【開会及び資料確認】
○高橋課長
- 環境省の温暖化対策課長の高橋でございます。本日はお忙しいところ、ありがとうございます。第8回ということで、平成20年度から開催しておりますこの検討会でございますけれども、今年度は第1回目ということで、一言ごあいさつを申し上げます。この委員会では主に2つの課題があり、1つは日常生活から排出される温室効果ガスの「見える化」の効果実証事業で、具体的な省エネナビ等を設置してデータを得ることがございます。もう一つは、日常生活CO2情報提供ツールの開発をしてございます。前者につきましては、昨年度各家庭に省エネナビを設置し、実測を行いました。また、アンケートと実測データに若干ギャップがあることが判明したという成果も得ていますが、まだまだ「見える化」による効果の実証という意味では不十分な点もあります。本年度は、約800世帯にこの省エネナビを設置し、ある程度統計的にも議論ができるデータを取得し、その中で効果検証を行うことを目指しております。
- また、単に「見える化」をするということではなくて、そこで得られた情報を活用して、どのような情報を各家庭に提供すれば、効果的に削減行動を促すことができるかというような、まさに事業の本来の目的に沿った手法についても検証を行っていきたいと思っております。ここで得られたデータを私どもは来年度の新しい予算として環境コンシェルジュ事業というものを要望しております。これは政策コンテストにかかっており、これからまた厳しい評価がされるところでございますけれども、この環境コンシェルジュ事業が具体化すれば、大変有用なデータが本事業の中からも得られると期待しております。
- 2つ目の情報提供ツールにつきましては、昨年度既に試行しておりますが、まだ課題がございます。そこを解決し、また環境省の中でも様々なツールがあるので、そのようなものとの連携あるいは整合性をとりながら、年度内には公開をして広く使っていただくような形にしたいと思っております。
- 2つの課題がございますが、ぜひ委員の皆様方、忌憚のない御議論をいただければと思います。よろしくお願い申し上げます。
【議題1】今年度の進め方について
- 事務局から資料2にもとづき、今年度の進め方について、説明が行われた。
○森口座長
- ありがとうございました。本分科会の位置づけと過去の議論のまとめを御紹介いただきました。何か委員のほうから質問、コメント等あれば簡単にお受けしたいと思います。よろしいでしょうか。それでは、後ほどまた戻ってでも結構ですので、次の議題に進ませていただきたいと思います。
【議題2】日常生活から排出される温室効果ガス排出量の「見える化」の効果実証事業について
- 事務局から資料3にもとづき、日常生活から排出される温室効果ガス排出量の「見える化」の効果実証事業について、説明が行われた。
○森口座長
- ありがとうございました。おさらいですが、昨年度もこのような実験を行いましたが、「見える化」をしていない場合の計測は実施していませんでした。そのため、「見える化」したこと、そのものによる効果が切り離しにくかったのではないかと思います。様々な反省点を踏まえて、周到に組んでいただいたのですが、入り組んだデザインになっているので、全体像をすぐに理解するというのは難しいです。Aグループ、Bグループと大きく分けた2種類のグループを設定する。それぞれについて、「見える化」する・しない、あるいは「見える化」した上で、もう少し丁寧に情報提供するというグループも設定するという設計です。
- 全体像の質問・コメントから始めていただいて、それが落ち着きましたら、少し細かいテクニカルのところの確認ということでお願いできればと思いますが、いかがでしょうか。
○本藤委員
- 全体像に関することですが、非常に綿密に設計されていると思いました。分析の目的は、大きく分けると2つあると考えます。1つ目は「見える化」や、もしくはフィードバック情報を提供することで効果があるのかどうかです。それに加えて2つ目は、例えば要因分析とか、なぜそれが削減効果に繋がったのかというメカニズムを調査することです。全部を分析するのは大変だと思うのですが、まずプライオリティはどこにおいているのでしょうか。
○森口座長
- ありがとうございます。非常に短期間に盛りだくさんになっているので、これらを全て実施することを期待したい訳ですが、やはりある程度の「減り張り」というか、最低限の実施範囲があるのではないか、というご指摘かと思います。事務局から、いかがでしょうか。
○事務局
- どうもありがとうございます。ただ今のご質問に対する回答ですが、最も重要なポイントは「見える化」の効果があったのか、あるならばどの程度あったのか、を数値的に検証することだと考えております。なぜそれが起こったのかということについては、分析の対象としては考えておりますが、要因を細かくする程、サンプル数も少なくなっていくこともあるので、要因分析がどこまでできるかというのは、副次的な目標だと考えております。
○森口座長
- 確認ですが、「見える化」の効果があったのかどうか、「見える化」によってどれだけエネルギー消費が減ったかということの確認については、基本的には「見える化」なしの世帯と「見える化」ありの世帯を比較するという考え方でよろしいでしょうか。
○事務局
- はい。グループを完全に分けて、同じ時期の季節変動等を考慮する前提で2つを比較するというのが、本実験の一番のキーコンセプトになっています。
○森口座長
○麹谷委員
- 様々な仮説をもって、効果を検証するとのことですが、最終的に「見える化」したことで「効果がある」という結果が出た場合、それ以降どのような展開を想定されているのでしょうか。
○森口座長
- これは、本実証事業の計画をさらに超えるところかもしれません。環境省のほうからお答えいただけますか。
○環境省
- これまでの「見える化」推進戦略会議で、いろいろなところで「見える化」の効果が議論されてきております。これまでの実証実験や従来研究においても、ある程度効果があるという結果がでています。しかしながら、まだ十分に「見える化」の効果が周知されていないという点がございます。そのため、今回「見える化」の効果があることが結論として得られることを期待しておりますが、それを広める普及策が今後の展開と考えています。
- 来年度の予算要求として、環境コンシェルジュ事業について合計2点を現在のところ要望しております。1点目は、各家庭へコンサルティングをすることで具体的な情報提供、個々の家庭に合ったアドバイスを行なうことです。2点目は、HEMSや省エネナビの補助事業として、具体的に各家庭で省エネ機器の導入を促進するということです。
- これまでの成果、結果等を踏まえて、具体的に次のステップで予算が成立した際には、その妥当性を本事業としても説明したいと思っております。また、具体的な支援事業では、本事業の結果を、さらに精緻なアドバイスをするための材料としていきたいと考えております。
○森口座長
○麹谷委員
- 本事業の趣旨は、「見える化」の実証実験として、省エネ行動を促すにはどのような情報が必要であるのか、メーターを含めて省エネ機器をどのような目で選んでいるのか、大きく2つあるかと思います。そこをブレークダウンして効果を求めていくのは重要ですが、環境省さんで「チャレンジ25」というような国民運動も行っています。そういうところと連携をして、効果的にスピードを上げて情報発信をしていただきたいと考えています。
○森口座長
- ありがとうございます。ご指摘の通りだと思っておりまして、このあとの議題で日常生活の情報提供ツールのご説明もありますが、単年度、単年度で事業が動いており、正直申し上げて、この日常生活分科会の中の2つの事業の中でのリンクも十分にできていなかったところがあったかと思っております。加えて、製品の買い替えのための情報などとも連動していきたいと思っております。多田委員、お願いいたします。
○多田委員
- 全体の印象としては、かなり綿密に練った実験計画になっていると思います。2点コメントすると、本日の説明では検証すべき仮説が最後に示されているのですが、これは本来最初にあるべきもので、この仮説の検証を通して、最後にどのような結論が来るのかというのが構成としては、より良いと感じています。
- 加えて、これは少し意地の悪い質問になりますが、これはかなり煩雑といいますか、手間のかかるモニタリングをしているので、これに追従できるモニターの方と一般の方、圧倒的な無関心世帯とのギャップはやはり出てくると思います。そのギャップを埋めるのは大変かもしれないのですが、このモニターと一般の無関心世帯とのギャップをどのように調整するのか、何か腹案があれば教えていただきたいと思います。
○森口座長
- 麹谷委員から、今後どうするのかというお話がありましたので、そのあたりも含めてのことかと私も感じました。800世帯の協力を得て実施し、ある程度協力の意思が得られそうなところは良いが、それを大量普及させていくためにはどのようなことが可能なのか。そのあたりを含めてお答えいただけますか。
○事務局
- ありがとうございます。大事なご指摘をありがとうございます。2点答えさせていただきます。一つは、この実験に限った対応策であり、もう一つが本質的な議題と思っております。
- まず1点目につきましては、パソコンを立ち上げて、そのページを表示させて、パスワードを入れて見るというのは、何重も障壁があると思います。これに対して、本実証実験に限っては、パソコンを立ち上げれば自動的にブラウザが起動するというようなソフトウエア上の工夫をしており、パソコンであれば最近は日常的に使用されるので、なるべく見ていただく機会を増やそうと思っています。
- これは、本実証実験の中でのわずかな工夫ですが、もう一つの本質的な点につきましては、今回実験で準備したシステムが本当にどこまで必要なのか、実験のためのシステムになっているのではないか、という問題意識は事務局も認識しております。本当は手元でもっとダイナミックに動くメーターが1つあれば、全国と比較の順位が分からなくても、他の意味合いがあるのではないか、というのも内部では議論しているところでございます。
- そのため、「人によるコンサルティング」のプロセスではワットチェッカーを持参し、コンセントに差した状態で、例えばテレビの照度・輝度を上げ下げするなどして、何か家電機器の出力を少し変えただけでワット数が変化する様を見ていただき、「こういうものが見えたらいかがですか」という意識調査のようなものは別途行いたいと考えております。十分なお答えになっていないかもしれないのですが、大仕掛けなものと、シンプルなものと、両方の意見を伺う機会を設けたいと考えております。
- もう一点補足をさせていただきます。今回のモニターの方は、マクロミルというインターネットのアンケート会社のモニター世帯から抽出しているので、もともとの母集団自体が特に環境に対する意識が高い訳ではないと考えております。今回は「エネルギー使用量の測定をさせてください」というニュアンスの告知内容で募集しております。この観点では、昨年度の実証実験のモニターは、もともと環境に対する意識が高い方の中からご協力をいただいた形に結果的になっていたと思っております。本年度のモニターは、パソコンをよく見ている等のバイアスはある程度はあるものの、基本的には属性条件に関して家庭内で無線通信が可能な環境の人、あとはインターネットで定額通信が可能な人など、そういう外的なインフラ等を考慮して選択しており、それほど特殊な集団ではございません。
○森口座長
- 私のほうから多少コメントさせていただきます。対象世帯の一般性というお話もありますが、今回はデータ解析のために、大がかりで手の込んだシステムになっており、10ページに概略図がありますが、相当大変なシステムになっています。その一方で、「今この機器は何ワット使っていますよ」という表示ができない、あまり小回りが利かない、少し前のデータの集計値しか表示されないシステムになっています。例えば、資料の中で、テレビ画面の明るさを抑えたら数字が変わるという実験が必要という記載がありますが、それが集計値としては表示されるものの、その場でモニター世帯の方々が実際に設定を変えてみても、即時的な電力計として表示されるものではありません。
- 一方で、その人が見ていたとしても、実際のデータを分析のため収集しなければならない。「見える化」の機器やシステム自身がまだ開発段階であると思いますので、実際の「見える化」の効果の測定を行いながら、同時に開発を行っていくことがどうしてもありますので、そのあたりは少しやむを得ない部分もあるのかと感じております。
- まず一巡目ご発言いただきました。今回気になったところはしっかりとご意見をいただきたいと思います。いかがでしょう。では、本藤委員、お願いいたします。
○本藤委員
- 客観的データに基づいて効果を検証するというところに重点を置くという前提でお話しさせていただきたいと思います。
- そこで、フィードバック方法というのが気になりました。フィードバックの定義を教えていただきたい。通常、自分が起こした変化がどの程度であったのかという点をリアルタイムで知り、それにより、自分の行動が変化、影響があったことを知ることで、その行動をまた繰り返してやるというのがフィードバックであると言える。本事業ではコメントを与えることを中心に行っているのですが、ここでのフィードバックというのは、どういう意味であり、どういう効果を狙ったものなのか、お答えいただけますでしょうか。
○事務局
- 現在検討を進めているフィードバックというのは、自ら起こした行動の結果を自ら見るという意味での自己完結的なフィードバックという考え方とは少し違う形で整理をしており、「見える化」ありの段階とフィードバックを含めた段階を区別しています。「見える化」ありの段階というのは、自らのデータのみで客観的事実として見せられるものを「見える化」としていて、フィードバックの段階はさらに分析した結果、他サンプル等との比較結果を加工して送り返すものをフィードバックという形を考えております。ですから、ここでは人が介在しない中でデータを集め、システム的に「見える化」の結果をどのように返して、それをどのように活用していただけるのかという可能性を探ることを目的としております。
○本藤委員
- 目指すところはわかりました。もしそうだとすると、やはりコメントを渡すというのが気になるところです。行動変化を起こす大きな要因としては、状態量を示すのではなくて、変化量を示すことが非常に重要だということが、今まで指摘されてきていますので、その部分をどうにか取り入れることが、お願いと言いますか、コメントになります。これは、前年度のモデル事業において、ある事業者の方も確か実証結果として提示していたと思います。変化の「見える化」とか、そのような言葉で表現していたと思いますので、そこを何か取り入れていただくのが良いのではないかと思います。簡単ですが、以上です。
○森口座長
- ありがとうございます。私も賛成ですが、多少補足させていただきますと、きょうのスライドの13ページと14ページの箇所が大事だということだと思います。13ページは単純にデータの数値が示されるだけであり、14ページはバッチ的に「あなたはこうでしたよ」ということを専門家が解析して提供するという感じで、コンサルティングに近いものであると思います。
- 本藤委員のご指摘は、むしろ13ページのようなデータに、自分で気づき、自分で行動のネタを探していただくようなところを考慮するという点であると思います。どちらの機能、つまり14ページの方は、バッチ的に終わってから1枚「こうでしたよ」と渡すのでもなく、13ページのようにただ見えれば「見えますよ」というのでもない、その中間ぐらいのところが非常に重要なのではないかと思います。スケジュール上、そういうものをどこかに入れることは可能でしょうか。例えば4週間実験している間の1週間ごとの変化についてデータを見ていただくようなものです。具体的には、13ページの画面にアクセスすると過去数日分の変化が見えるとか、そういうことをつくり込むことは可能でしょうか。
○事務局
- 今ご指摘になった点ですが、変化という意味でいいますと、13ページのグラフも前日比較、前週比較はできるようになっています。それからもう一つ、規模は小さいのですが、人によるコンサルティングを10~11世帯程度、一部の世帯について行います。この際にワットチェッカーを持っていき、フィードバックさせていただいた中で、そのアドバイス等々も実際にやってみるという自己体験をして、どのような気づきがあるのかと、いうのを確認することもあわせて考えているところでございます。
○森口座長
- 至れり尽くせりではなくて、ただ見せるだけではだめかもしれないけれども、見せるのに何か一つ加えて提供すれば行動につながるような情報が見つけられないでしょうか。そうしないと、大量普及するときに難しいと思います。ただ見せるだけではなく、数値の読み取り方のところで何か行動につながるヒントが見つかれば良い、という御指摘ではないかと私は受けとめました。もちろん今回は至れり尽くせりにしないと効果がないかもしれないという仮説に基づくシステムデザインで大変結構だと思いますが、そのあたりを引き続き検討いただけますでしょうか。この他は、いかがでしょうか。では、麹谷委員、お願いいたします。
○麹谷委員
- 先ほどマクロミルさんを使ってデータ収集をされるということで、総数は何名でしょうか。
○事務局
○麹谷委員
○事務局
- グループAが200人、グループBは人数ベースで540世帯です。
○麹谷委員
- 740ということですね。それを20代から50代まで、例えば20代でいけば720割る4という、単純に数字の振りつけになるのでしょうか。
○森口座長
- 7ページのスライドにその内訳を示していただいているかと思います。ちょっと説明いただきたいのは、配信の分も総数25万人ですか。
○事務局
○森口座長
- 配信に対して回答をもらったのが8万人で、ここから参加者を選定しておりますが、性別や年齢分布に関して、その配信数と参加者とサンプルの比率が相当違います。このあたりの理由を教えていただけますか。
○事務局
- 今回のスクリーニングの観点は、在宅率が低い方はデータとして意味を持たないため、在宅時間をお伺いしております。15時間以上だれもいない状態になる家庭は対象外です。この結果、恐らく若い方で、ひとり暮らしの方で、あまり家にいない方は、候補者として残っている方は少ないと思っております。今回25万人ほどの方に配信をして8万人ほど回答を頂き、そこから230人が候補者となるということで、かなりいろいろな要件で絞られております。結果として今回の属性は、例えば年代、性別、居住人数の分布を均等にすることは特に考えておりません。属性による違いを抽出したいということではなくて、ある程度マスとして考えられる集団に対して「見える化」の効果がどのぐらいあるのかということを見たいと考えております。
○麹谷委員
- わかりました。それからもう1点ですが、先ほどの説明の中で東京の世帯を中心にデータを収集されるという理由はなんでしょうか。
○事務局
- 実験期間が冬期に向かっていく中で、電気使用量がどの程度暖房によるものであるのかという点は、当然地域差が出てくると考えられます。今回はエネルギー消費量自体を知ることが目的ではなく、「見える化」によってどの程度効果があるのかを定量化することを目的としています。地域別にどのような消費実態があるかを知ることよりは、なるべく地域差の影響は排除して、同じような条件で比較を行いたい。そのため、日本で一番大きな集団である東京を中心とした地域に限定してデータを収集するほうが望ましいと考えています。
○森口座長
- よろしいでしょうか。昨年も埼玉、横浜と静岡あたりでしたか、比較的極端に暖かくも寒くもないところであったかと思いますが、いずれにしても限られたサンプル数で地域差まで検討対象にするというのは難しいと思います。
- 資料2の説明の中で、今年度もう一つ、家庭部門CO2排出構造把握に係る検討分科会が設けられますが、こちらの中では地域特性、気候区分、寒いところ・暖かいところのデータも収集するのか、そのあたりを補足説明いただけますか。
○環境省
- 資料2の3ページに記載しておりますが、家庭部門CO2排出構造把握に係る検討分科会ということで、まず家庭部門全体における実態の把握を目的としています。そして、地域特性や世帯属性、住宅属性に応じた排出量を把握することを目的として、サンプリング自体も各所に振るということを想定しております。ただし、件数自体が大きくないため、今年度のデータ規模によって確実な知見が得られるかは不明瞭ですが、この調査は引き続き統計的な実態把握を目的として、少し長期的に検討したいので、その中でその地域差も含めて情報を把握したいと思っております。
○森口座長
- ありがとうございます。昨年度の日常生活分科会の実測調査は、「見える化」の効果の把握・検証ということも当然目的であったわけですが、それ以前に家庭でのエネルギー消費量の実態そのものの把握ができていない部分もあったかと思います。その部分については、今年度別途もう1つの分科会で実態調査を行い、本分科会で推進する調査については、代表性というよりは、特に「見える化」の効果を検出しやすい、良い条件のところを対象に「見える化」の効果のほうにフォーカスしているという理解でお願いしたいと思います。では、多田委員、お願いいたします。
○多田委員
- 18ページに「人によるコンサルティングの試行」とあって、モニター個別訪問以外では、窓口を設けた上で個別に訪ねてコンサルティングを受けることも可能とあります。ここだけ読むと大がかりな準備をしないとできないかと思います。このあたりは、本当にやられるご予定が今のところあるのでしょうか。
○事務局
- 説明が不足しておりましたが、「窓口対応」の説明において「展示場併設可能」という記載については、人によるコンサルティングを行う場面として、実際にご家庭を訪問して、そのご家庭の様子を見せていただきながら、何かしら追加的なフィードバックをしたいということもありますが、訪問する前提ですべての計画を組み立てますと、当然人手が必要になってきて、大量の件数を実施したいと考えたときには困難な点も出てくるだろうと考えております。そのため、もう一つ別に、実際に人と人がお会いしてお話をする場所として、どこかに窓口を設けて来ていただくというやり方もあり得るのではないかと考えております。この記載は、その可能性に関するものであり、この事業でこのようなやり方を必ずやるという意味ではないです。今回統計的に主張できるほどのサンプル数はないのですが、何十例かやってみた中で、その違いも分析できると非常に有益ではないかということで、1つの可能性としてご提案をしているところでございます。
○森口座長
- よろしいでしょうか。この点については、訪問するとか来ていただくというようなフェース・ツー・フェースも非常に重要だと思います。特に、行ってその場を見てくるということは非常に重要だと思いますが、一方で、来ていただくにしても、少しハードルが高い部分もあると思うのです。そういう意味で、例えば電話、メール、あるいはネットスカイプであるとか、そういうもので例えばその画面を見ながら相談をするなどは想定できないですか。コストがかかる話をして申しわけないのですが。
○事務局
- 当然可能性としては考えられますし、統計的な分析を前提としていないので、数サンプルずつ細かくやり方を区切るという可能性はあると思います。あとは、モニター世帯との関係から、実施可能性があるかどうかということについて、事務局側で検討させていただきたいと思います。
○森口座長
- ありがとうございます。代表性については、いずれにしても難しいところがありますが、我々として知りたいのは、ご家庭ではどういうことを知りたいのか、どういう情報をフィードバックすれば省エネ対策行動につながる可能性があるのか、といったことだと思います。せっかくの機会なので、客観的に分析するべきものと、それ以外にアンケートで言えば自由回答に相当するもので、モニター世帯からの声を聞けるチャンネルがあれば、積極的につくっていただければと思います。
○本藤委員
- 先ほどのフィードバックに関することで1点だけコメントさせてください。今年度の実証実験で何ができるかとは別に、気になる1点だけお話をさせてください。お話を聞いていて、頭を白くして聞いてみると、これは「見える化」からずれていっているのかという懸念があります。つまり極端に言うと、このシステムだと「見える化」などはしなくても良く、家庭の光熱費などを分析してあげて、コンサルティングしてあげれば良いだろう。つまり、各々の家庭で「見える化」する必要はないという結論にも導かれるような気がします。そのことを意識しておかないと、フィードバック群は「見える化」の効果よりも、適切な指示をしてもらえるほうがより人は動くので、それで十分だという効果が結果として得られるかもしれない。そのあたりを少し意識して、ぜひ分析・測定をしていただきたいと思います。
○森口座長
- ありがとうございます。私も、これは全く同じ印象を持ちまして、かなりHEMS的な世界に多分入っていっているのだろうと感じています。消費者の方に気づいていただくというよりは、測って診断してこうすれば下がりますというものです。それは、非常に重要な対策ですが、別途検討されている計画であるかと思います。そこの違いを明確に意識しながらやらないと、当初「見える化」と呼んでいたところと違うものになる可能性があるかと思います。全体として機器のしつらえ等を見ても、自動計測をして、その情報をまとめて返してあげて、という印象なので、一人一人の気づきというよりは、やや自動診断的な方向性がこれまでの「見える化」の検討よりは強めになっていると感じています。
○環境省
- 本藤先生へのご質問になってしまうのですが、13ページの「見える化システム」主画面では、現時点で直近の消費電力10分前の値が1つ出力されるということと、グラフでは1時間値という形で過去のデータが出力されるということで、一応はここでは、1時間値をどうとらえるかはあるのですが、変化値は出力されると思っています。ただ、これが先ほど話のあった行動をとったときにすぐフィードバックが来るということに関して、必ずしも十分なリアルタイム性がないということであれば、もう少しシステムの検討か、コンサルティングのところにワットチェッカーを持参しますが、場合によってはもう少し他の人たちにもリアルタイムでデータが出るような機器を利用してもらう必要があるのかどうか。その点で、頻度や対象など、「見える化」の方法に関してご助言いただければと思います。
○本藤委員
- 例えば3ページに全体の設計が書いてあります。この中で後者のグループBでは、テレビとか冷蔵庫はコンセントから収集しています。そうすると例えばテレビで明るさを変化させるとすぐに何かわかるはずです。そして、自分の具体的な行動がどのくらい変化したかというのがすぐにわかることが多分一つ重要なポイントだと思います。先ほどのシステムだと全体量が10分ごとなので、具体的に自分の行動は見にくいので、もしコンセントでできるのであれば、あり得るのかなというのが、今すぐできる回答です。
○森口座長
- ありがとうございます。これは、今回使っている機器が集約してデータを取得して、まとめて解析するように仕込まれているので、個別の瞬時値を見せる機能が弱い。今回の機器だけだと、そこが実現できない。テレビの明るさを変えることによって消費電力が変わりますというのはまさに実感できるはずですが、今のままだと瞬時値としては実感できないのです。非常に重要なところなので、この機器とニ重投資的になってしまうかもしれませんが、限られた世帯でも構わないので、エコワットやワットチェッカーなどのような、本当にその機器自身の消費電力量がその場で変わることが実感できるような機器をぜひどこかに組み込んでいただきたい。例えば、今回の機器はデータのサンプリングの間隔は10分を1分に変えられますが、それよりは即座に変わる機器をつけるほうが応用性が高い気がします。そのあたりはコスト等の兼ね合い等もあるかもしれませんが、できるだけ今回のハードウエアの制約だけに縛られないように、原点に返るようなところになるかもしれませんが、それを少しご検討いただければと思います。
【議題3】日常生活CO2情報提供ツール(仮称)の更新について
- 事務局から資料4にもとづき、日常生活CO2情報提供ツールの更新について、説明が行われた。
○森口座長
- ありがとうございました。このツールは、初年度から設計を進めておりまして、昨年度も使用していただき、改良のポイントは抽出できていたのですが、今年度の事業スタートの時期との関係で、非常に慌ただしいスケジュールになっておりますが、改良中身そのものについては、これまでの検討の中でも出てきた点であります。今年度はその公開も予定しているので、少し大所高所からのコメントをいただければと思います。これは一番最初から「見える化」の中で手をつけていた仕事でもありますので、そのあたりも思い出しながらコメントをいただければと思いますが、いかがでしょうか。
○多田委員
- かなり既存のツールですよね。今まであったツールの更新ポイントがユーザビリティ、使い勝手、使いやすさのところであり、それをかなり考慮され、いろいろ変更されようとしているので、一方の簡易ツールの位置づけが本当に必要なのか。従来のツールを改善したものと比較して、どの程度簡易になっているのか。この簡易版というのは、位置づけとして、簡易版でまず興味を持ってもらって、興味を持ってもらった方に本格ツールのほうに移行するということなのか、この簡易版ツールの位置づけもあわせて少し教えていただければと思うのですが。
○森口座長
○事務局
- ありがとうございます。昨年度からユーザビリティ的な面を改善すべしというところと、情報や機能が詰まったツールになっており、一度にすべての機能を理解するのが難しく、例えば「家計のみえーる」の家計簿機能については、すべて家計簿になるレベルのデータが入力できるというところがあり、全体的に機能が充実したものになりすぎている反面、ハードルが高い面もあるのではないかというご指摘もいただいております。まずはツールを使っていただく方を増やすという観点から、簡単にツールを使えるようなものをつくりたいというところを目的としております。
- また、携帯電話でも使えるようにして、なるべくユーザーのすそ野を広げるような方針も取りたいと思っており、詳細版ツールですとフラッシュ機能を多用しているので、携帯ではなかなか見えないところもあるので、ユーザーを広げるというところと機能を絞って対象を広げるという、大きく2つを目的として簡易版をつくりたいと思っています。
○森口座長
○麹谷委員
- 1点は質問と1点は要望です。1点の質問は、12ページのその他の項目にあります、インセンティブの付与についてです。使用頻度に応じてポイントシステムという表現がありますが、具体的にどんなイメージなのでしょうか。もう1点、掲示板機能というところが19ページにあると思いますが、これは情報発信が主ですしょうか。今後オープン化されたときに利用者にお得な情報というか、実際に自分たちがやって効果があった情報をつぶやくというような意味合いで掲示板を使ってもいいのですが、もっと簡便に今流で言えばツイッターのような機能を追加して、その情報を共有することで動機づけにつなげていくようなことができないかどうかという質問です。
○事務局
- 1点目の使用頻度に応じたポイントシステム等の検討というところですが、ツール利用の中で、例えばご紹介した「えこ帳」という環境家計簿がありまして、そこではある機能を使うと、アクセス、機能使用に対して例えば5点とか10点とかポイントが付与される形になっています。そのポイントをためることによって、「えこ帳」の中でゲームのポイントになるという例があります。これらを踏まえつつ、検討していきたいです。
- 2つ目の掲示板等のコミュニティー機能というところですが、こちらから情報発信しただけでは意味がなくて、逆に情報発信していただくような使い方を念頭に置いております。ここは何かしら機能を付加して効果の検証もして参りたいと思っております。
○森口座長
○本藤委員
- この情報提供ツールでどのような行動変化を期待していらっしゃいますか。これをもし自分がやったとしたら、一体どのように次に何か自分の行動を変化させるのかと思ったときに、正直言ってピンと来なかったです。おさらいも込めて、その辺をいま一度お話しいただけるとありがたいと思います。
○森口座長
- そうですね。この家計簿の機能などが入っているのは、最初のころは、いわゆるカーボンフットプリントみたいなエネルギー消費以外の家計消費の部分、非エネルギー財の購入に関するものについても、何らかの取り組みにつながるような情報提供をしていくべきではないかという狙いもあったと私は記憶をしております。
- それから家電製品などについては、買いかえ情報と連動させようという話もありましたし、当初は「診断ツール」という名前だったのが「情報提供ツール」にしようということは、このサイトを訪れれば、家庭でできる温暖化対策、あるいは自分の生活にかかわっている温室効果ガスの直接・間接の排出量が診断できるようなツールをつくろうというのが最初の狙いであったと思います。ただし、時間制約上、まずは実際に皆さんの反応を見ながらどのような情報提供が必要なのかということを、早めにやっていくべきです。年々実施体制が変わっているものですから、1年たって半年戻ってしまうようなところがあって、そういうことの中でまずつくること自身に時間がかかってしまっている。たしか私の記憶では、初年度には、どうやってここまで来ていただくかが課題で、来ていただければいろいろな効果があるのではないかという話をしていたのですが、まずは来ていただくためのものができないことには、それ以上の議論ができないという状況になっていると思っています。とにかくまず早く公開できるものをつくっていただくことが必要なのかなと、やや乱暴なことも考えております。環境省のほうで何か補足いただくことはございますか。
○環境省
- このツールの狙いにつきましては森口先生からのご指摘のとおりです。今まで環境家計簿は、環境省でもやっておりますし、ほかのところでもやっているのですが、削減に関する情報が十分に伝えられるサイトであるとか、個別のものに対して情報提供するのが必ずしも十分ではなかったと考えております。
- その観点でいいますと、今、「チーム・マイナス6%」や「チャレンジ25」ということで、あらゆる方面で削減の行動に移るきっかけをどのようにつくるのかというところが全方位的に考えているところでして、「環境コンシェルジュ」もしかりです。このツールも少し入力していただくだけで、ある程度削減のポイントが見えるようになるというところを目指しております。あわせて本事業の実証事業でデータが計測されるものについては、そのデータができるだけ自動で入って、この中で見えるようになっていくところをツールとして目指しております。なかなかまだ公開に至ってはおりませんけれども、本年度の公開以降、来年度以降もこのツール自体は引き続き継続して使えるようにしたいと思っておりますので、その中で改善等を図っていきたいと思っております。
○本藤
- ありがとうございました。今のお答えを踏まえて2点ほど質問があります。1点目は、公開して今後、環境もしくは温室効果ガス削減の総合サイトみたいなイメージに展開していくのでしょうか。今年度は別としても、来年度事業にもつながると思うので、将来像が先にあるとありがたいと思いました。2点目は、とにかく試してもらうことが重要だとすれば、何かしらモニター調査を改めてもう1回実施して、本当にうまく使えるか、これが実質的に意味のあるものになりそうかなど、何かしらの形で意見を聴取するようなことをなさったほうがいいのかなと思いました。以上2点です。
○森口座長
- では、先に2点目のほうを事務局のほうからお答え願います。
○事務局
- ありがとうございます。モニター調査については、ツールの改良がスケジュール上で後ろ倒しになって恐縮ですが、11月下旬からモデル事業が始まりますので、実際にモニターの方に使っていただく機会にしようと思っております。公開した後も、短期間ですが、改良ポイントを事務局に連絡いただき、その点を3月にもう一度アップデートすることも考えております。2段階に分かれてしまいますが、可能な限りいただいた意見を更新したいと思っているところでございます。
○森口座長
- 2点目について、電力消費量の実測を行う世帯でも、一部の世帯についてはそれをやっていただきます。ただ、これ以外のツールそのものを使っていただく方についても、いずれにしても実際に使っていただきますが、ただつくるだけで終わってしまうということでは具合が悪いのではないかと思います。スケジュールが厳しい中ではありますが、今年度末までに何らかの使用した評価結果が出てくるようにお願いしたいと思います。
- 1点目は、イギリスなどの総合サイトのようなものをイメージしながら、そこを訪問すれば消費者にとっての温暖化の情報がわかり、特に自分が何をすればいいのかということがわかるような総合サイト的なものを目指していくべきだろうという思いは、少なくとも私にはありました。既に前半部でもご指摘がありましたが、いろいろな事業の間のリンクといいますか、連携をとっていただいて、あまりいろいろなものが乱立しているようなイメージを与えないように、ぜひある時期に見直しをしていただきたいと思います。現在はまだそれぞれのツールをつくり込む時点かもしれませんが、一つのものにまとまっていきませんと、ユーザーも迷われて使いにくいのではないかと思います。これは、お答えというよりは私からのお願いになりますが。
○麹谷委員
- 最後に1点だけお願いです。これは切なるお願いです。このツールをお使いになるのは一般の家庭、あるいは消費者です。そういう目で見たときに、仮称ではありますが、「日常生活CO2情報提供ツール」なんて、全然心に響きません。ここはターゲットを明らかにして、呼称はもう少し親しみを持てる呼称に変えて欲しい。例えば「家計のみえーる」とか、これは非常にやわらかいと思いますので、是非とも検討のほどをよろしくお願いします。
○森口座長
- ありがとうございます。昨年度にそういう議論を仕掛けた気がします。いくつか名前の候補を挙げていながら、ほかにも検討課題があったので、そのまま宿題になっていたかと思います。場合によっては名前の公募とかを実施しても良いかもしれません。参加者の方、モニターの方も含めて公募を実施するぐらいのこともして、何らかの形で関心を持っていただくことが必要だと思いますので、ぜひ今のご指摘を反映していただければと思います。
- それでは、もし本日ご指摘いただけなかった点がございましたら、事務局のほうに直接ご連絡いただければと思います。どうもありがとうございました。これにて閉会といたします。
(了)