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平成17年度「環境ビジネスウィメンと環境大臣との懇談」の概要


○日時

平成17年10月24日(月)12時30分-15時

○会場

環境省省議室

○出席者
秋山をね (株式会社インテグレックス 代表取締役社長)
五十嵐和代 (株式会社五十嵐商会 代表取締役社長)
金城祐子 (株式会社グレイスラム 代表取締役)
児玉千洋 (エコテスト株式会社 代表取締役)
松平悠公子 (日経BP社 エコマムプロデューサー)
三澤文子 (Ms建築設計事務所)
森裕子 (株式会社ハチオウ 代表取締役社長)

崎田裕子 (ジャーナリスト・環境カウンセラー・NPO法人持続可能な社会をつくる元気ネット理事長・NPO法人新宿環境活動ネット代表理事)
鈴木敦子 (NPO法人環境リレーションズ研究所理事長・株式会社環境ビジネスエージェンシー代表取締役)
善養寺幸子 (1級建築士事務所オーガニックテーブル株式会社代表取締役)
薗田綾子 (株式会社クレアン代表取締役)
染谷ゆみ (株式会社ユーズ代表取締役)
堤恵美子 (株式会社タケエイ取締役)
安井悦子 (株式会社グレイス代表取締役社長)

小池環境大臣、黒田大臣官房審議官、谷津政策評価広報課長、藤倉環境情報室長

【議事要旨】

(敬称略)

第1部 メンバー同士の懇談

(1)

新メンバーからの発表(事業の概要、女性によるビジネスの開拓者として環境分野で成功した秘訣、環境と経済の好循環を生み出すための考え方を中心に)

(秋山メンバー)

○ (株)インテグレックスは、平成13年に設立し、公正な第三者機関として、社会責任投資(SRI)と企業社会責任(CSR)の推進により、より誠実で透明性の高い社会の建設をめざすことを理念にしている。環境だけに絞らず、経済的側面と社会的側面から、どのように社会責任を果たしているかを評価し、それを投資に結びつけている。
 成果として、同社による評価システムをもとにしたファンドが運用されている。
 環境と経済の好循環を達成するためには、お金の力を利用して企業に責任ある活動を促すことが効果的と考えている。
 投資市場だけではなく、消費市場においても、一人ひとりのお金の力で環境も良くなるように企業行動を促す、あるいは全般的に社会に対して責任を果たしてもらうようにするといった施策を推進してほしい。

(五十嵐メンバー)

○ (株)五十嵐商会は、昭和36年に創業し、産業廃棄物収集・運搬業、浄化槽業などを営んでいる。先代社長が、食品リサイクル法などが施行され、21世紀は循環型社会形成の一翼を担う企業にならなければいけないと考え、特に生ゴミを肥料化することに着目し、平成14年にリサイクルセンターを立ち上げた。その肥料は、全国各地へ出荷しており、「練馬の大地」という名称で農家に販売をしている。
 環境を良くすることが経済を活性化する中で、循環型社会形成を推進する業者の役割はますます重要性を増してきていると痛感している。

(金城メンバー)

○(株)グレイスラムは、沖縄県南大東島でラム酒を製造する会社で、平成16年に設立し、本年7月にラム酒の初出荷を迎えた。
 沖縄県は、サトウキビが基幹産業であり、その基幹産業が低迷している現状にあった。お酒が好きであったこともあり、100%地元の素材でできるお酒を造ろうとベンチャーとしての挑戦が始まった。
 ラム酒は、製糖工場から出る副産物としての糖蜜を原料としているので、その糖蜜を活用することで、環境に配慮したビジネスにもなると考えたのがきっかけ。
  ラム酒は、ほとんどが輸入されている中で、本格的に原料の調達から仕込み、製造までを行っているメーカーは国内で他には無い。また、素材そのものを活かした蒸留技術と無添加無着色で仕上げている。サトウキビを絞った上滓は、サトウキビ畑に肥料として還元。
 人口1400人足らずの小さな離島である南大東島で産業を興すことで観光客の誘致になるとともに、雇用の場としても活用できる。

(児玉メンバー)

○エコテスト(株)は、国内外の環境分析会社と提携して環境分析の受託事業を行っている。環境分析についての仲介ビジネスは業界初であると思う。安く早めに分析が行える簡易法を積極的に紹介しているのが特徴。
 社員が営業をする際に、30歳を過ぎた女性として外回りはキツイという声をきっかけにインターネット上での事業展開に切り替えたところ売上が倍増した。
 女性による環境ビジネスが成功するポイントは、次の点であると思う。まずは、環境への感度の良さ、その次に固定概念や暗黙の業界ルールなどに縛られない自由な発想をもてること、さらに、他社がやらないことを選択し続けること。
 環境と経済が両立するためには、安全や安心、美や豊かさといった新しいニーズに応えたソフトな政策を国や企業が推進することが大事。

(松平メンバー)

○日経BP社で雑誌「エコマム」(エコロジーとママをかけた造語)を責任編集している。自分も母親であり、次の世代に何を残せるかを考えるようになり、環境というキーワードにあたった。企業に取材に行くと真面目にモノを作っており、次世代に対する思いをもっているが、自分が母親や消費者の立場になると企業は知りたいことを説明してくれないと感じ、そのギャップの架け橋を何かできないかと考えたのが雑誌を作るきっかけ。
 また、環境は、まだ見ぬ人に対する想像力と関わってくると考えている。今までの雑誌で最も受けたのは「お盆を大切にする」記事であった。自分のルーツや誰のために生きているのか、といった地に足のついた問いかけが消費者の心に響く時代に来ているのではないか。

(三澤メンバー)

○日本の森林は手入れが行き届かなくなっている。木材価格が下がり続け昭和30年代と同価格。植林や手間をかけて育てることにかける費用が無く放置されてしまっている。また、需給率は下がっている。その一方で戸建て住宅における木造率は80%を維持しているように、日本人は木造を好んでいる。
 柱や梁などの構造体が見えない工法である大壁からそれらが表れている工法である真壁を導入する「民家型工法」を23年ほど前に提案した。昔あったエコロジカルな住生活に加えて、現在の技術と合理的な考え方によって少なくとも快適で安全性が高い住空間を提案。さらに、家を造る側と住む側と共有する物語を提案している。一緒に山に行き、伐採された木で家を造ることを確認したり、植林を体験したりする。
 木は自然の恵みで成長するので、木材を作るためのエネルギーはかからない。しかし、その木材を海外から輸入することで、国内で輸送する際の何倍ものエネルギーを使用する。これを評価する仕組みとして木材を運ぶ距離と体積をかけたものを「ウッドマイルズ」と呼び、提案している。 
 Ms建築設計事務所は、20年前に設立をし、持続可能な家づくりをテーマに、安全で耐震性をもち、長寿命な住宅を提案している。加えて、木造の家で、夏は涼風を取り入れ冬はバイオマスエネルギーを利用するような省エネ生活も提案している。
 岐阜県森林文化アカデミーで教鞭をとっており、地域が抱える森林や林業の問題を地域の人と一緒になって解決させる取組をしている。

(森メンバー)

○35年ほど前に、廃棄物の中から銀を回収し、商品化するまで完全にリサイクルする会としてスタートした化学系廃棄物専門の処理会社である。
設立した際の高度経済成長期にあっては、廃棄物を処理する人に目を向ける風土は無かったが、ようやく私たちの時代がきた。しかし注目をあつめるようになって競争は厳しくなっている。産業廃棄物を扱う業界においてもハード面を重視する時代は終わり、こんごはそれをどのようにソフトに展開していくかという時代に入っていると思う。
 10年ほど前から社員や顧客を対象に環境シンポジウムを開催している。
井の中の蛙になりがちな業界にあって、見識を広げられたと思う。またひとえに若い社員の先が見えにくい当時の業界の中で、彼らの指針ともなればという思いが強かった。自己啓発をうながすために、運営は若手社員に任せている。若い人はダメと批判的にいわれるむきもあるがそれは違うと思う。
山野草が雨露の恵みで花を咲かせてくれるように、環境をキーワードにして、人々の心の花が育ってくれることを願っている。

(2)

メンバー同士の意見交換

(薗田メンバー)

○HERB構想(「環境と経済の好循環ビジョン~健やかで美しく豊かな環境先進国へ向けて~」の愛称)は20年後くらいの社会を描いた計画であるが、新たに加わったメンバーの皆さんは、長期的な目標やビジョンをどのようにおもちか。

(秋山メンバー)

○20年後には「SRI(社会責任投資)」という言葉が死滅するような社会になること。つまり、企業は環境に配慮するのが当然になって、あえて評価する必要が無い社会を投資を通じてつくっていきたい。

(五十嵐メンバー)

○学校給食の食べ残しをみると、子どもの頃からの環境教育が10年後や20年後に大きく影響してくると思う。

(金城メンバー)

○ラム酒の製造を通じて、ただラム酒を造るだけではなく、観光で多くの人が島に来るなど、地域の産業が発展することや、環境に配慮した仕組みを作っていきたい。

(児玉メンバー)

○日本人が本来もっている感性を自然に取り戻すことができれば、より良い社会ができるのではないか。

(松平メンバー)

○日本だけではなく世界の子どもたちが安心して裸足でどこでも遊べたり教育が受けられたり飢えることがない世界であってほしい。

(三澤メンバー)

○家造りをする時、家を直す時の業者や設計者を選ぶ際の価値基準として、環境に対する提案がかなりのウエートを占めるようになるだろう。

(森メンバー)

○化学系廃棄物を安全に処理するための、世界標準を作ること。1番多く廃棄物を使用し、排出している欧州、日本、米国の責任である。
化学系廃棄物の基準は先進国だけの国内法だけではなく、国際法でなければならないと思う。また国際法にするためには、発展途上国への資金や技術のサポートが必要である。

第2部 小池環境大臣との懇談

(1)

環境大臣挨拶

(小池環境大臣)

○今回、第2期メンバーに加わってもらい、ますますパワーアップした環境ビジネスウィメンの会合になろうかと思う。少しずつ分野が違うメンバーがお互いに情報交換することによって良いシナジー効果が生まれる。20世紀と違い、21世紀は環境が表紙に来るべきで、かつその中身の広がりが必要になってくるのではないか。さまざまな環境問題に対して、女性がどんどん引っ張っていくことが必要であり、その牽引役を期待する。
 金融機関にも環境目利きとして、「環境ビジネスウィメン」の動きをサポートしていただくようお願いしている。皆さんには大いに期待している。

(2)

メンバーからの提言

(秋山メンバー)

○ヨーロッパでは年金法の改正によりSRI残高が増えた。個人金融資産を活用して、環境に配慮した企業の活動に変えていくような施策を考えてほしい。

(五十嵐メンバー)

○学校給食等の生ゴミから肥料を作る工場を設立しているが、さらに運搬や洗浄など細かいところでも環境配慮しており、循環型社会形成に向けた取組をさらに研鑽していきたい。

(金城メンバー)

○ラム酒を製造しているが、これを大量生産するのではなく、1本1本手作業の少量生産している。ラム酒をベースにして、南大東島の農家が儲かる仕組をテーマに今後も取り組んできたい。

(児玉メンバー)

○日本人の本来もっている豊かな感性を刺激するような政策も導入してほしい。例えば八百万の神様の復活祭などはどうか。

(松平メンバー)

○男性と女性とでは環境に関する意識が違う。環境は、他人への、まだ見ぬ国や生まれてくる子どもたちへの思いやりの問題であるということを男性は実感していないのではないか。大臣のこども環境サミットでのお話が印象深かったが、環境は男性の家族、子供、未来に関わる話だということを訴えていけば価値観が変わる。

(三澤メンバー)

○住の世界で、環境に配慮した提案が大きな指針になるような制度をつくってほしい。例えば、住宅を建てたりリフォームする際にエネルギー負荷がかからない評価指針を定量的に表すウッドマイレージ運動を推進している。

(森メンバー)

○創業時より、勤務条件に男女差はつけなかった。積極的に女性を各現場へ配置した。新卒採用にも力を入れてきた。新卒、女性が取組むだけの価値と夢があると思ったからだ。これからは女性の生活観や、美的センスがさらに重要になっていくと思う。次世代を担うひとが育っていけるような、環境創りと、社会意識を高揚させる取り組をしていきたい。

(3)

意見交換

(崎田メンバー)

○松平メンバーの雑誌で、お盆を大切にする記事が受けたということだが、心の問題が入り口となって自分たちの暮らしの改善につなげていくという傾向があるように思う。皆さんはどう感じているか。

(松平メンバー)

○私は老母と同居しているが、おばあちゃんの知恵には価値があると感じている。「もったいない」といって物を最後まで使うなどといったことが大事だと思い、雑誌でも取り上げている。昭和40年頃の暮らしへの回帰のようなものが社会全体のムードとして起きていると感じている。

(小池環境大臣)

○それは、八百万の神と共通するところがあるのか。

(児玉メンバー)

○あると思う。祖父母などが知恵をもっていて、それをつなげるという意味でも子どもたちと高齢者とのつながりの中で感性が豊かになれば良い。

(五十嵐メンバー)

○学校給食の生ゴミのリサイクルを行っている。学校では、子どもが給食を残さないように指導しているが、指導し過ぎると親から苦情が来ると聞いている。親の教育も大事ではないか。

(金城メンバー)

○南大東島に住む人は所得も多い一方で島と沖縄本島と二重生活を行うため消費も多い。働く場所が島にあれば夫婦仲良く生活ができ、過疎化も防げるのではないか。

(三澤メンバー)

○顧客の中で父親が一番欲しがるのは薪ストーブ。家庭でスローな生活を求めているのではないか。地域の木材を使用した家造りを推進すれば、人と人との関係がよく見えるようになる。環境教育の場にもなる。

(崎田メンバー)

○皆さんのビジネスが社会の中でより広がり、評価されていくことが大事だと思うがどうか。

(秋山メンバー)

○最近ようやく環境ビジネスへの優先的融資が始まった。法令の問題もあるので、環境整備が今後も必要。

(五十嵐メンバー)

○生ゴミの肥料化を行う工場を立ち上げるときに法の理解と遵守に気を使った。環境マル適マーク工場のような評価制度があればやりがいがある。

(森メンバー)

○会社の近隣とのコミュニケーションづくりという非常に身近な問題がCSRにつながる。先進的な取組をきちんと評価し、それを世界標準にするなどし、技術力の強化していくことが必要である。そのためにも若い人の発想や女性の視点は大切にしていきたい。

(松平メンバー)

○環境に関するラベルは非常にたくさんある。また、環境に良い物を買いたいという読者は90%に達している。しかし、そのラベルが知られていないので、周知させれば、ラベルを取る企業も増えて消費者も選びやすいのではないか。

(三澤メンバー)

○エコビジネスを始める人のために、ある程度の技術を習得するための資金的な援助を広げてほしい。

(染谷メンバー)

○松平メンバーはプロデューサーとコンシューマーをあわせた「プロシューマー」を実践している。これは消費者が欲しいものをメーカーに作らせること。マーケッティングの最先端を行っているのではないかと思う。

(児玉メンバー)

○私の会社名はドイツの「エコテスト」という雑誌から取った。そこでは、市場に出ている商品の安全性を調べて評価している。商品だけではなく、施設や金融サービスなどの評価も始めている。

(松平メンバー)

○メディアは、企業側と消費者側の橋渡しをすることがビジネスの源泉ではないかと考えて、雑誌を作り始めた。
日本の消費者は企業社会が考えているよりもずっと進んでいる。女性は、もっと良い商品を出して欲しいなど企業側に言いたいことをたくさんもっている。

(崎田メンバー)

○環境に関する情報をきちんとつないでいくことが重要。暮らしを変えていく際には、戦略的に考えていく、あるいは情報を出していくことも大事。

(森メンバー)

○情報は、1社で悩むのではなく、産官学民というネットワークで解決していく流れが重要。

(崎田メンバー)

○新メンバーの将来ビジョンについて話を伺いたい。

(森メンバー)

○環境問題は、他の業界と比較すると、夢やロマンが高いところにあるのに、現実がついていけないというのが、20世紀の姿だったと思う。しかし21世紀にはいって、そのギャップのなかに、多くの気付きや発見があり、多くのビジネスチャンスもうまれている。かれらの発想と行動力を実践出来る舞台をつくり、意識の高いひとが好きなように演技が出来る会社でありたい。

(三澤メンバー)

○10年くらい経ったら、人を広げる仕事から、ゆっくりと物を作っていくところにシフトダウンをしたい。美しい町並みについて、10年くらいはみんなで話し合いながら、その先は私自身が実践をしていきたい。

(松平メンバー)

○子どもが安心して遊べるコミュニティ、子どもたちが望む教育を受けられる社会であってほしい。同じ思いの母親の気持ちをまとめられるようなコミュニティをつくりたい。

(児玉メンバー)

○私の会社は環境分析という限られたものであるにもかかわらず、集まってくる人はアーティストが多い。アーティストは、環境に対して非常に感性が豊かだから彼らをどんどん巻き込んでいくべき。これからは美しさとか豊かさがテーマになると思う。

(金城メンバー)

○島全体が危機感を感じ、私たちが作るお酒を自分たちのお酒であると意識を高めている。地域と一緒にスクラムを組んで、小さな島での事例を全国に発進していきたい。

(五十嵐メンバー)

○廃棄される注射針を廃油を使い滅菌し、その油と注射針をリサイクルする取組を展開している。

(秋山メンバー)

○子どもの世代に、より安全で安心して生活できる社会を残したい、それを一人ひとりのお金の力でやってきたい。SRIとことさらに言わなくてもすべての投資の評価に環境へのリスペクトが入るような形にしていきたい。

(小池環境大臣)

○女性は往々にして環境への取り組みの広報などとして使われがちだが、女性のもつ感性を活かすべきだ。今年のクールビズも男性の大臣だったら考えもしなかったろう。発想的には女性だからできたのかもしれない。
皆さんは企業を経営しているので、人事で環境担当になったのとは全然違う責任をもっておられる。皆さんにとって企業は自己実現の場だが、それがさらに広がれば、仕事をする女性たちへの啓発になり、結果として環境対策がさらに広がるだろう。
環境教育については、しっかりできるようなシステムを作っていきたいと考え、ホームページ上でエントリーしてもらう「我が家の環境大臣」事業を行っている。もう少しで100万人になる。子どもをはじめとする、我が家の環境大臣がどんどん増えて広がっている。また、日中韓3カ国の環境大臣会合でも、クールビズをアジア全体で行いましょうと訴え、環境教育の事例紹介などを行ってきた。
21世紀の日本は環境立国であるべきと思うので、今後ともお知恵をいただきたい。
今日はどうもありがとうございました。