「矢水協」といっているが、愛知県・矢作川の流域で一種の王国をつくり、行政上の権限は県が行使するが、矢水協が開発に関してイニシアティブを発揮できるシステムをつくっている。長野県の山林所有者から三河湾の漁師まで入った協議組織ができており、10年以上の実績を持っている。
【木原委員】
○親水性の問題とかアメニティの問題については、水循環が豊かにあってはじめて形成されるものである。その基盤を確保するのが検討会の目的であったと思う。
・幅広い問題がまだあると思う。特に農薬汚染とか化学物質汚染の問題も非常に重要な問題でないかと思う。
【森嶌部会長】
○今回は、水系の循環、水の流れということに焦点を合わせて、あまり拡散しないように議論をしたが、環境基本計画の見直しの段階では、もう少し広げ、必要な資料等を用意していただきたい。

<以  上>