- <日時>
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平成17年12月16日(金) 10:00~13:00
- <場所>
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スクワール麹町3F 「華」の間
- <出席者>
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- (委員)
- 三上座長、礒野委員、上山委員、粂原委員、古倉委員、島委員、善養寺委員、
谷口委員、林委員、松本・別所委員代理、松橋委員、村尾委員、藻谷委員、吉田委員
- (環境省)
- 桜井大臣官房審議官、佐野総合環境政策局環境計画課長他
○事務局から資料1-1「自然資本百年構想」(案)、資料1-2「環境税をめぐる最近の動きについて」、資料1-3「政府の都市政策及び交通政策について(交通政策を中心に)」をそれぞれ説明し、礒野委員から資料2「地方の鉄軌道事業について」説明し、林委員から土地利用と交通の相互作用がもたらす環境負荷について説明した。
○主に、以下のような議論があった。
- 国土交通省の幹線鉄道に対する補助金は、ほとんどが大都市部の地下鉄等につぎ込まれており、地方鉄道には回っていないのではないか。
- まちづくりで、環境の観点は重要と考えるが、現在、国土交通省と経済産業省で検討をしているまちづくり三法の見直しについて、環境省はもっと積極的に関与すべきではないか。
- 鉄道と自動車の輸送分担比率については、都市内移動と都市間移動で変わってくるはずなので、そういうデータが得られるとよい。フランスは、LRTの推進を都市計画とセットで行っている。LRT単体で推進してもLRTの利用者は伸びず、失敗するのではないか。
- 鉄道は、いったん廃止して新たに造ると数千億円の投資が必要だが、残しておけば数千万円の赤字のレベルで済む。
- 地方鉄道は、モータリゼーションの進展→鉄道利用者の減少→運行本数の減少→さらなる利用者の減少という悪循環に陥っている。そのような地方鉄道を再生するためには、自治体の長、住民、既存事業者の三者の協力が揃わないと達成できない。
- 国土交通省は、渋滞解消のために道路整備を進めているが、結局新しい道路が新規の道路需要を呼び込んでしまい、そこで新たな渋滞が起きてしまう。市内への車の乗り入れを減らす取組が必要。
- 岡山空港には3,100台分の無料駐車場があり、それが空港アクセスにおけるリムジンバスの利用を妨げている。通常、空港利用者の40%以上が空港リムジンバスなどの公共交通機関を利用するはずだが、岡山空港の場合は、158万人の空港利用者のうちリムジンバスの利用者は25万人(16%)に過ぎない。
- 岡山電軌軌道の場合、鉄道軌道の土地は市に寄付しているため、固定資産税はかかっていない。変電所などの設備の土地については固定資産税を支払っている。鉄道車両についても、車両価格から補助金部分を除いて圧縮記帳し、その部分については固定資産税がかかる。
- イギリスに1963年に取りまとめられたブキャナンレポートと呼ばれる有名な報告書があり、自動車を買える所得水準になり、自動車を利用できるインフラが整備されれば、自動車保有率は一気に上がるとしている。ロンドン市内においては、この提言に基づいて都市高速を整備しなかった。
- 岐阜市の場合、1970年には1,000人あたり65台の普及率だったのが、2000年には1,000人あたり500台の普及率に高まっている。自動車の普及率は、DID面積のスプロールと密接な関係がある。飯田市の場合も、30年間でDID面積が3倍になった。市街地の境界が曖昧になりながら周辺地域の開発が進むミクロスプロールと市街地面積の拡大は、人々が自動車を買える所得水準に達してから。
- ドイツでは、人々が自動車を買える所得水準に達したのが日本よりも30年早く、1960年代に中心市街地が衰退した。ミュンヘンでは、1967年に出されたレーバープランに基づいてトランジットモールを熱心に整備し、都市を蘇生させた。
- 100年後に日本の人口が半減するとも言われているが、市街地面積も半減すべき。社会保障のための費用もより必要になるので、理想としては1/3にする必要がある。
- 国土交通省では、浸水被害などが起こりやすい地域を特定するナチュラル・ハザードマップの作成を熱心に行っているが、併せて、ソーシャル・ハザードマップの整備も進めるべき。インフラ整備の観点から、それを整備・維持することによって財政破綻を招いてしまう地域についてはソーシャル・ハザードとして認定した上で、そこからは絶対に撤退し、都心部に再集結させる必要がある。
- 街区単位でどのようにまちをオーガナイズするかということも重要。日本には定型がなく、それぞれの建造物が自己中心的に乱立している。ヨーロッパではそのあたりの定型がしっかりとあり、街区の建造物の調和が取れている。中国ですら街区単位の開発を行っている。
- 日本の建築家は、派手なものを造らないと儲からないので、建物の単体だけを考えて、街区における調和には興味がない。他方、土木の人間も、道路をどう通すかにだけ関心があり、街区には興味がない。皆が自己中心的である。
- 山手線の内側の地域を見ても、建物の平均階数は3Fに達しないはずであり、街区計画認定制度を設け、認定された計画について固定資産税や住民税を半減するなどの措置は有効に機能するのではないか。長期的には、住民税の地区行政投資額の世帯割制度も導入し、行政がその地区の維持コストと税収の均衡をとるべき。
- ドラスティックなことを言えば、都市内部における都市機能の集約だけでなく、環境や財政の健全化の観点からは、過疎地振興法や半島振興法は全部廃止し、国レベルの都市機能の集約を進めるべきではないか。
- 現実的には、「街区」「市町村合併前の市町村単位」で都市機能の集結を考えないと、動かないはず。過疎地については、文化の多様性の維持の観点から残すべき。文化そのものにソーシャル・バリューがある。ローカルレベルで経済メカニズムを働かせることが大事だと思う。
- 日本の行政組織は、都市計画を担当する職員が本当に少なく、しかも2年単位でどんどん変わってしまう。ドイツでは、都市計画の担当者がビルの2フロアを占めている。都市のジオラマなども置いてあり、都市全体をどう設計するのかをいつも意識している。日本においても、数量だけを判断するのではなく、質的なものも判断できる体制が必要。
- 日本では、不動産会社や建設会社主導の大規模開発プロジェクトが中心となるが、そうではなく、行政や住民が中心となってまちのコンセプトを考えるべきである。建築協定などあるにはあるが、単に街区の建築物の色を統一する程度のものである。本当は素材から統一すべきもの。
- 日本の税制は、耐震構造に対する税制優遇など個別対策のものばかり。パッケージとして考える必要がある。企業の格付けをするように、地区についても格付けをすべきではないか。
- まちづくりには総合的な視点が必要であり、各省の連携を強化する必要がある。財源が1つのポイントとなるが、例えば、道路財源の暫定税率部分をまちづくり特会とするのも1つの案。道路特会、エネルギー特会、電源開発特会をどう再編していくのかをしっかり考えなければならない。
- 「街区」だけでなく、「小学校区」、「住区」くらいのレベルでも評価した方がよい。また、道路財源については、地方のLRTに転用するだけでなく、大都市部の鉄道の投資にも回し、いつも通勤ラッシュで疲弊している都市住民が快適に鉄道を利用できるようにすべき。
- ソーシャル・ハザード地区からの撤退による効果を総合的に評価すべきである。その中にはもちろんCO2削減効果もあるはず。CO2削減の観点から出発するのではなく、面的な政策を考えるべき。
- 総合評価は、まず誰を評価者と選ぶのかなど手続が難しい。また、ソフトな対策については予算が付きにくい現状があるが、どう評価するか考えなければならない。
- 地域の環境格付けを行い、地域間競争を高めていくのも一案。
- 公共物を整備するために利用者に負担させる揮発油税などの税目、公共物損傷に対応する自動車重量税などの税目があるが、環境損傷についてはそれを手当てする税がない。また、都市が散らばってしまったことにより生じたコストである空間損傷についてもそれを手当てする税がない。空間損傷を考えれば、もしかしたら、都市郊外に高速道を通すよりも島根に高速を造った方がいいのかもしれない。
- 高層建築についても、社会的価値がなくなる可能性があり、したがって、空間損傷となる可能性がある。六本木ヒルズも将来的には粗大ゴミとなる可能性がある。街区との調和が重要である。
- 高層建築のメンテナンスコストは高い。特に超高層建築と呼ばれる30mを越える建築物については、耐震の関係で安全性が疑問視されている。山手線内で言えば、全部が2階建ての建物でも必要な空間が確保できるはずであり、このように安全性が確認できていない超高層の建築物については建築を規制すべき。
○次回の開催は、2月15日10:00~13:00となった。