中央環境審議会第58回企画政策部会
議事要旨


<日  時> 平成10年10月21日(水) 10:30〜13:30
<場  所> 法曹会館高砂の間
<議  題> 1.地球温暖化対策に関する基本方針について
          2.環境研究技術基本計画について
          3.その他
<配付資料> 1.中央環境審議会第57回企画政策部会議事要旨及び会議録
          2.企画政策部会委員名簿
          3.地球温暖化対策に関する基本方針について(諮問)
          4.企画政策部会における基本方針の審議の進め方について(案)
          5.環境研究技術基本計画について(諮問)
          6.環境事業団事業小委員会中間報告
          7.環境教育小委員会中間取りまとめ
   参考資料1.地球温暖化対策推進大綱
   参考資料2.1996年度(平成8年度)温室効果ガス排出量について
   参考資料3.気候変動枠組条約第4回締約国会議(COP4)について
   参考資料4.地球温暖化対策の推進に関する法律
   参考資料5.地球温暖化対策の推進に関する法律に関する補足資料

<議事経過>

 冒頭、真鍋大臣の挨拶の後、議事に入った。

1.地球温暖化対策に関する基本方針について

 事務局より、資料に基づき諮問に至った背景の説明があり、その後、質疑が行われた。

○ 説明の中で、国会の付帯決議に触れたが、今日の配付資料には入っているか。

(環境保全対策課長)直ちに、配布させていただく。

(部会長)地球温暖化対策に関する基本方針(以下「基本方針」)は、法律で枠がはめられているが、短期間に細部にわたる議論も必要なので、起草委員会的な小委員会を設けることとしたい。基本方針の審議や考え方について、事務局と相談し資料を用意した。

 事務局から資料4の説明が行われた後、質疑が行われた。

(部会長)環境基本計画の中にも温暖化対策が盛り込まれ、90年の地球温暖化防止行動計画、本年の地球温暖化対策推進大綱にも具体的な施策がある。こうした中で、基本方針をどのようなものにしていくか、本審議会で十分議論していただきたいと思っている。本日は、審議の進め方を含めて、全体的な考え方について、フリーディスカッションをお願いしたい。私自身、法案審議の過程で参考人として国会に呼ばれたが、その際の質問で、この法律で本当に温暖化対策が進むのかという質問を受けた。私としては、この法律の中核は基本方針であり、COP3での合意を実現するための取組を進める上で、基本方針は重要と考えている。

○ 第7条第2項第4号の「他の者の温室効果ガスの排出の抑制等に寄与するための措置を含む。」という部分が分かりづらい。「寄与するための措置」について事例的なもので説明願いたい。

(環境保全対策課長)例えば、製造メーカーが製品を作って供給する際に、製品を使用する消費者が、使い方について工夫することによって温室効果ガスの抑制を図るということがあるかと思う。その際に、メーカー側が消費者に対してその使用方法などの情報を提示することによって、他の者の温室効果ガスの排出抑制に寄与するというのが一つの例としてあげられる。

(部会長)自分のところで減らす訳ではないが、自分のところでつくったものを販売する際に、消費の段階、あるいは廃棄の段階で減らすということも含まれると理解している。

(地球環境部長)補足すると、使用段階の工夫もあるが、自動車などそもそも温室効果ガスの排出の少ない製品を開発し供給することも事業者にとって重要な役割である。また、廃棄段階でも、より排出の少ないものを研究することや、国際協力面も含めて他の主体の取組に寄与するということも考えられる。

○ 「相当程度多い事業者」と記述があるのが、対象となる事業者については、ある程度排出のあるものに限定されていると考えてよいか。

(地球環境部長)「相当程度多い事業者」となっているが、本法では計画の策定等が法的義務として定められているものではない。通常の法律で義務を課す場合は、対象を具体的に定めるが、この法律では義務を課すものではないので、考え方として「相当程度」という記述にしてある。

(部会長)製品の製造工程では、排出量が少なくとも、使用の段階で相当排出するような製品も考えられる。質問は「相当多い」というものは何かというよりも、「相当多い」ということがどの範囲まで含まれるかということではないか。

(地球環境部長)事業活動それ自体から発生する総排出量が相当程度多いということを念頭に規定されている。「他の者」が使用者を含めているということではない。

○ 基本方針のかなりの部分は政府・自治体や一定の事業者の自らの行動に関するものであるので、各々の計画には現在の排出量、将来の削減目標、削減手段等の措置内容を盛り込むことを基本方針で規定して欲しい。また、一定期間ごとに目標の達成率を計り、その要因分析をするなど、数値のうえでのチェックを行うような規定を基本方針を定め、実効あるものになるよう希望する。

○ 法第7条の2のところで「基本的方向」、「基本的事項」との表記があるが、行政側では、この語句の解釈について了解はあるのか。基本的であるか、ないかという判別が我々にはできない。

(部会長)法律上は、策定権者である内閣総理大臣が決定することではあるが、案を審議する企画政策部会においてその内容を議論して決めるということと思う。

○ 企画政策部会で決定されたことでも、具体的すぎて基本的でないということで却下されるようなことがあれば問題なので、あらかじめ決めておく必要があるのではないか。

(環境保全対策課長)あらかじめ、基本的な事項とはなにかという線引きは設けていない。

(部会長)環境基本計画の場合においても、基本的という内容については審議の過程で明らかにされた。正式には閣議で決定することではあるが、企画政策部会において原案をまとめる中で、明らかにしていくべきものと考えている。

○ 96年度の温室効果ガスの排出量は増加傾向であり、特に運輸部門において顕著に増加している。例えば、運輸部門の排出抑制のために、この法律をどのように活用すれば排出量が抑えられるのか、具体的に説明願いたい。

(環境保全対策課長)法律の中にはいろいろな要素があり、例えば、基本方針の中で、人の移動を抑制するということを規定するようなことが可能である。具体的措置の中では、運輸関係の事業者が、排出抑制のための計画を策定し、実施することが、法律に定める直接的な規定である。マクロ的には、二酸化炭素排出の少ない交通体系を構築することについても基本方針の中で方向性を示すということもあるし、環境庁長官が、温室効果ガスの発生の抑制等に資する施策について協力要請することもできる。改正省エネ法に基づくトップランナー方式における自動車の燃費基準についても、基本方針の中でその考え方を示すことができる可能性もある。

ここで、真鍋大臣退席。

(部会長)私としては、本法律においては、基本方針が重要であり、基本方針をどう決めるかによってこの法律に実効性が生じると考えている。

○ 改正省エネ法などの関連法と、本法の仕分けはどうなっているのか。

(環境保全対策課長)いわゆる二重規制になるかということなら、二重規制ではない。

(部会長)他の規制法との関係も、基本方針の中で整理しなければならない。仮に他の法律に抵触するような事項を基本方針において定める場合には、審議の過程でどう整理するかについても十分議論していただきたい。

○ 現在は温暖化抑制対策が中心と思うが、地球温暖化が避けられないという状況で、温暖化が生じた場合の対応策についても検討の対象となるか。当面は、京都議定書の実施に向けて排出量の安定化から削減に取り組むと思うが、審議の過程で対応策をどう考えたらよいか。

(部会長)基本方針の時期的なスタンスをどの程度とるのかということと思うが、当面の目標は、2008年から2012年である。当然、科学的な知見の集積状況を見つつ、その先も視野に入れて審議する必要がある。

○ 地球温暖化対策推進大綱に記述があるレベルの対策については、基本的事項として理解してよいのか。

(部会長)この点については、審議会として議論する訳ではあるが、事務局としてはどう考えるのか。

○ 大綱は、本部会での審議の拘束になるのか、無関係であるのかその関係について説明願いたい。

(環境保全対策課長)大綱は政府が緊急に講ずべき対策であり、そのまま基本方針に導入するのは知恵がない。レベルについては、あらかじめ事務局で決めたものはない。

(部会長)私は、中環審は政府の審議会であり、政府がこれまでに決めたものは考慮しなければならないと思う。大綱は政府の措置を決めているが、本法律は、すべての主体の取組を対象としている。また、基本方針は法律に基づき閣議で決定するという点でも大綱と異なっている。大綱と基本方針の内容や方向がまったく違っているということになると、政策的政治的に、また、論理的にも適当でない。従来の政策を前提、考慮しつつ審議する必要がある。これまでの計画は、施策の羅列であり、プライオリティ付けやフォローアップが不十分であった。この基本方針の審議も、こうした過去の経験を踏まえて進める必要がある。小委員会の審議の際に、実効性の確保に留意して欲しい。

○ 過去の増加傾向を減少に変えるのは、極めて困難な課題であり、その難しさを事務当局は自覚すべき。かつての行政は数量目標を示すのを避けてきたが、今日では許されない。過去の分析を徹底的に行い、6%削減のために戦略的目標を絞って政策的割当てを検討し、政府としての考えを持っておく必要がある。それに基づき、ヒアリングの際も、政府の措置がどのような影響を持つかという点を明らかにするようなものにすべき。例えば、大綱でいう、都市づくりや公共交通機関の利用促進については、行政としては、具体的な目標を立てそれを行政責任者に割り当てるようなことを考えるべき。施策を削減目標量に具体的に結びつけるのが望ましいが、それができない場合でも、どの程度削減効果を期待するにか、施策がどの程度効果があるか数量的に示す努力が必要である。

○ 運輸部門からの排出量の増加が問題になっているが、台キロでは2010年に140%の増加が見込まれている。これを94%まで下げるには3〜4割の削減が必要となる。他の措置と併せて台キロではどの程度の削減を行うか、目標や目標年次を検討する際に当面10年程度ということは分かるが、その先のライフスタイルやビジネスのスタイルの変化に伴う排出量の変化を含めて、コンテクストを明らかにしたうえで、長期的戦略を議論する必要がある。2010年だけでなく、2050年は長いにしろ2020年、2030年の時点での状況を見通したうえで、2010年時点での必要な措置を分析して欲しい。

○ 地球環境の変化のメカニズム、研究の結果出された様々な数値が持つ意味になど、これから研究の役割が重要であり、基本方針の中でも研究の推進を掲げるべき。

○ 基本方針は抽象的なものにならざるを得ないと思うが、ある程度具体的措置を念頭に置いて策定すべき。その場合、具体的措置の効果がどの程度あるか、また、全体として2010年を見通してどの程度の効果が出るかが問題となると思う。この法律は、京都議定書の6%削減目標を達成するためのものでなく、その前段の自主的な努力を進める枠組であるが、それにしても6%削減という目標を念頭に置いて考えるという理解でよいか。その場合、現在政府が6%削減の内訳を示しているが、この法律が6%削減の担保法でない点を踏まえると、必ずしも内訳にとらわれずに全体として6%程度の削減を目指す基本方針という理解でよいか。

(部会長)これを今議論するのは、時間的に困難。6%削減を個々に割り当てるのは無理としても、6%削減が達成できるような方向で、基本方針を考えていくということでいかがか。いずれにしても、6%を目指しても、そこまで行けるか、それ以上に行けたとしても、2010年の先には、それ以上の削減が必要となると思われる。当面は、6%削減の方向で基本方針を考えるということにしたい。具体的に議論していく段階で他の考えがあれば、その時点で議論させていただきたい。

○ 現時点からの削減は、15.8%と極めて大きいが、この案からは、その迫力と真剣さが伺えない。迫力と真剣さが伝わる基本方針とすべき。そのためには、具体性が必要。国民の責務のところをみても、大変さが伝わってこない。小委員会でぜひ検討して欲しい。

○ これまでの議論から外れるが、フリーディスカッションということで発言したい。COP1の時点から言っているが、これまでの温暖化の交渉は、途上国のペースで進みすぎている。途上国には、さまざまな発展段階があるが、それを一括りにして参加しないという扱いになっているのは問題である。最近米国の中でも、途上国を分類して対処する議論が出てきたが、我が国もこうした考え方で、COP4に対応していただきたい。

(部会長)まだ、議論があると思うが、時間の関係上、議題1はこの辺で終わらせていただきたい。

2.環境研究技術基本計画について

事務局より、資料に基づき諮問に至った背景に説明があり、その後、質疑応答が行われた。

○ 地球科学技術に関する研究開発基本計画(現在フォローアップ作業中)と本計画との関係はどうなるのか。

(環境研究技術課長)説明で述べたとおり、本計画は環境全般について俯瞰した形で研究・技術はいかにあるべきかを示すものである。この中には地球環境も当然入ることとなるが、地球環境部分の所管である当庁地球環境部とも十分調整していくつもりである。

○ 「環境研究技術基本計画」での対象範囲がよく分からない。環境研究のみならず環境技術の普及・利用まで含めて対象としている計画なのか。本計画は政府全体の計画として策定しようとしているのか。研究開発・技術開発に係る議事については科学技術会議の所掌するところである。実際、研究開発・技術開発に係る他の計画は、科学技術会議が主体となって策定してきた経緯がある。今回、環境研究・環境技術についての計画を中央環境審議会のみで策定するのはおかしいのではないか。

(環境研究技術課長)対象範囲についてはその通り。本計画は環境研究・環境技術に関してあるべき姿について、まず環境庁の考え方を示していくものである。科学技術会議との関係については、今後検討していきたい。

○ 環境研究・環境技術についてあるべき姿を提示するとのことだが、どこの部分にどの程度過不足があるのか、具体的に分からないと計画を策定しても抽象的な意味のないものになってしまう。具体的なデータはきちんと出せるのか。

(環境研究技術課長)事務局としてもいろいろ調査を行ってきているところである。

3.その他

猿田委員より、平岡委員に代わって環境事業団事業小委員会中間報告の説明があった。

小澤委員より、環境教育小委員会中間取りまとめの説明があった。

部会長より本日の部会についての意見が求められた。

○ これまで地球温暖化防止行動計画、基本計画、その点検と、その都度国民からのヒアリングを行ってきたが、NGO、団体、グループなどいずれも自身の体験談を発表することが多かった。しかし、行動計画、基本計画が策定されたにもかかわらず、温室効果ガスの排出が増えているのは、国民の協力が得られていないからである。現在は不況なので産業部門については排出が減っていると推測される。増えているのは民生であり、それは国民のライフスタイルに起因するものである。各計画については、政府、審議会を通してまとめたものであっても、国民が参加しなければ意味がない。今回の基本方針をまとめるに当たって、どの程度国民が理解して、実践するかについては非常に疑問に思う。今回のヒアリングで、国民がライフスタイルの変革に対して何を提案するのかということを期待したい。例えば、飲料水の自動販売機の廃止については、国民の同意がなければできない。広く国民の意見を聞きたいので、ヒアリングでは、これまでのように時間の制限を設けて議論を遮ることがないようにしていただきたい。せめて丸一日のスケジュールを確保してほしい。また、意見聴取の際も、体験談の発 表ではなく、国民がどうしたらよいかということを反対意見を含めて発言していただく必要がある。審議会においては賛否両論を踏まえた上で審議すればよい。例えば、サマータイムにおいては役所主導ではうまくいかないので、国民が望んでいるのか望んでいないのか率直な意見を聞く場を設けていただきたい。

(部会長)先ほど事務局から今度のヒアリングについての予定がありましたが、飯田委員のご指摘も踏まえて計画を立てていただきたい。

○ 委員会の運営について意見がある。今日2つの諮問があり、小委員会にお願いをすると言うことを決めたが、そこで、我々は今後に審議にどう対処して行けばいいのか、必ずしも判然としない。諮問文は一般的にしか書かれていないが、今までの経緯から、部会長、事務局には諮問事項に対するイメージがあると推測される。その点をもう少し説明してほしい。我々もある程度イメージを持って議論したい。

(部会長)背景説明が十分ではなかったかもしれませんが、審議内容について、特に、基本方針については私の方からできるだけ説明をしたつもりでありますし、本来なら部会が決定することであるので、こちらから具体的議論内容を提示するべきではない。そこでどのような意見があるのか伺ったものです。不十分な点は今後注意したいと思いますが、企画政策部会においては、これまでに本方法で活発な意見をいただきながら、答申、報告をまとめてきたということをご理解いただきたいと思います。それでは、次回の部会は11月11日に開催すると言うことで、飯田委員の意見を踏まえつつヒアリングを開催したいと思います。どうも活発な御議論ありがとうございました。