(他省庁・自治体の検討との整合性について)
- エネルギーの使用の合理化に関する法律(以下「省エネ法」とする)との関連で留意が必要な点はないか。(安井委員)
→ 本検討会では特に区別して頂く必要はない。地球温暖化対策推進法、省エネ法両者に関連してご議論頂きたい。(環境省 馬場課長補佐)
- 省エネ法と連携が必要と考える。また、東京都の地球温暖化対策計画書制度をはじめとして、自治体では業務ビルの排出実態を把握している主体もある。排出実態を把握している自治体の動きにも留意する必要がある(岡本委員)
- 省エネ法では昨年度改正内容が取りまとめられたが、これとの整合性を確保する必要がある。(中上委員)
→ 経済産業省、国土交通省など関連省庁と調整しながら検討を進める予定である。(環境省 馬場課長補佐)
(ベンチマークの位置付けについて)
- 策定するベンチマークは、経団連の自主行動計画を初めとする取り組みへの助言のような意味合いであり、違反した場合に罰則を課す規制ではないという認識で良いか。ベンチマークの数値は、絶対値を提示するのか、それとも省エネ法のように改善率のような指標とするのか。(一方井委員)
→ 新たな規制のための数値ではないという認識でよい。指標については、削減率ではなく絶対値を検討しており、本調査で実施する実態調査を踏まえ設定する予定としている。(環境省 馬場課長補佐)
(ベンチマーク設定の際の区分について)
- 東京都地球温暖化対策計画書制度のデータを分析した経験に基づくと、同じ業種、用途でも床面積当たりの排出量原単位が様々に分布する。適切なベンチマークを設定するためには、用途や業種の区分を細かく設定する必要があると考える。例えば、データセンターの排出量原単位が通常のオフィスビルに比較し数倍も大きい、百貨店では食料品売場の広さにより原単位が異なる、などの例がある。(岡本委員)
→ 例えば、同じ飲食店でも、中華料理店と和食料理店で大きく異なる。用途や業種の区分を細かく設定する点について賛成である。(中上委員)
→ EUETSにおける排出枠割当方法の検討では、公平なベンチマークを設定するための区分を検討した結果、余りに区分が多くなり過ぎ、最終的にオークション方式を採用したという経緯がある。EU内の検討についてもレビューする必要があるのではないか。(一方井委員)
(ベンチマークの設定方法について)
- ベンチマークの公平性を担保することが最も重要である。公平なベンチマーク設定方法の一案として、限界削減コストが等しい水準という考え方がある。(一方井委員)
- ベンチマークの設定には、空室率、外的要因の変化を考慮すべきである。また、オーナーとテナントの関係についても留意する必要がある。外資系企業や金融機関など、稼働時間が長いテナントが入ったビルでは、排出量が大きくなる。(岡本委員)
→ 各々のビルの状況に合わせ、導入可能な最大限の技術を入れた場合の排出量をベンチマークとするのが妥当かもしれない。(安井委員)
- ベンチマークの設定には、年次推移を考慮する必要があるだろう。今回の場合は5年後を目標に設定する必要がある。(安井委員)
- 排出量に換算する説明変数の設定が重要である。(中上委員)
- 設備の有無を示すチェックリストもベンチマークと言えるのではないか。(安井委員)
(投資回収の視点から見た排出削減対策メニューの考え方について)
- ビルヂング協会作成の「エネルギー管理ガイドライン」に示した対策について、削減シミュレーションを行ったところ、最大約30%程度の削減が出来ると試算された。エネルギー消費削減による投資回収年数は、長いもので12~15年であり、中長期的に見ると削減の余地は現実的に大きいと認識している(岡本委員)
→ 企業の意思決定の際には、投資回収年数2~3年の水準で是非が判断される。投資回収に12~15年要する場合、導入されないだろう。2~3年のスパンでのコスト解析が重要である。(中上委員)
→ 「日本で省エネを実現することは、乾いた雑巾を絞るようだ」と揶揄されるが、実態は削減の余地があるという印象を持っている。投資回収期間を長く設定する考え方が必要である。(一方井委員)
→ 投資回収年数12~15年という試算は、エネルギー消費削減による回収のみで試算した結果であり、設備の更新時期などと合致すればより短い期間で回収することも可能である。(岡本委員)
- 事業者が投資回収可能なメニューをリストアップし事業者に導入させ、これに加えて投資回収が比較的長いメニューを別途示すという方法が良いのではないか。(一方井委員)
- ビルにおける平均的な限界削減コストは、年間CO2排出量1t当たり16万円程度である。(中上委員)
(その他排出削減対策メニューについて)
- 家庭用空調機のCOPが向上しているが業務用は変化していないと見られる。削減対策が進んでいない分野がないようにするという視点も必要である。(安井委員)
- 従来の対策とは違った新しいアイデアが必要である。人の感性と連携したビル管理システムがアイデアとして考えられる。(安井委員)
- 排出量の伸びを見ると、東京都内の排出削減よりも地方都市における排出量のほうが大きい。むしろ地方都市を視野に入れた方が削減の余地が大きい可能性がある。(岡本委員)
- 近年竣工したばかりの建物には、削減余地が少ない点に留意が必要である。(岡本委員)
(本検討会に伴って実施する実態調査について)
- 実態調査とはどのようなものを想定しているのか。ベンチマークを設定するためには、調査項目を慎重に検討する必要があるのではないか。(中上委員)
→ 温室効果ガス算定報告公表制度の対象約5,000件の事業者に対して、7月~8月中に実施する予定である。(環境省 馬場課長補佐)
→ 実態調査の調査票作成に当たっては、中上委員、岡本委員にご協力頂きたいと考えている。ベンチマークの設定に、実態調査が重要な役割を担うだろう。(安井委員)
(その他)
- ESCO事業において、都市銀行等の金融機関の出資を受けることが難しいのが現状である。ESCOへの出資を促進する政策が必要である。(中上委員)
- 排出量の実態を「見える化」することが重要である。官庁における取り組みも期待したい。(安井委員)
→ 中小規模のビルオーナーに、排出削減を把握させる方法、算定方法を普及させることが重要である。また、財務省の検討会で庁舎における排出削減について検討している。(岡本委員)
- 外資系企業を中心として、環境性能の高いビルへ入居するテナントが出始めている。この動きを推進する視点からも、建物のラベリングが重要である。(中上委員)