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議事録: 温室効果ガス「見える化」推進戦略会議(第1回)


(1) 研究会の概要

【開催日時】
平成20年7月1日(火) 15時00分~17時00分
【開催場所】
経済産業省別館1028会議室

(2) 出席者

【委員】
安井座長、一方井委員、稲葉委員、深津委員(麹谷委員代理)、齋藤委員、須田委員、森口委員、山本委員
【環境省】
小島地球環境審議官、南川地球環境局長、谷津審議官、徳田地球温暖化対策課長、馬場課長補佐
【オブザーバ】
君塚環境調和産業推進室長(経済産業省)、浜辺流通政策課長(代理 武田補佐)(経済産業省)、塚田健康局水道課長補佐(厚生労働省)、木内地球環境対策室長(農林水産省)、桑田環境政策課長(国土交通省)、野澤総括主任研究官(国土交通省国土交通政策研究所)
【傍聴者】
全93名

(3) 議事

【南川地球環境局長のご挨拶】

○南川地球環境局長
 どうも皆様、暑い中ありがとうございます。地球環境局長の南川でございます。第1回の「見える化」推進戦略会議ということで、お集まりいただきまして、大変感謝をしております。
 見える化という言葉自身は、1年ぐらい前まではあまり一般的ではなかったように思います。ビジュアリゼーションというのをどう訳すかということを思ってみておりましたら、あれよあれよという間に、10代の女の子が使うような呼び名になってしまいまして、私も何回も国会答弁をしているうちに見える化というのが非常に口に馴染んでしまって、自分自身だらしなく思っている次第でございます。ただ、この言葉がこれだけ普及したということは、背景にはこの4月から本格的に京都議定書の約束期間が始まったということで、多くの人が何らかの形でCO2削減等にコミットしようという気持ちが根底にあると考えております。
 そして、比較的コンサバティブな福田首相ですら、先月の初めに出されました福田ビジョンの中で低炭素社会を作るという中で、見える化についても実際に見える化という言葉を用いて、その検討を急ぐのだということを明示されています。そして、具体的に来年度から試行的な導入実験をするということも言われております。
 それからもう1つは、先月でございますがようやく温暖化対策推進法の改定案が通りました。その中でかなり具体的に国が指針を作ると、事業者が一般の方々のCO2等の温室効果ガスの削減に役立つような情報提供を含めた指針を作るということを法律に書かれております。したがって、その作業が出てくるわけでございます。これは、製品と役務ということについての取組の指針でございますけれども、国会におきましては、その役務に文言上、例えば電力等が入らないことから、これについては特に国会で見える化という言葉を使いながら修正が行われまして、電力につきましても具体的に見える化を実施していくということを新しく修正として法文上明記されたところでございます。
 それから、世界的にもカーボンフットプリント制度のISO化という動きもあるわけでございます。わが国としても、ルールづくりをヨーロッパにまかせておくのではなくて、是非その中に入っていくということがいろいろな意味で必要だと思います。
 この見える化でございますけれども、3つあると思っております。1つは消費者による温室効果ガス排出の少ない商品・サービスを選んでいただく。また、2つ目は製造事業者による商品の製造等の工程で出てくるCO2排出量の低減、3つめはカーボン・オフセットとの組み合わせによるカーボンニュートラルな商品等の普及、そういった3つの大きな効果が期待できると考えております。本日の会議は、国内においてこうした問題に造詣の深い専門家、また関係省庁にもお集まりいただいております。
 本日は第1回目でございますが、見える化のあり方を検討するにあたり、大きく2つの観点からご議論いただきたいと思っております。1つは、是非多くの方々、個人、あるいは会社を含めて、この見える化問題に取り組もうということでございます。具体的にはカーボンフットプリントの問題に取り組もうという気持ちになってもらうようなインセンティブは何か、そういうインセンティブを作る、与えるようなものにしていきたいと思っております。2つ目には一時期の流行に終わらせないためにはやはり信頼性を維持するが必要だと思っております。どうすれば見える化というものが信頼されて社会に定着して、大きな意味を長期間持ち続けるかという視点が必要でございまして、こういうことも念頭においてご議論いただければと考えております。
 私ども環境省といたしましては、経済産業省、農林水産省、国土交通省、厚生労働省等の関係省庁と連携しながらルールづくりを行っていきたい、そして低炭素社会の構築に向けまして、ライフサイクル、ビジネススタイルを変えていきたい、そういうふうに考えております。どうぞよろしくお願いいたします。

【委員のご紹介】

○馬場課長補佐
 それでは座長と委員を紹介させていただきますので、一言ずつご挨拶をお願いいたします。それでは、座長についてですが、安井先生でございます。安井座長
 安井でございます。このところなぜか環境省からお声がかかることが多くなりまして、しかも座長をやって少し頭が混乱しているかもしれませんが、ひとつよろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 京都大学の一方井先生です。

○一方井委員
 京都大学経済研究所先端政策分析研究センターで環境政策を研究させていただいております。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 井坪先生は本日欠席でございます。続きまして東京大学の稲葉先生でございます。

○稲葉委員
 東京大学人工物工学研究センターの教授をしております。同時に産総研安全化学部門の副部門長という位置付けでもございます。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 グリーン購入ネットワークから麹谷先生の代理で深津様でございます。

○深津委員
 グリーン購入ネットワークの次長をやっております深津でございます。本日は麹谷の代理で出席させていただいております。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 東北大学大学院農学研究科教授の齋藤先生でございます。

○齋藤委員
 東北大学大学院農学研究科教授の齋藤でございます。環境に調和した農業技術の開発に向けた研究を進めております。どうぞよろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 社団法人産業環境管理協会理事の須田先生でございます。

○須田委員
 ご紹介いただきました、産業環境管理協会の須田と申します。多少LCAとかタイプIII環境ラベルの運営等に携わっておりまして、そういう立場もあってお呼びいただいたのかなと思っております。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 国立環境研究所循環型社会・廃棄物研究センター長の森口先生でございます。

○森口委員
 国立環境研究所の森口でございます。現在の所属では、ごみ、3Rという分野をやらせていただいております。ごみは見えるものですから皆さん減らされることに熱心だと思うのですが、CO2は見えないものですからその重さを実感されることが少ない、そういう意味で見える化は非常に重要だと思っております。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 財団法人日本品質保証機構の山本先生でございます。

○山本委員
 財団法人日本品質保証機構の山本でございます。よろしくお願いいたします。

○馬場課長補佐
 それでは、議事の進行を座長の安井先生よろしくお願いいたします。

【議題1 見える化の進め方について】

○安井座長
 それでは時間も限られておりますので、早速議題に入りたいと思います。
 まず進め方でございますけれども、本日配布された資料は環境省にしては比較的コンパクトでございます。紙が少ないので、資料1、資料2、及び参考資料に関しまして、事務局からご説明いただきたいと思います。

○馬場課長補佐
 資料1、資料2についての説明(省略)。

○事務局
 参考資料1について説明(省略)。

○安井座長
 ありがとうございました。まとめたいと思いますが、進行メモに比べてご協力の賜物ですが、ものすごく早く進行をしております。
 せっかくですから、参考資料2はISOについてですので、後で稲葉委員に一言、それより先に参考資料3でございますが、こちらは経済産業省からお持ちいただいたものですが簡単にご説明いただきますか。参考資料4は農林水産省からお持ちいただきましたが、こちらにつきましてもご説明いただきたいと思います。時間は適当でお願いいたします。

○武田オブザーバ(経済産業省)
 経済産業省の流通政策課から参りました、ネームプレートには浜辺と書かれておりますが、課長が他の会議で遅れておりますので、代理となり大変申し訳ございません。課長の代わりに説明させていただきます。座って失礼いたします。
 参考資料3ですけれども、経済産業省がやろうとしておりますのは、参考資料1で国内外の動向をご紹介いただきましたが、イギリスの事例にかなり近いと思っていただければと思います。消費者の、例えば主婦の方々がスーパー等で日常手に取る商品についてライフサイクルベースでCO2排出量を見える化していくということを事業者の方々と一緒になってやるというのが基本的なコンセプトでございます。
 具体的な進め方としては、2つの場を設けております。1つはカーボンフットプリント制度の実用化・普及推進研究会ということで、有識者、事業者、民間団体の方にご参加いただいて、実際に算定、評価、そして表示というものをやっていただく。やっていただく中で、課題等を整理して普及に向けた検討を行うということです。後ほどご説明しますが、かなり事業者の立場での参加が増えております。
 細かい技術的な課題を議論する場としては、CO2排出量の算定・表示・評価に関する検討会を設けてあります。ここでは制度のあり方について、具体的には目的、経緯、基本的要素、算定・表示方法、正確性、信頼性を担保するシステムのあり方、オフセット等との関係について、有識者の方に集まっていただいてご議論いただくことになっております。
 2ページ目について、ここでは2つの場がどのような順序で動いていくか説明してあります。まず、右の参加企業ですが、現在20社以上あります。小売業からイオン、セブンイレブン、ローソン等の企業にご参加いただいております。また、サッポロビール、味の素等にもご参加いただいております。下はスケジュール表です。実用化・普及推進研究会については、実際に算定して表示すると申しましたが、2008年12月のエコプロダクツ展2008にサンプル展示することを目指しています。研究会の第1回目は6月16日に終わっておりまして、9月、11月にも検討会を開く予定です。そして12月に算定・表示したものを展示します。展示することによって、同時にセミナー等も行うことによって、消費者のリアクション等も調査して、それをフィードバックした上で報告書をまとめます。細かいルール等の検討については、9月以降に中間報告ができればと考えています。
 スケジュールは3ページ目にもあります。本研究会では今年度中にガイドラインをまとめます。平成21年度以降も細かい点については、試行品、参加企業を増やして頂いて進めていきたいと思います。下のISOについては、コロンビアから帰国された稲葉委員からご説明があるかと思いますが、実際の作業は12月以降に進むと思われます。これについては、国内対応委員会で各省庁のご協力を頂きながら議論していきたいと思っています。

○木内オブザーバ(農林水産省)
 参考資料4についてのご説明させていただきます。農林水産省の取組について、資料中に第2回食料・農業・農村政策審議会と書いてありますが、この審議会での検討体制は、林政審議会、水産政策審議会も含めて3つの地球環境小委員会があって、この3つには21名の委員がおられますが、これらが合同で省CO2の見える化について検討していくという位置づけで始まりました。
 これまでの取組については上の方にありますが、食料の輸送に伴う燃料消費の抑制という観点から、地産地消、フードマイレージという取組も含めて、そういう観点から燃料の省エネ、地球温暖化の抑制に発信するという考え方がありました。もう1つは環境ラベル、いわゆる低農薬や有機野菜というラベルの検証もありました。こうした背景から、目的としては農林水産省ですので、農林水産関係者が省エネ、CO2排出削減に資するような生産行動に取り組めるようなインセンティブとなるような見える化を進めていくということです。もちろん、消費者の選択に資するというのは大前提でございます。農林水産業者が行動を起こすということ、もう1つは食料の自給率を高めるという点に貢献できるような取組にならないかということが念頭にありました。
 これからの取組としては、CO2排出削減効果30%以上という表示イメージがあります。いろいろと考えて作成しましたが、典型的な例としては英国の例があります。何グラム排出もしくはLCA算定等があります。農産物だけには限らないですが、いろいろな生産工程等、いわゆる環境の違い等の条件で異なってくると思われます。必ずしも前例にとらわれず日本的な見える化ができればいいという発想から表示イメージを作成しました。
 前提の考え方としてこれから検討していくという意味で、2ページ目にスケジュールがございます。上の方にありますが、6月2日、6月24日に検討会を開催しました。具体的な検討は7月23日から進めまして、関係業者からもヒアリングを行いながら、最後は3月に向けてまとめていきたいと考えています。

○稲葉委員
 参考資料2はISO14040と14044のことしか書いておりませんので、はじめに参考資料1を用いて、昨日までボコタ(コロンビア)で開催されていたISOでの新しい取り組みについての議論についてお話します。
 参考資料1の最後にISOについて書かれていますが、TC207がEnvironmental Management(環境マネジメント)の活動であります。その中のSub-Committee(SC)にあるSC5がライフサイクルアセスメントの規格担当であり、日本からのエキスパートとして参加してきました。ここではISO14040と14044を2006年に作成しましたが、その際の議長も担当しました。
 ボゴタではSC7でCO2削減をどうするか議論してきたところですが、この中でワーキンググループ(WG)2ができまして、このWG2がカーボンフットプリントの規格を作っていくわけです。カーボンフットプリントの新しい規格はパート1とパート2に分かれておりまして、パート1はライフサイクルアセスメントの規格SC5を踏襲する。具体的には14040と14044を踏襲します。パート2はコミュニケーションと言っておりまして、測定したCO2量を消費者にどのように見せていくかを議論しています。この部分はSC3の環境ラベルとして既に規格があるISO14025を基礎にしてパート2を進めていくことになっております。新しいSC7のWG2で取り扱うことが決まった新しい規格というのは、SC5のLCAの部分を定量化するのはパート1で、SC3を基礎としたコミュニケーションがパート3ということです。
 議論でもめた点は、英国のPAS2050の取り扱いで、これはスウェーデンが後押ししています。ここでは、計算はPAS2050で、コミュニケーションのところはスウェーデンがこれまでに取り組んできた内容でやりたいということでした。他の国は、英国とスウェーデンだけの先行を許したくないということで、例えば規格の内容をPAS2050に基づくのか、あるいはこれまでのISOに基づくのかという議論がありました。実際には、やはりISOの世界なので、これまでにあるISOを大事にしていく方向で決まりました。したがって、資料2の2ページにあるISO14040の構成、そして5ページにあるISO14044の構成を中心として、カーボンフットプリントとしての特徴を書き込んでいく作業を進めていくということでボゴタでは決定しました。
 また、資料中にはISO14040と14044の説明しかありませんが、本来であればパート2に属するISO14025の説明があって、これともセットにまとめるべきです。以上、簡単ですがISOの規格についての説明にさせていただきます。

○安井座長
 今日の議論の進め方ですが、本委員会のマンデートは何かを確認する必要があります。本戦略会議は見える化について、資料2の2ページ目の下の方にスケジュールが書いてあります。年度内としては、見える化を行う対象商品・サービスの選定、対象商品・サービスにCO2排出量の計算方法・表示ガイドライン化、そして今のISOとの関係もご議論いただきたい。それから、こういった品目にラベリングしたときに、国民の購買活動に影響があるのか影響分析を行うとあります。こういったスケジュールでございます。
 体制については、見える化推進戦略会議で対象商品・サービスを選定し、その下にある研究会で議論する。あるいは表示方法等もこの研究会で議論することになります。
 本日は第1回目ですが、どこまで議論するのか。まずは対象商品・サービスを選定したいと思います。まず、資料2の1ページ目にあるとおり、他の省庁の製品・サービスと重複しないようにということですが、これは難しいですね。これを具体的にどうやっていくかは事務局に確認しながらの作業になるだろうと思います。委員の皆さんが省庁間の壁がどこにあるか把握できていれば別ですが、本日はちょっとグレーな議論になるかもしれません。ただ、この点は別途議論すればいいので、本日はあまり意識せずに議論を進めていきたいと思います。
 本日は見える化を行う対象商品・サービスについて議論したいと思います。商品については資料中に例がないですが、サービスについては、いくつか資料中に例があります。まず、見える化とは何かを議論したいですが、ご意見はありますでしょうか。私自身、最終的に落とし込んで行く点について、資料2にあるとおり消費者のライフスタイルではないかと思います。例えば、家庭内におけるCO2排出量の見える化なんて、例えば電気をつけっぱなしにする、冷蔵庫を開けたままにしてくとか、日常生活の見える化を検討会で対象とするのか、私はよく分からないです。たぶん含まれると思いますが、そういった事例を測定するサービスをどう考えるのか、ちょっと分かりにくいですね。答えはありますでしょうか。

○馬場課長補佐
 今回は幅広く議論いただきたいと考えておりまして、家庭内の日常生活における見える化ということでは、サービスの例としては電気、ガス、水道等の公共サービスを対象とするという考え方もあるでしょうし、むしろ家庭に着目していろいろな家庭内での行動パターンによる見る化もあると思います。いろいろとご意見を頂きまして、それを事務局で整理して取り組んでいく方法でいきたいと思います。

○安井座長
 ということで、家庭内での日常生活も対象に含まれるということですね。
 例えば、今日起きてから会場に来るまでに使用したバスや電車等が見える化の対象になるというのは分かるが、個人の行動は見える化の対象に含まれるのでしょうか。要するに、森口先生はつくばエキスプレスを利用されたと思いますが、その後の行動も含めて見える化するサービスもあるということでよいでしょうか。

○馬場課長補佐
 そういった考えは1つの工夫だと思われます。資料中には航空、鉄道、バス、タクシーのサービスについて見える化をすると書いてありますが、それと組み合わせて、例えば鉄道とバスを組み合わせるということであれば、それを足し算する方法もあると考えます。

○安井座長
 組み合わせも拡大して対象に含まれるということでした。
 これまでに議論から、こういう商品はどうなのかというご意見はありますか。

○森口委員
 安井座長のお話と少し関係しますが、商品・サービスの例があって、これを拡大していくという方向だと思いますが、あえてそのようなアプローチではなく、もっとトップダウン的に最大限広げたら何があるのかということをお話したいと思います。
 全部で3つ申し上げたいと思いますが、まず1つはライフサイクルで考えると上流、中流、下流の3つがありますが、カーボンフットプリントで議論されているのは、上流すなわち生産されて消費する手前までのCO2排出量の表示だと思います。ビール缶のように捨ててしまうのとリサイクルするのとの関係性はあるかとも思いますが、基本的にはカーボンフットプリントは作る段階が中心かと思います。一方で、使用段階でCO2を排出するもの、例えば、自動車であるとか家電製品であるとかは、もちろん販売するときに何時間使うとCO2をどれくらい出すという表示もあるのですが、そんなことよりも使用時にどれくらいCO2が出ているか分かればという意見もあります。消費者の立場から気になるのはお金であって、例えばエコドライブ等の場合は、ガソリンの単価を入力すれば走行中にガソリン消費量が(金額で)表示されるということも簡単な作業です。これだけガソリンが高い時代なので、何もCO2を見せなくても消費者がCO2排出量を削減するために見せるものは何かについて、CO2排出量の数値を正しく見せることも重要ですが、削減行動につながる見せ方をしてはどうかというのが一番目のポイントです。
 廃棄物を専門に研究している視点からは、下流といいますか捨てる段階でどのくらいCO2が排出されるのか表示していただければ、循環型社会及び低炭素社会づくりが同時に進むのではないかと思います。
 2点目について、つくばでの市民向けのイベントの際に、カーボンフットプリントのような情報のうち、どのような情報が欲しいか尋ねたことがありますが、その結果だと総合的な情報が欲しいということでした。例えばスーパーで買い物したときに、商品ごとのCO2排出量もありますが、そもそも買い物でどれくらいのCO2を排出したかの情報が欲しいということでした。1つ1つの製品によるCO2排出量が多少は正確でなくてもいいですが、何を購入するとCO2排出と関係しているのか分かるように、まずは総量としてCO2排出量を把握したいということでした。温室効果ガス排出インベントリに関わった経験からですが、正確な数字を記憶していないですが、家庭からの直接排出のCO2量は、例えば灯油、都市ガス、電力、ガソリン等を含めて約20%になります。ただ家庭での消費に伴って排出される分は50%程度になります。これには例えば食料品の購入に伴って排出される分である約6%も含まれます。こういうマクロな数字は日本が得意としている産業連関表を用いたデータがかなり蓄積されています。こういう結果をまず示して、個別の数字をどこまでつめていくかという議論になるのではないでしょうか。
 3つ目の点は悩ましい話なのですが、カーボンフットプリントの計算をする際、日本で出ているCO2以外も当然含まれてきます。食品なんかもそうなります。農林水産省のご説明で食料自給率の話題もありましたが、食料自給率を高めると日本のCO2排出量は増えてしまうというジレンマがあります。また、例えばアルミ缶のリサイクルをしても日本のCO2排出量が減るのではなくて、輸入相手国の排出量が減ることになります。こうした現実はしっかりカウントできるシステムが求められます。第二約束期間に向けて、どこのCO2排出量が減る仕組みなのかを少し考えておかないと、いわゆる日本の排出量の削減に結びつかない事例もあるということです。

○安井座長
 ありがとうございました。かなり本質的な話でした。地球環境問題は地球益が基本なのですが、国益とのバランスもありますね。次は稲葉委員どうぞ。

○稲葉委員
 私からは2つ意見があります。1つ目は森口委員のご意見の延長になりますが、国際的には持続可能な消費という問題をどう考えるかという流れになっています。2002年のヨハネスブルクサミットで持続可能な消費と生産について取り組むことになったと理解しています。数年前に持続可能な消費についてのプロジェクトを経済産業省で実施しましたが、その際にも安井座長や森口委員のお助けをいただきました。消費生活全体でCO2を減らしていくための考え方で、衣、食、移動の3分野が重要だということになっています。この3つの中で食を取り上げて、今まで食品のカーボンフットプリントというかLCAをやるということで、日本LCA学会の中に食品研究会を設置し3年間進めてきた結果として、いま民間各社がカーボンフットプリントを実施しようと考えればすぐに実施できる段階になっています。
 もう1点は土地利用の問題になります。海外から輸入するもの、とくに食料品になると生産における土地利用でCO2がどれくらい排出されているのかをカーボンフットプリントでどのよう取り込んでいくのか。大きく考えるとCDMのような考え方にもなるかもしれないし、海外の土地利用との関係について、国際的な取り決めの中で変わってくることもあるので、それとカーボンフットプリントの実際のすり合わせをどうするか、この点について環境省に考えて欲しい。経済産業省の研究会にかなり関与していますが、経済産業省では、どちらかというと実際にやっている産業を対象にしてベストアベイラブルのデータでCO2を実際に計算するということをやって行くことになると思います。環境省では、将来的な姿をどう描くかについて議論していきたい。

○安井座長
 ありがとうございます。なかなか本日の議題に入りませんが、本質的に重要なご意見でした。次は一方井委員お願いします。

○一方井委員
 3つの点についてお話したいと思います。冒頭に南川局長より低炭素社会のお話がありましたが、そのような社会に移行するためにはありとあらゆる手段を講じる必要があると思います。そういう意味では見える化も大変重要な要素のひとつだと認識しています。ただ、日本の最大の問題はCO2に価格がついていないことであり、言ってみれば経済にCO2削減がきちんと組み込まれていないことであります。ヨーロッパを中心に見える化が進んでいるのは、その背景に排出量取引や炭素税等により、CO2に価格がついていることがあり、見える化はそれを補完する役割を果たしているのではないかと理解しています。その意味で、政府の皆さんにお願いですが、二酸化炭素の経済への組み込みも是非考えて欲しいと思います。
 2つ目は森口委員のお話と関係するのですが、何を見せるのかということを考えたいと思います。CO2が何からどのくらい排出されるかということは大事ですが、例えば、消費者側の立場からは、CO2削減行動のうち何をするのが一番効果的なのかが見えることが重要ではないか。具体的には太陽光発電パネルの設置もあるしヒートポンプなどの導入などの取組もある。ただし、経済学的に言えば、これらの取組によるCO2削減の限界削減費用はどれくらいなのかというのがよく分からない。今回の研究会とは関係ないかもしれないが、実は、産業界の中でも限界削減費用はよく見えていないので、これについて見える化が行われれば行動に具体的に影響を与えてくるのではないかと考えています。ただし、ここまでは議論を広げないのでしょうね。
 3つ目は、農林水産省、経済産業省、ISOの話がありましたが、これらの取組とどのように棲み分けていくのかという問題です。これについては基本的に事務局の方針にしたがいたいと思いますが、現在排出量取引の世界では、各国の取組がばらばらになってきたときに、国境でそれを調整をしようという動きがあります。その際に、二酸化炭素等の見える化にかかる規格がそれぞれの国でどう決まっているかというのが大切になるのではないでしょうか。WTOでの議論では、将来的にはできるだけ国際的な規格で取り組むのが望ましいとある。したがって、ISOの取組は重要ではないかと思われます。その面では、我々の議論を最終的にISOに反映させていくことが重要と基本だと思いますが、いかがでしょうか。

○安井座長
 今のご意見はかなり質問も含まれていました。最後の点について、落としどころはISOに何かを言っていくことを委員会で議論するのでしょうか。

○馬場課長補佐
 参考資料3の3ページに国内対応委員会とございまして、ここでは関係省庁が入った形でISOについて議論していきます。環境省を含めて議論されますので、本研究会の議論内容を反映することも可能です。
 ただ、ISOがかなり細かい技術的な話になってきますと、議論の内容が整合してこないのではないかと思います。むしろ、この検討会では、何について見える化をしていくかということを議論いただきたいと思います。

○武田オブザーバ(経済産業省)
 1点だけ補足させていただきます。国内対応委員会の設置に向けて準備を進めております。おそらく、今回のコロンビアの会合結果から議論が始まり、7月中に発足できるのではないかと考えています。その際には環境省や農林水産省にもご参加いただく予定です。

○安井座長
 次は山本委員お願いします。

○山本委員
 どこまでやるかということに関して関連があると思いますが、6月16日に環境省から報道発表された高知県-ルミネモデルというのがあります。高知県から発行されたVERを新宿にあるルミネでオフセット用に使用するというものです。これは一方井委員のご指摘とも関連しますが、ルミネが購入するということなので、カーボンに価格が付くということになります。
 午前中にルミネが何をやるかということで話しをしてきましたが、ルミネとしては、CO2削減に積極的に取り組んできたが、これ以上の取組には社員1人1人が意識を持って変わっていかなければならないということで、社員の通勤に伴うCO2をオフセットしようという試みをしています。そのためにアンケートを取ることになっておりまして、この点について午前中打ち合わせをしてきました。基本的には通勤がJRか私鉄か地下鉄かバスかが交通手段になっていますが、できる限り社員に自覚してもらうために、今の交通ルートと別に可能な限り削減を意識した交通ルートを2~3つ提案していただいて、それを3ヶ月程度実施してもらうということを考えています。その際に、どの路線を選んだら最もエコなのか分からないという課題がありました。
 既に飛行機関連では、2009年6月からANAはボーイング767から787を世界で初めて導入することになっています。ボーイング787はエコ・ジェットであり、767に比べると2割のCO2削減を可能にします。単に飛行機か電車か自動車かということだけでなく、もう一歩進んで飛行機の中でも787を使って、それが広まっていくということでエコ・ジェットが広がっていけば、まさに見える化ではないかと思います。
 また、ルミネで取組を実施するにあたり、どのルートで通勤すれば最もエコなのか考えたいが、路線別の排出係数が分からないと排出量も分からない。いろいろ調べましたが、排出係数の情報はない。地下鉄であれば架線から電気を得て走っていますが、地下鉄であればそれ以外に照明、空調分のCO2もかなりある。地下鉄でもいろいろな排出係数の見方がある。エコ度についても、どこまでやるかということを細かく出してもらえれば、社員が通勤ルートを選ぶ際にエコ電車が汎用になっていくということでしたが、現状ではどこまでやるかということが議論になると思います。

○安井座長
 どこまでやるかを議論して欲しいということでしょうか。

○山本委員
 何をやるかということなのかもしれませんが、何をどこまでやるかということも必要だと考えます。

○安井座長
 この研究会は、どちらかというと最初に対象品目を決めて、その下に品目別で研究会を設置して、例えば交通機関について行われるのだと思います。品目別研究会での議論ではないかと思います。
 関係情報として、タクシーは空車で走らせないために、乗ったほうがエコだという話もあります。飛行機でもガラガラの飛行機に乗った場合はどうかという議論もあります。それでは、深津委員お願いします。

○深津代理
 サービスの例として5点ほど上がっていますが、消費者が排出量の少ない商品を選択するという前提があるとすると、電気、ガス、水道等の公共サービスを消費者が選択できるかというと難しい。電車についても私は小田急を使っていますが、なかなか選択はできない。逆にホテルに関しては出張や旅行で使いますが、値段にもよりますが選択肢はあるのではないかと思います。電気や水道等の公共サービス、あるいは電車等の交通機関は自分達の行動を変えると、どのぐらいCO2が減る可能性があるのかを示して消費者に普及開発する効果があるのではないかということが1つあります。逆に比較して選ばせるということでいえば、ホテル等の選択肢がある商品分野の可能性があると思います。2つの方向性があるように感じました。

○安井座長
 こ他の2人からもご意見も伺いたいと思います。須田委員お願いします。

○須田委員
 森口委員や稲葉委員のご意見にもありましたが、どこにスタンスをおくのかという全体感は大切だと思っていますが、ここでのカーボンフットプリントを考えていく上では、何らかの実行していく制度的というかプログラムを作っていくということを考えると、どう利用するかというときに、経済産業省や農林水産省も考えていくと思いますが、トータル的な制度としては、その制度をどのようなスタンスで考えるのかが大事なのだと思います。南川局長と同じで見える化という言葉はやわらかいと思いますが、この分野では同じように気付き(awareness)という言葉をよく聞きますが、要は消費者・市民、つまり国民全体が気付きをしていくときに、この見える化が重要なのです。気付かせるためには見せなくてはならないのは当たり前ですので、やはりそこに重点をある程度絞った検討をやって、このカーボンフットプリントとして意味のある運用ができるということをつめるのは大事だと思います。
 私も経済産業省の検討会にも入っていますが、資料2の冒頭にもあるように他の省庁とオーバーラップしている議論は避けなければと思います。資料2で言えば、[1]見える化事業の進め方という全体感、[2]温室効果ガス排出量の計算・表示・活用方法の活用方法の部分、そして[4]国民の購買活動への影響分析等、国民の行動とどう結びつくかについて、カーボンフットプリントをどうするべきという議論をしていただければと思います。
 とりわけ、計算とか表示については経済産業省でかなり進んでいるので、その辺が重ならなければいいと思います。
 資料2にもあるサービスの例については、生活における電力使用量とも関係しており、電力1kWhあたりのCO2排出量等、環境家計簿とも結びつけた市民運動もあると思います。

○安井座長
 ありがとうございます。次は齊藤委員お願いします。

○齊藤委員
 食品LCAの研究をしておりまして、そういった観点から経済産業省の委員をしていますので、内容的にそこでの意見とオーバーラップしてしまいます。
 既に他の委員からご指摘もありましたが、食品いわゆる農産物の方から見える化を考えると、農林水産省の資料にはイメージとしてCO2が30%減れば消費者が選択をするというのがありました。確かにそういって意見もあるかとも思いますが、これまでの傾向からは、消費者は省エネというよりも安全性で選んでいると思われます。将来的に省エネを示すラベルが食品に貼られたときに、どの程度消費者の消費行動を変えるかは個人的には疑問があります。国立環境研究所の「低炭素社会に向けた12の方策」の中にも、旬の野菜を食べましょうと指摘されており、まさにご指摘の通りでありますが、でも冬にトマトを食べないかと言えば、結果として食べると思われます。
 次に、零細の農家の場合には、省エネ技術を導入した場合に将来的にカーボン・オフセットにつながるインセンティブが働きにくい。例えば、インセンティブを食の生産の場にどのように働かせるかは、見える化を成立させるためには大切だと考えます。
 また、土地利用の問題については、農業生産を持続させ、あるいは水産分野の場合には、環境を持続的に利用するという、いわゆるエネルギーを使って環境を持続的に利用していくという評価が難しい。見える化の際に、消費者も生産者も納得のいく方法があるのか検討していきたいと思います。

○安井座長
 ご意見が一巡しました。残りの時間では、対象品目、サービス及び製品について、これまでの議論だと経済産業省ではかなり進んでいるようですが、スーパー等については、この委員会ではどう考えればよいのでしょうか。

○徳田地球温暖化対策課長
 いろいろなご意見ありがとうございました。私どもとしては、いろいろな商品・サービスについて、これは経済産業省とか、これは農林水産省とか縦割りして最初から決めるのは良いのかどうかと考えています。最終的にそうなるのはいいですが、そもそも見える化とは何なのかについて、もう少し上流から話していきたいと考えています。
 商品の見える化にしても、買い物の際にザクッとCO2量が出ればという意見がありましたが、コーラやポテトチップが何グラムCO2排出と表示するだけでなくて、これでCO2が減っていく、消費行動に結びついていくのかというと、それには若干の疑問があります。どちらのコーラのCO2排出量が少ないのかではなくて、平均的でこういった商品だと大体このぐらいCO2が排出されるということになって、そこで初めて企業ごとの平均的となものとの差別化が生まれれば、企業にとっても良いし、消費者にとってもCO2排出の少ない商品を購入することで満足してもらえる。世界全体でCO2排出量が減るということになると思います。
 ということは、個別の商品のCO2排出量を計算するだけでなくて、平均的に例えばリンゴであればどの程度のCO2が排出されているかというデータベースのようなものを整備する必要もあると思います。これを経済産業省が用意するならそれはいい。さらに、個々の企業が実際にカーボンフットプリントを計算する際に、場合によっては100円の商品にも関わらず、CO2排出量の計算で1,000円ぐらいかかったりするかもしれない。1つの製品はいろいろな材料から構成されており、アメリカからか中国からかで、また各地での生産方法についても調べようとすれば膨大な費用がかかる。それを省くために、基礎的なデータを整備し、これを使って個々に企業が取り組む方法もあると思います。
 また、どこまでやるかということですが、見える化によってCO2削減の機運を高めたいのであって、その結果としてCO2排出量を削減するのが目的であって、見える化のためのエネルギー消費が上回ってしまっては困るので、どこかで割り切る必要があります。他の対策とは違う点ですが、あまり厳密さを追求してもしょうがないと思います。この辺で割り切るという判断もどこかで考えなければならない。こうした点についても検討する必要があります。そういうご意見も出していただいて、その上で次回以降は分科会に分かれて個別に検討していったらどうかと思います。その中では個別の商品について検討してもいいと思います。それぞれの省庁で検討していきますが、抜けている箇所等も個別に検討していけばいいと考えます。
 また、見える化の際にLCA的なアプローチがありますが、商品・サービスによってはLCA的なアプローチが必要ないかもしれない。そういった点も検討してもいいかと思います。ご指摘のあった表示方法や活用方法も検討していければいいと思います。

○南川地球環境局長
 1点だけ質問したいのですが、稲葉委員からのボコタの会議のお話で、イギリスで作った規格をそのまま使ったらいいのではないかと主張する国があったそうですが、その国のねらいは何でしょうか。

○稲葉委員
 ねらいという意味がよく分からないのですが、消費行動をいかに導くか、それに伴って製造者のCO2の排出を減らしていきたいのは、最も大きなねらいだと思います。

○南川地球環境局長
 よく言われることですが、ヨーロッパは中国の製品を追い出すためにやっているのではないかという意見がありますが、この点はどうでしょうか。

○稲葉委員
 ISOの議論の中で、表立ってそのような話は出ておりません。ISOというのはトレードバリアを少なくするためにいかに共通に議論するかですので、イギリスが自国の有利のためにという発言は絶対にありません。本質的に同じルールでやるのが大切だと皆が認識していると思います。
 もう1点ですが、参考資料1の7ページにある、「削減できない場合は継続してマークを添付することはできない」というのは言いすぎだと思います。参考資料2にPAS2050、PERF、そしてPECGがありますが、PAS2050以外のこれら2つの提案としてこのような意見がありますが、決定しているわけではありません。また、PAS2050は6月に改訂版を公表予定とありますが、9月末ぐらいに改訂版としてフィックスすると聞いています。まだまだイギリスの提案にしてもドラフト段階だと認識された方がいいと思います。ISOの進め方によっては、イギリスもPAS2050を改良してくる可能性もありますので、まだまだ動くものであるということを理解していただきたい。

○安井座長
 他省庁でも大きなことが行われているようですし、この場にはエキスパートにご参加いただいていろいろとご指摘いただいているが、他のところでは考えないというようなことを出していってもいいのではないかという気もします。経済産業省がスーパーでの商品をカバーしているのであればいいし、場合によっては農林水産省がカバーしている分野もあるかもしれない。そうであれば日常品はカバーされているのかと思う。
 それ以外ではクルマはどうなっているのか。燃費計の見える化でわれわれの言いたいことは何なのか。例えば燃費計の義務化なのかもしれない。そういった意見も提案されてもいいのかもしれないと思います。こんなサービスはどうだろうというご意見はありませんでしょうか。

○森口委員
 2巡目ということで、少し具体的な意見を述べたいと思います。ここでの作業として適切かは別として、いろいろな場で国民に対してなるべく正確に伝えていくべきと考えている点について申し上げます。
 1つはクルマの話がでておりますが、それから家電製品もそうですが、耐久消費材を買い換えた方がいいのか古いのを使い続けた方がいいのかという議論があります。見える化の議論とは若干異なると思いますが、消費者の行動を考える上では重要であり、そこの情報提供をどういう仕組みで誰がどうしていくべきか非常に難しいと思っています。経済産業省の家電リサイクル法の関係でリユース・リサイクル基準というのに関わっておりますが、そこでは古いものはリユースせずに壊してリサイクルした方がいいのではという意見があります。LCAだと生産段階でのCO2排出量を計算はできるが、資源を使っているとかCO2だけで換算できないものがあって、正直なところいつ買い換えるべきかについてお答えできる情報を持ち合わせていないのです。買い換えるという消費行動は持続可能な消費とは異なるとも考えますし、場合によっては買い換えるという行動がある種のリバウンドにもつながるとも考えますし、難しい問題だと思います。
 もう少し簡単なところですと、電球型蛍光灯は本当に効果的なのかということを正確に数字で消費者に示していかないと分からないのではないかと思います。かなり使用段階でエネルギーを消費するものに対して、製造段階のアセスメントをした上でお墨付きを与えないと、企業の出す情報も、政府の出す情報も怪しいという議論もあるので、それなりにしっかりやっていかないと消費者の行動には結びつかないのではないかと思います。
 もう1つ具体的な話ですと、例えばJR東海が比較広告を出していますが、飛行機と新幹線の利用に伴うエネルギー消費については、一度は移動に伴うエネルギーだけではなく回りのものも含めて公平に計算して見せていかないと、なかなかモーダルシフトも(どれだけ効果があるか)言い切れないかと思います。交通については、鉄道とかバス等の公共交通機関は環境に良いというのは簡単ですが、逆に言えばそういうところにしか走っていないという側面もあります。ある程度の乗客数がないといけない。路線探索ソフト等では移動に伴うCO2排出量も計算されているが、こうした乗客数(による効率の差異)も含めて情報提供していかないといけないと思います。
 交通は大事かなと思います。今日も飛行機の話がありましたが、ICAOでも情報提供されていますが、飛行機にはあまり選択肢がない。ある程度行動の選択肢があるものでないと削減には結びつかないと思います。選べるというのは例えば複数のメーカーが同じものを作っているときであり、A社とB社のものがあり、その中で消費者がよりCO2排出量の少ないものを買おうということであれば、その中でまた競争が働いて同じものの中でA社もB社もCO2排出量が削減されていくということをねらっていくのでしょうか。
 また、単純に量を削減するのか、これまで使っていたお金を別のところで使うのかだと思います。先程タクシーの話もありましたが、タクシーは金額あたりのCO2排出量が必ずしも低いとは言えなくて、金額が高いですから、タクシー代を使うということはその分だけ他に使うお金が減るということになります。持続可能な消費というお話もありましたが、節約してお金が浮いたら、その分だけ他で使うわけですから、排出量がゼロというのは間違っていて、しかし同じお金を使うのであれば、CO2排出量が少ない方法を見せていく必要があると思います。
 一方井委員が限界削減費用の話をされましたが、お金を使うというのは必ず何らかの形でCO2が排出される。しかしお金を使うというのは消費者にとっては豊かさでありそこを切り詰めるという意味ではない。同じお金を使ってCO2排出量の少ない消費行動もあるのであれば、そこに誘導していく方法があると思います。消費サイドを変えていくのか、同じものを買うにしても、よりCO2排出量が少ない方向に生産サイドを誘導するために、つまり消費サイドがそういうパワーを持っていますということで誘導していくのか、どうするかによって対象とする商品やサービスも変わってくるかと思います。

○安井座長
 最初は比較的個別のお話でしたが、最後は全体的なご意見も頂きました。他にご意見ありますでしょうか。稲葉委員お願いします。

○稲葉委員
 先程、徳田課長からデータをどうするかというお話がありました。データをたくさん集める必要があって商品価格よりもお金がかかったらどうかというご指摘もありましたが、実際にはプロセスを積み上げるのと産業連関表のデータを使うのが国際的な方法としてISOの中でも議論があるので、あまり直近のことで心配することはないだろうと思います。
 もう1つは削減するかどうかという点についてですが、ISOの中でも削減しなければいけないというのは議論の最中です。削減量でいくのか、今のままの排出量を示すのかまだまだ議論中です。今から申し上げるのは私の理解ですが、カーボンフットプリントは食品のカロリー表示と同じようにあらゆるものについており、気にする人は気にして欲しいという一般的な情報インフラとして、大きな長期的な流れの中で使われてゆくように思います。カロリー表示がメタボの人を減らしていこうという広い情報開示として使われてゆくように、カーボンフットプリントもCO2削減に向けた一般的情報として使われてゆくのだと思います。しかし、一般的情報として使っていくのか、それとも、もっとCO2を減らすための直接的なツールに使うのか、ここの議論は非常に重要だと思ってまして、私は食品のカロリー表示と同じように、あまねく製品にいきわたることによって長期的にCO2排出量の削減に向かわせると考えています。
 もう1つISOで表立った議論にはなりませんが、仲間内ではカーボン・オフセットとの関係が議論されています。わが社はカーボン・オフセットしているから、商品に添付する排出量を減らして欲しいという意見が必ず出てくると思われます。LCAの規則では1つの会社(プロセス)から出てくる製品に対して排出量をどう配分するかは既に決まっている。カーボン・オフセットでは、1つの企業がカーボン・オフセットするために排出権を購入することになる。それを1つ1つの製品に割り当てる方法はないと思います。そういうオフセットで欠けているものを明確にした上でカーボンフットプリントとどう関連付けていくか、環境省として必要な議論だと思いますし、私も協力していきたい。

○安井座長
 高度なご意見を頂きました。それでは山本委員お願いします。

○山本委員
 資料2の信頼性の確保に関してですが、先程からISO等の国際整合性が取れた形が大事というご意見だったと思いますが、信頼性の確保についても、誰が認証するのか、数字を確認するのかが重要になっています。特にISOの世界ではConflict & Interestについて、要は利害関係について厳しくみており、下手をすると審査資格を剥奪するとか停止することになっているので、常に同じ判断で公平・透明性を保つということが重要なことだと思いますので、これをなくして信頼性の確保はできないと思いますので、この点も議論して頂きたいと思います。
 もう1つは社会的コストについてですが、検証や審査でコスト高になると言われるが、そうではなくてルールありきです。検証はルールに基づいているかを確認するのであり、ルールが簡単でれば検証も簡単になるということを申し上げたい。

○安井座長
 一方井委員お願いします。

○一方井委員
 森口委員のご意見を聞いていてなかなか難しい問題だと思うのは、正確に比較できるところまでもって行ければいいが、徳田課長からのご意見にもあったとおりどこまでつっこめばいいのかその判断が難しいという議論にも関わってくると思います。
 個人的な意見としては、大きな選択に関わる話というのは本来的には炭素税なりキャップつき排出量取引の導入等で温室効果ガスに価格付けを行い、市場の中で総合的なものを勘案しながら選択していくのだと思っておりまして、情報だけで選択していくのは難しいと考えております。そういう意味で徳田課長のお話にあったように、いろいろな商品等全てに平均的な数字を付け、それよりも多いか少ないかというような情報はあってもいいように思います。もし他の省庁でそういったアプローチをしていなければ、この研究会独自のアプローチになるかと思います。

○安井座長
 あまり時間がなくなってきましたが、私からも具体的な意見を申し上げたいと思います。
 例えばITを活用すると、人が動かなくなるからCO2排出量が減るという議論があります。テレビ会議等がありますが、しっかり評価しておかないと怪しい面もある。家庭内の公共サービスであれば電気、ガス、水道がありますが、例えば電気とガスは各会社がいろいろな宣伝をしていますが、その中で給湯を考えたときに本当にいいのかどうか。給湯とはサービスだと思いますが、そんなことでもしっかり評価する必要があります。
 ライフサイクルコスティングの話にもなるが、日本のようなところで断熱を完全にやった家を造るのは本当にいいことなのか等、家の設計にかかわる話でもあるが、これも設計サービスであり、そういう提案もあるように思います。

○南川地球環境局長
 我々も今日の議論を再度整理してから相談したいと思いますが、稲葉委員ご指摘のとおり最近ではメタボの本がよく出ており、記録していけば痩せるということも書いてあります。もう1つの要望としては、温暖化対策に対する批判のうち、海外からCDM由来のクレジットを高価で購入してくるというものがありますが、それだったら国内でのカーボン・オフセットも含めていろいろな対策を掘り出せという意見もあります。
 現状の対策はある程度規模の大きなケースですので、それ以外の一次産業を含めてもっと対策をやるべきという意見もあって、そういう手段にできないだろうかという意見もあります。慢性的な対策、そして個人のカロリー計算と同じような問題について、それから京都議定書の対策も含めた社会的な対策という2つの対策もあるのではないかと思いまして、もう少し我々事務方も整理していきたいと思います。

○安井座長
 須田委員お願いします。

○須田委員
 ずっとお話を聞いていて思うのですが、カーボンフットプリントについてISOで決まろうとしている視点と、もう1つここで承知しておいた方がいいと思うのはLow Carbon Productsです。
 全体の、すなわち社会システムにまで話をもっていくと議論が飽和してしまうのではないかと思いますので、そうした背景も踏まえた方がいいと思います。
 ISOについては国内事務局を担当したりしておりますが、ISOの規格作りでは、General Ruleを作っていくわけです。南川局長から稲葉委員に質問があったようなISOには国の思惑は基本的にないと思います。ただ注意しなければならないのは、このカーボンフットプリントで例えば温室効果ガスの排出をどこまでバウンダリをみようかというときに、例えば農作物だったら土壌由来の温室効果ガスの取り扱いくらいは決めるのだと思います。それが果たして日本にとっていいことなのかどうかというレベルでは見た方がいいと思います。

○南川地球環境局長
 たまたまテレビをみておりましたら、イギリスではCO2の観点からバリアがかかり、それによってイギリスの質の悪いイチゴが売れているということでした。それによってチリのイチゴ輸出業が疲弊しているという事実があるということで、そういう貿易制限的な側面もあるのかと思い質問させていただきました。

○稲葉委員
 それは規格の使い方の問題だと思います。そういう使い方をしたい人がISOに関与していると大変なので、そのあたりをしっかり見ていく必要があるというのが須田委員のご発言だと思います。
 一般論からすると貿易バリアを作るためにISOを作るという発言はありません。

○徳田地球温暖化対策課長
 ここでの検討結果については、ISOにインプットできればいいと考えてはおりますが、ここではISOだけを対象とするのではなく、それ以外もあっていいと考えています。

○安井座長
 須田さんのご意見は、社会システムに関わることはなるべく避けようということでしょうか。

○須田委員
 誤解があるといけないので付け加えますが、資料2の8ページにあるサービスの例を取り上げることを反対しているのではありません。
 ISOの視点でカーボンフットプリントをいうイメージとしてスーパーで売っているような食品だとか日常雑貨が多いと思います。そういう中で水道とかを考えるとISOの世界ではしっくりこないのです。そのときのキーワードがLow Carbon Productsに関わるカーボンフットプリントだと思います。国際的にレベルを合わせますということで、この言葉を使っていると思います。

○稲葉委員
 資料2ではカーボンフットプリントという言葉は1つもありません。この検討会で議論するのは見える化ということなので、見える化という範囲とカーボンフットプリントということの違いとは須田委員からのご意見もありましたが、見える化で扱うのがどこまでで、カーボンフットプリントの役割はどこなのか明確にして議論した方がいいように思います。

○安井座長
 見える化は消費者のライフスタイルに影響を与えることを意識していると思います。カーボンフットプリントはその中に含まれていると考えています。資料1の脚注にもあります。我々は見える化を議論しており、その中にはカーボンフットプリントを含むということです。

○森口委員
 基本的にそれで結構だと思うのですが、そうは言いながらカーボンフットプリントを国際競争力として考えた場合には、見える化の広い議論とは別に、カーボンフットプリント自身についていろいろな省庁が協力しながら進めていく必要があるというのが稲葉委員のご意見かと思います。そこに環境省らしい検討があるのではないかと思います。土地利用変化ですとか、今日は例に挙げていませんが伐採木材のカウント方法も関係してきます。そういう国際的な、例えばヨーロッパ対日本のような議論に対して連携して進めていくのは必要だと思いますし、そうした議論は国際的に貿易対象となるProductsに絞った方がいいと思います。
 それとは別に、日本の排出削減につながるような、特に消費者の行動・選択によってCO2排出量が減るような見える化という話があり、2つの違う側面の話を今日はしたように思います。両方が必要だと思いますし、そのあたりの交通整理をしながら議論を進めていければと思います。

○安井座長
 繰り返しになりますが、ミニマムマンデートは商品・サービスを特定することです。ただ、どういう観点から特定するかという議論が必要であり、それに関しては第一巡目で皆さんから頂いたご意見が有効だと思われます。
 時間になりましたが、事務局と相談させていただいて、まだ対象商品がもっとあるのではと思いますので、アンケート等もやってご意見をいただくことも必要ではないかと思います。
 それでは事務局にマイクをお返しします。

○馬場課長補佐
 本日の議論については、まとめた上で早急に先生方にお送りして、ポイントを整理して近いうちに深掘りする形で検討会を行いたいと思います。よろしくお願いいたします。

○安井座長
 それでは閉会いたします。

以上