(1) 研究会の概要
- 【開催日時】
- 平成22年10月14日(木) 14:00~16:00
- 【開催場所】
- 主婦会館プラザエフ 「クラルテ」
(2) 出席者
- 【委員】
- 安井座長、阿部委員、壁谷委員、菊井委員、辰巳委員、中上委員、森口委員
(欠席:一方井委員、麹谷委員、本藤委員、松橋委員)
- 【環境省】
- 高橋 地球温暖化対策課長、杉本 地球温暖化対策課課長補佐、中村 低炭素社会推進室室長補佐、福井 地球温暖化対策課係長
- 【オブザーバー】
- 二見 情報流通振興課主任(総務省)、増田 国土交通研究所総括主任研究官、永田 交通環境・エネルギー対策企画官(国土交通省)、小池 環境バイオマス政策課長補佐(農林水産省)、村田 環境調和産業推進室長(経済産業省)
- 【傍聴者】
- 全55名(一般:41名、報道関係:2名、他省庁:12名)
(3) 議事内容
(1)会議の進め方について
(2)温室効果ガス「見える化」に関する各種取組の現状について
(3)今年度の実施計画について
(4)その他
(4) 配布資料
資料1 |
温室効果ガス「見える化」推進戦略会議 委員名簿 |
資料2 |
温室効果ガス「見える化」推進戦略会議の進め方について |
資料3-1 |
温室効果ガス「見える化」の役割について |
資料3-2 |
温室効果ガス「見える化」に関する各種取組の経緯と現状について |
資料3-3 |
温室効果ガス「見える化」推進に関する論点 |
資料4 |
今年度の実施計画について |
参考資料1 |
温室効果ガス「見える化」推進戦略会議(第4回)議事要旨(案) |
参考資料2 |
温室効果ガス「見える化」推進戦略会議(第4回)議事録(案) |
別紙1 |
総務省:グリーンICT推進事業について |
別紙2 |
農林水産省:「見える化」に関する各種取り組みについて |
別紙3 |
経済産業省:カーボンフットプリント制度について |
別紙4 |
国土交通省:カーボンディスクロージャーについて |
別紙5 |
環境省:取り組み事例について |
(5) 議事
【開会及び資料確認】
○高橋課長
- 環境省地球温暖化対策課の高橋でございます。本日はお忙しいところ、ご出席を賜りましてありがとうございます。一言趣旨も含めましてご挨拶を申し上げます。
- 国内外では温暖化対策の議論が続いており、国際的にはCOP16に向けて最終的な詰めを行っておりますが、最終目的である国際枠組というものが達成できるか断言できませんが、何らかの成果を上げるべく今最終的な努力を行っております。
- また、国内的には、前国会で廃案になりました地球温暖化基本法案が、先週金曜日に閣議決定され、今週国会に提出されました。臨時国会での議論を今控えているところでございます。それに並行して国内排出量取引制度、温暖化対策の税、あるいは再生可能エネルギーの全量買取制度というような主要な施策についても、それぞれ今議論が続いているところでございます。いずれにしても、低炭素社会に向けて2050年80%削減という長期的に手を打っていかなければならない中で、本日議論していただきます業務、家庭部門がひとつ大きな対象であることは、皆さんご承知のとおりでございます。
- この分野につきましては規制的な手法だけではなく、「見える化」というのが最近キーワードになってございます。「見える化」というのは非常に重要だということを多くの方が指摘しており、これに付随して関係省庁様を含めて様々な取り組みが進んでいるところです。「見える化」という手法を、いかに効果的に行うのかという点はまだまだ議論の余地があり、また、データが不足している点もあります。「見える化」というのは単純に業務や家庭部門の排出量を減らしていくことではなく、消費者の視点から供給サイドまで変えていくという意味で、低炭素社会に向けて非常に重要なツールになると思っております。これを如何に効果的に進めていくかということについて、ぜひ議論をしていただければと思っております。
- 環境省はこれまで様々なモデル事業を含めて実施してまいりましたが、今年からは本日ご出席の中上委員が座長を務める分科会にて、「家庭部門のCO2の排出実態」をさらに詳しく調べる調査も立ち上げております。また、政策コンテストの対象になっており、新成長戦略にも盛り込まれている「環境コンシェルジュ」という制度を来年度から立ち上げていこうということで、「見える化」、あるいはそれによって消費者の行動を変えていくような新たな手法を進めていきたいというところでございます。
- 本日は大変お忙しい中、関係省庁からもご出席をいただいております。環境省の取り組みのならず、少し広い視野で議論をいただきまして、私ども環境省のこれからの事業の進め方、あるいは関係省庁との連携の仕方含めて、幅広く大所高所からの議論をいただければと思っておりますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。
【議題1】会議の進め方について
- 事務局から資料2にもとづき、推進戦略会議の進め方について説明が行われた。
○安井座長
- ありがとうございました。何かご質問があれば、お願いします。
○森口委員
- 質問ではなくて、資料の内容の確認です。8ページについて、前回の会議で発言したのかもしれないのですが、家庭からのCO2排出量が半分と申し上げたのは、家庭からではなくて日本全国のCO2排出量全体の半分です。「非エネルギー財も含めて、家庭消費支出が誘発しているCO2排出量は、家庭からのCO2排出量の」という表記ではつじつまが合わないので、日本の全排出量の半分程度であり、日本の全排出量を100%とすれば、家庭からの誘発分が50%で、そのうちエネルギー起源が20%、非エネルギー財が30%、という関係ですので、そこの訂正をお願いします。
○安井座長
- ほかに何かございますか。各分科会の座長の割り振りをご紹介していただけますか。
○事務局
- 今年度の分科会は3つございます。日常生活からの温室効果ガスの「見える化」に関する分科会は森口座長に引き続きお願いしたいと考えております。事業者の提供する商品・サービスに係る温室効果ガスの「見える化」に関する分科会は安井座長に引き続きお願いしたいと考えております。家庭部門CO2排出構造把握に係る検討分科会は、今年度より本会議の委員となられました中上委員に座長を務めていただいております。
○安井座長
- ありがとうございました。よろしければ議題2にいきたいと思います。
【課題2】温室効果ガス「見える化」に関する各種取組の現状について
- 事務局から資料3-1に基づき、温室効果ガス「見える化」の役割について説明が行われた。
○事務局
- 続きまして、資料3-2です。こちらは温室効果ガス「見える化」に関する各種取り組みの経緯と現状についてです。最初に関係各省庁の取り組みの現状整理について、各省からご紹介いただきまして、その上で昨年度事業の「見える化」の事例を事務局のほうからご紹介させていただきます。
- 総務省から別紙1にもとづき、総務省の取り組みについて説明が行われた。
- 農林水産省から別紙2にもとづき、農林水産省の取り組みについて説明が行われた。
- 経済産業省から別紙3にもとづき、経済産業省の取り組みについて説明が行われた。
- 国土交通省から別紙4にもとづき、国土交通省の取り組みについて説明が行われた。
- 環境省から別紙5にもとづき、環境省の取り組みについて説明が行われた。
○事務局
- 関係省庁の取り組みの現状ということでご紹介いただきました。
- 資料3-2にもとづき、温室効果ガス「見える化」に関する各種取組の経緯と現状について説明が行われた。
- 資料3-3にもとづき、温室効果ガス「見える化」推進に関する論点について説明が行われた。
○安井座長
- ありがとうございました。何か質問等ございますか。私から質問させていただきます。
- 各省について先ほどのご報告をいただきましたところ以外に、例えば、エコポイントの建築物版等が行われていますが、家の断熱性能の「見える化」とか、家のエアコンの最適な選択方法に関する「見える化」とかは、どの省庁の管轄になるのでしょうか。経済産業省なのか国土交通省なのか、実を言うとかなり「見える化」は難しくて遅れている部分だと認識をしているのですが。
○中上委員
- 今のお話は経済産業省と国土交通省と共管で、最終的には環境省も参画しますが、住宅建築物の省エネ法において、これらを規制することを検討するというワーキングがスタートいたしました。その中の一環として、ラベリングの話題があり、これは重要なテーマです。今から法律を改正するわけですから、その流れの中で同時に取り組んでいきたいということです。現状でも断片的には、そのようなラベルがないわけではないのですが、まだまだ一般的には周知されておりません。例えば住宅だと、国土交通省のほうで性能評価というのがあり、これはエネルギーだけではなく、安全性・耐久性等も考慮している。じっくり読み込めば読み取れるわけですが、そのようなものへの着目度がない。ただ今のご質問はむしろエネルギーやCO2に特化しているので、これからの作業と並行して、連動して進んでいくことになると思います。最終的には3省で着地点を見つけていくことになるでしょう。
○安井座長
- ありがとうございました。他に各省に対してのご質問をお願いします。
○辰巳委員
- 総務省のグリーンICTについて。経済産業省等でやられているスマートメーターについては、どのような位置づけになるのか。
○二見(総務省)
- グリーンICT通信事業については、23年度の予算要求であり、スマートグリッドについては、平成21年第2次補正予算です。実証実験は地産地消ということで全国6カ所ほど開発実証地域を選定して、現在22年度に繰り越しをした上で実証事業を行っているところです。
- 具体的に一例紹介すると、10月13日日経新聞13面に、鹿島建設がスマートコミュニティーについて参入するというような記事が載っていましたが、あれは総務省の事業です。スマートグリッドそのものではないが、スマートグリッドの通信部分についての開発諸事業として取り組んでいる記事になります。そのため、スマートグリッドについては、利活用という意味ではもう既にとりかかっています。今回はこれからやろうとしていることについてのご紹介という観点で、資料から省かれております。
○安井座長
○壁谷委員
- 温室効果ガスの「見える化」ということで、各省庁の皆様からのお話ですとか、あるいは、従来からの環境ラベルの取り組み等の中で、見せてはいるが、どういう情報なのかということを整理整頓して、見る側である事業者及び生活者あるいは消費者の方にしっかりしたメッセージを出さないと「見える化」の効果を得るのが難しいのかなということを改めて思いました。
- それから、実際に見せる側も見る側も相互コミュニケーションした際に、それぞれにとって最大のメリットがあり、最終的に気持ちの良い「見える化」、「見せる化」、「見た側の理解」のような関係をどのように構築するのかというのが最大のポイントであると思います。先ほどご紹介のあった「環境コンシェルジュ」のようなものが媒体になるのか、あるいはコミュニケーターになるのかということも期待しています。このコンシェルジュという部分では、対象が生活者の方が主体になっていますが、中小企業様からすると、この「見える化」というのが今のところはかなり負担に聞こえているようです。つまり何か見せることを義務づけられるのではないか、あるいはサプライヤーという立場では力関係によってこれをさせられてしまうのではないか、というようなこともあります。そのため、「見える化」が進む中で、それぞれの主体の方、プレーヤーの方にどのようなメリットがあるのかということを、全体を整理整頓した「見える化」の意味合いというものと上手に重ね合わせると、効果的ではないかと思いました。
○安井座長
- ありがとうございました。私も環境コンシェルジュというのはレベルが高いと思っています。今は消費者対応であるが、自分の家をイノベーションするときの環境コンシェルジュ等は、様々なレベルが必要ではないでしょうか。このあたりはどこでやるのでしょうか。
○杉本(環境省)
- 環境コンシェルジュ事業では家庭の消費、まずどの程度排出があるのかというところを見た上で、対策についての提案をするというところです。確かにご指摘のとおり、一番難易度が高いのは住宅と思っています。それ以外のところも、実際の使われ方によってどの程度効果的であるのかについては、昨年度の実証事業においてアンケートの回答と実際の使われ方、使われる時間との違いも明らかになってきていますので、使われ方の認識の補正も当然必要ではあると思っています。特に住宅関係については一段と難易度が高いと考えており、これは別の形で検討することが必要だと思っています。
- 例えば、当初のエコリフォームコンソーシアムの中でもリフォームの仕方、もしくは、この中でどのような情報提供をしたらいいのか、ということも検討しており、このような情報等も組み合わせながら、将来的にはリフォーム時の診断とか、情報提供が行えるように徐々に拡張していくことが望まれていると考えております。まずは、その取り掛かりのところであると考えています。
○安井座長
- ありがとうございました。ほかに何かございますか。もしよろしければ、資料3-3に基づいて議論するのが一番大事だと思いますが、このあたりに関して何かございますか。
○辰巳委員
- 資料3-3でやはり一番大事なのは、この「見える化」が進んだときに、それがどのように削減行動につながるかという点であると思います。例えば消費者の暮らしなども本音をうまく引っ張り出せるようなことをやっていかないと、行動につながらないと思っています。その本音が一体何かはわかりませんが、やはり自分が削減の努力をするということは大変なことだと思います。その大変なことの評価をしてほしい。インセンティブを与えるということだけではなく、環境に配慮された、つまりCO2を削減されたものを選択する。だから、エネルギーやガソリン等は、確かに電気代が安くなるし、ガソリンも使わなければ安いので、それはそのまま評価されるので良いのですが、日常製品の購入の際にCO2が関係することを知らせて、購入を促すという方法については努力しないとできないと思います。このような行動がきちんと評価されること、つまり世の中でそのような物が安くならないとおかしいと思います。だから、環境に良いものは高くても買いますか、というアンケートがよくありますが、そんなアンケートが存在すること自体が変だと思っています。だから、環境に配慮した商品、あるいはCO2削減が目に見えるような、カーボンフットプリントの少なくなるように努力された製品が安く買えないと世の中が変わらないと思います。
○安井座長
- 今のご発言に関しては、いろいろと意見がありますが、容器もリターナブをやると安くなるが、10円ぐらいでは消費者は動いてくれない、という話があります。
○辰巳委員
- それはそれでいいと思います。自分はあまり環境負荷に対して関心を持てないのでお金払うよという逆の発想です。そういう人がいても仕方ない。ライフスタイルが違うので許されると思います。そのかわり、その分を各自お金で負担しますという考えになれば良い。そういうふうに国が動いてほしい。
○菊井委員
- 質問ですが、資料2の「見える化」推進戦略の進め方の3ページの本会議及び分科会の構成と、分科会のテーマと資料3-3の論点整理の関連について。資料2の論点がこの本会議とか分科会の構成のテーマとどのように繋がっているのか、もう少し説明してほしい。
○事務局
- 資料2の3ページにおける温室効果ガス「見える化」推進戦略会議のテーマとしては、温室効果ガス「見える化」の目的を改めて整理し、「見える化」に関する各種取り組みの現状や今後のあり方を検討するということをまず1つのテーマとしています。これに加えて、各分科会での検討結果を踏まえて、家庭部門あるいは業務部門における最適な「見える化」手法の検証を行い、今後の取り組みを推進するというところです。分科会の個々の議論とは別に全体の方向性を議論したい、というのが今回この戦略会議の目的の1つとして考えています。全体の方向性の議論としてこの論点を出しており、本日ここで議論していただければと考えています。
○安井座長
- 分科会では、森口先生、中上先生、私が座長を務めます。ここでの議論を踏まえ、分科会でそれぞれ議論を行います。決定事項ではないので、何らかのアイデアあるいは何らかの新しい取り組みというものが必要であれば提案し、だめでも議論はしたいと思っています。何でも結構ですので、大きな構成について議論いただければと考えています。
○森口委員
- 今の議論の確認ですが、特に資料3-1は「見える化」をかなり広くとらえています。資料3-3の2ページ目にある優先順位というところで、これまでの家庭や事業者における排出削減を促すための「見える化」について同様の方向で良いのかと書かれています。良くないのであれば、家庭部門や事業者部門ではないところの「見える化」の議論も行っていくという問題設定になっていると私は理解しています。一方で冒頭の高橋課長のご挨拶でもありましたが、この資料2の目的では、家庭部門、業務部門が中心にあったのではないでしょうか。それが「見える化」というのは家庭部門と業務部門の改善のためのツールだというように何か定義してある気がします。その上で資料3の議論をすると少しわかりにくいと思います。これまでは狭い意味での「見える化」と捉えており、あまり広げ過ぎると他でも検討を行っているので、本会議では特に家庭部門、業務部門を中心にしてきた。しかし、周辺で検討会や分科会があり、そこでは同じように排出量を明確に計測したり、あるいは削減量を計測したりしており、これらの検証を通じて削減につながることはいろいろ考えられるため、今回まとめてその議論を本会議で行う。一方で、具体的な検討はこれまで家庭と業務部門を中心にやってきたので、分科会では今まで通りで議論していく。このような構成であるという理解でよろしいでしょうか。そのあたりの関係がわかりにくかったというご発言だったと思っています。私もこの資料の構成だとやや流れがわかりにくいと思います。
○安井座長
- そのような理解でよろしいかと思います。これまでの「見える化」の取り組みというのは、製品を「見える化」しようという話に特化しているところがあったと感じています。ただし、それだけでは2050年80%削減という目標の達成は難しいので、スコープに入れるならば主体を切りかえなければならず、最終的には個人に負担をかぶせる考え方もあります。それがすぐ進むとは思っておりませんが、全体のスコープとしては、例えば家庭の人数に関係するために家というレベルでは実施できる部分は限られていて、最後は個人負担の例として、その人の頭の上に風船でもくっつけて「あなたが出したCO2はこれくらいのサイズです」というのが最終的に見えるという仕組み等は、できるかどうかは別として極限かなと考えています。そのような極限を意識し始めないといけないと考えています。
- 将来的に家庭だけではないと言われるかもしれませんが、今年、中上先生のご参加によって家庭部門のCO2の排出構造の把握において、「個人」にうまく割り当てることできれば、それは1つの方向性であると考えたほうが良いです。ほかにないでしょうか。
○中上委員
- 先ほどの辰巳委員のご発言に関連して、「見える化」というとBEMSやHEMS、省エネナビやスマートメーターと結びつけてしまいますが、それらの動向と今回実施することはどのような関連があるのでしょうか。省庁間で随分調整しなくてはいけないことがあるだろうと思います。ニュースでは例として、インターネットテレビが取り上げられており、表示方法自体を収斂させないと、家中にリモコンが氾濫している状態と同じように表示機が氾濫しているので、混乱をまねくかもしれません。しかも、それが決して安くない。このような調整はどこが行うのでしょうか。それをイメージしながら推進しないとガラパゴスになってしまうような気がします。
- 最近のヨーロッパのスマートホーム、スマートメーターに関する国際会議では、最終的には携帯電話に合わせようとしています。そうすると、日本の携帯通信はどうなるのかという気もいたしました。だから、技術進歩が激しいですので、先取りはできなくても横にらみであとから適応できるように、無駄な労力をかけないようにしてほしいです。
- もう1点感じたのは、スマートメーターの「見える化」効果というのは各国によって狙いが違い、日本とヨーロッパでも全く違います。しかし、最終的にはユーザーに情報を与えることで省エネ行動に結びつけてもらいます。キーワードは辰巳委員のご指摘のとおり消費者行動にいかに結びつけさせるかが最大のテーマであり、技術ではなくて心理学に軸足が置かれている研究テーマが多かったという印象です。これは日本が最も遅れているところであり、このような点も非常に重要なテーマになっています。
- そこでおもしろい例があります。非常に精度の高い、極めて効果がありそうなスマートメーターを配布しても、ユーザーは使いこなせない。スマートメーターという呼び名ですから、電気の計測メーターと一体化しているものですが、国によって違いがあり、日本では直接手が触れられず、そこがスマートになってもユーザーにとっては便利であるとは限らない。イタリアでの心理学分野の発表では、床の下のほうに置いてあるのか、天井に置いてあるのかが比較対象となっているものがある等、「見える化」と一口に言っても検討範囲が非常に広い。その辺を1つ1つ着実につぶしていかないと、何も結果が得られないということになりかねないと危惧しており、その点を十分に心得ながらやっていきたいと考えています。
○安井座長
- 日本のスマートメーターに手をつけるのはまだ早い段階であり、アメリカのスマートメーターは最終的には電力供給者側が需要者を対象とする可能性もあるので、日米で大分違うのかもしれません。本会議は3年目に入りましたが、やれるところから少しずつというのが基本的なスタンスで変わりはないと思いますが、その先の大きなスコープは推進会議で見渡すというのが重要かと思います。ほかに何かございますか。
○森口委員
- 各省の取り組みを聞かせていただき、これは日本的で良いかもしれません。ただし、色々なことを積み上げて、本当に2020年、2050年の目標に繋がっていくのかどうかが、いま一つ見えづらいと正直思っています。
- 今回資料3-1で広くとらえたこと自体はよいと思いますが、3年目の本事業で最初の段階であればよいが、残り半年何をやるかということと、環境省だけでなくて政府全体としてどういうことでやっていくのかというのを一番「見える化」しなくてはいけないのではないのでしょうか。今のところ「見える化」というツールの中でそれぞれの施策を行い、伸ばしていくことが必要だと思っています。このような施策を積み上げていくことに加え、ここには含まれていない温暖化対策も色々あります。例えば、目標達成計画や自主行動計画のフォローアップ等、数字を見せて、それを削減に結びつけていくという行動は色々あります。どういう数字を誰に見せると削減に結びつくのかは、フォローアップの際に非常に重要なステップの1つだと思います。別のところで議論をすれば良いということをここで申し上げておけば、それはそれで別のところで実施いただけるでしょう。ここでは、もう少し狭い意味での「見える化」、すなわち初年度から続けてきた議論に集中できると思っています。この場でどこまで議論して、それ以外の場で何をやるのかについては、温暖化対策に関わっていると、どこでも似た感覚を持ってしまいます。お互いにオーバーラップする部分が出てきているような気がします。ここで残りの期間で昨年度までの経験を踏まえて一番効率的にできるところは何かということを議論できれば良いと思います。これは、主に分科会のほうの仕事かもしれないですが。
○安井座長
- 恐らく委員の皆さんもそのように思っていると思います。しかし、ここに答えを出せる人がいないような気もいたします。
- 先ほど申しましたように、これから森口先生、中上先生、私の3人で座長を務めますが、分科会の行動を合理化できる何か新しい情報があるかというのが本日の一番大きなところであり、方向性について大きなことが整合できれば、次回の分科会はそのような方向性に少しでも変えていきたいと考えております。
○菊井委員
- 資料3-3の論点の中で、3ページ以降の「見える化」をどうするのかという点は、削減行動につなげる方法や、「見える化」を通じた削減行動の推進方法が論点として挙げられているので、ここを論点にして考えていくというところが、これまでの会議とは違ったところだと思います。そのため、分科会の議論の中で単に断面として排出実態をどう「見える化」するかという議論ではなくて、削減行動にどのようにつなげていくのか、というところを視野に置いた上で、検討をお願いしたいと考えている。
○安井座長
- 難しいが、大変重要な指摘であると思います。削減行動につながらない限り、ほとんど意味がなく、見えているだけではどうしようもない。しかし、最初から第4回までのスタンスは、見えもしないものは削減もできないというものでした。これからは、見える量が十分になってくると、今度は削減行動につながるため、そのレベルの話題になりえるかどうかを見極める必要性がある。最初は何も見えないような状況で、削減しろと言われても何を削減すれば良いのかという問いに対して答える術がありませんでしたが、2年間で少しずつ「見える化」する方法もあるということを世の中に訴えてきている。そろそろ、これも進化していかなければいけないと思います。
○森口委員
- 今の議論を生かすために、極めて具体的なポイントを挙げてみたい。資料3-1の温室効果ガス「見える化」取り組みの現状整理で3行3列に書かれていますが、これは「見える化」することによって家庭自身が排出量を下げることを期待して、かつ、そこで削減するメニューとどのようにつながるのかという議論であるが、本当にここだけでしょうか。つまり家庭に「見える化」して、それを家庭の方が自ら気づいて削減行動をとる。これは非常に重要なことで、それが本来の設定であったと思います。これに加えて、実態把握部分は、それだけでは削減にはならないが、非常に重要だと思います。家庭の排出実態を把握して、どのように削減するのかは、家庭が考えるだけではなくて、政府も自治体も考えなければならない。すなわち、どのような制度と結びつけば、消費者が実際に動くのかを検討することが必要と考えます。本日は一方井委員がご欠席ですが、いつも値段がつかないことをご指摘しています。結果的に経済的なインセンティブを与えれば消費者は動くというところまで見込まないと、この範囲で「見える化」の議論をとどめていて良いのでしょうか。そこはもう少し踏み込むべきところではないかと思います。
○中上委員
- 私の経験で申し上げると、地域別に家庭を対象とした温暖化診断を行い、結果は、あなたはこういうところが無駄になっています、こう使いなさいと出した情報については反発を買ってしまった。一方で、300件のアンケートで得られたことですが、あなたは235番目です、というランキング情報が一番効果がありました。私はどこを直したら良いのですかと、意識が変わった。つまり、情報の出し方で人々のアクションにつながる効果が全然違うということがわかりました。
- もう1点ですが、待機消費電力を公表しました。ある主婦には年間1万円ロスしていますということも示しました。この1万円が大きく効きました。後で7,800円だったら効かなかったと言われました。主婦にとって1万円というのは大変な魔力があると言われました。9,800円だったらあそこまで動きませんと言われました。それはインセンティブを与える、与えないじゃなくて、主婦感覚の1万円という量です。温室効果ガス削減をやらないと家計に幾ら響きますよというときに、きっと主婦にとって、3万とか5万というのはアウト・オブ・オーダーなのです。ところが、待機消費電力は明日のお金ではなく、今日のお金なので、ラグを抜いたらすぐに1,000円安くなるということで、効果があったと思います。
- 情報の提供の仕方は色々あり、琴線に触れる情報が必ずしも細かな情報だけではないと感じます。ちなみに、分科会では単なる統計値だけではなくて、消費者行動につながるようなデータも含めたものを、一度総ざらいにするつもりです。それをベースにして「見える化」に使用できるものがわかれば良いというのが、我々に課せられた使命だと思っています。
○安井座長
- ありがとうございました。2年半の間に社会ではいろいろなことが起きていて、例えばエコポイントがあり、エコカー減税があります。エコカー減税でプリウスが首位を2年間独占しました。そのため、ある意味で効果がある施策であったと言えます。ただし、お金が儲かり安いから買うのではなく、自分のステータスと比較して高い車を買わなければと思っている偉い人が、プリウスを買ってならば言いわけが効く。それから、純粋に地球のために何とかしたいと思っていることを形に見せるには一番格好いい。つまり、心理的に買っているとも考えられる。心理的な側面まで解析をした上で、色々なことをやれると良い。だから、究極ではあるが、皆様の頭の上に風船がついていて、過去1年間の排出量に比例して大きいのか小さいのか変わると、行動が変わると思うが、もちろんこれは絶対に実現できないと思います。
- そろそろ時間でございますが、肝心の今年度の実施計画を説明いただきたいと思います。
- 事務局から資料4にもとづき、今年度の実施計画について説明が行われた。
- 資料4(4)については、住環境研究所から説明が行われた。
○安井座長
- 私の意見としては、テストを2年間通年で行いたい。なぜなら、夏のデータを見たことがないからですが、国の予算システムを全面的に変えていただく以外、打つ手はないでしょうか。
○中上委員
- データベース関連の調査について、今年はなぜ実測をやるのかという理由ですが、データベースはこれから実測で全部フォローしていくなんてことは考えておりません。要するに、説明変数の感度について、実測結果を用いて精査したいと考えております。大規模な実態調査で、どの項目に重きを置くのか、その項目はアバウトでいいのかというような仕分けを実施しておかないと、最初から考えるとミスリードしがちな部分もあると思っております。夏がないというご意見については、冬から始めて来年の夏くらいまでやりたいという要望は出しているので、連続的にエアコンまで対象期間を設定していきたいと思っております。
○安井座長
- 通年計測に対しては、何か別のシステムを本当に考えなくてはいけませんね。もしよろしければ、今年このような形でワーキングをさせていただきたいと思っています。それでは、これにて閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。
(了)