■議事録一覧■

「地球温暖化対策とまちづくりに関する検討会」
第1回会合 議事概要  


<日時>

平成17年10月17日(月)18時00分~21時00分

<場所>

虎ノ門パストラル新館5階「ローレル」の間

<出席者>

(委員)

礒野委員、上山委員、粂原委員、古倉委員、島委員、善養寺委員、谷口委員、 林委員、別所委員、松橋委員、三上委員、藻谷委員、吉田委員

(環境省)

小林地球環境局長、佐野総合環境政策局環境計画課長、大倉大臣官房総務課長補佐、
芳野地球環境局地球温暖化対策課長補佐

<座長選任>

全会一致で座長に三上委員を選出した。

<議事>

1.地球温暖化問題について

芳野補佐 「資料-1 地球温暖化問題について」の説明
島委員 スライド11の家庭からの排出内訳にある自家用車からのCO2排出量は、スライド10にある運輸部門からのCO2排出量19%の中に入っているのか。
小林局長 入っている。スライド10と11にある家庭部門のくくりが異なるため、混乱を招いた。
古倉委員 スライド16にある「省CO2型の交通システムのデザイン (公共交通機関の利用促進等)」の「等」の中に自転車は入っているのか。入っているとすれば、自転車の排出削減見込量の記述はあるか。
小林局長 ある。手元に詳細な資料はないが、微々たるものだった。
林委員 オランダでは約30年かけて大幅にモーダルシフトしている。デルフトでは、50%以上の人が自転車を利用している。構造的に変えていくと非常に大きな変化が起こりうる。どのように構造転換に持ち込むかが難しい。
小林局長 京都議定書の目標計画は確実に達成できそうなことだけを積み上げている。スライド16には、2010年頃にある程度削減可能な政策に絞って記載している。方向性は決めたが、具体的な方法は記載していない。その方法についてこの検討会で知恵を付けていただきたい。

2.地方都市での諸機能郊外化の実態とその問題点について

藻谷委員 「資料-2 地方都市での諸機能郊外化の実態とその問題点について」の説明
中心市街地空洞化の問題は、商業機能だけでなく行政機能や教育機能等の郊外移転によって、中心市街地に来たり住んだりする人が減少することによって発生する。大型商業施設の郊外出店を規制したところで、中心市街地に人は戻らない。
中心市街地の地価は、様々な原因により高止まりしており、郊外から回帰したい人や事業者を受け入れられない状態になっている。現状を解消するには、中心市街地の地権者の意識改革等が必要。
上山委員 「中心市街地」や「郊外」といった言葉の定義を明確にすることが重要。まちづくり対策は、住む人や来る人づくりから始める必要がある。活性化の障害となるものに対して柔軟かつ流動的に対応していくことが課題。商店街の活性化をコーディネイトする機能がよりアグレッシブにできる仕組み作りから再開発は始まる。新しい中心市街地が生まれるという観点も大事。
藻谷委員 郊外のショッピングセンターがかつての中心市街地の機能を代替するという主張もあるが、商業以外の機能を代替できないため、難しいのではないか。

3.運輸部門及び民生部門の温室効果ガス排出量の変化について

大倉補佐 「資料-3 運輸部門及び民生部門の温室効果ガス排出量の変化について」の説明
谷口委員 今日は環境省が都市構造の問題を検討し始めた記念すべき日。既存の交通調査は、各都市圏域に縛られているものが多く、構造的変化に伴う圏域を越える交通問題に対応が難しい。環境省として、議論のベースとなるデータを長期的に調査し、統計データとして残すべきである。
小林局長 具体的にどのようなデータが必要かというところから検討したい。
藻谷委員 資料-2の説明では、主として市街地に空き地が多いとか、本来人が歩いているところに家や商店街がないといった観点から話した。そういう観点と中心地区のデータを見た場合、密度の高低にズレが生じることがある。資料-3は、ベースとなる話で、私の説明は地権者問題など複雑な問題が絡んで起きるその先の応用の話であると考えていただきたい。
善養寺委員 地域によって公共交通機関の利用率が異なる。自動車利用に対する人間の心理の問題についても調査が必要なのではないか。
藻谷委員 自動車があれば使うという場合とシチュエーションがあれば歩くといった二極分化を同じ人間が使い分けていると考える。
吉田委員 地方と都会の自動車の燃費効率を比較した場合、一般的に信号停車が多く、渋滞等もある都会の燃費効率は悪いとされるが、地方も意外と悪い。短い移動にも自動車を利用するため、自動車が暖まりきらないうちに乗り降りするからではないか。
善養寺委員 最近は痴呆防止に自動車に乗る老人も増えていると聞く。自動車を利用する人の年齢分布を調査し、高齢化社会の観点から自動車の問題を見てみるのもよいのではないか。
三上座長 自動車利用以外について何かあるか。
善養寺委員 戸建てとマンションの性能の比較について、エネルギーの問題に関しては戸建ての方が悪い。しかし、次世代省エネルギー基準をクリアした戸建てとの比較がなければ、戸建てはマンションより絶対に悪いとは言えない。
大倉補佐 地方には戸建てが多く、現状でエネルギーを多く消費している例として提示した。省エネ性能などは含めず、現時点でのストックを前提にしている。指摘の部分は今後検討する。
林委員 それぞれの断面から出しているデータをどうつなげるかが問題。スプロール化の問題には、移動距離が長くなるという意味のマクロスプロールと、市街地の内外の境界線がなくなって市街地維持のコストが高くなるという意味のミクロスプロールがあり、分けて考える必要がある。途上国においては、都市近郊部の渋滞は放置した方がいいという考え方がある。自動車が1台増える限界費用と渋滞対策のためのインフラ整備の限界費用は、日本の場合2桁違う。ライフスタイルのパターン分けをし、居住や交通の構造を組み合わせて考える必要がある。分析対象となる「まち」を整理することが必要。

4.今後の検討の方向性について

三上座長 これまでの話を踏まえ、検討会の今後の方向性について議論したい。最終的には持続可能な都市づくりに結びつけたいと考えている。
小林局長 議論が始まる前に、古倉委員の質問にあった自転車の排出削減見込量について説明する。二酸化炭素換算で約30万tの削減を見込んでいる。根拠は、自転車専用道を約3万km延ばすことによって、トリップ長5km未満の乗用車利用者の一部が自転車利用に転換するのではないかというもの。二酸化炭素換算で約30万tという量は少ないと考えるため、微々たるものだと言った。
藻谷委員のスライド24、25は時間の関係で説明のなかった箇所であるが、今後の方向性を検討する上での話題として、ご説明いただきたい。
藻谷委員 コンパクトシティというと、中心市街地の容積率を上げるという議論に結びつきがちだが、地方都市においてそれは当てはまらない。地方都市の中心部に高層の商業施設を建てても、3階以上は人が来ない。また、高層のマンションを建てても、周辺が空き地となってしまう傾向がある。Smart Decline(賢い縮小)という考え方がある。一定の密度に投資を集中させることで、安定的な環境を作ることができる。
上山委員 中心市街地と郊外は対立概念ではなく、まち全体として各機能をいかにバランスよく配置するかということがむしろ問題。「お客様のニーズをよく捉えた店舗」への入れ替え及び「売れ筋の商品」のスムーズな入れ替えができるような工夫が必要。また、各セクターのハード面、ソフト面の両面におけるコラボレーションも重要。ビジネスプロセスや住民のライフスタイルを変えるためのインセンティブを付加した政策をトータル的に論議した上でビジョンを作っていくべき。
善養寺委員 地方でCO2排出量が増えている問題の解決策は、市街地活性化だけではないはず。自動車の利用やオフィスの移転などを区分して、その対策がどうあるべきかを検討する必要がある。この委員会で最終的に何を目指し、何をアウトプットするのかを決めてから議論すべき。
島委員 拠点集中と再田園化による郊外の再編集という考え方は重要。駅前などの拠点への人口諸機能再集中が必要。そこを目指して議論すればよいのではないか。
粂原委員 自動車問題と都市問題はすぐには結びつかない。都市問題は、都市が住民、事業者、商業者など様々な利害関係者が存在する生活空間であることから難しい。地球温暖化対策とまちづくりと言った場合、具体的に何を検討するのか絞らないと広すぎる。まちづくりとどうCO2の発生抑制と結びつけるか考えないといけない。
藻谷委員 郊外化によってCO2排出量が増加していることはデータに裏付けられている。これをさらに補強するデータを掘り下げる必要がある。国民は、郊外化によってCO2の排出量が増えると言われても実感が湧かない。具体的にどういう直接的なデメリットがあるのか、きちんと示す必要がある。CO2の排出量が増加すると、財政負担も重くなるというストーリーが分かりやすいのではないか。
松橋委員 地球温暖化対策として、交通面でのCO2対策や土地の有効利用の問題もあるが、少子高齢化社会の中で持続可能なまちをどのように作っていくのかという視点もある。
古倉委員 アメリカ政府が取りまとめた資料で、自動車を利用すると年間5,800ドル必要なところ、二酸化炭素を排出しない自転車の場合は180ドルで済むというデータがある。こういう風にメリットを示す切り口が重要。上からの二酸化炭素削減の要請だけでは長続きしない。自転車利用の推進のためにどのような対策が必要かアンケートを取ったところ、自転車通勤手当の支給、自転車利用者に対するスーパー割引券の発行など利用者が受ける経済的なメリットを多く考えている。その行動がどれだけあなたにとってメリットがあるかを含めた長期的にCO2の削減に繋がるような明確な提案をすることが必要。
善養寺委員 環境と都市を考えた場合、地方でのモータリゼーションの問題もあるが、工場排熱など熱利用の効率化も重要な観点。
礒野委員 鉄道が廃止された地域が数多くあるが、今回初めて住民、自治体、議会、国会議員がまとまったおかげで和歌山県の貴志川線が存続に向かった。地方自治体の職員などが実践的に利用するためのデータ集的な報告書を作ったらどうか。
別所委員 物流拠点は、昔は都心部に立地するのがよいとされたが、現在は外環部立地が主流。業種によって傾向が違うのではないか。また、郊外型大型小売店舗は、もはやそれ自体が都市中心部を形成しているのではないか。「郊外」という概念を整理する必要がある。
三上座長 今回出た論点は事務局で整理し、次回の検討会で提示する。
小林局長 都市の形態や各機能の配置が違うことにより事実CO2排出量が異なっている。生活上の価値や経済的な価値を損なわず、CO2排出量を減らすための手段を考えることが本検討会のテーマだと考える。今日の議論にはさまざまなヒントがあった。また、本検討会に類似した目的を持つ検討会があるので、そこでの成果も紹介し、さらにご議論いただきたい。今後の検討会で重点的に議論すべきことを事務局で整理し、詳細は座長と相談した上で連絡する。

○次回検討会について

平成17年12月16日(金)10時00分~13時00分に開催する予定となった。