1.日時
平成17年11月11日(金)10:00~12:30
2.議題
京都議定書に基づく国別登録簿制度を法制化する際の法的論点の抽出・検討
3.議事内容
会議及び資料は非公開で行われ、議論がなされた。
4.議事概要
○議事の公開について(議決)
本WGにおいては、メンバー各位の率直かつ自由な意見交換を確保するために、[1]一般の傍聴は認めない、[2]資料及び議事録は公開しない、[3]議事要旨は、事務局において会議終了後作成し、環境省のホームページ等を通じ公表するものとする。
○主なコメント
【クレジットの法的性質について】
- 実務的な観点からすれば、クレジットを何らかの法的実体を持つものとして位置付けることが望ましい。現状では、クレジット自体は単なる数値であるため、売買契約の客体とすることができず、契約上は「クレジットの国別登録簿上の記載の書換請求権」を取引しているが、これは実態とかなり乖離している。
- クレジットを何らかの権利と位置付ける場合、実務的な観点からは何ら問題は生じないが、国がクレジットを所有した場合の国有財産法上の問題点を整理する必要がある。
- クレジットを財産権と位置付けたとしても、現行の税法では課税対象にはならないし、損金算入もできないのではないか。一般性を持つ消費税については対象となる。
- クレジットについて、破産法制上の扱いをどうするのかを検討する必要がある。
- 財産権類似のものとして整理するのが適当と考えるが、財産権と法文上はっきりと規定するかどうかは検討する必要がある。
- クレジットは動産的に扱うのが適当ではないか。転々流通するという性質からすれば物権との親和性が高いが、債権として構成しても法的効果をしっかり規定すれば問題はないかもしれない。ただ、債権とすると誰の誰に対する債権なのかが不明確。
- クレジットは、コンピュータシステムができる前に誕生したのであれば、当然、証券化されて取引されたものである。有価証券は動産扱いされているのだから、クレジットについても動産的な扱いをするのが適当だと思う。
- クレジットは、2013年以降のスキームについて結論が出ていない現段階では、時限的な権利として整理せざるを得ない。クレジットはそもそも京都議定書に基づくシステムにより発行されるものであり、国としてはそのような実体のあるものにお墨付きを与えて制度化しているにすぎないという基本認識に立ち、「クレジットは京都議定書に基づく権利である」という規定を置けばよいのではないか。
【現行の民事法制との関係について】
- クレジットが動産でなくとも、「クレジットを動産とみなす」というみなし規定を置き、クレジットについて適用するのが不適当な条項の適用除外規定を置けばよい。例えば、即時取得、担保責任、時効の規定などは整理が必要。
- 「本法に別段の規定がないかぎり、民法及び商法の動産に関する規定に従う」というような書き方でもよいかもしれない。民法及び商法で適用される条文を個別に書き出すのは大変な作業である。
【登録簿へのクレジットの登録の法的効果について】
- 効力発生要件と構成するのが適当。対抗要件では、当事者間では意思表示によりクレジットが移転するので、二重譲渡のリスクが排除できず、権利の帰属が不明確になる。また、諸外国には対抗要件という概念がなく、国際調和という観点から問題がある。
- 効力発生要件とすると、約定と登録のタイムラグがどうしても生じてしまうが、制度設計当初はそんなに取引も激しくなく、また民間事業者もそのタイムラグを前提に契約を組み立てるので、問題はない。振替社債の制度もタイムラグがあることが前提になっているはず。取引量が増えてくれば市場整備が為され、株式の取引のようにタイムラグが生じないような工夫が為される。その時点で制度改正を検討すればいい。
- 効力発生要件と構成した場合、口座保有者の権利推定規定と善意取得規定はワンセットとなる。
- 万が一、同じクレジットが国別登録簿内で重複して誤記載され、さらに善意の第三者にそのクレジットが移転してしまった場合、国別登録簿の管理者たる国は、誤記載のクレジットについて補償義務が生じるのかどうかを検討する必要がある。
- クレジット取引に当たり、クレジットの売り手からの登録申請のみで十分なのか、買い手からの申請も必要なのではないかについて検討する必要がある。技術的には、売り手に対して、買い手の電子的な同意書を添付させるのは簡単なこと。
- クレジットがCDM登録簿上に発行されて日本の国別登録簿上の口座に移転されてくるときの登録と、既に発行されている現物クレジットの取引の登録とは別に整理をする必要があるのではないか。
【その他】
- 国別登録簿が法律上に規定されることになれば、現在の告示の規定事項と齟齬が生じる部分が発生した場合は、告示を改正する必要がある。