中央環境審議会第76回企画政策部会会議録

1.日  時  平成12年4月24日(月)14:00~17:00

2.場  所  ホテルフロラシオン青山1階 ふじの間

3.出 席 者

(部 会 長)森 嶌 昭 夫
(委    員)浅 野 直 人
井 手 久 登
神 林 章 夫
佐 和 隆 光
鈴 木 継 美
原    ひろ子
星 野 進 保
宮 本   一
谷田部 雅 嗣
渡 辺   修
池 上   詢
江 頭 基 子
佐 竹 五 六
塩 田 澄 夫
中 野 璋 代
藤 井 絢 子
松 原 青 美
村 杉 幸 子
湯 川 れい子
(特別委員)飯 田 浩 史
猿 田 勝 美
横 山 裕 道
太 田 勝 敏
廣 野 良 吉
(専門委員)武 内 和 彦

寺 門 良 二
(環 境 庁)岡田事務次官
太田企画調整局長
廣瀬大気保全局長
長尾水質保全局企画課長
細谷企画調整局環境計画課長

松本自然保護局長
浜中地球環境部長
細野環境保健部保健企画課調査官
大林企画調整局環境計画課計画官

4.議  題

(1)環境基本計画の見直しについて
(「環境から見た地域づくりのあり方」検討チーム報告等)
(2)その他

5.配 付 資 料

資料1第75回企画政策部会議事要旨(案)
資料2第75回企画政策部会会議録(案)
資料3議論集約メモ(案)
環境から見た地域づくりのあり方検討チーム報告書
参考資料循環型社会形成推進基本法案について
 循環型社会形成推進基本法案の趣旨
循環型社会形成推進基本法案の概要
循環型社会の形成の推進のための法体系
循環型社会形成推進基本法

6.議  事

【細谷環境計画課長】 時間がまいりましたので、中央環境審議会第76回企画政策部会を始めたいと存じます。
 開始に先立ちまして、まず資料の確認をさせていただきたいと存じます。

(配付資料の確認)

 このほかに資料番号のないものを何点かお配りしてございます。まず、「環境から見た地域づくりのあり方検討チーム報告書」でございます。これに関連しまして、直近の全国総合開発計画、「21世紀の国土のグランドデザイン」の要約版、第三次国土利用計画をお配りしております。
 以下、前回の部会の発言に関連しまして、佐和先生から提出いただきましたメモ、各検討チームの進捗状況を1枚紙の表の形で整理したもの、さらに、本国会に提出の運びとなりました循環型社会形成推進基本法案関係の資料4点をお配りしております。
 また、委員の皆様の机の上には、前回までの提出資料のうち、参考になると思われるものを若干置かせていただいております。
 資料は以上でございますが、もしお手元にそろっておりませんようでしたら、お申し出いただきたいと存じます。
 それでは、森嶌部会長、よろしくお願いいたします。

【森嶌部会長】 それでは、ただいまから第76回企画政策部会を開催させていただきます。
 本日は、前回の審議に引き続きまして、環境基本計画の見直しに関する御審議をお願いしたいと思いますが、本日からは、これまで各論の検討チームで御検討いただいておりました各テーマにつきまして、検討チームの主査から順次御報告をいただく予定でございます。
 本日は、検討チームからの御報告の一番手としまして、武内委員から、「環境から見た地域づくりのあり方」について御報告いただきまして、この報告に対する質疑と併せて御議論いただきたいと思っております。
 それでは、武内委員、よろしくお願いします。

【武内委員】 それでは、環境から見た地域づくりのあり方検討チームの座長を務めました武内の方から、報告書案についての説明をさせていただきたいと思います。
 最初に私の方から、この間の議論の概要と、検討内容の中でとりわけ私の方から申し上げた方がよいこと、つまり役所の人では言いにくいことを申し上げまして、その後、事務局の方から詳細について説明をお願いしたいと思っております。
 まず、今回の議論の大きな中心課題は、国土政策と環境政策の一体化ということでございます。戦後、日本の中で経済成長が遂げられる一方で、国土が様々な形で歪んできたということは御承知のことだと思います。それが都市化とか、その一方で農村地域における過疎化という問題が引き起こされているところです。そうした状況を改善するための国土政策の一つの方向として、配っていただいております資料、例えば「21世紀の国土のグランドデザイン」の中にも示されておりますように、これからの時代はむしろ環境というものを中心に国土づくりを進めていくことが、結果的には日本の国土を分散型の構造にもっていく上で非常に重要であるということから、全総計画の中では、例えばですが、「多自然居住地域」という新しい地域づくりの基本方針が提案されているところでございます。
 そういった中で、一方、環境政策におきましても、これまで以上に国土という視点、国土上に展開される様々な自然的、人工的な仕組みをどのように生かしていくかという観点での政策の進展が必要であることから、この両方の一体化を目指した施策を考えてきたわけでございます。
 こういう境界領域の議論というのは、ややもするとお互いに権利関係を強調して、どっちに属するのかということでの、いわば棲み分けを前提とした縄張り争いが行われるわけですが、私どもとしては、そうではなくて、この2つをつなぐことによって、国土政策と環境政策がむしろ相互に高まっていくという観点での施策展開をぜひ行ってほしいということで事務局にも要望したところでございますし、また、この報告書の協議の過程の中では、そのような方向に向けて様々な努力がされたというふうに伺っております。
 この議論の中で重要なことは3点あると私は思っております。1つは、目次に書かれている事柄として、「国土利用への環境配慮の織り込み方」についての議論がされたということでございます。つまり、これまでの国土利用に関して、環境政策をどういうふうに位置づけていくことが最も望ましいのかということでございます。私どもとしては 当初、これに関して、「環境保全型国土の形成を目指して」という言葉を使っていたわけですが、最終的にはこのような表現で落ち着いたということをまずお話ししなければいけないと思います。しかし、実質的な中身としては、国土利用に関する環境配慮について、かなり突っ込んだ議論ができたのではないかと思っております。
 この中身については、私どもは「健全性」という言葉を用いさせていただきまして、自然系のシステムと人工系のシステムが織りなす国土の健全性を維持するのが環境配慮の織り込み方の大原則であるということをここで提起させていただきました。
 2番目の点として、第1次の環境基本計画をさらに発展させるという視点からの議論の強化ということでございます。これまで国土政策あるいは地域づくりに関わる環境基本計画の記述というのは、いろいろなところには散りばめられていますけれども、明示的にそのことが書かれているのは、「共生」という項目の中の4地域区分であったと思うわけです。この4地域区分にとどまっているというところをどういうふうに超えるかということがこの議論の中での一つの要点でございまして、私どもとしては、大前提として、「共生」だけではなくて、「循環」というキーワードでの地域づくりも非常に重要である。これは従来の規制型の公害政策を一歩越えて、社会全体を循環型の仕組みにつくりあげていく。その際に、自然系のシステムと人工系のシステムの融合に配慮する。そして、そういうものと生物生態系を維持・保養していくという観点での「共生」の概念と併せ持つということで、「循環と共生による地域づくり」が今回目指すべき環境基本計画の一つの発展方向ではないかとに考えたわけでありまして、ややまだるっこしい表現ではございますが、私どもとしては、「地域づくりにおける環境から見た持続可能性」ということとして目標を定めているわけでございます。
 「環境から見た持続可能性」というのは、当然のことながら、「環境から見ない持続可能性」というのも含まれているわけで、この辺が事務局が大変御苦労された文面であるということをあえて私の方から申し上げておきたいと思います。
また、そうした持続可能性を保障するために、この間、天野先生を中心に、共生指標を含む環境指標の開発について御努力があったわけですが、こういうものを積極的に環境情報として活用し、地域づくりに生かしていく、持続可能性の達成というものを指標として見ていくという観点も、そうした議論の発展の中の非常に重要な要素として考えていかなければいけないということもこの内部に織り込んでおります。
さらに3番目の点として、地方分権という時代における国土環境政策と地域づくりとの関連性でございます。これについては、私どもは「環境配慮のためのガイドラインの提示」ということを提案しておりますけれども、これの持つ意味というのは、それぞれの地方分権下において、地方の環境基本計画は独自的なものであって、地域的なものであってもらいたいという願いがある一方で、しかし、これだけは外せないという全国的な水準というものもあるだろう。とりわけ持続可能性をどの観点から評価していくのかということについて、あまり地域的な差があっては困るということから、これをガイドラインとしてまとめたらどうかという提案をしておりますけれども、地方分権時代における地域づくりのあり方について、新しい提案としてここに示させていただいたものだというふうに御理解いただきたいと思っております。
最後に、環境基本計画に資する環境から見た地域づくりのあり方について検討があったわけでありますけれども、この実効性をどのように確保していくかということが非常に大きな課題であるということです。ちょっと言い方が悪いのですが、今までの環境基本計画は、世の中に当たり障りのない範囲で非常にきれいなことを書いてきた。それに対して、地域づくりというのを実際に議論していくと、非常に生々しい、公共投資とか、交通計画とか、そういうものとのぶつかりが生ずるわけで、そういうふうなぶつかりの場において環境基本計画の側が物を言ってこそ、そしてそこにおいて新たな解決方策を見出してこそ、この計画が社会の中に実際に定着していくものである。私どもは大いにこれに対して期待を込めながらも、他方で実効性の強化についてはまだまだ足りない点があると思っておりまして、この点について今後、審議会の中で様々な議論が進んでいくことを願いたいと思っております。
以下、内容について事務局の方から説明をお願いいたします。

【細谷環境計画課長】 それでは、武内主査の御説明を補足する形で説明させていただきます。
検討チームの報告書の方向性等につきましては、ただいま主査の方から御報告があったとおりでございまして、私どもそれほど付け加える点がありませんので、報告書につきまして順番を追って説明させていただきたいと存じます。
報告書は、2ページの「はじめに」に経緯がございますが、昨年10月に本部会で了解されました「環境基本計画の見直しの論点と作業の進め方の整理について」というペーパーに基づきまして、循環と共生を基調とする地域づくりのイメージとこれを実現するための施策について、検討チームにおいて検討した結果をとりまとめたものでございます。報告書のとりまとめに当たりましては、関係省庁からの御意見も伺っているところでございます。
次に、本報告書の構成でございますが、目次を御覧になっていただきたいと存じます。本報告書は、「国土利用への環境配慮の織り込みの考え方」、「国土利用への環境配慮の織り込みの考え方の地域への展開」、この2部構成となっております。その理由につきましては、2ページの「はじめに」の第2パラグラフから第4パラグラフのところに説明されております。すなわち、今日の環境問題は、国全体として見ましても、地域レベルで見ましても、国土利用あるいは土地利用と密接な関係を有する形で生じておりまして、環境問題の解決のためには、環境基本計画におきまして、国土利用への環境配慮の織り込みに関する考え方を整理しまして、これを基礎として、関係主体がそれぞれの立場において取組を行うことが必要であると考えられるわけでございます。
若干言葉を換えて申しますと、諸外国におきましては、現在、環境問題解決のために、持続可能な発展をキーワードとしつつ、各政策主体が情報の交換等による意志疎通を通じまして、可能な限り、経済社会全体を視野に入れた環境とその他の問題の関わり合いに関する共通の認識を醸成し、共通の視点を形成して、それぞれの主体が、それぞれの権限に基づき、それぞれの主体にふさわしい方法で施策を展開することにより政策の効果を最大限効率的に発揮させようとする、いわゆる「統合的アプローチ」と称されておりますが、こういうアプローチが試みられることが多くなっているわけでございます。国土利用への環境配慮の織り込みのあり方の整理というものも、まさにこのような問題意識に基づきまして、このような取組の基礎となるものとして考えてまいったわけでございます。
本報告書は、このような認識の下に、一義的には、地域づくりへの環境配慮の織り込みの考え方を整理することを目的としつつ、その前提として、まず、国土利用への環境配慮の織り込みの考え方について検討を行いまして、それを地域独自の観点を加えながら地域に展開していくという構成をとっております。
なお、本来、地域づくりは様々な個別の環境問題と関わっているわけでございますが、
そこに記載がございますように、それら環境問題の具体的解決については、各検討チームにおいてかなり詳細な検討が進められておりますので、本報告書では、問題の概観を得るに必要な範囲の検討にとどめることといたしたわけでございます。
それでは、中身について御説明させていただきます。
まず、1の「国土利用への環境配慮の織り込みの考え方」でございます。この部分におきましては、環境と国土を巡る現状認識を整理した上で、国土利用への環境配慮の織り込みの考え方を整理しております。
「(1)国土の現状と環境問題の発生」におきましては、[1]のところで「環境から見た『国土』」の意味について概括的な記述を行っております。環境の面から国土をとらえるに当たっては、国土を国土上に展開されている様々なシステムを含めて検討する必要があるということが述べられております。
[2]におきましては、環境に影響をもたらした戦後の国土構造の変遷を、大都市部における集中の問題と、地方における過疎と農林業に関する問題、この2つの問題を中心に記述しております。[2]の表題の下の部分でそれを簡単に要約しておりますが、ここでは、「大都市部への人口や諸機能の集中と農山村等における過疎が並行的に進み、これらが国土構造上の様々な問題をもたらし、そのような国土構造上の問題が交通に起因する環境問題や廃棄物問題、河川・湖沼や海洋の汚染等の環境問題の一因となった。」と総括しております。
アの「大都市部における集中の問題」の中では、例えばバブル後の東京23区部への人口回帰の問題、また、イの「地方における過疎と農林業に関する問題」のところでは、農村部の人口減少に伴う環境保全機能の衰えなど、これらを環境面から見た特記事項として触れております。
次に[3]のところでございますが、6ページから12ページにかけて記載がございます。ここでは「国土利用と環境問題の関わり合い」について整理しております。具体的に項目で申しますと、7ページの一番下のところに都市交通関係、9ページに水循環と物質フローの関係、11ページで土地の開発の関係、農地、森林等の環境保全機能の関係、さらに12ページで土地利用の関係、それぞれ記述されております。
これらを総括しているのが[3]の表題の下のところでございまして、報告書では、「これまでの国土利用について、環境に及ぼす影響という観点から見ると、総じていえば、環境負荷の増大と集中の問題及び自然地の減少・劣化等による環境保全機能の減退の2つの側面が環境問題と関わりがある」という形で全体的な総括をしております。
簡単に項目を追ってまいりますと、イのところでは、水循環に影響を与えている変化として、都市における雨水浸透量の減少、水田面積の減少、農山村等の担い手の減少等による農業用水や水源林の管理の劣化、こういうものに触れているところでございます。
また、ウのところでは、物質フローの関係から環境問題をながめておりますが、この項目におきましては、物質フローに現れた土地の改変による環境負荷の問題、農産物の輸入等に伴う国内の窒素、リンの循環の攪乱、これが富栄養化等の水質問題に与える影響、さらに廃棄物問題等に触れているところでございます。
また、エにおきましては、土地の開発というものが自然環境に及ぼす影響に触れております。
オにおきましては、農地、森林等の環境保全機能の低下というものが、特に二次的な自然(人間の手が加わった自然)の劣化を招いている。こういう状況に触れております。
さらにカにおきましては、各種の土地利用が混在することによりまして、環境問題が大気汚染あるいは騒音等の環境問題をもたらすことがあることに触れております。それぞれの記述を後ほどお読みいただけば大体わかるような形で記述しております。
次に13ページの「(2)経済社会の動向と環境問題」におきましては、環境問題の検討に際して考慮すべき経済社会の動向に触れております。
まず、[1]の「国際的な動向」におきましては、こういう事柄を考える際の背景としまして、国際的な動向というものを検討する必要があるということで記述しております。項目を追ってまいりますと、ここでは人口問題と成長問題、食料問題、資源・エネルギー問題、グローバリゼーション、地球環境問題、これらの5つの点に言及しております。
 報告書では、[1]の柱書きところにございますように、これらの国際的な動向を概観しつつ総括を行っております。読み上げますと、「国際的には、21世紀中葉に向かって、世界人口の増大や途上国の経済活動の活発化などにより、地球環境問題や食料問題、資源・エネルギーの枯渇等が一層深刻化する可能性があるといえる。このような中において我が国が持続可能な発展を行っていくためには、資源効率性の向上、環境効率性の向上を図っていくことが不可欠であり、その基盤となる国土の利用面においてもそのような方向に沿ったものに転換を図っていくことが必要であると考えられる。」としまして、持続可能性を念頭においた国土利用の必要性というものを強調しております。
 15ページの中ほどの[2]の「国内的な動向」でございますが、項目としましては、「人口の動向」、「経済と産業構造の動向」、「社会資本整備の動向」、「技術面の動向」、「遊休地や管理放棄地等の状況」、「環境上の負の遺産の蓄積」、この6つの点に触れております。
 順を追ってまいりますと、アの「人口の動向」におきましては、人口の減少を背景とする少子高齢化の進行、人口移動の沈静化というものに触れております。それから、これらが環境に与える影響をその上で概観しているところでございます。
 イの「経済と産業構造の動向」におきましては、日本経済が安定成長の基調にあるということ。それから、サービス経済化の趨勢が今後とも継続するであろうということ。国際
 競争力の観点からも、資源生産性やエネルギー生産性の向上が課題であるということ。これらを概観した上で、こういうことは総じて環境負荷の低減をもたらす方向に作用するであろうということで総括しております。
 ウの「社会資本整備の動向」におきましては、経済成長の低下、投資余力の減少が見込まれる中におきまして、社会資本につきましては、新規建設からストックの維持、活用に力点が移ってくると見込まれるということ。また、新規の社会資本整備につきましては、投資の一層の重点化や効率化を図ることが必要になるものと考えられるということに触れまして、これらは環境負荷の低減に資する方向に作用しうると考えられる、ということでまとめております。
 また、社会全体としての資源、エネルギー使用の効率化や環境改善に資するインフラなど、経済社会システム全体を環境配慮型にしていくために必要な社会資本整備については、環境面から見ますと、長期的な環境負荷の低減につながるものであるし、経済面から見れば効率的な社会経済基盤の整備につながるものである。こういうことから、更新投資を一つの機会としまして、重点的に投資を行うべき分野として位置づけ、積極的な投資の推進を図っていく必要がある、というようなことが述べられております。
 エの「技術面の動向」におきましては、高度情報化技術等に言及しながら、「総じて言えば、技術の進展に伴う環境負荷の低減の可能性は、技術の環境負荷の低減を促す側面が政策的に助長されるならば、相当程度見込まれるといえる。」としております。
 オにおきましては、近年における遊休地あるいは管理放棄地の発生に触れまして、その適切な管理等の必要性を述べております。
 カの「環境上の負の遺産の蓄積」におきましては、自然の自浄作用を越える環境負荷が加わり続けることにより、次第に環境負荷が蓄積されていく、いわゆる「負の遺産」の問題がございますが、これらは土壌や地下水の化学物質による汚染や湖沼・河川、沿岸域等の底質へのヘドロの堆積等を見ますと、もう既に相当の蓄積が行われておりまして、その改善は遅々として進まない実情にある、という認識を示しております。その上で、一番最後のところにございますが、「環境対策は、環境上の『負の遺産』の解消、『環境の再生』『環境の修復』という概念を含むべきである」という考え方を述べております。
 次に、18ページの一番下にある[3]の「地域の動向」におきましては、「地方分権の推進による地域の役割と可能性の拡大」、「市民活動の活発化と地属的なコミュニティの希薄化」、「広域的な地域づくりの可能性の高まり」という3つの問題に触れまして、地域が国土整備に主体的な役割を果たす環境が整いつつあり、そのような中で、国土整備における環境配慮の必要性が高まるであろう、という認識を述べております。
 次に、21ページ以下の「地域における環境問題と国土利用」におきましては、地域において重要な課題となっている環境問題と国土利用の関わり合いを概括的に整理しておりまして、いずれの問題についても国土利用との関係に密接な関係がある、ということを述べております。ここでは、「地球温暖化問題」、「自動車交通問題」、「水環境問題」、「廃棄物問題」、「生物多様性の保全」、「景観保全とアメニティの確保」という6つの問題に言及しております。内容につきましては、時間もございますので、省略させていただきたいと存じます。
 こういう現状認識を踏まえまして、23ページの一番下のところから、いよいよ本論になるわけでございますが、(4)として「国土利用への環境配慮の織り込みの考え方」というものをまとめております。
 [1]の「国土利用への環境配慮の織り込みの考え方の必要性」におきましては、まず、近年、環境問題の構造が変化しまして、環境問題の多くが通常の事業活動や日常生活に伴う環境負荷に起因するものが多くなってきたことによって、従来の「エンド・オブ・パイプ型」と呼ばれる環境対策に限界が生じていること。また、経済社会やライフスタイルのあり方の構造的な見直しが必要だということを述べまして、環境と国土利用とは深い関わりがあることに鑑みまして、24ページの中ほどにございますように、「環境問題を解決していくためには、環境政策と国土政策とがその他の政策を含め連携を図り、それぞれの総合的調整機能発揮して共通の認識の下に政策を展開していくことが非常に重要であると考える。」という認識を示しております。
 そのためには、「環境政策以外の政策の側において環境配慮がそれら自体の中に織り込まれていくことが必要であるとともに、環境政策の側においても、それらの政策を環境の視点から見たときの望ましい環境配慮の方向性についての考え方が整理されていることが必要である」。しかしながら、現状の認識としまして、特に環境政策の側の問題としまして、「検討が必ずしも十分なされていたとは言い難い状況にあった。」ということを指摘しております。
 また、現行の環境基本計画の記述が不十分である。先ほど武内先生からもお話がございましたが、記述において必ずしも十分でない、ということが指摘されております。
 そして、そのページの一番下のところにございますように、「今後の課題は、国土政策その他の国土に関連する政策に環境配慮の視点を内在化させていくことにより、このような環境配慮のための取組をさらに体系的で効果的なものにしていくことであり、そのためには、それらの政策の政策展開や関連計画の策定に際しての方向を示すものとなりうる形で、国土利用への環境配慮の織り込みの考え方を環境基本計画において明確に示すことが極めて重要であると考えられる。」としております。
 また、そのよう整理に当たっての留意点としましては、国土の現状に鑑みまして、「環境の再生、修復や創造という考え方を取り入れることが必要である。」としております。
 次に、[2]の「国土利用に環境配慮を織り込むことの意義」でございますが、まず、アの「国土利用への環境配慮の織り込みの考え方」におきまして、国土利用に環境配慮を織り込むというのはどういうことなのかという点についてまとめております。
 最初のパラグラフでは、環境基本法第3条にいう「現在及び将来の世代の人間が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受する」状態を確保するためには、「国土が健全な状態で将来にわたり維持されていくことが不可欠である。このためには、国土が環境から見た持続可能性を目指す方向にある必要があり、国土利用に環境配慮が十分に織り込まれていくことが不可欠である。」ということを述べまして、国土利用が持続可能性を基本として行われなければならないということを述べています。
 第2パラグラフ以下では、国土利用が持続可能性という方向に沿って十分な環境配慮が行われる方向で利用されているかどうかということを、何をもって判断すべきか、ということについて述べております。
 具体的には、環境基本計画の環境保全に関する基本的な記述を引用する形で整理しておりまして、第3パラグラフで考え方をまとめておりますが、「国土全体を一つのシステムとして見た場合に、その時点において、国土の構成要素が環境保全上健全な状態に保たれるとともに、システム全体としても健全性を保っており、なかおつ、その状態を将来にわたって保ちうる状況にあることが必要である。」としております。
 その上で、これを判断する切り口としましては、大気、水、土壌のような媒体別の要素の健全性、国土を構成するシステムとシステム相互の関わり合いの健全性、さらに国土全体に対しては、部分である地域の健全性。こういう媒体、システム、地域の3つの健全に着目する必要があるということを述べております。
 さらに、時系列的な観点を取り入れるために、環境上の「負の遺産」に着目する必要性があるということも述べております。
 なお、このような判断に当たりましては、現行環境基本計画の宿題として開発された総合的環境指標を活用すべきであるということが述べられております。
イの「国土利用へ環境配慮が織り込まれているかどうかの判断」におきましては、このような考え方をさらに展開しております。
簡単に御説明いたしますと、(a)のところにおきましては、媒体の環境保全上の健全性の判断は、大気、水、土壌のような媒体別に環境基準や環境指標を基本として判断すべきものである、としております。
(b)のところでは、「システムの環境保全上の健全性の判断」について書いてございますが、3つ目のパラグラフに考え方をまとめております。「基本的には、自然系のシステムにあっては、自然の循環や自然の状態が可能な限り保たれることが必要であるとともに、人工系のシステムにあっては、可能な限りその影響をシステム内に留め、自然の循環や自然の状態に影響を与えないことが必要である。」としておりまして、方向性としまして、27ページの一番上のところにポツで示している3点を目指すことが必要であるとしております。
(c)の「地域の環境保全上の健全性の判断」におきましては、まず、地域の範囲をいかに解するべきかという点について、4つ目のパラグラフにございますように、「問題の解決のために公式、非公式に形成されてきた枠組みをとらえて、一つのまとまった地域をイメージし、そのような地域的まとまりができるだけ地域づくりの主体として活動できるようにしていくようにすることが現実的である」としております。
その上で、健全性の判断基準につきましては、この項目の最後から2つ目のパラグラフにございますように、「地域は国土全体の部分構造をなすものであり、国土上に存在するさまざまなシステムは基本的に地域においても同様に存在するので、地域の健全性の判断は概ね国土システムの場合と同様に、媒体の観点から健全性を見るとともに、地域に展開されているシステムの健全性を見る方法により行うべきであると考えられる。」という考え方を示しております。
(d)におきましては、留意点という形で、将来世代との関係で、環境上の負の遺産の状況を考慮しなければならないということ、さらに全体や部分のバランスあるいは人間と生物とのバランスにも配慮しなければならないということを述べております。
29ページの一番下のところから始まるウの「国土利用への環境配慮の織り込みの意義」におきましては、この考え方が国土利用政策等の政策展開の基本原則として役立つ、個別環境問題の解決のためのガイドラインとして役立つ、地域政策における環境配慮のガイドラインとして役立つ、こういう3つの点において意義があるということを強調しております。
すなわち、環境問題解決のためには、各政策主体が情報の交換等による意志疎通を通じて、可能な限り経済社会全体を視野に入れて、環境とその他の問題との関わり合いに関する共通の認識を醸成する必要があるし、このようにして共通の視点を形成した上で、それぞれの主体がそれぞれの権限に基づいて、それぞれの主体にふさわしい方法で施策を展開することによって、政策の効果が最大限効率的に発揮される。いわゆる「統合的アプローチ」と呼ばれる手法がこれから重要になってくると考えられるわけですが、持続可能性を基本に据えて国土利用への環境配慮の織り込みのあり方についての考え方を整理するということは、まさにこのような取組の関係主体共通の基礎となるものである、という認識がこの背後にあるわけでございます。
次に、30ページの中ほどの[3]の「全国総合開発計画等と国土利用への環境配慮」におきましては、全国総合開発計画等における環境配慮の状況を参考的に整理しております。詳細は省かせていただきますが、近年、次第に環境配慮のレベルがいずれにおいても向上してきているということが示されております。
32ページ以降におきましては、本報告書の本来的な検討事項である「環境から見た地域づくりに関する検討結果」を取りまとめております。全体的なトーンとしましては、表題にもございますように、ただいま御説明しました「国土利用への環境配慮の織り込みの考え方」をいかにして地域に展開していくのかという観点から整理されております。
順を追ってまいりますが、まず、(1)におきましては、「国土利用への環境配慮の織り込みと地域づくりの関係」について整理しております。ここでは「地域づくりにおける環境から見た持続可能性の考え方」という表現を用いております。これはややわかりにくい表現でございますが、先ほど武内先生からもお話がございましたように、持続可能性という場合には、環境以外の要素もあるということから、このような表現に落ち着いたものでございます。
[1]のアのところでございますが、「地域づくりにおいて環境から見た持続可能性の考え方が推進されるに当たっては、国土全体が環境面での健全性に配慮された形で利用されていることが基本的には望ましい。したがって、国土利用への環境配慮のあり方を示すことは、地域づくりにおける環境配慮のガイドラインとしての役割を担う。」という認識を述べながら、「地域づくりにおいて持続可能な方向を目指しているかどうかの判断は、地域固有の事情によって左右されるものであることから、地域づくりに当たっては、このような地域固有の事情を踏まえる必要がある。」ということを述べております。
そこで、「このような意味で、地域づくりにおいては、国土利用における環境配慮の考え方を地域の事情を踏まえて、地域において必要な修正を加えつつ、実施されるべきものと考えられる。」としております。
イにおきましては、地域において地方公共団体が各種の政策を総合化して実施する役割を担っているということ。それから、地方公共団体が国土に環境配慮を織り込み、環境から見た持続可能性の考え方を推進するための取組を進めるためには、「このような地方公共団体の役割を踏まえ、地方公共団体が総合的な取組を行おうとする場合に必要な環境を整えること及びその参考となる指針や手法、ノウハウ、情報などを提供することが必要であると考えられる。」ということに触れております。
 ウにおきましては、注意書き的な書き方でございますが、環境から見た持続可能性の考え方の推進に当たっては、「地域に全国一律の上意下達型の対応を求めることは避けるべきであり、各地域が地域の特性に応じた環境のあり方を描けるようにすることを基本とすべきである。」ということを述べております。
33ページの上から3分の1ほどのところから始まる[2]でございますが、「地域づくりにおける環境から見た持続可能性の考え方の推進にあたっての留意点」としまして、環境から見た持続可能性の考え方を地域づくりに反映していくためには、国土全体からの視点と地域からの視点の双方が必要であるとした上で、特に地域からの視点に関連していくつかの項目に触れております。
項目で申しますと、アの「自然の持つ多様な機能の維持、増進」から始まりまして、「自然と生産、生活を一体とした地域の形成」、「地域内資源の活用と地域内循環の尊重」、「土地の持つ多様な機能に係る受益と費用負担の考え方の見直し」、「土地の持つ多様な機能発揮の観点に立った土地利用調整の推進」、「土地の改変に対する姿勢の転換」という6つの点に触れております。
なお、報告書は、これらはそれぞれの地域において完全に満たされなければならないというものではなくて、方向性として、このようなことを念頭におきながら地域づくりを進めるべきではないか、という問題提起を行うというトーンで書かれております。
このうち、イのところでございますが、34ページの2つ目のパラグラフにありますように、「地域のシステムの健全性を維持していこうとすれば、地域の自然的要素のみならず、人工的要素についても健全に機能し得るようにしていくことが必要である。」としまして、「したがって、地域づくりにおける環境から見た持続可能性の考え方を推進していくためには、自然の保全と地域の経済や社会の維持・発展、歴史・文化・景観の継承などを一体的に実現していく戦略をとる必要がある。」としております。
また、エのところにおきましては、これまで農地や人工林というものは多様な機能を持ち、その受益が広く都市住民等にも及んでいるにもかかわらず、その維持が専ら農林業従事者によって担われてきたということを認識しまして、近年の農林業の状況から見まして、そのような農地や人工林の機能の発揮に困難さが増してきた。こういう状況認識の下に、土地が持つこのような多様な機能が十分発揮され、かつ維持増進されるような費用負担のメカニズムを構築することが必要である、ということに触れております。
オにおきましては、地域における空間情報の共有化を踏まえまして、地域内の土地の多様な機能が全体として最大化される方向で計画的な土地利用を行うためのコンセンサスを形成し、実現していくことの重要性が述べられております。
カのところにおきましては、4つ目のパラグラフにございますように、「開発を優先的に行うとされている地域以外においては、土地利用に対する慎重な考え方を進めて、現状の保全あるいは抑制を原則とし、土地利用転換は例外的な措置で一定の条件の下に認めるという形で原則と例外を逆転させながら経済社会の持続可能性を確保していくこと、そして、開発を行う側で開発に伴う環境に対する影響の有無や程度を立証しなければならないという方向に発想の転換を図っていくことを検討する必要がある。」としております。
また、広義のミティゲーションの考え方を導入することの必要性についても述べられております。
36ページの(2)では、「地域づくりにおける環境から見た持続可能性の考え方の推進の課題」としまして、「地域」の範囲の考え方の明確化、各主体の参加の確保、関連施策が共通の認識に立って連携して実施されるためのツールの確保、こういう問題を挙げておりまして、これらに対応しまして、38ページ以下、(3)におきまして重点的に取り組むべき事項が整理されております。
 (3)の[1]でございますが、「地域づくりにおける環境配慮のガイドラインの提示」ということを提唱しております。その必要性につきましては、先ほど主査の方からも御説明があったところですが、最初のパラグラフにありますように、「数多くの主体が参画する地域における各般の政策の円滑な実施の確保を図るためには、関係者間で、地域づくりにおける環境から見た持続可能性の考え方の推進についての共通の理解が成立することが必要である。このような取組は土地利用に深く関わるものであることから、土地利用に際しての環境配慮に係る信頼性のある指針が提示されることは大きな意味を持つ」という認識を述べております。
 具体的には、「地域づくりにおける環境から見た持続可能性の考え方、地域が持続可能な方向を目指しているかどうかを判断する視点等を含むガイドライン」としてイメージされております。
 また、「他の地域においても政策に活用できるような普遍性を有する施策のメニューの例や取組事例の紹介、ベスト・プラクティスを踏まえた地域づくりの様々なモデルの提示」ということについても言及されております。
 報告書におきましては、結びとしまして、「各地域においては、このようなガイドライン等を参考としながら、地域固有の事情に即した検討を行い、地域における関係主体が共通の認識に立って政策の展開を図るための関係主体共通の考え方や方針、目標、行動原則、役割分担、成果の評価の方法などを、例えば『地域づくり環境配慮指針』のような形で取りまとめ、関係者の取組の基礎としていくことが望まれる。」としております。ガイドラインはこのようなもののベースになるという考え方でございます。
 [2]におきましては、「情報の共有化」ということに触れております。アにおきましては、「地域づくりにおける環境から見た持続可能性の考え方を推進するため関係政策を共通の認識に立って展開していくためには、関係主体の共通理解の形成が不可欠であるとともに、関係主体の利害関係の調整を行っていく上でも環境情報を整備し、関係者間での議論のベースとしていくことが必要である。」という認識を示しまして、関係情報の社会的共有化の必要性、地方公共団体や国の役割等について言及されております。
 また、イにおきましては、地域環境指標の整備の必要性と、整備に当たっての国と地方公共団体の役割分担と協力の方向性というものに言及いたしております。
 [3]におきましては、「推進メカニズムの構築」として3点ほどの提言が行われております。アにおきましては、「地域づくりへの環境配慮の視点の内在化の手法の確立」としまして、第1パラグラフのところにありますように、「地域づくりにおける環境から見た持続可能性の考え方の推進を実効性を持って進めるためには、地域づくりに関する各種計画の策定段階から、実施、事業成果の評価の段階に至るまで環境保全の観点から、経済、社会、文化、土地利用等の要素を総合的にとらえ、関係主体が共通の認識の下に環境配慮のための必要な取組を行う仕組みを構築する必要がある。地域の地方公共団体が策定する基本構想や総合計画、環境基本計画などはそのような取組の基礎となるものであるが、そのような計画的手法と合わせて、意志決定過程に十分な環境配慮を織り込んでいくための仕組みを検討することが必要である。」。このように述べまして、いくつかの課題を指摘しながらではございますが、「戦略的環境アセスメントの導入や、環境基本計画等に示された方向に沿って設定された地域の環境配慮指針等と照らして、地域づくりに関する各種計画における環境配慮の方針が適合しているかどうかのチェックを行うための仕組みについて検討すべきである」ということが述べられております。
 また、イにおきましては、広域的な連携の促進の必要性と広域的な環境問題に対する計画的な対応のあり方の検討が必要である、ということを述べております。
 さらに、ウにおきましては、経済的仕組みの構築に関連しまして、上下流の協定による水源保全のための協力関係の構築というようなものを例に挙げながら、「地域づくりにおける環境から見た持続可能性の考え方の推進のために要する費用を他の地域の受益者が負担する仕組みを検討することが重要である。」ということに触れております。
 次に[4]でございますが、「地域づくりにおける環境から見た持続可能性の考え方を推進するためには、社会資本の整備の方向性が極めて重要であり、環境の観点から見て望ましい社会資本の整備を積極的に推進する必要があるとともに、地域づくりに関する社会資本整備において環境配慮を内在化させていくことが必要である。」ということを述べておりまして、このため、「LCA的な考え方を活用しつつ、地域づくりにおける環境から見た持続可能性の考え方の推進に資する社会資本整備の考え方を検討するとともに、その結果に基づき、環境の視点から見て必要な社会資本整備について、既存ストックの活用を含めて一定の考え方を示す必要があると考えられる。」としております。
 これらにつきましては、別途、環境投資の検討チームもあるわけでございますが、ここにおいては方向性を一応提示しているわけでございます。
 「このような環境から見て望ましい社会資本整備を具体的な政策に織り込んでいくためのツールとしては、環境保全経費の見積もりの活用などが考えられる。」としております。
 さらに、民間の関連社会資本整備についても触れておりまして、これらについても「同様の考え方の下に、環境の視点から見て望ましい社会資本整備のあり方を検討し、税制の措置等により、持続可能性を目指す方向への誘導を図ることが必要であると考えられる。」としております。
 42ページの「(4)関係主体の役割」におきましては、国、地方公共団体、民間団体等、住民、これらの各主体別に役割を整理しております。特に民間団体につきましては、積極的な提案者としての役割、チェック機能の役割のほかに、今後は住民の知恵袋としての役割や住民サイドの主張の結節点、交渉の窓口としての役割が期待される、ということが述べられております。
 43ページの(5)におきましては、地域づくりにおける環境から見た持続可能性の考え方の推進については、地域で定めるべきものであるということ。したがって、環境基本計画上目的を設定するとすれば、ガイドラインの策定状況等、重点的な取組事項とされたものの進捗状況を用いるべきであろう、ということを述べております。
 最後に、「おわりに」のところでございますが、国土利用への環境配慮の織り込みの考え方を今回の環境基本計画の見直しにおいて明確に示すことにより、環境政策と国土政策及び国土に関連する諸政策が今後より一層連携を深めて実施されていくことを期待したいということ。それから、地域づくりにおける環境から見た持続可能性の考え方を通じ、環境基本計画が地域における取組の指針としても機能していくことを期待したいということ。この2点を述べまして報告書を締め括っているわけでございます。
 やや長くなりましたが、説明は以上でございます。
 
【森嶌部会長】 それでは、ただいまの配付資料に関しまして、御質疑も併せて御議論いただきたいと思います。どなたからでも結構です。
 武内主査のほかに、2ページに検討チームのメンバーの名前が書いてございますが、何か付言なさることはありますか。
 
【佐竹委員】 この報告書の内容につきましては、既に主査及び細谷課長の御説明で尽きていると思います。報告書自体は客観的な存在でございますが、それに参画した者として、どういうふうに読み込むか、私はこういうところに意味を持たせたいという感じで若干申し上げたいと思います。
 一つは、現状分析はかなりよくできているのではないか。そういうことを参加した者が言うのはおかしいのですが、1955年に入省して約30年間、農地、林野、国土利用、環境、それぞれの行政を見てきましたけれども、今日の状況はまさに我々のやってきた結果でもあるわけで、そういう意味では、「おまえらの責任ではないか」と言われれば一言もないわけですが、それだけに分析はほとんど主な論点は全部書き上げているのではないか。特に9ページ、10ページ、こういう視点が加えられたということは、はなはだ今日的な意味は大きいと思います。各省ともいろいろすり合わせをやられたようですけれども、これが中央官庁の担当者の共通認識になっているということの意味は非常に大きいと思います。
 それだけに、逆に、将来の方向性がどこまで出せるのか。武内主査が一番最後に「実効性」ということをおっしゃいました。この辺になると、大変な難しさを感じます。例えば、多少土地勘のあるところですから申し上げますと、「地域内資源の活用と地域内循環の尊重」とか、「生活と生産を一体として考える」という発想は、確かにそういう動きはございます。スーパーの店頭でも泥つき野菜が売られ、それが一種のセールスポイントになっているという状況があるわけですから、確かにこういう動きは評価できると思いますけれども、逆に、例えば日本の山菜がほとんど韓国その他東南アジアから輸入されているという実態その他を考えますと、地域内循環については内心忸怩たるところがあるわけです。特に里山の状況を見れば、この分析にもございますが、農民の生活と里山が、ある意味ではエネルギー革命の結果として切り離されてしまったところにあるわけですから、それをもう一ぺんどうやって再建するかということになると、そう容易なことではないという感じがいたします。
その点で特に注意していただきたいのは、これは方向性を示すと。それは永遠に達成できない目標かもしれないけれども、少なくとも過去の様々な状況をいささかでも修復していくためにこういう発想が必要なんだという方向性を示すという意味で御理解いただきたいと思うわけです。
今こういうことを書くことの意味は、我々が土地利用行政、国土行政をやっていた時代とは大きく環境が変わってきているということが挙げられると思います。一つは、人口移動が非常に緩やかになった。地価の上昇もむしろ下落の方向である。一部逆の動きもありますけれども。それから、国民の意識が変化した。これは新都市計画法を立案された建設省の都市局の方々が共通に、「住環境を良くしようとしたら、なんでこんなやかましいことを言うんだ。我々は今の木賃アパートに住んでいるよりは、一戸建てに入りたいんだ。それを入りにくくする政策は支持できない」とおっしゃっていたのですが、そういうことは文献にもきちんと書いてあります。新都市計画法の立案を担当されたマツモトヒロシさんという方が書いておられます。皆さんにぜひ御紹介しておきたいのですが、建設省の新都市計画を計画された方は、まさに「計画なければ開発なし」という原則を打ち立てようということを強く意識しておられた。ところが、果たして現実にそれが機能したかどうかということになれば、あえて申し上げるまでもございません。
次に、やはり地方分権ということだろうと思います。これは32ページの「地域における各種施策の総合的実施に果たす地方公共団体の役割」に書かれております。長年行政を
やっていて、中央官庁の行政というのは、どんなふうにきめ細かく作っても、常に実態とはズレが出てきます。現実は動いているわけですから。それを現実に即したように動かすのは自治体以外にはないような感じがいたします。「おまえ、そんなきれい事を言っているけれども、地方行政の実態を知っているのか」という御批判も一部にあるであろうことは我々もよく承知しておりますけれども、しかし、自分の住んでいるところを少しでも良くしたいという要望に応えようという地方自治体の長の偽りのない発想だと思うのですが、それを尊重していくことが大切ではないか。つまり、中央で行政の総合化をやるというのは、非常に難しいといいますか、一元的な原理ができるなんてことは考えられるはずがないわけで、地方にある程度お任せするのが一番正しいだろうという感じがいたします。
特に申し上げておきたいのですが、地方が要望されているようなことは、一省だけではどういう仕事もできないのです。各省が協力していくことが必要なので、これが一つの契機になれば大変喜ばしいことだろうと思います。NIMBY問題とか、きれい事でいかない問題もいろいろございますけれども、基本的には今申し上げたような意味で私はこの報告書のまとめに参画いたしました。

 【森嶌部会長】 今の佐竹委員ほどの思い入れはないかもしれませんけれども、ほかに参画された委員、いかがですか。

【松原(青)委員】 主査と事務局で御説明されたことに付け加えることはございません。いろいろなお考えがあろうかと思いますが、これが今の最大公約数で、各省ともこれを基調にして取り組んでいくことが一番重要で、これで十分何年かはもつのではないかと思っております。

【村杉委員】 実は私は後半2回所用で欠席したものですから、その間、出席された委員や主査、事務局が御苦労してこういうふうにまとめていただいたことに感謝しております。
はじめの国土の利用のあり方の部分など、今までにないものが織り込まれたという点で私も大変うれしく思っております。ただ、2回欠席した前の段階までの私個人のイメージですと、表題が「地域づくりのあり方」となっておりまして、地域づくりの点を、これ以上量が多くなるということはあまり良いとは思いませんけれども、バランスの面からいって、もうちょっと細かくといいますか、具体的に書いていただけるとありがたかったという思いがしております。

【森嶌部会長】 それでは、ほかの委員で御質問、御意見はございますか。

【星野委員】 私自身、現在、武内先生などと、新しい国総法とか国土利用計画をどうしたらいいかということを、国土庁から命ぜられていろいろ勉強させられているので、今日の御報告は大変参考になりましたし、まだ読んだばかりで何べんか読み直してみたいと思っているということを前提にいたしまして、若干思いついていることを申し上げさせていただきたいと思います。
最後の結論の方にもございましたが、「地域の目標はそれぞれの地域で定めるべき性格のものであり」というのは、まさにそうだろうと思いますし、同時に、「それをカバーする意味でガイドラインをつけたらどうだろうか」と言われているわけですが、行政的あるいは前さばきの世界はいろいろなやり方があると思うのですが、基本的に環境問題を考えるときに、「そもそも論」に返って誠に恐縮なのですが、環境というのは優れて地域的な問題だと思うんです。「循環型」とか「共生」と言葉でいっているうちは、頭の中でよくまとまっているのですが、サステイナビリティ一つをとっても、各国のサステイナビリティなのか、地球のサステイナビリティなのかと考えた途端に、各国の国益と地球益とは相反するわけでして、同時に今度は、地域の間で一体誰が、どういう指標に基づいてサステイナビリティを維持するか。おそらく現実の問題としては、年じゅう紛争ばかり起こるのではないか。
その場合に、市町村区域でも、広域でも、あるいはブロックでも、どういう地域でもよろしいのですが、そういうものをとったときに、それぞれの地域というのは、基本的にア
ウタルキー的に物を考えるべきなのか、お互いの地域の交流についての自由には際限がないのか、あるいは自由についてはある程度際限があるのかとか、そういうことをどういうふうに基本的に考えたらいいのかというのが、実はいつもよくわからないのであります。
サステイナビリティも、森嶌部会長のいつかのペーパーにも出ておりましたが、経済学者に考えさせると、ソローが言うように、「人工物でも自然資源を衰えさせなければいいじゃないか」という思想になるのですが、そういうことを言い出すと、おそらく地域間の紛争のもとになってしまう可能性が非常に大きいと思うので、地域の環境の健全性という場合に、常識的には健全性というのはわかるのですが、それを指標化したり、利害関係などで争いだしたら、一体健全性というのは何をもっていうのか。つまり、アウタルキーであれということが健全性なのか、そうではなくて、お互いに取引はするけれども、取引には自ずと限度があって、「限度はおまえたちが考えろ」と言って放っぽり出すのか、もうちょっと限度を絞るのか、そういう問題が起こるのではないか。
地方分権で国土利用とか国土保全をやっていく場合に、例えばブナ林ならブナ林があると、非常に単純な漫画みたいなことですが、「ブナ林を今と同じ面積分だけ、あるいは木材量だけ保て」という命令を出したときに、一体どこが保つのか。各地域が同じように今のままの比率で保つのか、それとも、その間には取引があって、「我が県は専らブナ林に集中しますよ」と言って、ほかの県はその代わりお金を出すということをやるのかどうか。地域に下ろして具体的に行政に反映させていこうとすると、かなり具体的に争いのもとになりそうなことがありそうだというのをどうやって避けていったらいいのか。これは私自身が考えなければいけない問題だとは思いますけれども、お知恵があったらお教えいただければありがたいということでございます。

【藤井委員】 先ほど佐竹委員から、「状況分析は非常によくできていて、これは方向性を示すものだ」というお話がありましたが、これは実効性を持たなければ意味がないと思います。実は、G8の環境サミットが終わりました直後に、滋賀県知事に「G8が残したもの」ということで持っていった項目が3つあるのですが、1つは、24ページに書いてあることと関わりまして、滋賀県は「環境推進県」とか「こだわり県」とか言っているけれども、知事の秘書課の調整室、調整機能だけで実現化に至っていない。ですから、これをインテグレートするためには、調整から戦略的に統合本部にもっていかないと実現できないのではないか、と申し上げことです。
それから、NGOとG8の環境閣僚と政策担当者との懇談の場をもったのですが、そのときに私どもNGOの共同アピールで出したものが、18ページ、28ページにも出てくる「環境の再生」という言葉でした。環境の再生の中で、環境上の「負の遺産」の中で、G8が沖縄で行われることもありまして、軍事基地の返還の中で、軍事基地における化学物質などの毒物の問題の情報公開がきっちりなされていないので、そこの「負の遺産」、情報公開、それから、「ECとか今まで経験したところで情報がいただけないか」という質問をしましたが、それは出てきませんでした。
「負の遺産」でいえば、18ページや28ページの中でも抜けているのですが、核の廃棄物の問題もこの間議論してきております。それは湯川委員の方がもっと詳しく御存じだと思うのですが、NGOの議論では、「負の遺産」の中で核の問題は抜けてはいけないだろう。
それから、国と地域の関係性でいうと、38ページのところでは、トーンとしては「あくまでも地域が主体で」とあるのですが、これはいだいただいたばかりで私の読み込みが悪いのかもしれませんが、32ページの2の(1)[1]のアの一番下のところで、「このような意味で、地域づくりにおいては、国土利用における環境配慮の考え方を地域の事情を踏まえて、地域において必要な修正を加えつつ、実施されるべきものと考えられる。」とありますが、基本的には、ここで議論してきたように、地域が主体、地域の実態を生かすということであれば、これは逆で、地域の実態を反映して国土利用のこれからの計画へのベースにすべきではないかと考えます。
 
【湯川委員】 今、発言の中でお触れいただいたのですが、私自身もしばらく欠席していたので、もしかしたらその間に聞き漏らした御議論があったのかもしれませんが、その場合はごめんなさい。
 今の御意見の中にもありましたように、国土のグランドデザインの中でも欠かせない視点だし、地域政策とも非常に密接な問題があるので、28ページなどがそうなんですが、核の廃棄物、つまり「負の遺産」として、原子力発電がいいとか悪いとかとは全く別の問題として考えまして、持続可能な開発ということで、今、国の施策でも重要な位置づけにある原子力発電というのは、現に核廃棄物がどんどん生産され、蓄積されているわけですが、これをどうするのかということは、長期策定の上でも非常に必要なことであるし、地域のガイドラインとしても具体的に盛り込む必要があるのではないか。核廃棄物がどんどん出てプールされているという現実があって、さらにそれを土中に埋めるにしても、海中に埋めるにしても、非常に長期的な「負の遺産」となることは認識されていることだと思います。
 そうなると、ヘドロとか地形の変化、改変という言葉がわざわざ入れられているのなら、国の内外、つまり対外的な認識の国の姿勢としても、「負の遺産」の中にきちんと、「核廃棄物」という言葉などでも結構ですから、明記して入れるべきではないかと私は思うのですが、どうでしょうか。
 
【猿田委員】 先ほどの武内先生からの御報告、佐竹委員からの御意見などをお伺いして、成果物として内容の濃いものかと思いますが、二、三申し上げたいことは、土地利用、国土利用の中で、最終的には各地方においてそれなりの対応が必要になってくるという問題が出てくるわけでして、そういう中で、国土利用の環境配慮のあり方というものがこの中で示されたものと思います。
 そういう視点から見て、この報告書の32ページに、地方公共団体において、今後見直される環境計画の下に地域において土地利用等を進めていく中で、地方公共団体の役割が記載されておりますけれども、今後、地方公共団体がやるためには、38ページに「地域づくりにおける環境配慮のガイドラインの提示」ということも示されています。この辺は今後どのような視点で行っていくのか。いわゆる環境保全地域づくりの考え方あるいは判断のポイント、それらに基づいて示されるガイドライン。もしこれからガイドラインを示す場合には、環境基本法にも「地域の自然的社会的特性を生かした施策を」というのが第7条で示されておりますけれども、地域の主体性を尊重しながら地域の特性を伸ばしていく、というガイドラインを提示していただければというのが第1点です。
 それから、38ページの下から2つ目の段落、「このため、国においては、……」というところですが、今までも国からお示しいただいたいろいろな方向等に基づいて地方も行ってきているわけであります。先ほどもお話がありましたが、これから地方分権が進む中で、地方の主体性を尊重しながら進めていくということになりますけれども、ここに「環境アセスメントにより形成されてきた環境に対する関係主体の共通理解を踏まえるべきである」という中で、この前も浅野先生から「SEA」という御発言がございましたけれども、土地利用等に関する地域開発等を踏まえて行う場合には、一歩踏み込んだ戦略的環境アセスメント(SEA)の段階から実行できるような方向をお示しいただければというのが一つの問題点ではなかろうかという気がいたします。
 そういうことによって、いわゆる循環型社会の構築あるいは環境への負荷の少ない社会構造というものに地域で取り組んでいく基礎になるのではないか。そのためには、39ページ等にある情報の共有化、情報の提供、総合環境指標などをベースにして地域の環境指標をどう整備していくか、これは非常に難しい問題だと思いますけれども、そういう視点を踏まえて、地域が積極的に取り組めるような体制を国の方でもおつくりいただいて、先ほども「実効性」というお話がございましたが、地方がそれを実効あるものにしていくためには、ガイドラインの提示、情報の提供、環境指標等の提示ということが非常に重要な課題になってくるのではなかろうかと、今日これを拝見して思ったところでございます。
 
【浅野委員】 武内主査の御報告を聴いていて、これまでの環境基本計画の持っている問題点をよく指摘しておられると思いました。現行計画を発展させていくという大変重要な我々の役割からいいますと、御指摘は誠に適切な指摘ではなかったかと思います。
 現行計画は、確かに「共生」という言葉と「循環」という言葉の切り分けをあまりにも割り切ってやりすぎていたということがあります。しかし、その中でも一つの萌芽的なものとして強く意識していたのは、共生のところで4地域区分というのを出したわけですが、これは当時各省庁からかなり抵抗を受けたわけです。「既存の各省庁の持っている計画体系とバッティングする」と言われたので、はっきり言ってやむなくなんですが、「これは理念であって、マップを考えるものではない」と言って逃げたのです。
 しかし、どうしてもそれを言いたかった最大の理由は、従来、自然と都市という二分法であったのですが、現実には、都市の中にも自然がある。まさに共生というのはそこなんだ。だから、里地を強調することによって、そこのところにはっきりと姿勢を示していきたいということであったわけです。これが武内チームのペーパーで非常にはっきり出てきている。特に「自然系システムと人工系システムのちょうど融合されたような部分が実態なのだ」という認識は極めて重要な指摘ではないかと思います。そういう意味で、この最後の方にレコメンデーションのような形で出ている部分の御指摘が重要ではないかと思います。
 ところで、従来から地域では地域の環境管理計画とか地域環境計画を作ってやってきているわけです。環境庁は、率直にいいますと、あまりにもいろいろなメニューを出しすぎていて、地域では出されたメニューに片っ端から次々に飛びついている。その相互の関係
 は全然はっきりしない。だから、「最終的には環境計画のような形できちっとインテグレートしていかないとどうにもならない」というのが私の意見であったわけですが、今回はさらに「国土計画とか土地利用、国土利用ときちっとつなぐことが大事なんだ」という指摘をしておられるわけで、これも極めて重要なことではないかと思います。
 例えば、自動車交通問題でペーパーを書くときでも、最後に「これは土地利用の問題につながっていくのだ」ということをいつも書くのですが、書いてみてもいつもむなしいですよね。例えばNOx の総量削減の話とか、騒音の計画とか、みんな何も実効性を上げていないということからいうと、ここに踏み込めないとどうにもならないということは、単なる苛立ちではなくて、まさに実効性の問題そのものだろうと思いますから、「今後、地域で作られる環境計画がそのような土地利用、開発とどう切り結んでいくのか、そこのところに入り込んでいかなければいけない。もっとそれをブラッシュアップしていく必要があるだろう」という御指摘もそのとおりだろうと思います。
 ところで、先ほどから何人かの方から御意見が出ている、地域づくりは地域が主体となり、分権の時代なのだから地方でということと、ここでいうガイドラインという考え方、この両者の関係が少し問題になっているわけです。しかし、ここでいうガイドラインというのは、教育指導要領のようなものを考えているのではない。理念をはっきりさせていこうとして、従来、4地域区分ということでいろいろ書いてはいるのだけれども、これはどちらかというと施策メニューを並べているだけで、オーバーラップしていて、理念的なものがあまりはっきりしていないし、どういう考え方でどう進めていったらいいのかということがあまり明らかでなかった。それをもっとはっきりさせるようなものがガイドラインなんだ、そのような理解でよろしいかどうか、武内先生にお聞きしたいのです。つまり、何かモデル計画みたいなものがあって、それを地域でモディファイしてちょっとずつ応用すればいいというものではないだろうと思うのですが。
 
【武内委員】 大変温かいお言葉をかけていただきましてどうもありがとうございます。
 最後の観点について、誤解がないように申し上げたいと思いますが、御指摘をいただいた「地域が主体的に環境づくりに取り組む」という基本的姿勢を私どもとして支持しているということは当然のことでございまして、私どもの議論の中にあったのは、現実には逆の動きなんですね。例えば都道府県の環境基本計画を作っても、みんな国の環境基本計画を、ただ「国」というところを「○○県」と置き換えただけで、構造的にも全く同じだというのが現に出ているということを踏まえて、ブナ林ならブナ林を主体にした環境基本計画の記述があってもいいだろう、それと地域つぐりというのは連動するということになるだろう。ただ、それぞれがみんな違う言葉を語ったら、これはまずい。つまり、ターミノロジーだけはそろえておきたい。「持続可能性」といったときに、大体、持続可能性とはこういう概念だと、そういうことの上でそれぞれ地域的な議論をしていただきたい。これが私どもの願いであって、先ほど32ページの「地域において必要な修正を加えつつ」という部分で御批判をいただきましたけれども、これはちょっと先を読んでいただくとわかると思うのですが、国土利用における環境配慮の考え方について地域的な修正を加えていただきたいということであって、地域のつくり方のことを言っているわけではないんです。もっと極端にいうと、そのガイドラインすらも地域的な配慮の中において修正が加わるのだということでございまして、これは私どもが繰り返し必要性を主張している「地域づくりは地域が主体であるべきだ」ということと何ら矛盾するものではない、むしろそれを強化するものであるというふうに御理解いただきたいと思っております。
それから、核の廃棄物の問題等々についての議論をどうするのかという点についてでありますが、私はこの取りまとめの立場としては、そういうふうないろいろな施策の重要な課題については、特に廃棄物等の問題については、別のプロジェクトチームがあるわけですから、私は非常に普遍性を持つ地域づくりの問題についてここでは語ったつもりですので、入れるべきか入れざるべきかということについては、私はわかりませんけれども、その辺はほかの検討チームとの間の関係性の中において議論されるべきであって、この文脈の中に入れるべきか入れざるべきかということだけで議論されるべきではないのではないかという気がいたしております。

【原委員】 言葉尻みたいで申し訳ないのですが、32ページの下から2行目の「地方公共団体が総合的な取組を行おうとする場合に必要な環境を整える」というときの「環境」は、推進メカニズムを構築するとか、そういうことの意味でしょうか。これはちょっと御工夫いただく方が読む側はわかりやすくなるかと思いました。
次に、そことの関連もありますが、41ページの「広域的な連携の促進」。これは確かに必要なんですが、例えば「ブナ林を守りたい」という県が2つか3つぐらいあるとして、「そこではこういう自動車は走ってはいけない」というとすれば、そこで別の形のレンタカーに乗り換えるとか、アメリカでお酒を売ってはいけないという州があったら、そこで私たちはお酒が買えないわけですが、どこか別のところに行って買うわけです。要するに、「連携が大事だ」と言っているけれども、連携が不可能な場合に私たち国民はどういうふうな対応をすべきかというところもある方がいいかなと思ったりしたんです。

【武内委員】 「環境をいろいろな意味で使わない方がいい」というのは、私もおっしゃるとおりだと思います。
それから、地域政策との連携は、星野さんがお話しになったこととも関わる問題で、これはまだ私どもとして十分議論できないというのは、国策レベルの矛盾と大きく関わるんですね。例えば、「農産物の輸入はやめてしまえ。日本はこれから自給自足でいけ」と言えれば、環境政策と農業政策は一にできるわけですけれども、そうは言えない現状の中で物が取引されていくという議論は当然起こるわけです。ですから、これは先ほど佐竹さんが言われたように、方向性としてやや行き過ぎた面があるのではないか、そこのところの是正を考えていく。そのときに、循環という観点から見て、必ずしもその地域が閉じないということが往々にしてある。その場合には、連携を通してより閉じる方向にまとまることができないだろうか。もしそういうふうなことができれば、例えば地域連携というのは、全総にうたわれた一つの大きな戦略上の課題ですから、そういうものと環境政策とが一になるということになれば、国土政策における地域づくりと環境政策における地域づくりがお互いに連携を図れるということで、この政策がより具体性をもって語られるようになるのではないかということを今期待しているわけです。しかし、これは私どもの課題というよりも、むしろこれから環境基本計画をリジッドにまとめていくときに、おそらく省庁間でいろいろなやりとりがあると思うのですが、そういう中で最後までこれを残していただくということで、今のようなことが濃いものとして残った場合に、より実現可能性は高まっていくということになるのではないかと私は思っておりまして、これだけでいいとか
悪いとかというような話ではないし、そんなことをいえば、もともとからいって、我々としては大きな前提として非常に矛盾を抱えつつ議論してきているということは皆さん承知の上でやっておられるということで、「方向性だ」と言っていることはぜひ御理解いだきたいと思います。

【森嶌部会長】 議論が佳境に入ってきましたけれども、ここで10分休憩させていただきたいと思います。

〔休 憩〕
 
【森嶌部会長】 それでは、再開させていただきます。
 
【廣野委員】 今回の報告の基本的な方向は賛成です。ただ、2点だけ申し上げたい点があります。1つは、環境基本計画の中でも、最初から「循環」、「共生」、「参加」、「国際的取組」の4つが柱になっていたわけですが、当時からいろいろな議論があり、今回の見直しの中でも何回か議論がありましたけれども、「参加」というものをどうとらえる
か。「参加というのは一つの過程であって、必ずしも中身そのものではない」という議論もこの会合でも行われたと記憶しております。このペーパーは「環境から見た地域づくりのあり方」という報告書ですので、私は、参加という問題をもうちょっと積極的に取り上げる方がいいのではないかと考えます。
特に、このペーパーの中で、最初の1のところで、先ほど皆さん方から御発言がありましたとおり、現状の分析はかなりよくできているわけですが、参加のところは非常にページ数も少ない。15ページの「国内的な動向」の次に、「地域の動向」というのが18ページにありまして、19ページのところで約半ページにわたって参加のことが書いてあります。これから私たちがやっていくのは、もちろん21世紀に向けての見直しですので、これから参加という問題が日本の地域社会においてますます重要になってくるということを考えると、「地域の動向」でア、イ、ウと書いてありますけれども、ここをもうちょっと強化してもらいたいという考え方を持っております。
 特に、アのところで「地方分権の推進による地域の役割と可能性の拡大」ということが書いてありますが、当然、権限の委譲のみならず、例えば財源の委譲という税制上の問題も入ってまいります。また、イのところで「市民活動の活発化と地属的なコミュニティの希薄化」と書いてありますが、いろいろな地域が地属的なコミュニティの希薄化だけではなくて、逆に親密化と申しますか、そういうことが生まれている地域がいま日本各地にたくさんあるわけであって、そういうところでは市民の参加ということが非常に重要になってきている。
環境基本計画の中では、参加というのは、基本的には「各主体の役割」という格好で書いてありますけれども、各主体の役割というものが、参加という内容だけではなくて、地域社会におけるいろいろな意志決定の過程に市民が参加していくことが大きな参加の意味である。そうすると、必ずしも各主体の役割ということだけではないのではないか。
90年代に入って、これから21世紀に向かって、地域社会における市民参加というのがいろいろな格好で強くなってきております。特に最近の情報技術(IT)の進展により、直接市に対してITを使って市民が参加している状況がかなり出てきている。そういう意味からいうと、まさに市民が自分たちの地域社会のいろいろな問題に対して直接政策決定に参加するというのが今生まれつつあるわけで、こういう状況をもうちょっと積極的にここで書いた方がいいのではないかと思います。
というところから、当然、我々がこれからどういうことを提案するかという提案のところにも結びついてくるわけですが、提案のところでももうちょっと積極的に参加という問題を打ち出すことがいいのではないかと考えています。特に、このペーパーの43ページに「住民の役割」というのが書いてありますが、この「住民の役割」というのは、私から見るといかにも消極的な書き方であって、もっともっと積極的に書く方がいいのではないか。これは何も書いてある内容が間違っているということではなくて、書いてある内容は結構ですが、もうちょっと積極的に書くことが重要かと思います。
我々が21世紀を考えていくときに、現にそうですが、日本の国土をどうするかというときに、もちろん国土の大半は農村であったり山村であったりするわけですが、同時に都市も非常に重要な国土の一部であって、環境から見た地域づくりで都市の住民がこれからどういうふうな役割を果たすべきかということをもうちょっと書いてもいいのではないか
と考えております。ここでは農山村のことについて若干書いてありますけれども、都市の住民のこれからの環境の面から見た地域づくりということをもう少し積極的に書いていただけると、日本国民の90%近くが都市に住んでおりますので、そういう人たちのためにもなるのではないかと考えます。
第2点目は、非常にセンシティブな問題ですが、私はたまたまこの問題に関心があるので申し上げたいのですが、35ページに、エとして、「土地の持つ多様な機能に係る受益と費用負担の考え方の見直し」ということが書いてあります。ここに書いてある「土地の持つ多様な機能」の「土地」というのは、もちろん国土全般について書いてあるわけですが、同時にここでは主に農地と山林ということが強く書かれているわけです。これらが多面的な機能を持つことは誰しも全く同感であるわけですが、多面的な受益者は、農民あるいは山林を持っている方々だけではなくて、都市の住民も当然受益者であるわけで、多面的機能を維持するために、あるいは改善するためには、お互いに受益者が負担するということは全く考え方として賛成です。
 ただ、これはちょっとどうかなと思いますのは、下から3行目のところに、「その維持管理等に要する費用や労力は専ら農家が負担してきた」ということが書いてあるのですが、本当にそうだろうかと。現実に、日本の農民に対する税制を見た場合に、都市の住民に対する税制と比べてみて、本当に農民の税制が重いのかどうか。私は逆だと思います。同時に、農民あるいは農村を含めて、もろもろの補助金が相当農村にいっております。こういう補助金は国民の税金あるいは財投から出ているわけですが、こういう補助金もかなり農村にいっているわけですので、「農地の多面的機能の維持管理等に要する費用や労力は専ら農家が負担してきた」というのは当たっているのかどうかというと、私は当たっていないと思います。気持ちとしてはわかるのですが、書き方が必ずしも適切でないと思います。そういう意味で、こういう点を、より現実を適切に把握した格好で表現していただければありがたいと思います。
 
【森嶌部会長】 これは検討チームの報告ですので、今日御意見を伺ってこの報告書を直すということではないわけですが、いずれ環境基本計画に入れていく過程で、場合によっては、検討チームで検討された問題が重複したり、あるいは先ほどの武内委員のお話のように、例えば核については、廃棄物でも議論されるのでここではやらなかったということがございましたけれども、各検討チームの間の調整ということもございますので、御意見を承って、記録に残しておいた上で、最終的に調整あるいは表現については、これがそのまま環境基本計画の中に入ってくるわけではありませんので、念のために申し上げておきたいと思います。
 
【鈴木委員】 話を伺っているうちに、わかっていたつもりがどうもわからなくなったのは、「地域って何だろう」というのがまずわからなくなりまして、「地域づくり」というのは一体どういうことを意味するのだろうかというのがまたわからなくなったというのが2つのポイントなんです。それを何らかの形で教えていただきたいと思います。
 私が理解する範囲では、少なくともこの前の環境基本計画のときに使われた「地域」という用語よりは、今回の方がもっと広いものを含んで使われているように思いますし、そうなると、人と場あるいは人と自然との関わりみたいなものを一体化したシステムみたいなものを考えて「地域」と言わないと成立しないのだろうと思うのですが、いろいろな領域の用語法がありますから、それについては一々目くじらは立てないことにして、少なくともここではどういう定義で「地域」と「地域づくり」というのを使うのだというのは少しはっきりさせていただけないだろうかというのがお願いです。
 
【武内委員】 私どもは2つの点で議論を詰めてきたのですが、1つは、私ども委員の中で、国土と地域づくりというものは、「国土利用計画」という言い方をすれば、市町村まで「国土利用」という言葉を使われるわけですから、本来的に同じなのか、違うのかという議論があるのですが、一方で、「国土」、「国土利用」、「地域」、「地域づくり」は、実際に使っている省庁があるわけですね。主として協議の対象となったのは国土庁だと思うのですが。そこのところでの議論を十分踏まえた格好で作文しておりますので、私が個人の思いを語るよりも、事務局の方でその辺の整理をどういうふうにしたかということを説明していただいた方がこれから後の話にはより有効だと思いますので、細谷課長の方から……。
 
【森嶌部会長】 これは公権的な解釈でも何でもないのですが、どういうふうな仕分けを考えているかということでお話しください。
 
【細谷環境計画課長】 国土と地域との関係は、最終的に確定的な整理がこの報告書の段階でついているかというと、必ずしもついていないというのが正直な答えでございます。検討会の中におきましても、「地域の問題についてどのように定義すべきか」という点については多々御議論がありまして、最初は私ども「国土」と「地域」を別物のように使っていたのですが、検討会の中で、「『国土』という場合には、部分的なものも『国土』という表現で従来から使っている。そういう意味で、『国土』の部分的なものを『地域』というような言い方はおかしいだろう」という議論が行われたわけでございます。
 この報告書でいいますと、27ページで、「一応地域はこういうふうにとらえてみたらどうでしょうか」というやや歯切れの悪い表現になっているわけでございますが、27ページの1つ目のパラグラフで、「国土を地域レベルにおいてとらえる場合、地域は、国土全体の一部をなす、国土システムと同様に、水循環、大気循環、生態系あるいは都市システムや交通システム、廃棄物処理システム等が組み合わさったシステムとして認識される」というような言い方をしております。
 そこで、いかなる範囲をとらえて一つの地域とみなすかという問題は検討会の中でも議論があったわけでございますが、それはここではやや逃げた表現になっていますが、「どのような要素に着目するかによって異なってくると考えられる(例えば水循環であれば河川の流域、都市交通であれば都市交通の広がり、……)」ということにしております。
 いくつかの地域をとらえる考え方をそこで紹介しておりますが、一つとしては、「自然の循環メカニズムを重視し、それに人間活動を適合させていくという考え方から、流域を基本としながら他の問題を整理していく」という考え方も示されている。それから、「社会経済的な圏域は、流域圏を超えて形成されている場合があることを踏まえ、住民や企業において自らの活動領域としてイメージされている」ものを地域として考えるべきではないかという考え方もある。そういうことで、「様々な考え方があり得る」という言い方をしております。
 「しかしながら、……」のところで、一応ここではこういうふうに置いておきましょうかという考え方を述べておりますが、「環境政策と国土政策が連携し、共通の認識の下に政策展開を図るという観点からは、地域レベルで発生する各種の問題は、これまで自然的な地形や環境、伝統的歴史的に形成されてきた生活経済圏や文化圏、かつての国や郡のようなものを含む行政界などを踏まえて対処されてきており、このような問題解決のために公式、非公式に形成されてきた枠組みをとらえて、一つのまとまった地域をイメージし、そのような地域的まとまりができるだけ地域づくりの主体として活動できるようにしていくようにすることが現実的であろう」ということで、ここのところがとりあえずこの報告書を書くに当たっての検討会としてのイメージということでございます。
 そういうふうに考えますと、そこにございますように、「地域は、必ずしも大地域、中地域、小地域というような形でピラミッド状の構成をなしているとは限らず、分布の仕方も一様ではない。さらに、地域の完結性は、地域によりかなり異なると考えられる」と。特に3大都市圏につきましては、地域という考え方で話を考えていくよりは、むしろ全国レベルの問題と表裏一体の関係にあるものとして見ていった方が整理ができるのではないでしょうか、ということもそこに書いてあるわけでございます。
 最終的には、37ページで、「地域」の考え方については、この報告書で完全に明確な考え方を示しておりませんので、今後の宿題として、「地域」の範囲の考え方を明確化していくことが課題である、ということで結んでいる。結局、それぞれの地域において、その実情を考えながら、計画ができた後、ガイドラインを作るようなときにもう一度検討してみましょうか、ということになっているわけでございます。あまり答えになってはおりませんが。
 
【森嶌部会長】 最後のところははっきり示していなくて、あまり答えにはなっておりませんけれども、何となくニュアンスはお受け取りいただけたのではないかと思います。もともとこれは、先ほど浅野委員が言われたように、4分法で始まって「共生」のところから入っていったものですから、何となく自然環境のあり方についての地域性というのはあったのですが、都市交通とかいろいろなものが入ってきましたので、要するに、「国そのものではない。しかし、どこで区切るかというのは、その問題による」というようなお答えでなかったかと思うのですが、よろしいでしょうか。
 
【武内委員】 私見を申し上げます。私は、明確な地域区分はすべきではないだろうと思っています。それはなぜかというと、先ほど来出ておりますように、完全に閉じた系というのは、もはや現代社会においては形成しようがないわけですから、私どもが「物質循環」をいうときには、例えば流域のようなものに非常に注目した方がいいだろう。「連携」をいう場合には、流域を越えた交流というのもいっていいだろう。「情報化社会」の中では、世界に開かれた地域づくりをしていくべきだろう。というふうなことになれば、それぞれに応じて地域の広がりは違うわけです。
 重要なのは、「循環」と「共生」を柱にしたときに、それを括るに際して一番有効な区分とは何なのかということを考え、同時に、勝手に環境庁だけが地域をいうのではなくて、いろいろな省庁における、例えば国土庁とか建設省、運輸省との間の「地域」というものに関する考え方の共有というのも大事で、一方的に独善的に「これが環境庁がいうところの地域づくりの基本的な定義であり、それに基づく地域づくりの基本戦略だ」と言ってみることはあってもいいかもしれませんが、それは今回は実効性を高めるという観点からはとるべき道ではないと考えております。いずれにしても、いろいろな観点からの見方ができる中で、どれほど地域の生活主体がその周辺環境の自然性と人工性をうまく取り込んで、より循環的で、より環境共生的な社会づくりに向けて議論が展開できるか、という一点だと私は思っております。

【森嶌部会長】 それでは、この議論はこの辺にしまして、宮本委員、どうぞ。

【宮本委員】 方向としては非常に結構だと思うのですが、まだ十分読み込んでいないのでよくわからないのですけれども、「効率的視点」をここに取り入れていただく必要があるのではないかと思うんです。全体を読んでも多分そういう考え方がずっと入っていると思うんです。例えば42ページの上から6行目のところでも、「ツールとしては、環境保全経費の見積もりの活用など」とか、費用的な問題とかコスト的な問題をとらえられているように思うのですが、「効率的視点」、「効率的対策費」というものを全体として流すのが、これからの財政健全化の問題からも必要ですし、対応策としても重要ではないかと思います。
その「効率的視点」という観点から見ますと、対策そのものが必要かつ十分であるということが必要ですが、それだけではなくて、例えば各環境政策に共通するような部分を一括してやることによって、総合的な効率が上がるというのも一つです。
もう一つは、新しい技術を導入することによってコストを下げていくという効率的なものもあるわけです。
それから、地域が全体としてつながっていく、ここで言われている「広域的な視点」というのは、私はもっと強く出してほしいと思っているのですが、そういうようなものも効率化の大きなファクターではないかと思うんです。
 そういうように、全体を流している中に「効率的視点」というのも強く打ち出すことが、国民に対する一つのアピールとしてもできるのではないかということを申し上げたいと思います。

【浅野委員】 今、宮本委員から御指摘があった点でありますけれども、このペーパーの中で具体的に重点取組事項として掲げられていることがいくつかあるわけですが、環境配慮のガイドラインを作るということについては、先ほどから議論があったところです。
第2点に「情報の共有化」というのがありますが、これもいま宮本委員がおっしゃった意味での効率化に資するわけですね。各主体がそれぞれてんでに金をかけて開発する。その結果、整合性がとれないので、全然環境配慮につながらないという無駄なことはやめよう。その場合に、情報の発信源が上から下というか、一方通行の発信源ではいけないわけで、各主体から出てくる情報が双方向的にきちっと共有されることが必要である。そういう意味での指摘も多分この中には含まれているのだろうと思いますので、これは今の御指摘とうまく合っているなと思いました。
それから、40ページの「推進メカニズムの構築」で提案されている事柄は、意志決定過程の中に環境配慮を織り込む。それもできるだけ上位の段階のところから組み込んでおく。これは手戻りを防ぐという意味では効率性につながるわけですね。ですから、それはこの中に十分に意識として表れていると思いますので、その辺のところは計画を作るときに十分に生かしていけるのではないかと思います。
ここに「戦略的環境アセスメントの導入」という言葉が出ておりますけれども、前回申し上げましたように、言葉をどう使うかということは別として、政策決定段階や計画の早い段階で、これは誤解を与えてはいけないのですが、どういうものを考える場合でも、環境配慮をきちっとしなければいけないというのは、もともと当然のことであるということがここに書かれていると思いますが、「これを次には手法あるいはシステムの形にしていかなければならないのだ」という御指摘もあるわけで、この辺は、一つ一つアセスメントをやっていくというのは無駄な面もあるわけですが、最初からもっと統一的なところで、上位のところでアセスメントをやれば合理性があるという話があります。
それから、ガイドラインの話の中にちらっと「環境アセスメントにより形成されてきた環境に対する共通理解」という言葉が出ていますけれども、現在の環境アセスメントというのは、確かに一事業ごとに一つ一つアセスメントをやるというやり方なんですね。しかし、ようやく環境影響評価法ができて、その後の動きの中で、特に生態とか生物多様性についての取組が必要になってきましたので、技術指針がかなり出てきていて、生態系の分析をするときはこういう考え方でやるべきだと、その考え方が出てきているので、各地域でどれを上位種としてとらえるかというのは、それぞれの地域とか広がり、事業種に応じて考えるのだけれども、考え方はこんな考え方でやればいい。そうすると、今までは「何だかわからない」と言っていたことが、何となくこういうやり方をすればわかるなという姿形が出てきつつあるわけです。だから、これを次々に積み重ねていけば、多分ここで言われているガイドラインの考え方とつながってくるのだろうという御指摘だろうと思うのですが、これも無駄なく事を進めるということになるわけです。
無駄なくやるというのは、何となく悪いことのように見えますけれども、めちゃくちゃに同じことをあちこちで繰り返していて、過去にやったデータが全然生きてこない無駄なことはやめろということは全部この中に提案として入っているような気がしますので、宮本委員がおっしゃったことに、さらに今の点を付け加えておきたいと思います。

【猿田委員】 最近、既存の工業地域などでは、工場が地方に移転して空洞化現象が起こったりしており、また、地方ではそういう意味で新たな工場立地等によって地域開発が行われているという面もあるわけです。42ページの「関係主体の役割」で、国、地方公共団体、民間団体等、住民とありますが、ここで事業者の役割が述べられていないのは、どういう理由なのかお伺いしたいのです。
最近の地域開発、あるいは前の方に自動車公害問題、廃棄物問題、いろいろ御指摘がございますけれども、そういう事業活動との関係もあるわけでして、国、地方公共団体が事業者となり得る場合もあるわけです。環境基本計画あるいは基本法でも、主体の中には、国、地方公共団体、事業者、国民あるいは民間団体となっておりますが、あえてここで事業者を取り上げなかった理由がありましたら、お伺いしたいと思います。

【細谷環境計画課長】 事務局としてお答え申し上げます。ここの役割は、基本的に、このページより前にいろいろ書かれたことをもう一度整理直してみるという観点から作ったわけでございます。そういう意味で、前の方に出ていた主体についてここで並べ直したということでございます。本来ですと、例えば事業者も書けばいいのかもしれませんが、前の方に出てこないで突然ここでぱっと出てきても、ちょっと理解ができない。また、もし事業者ということを書くとすれば、新しく書き加えることとしては、事業を実施する上での、例えば土地の開発をやる上での環境配慮とか、そういうことを書くことになると思うのですが、とりあえず前の方の整理としてやったということで、ここには出てこなかったということでございます。

【森嶌部会長】 41ページの民間活力の活用というところにはちょっと出ているので、全然出てこなかったわけではない。これは報告書ですから、今の御指摘は、この後、環境基本計画をまとめていく際に十分考慮していきたいと思います。

【池上委員】 全く視点が違うことを申し上げますけれども、42ページ、43ページのところで、国の役割、地方公共団体の役割が大変短くて、その後、住民の役割とか民間団体の役割が非常に長く書かれていますね。そこでちょっと思いつきましたことは、例えば国の役割というのは、ガイドラインを提示する、支援ツール、情報を開発し提供する、いろいろな施策を通して地域づくりの考え方を支援する、これだけの機能なんですが、さっきブナ林の話をおしゃっていただいた中から察しますと、地域同士のコンフリクトといいますか、利害関係が違う場合が起こり得るわけですね。そういったものをもう少し国レベルで高い立場から調整する機能があった方がいいのではないかと考えました。
たとえて言うなら、私は琵琶湖のそばに住んでいますけれども、水の問題です。大阪も京都も、あるいは神戸も一部琵琶湖の水を飲んでいるんです。琵琶湖だけが事業展開をするということになると、水が悪くなってくる。現に富栄養化で水が非常に良くないんです。ですから、そういうことを高い立場から指導していただけるという立場を国の役割に入れていただいたらどうかと思うのですが、いかがでしょうか。あるいはそういう視点が入っているのかどうか。それはさっきあった広域的な水の流域で解決すべき問題だということで終わりかどうか、そういう点を御指摘申し上げたいと思います。

【森嶌部会長】 ただいまのは御指摘ということで承っておきたいと思います。
 
【佐竹委員】 2点申し上げたいと思います。1つは、地域の問題ですが、結論として武内主査の御意見と同じなのですが、地域というのは、例えば林業についていえば、山の管理をどうするかということになれば、当然流域ということになると思います。住環境をどうするかということになれば、市町村の区域より小さい建設省の都市計画法の地区計画ということになって、もっと小範囲になる。両方あってしかるべきだろう、何も画一的に決めることはないのではないかと思うわけです。
 あまり生意気なことも言えませんが、ヨーロッパあるいはアメリカであれば、都市計画法の前身と申しますか、都市農村計画制度は、いずれも不動産所有者が自分の不動産価値を守るためにどうしたらいいか、一定の土地利用規制が必要であるというところから発想されて制度が出来上がってきていると思います。
 実は、私が国土利用計画法を担当したときに、「親がいないのに子供がいるというのはおかしいんじゃないか」という議論があったのですが、そんなことはないので、先に子供があって当然なんですね。必要な限りで中央で調整するということは、今もお話がございましたけれども、それはあり得るかもしれませんが、そのような意味であまり固定的に考えることはないのではないか。
 むしろ問題は、こういう言い方は自治省の関係者には失礼かもしれませんけれども、明治20何年の町村合併以来、日本の町村は行政の便宜上つくりあげてきた。もっとも農林省はあまり利用しませんでしたが。あくまで行政の便宜、国の便宜上つくったわけですね。今それの切り替えが進みつつあるということだろうと思います。ですから、当然様々な地域があっていいのではないか。要は、自分たちの住んでいるところを少しでも良くしたいという住民の意志があれば、それをバックアップする、そのためのシステムということで、ここにいろいろ考え方が示されているということでよろしいのではないかと思います。
 それから、廣野先生の先ほどの御議論について、確かに農水省の補助金にはいろいろ問題があります。本来ならば出るべきではないのに出ているのではないかという御疑念は、それはそれとして認めますが、これは事実認識の問題でございます。要するに、正しいか、間違っているか。
 農村の集落では、徳川以来、道普請、溝ざらえというのが必ず春秋2回行われています。その方が安上がりだからそうしたということはあるわけですが、明治以降もずっと続いていた。したがって、農林省もそれを前提に仕事をしてきたわけです。ところが、現在そういうものが動かなくなってきている。というのは、都市住民も入ってくるわけです。そうすると、昔から住んでいた人でなくても道路を使っているじゃないか、なんで一緒にやらないのかと。農民といっても、今はごく数が少なくて、農家という名の兼業者であるわけですから、溝ざらえ、道普請に出られないわけです。
 そうするとどういうことが起きるかというと、金銭で負担しようということになるわけです。金銭で負担するなら、後からきた人にも持ってもらおうじゃないかと。話を持っていくと、「それはおかしいだろう。そんなものは公共団体がやるべき仕事ではないか」という議論がいろいろ起きているわけです。その中で、先住民族と後から入った新しい人たちとの間でいろいろ話し合いが行われて、うまく進んでいる例もございます。そういう意味でこの文章は御理解いただきたいと思います。
 御指摘の農林省の補助金そのものにいろいろ問題があることは、私は少なくとも否定できないと思いますので、それは認めた上で、今のような側面もある議論であるということを御紹介しておきたいと思います。
 
【森嶌部会長】 ほかにございませんか。
 それでは、先日、「循環型社会形成推進基本法案」が国会に提出されておりまして、これは環境基本計画とも大いに関係するところでありますので、これについて事務局の方から御説明いただきたいと思います。
 
【長尾水質保全局企画課長】 それでは御説明申し上げます。お手元の資料は、1枚目のタイトルが「循環型社会形成推進基本法案の趣旨」、2枚目が「概要」と書いた6項目にわたるもの、3枚目が法体系の絵、それから基本法案という法案そのものの資料になっております。主として上の2枚を使って御説明申し上げます。
 循環型社会の形成に関しましては、中央環境審議会におきましても、昨年の3月に廃棄物部会で取りまとめをいただきまして、方向性を御提示いただいたわけでございますけれども、法案について検討を進めてまいりました。また、この法案につきましては、与党の中におきましても非常に関心が強いテーマとなりまして、法案につきまして、与党とも意見のすり合わせを行いつつまとめたわけでございます。4月14日に臨時閣議で閣議決定しまして、国会に提出しております。現在、国会で審議中という状況でございます。
 法案の趣旨でございますが、廃棄物・リサイクル対策に焦点を絞って法案を用意しております。廃棄物・リサイクル対策につきましては、廃棄物処理法あるいは再生資源利用促進法などの各種のリサイクル法を制定してきておりますけれども、まだまだいろいろな課題がございまして、むしろ非常に難しい状況にございます。
 4つの問題を指摘しております。廃棄物の量が非常に多いこと。2番目に、リサイクルがまだまだ進んでいないこと。3番目に、そういう中で、廃棄物最終処分場が必要になるわけですが、その立地が困難を極めていること。ここでは平成8年度の数字が書いてありまして、産業廃棄物について3.1年という数字が出ておりますが、厚生省の昨年の9月段階の推計によりますと、その時点におきましては3.1年という数字が1.6年になっているという計算をされているところで、ますます大変な状況になっております。また、不法投棄につきましては、平成5年度に比べて約5倍近い増大を見ているという状況でございます。
 こういった状況の中で、問題の解決のためには、「大量生産・大量消費・大量廃棄」型
 の経済社会自体を見直していかなければいけないという意味で、「循環型社会」に移行していかなければならないという問題意識でございます。
 社会の変革が求められるわけでございまして、個々のいろいろな法律の見直しとか、個別の物資に応じた法の制定とか、そういうものも当然必要でございますけれども、それとともに基本的な枠組みとなる法律を制定しまして、これを今後の循環型社会形成、廃棄物・リサイクル対策の羅針盤のようなものにしたい、そういう法案が必要であるという認識でございます。
 参考のところに書いてございますが、今国会には、廃棄物・リサイクル関係で4つの法案が既に提出中でございます。廃棄物処理関係では廃棄物処理法等の改正案、リサイクル関係では再生資源利用促進法の改正案。それから、新法として、コンクリート、アスファルト、木材などの建設資材のリサイクル法案、レストラン、ホテル等から出る食品廃棄物のリサイクルの促進を図る法案の2つが提出されている状況でございまして、こういったものと相まって実効ある対策を行っていきたいと考えております。
 次のページに、「循環型社会形成推進基本法案の概要」という資料が出てまいります。6項目にわたって整理してございます。
 まず、「形成すべき『循環型社会』の姿を明確に提示」と書いてございますが、目指すべき社会を明確にすることが基本的に重要なことでございまして、「『循環型社会』とは、[1]廃棄物等の発生抑制、[2]循環資源の循環的な利用及び[3]適正な処分が確保されることによって、天然資源の消費を抑制し、環境への負荷ができる限り低減される社会」。最終的には、持続的に発展可能な社会を目指すということでございます。
 2のところで、「法の対象となる廃棄物等のうち有用なものを『循環資源』と定義」と書いてございますが、従来の廃棄物処理法におきましては、不要物を無価物ととらえております。他方で、リサイクル関係の法律は、主として有価なものを中心に対象としてとらえております。こういうふうに2つに分かれている状況でございますが、これを廃棄物・リサイクル一体となってとらえるという観点で、有価・無価を問わず「廃棄物等」と定義して法律の対象をとらえております。そして、廃棄物等の中で有用なものを「循環資源」と定義づけて、その循環的利用を促進するという法律構造をとっているところでございます。
 3番目に、処理「『優先順位」を初めて法定化しております。環境基本計画の中でもこういった優先順位について触れられておりますけれども、法律の中できちっと法定化をしたということでございます。まず、何よりも廃棄物等は発生抑制ということで、出さない。2番目に、どうしても出てくる廃棄物等は、できれば再使用ということで、そのまま、あるいは部品として再使用する。3番目に、再使用ができないものについては、原材料として再生利用していく。そういったことができないものは、熱として回収していく。どうしても捨てなければしようがないものは、適正に処分する。こういう5つの優先順位を法定化したわけであります。
 4番目に、こういった対策をきちんと打っていくためには、国、地方公共団体、事業者及び国民がきちっと役割分担をして、おのれの役割を果たしていくことが重要ではないかという認識で、4者の責務というものを明確にしております。特に、事業者・国民の「排出者責任」、生産者の「拡大生産者責任」。すなわち、自ら生産する製品について、生産段階で廃棄物が出た場合に、それを処理するのは当然としまして、それのみならず、自ら生産する製品が流通し、使用し、廃棄物になった後まで一定の責任を負う、こういう責任の一般原則を確立しようということでございます。具体的には、処理しやすいように、リサイクルしやすいように設計上の工夫を行うこと、表示を行うこと、あるいは回収システムを構築すること、といったような内容が含まれるわけでございます。
 5番目に、政府として、「循環型社会形成推進基本計画」を策定するということでございます。この計画の中でいろいろな政府の施策を定めまして、これを推進力として施策を実現していこう、という考え方でございます。
 その仕組みにつきましては、詳細な仕組みを法律の中に定めております。6つに分けて書いてございますが、まず6番目を御覧いただきますと、「国の他の計画は、循環型社会形成推進基本計画を基本とする」ということでございまして、廃棄物の処理とか、リサイクルに関係するいろいろな国の他の計画がありますけれども、それらはこの法律に基づく基本計画を基本として規定していこうということでございます。
 上に戻らせていただきますと、まず1番目に、そういう基本計画の原案を作らなければいけないわけですが、原案を作るに先立ちまして、中央環境審議会が意見を述べる指針というものをまず作って、それを踏まえて原案を環境大臣が作っていこうという仕組みにしてございます。
 2番目に、計画の策定に当たっては、改めて中央環境審議会の御意見を伺います。
 3番目に、政府一丸となった取組を確保するために、閣議決定により策定するということにしております。
 4番目に、閣議決定をされた基本計画につきましては、これを国会に報告するということで、国会の中でも御議論があるだろうというような仕組みにしております。
 5番目に、計画の策定期限、いついつまでに1回目の基本計画は作りなさいといった策定期限。それから、計画は5年ごとに見直しをするということを法律の中に明記しているということでございます。
 また、ここに書いてございませんけれども、年次報告という規定が別途ございまして、政府の施策の実施状況、講じようとする施策の状況は、毎年国会に報告するということが導入されております。
 6番目に、国の施策でございます。4のところで、国、地方公共団体、事業者、国民の責務というものを明確にしておりますけれども、こういった責務を国の施策の中に位置づけていくことが最初に出てまいります。上の3つは特にそういうものでございまして、廃棄物の発生抑制、「排出者責任」、「拡大生産者責任」、こういった措置を国の施策として講じなければならないというような規定が設けられております。
 また、リサイクルを推進する上では、単に供給面の対策を整えるだけではなくて、それを需要する側面の対策も必要でございますので、再生品の使用の促進という規定も設けられているということでございます。
 5番目に、「排出者責任」の一環にもなりますけれども、環境保全上の支障が生ずる場合、すなわち、廃棄物等を循環的利用したり、あるいは処分したりすることによって環境保全上の支障が生ずる場合、具体的にいいますと、不法投棄などが想定されますけれども、そういう場合に、原因事業者に原状回復等の費用を負担させる措置を国として講じていくという規定が設けられているところでございます。
 3ページ目に体系図が出てまいりますが、環境基本法、循環型社会形成推進基本法、廃
 棄物処理法、再生資源利用促進法、個別の物資に関わるリサイクル法、こういったものがどういうふうな位置づけになるかというのをわかりやすく表現したものでございます。
 循環型社会形成推進基本法は、環境基本法の理念を踏まえて制定される法律でございます。その中には、廃棄物の適正処理とリサイクルの推進といった視点が入るわけですが、廃棄物処理法、再生資源利用促進法で一般的な規制の仕組みが導入され、また、個別物品の特性に応じた規制は、容器包装リサイクル法、家電リサイクル法、今回の建設資材リサイクル法、食品リサイクル法といったような法律で講じられるというような仕組みが、今国会で5つの法律が通過した暁にはこういう姿になるということでございます。
 基本法案の個別の御説明は割愛させていただきます。以上でございます。
 
【森嶌部会長】 この点に関して御質問等がございましょうか。
 
【浅野委員】 質問ではないかもしれません。ただいまの御説明の中で、「いくつかの重要な原則が今度できた、優先順位を初めて法定化した」という御指摘でありました。これは前から環境基本計画で書かれていたものが今度法律になったという意味が非常に大きいと思います。ただ、この場合に、法律の中にこういうことがちゃんと書いてあることだけははっきり指摘しておかなければいけないのは、この優先順位は絶対的なものではなくて、「この順位によることがかえって環境負荷を高めるような場合は、それによらない」ということがはっきり書かれているので、これが固定的な原則であるということではないということです。
 もう一つは、事務局の御説明に対する若干の注文になりますけれども、「拡大生産者責任」という表現がとられています。これは廃棄物部会で答申を出すときもいつも注意をして、このような言葉を使わないようにということで、「拡大された生産者の責任」とわざわざ言ってきたのは、もとの言葉はEPRで、「ライアビリティ」ではなくて、「レスポンシビリティ」という言葉が使われているわけです。ライアビリティというのは、例えば製造物責任の場合のように、賠償責任のところまでつながる概念ですが、レスポンシビリティというのはそれと違うわけです。法律では「責務」という言葉で括ってありますから、これを一般に説明するときには、できれば丁寧に言葉を使っておかないと、「生産者責任=製造物責任」とすぐつながっていって、製造物責任が広がったんだということになってしまうと、だいぶ意図していることと違ってきます。最終的に費用を誰が負担するかというのは、価格転嫁をちゃんと考えて、誰が費用を負担するかは別として、一時的に引き取るのは誰かということを言っているというところがぼけてしまうとまずいなと思いました。ですから、今後こういうものを説明されるときには御注意いただきたいと思います。
 
【長尾水質保全局企画課長】 誠に御指摘のとおりでございまして、そのように心掛けてまいりたいと思います。
 
【佐竹委員】 論理的には、いま長尾課長が御説明になったことに反対する方は誰もいないと思うんです。問題は、市場経済の下でどうやってリサイクルを実現していくかということだろうと思います。最近はどうか知りませんけれども、古紙回収業などは一番市場経済の波に洗われているわけですね。古紙回収はともかく、水局としてお考えいただきたいのは、集落排水の排水です。つまり、窒素やリンを多量に含んでいるわけです。まさに人間の知恵で、江戸時代、日本の都市はきれいだったわけですが、ああいうリサイクルを実現できないか。なぜできないかといえば、安い、品質が安定した硫安や窒素、尿素があるのに、何も濃度の不安定な集落排水の排水を使うことはできない。これは生産者の言い分です。そこで止まっちゃうわけです。
 ですから、皆さん、こういう原理的な議論をされるのも結構ですが、これは農林省の仕事かもしれません。環境庁と農林省が一緒になってもう一歩進めて、農村集落排水は由緒正しい汚水であって、変な重金属は、たまには入っていることもあるようですが、入っていないわけですから、昔のサイクルを何とか人間の知恵で回復する。それはもちろん顕著には変わらないと思いますけれども、毎年少しずつ増えていくような努力をしてほしい。今は何もやっていないと言っては失礼ですけれども、私の見るところではやっていないわけですから、ぜひお願いしたいと思います。
 
【横山委員】 この法案の論議過程では2つ論議になったと思うんです。第三者機関の設置と、自然エネルギーをどういうふうに位置づけるかということだったと私は理解していましたけれども、結果的にその2つはどのように取り入れられ、あるいはなくなっていったのか、その過程を教えていただけますか。
 
【長尾水質保全局企画課長】 お答え申し上げます。第三者機関の問題、自然エネルギーの問題の2点御指摘いただきました。まず、第三者機関の問題についてでございますが、最初に私が申し上げましたように、与党の中でいろいろ御議論があったわけです。特に公明党から、来年の1月に新たに設置される内閣府の中に委員会を設置して、第三者機関として役割を果たす。その委員会は、独立した事務局をもって、この計画の策定、実施状況の監視といった役割を担うというような御提案があったと聞いております。
 与党の中でもいろいろ御議論があったようでありまして、私どもが考えておりますところに沿って今回こういう法案でまとまっているわけですが、行政改革につきましては、橋本元総理の時代からいろいろ御議論がございまして、来年の1月から発足するような形で整理されておりまして、行政を簡素化する趣旨、環境省を設置する趣旨に鑑みますと、内閣府の中にこういう新たな行政組織を設置することは適当ではないのではないか、という御議論。もう一つは、環境省の中に中央環境審議会があるわけですから、こういった組織を御活用いただけないか、といったような観点で御議論が行われました。その結果、中央環境審議会が基本計画の策定に関わる仕組みが導入され、しかも、先ほど私が御説明申し上げましたように、非常に詳細なスキームが決められたという経緯でございます。
 第2点目の自然エネルギーについてでございますが、自然エネルギーに限りませず、御議論の過程では、例えば森林の自然循環に果たす役割とか、そういったものも御議論があったようでございます。しかし、廃棄物・リサイクル問題は、先ほど私が若干数字で補足しまして、3.1年が1.6年になっているということを申し上げましたけれども、もはや待ったなしの緊急の課題であるという問題意識が一つございました。したがいまして、そういった自然循環的なものよりも、廃棄物・リサイクル問題に焦点を絞るべきである、という御議論があったということでございます。
 また、自然エネルギーの中で、例えば太陽エネルギーを考えますと、これは言葉の世界になりますけれども、「循環」という切り口でとらえるのが正しいのかどうか、というような御議論もあったと聞いております。当然のことながら、切り口が違いますと、想定される施策も違ってくると存じますので、この循環型社会形成推進基本法の中で自然エネルギーを位置づけるのは適当ではないのではないかということで、今のようなスタイルになったということでございます。
 
【森嶌部課長】 ほかにございませんか。
 それでは、佐和委員から、「地球温暖化対策と経済そして新しい価値規範についての覚え書き」という文書をいただいておりますので、申し訳ありませんが、10分ないし最大限15分で御説明いただけますか。
 
【佐和委員】 それでは、お手元の私の名前が書いてある資料に即して10~15分で御説明します。
 要するに言いたいことは、地球温暖化対策と経済成長は決して両立しないということはあり得ず、少なくとも日本のように成熟化を遂げた国においては、むしろ両立するということ。そして、21世紀をかたどる価値規範の転換が今起こりつつある。その2点でございます。
 まず、1の「温暖化対策と経済」でございますが、北欧三国、オランダ、デンマークは90年代初頭に炭素税を導入。ドイツがやや変則的な炭素税を99年に導入しました。フランスは2001年から税率 2,550~3,400 円/Cトンの炭素税導入を計画しています。また、イタリアは2005年から鉱物油課税という形で化石燃料に課税の方針と聞いています。いずれの国も基本的には増減税同額を原則としています。イギリスもまた2001年4月導入を目指して検討中とのことであります。
 さて、炭素税等による二酸化炭素排出削減と経済成長とが、先進国においてもトレードオフ関係にあるかのように言うのは、経済学の常識に照らして誤りである。例えばCO2 排出削減に「費用」がかかるのは事実ですが、だからといって、それによって経済成長率が低下するわけでは必ずしもない。なぜそうなのかをこれから説明いたします。
 炭素税制の導入は、「消費者から政府への所得移転」をもたらすだけであって、政府が得た税を金庫にしまっておけば、当然経済成長率はマイナスですが、政府が移転された所得の使い道を誤らない限り、それによって経済成長率、つまり内需の伸び率が低下するわけでは決してございません。あるいは、増減税同額(税収中立)の原則にのっとって、炭素税収に等しいだけの個人所得税減税を行えば、結果として、炭素税による個人消費支出の減少と個人所得税減税による個人消費支出の増加を合算したものが、正なのか負なのかは予見できないけれども、いずれにせよ増減の幅は微々たるものにとどまる(ほぼ中立的)と見てよいのではないでしょうか。
 炭素税収を一般財源に組み入れて、財政赤字の補填に用立てるとすれば、即時的、つまり短期的には消費が減少し、経済成長率はその分低下します。政府支出は増えないわけですから。しかし、アメリカのDRI(Data Resourse Institute)が京都会議の数カ月前に行ったシミュレーションによりますと、短期的に(導入後5年まで)は経済成長に対してわずかにマイナス効果がある。数字で申しますと、1年間に経済成長率が0.2%程度低下する。ところが、中長期的にはむしろプラスの効果を持つというシミュレーション結果が出ています。なぜそうなのかといいますと、エネルギー価格の上昇によって、省エネルギー投資のインセンティブが高まり、民間企業の設備投資、個人住宅投資が増加するから、そして、財政赤字の削減が金利を低下させ、それが民間企業の設備投資や個人住宅投資を増加させるからであります。
 さて、炭素税制の導入に当たっての問題点の一つは、[1]税収を一般財政に繰り入れるべきか、[2]特定財源とするべきか、[3]増減税同額とするべきかであります。財政当局としては当然[1]を選考しますし、温暖化対策関連官庁は特定財源にすることを好むかもしれません。そして経済学者の多くは「税のグリーン化」という観点から増減税同額の[3]を支持すると考えられます。
 化石燃料への課税が、エネルギー多消費型輸出産業の生産コストを上昇させ、その国際競争力を損なう可能性は十分あり得ます。そのための手当てとしては、例えば鉄鋼を輸出する際に水際で炭素税を払い戻す。つまり、炭素原単位のようなものを申告してもらって、既に支払った税金を払い戻す。例えば韓国から鉄鋼を輸入する際には水際で課税するという国境措置(border measures)を講じれば何の問題もございません。こういう方式がWTOに違反するのではないかとおっしゃる方もいますが、アメリカがかつてフロンに課税して、日本からのエアコンディショナー等の輸入に際して、そこで税金を取ったという前例がございます。要するに、国内で消費する鉄には課税するが、海外で消費する鉄には課税しないことにすればよいわけであります。あるいはまた、スウェーデンにならってエネルギー多消費型産業に対する炭素税免税措置を講じればそれで済みます。
 今までの経済成長に対して何の影響もないというのは、先進国においての話であります。発展途上諸国においては、CO2 排出削減に要する設備投資と、生産力増強のための設備投資は、相互にトレードオフの関係にありますから、中期的にも、CO2 排出削減は生産力増強のための設備投資を抑制し、その結果、潜在的な経済成長力が阻害されると見るべきであります。途上国における温暖化対策は、多少にかかわらず、潜在成長力の伸びを低下させるという意味で、温暖化対策は経済成長を損なうということになります。
 しかし、今日の日本のような「成熟化」した先進国においては、多くの産業が過剰設備を抱えており、しかも設備投資自体が往年に比べて軽薄短小化(IT化)しているため、CO2 排出削減のための(相対的に重厚長大な)設備投資は、経済成長に対してプラスの効果を持つ傾きの方がむしろ強いと見るべきであります。
 温暖化対策の内需喚起の側面を見落としてはなりません。より燃費効率のいい車、省電力設計の家庭電化製品への需要を喚起し、個人消費支出を増加させます。民間企業の省エネルギー設備投資、個人住宅への省エネ投資もまた増えるということで、温暖化対策は内需喚起という側面があることを見落としてはなりません。
 炭素税導入等の温暖化対策の推進は、産業をウイナー・インダストリーとルーザー・インダストリーに分かつことにはなります。ルーザー・インダストリーの被るロスを最小限に食い止めるためにはどうすればよいのかを思案する必要があります。
 最大のルーザー・インダストリーは、ほかでもない石炭産業であります。だからこそ、オーストラリア等の産炭国は、温暖化対策に消極的なのであります。石油産業は、石油の副産物である天然ガス需要が増えること、石油に代わる液体燃料の開発が難しいこと、また石油の可採年数が40年余りであることから、一概にルーザーとは言い切れません。石炭産業のほぼ壊滅した日本においては、最大のルーザーが不在であるという意味で、先進38カ国の中で最も温暖化対策を講じやすい国の一つではないでしょうか。
 温暖化対策の推進が、CO2 排出量の少ない代替燃料、低燃費車等の研究開発競争が激化することは確実だから、京都議定書は産業界に新しい研究開発を促す契機を提供したことになります。
 同一業界内で、例えば自動車業界内でウイナー・カンパニーとルーザー・カンパニーとに分かれることも避けがたいと思われます。低燃費車の開発に先んじる自動車メーカー、省電力設計の電化製品の開発に先んじる電機メーカーはいずれもウイナー・カンパニーと言えます。
 京都議定書に基づく国際約束、国内対策としての炭素税などの「人為」により、産業や企業をウイナーとルーザーに分かつことの当否を「公正」の観点から吟味しなければなりません。
 京都議定書は自動車業界再編成の契機を提供したと言えます。研究開発のターゲットの時期--議定書が発効する年が仮に2003年だとして、それ以降は各国とも本格的に温暖化対策、CO2 排出削減に取り組むとしますと、自動車の平均的な燃費効率の改善ということほど痛みの少ない対策はほかに類例がございません。したがって、各国とも様々な税制の改正等々によって低燃費車の導入促進を図ると思います。こういう研究開発の目指すべき方向、具体的にいいますと、燃費効率の飛躍的改善が明確に定まっている研究開発競争が始まったわけであります。1998年のダイムラー・ベンツとクライスラーの合併を、京都議定書が駆動する自動車業界再編成のはしりと見ることができます。
 次に、価値規範の転換について一言申し上げたいと思います。
 日本経済は今、成熟化段階に達しました。これはどういうことかといいますと、戦後50年近くにわたって工業化社会の階段を息せき切って駆け上ってきた。そして階段の踊り場に到達したという感じなんですね。階段の踊り場というからには、その向こうに新しい階段があるわけですが、それはポスト工業化社会の階段だと言うことができるのではないでしょうか。
 「ポスト工業化社会はどんな社会なのか」と問われますと、「今のアメリカを見てください」というのが私の答えであります。つまり、91年4月以来、持続的繁栄といいますか、成長を続けるアメリカ経済というのは、80年代にはまさに階段の踊り場にいた。そして90年代に入って間もなく、ポスト工業化社会への一番乗りに成功したと言うことができるのではないでしょうか。
 さて、経済の成熟化に伴う価値規範の転換について申し上げたいと思います。一言で申しますと、マテリアリズム(物質主義)からポストマテリアリズム(脱物質主義)への転換であります。「豊かさ」の獲得と飽和は人々の価値規範を脱物質主義へと向かわせます。統計数理研究所の「日本人の国民性調査」によりますと、日本は高度成長期以来80年代初頭まではポストマテリアリズム化(物離れ)という現象が進みましたけれども、80年代末のバブル経済期にはネオマテリアリズムの荒波に襲われ、ポストマテリアリズム化は頓挫しました。しかし、5年ごとに行われている、その後の国民性調査によりますと、88年から93年にかけてマテリアリズムが復活し、93年から98年にかけてまたポストマテリアリズム化が進んだということを統計は示しております。
 欧州諸国ではポストマテリアリズム化が一直線的に進んだ結果、環境保全型社会が形作られたのではないでしょうか。特に70年代末のドイツにおいて、「環境保全は経済成長を阻害するどころか、経済成長の源泉となりうる」という環境問題に対する考え方の一大転換が成し遂げられました。そしてドイツ社会民主党は89年の新基本綱領にこの考え方を明示的に取り込んでおります。
 日本では、80年代末のバブル経済期に、ネオマテリアリズムとでも言うべき価値観の逆行現象が起きました。一言でいえば、拝金主義があのころ台頭したわけであります。しかし、幸いなことに、90年代に入り、ポストマテリアリズムの方向へと再度の逆転が生じたことは、私としては大変好ましいことだと考えております。
 地球温暖化問題は、大量生産・大量消費・大量廃棄を旨とする20世紀型工業文明の見直しを私たちに迫っています。大量生産・大量消費は1910年代から20年代にかけてのアメリカで形作られた文明でありますが、その後ろに「大量廃棄」の4文字をくっつけたのは戦後の日本ではなかったでしょうか。もし今申し上げたことがそのとおりだとすれば、21世紀型文明を構想し、世界に向けてそれを率先垂範するのが日本の責務のはずであります。
 21世紀型文明は何なのかといいますと、先ほど「循環型社会」という言葉が出ていましたが、私はそれにさらに「代謝」という言葉を付けて、「循環代謝型文明」と考えております。
 以上です。
 
【森嶌部会長】 どうもありがとうございました。
 多分御議論がおありかと思いますが、実はこの問題は、ほかの検討チーム、例えば地球温暖化対策のチームあるいは経済社会のグリーン化メカニズムのあり方のチームでも議論され、いずれ報告書という形でこの場に出てまいりますので、その際に御議論いただく、あるいはその際に佐和委員に対して御質問があればしていただくということで、今日は、せっかくお出しいただいたペーパーについて、たった10分ですけれども、御講義をいただくということで終わらせたいと思います。
 今日のような調子で、今日は「環境から見た地域づくり」ということでございましたが、次回以降は、各検討チームから報告書をいただきまして、それについて本部会で御検討いただくということになります。次回は、天野委員から経済社会のグリーン化メカニズムの検討チームの御報告、また、小澤委員から環境教育の検討チームの御報告をいただく予定でございます。
 今日は比較的時間がございまして、御議論いただいたと思いますけれども、なお、こういうことを指摘しておくべきではないかということを思いつかれましたならば、5月1日ぐらいまでに事務局まで文書で出していただければ幸いであります。
 次回の日程でございますが、既に事務局から連絡がいっていると思いますけれども、5月22日の午後2時から開催ということになっております。場所は、竹橋のKKRホテル東京の瑞宝の間でございます。
 ほかに御発言がなければ、これで閉会にしたいと思います。長時間にわたりましてありがとうございました。

<以 上>