環境保全上健全な水循環に関する
基本認識及び施策の展開について


〜 豊かな水の恵みの永続を目指して 〜



平成11年4月

中央環境審議会

水質部会・地盤沈下部会


目  次




 
はじめに



 T 環境保全上健全な水循環に関する基本認識 


1.自然の水循環系とそれに果たす地下水の役割
2.水循環と水環境・地盤環境の関係
3.地下水を中心とする水循環の悪化と水環境・地盤環境への影響
  (1)水循環の構成要素
  (2)水循環悪化の背景
  (3)水循環悪化による障害
4.環境保全上健全な水循環の考え方



 U 環境保全上健全な水循環の確保に向けた施策の展開


1.現状、課題、目標の共通認識の形成
2.体系的な施策の追求
3.流域における施策の具体化
4.地域別にみて推進するべき施策の方向



 おわりに



 参考編 : 環境保全上健全な水循環の確保に向けた施策の事例



 はじめに


 水環境・地盤環境の保全に向けた取組については、環境基本法の規定により平成6年12月に政府の定めた環境基本計画に基づき、水環境・地盤環境の保全に向けた各種施策を推進することとされた。

 これを受け環境庁においては「水環境ビジョン懇談会」(平成6〜7年)及び「健全な水循環の確保に関する懇談会」(平成9年)を開催し、水環境、水循環に関して幅広く議論を開始した。これらの懇談会の報告においては、@水環境を水質のみならず、水量、水生生物、水辺地等を含め総合的にとらえるとともに、A流域などの水環境に着眼し、「場の視点」(水環境をそこに生きる人や生物との関わりを中心にとらえる見方)に加えて、「循環の視点」(水の流れ、循環の連続性に着目し、水環境を流域全体における水循環の健全さからとらえる見方)をもってとらえることの重要性などが指摘された。

 このように、水に関わる様々な問題を総合的に解決するための着眼点として「水循環」が極めて重要であり、この視点に立ち環境保全上健全な水循環の確保に向けて施策を展開することが求められている状況にある。

 このような背景の中、中央環境審議会では健全な水循環の確保に向けた施策の検討が必要であるとの認識のもと、まず地盤沈下部会で地下水を中心とした健全な水循環について、平成9年11月より6回にわたり審議を行った。ここでは、水循環に関わる現状及び取組状況を認識するとともに、審議検討をより具体的なものとするため、国分寺市及び熊本地域における地下水保全等への取組活動についての現地調査を行い、また、熊本県、東京都及びNGOの取組状況報告、水循環に関係する各省庁の取組状況報告、さらには、環境基本計画の進捗状況の第3回点検結果(水環境の保全)についての報告を行った。

 その後、地下水中心の議論から発展させ地表水や水質に係る問題なども併せてより幅広く議論するため、平成10年11月より4回にわたり水質部会及び地盤沈下部会の合同審議を行うこととした。ここでは、地下水と地表水、水量と水質など水に関する諸問題に関し幅広い様々な視点に立って健全な水循環についての審議を重ね、その間、両部会としての中間まとめやそれに対する国民の意見募集を実施し、この最終報告を取りまとめるに至った。

 この報告は、このようなこれまでの審議の成果を取りまとめ、あるべき「環境保全上健全な水循環に関する基本認識及び施策」の方向を示したものである。




 (検討経過)


 【地盤沈下部会での検討経過】

第1回(平成9年11月19日)

  

・検討の意義、背景説明及び検討実施の確認

 
第2回(平成10年2月26日)

  

・検討課題(前回部会の確認) 

  

・自然循環系における地下水の役割(話題提供 田中正・専門委員) 

  

・地方公共団体の取組事例(熊本県) 

  

・自然循環系における地下水の役割とは(審議)

 
第3回及び現地視察(平成10年5月8日)

  

・現地視察(東京都国分寺市内の地下水涵養施設及び湧水の保全状況等)  

  

・水循環復活に向けた取組(東京都)  

  

・水循環復活に向けたNGOの取組(話題提供 神谷博・水みち研究会代表)  

  

・流域を基本的単位とする住民、行政等の連携のあり方について(審議)

 
現地視察(平成10年6月2〜3日)

  

・現地視察(熊本地域の地下水保全の取組状況等)

 
第4回(平成10年6月26日)

  

・これからのまちづくりと水循環(話題提供 石川幹子・専門委員)  

  

・水循環に配慮した流域内土地利用及び開発のあり方・誘導方法について(審議)

 
第5回(平成10年7月29日)

  

・環境基本計画の進捗状況の第3回点検結果について(報告 村岡浩爾・大阪大学教授)  

  

・健全な水循環の確保に向けた各省庁の具体的取組について(報告及び質疑)

 
第6回(平成10年8月21日)

  

・これまでの議論の整理について  

  

・今後の審議の進め方について




 【水質部会及び地盤沈下部会の合同審議での検討経過】

第1回(平成10年11月2日)

・地盤沈下部会における地下水を中心とした水循環の確保に向けた施策の議論のとりまとめについて

第2回(平成10年12月21日)

・環境保全上健全な水循環に関する基本認識及び施策の展開についての中間まとめ(案)について国民の意見募集(平成10年12月21日〜平成11年1月22日)

第3回(平成11年2月22日)

・中間まとめに関する国民からの意見について

第4回(平成11年4月13日)

・環境保全上健全な水循環に関する基本認識及び施策の展開についての最終報告(案)について



 【意見具申】

平成11年4月14日

・近藤次郎中央環境審議会会長から真鍋賢二環境庁長官に対し「環境保全上健全な水循環に関する基本認識及び施策の展開について」意見具申





 I 環境保全上健全な水循環に関する基本認識


 1.自然の水循環系とそれに果たす地下水の役割

 我が国のような中緯度湿潤森林地域では、水は基本的に「降水→土壌水→地下水→地表水(河川・湖沼)→海洋(→蒸発→降水)」という循環系を形成している。この中で特に地下水は、降水と地表水を連結し緩やかに流動する特性を持ち、水量の確保と水質の浄化という点で自然の水循環系に不可欠の役割を果たしている。
 自然の水循環上、日本の森林土壌の浸透能は大きく、本来、降雨の大半を浸透させることが可能である。このことは、河川のように直接流出する水もその多くが一旦は地中に浸透した水であることを意味しており、河川水・湖沼水といった地表水もその大部分が流域全体に面的な広がりをもった森林土壌に保水・浸透した土壌水と地下水で養われていることを意味している。このように河川水や湖沼水は土壌水を介して地下水とつながりを有しており、我が国のような自然環境下においては、地下水は、量的にみて流域の水循環の中の主要な構成要素のひとつとなっている。また、量的な面のみならず、質的な面においても地下水流動は、土壌を通じた自然の浸透過程における浄化作用という重要な役割を担っている。



 2.水循環と水環境・地盤環境の関係

 自然の水循環という概念は、雨が地表に降り地中に浸み込んで地表や地下を流れて海に至りその過程で大気中に蒸発して再び雨となるその動きの全体をいわば「流れ」としての面から着目したものである。このような水の循環は、人間の生命活動や自然の営みに必要な水量の確保のみならず、熱や物質の運搬、更には植生や水面からの蒸発散と水の持つ大きな比熱効果による気候緩和、土壌や流水による水質の浄化、多様な生態系の維持といった環境保全上重要な機能をもっている。また、この水循環の中で地下水のバランスのとれた流動は取水量の安定化や地盤の支持という重要な機能も併せ持っている。
 一方、水環境や地盤環境という概念は、その場、その場における水や地盤に関わる環境面での状況を捉えたものであり、水や地盤についていわば「場」の面から着目したものである。水環境とは、水質、水量、水生生物、水辺地といった水に関わる重要な環境要素によって構成されるものであり、その良好な保全が求められている。また、地盤環境についても地盤沈下のない安定したものであることが求められている。
 このように自然の水循環と水環境・地盤環境との関係は、いわば「流れ」と「場」という互いに密接不可分の関係にある。



図1 「水環境・地盤環境」と「水循環」の概念図





 3.地下水を中心とする水循環の悪化と水環境・地盤環境への影響


 (1)水循環の構成要素

 水循環の構成要素として、次の点をみておく必要がある。
 第一には、我が国の水循環には、自然の水循環系をその基盤としつつも、水の利用と水害の防止という面から様々な工夫により人工的な水循環系が付加されてきたことである。例えば、縄文時代晩期以来我が国の農業の基礎となってきた水田耕作では、上流部での森林によって涵養され河川水等となった水を用いて、長年にわたって安定した稲作が行われてきた。河川から取水された水は、稲作のために利用されるほか、流域内を流れることにより、地域内の自然を醸成し、地下水を涵養しつつ、再び河川に戻される。これは人の手が加わっているという意味では人工的な水循環系のひとつと言えるが、自然の水循環系の持つ機能に沿った水の利用の例と言えよう。
 第二には、水循環は、流域(地表水及び地下水の集水区域)を単位として成り立っており、大河川流域全体にわたる循環から、集落単位、さらには身近な単位の循環まで、様々なスケールの水循環が存在し、大・中・小の流域の重ね合わせにより大きいスケールの水循環が構成されていることである。また、流域は面的広がりのみならず、地表水と地下水とを結ぶ立体的・三次元的広がりを持ったものである。さらに、地下水に着目すると、地下水涵養域と地下水流出域に分けられる。なお、導水事業等により流域界を越えた水循環が存在する場合もある。


 

図2 流域を単位とした水循環の概念図




 (2)水循環悪化の背景

 水循環は、水と人間、人と自然との関わりにより様々な影響を受けてきた。具体的には、水の経済的資源としての利用(利水)の量的拡大と質的劣化や水害防止等のための治水の進展が、「流れ」としての水循環のみならず「場」としての水環境・地盤環境に大きな影響と負荷を生じる面を有した。
 特に、20世紀後半以降、都市への人口集中に伴う急激な都市域の拡大や農業をめぐる厳しい経営環境等を背景に、森林、水田等の荒廃や減少、都市での雨水の不浸透域の拡大が進み、流域全般にわたり、地表水・地下水を通じ水の涵養機能が低下傾向を辿った。他方、都市化や生活水準の向上等に伴い生活用水需要量が飛躍的に増大し、さらに工業用水や発電用水等への需要も拡大し、水循環の有する水の供給能力や浄化機能に必ずしも沿わない人工的な水循環系が増大した。特に、地下水に着目すると、井戸掘削技術の普及による地下水の大量汲み上げは、地下水を中心とした水循環に大きな影響を与えた。さらに近年では、多種多様の化学物質の登場や使用量の増大に伴い、それらの物質による環境、特に、地下水や土壌環境への負荷の増大が懸念されている。
 また、治水においても、我が国は大河川下流部に人口が集中し高度な経済社会活動が営まれてきたという特徴があり、このような活動を可能とするため、洪水等の脅威を押さえ込む方向で治水上の基盤整備がなされてきた。このような治水により人口増加に対応し、効率的な経済活動が可能となったが、他面必ずしも水循環の持つ多様な機能にまで十分に配慮が払われたとは言い難い状況も生じた。
 これらに加えて近年では、酸性雨の問題や、地球温暖化と水循環との密接な関係が明らかになりつつあるなど、人間活動が地球的規模での降水パターンの変化を引き起こす可能性も指摘されている。



 (3)水循環悪化による障害

 以上のような水循環をめぐる我が国の社会経済的な変化を背景に、人間の諸活動による自然の水循環系に対する大きな負荷が生じ、その機能が部分的に損なわれ、その結果、水環境や地盤環境に多くの障害が生ずるという事態となっている。
 このような水循環の悪化の状況を流域の水の流れに沿って上流域から概観してみると、次のとおりである。
  ・森林地域

 森林は、保水機能等を有する土壌の形成や地下水涵養機能及び水質浄化機能により地下水や地表水の水源の役割を果たしている。しかし、開発等による天然林の減少や人工林の手入れ不足により、地下水涵養機能を中心にその機能が低下している。
  ・農村地域

 水田等の農地は多量の水の利用を通じた地下水涵養と自然浄化、すなわち水の循環利用さらには水環境の保全という点で重要な役割を果たしている。しかし、近年の農地の減少やコンクリートライニング水路整備等により、地下水涵養機能及び浄化機能が低下している。また近年、過剰な施肥や農薬等による地下水等への環境負荷の問題や、一部の地域においては渇水時の地下水過剰汲み上げにより地下水位の低下、地盤沈下がみられる。
  ・都市地域

 地表水、地下水ともに大きな需要地域であるが、近年、不浸透域の拡大による地下水涵養量の減少や、市街地等の非特定汚染源から降雨等により流出する汚濁負荷の増大が見られる。また、地下水過剰汲み上げにより地下水位の低下がみられる。
 その結果、湧水の枯渇や河川の平常時流量の減少、水質の悪化の進行、生き物の生息環境の悪化、地盤沈下の発生、地盤の劣化、ヒートアイランド現象、都市型水害の発生等様々な障害が発生している。また、異常渇水時において、地盤沈下がなお見られる状況にある。
 さらに、人工的な給排水システムによる自然の水循環からのかい離も見られる。
  ・沿岸域

 沿岸域の埋め立てや開発による藻場・干潟等の減少や、沿岸域における河川からの土砂供給に変化が発生している。
 このような現状は、長期的にみた我が国の環境の保全と持続可能な発展の観点から看過しえない問題である。
 河川や湖沼の水環境についてみると、工場・事業場排水に関しては排水規制の強化等の措置が効果を現しているものの、一方では生活排水対策の遅れなどにより、依然として水質汚濁が見られる状況にある。このような河川・湖沼の水質汚濁や富栄養化といった従来からある問題に加え、近年では、気象の変化による地域的・局所的な渇水・洪水の多発、クリプトスポリジウム等の病原性微生物の出現、内分泌攪乱作用が疑われる化学物質等に係わる科学的知見の充実の必要性、廃棄物の不適正処理による問題など、新たな課題に直面しつつある。
 一方、地下水は身近な水資源として高く評価される反面、地表水に比べて流動速度が遅いため、涵養量を上回る揚水を行うと枯渇しやすく、また、自然の浄化機能が働きにくい化学物質の地下浸透や自然の浄化能力を上回る汚濁負荷による水質汚染に対して脆弱な特性を有している。このため、地下水位の低下、地盤沈下や地下水質汚染が発生すると、その復旧が困難であったり、回復に長い時間を要することとなる。
 例えば、地下水の過剰採取や雨水の不浸透域の拡大による地下水涵養量の減少は、地下水の需給バランスを崩すこととなり、地盤沈下の発生、湧水の枯渇、地下水位の低下に伴う周辺井戸の取水障害等を生じる原因となる。また、湧水の枯渇等は、水生生物の生息や水辺地の保全に対しても悪影響を及ぼすおそれがある。さらに、海に面した低平地では、地下水の過剰採取により地下水の塩水化を招く恐れがあり、一旦塩水化するとその回復は容易でない。また、かつての鉱害のように地下に存在する有害物質が地表に汲み上げられ、地表水を汚すこともある。
 地下水は本来、土壌・地盤が有する自然の浄化機能により、清浄な状態に保たれ、そのまま、あるいは塩素処理のみで飲用に供することが可能である。また、水温の変化も少ないことからその取水源たる井戸が自然の冷蔵庫などとして親しまれ、さらには井戸端会議といったコミュニケーションの場としても有用な存在である。しかしながら近年の地下水の枯渇や水質の悪化等に伴い、井戸水は身近な存在から遠い存在となりつつあるのが現状である。
 特に最近では、都市部を中心とするトリクロロエチレン等の化学物質の不適切な取扱い等に起因する地下水汚染が数多く判明しつつあるとともに、過剰施肥や家畜排せつ物の不適正処理等に起因する硝酸性窒素による地下水汚染等の問題が顕在化してきている。



図3 水循環悪化による様々な障害の概念図
(本文「(3)水循環悪化による障害」参照)




 4.環境保全上健全な水循環の考え方

 以上述べてきたような障害を克服していくに当たっては、環境保全上健全な水循環の回復を図ることが不可欠である。このため、以下に環境保全上健全な水循環についての基本的考え方と具体的なイメージの例について整理をすることとする。

 【基本的な考え方】

 「環境保全上健全な水循環」とは、自然の水循環がもたらす「恩恵」が基本的に損なわれていない状態のことである(図4参照)。すなわち、先に述べたような水の浄化機能をはじめとする自然の水循環の有する様々な機能が十分に発揮され、水環境、地盤環境等が良好に保たれていることである。
 しかしながら、このことは、人の手の加わらない原始の水循環への回帰を目指すことを意味しているわけではない。我が国の風土として培われてきた現在の水循環は、原始の水循環に様々な工夫を加えつつ我々人間が長い時間をかけて作り上げてきたものである。したがって、人手を加えることによって構築されてきた現在の水循環を診断・評価したうえで、人手を加えたことによって失われた「恩恵」をできる限り回復させていくこと、また、今後自然の水循環に人手を加えるに当たっては、「恩恵」をできる限り維持・向上させる工夫を行っていくことが課題である。
 その際、考慮すべき重要な視点をあげると以下のとおりである。
* 水循環は先に見たように上流域から下流域、沿岸域という面的な広がりのみならず、地表水と地下水を結ぶ立体的な広がりも有する。環境保全上健全な水循環を目指していく際には、単に問題の生じている箇所のみに着目するのではなく、流域全体の面的な広がりと、三次元的なつながりに目を向けることが必要であり、特に地下水に着目した場合、地下水の涵養域及び流出域毎のきめ細かな対応と地域相互の連携の強化が必要である。
 また、地下水循環に関しては、地下水の特性、例えば被圧地下水と不圧地下水の違いや地域による地下水の流動量や流速の差違によって、循環機構や水循環回復のために必要な施策が異なる場合があることにも留意する必要がある。
* 先に見たように水循環悪化の背景には、増大する人間活動、なかんずく水需要の増大と汚染物質の増大による環境負荷の高まりがあるが、今後は、水の利用と水環境及び地盤環境の保全を両立させるための一層の技術開発や利害関係の調整システムの整備などを進めていく必要がある。また、今後の地球温暖化による降水パターンの不安定化や既に高度な水・エネルギーの多消費型社会となってきている我が国の現状を考えると、今後は節水や再利用を基本として、できる限り水を大切に使う社会を目指していく必要がある。
* 治水については、今後とも人間の生命、財産を守るという観点から不可欠なものであるが、これまで以上に水の浄化機能や多様な生態系の維持といった自然の水環境及び地盤環境が有する機能を損なわないような方策の開発や実施を図り、環境保全上の観点からより健全なものとすることにより治水と環境の保全と両立させる必要がある。
* 自然の水循環は基本的に太陽エネルギーと重力をその動力源としている。健全な水循環への転換を図る施策は化石燃料等の資源やエネルギーを多消費するようなものではなく、こういった自然のエネルギーを最大限活用するものとする必要がある。


 

図4 環境保全上健全な水循環の考え方の概念図




 【具体的イメージの例】

 環境保全上健全な水循環が実現し、水の浄化機能をはじめ自然の水循環の有する様々な機能が十分に発揮され、水環境(水量、水質、水生生物、水辺地の保全)と地盤環境が良好に保たれている状態の具体的なイメージの例としては以下のとおりである。
* 流域における地下水涵養機能や地表水・地下水を通じた水の循環利用が図られ、豊かな河川流量が確保されている。また、各所で豊かな湧水が維持されているとともに、適正な地下水利用が行われて地下水の枯渇や地盤沈下が生じていない。
* 水循環に配慮した汚染防止が行われるとともに水循環の各過程で土壌や流水による自然の浄化能力が発揮され、汚染のないきれいな水が確保されている。
* いわゆる水無し川が解消されるなど水循環の各過程で自然の水流等が可能な限り確保されるとともに、豊かで多様な水生生物との共生が実現している。
* 特に都市部において雨水の地下浸透や中小河川などの水辺復活等が進み、緑の増加と相まってヒートアイランド現象が緩和されている。
* 美しい水辺や湧水が身近なものとなるとともにその価値が再認識され、水を大切に使いつつそれを守り育てる気運がますます高まっている。



図5 環境保全上健全な水循環のイメージ図





 U 環境保全上健全な水循環の確保に向けた施策の展開

 環境保全上健全な水循環の確保に向けた施策を展開するに当たっては、「T 環境保全上健全な水循環に関する基本認識」で述べたような健全な水循環の基本的考え方及び具体的なイメージを念頭におきつつ、以下に示すような「1.現状、課題、目標の共通認識の形成」、「2.体系的な施策の追求」、「3.流域における施策の具体化」、「4.地域別にみて推進するべき施策の方向」といった順序立てで対応を考えることが必要である。
 なお、推進すべき施策は、これらの事項や参考編に示す「環境保全上健全な水循環の確保に向けた施策の事例」も踏まえ、流域ごとに具体化を図っていくことが求められる。



 1.現状、課題、目標の共通認識の形成(参考編「1.一体的取組の方向(1)(3)」参照)

 水循環については、流域における水循環機構の現状の解明、障害の発生状況、障害に応じた対応手段と回復の目標等について十分な知見があるとはいいがたい。
 このため、水循環の現状、課題、目標等についての共通認識の形成を図る必要がある。具体的には、流域の水循環の健全性について水量、水質のみならず水生生物、水辺地の保全を含む水循環機構の定量的把握を試み、診断・評価を行うための基準を作成するととともに、この基準にしたがって流域ごとに地下水、地表水を通じた水循環の健全性の診断・評価を行う。
 そして、この診断・評価結果に基づいて、回復の目標を立て、その上で、現状と目標の間をつなぐ施策を考えるべきである。
 また、こうして得られた水循環機構に関する情報に加え、水循環に密接に関連する土地利用に関する情報なども併せ、関係者間での情報共有のための社会システムを整備し、全ての関係者が容易に利用可能となるようなデータベースを作成することが望ましい。
 さらに、行政はこれらの情報を様々な媒体を通じ積極的に住民に提供し、水循環に関する意識の向上を図るよう普及、啓発を行うことが必要である。



 2.体系的な施策の追求(参考編「1.一体的取組の方向(2)」参照)

 これまで水に関わる施策の展開が各省庁において各々その政策目的にしたがってなされてきたことから、施策の展開方向、整合性において一致していない部分が多かったといえる。
 このため、今後、水に関係する各省庁間で、健全な水循環の概念と現状認識、今後の課題について共通認識を形成した上で、国が行うべき施策の基本的方向、留意すべき事項等をとりまとめ、政策大綱といった形で、展開すべき政策の体系化を図り早急に提示すべきである。
 特に、地表水のみならず、地下水にも量的・質的な問題が現れていることにかんがみ、良好な水環境・地盤環境の維持・回復を目指し、地表水・地下水を一体として保全していく対応が求められている。このため、地下水の涵養域や利用域の観点を導入して開発行為の適否を判断するなど、土地利用に関する計画を利用した地下水涵養の面的取り組みを実施したり、地下水の環境保全に支障を与えるような地下水の採取や排水などに対する公的関与を強化すること等について検討を行うべきである。
 また、施策展開の際の上下流での連携や、環境学習活動、水辺の清掃、家庭での水質浄化の取組など住民自らが行う活動やナショナルトラスト等による住民の協力なども推進する必要がある。
 さらに、事業展開において支障となることが多い費用負担の問題について、水循環の回復、促進を図る上で、受益者負担や汚染者負担の考えも含めた公平な負担のあり方についても検討を行うべきである。
 なお、水循環回復のための技術開発とその国際的活用、水循環に関する国際交流、多様な水の文化の振興といった取組など新たな課題についても検討していくことが求められる。



 3.流域における施策の具体化(参考編「1.一体的取組の方向(1)(2)(3)」参照)

 水循環の問題は、流域ごとにその現状、課題、目標は自ずから違ったものになる。したがって、施策を展開する上では、住民、利水者、企業、学識経験者、NGO等の団体、行政など流域における関係者が行政区分を越えて環境保全上健全な水循環の確保を自らの問題として捉え、各自が主体的な対応をすることが求められる。その上で、関係者が適切に役割分担をしつつ、連携してひとつの目標を形成し、その実現に向かうことが効率的かつ効果的である。
 このため、例えば、流域毎に「○○流域健全な水循環回復計画」といった形で計画を取りまとめることが考えられる。計画の取りまとめに当たっては、こうした関係者から構成される協議の組織を設置し、関係者の意見を集約し、十分な調整とコンセンサスづくりを行う方法が考えられる。また、この計画の内容に、現在失われつつある人と水とのふれあいの確保や多様な水の文化の振興等についても積極的に盛り込むことが望まれる。そして、こうして作られた計画については、適宜評価を行い、必要な見直しを行っていく姿勢が求められる。なお、このような流域ごとの施策の具体化に当たっては、先行的、試行的に行い、その成果を現状、課題、目標の共通認識の形成や施策の展開にフィードバックしていくことが不可欠である。
 また、流域界を越えた水循環においては、流域相互間の連携も必要となる。



 4.地域別にみて推進するべき施策の方向


 流域を単位とした水循環は、主として上流部に位置する森林地域から中流部の農村地域へ、そして下流部の都市地域へ流れるという空間的特性を有している(図6参照)。したがって、流域における施策の具体的な検討に当たっては、流域内の各地域間の連携及び各施策間の整合性を図った上で、流域単位で推進するべき施策を選定し、流域内各地域で取り組むべき具体的な施策について検討していくことが適切である(参考編「2.地域別の取組の方向(1)〜(4)」参照)。

 ・森林地域について(参考編「2.(1)森林地域について」参照)
 水源涵養、水質浄化等、森林のもつ多面的機能の解析・評価を行い、その機能に応じた森林の整備、保全を図ること。また、流域内の市町村、森林・林業、木材産業関係者が協議して、広葉樹を採用したり、皆伐を避けるなど、樹種の選定、施業法等について、目的に応じたきめ細かな森林整備を推進すること。さらに、分収林制度、森林整備協定等を活用しながら上下流の地方自治体等の協力による森林整備の取組を推進すること。

 ・農村地域について(参考編「2.(2)農村地域について」参照)
 農業用水の循環利用を通じた地下水涵養、多様な生物の生息等、水田をはじめとする農地のもつ多面的機能の解析・評価を行い、その機能に応じた農地や水路の管理、保全を推進するとともに、農地の宅地化等に対しては水循環への影響把握を行い、それを踏まえた対策を検討すること。
 また、農薬や施肥等による水質汚染の解明を行うとともに、これらを過剰に使用しない農業生産方式や水環境中に排出される汚染物質を抑制する取組なども行い、農業集落排水施設や合併処理浄化槽等の整備や生活排水対策の取組と合わせて、農村における水質汚濁防止対策を推進すること。
 さらに、休耕田については、水田の有する環境保全等の機能が図られるよう、地下水涵養や水質浄化の有効性を検証し、効果的な施策を推進すること。

 ・都市地域について(参考編「2.(3)都市地域について」参照)
 地下水涵養に関して都市計画制度等を活用することとし、市街化区域及び市街化調整区域の線引きに当たって各区域の整備、開発又は保全の方針に水循環の視点を導入するとともに、緑地の保全を含む土地利用に関する計画を策定し、また、都市施設として公園緑地等を適正に配置すること。さらに、道路、住宅・宅地等の整備に際しては、雨水浸透ます設置等の地下水涵養の促進を図ること。
 水利用に際しては、雨水の利用、生活用水・工業用水の一層の循環利用や家庭等での節水活動を推進すること。
 水質改善策として、地域の状況に応じて下水道や合併処理浄化槽等の整備促進を図るとともに、生活での廃食用油の適正な処理を行うなどの生活排水対策の工夫を行うこと。また、道路面などの非特定汚染源対策等の水質汚濁防止対策を推進すること。
 さらに、都市化によるヒートアイランド現象及び緑地や水辺が有する気候緩和機能の定量的把握を行い、効果的な回復施策を推進すること。

 ・沿岸域について(参考編「2.(4)沿岸域について」参照)
 河川水と海水が混じり合う場でもある沿岸域については、藻場・干潟等のもつ浄化機構、生態系への影響等の解明を行い、その機能、影響に応じた保全・回復施策を推進すること。
 また、河川からの土砂供給の変化に伴う影響について、水源から河口に至る総合的な土砂管理のあり方について検討し、必要な対策を行うこと。

 ・河川、湖沼、地下水等について(参考編「2.(5)河川、湖沼、地下水等について」参照)
 河川・湖沼域での治水や水利用に関する計画の立案、施設整備に際しては、水辺地や水生生物の環境保全に配慮すること。特に水路部分の工事に際しては、自然素材を用いた護岸にするなどの工夫をすること。

 なお、環境保全上最適とはいえない河川・水路の流量配分のために流量不足が見られる地域がある。このため、水の融通等により適正な流量の配分を行い、平常時における環境保全上必要な流量の確保を図る必要がある。また、渇水に伴う河川水の取水制限に対して不足水量を補うため、地下水の過剰な汲み上げを行い、地盤沈下が生じている地域がみられる。このため、渇水時における地下水の過剰採取による地盤沈下の防止等を図る必要がある。それらのことから、流域の実情を踏まえ関係者間における調整のルールづくりが求められる。
 さらに、地下水や地盤の環境に係る障害防止のため、地下水利用の適正化に関する取組を行うとともに、化学物質等有害物質の管理の強化を図ることが必要である。



 

図6 地域別に見て推進するべき施策の方向(概念図)




 おわりに


 中央環境審議会水質部会及び地盤沈下部会においては、主として地下水を中心とした健全な水循環の確保に向けた施策の在り方から出発して審議を重ね、その後、環境保全上健全な水循環に関する基本認識と施策の展開について幅広く審議を行った。審議に当たっては、中間まとめを行い、国民の意見を募集して審議に反映させ、今般、本最終報告をとりまとめた。

 環境保全上健全な水循環を確保していくことは、21世紀の環境政策における重要な柱であるとともに、持続可能な社会を構築していく上で最も基本的な要素でもある。環境庁をはじめとする関係省庁及び地方自治体において、本最終報告を踏まえた、水環境、地盤環境の保全、治水、利水等の施策が展開されることを期待する。また、環境保全上健全な水循環の維持、回復の施策を展開する上では、住民、利水者、企業、学識経験者、NGO等の団体等の流域における関係者の主体的な対応が不可欠である。したがって、具体の流域における取組においても、本報告書がこうした関係各位に十分に理解され、活かされることを希望する。


 

 (参考編) 環境保全上健全な水循環の確保に向けた施策の事例






 1.一体的な取組の方向



 (1)流域を単位とした環境保全上健全な水循環の診断・評価の実施


  [現在取り組まれている施策等の推進]

(a)水循環影響予測手法の開発等に係る調査研究の推進
(b)流域を単位とした水量回復、水質改善、生態系保全等、計画目標や指標の適切な設定に係る調査研究の推進
(c)流域水循環の機構の解明、流域の水収支の把握、地下水涵養域や地下水脆弱地域の把握



[検討課題]

(a)国レベル
・水循環の診断・評価手法の確立
・水循環マップ(仮称)作成基盤情報整備
・水辺や水生生物等の保全に係わる基準及び良好な水環境の尺度としての生物指標の確立
・環境アセスメントに際しての「健全な水循環」項目の組み込み
(b)流域(地域)レベル
・流域を単位とした地下水、地表水を通じた水循環機構の定量的把握
・流域水循環マップ(仮称)の作成
・流域水循環アセスメントの実施
・流域水循環維持回復施策の一体的取組




 (2)環境保全上健全な水循環に資する連携と役割分担

[現在取り組まれている施策等の推進]

(a)上下流住民、各種団体、行政等の連携、支援
例)農業団体、漁業団体、利水団体、行政による矢作川沿岸水質保全対策協議会
  流域住民、事業者、行政による桂川・相模川流域協議会
  地下水保全事業の支援のための(財)熊本地下水基金
  漁民による森林植樹「牡蠣の森を慕う会」(気仙沼)
  ナショナルトラスト
(b)行政と流域住民、市民セクター、企業、研究者等の各主体間のスムーズな連携、交流の場の確保
(c)行政内部の水循環にかかわる各施策の効率的な実施のための部局間の連絡・調整の場の確保



  [検討課題]

(a)流域を単位とした関係者間の協議のための組織づくり、連携施策の推進
(b)流域ごとの健全な水循環の回復計画の策定
(c)上流と下流、国と地方、行政と住民、市民セクター、企業、研究者等各主体間の役割分担の明確化、ルールづくり
(d)流域を単位とした環境保全上健全な水循環の確保に要する財源負担のルールづくり
(e)関係省庁の環境保全上健全な水循環についての共通の認識の醸成と、これを踏まえた総合的、体系的な施策の展開




 (3)水循環に関する情報の蓄積、共有、伝達、活用


  [現在取り組まれている施策等の推進]

(a)白書等による水循環に関するデータの公表
(b)インターネットを利用した情報提供
(c)各種啓発活動



  [検討課題]

(a)省庁、地方公共団体、個人、団体それぞれの保有する情報の共通利用データベース化の推進
(b)流域住民等に対する水循環関連情報提供の推進




 (4)水循環回復のための技術開発及び技術の国際活用


  [検討課題]

(a)水循環回復のための技術開発
(b)開発された技術の国際活用
(c)水循環に関する国際交流




 (5)人と水のふれあいの確保と多様な水の文化の振興


  [検討課題]

(a)人と水のふれあいの確保
(b)多様な水の文化の振興





 2. 地域別の取組の方向




 (1)森林地域について


  [現在取り組まれている施策等の推進]

(a)森林の水源涵養機能の保全や汚濁負荷排出抑制を図るための、天然林の保全、人工林の管理の推進
(b)水源涵養、生物多様性の確保、レクリエーション空間の確保等、森林のもつ多面的機能の解析・評価
(c)各種補助制度による森林整備の推進、分収林制度、森林整備協定等による森林の維持管理の推進
(d)国土保全対策制度(地方財政措置)等による施策の推進等



[検討課題]

(a)森林のもつ機能に応じた適切な森林管理の推進
(b)流域単位での水循環の機構の解明
 ・流域でみた水源涵養と水質浄化の両面での森林の役割・効用等
(c)流域における森林保全施策の効果把握




 (2)農村地域について


[現在取り組まれている施策等の推進]

(a)土地利用等における配慮
・優良農地の保全、耕作放棄地の発生防止対策
(b)既存の農地や用水路を有効利用した、休耕田や冬期の水田における湛水等による地下水涵養を進めるための施策の推進
・冬期の水田、休耕田水張りの試験実施
・浸透性の河床をもつ水路の整備
(c)水の有効利用の促進
・循環かんがいの促進
・農業用水の効率的利用
(d)水質汚濁の防止対策の推進等
・環境保全型農業の推進
・家畜排せつ物対策の推進
・生活排水対策の推進
・有害物質の水域への排出・地下浸透規制
・集落排水施設等の整備の促進
・農業排水路や休耕田を利用した自然浄化機能の活用による排水の水質浄化対策
(e)潤いのある水辺環境等の創出
・農業用水路、ため池等を活用した親水空間、生態系保全環境(ビオトープ)の創出
・環境(生態系)に配慮した農業用水利施設の整備
・農業農村整備事業による水辺・緑地空間のネットワーク化
・農業用水の持つ地域環境保全等の多面的機能(地域用水機能)の増進対策



[検討課題]

(a)土地利用等における配慮
・農地の宅地化等に伴う水循環への影響把握の実施とそれを踏まえた対策の検討
・流域における水循環の視点を土地利用計画に反映
(b)既存の農地や用水路を有効利用した地下水涵養や水質保全を進めるための施策の推進
・休耕田等を利用した地下水涵養の実施、水質浄化機能の維持
・排水路等における自然浄化能力の維持回復
・コンクリートライニング水路整備の見直し
(c)流域単位での水循環の機構の解明
・農村地域における水収支の見通しと水質浄化機構の把握
・地下水涵養域の把握
・地下水涵養目標量、汚濁負荷削減目標の設定等
(d)水質汚濁の防止対策
・農地と河川、湖沼との間の窒素、燐等の物質循環機構の把握
・広域的な非特定汚染源対策の推進
・木炭等の地域資源を活用した河川、地下水等の水質保全対策
(e)潤いのある水辺環境等の創出
・農村地域における環境用水(地域用水)の確保
・農村地域における生態系保全、親水空間回復のための事業の推進




 (3)都市地域について


[現在取り組まれている施策等の推進]

(a)雨水浸透ます設置や透水性舗装等の促進
(b)雨水貯留浸透の推進
(c)雨水利用、水道漏水防止対策、節水活動の推進
(d)下水処理水の再利用、ビル内再生水利用、高度下水処理の推進
(e)工業用水の循環利用
(f)有害物質の水域への排出・地下浸透規制
・事業場及び非特定汚染源対策の強化



[検討課題]

(a)流域単位での水循環機構の解明
・都市地域における地下水流動、涵養域の把握
・水循環機構の解明によるヒートアイランド現象緩和の効果の把握
(b)都市計画における市町村マスタープラン(市町村の都市計画に関する基本的な方針)や、都市緑地保全法に規定される緑の基本計画での地下水涵養や水へのふれあいなどの盛り込み
(c)都市計画の緑地保全地区、風致地区、生産緑地地区等、地域地区制度(地域制緑地)における雨水浸透機能維持の位置づけ
(d)都市計画における地下水涵養の観点からの公園、緑地、広場等の都市施設の適正な配置




 (4)沿岸域について


  [現在取り組まれている施策等の推進]

(a)自然海岸、干潟、藻場の保全
(b)砂浜海岸等の侵食対策の推進



  [検討課題]

 

(a)浄化機構、生態系への影響等の解明
  
(b)広域的な沿岸漂砂管理手法の確立
  
(c)侵食対策としての流域土砂管理の検討




 (5)河川、湖沼、地下水等について


[現在取り組まれている施策等の推進]

(a)河川の水量の確保
・減水区間におけるダム放流の促進
・高度処理下水の環境用水への利用促進による水量の確保や水路の復元
(b)河川・湖沼等の水質の改善
・各種水質改善策の高度化・総合化、河川浄化等の推進
・事業場、非特定汚染源及び廃棄物対策の強化
・有害物質及び感染症を引き起こす病原性微生物等に対する取組の強化
・未規制有害物質に関する情報・知見の集積等
(c)地盤沈下等障害の防止
・地下水採取の規制及び自主規制
・代替水源の確保
・地下水位等のリアルタイム監視システムの導入
(d)水辺、水生生物の保全
・魚道など河川構造物の改善
・遊水池のビオトープ等利用、整備
・自然植生帯の回復の促進
・湿地の保全回復策
・河川生態系に配慮した河川整備
・河川生態系に配慮した流域の土砂管理の検討



[検討課題]

(a)河川の水量の確保
・利水者間での水の融通など適切な河川水量を確保する仕組みの確立
(b)河川・湖沼等の水質の改善
・生態系バランスや自然の浄化能力を活用した水質改善
・下水処理場放流口位置の見直し等
・未規制事業場等に対する規制
・未規制有害物質の規制等
(c)水辺、水生生物の保全
・河川生態系を踏まえた河川水流の復活
・河川生態系を踏まえた流域土砂管理の実施
・流域における維持回復目標の設定
・河川や土地改変時等における代償措置
・身近な水辺の維持・回復
(d)地下水の利用の適正化と水質の保全
・地下水涵養域での涵養目標の設定と誘導策の導入
・地下水の利用域での地下水利用指針の改善強化と総合的な涵養策の導入
・地下水の水質規制の強化と保全、浄化対策の推進
(e)地盤沈下等水循環に係る障害防止のための地下水利用の適正化方策
・地盤沈下対策の基礎情報としての地域別・用途別の地下水利用に関するデータの整備
・渇水時におけるきめ細かな(例えば、地域別・用途別の)対策への取組
・消雪用地下水利用に関する対策及び代替技術の開発


 環境庁ホームページへ戻る    目次へ戻る   EICホームページへ戻る